説明

腫瘍関連抗原に対する免疫のための組換えポックス・ウイルス

【課題】腫瘍関連抗原に対する免疫応答を惹起するための細胞コード化腫瘍関連抗原を発現する能力を有する組換えポックス・ウイルスの提供。
【解決手段】TBC-CEA、PROSTVAC、rV-B7.1、rF-B7.1、rF-CEA、rV-MUC-1およびrF-PSAよりなる群から選ばれる組換えポックス・ウイルス。該組換えポックス・ウイルスの有効量と接触させる、癌胎児性抗原、または前立腺特異的抗原、またはmuc-1抗原を発現する腫瘍を有する宿主を治療する方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
癌の治療に対する免疫療法アプローチは、ヒト腫瘍細胞が、正常細胞では発現されない種々の腫瘍関連抗原(TAA)を発現するという知見に基づく。これらの抗原は、ウイルス腫瘍抗原、細胞性癌遺伝子タンパク質および腫瘍関連分化抗原を含み、宿主免疫系の標的として機能し、腫瘍の破壊につながる応答を惹起しうる。この免疫応答は、主にリンパ球により媒介され、一般にはT細胞が、特にクラスI MHC拘束性細胞傷害性Tリンパ球が、腫瘍拒絶において中心的な役割を果たす(Hellstrom, K.E.ら, (1969) Adv. Cancer Res. 12:167-223; Greenberg, P.D. (1991) Advances in Immunology, vol. 49 (Dixon, D.J.編), pp. 281-355, Academic Press, Inc., Orlando, FL)。残念ながら、集団内の高い癌発生率により示されるとおり、腫瘍細胞に対する免疫応答は腫瘍を排除しないことが多い。能動癌免疫療法の目標は、完全な腫瘍破壊を引き起こすために抗腫瘍応答(特にT細胞応答)を増強することである。
【0002】
癌抗原に対する能動免疫におけるほとんどの試みは、全腫瘍細胞または腫瘍細胞断片を用いるものである。一方、CD8+ T細胞により認識されるTAAのクローニングは、組換えまたは合成抗癌ワクチンの使用に基づく癌免疫療法の新たな可能性を切り開いた(Boon, T.ら, (1994) Annu. Rev. Immunol. 12:337-365; Brithcard, V.ら, (1993) J. Exp. med. 178:489-495; Cox, A.L.ら, (1994) Science 264:716-719; Houghton, A.N. (1994) J. Exp. Med. 180:1-4; Pardoll, D.M. (1994) Nature 369:357-358; Kawakami, Y.ら, (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:3515-3519; Kawakami, Y.ら, (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:6458-6462)。
【0003】
そのような2つの抗原は、MART-1(Melanoma Antigen Recognized by T cells-1; T細胞-1により認識される黒色腫抗原)およびgp100と称される(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:3515-3519)。MART-1およびgp100は、実質的にすべての新鮮な及び培養された黒色腫内で発現されるらしい。メラノサイトおよび網膜を除き、正常組織はそれらの抗原を発現しない。MART-1およびgp100の同定に使用された腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)は、インビボで腫瘍退縮を引き起こす能力を有していたため、それらの抗原は、進行性黒色腫患者における腫瘍退縮の媒介を担っている可能性がある。したがって、MART-1またはgp100で黒色腫患者を免疫すると、その患者の癌に対する自らの細胞性免疫応答が増強されるかもしれない。
【0004】
抗腫瘍免疫療法に組換えワクシニアウイルスを使用することが検討されている(Hu, S.L., Hellstrom, IおよびHellstrom K.E. (1992), Vaccines; New Approaches to Immunological Problems (R.W. Ellis編) pp 327-343, Butterworth-Heinemann, Boston)。抗腫瘍応答は、癌胎児性抗原(CEA)と称されるTAAを発現する組換えワクシニアウイルスを使用して惹起されている。CEAは、胃腸管のほとんどすべての腫瘍の表面上ならびに多数の乳癌および肺腺癌上で高レベルで発現される糖タンパク質である(Muraro, R.ら, (1985) Cancer Res. 4S:5769-5780)。ヒトCEA遺伝子がマウス結腸癌細胞内に導入されているマウス腫瘍モデルを使用して、CEAを発現する組換えワクシニアウイルス(Kantor, J.ら, (1992) J. Natl. Cancer Inst. 84:1084-1091)が評価された(Robbins, P.F.ら, (1991) Cancer Res 51:3657-3662)。CEA/ワクシニア組換え体で免疫したマウスは、後に移植されたCEA発現腫瘍の増殖に対して抵抗性であった。さらに、樹立されたCEA導入マウス癌を担持するマウスを該組換えウイルスで処理すると、該腫瘍は、著しく減少した増殖または完全な退縮を示した。ヒトCEAと交差反応する顆粒球の表面上に抗原を保持するアカゲザルでは、該組換え体での免疫は、抗CEA抗体、遅延型過敏症およびリンパ増殖性応答を惹起した(Kantor, J.ら, (1992) Cancer Res. 52:6917-6925)。毒性は認められなかった。
【0005】
前立腺特異的抗原(PSA)は、33,000〜34,000ダルトンの糖タンパク質であり、正常、良性および癌性の前立腺上皮では産生されるが、他の正常または悪性組織では産生されない(Wang, M.C.ら, (1982) Meth Cancer Res. 19):179-197)。PSAは、前立腺液および精漿中に分泌される(Wangらを参照されたい)。血清中のPSAレベルの上昇は前立腺の成長と相関し、前立腺癌患者はPSAレベルの指数関数的増加を示す(Carter, H.B.ら, (1992) Cancer Research 52:3323-3328)。PSAは、その組織特異性のため、前立腺癌に対する免疫療法の潜在的な標的抗原である。
【0006】
特異的TAAを発現する組換えポックスウイルスを免疫療法ワクチンとして使用することが、多数の研究室で検討されている。種々の抗原を発現する組換えポックスウイルスが感染症の予防のための潜在的なワクチンとして機能する能力については、既に十分に立証されている。生きた組換えポックス・ウイルスでの免疫は、外来抗原に対する免疫応答を増強するアジュバントとして作用しうる高度に免疫原性であるウイルスタンパク質と共に免疫系に対して提示される外来抗原の発現を可能にする(Austin, F.C.ら, (1979) Adv. Cancer Res. 50:301-345)。最後に、ポックスウイルスは腫瘍原性ではなく、遺伝物質の複製および転写は感染細胞の細胞質内で生じるため、該ウイルスは宿主細胞ゲノム内に組込まれない。
【0007】
ポックスウイルス科のウイルス(ポックス・ウイルス)は、多数の臨床および研究場面における外来遺伝子および遺伝子産物の運搬用のベクターとして有用である。オルトポックスウイルス属のポックス・ウイルス(特にワクシニア)が、いくつかの理由により使用される。これらの理由としては、(a)それが、痘瘡の撲滅においてヒトで広く使用されたこと、(b)それが、専門的抗原提示細胞を含む広範囲の細胞に感染し、挿入遺伝子産物(すなわち、外来遺伝子産物)を発現し、これが、クラスIおよび/またはクラスII MHC分子の環境中でプロセッシングされる可能性があること、および(c)ある腫瘍の治療において組換えワクチンとして使用されることが挙げられる(Kantor, J.ら (1992))。
【0008】
鶏痘ウイルス(FPV)は、アビポックスウイルスファミリーのメンバーである。生産的FPV感染は、インビボでは、トリ種由来の細胞に限定される。しかしながら、FPV媒介遺伝子発現は、感染した非トリ細胞内で生じる(Taylor, J.ら, (1988) Vaccine 6:497-503)。鶏痘ウイルスに基づく組換えワクチンは、Technological Advances in Vaccine Development(Alan R. Liss, Inc.) pp. 321-334に記載されている。さらに、いくつかの哺乳動物種におけるインビボでのFPV媒介遺伝子発現が示されている。狂犬病糖タンパク質を発現する生きた組換え鶏痘ウイルスで免疫した6つの非トリ種は、この糖タンパク質に対する抗体を産生した。この組換えFPVでの免疫は、この糖タンパク質に対する抗体を惹起した。この組換えFPVでの免疫は、狂犬病ウイルスのチャレンジに対してマウス、ネコおよびイヌを部分的に防御した。種々の用量の生きた組換えFPVで免疫したいずれの動物においても、増殖性感染の発現や明白な疾患は認められなかった(Taylor, J.ら, (1988) Vaccine 6:497-503)。もう1つの研究では、麻疹融合タンパク質を含有する組換えFPVが、麻疹ウイルスの致死的チャレンジに対してマウスを部分的に防御することが示されたが、該融合タンパク質に対する抗体は検出されなかった(Wild, T.F.ら, (1990) Vaccine 8:441-442)。したがって、防御は、細胞性免疫応答により媒介されていると考えられた。これらの結果は、組換えFPVが、ワクチンベクターとしてのワクシニアウイルスに代わる安全かつ有効な手段としての有用性を有しうることを示唆している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hellstrom, K.E.ら, (1969) Adv. Cancer Res. 12:167-223
【非特許文献2】Greenberg, P.D. (1991) Advances in Immunology, vol. 49 (Dixon, D.J.編), pp. 281-355, Academic Press, Inc., Orlando, FL
【非特許文献3】Boon, T.ら, (1994) Annu. Rev. Immunol. 12:337-365
【非特許文献4】Brithcard, V.ら, (1993) J. Exp. med. 178:489-495
【非特許文献5】Cox, A.L.ら, (1994) Science 264:716-719
【非特許文献6】Houghton, A.N. (1994) J. Exp. Med. 180:1-4
【非特許文献7】Pardoll, D.M. (1994) Nature 369:357-358
【非特許文献8】Kawakami, Y.ら, (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:3515-3519
【非特許文献9】Kawakami, Y.ら, (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:6458-6462
【非特許文献10】Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:3515-3519
【非特許文献11】Hu, S.L., Hellstrom, IおよびHellstrom K.E. (1992), Vaccines; New Approaches to Immunological Problems (R.W. Ellis編) pp 327-343, Butterworth-Heinemann, Boston
【非特許文献12】Muraro, R.ら, (1985) Cancer Res. 4S:5769-5780
【非特許文献13】Kantor, J.ら, (1992) J. Natl. Cancer Inst. 84:1084-1091
【非特許文献14】Robbins, P.F.ら, (1991) Cancer Res 51:3657-3662
【非特許文献15】Kantor, J.ら, (1992) Cancer Res. 52:6917-6925
【非特許文献16】Wang, M.C.ら, (1982) Meth Cancer Res. 19):179-197
【非特許文献17】Carter, H.B.ら, (1992) Cancer Research 52:3323-3328
【非特許文献18】Austin, F.C.ら, (1979) Adv. Cancer Res. 50:301-345
【非特許文献19】Taylor, J.ら, (1988) Vaccine 6:497-503
【非特許文献20】Technological Advances in Vaccine Development(Alan R. Liss, Inc.) pp. 321-334
【非特許文献21】Wild, T.F.ら, (1990) Vaccine 8:441-442
【発明の概要】
【0010】
本発明は、細胞にコード化されている腫瘍関連抗原および/または免疫調節物質を発現する能力を有する組換えポックス・ウイルスに関する。
【0011】
細胞コード化腫瘍関連抗原を発現する能力を有する組換えポックス・ウイルスは、該抗原またはその免疫原性部分をコードする配列をポックス・ウイルスゲノム内に組込むことにより製造する。腫瘍関連抗原には、腫瘍細胞により発現される分子(例えば、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原(PSA)、MUCIN(MUC-1)、黒色腫関連抗原、例えばMART-1など)が含まれる。免疫調節物質には、インターロイキン2、B7.1およびB7.2が含まれる。
【0012】
特に好ましい組換えポックス・ウイルスには、TBC-CEA(ワクシニア、CEA)、PROSTVAC(ワクシニア、PSA)、rV-B7.1(ワクシニア、B7)、rF-B7.1(鶏痘、7.1)、rF-CEA(鶏痘、CEA)、rV-MUC-1(ワクシニア、MUC-1)およびrF-PSA(鶏痘、PSA)が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、PROSTVACの構築に使用するドナープラスミドであるpT1001のプラスミド地図である。
【図2】図2は、TBC-CEAの構築に使用するドナープラスミドであるpT108のプラスミド地図である。
【図3】図3は、rF-CEAの構築に使用するドナープラスミドであるpT109のプラスミド地図である。
【図4】図4は、rV-B7.1の構築に使用するドナープラスミドであるpT1046のプラスミド地図である。
【図5】図5は、rF-B7.1の構築に使用するドナープラスミドであるpT1058のプラスミド地図である。
【図6】図6は、rF-PSAの構築に使用するドナープラスミドであるpT2078のプラスミド地図である。
【図7】図7は、rV-muc-1の構築に使用するドナープラスミドであるpT2068のプラスミド地図である。
【0014】
発明の詳細な説明
ポックス・ウイルスは、腫瘍関連抗原に対する免疫を誘導するための有効なベクターとして機能する。
【0015】
特に好ましい腫瘍関連抗原は、細胞表面分子である。これらは、免疫系の要素による認識されるように位置しており、したがって、免疫療法の優れた標的である。
【0016】
腫瘍関連抗原は、ある腫瘍細胞上で発現され、免疫療法の有効な標的となる。いくつかの例として、癌胎児性抗原(CEA)および前立腺特異的抗原(PSA)が挙げられる。
【0017】
免疫調節物質は、免疫応答を調節し、十分な細胞性免疫応答が生じる可能性を増大させたり(例えば、IL-2)、CTL応答を刺激するのに必要な細胞性リガンドを付与しうる(例えば、B7.1またはB7.2)。
【0018】
該腫瘍関連抗原をコードする異種DNA配列を含有するポックス・ウイルスを製造するための基本的な技術は当業者に公知であり、例えば、ドナープラスミド中の該DNA配列に隣接するウイルスDNA配列と親ウイルス中に存在する相同配列との相同組換えを含む(Mackettら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7415-7419 (1982))。例えば、ポックス・ウイルスベクターなどの組換えウイルスベクターを、該遺伝子の運搬に使用することができる。該ベクターは、例えば、当該技術分野で公知の工程、例えば、米国特許第5,093,258号(参照することによりその開示を本明細書に組入れることとする)に記載の鶏痘ウイルスの合成組換え体の作製方法に類似の工程により構築することができる。他の技術には、天然に存在するか又は異種DNAを挿入するために親ウイルスベクター中に人工的に挿入した唯一の制限エンドヌクレアーゼ部位の使用が含まれる。参照することにより本明細書に組入れる米国特許第5,445,953号を参照されたい。
【0019】
本発明を実施するのに有用なポックス・ウイルスには、オルトポックス、スイポックス、アビポックスおよびカプリポックスウイルスが含まれる。
【0020】
オルトポックスウイルスには、ワクシニア、エクトロメリアおよびラックーンポックスが含まれる。好ましいオルトポックスは、ワクシニアである。より好ましいのは、ワクシニアの標準的ワクチン株と比べて減弱したビルレンスを有するワクシニアのサブクローンである。
【0021】
アビポックスウイルスには、鶏痘、カナリア痘および鳩痘ウイルスが含まれる。好ましいアビポックスウイルスは、鶏痘ウイルスである。
【0022】
好ましいスイポックスウイルスは、豚痘ウイルスである。
【0023】
例えば、該ウイルス中に挿入するDNA遺伝子配列を、ドナープラスミド(例えば、大腸菌(E. coli)プラスミド構築物)中に配置することができる。これとは別に、挿入するDNA遺伝子配列をプロモーターに連結する。プロモーター−遺伝子連結は、該プロモーター−遺伝子連結が、所望の挿入領域であるポックスDNA領域に隣接するDNA配列と相同なDNAに両側で隣接するように、プラスミド構築物中に配置する。親ポックス・ウイルスベクターでは、ポックスプロモーターを使用する。ついで、得られたプラスミド構築物を、大腸菌(E. coli)内での増殖により増幅し、単離する。好ましくは、該プラスミドはまた、大腸菌(E. coli)複製起点などの複製起点、および大腸菌(E. coli)内での選択および増殖のための抗生物質耐性遺伝子などのマーカーを含有する。
【0024】
つぎに、挿入するDNA遺伝子配列を含有する単離したプラスミドを、親ウイルス(例えば、ポックスウイルス)と共に細胞培養(例えば、ニワトリ胚線維芽細胞)内にトランスフェクトする。該プラスミド中の相同ポックスDNAと該ウイルスゲノムとの組換えはそれぞれ、ウイルスの生存能に影響を及ぼさない部位でそのゲノム中のプロモーター−遺伝子構築物の存在により修飾された組換えポックスウイルスを与える。
【0025】
前記のとおり、該遺伝子は、得られる組換えウイルスのウイルス生存能に影響を及ぼさない該ウイルス内の領域(挿入領域)中に挿入する。当業者であれば、例えば、組換え体のウイルス生存能に著しい影響を及ぼすことなく組換え体の生成を可能にする領域に関してウイルスDNAのセグメントをランダムに試験することにより、ウイルス内のそのような領域を容易に同定することができる。容易に使用することができ多数のウイルス中に存在する1つの領域は、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子である。例えば、TK遺伝子は、調べられたすべてのポックス・ウイルスゲノム内で見出されている[レポリポックスウイルス: Uptonら, J. Virology, 60:920 (1986)(ショープ線維腫ウイルス);カプリポックスウイルス: Gershonら, J. Gen. Virol., 70:525 (1989)(ケニヤヒツジ(Kenya sheep)-1);オルトポックスウイルス: Weirら, J. Virol., 46:530 (1983)(ワクシニア); Espositoら, Virology, 135:561 (1984)(サル痘および痘瘡ウイルス); Hrubyら, PNAS, 80:3411 (1983)(ワクシニア); Kilpatrickら, Virology, 143:399 (1985)(ヤバサル腫瘍ウイルス);アビポックスウイルス: Binnsら, J. Gen. Virol. 69:1275 (1988)(鶏痘); Boyleら, Virology, 156:355 (1987)(鶏痘); Schnitzleinら, J. Virological Methods, 20:341 (1988)(鶏痘、ウズラ痘);エントモポックス(Lytvynら, J. Gen. Virol. 73:3235-3240 (1992)]。
【0026】
ワクシニアウイルスでは、TK領域に加えて、他の挿入領域は、例えば、HindIII Mを含む。
【0027】
鶏痘ウイルスでは、TK領域に加えて、他の挿入領域は、例えば、BamHI J[Jenkinsら, AIDS Research and Human Retroviruses 7:991-998 (1991)]、EcoRI-HindIII断片、BamHI断片、EcoRV-HindIII断片、BamHI断片およびEPO出願0 308 220 A1に記載のHindIII断片[Calvertら, J. of Virol. 67:3069-3076 (1993); Taylorら, Vaccine 6:497-503 (1988); Spehnerら, (1990)およびBoursnellら, J. of Gen. Virol. 71:621-628 (1990)]を含む。
【0028】
豚痘ウイルスでは、好ましい挿入部位は、チミジンキナーゼ遺伝子領域を含む。
【0029】
該遺伝子を挿入領域内に挿入するという要件に加えて、修飾されたポックスウイルスによる挿入遺伝子の発現の成功のためには、所望の遺伝子に作動的に(すなわち、該挿入遺伝子に対して適切な関係で)結合したプロモーターの存在が必要となる。該プロモーターは、発現させる遺伝子の上流に位置するように配置しなければならない。プロモーターは当該技術分野でよく知られており、標的にしたい宿主および細胞型に応じて容易に選択することができる。例えばポックスウイルスでは、ワクシニア7.5Kまたは40K、鶏痘C1などのポックス・ウイルスプロモーターを使用すべきである。適当なポックス配列を含有する人工構築物を使用することもできる。また、発現レベルを増加させるために、エンハンサー要素を併用することができる。さらに、当該技術分野でよく知られている誘導プロモーターの使用が、いくつかの実施態様では好ましい。
【0030】
ワクチン
免疫原性細胞がコード化している腫瘍関連抗原を発現する生きた組換えウイルスを使用して、該タンパク質を発現する腫瘍細胞に対する免疫応答を誘導することができる。これらの組換えウイルスは、痘瘡ワクチン接種で通常行われた皮内乱切法、または、使用する組換えウイルスに適した他の経路により投与することができる。これらには、とりわけ、筋肉内、皮下および静脈内経路を含めることができる。生きた組換えワクシニアウイルスを宿主生物にワクチン接種した後、該ウイルスは該宿主内で増殖する。
【0031】
非経腸投与の場合、典型的には、生理食塩水などの医薬上許容される担体と一緒になった無菌水性または非水性溶液、懸濁液または乳濁液として該組換えベクターを注射する。
【0032】
腫瘍関連抗原に対する特異的免疫応答は、前記のとおりに構築した約105〜109 pfuの組換えポックス・ウイルスを宿主に投与することにより得ることができ、好ましくは、107 pfu以上を使用する。好ましい宿主はヒトである。ついで少なくとも1回の間隔をおいて(好ましくは、1〜3ヵ月後)、宿主に追加抗原を投与することにより免疫応答を追加刺激する。より好ましくは、少なくとも二次「追加刺激」を、好ましくは、初回追加刺激の少なくとも1〜3ヵ月後、より好ましくは、初回追加刺激の6〜12ヵ月後に行なう。追加刺激のための抗原は、同じポックス・ウイルスベクターを使用して投与することができる。追加刺激抗原は、全タンパク質、該タンパク質の免疫原性ペプチド画分、または該タンパク質またはペプチドをコードするDNAとして投与することができる。追加刺激抗原は、好ましくは、異なるポックス属からのもう1つのポックス・ウイルスベクターを使用して投与したり、例えば、アジュバントと一緒になった精製タンパク質またはリポソーム形態で直接投与することができる。生物学的アジュバントとして、サイトカイン、例えばIL-2、IL-6、IL-12、IL-15、または補助的刺激分子、例えばB7.1、B7.2を使用することができる。該サイトカインは、宿主に全身的に投与することができ、サイトカインまたは補助的刺激分子は、該分子をコードする遺伝子を該組換えポックスベクターまたはもう1つの組換えポックスウイルス(TAAを発現する組換えポックスウイルスと混合されるもの)中へ挿入することにより共投与することができる。
【0033】
アジュバントには、例えば、RIBI Detox(Ribi Immunochemical)、
QS21(Cambridge Biotech)、不完全フロインドアジュバントの他に多数が含まれる。
【0034】
細胞傷害性T細胞の作製
腫瘍特異的抗原に特異的な細胞傷害性T細胞は、前記のとおりに免疫した宿主から得た末梢血単核細胞(PBMC)から樹立することができる。例えば、PBMCは、既に文献記載(Boyumら, Scand J. Clin Lab Invest 21:77-80 (1968))されているリンパ球分離培地(Lymphocyte Separation Medium)勾配(Organon Teknika, Durham, NC, USA)を使用して分離することができる。洗浄したPBMCを、例えば、10%プールヒトAB血清(Pel-Freeze Clinical System, BrownDear, WI, USA)、2mMグルタミン、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(GIBCO)で補足されたRPMI 1640(GIBCO)などの完全培地に再懸濁する。例えば100μlの容量の完全培地中約2×105細胞の濃度のPBMCを、96ウェル平底アッセイプレート(Costar, Cambridge, MA, USA)の各ウェルに加える。該抗原またはペプチドを、約50μg/mlの最終濃度で培養に加え、5%CO2を含有する湿性雰囲気中37℃で5日間インキュベートする。ペプチド含有培地を除いた後、該培養に、新鮮なヒトIL-2(10U/ml)を5日後に加え、IL-2含有培地を3日毎に補充する。16日目に、同じペプチド(50μg/ml)で一次培養を再刺激する。5×105個の照射された(4,000 rad)自己PBMCを、抗原提示細胞(APC)として、約50μl容量の完全培地中に加える。約5日後、前記のとおり、該培養にヒトIL-2含有培地を加える。細胞を、16日間隔で5日間再刺激する。
【0035】
細胞療法
細胞傷害性T細胞を培養して、その数を増幅し、ついで種々の手段により該宿主に再注射することができる。一般には、注入1回当たり1×105個〜2×1011個の細胞傷害性T細胞を、それぞれ200〜250mlの1〜3回の注入で30〜60分間にわたり投与する。該注入の完了後、体重1kg当たり720,000 IUの用量の組換えインターロイキン-2を8時間毎に静脈内投与することにより患者を治療することができる。該薬物に対する患者の許容度に応じて、何回かの投与を省略することができる。さらに、注入後、T細胞惹起エピトープを含有する追加的抗原または断片を患者に投与して、T細胞数をさらに増加させることができる。該抗原またはエピトープはアジュバントと共に製剤化することができ、および/または、リポソーム製剤中に存在することが可能である。
【0036】
また、該細胞傷害性T細胞を、TNFをコードするDNAを含有するウイルスベクターの導入により修飾し、宿主中に再導入して、該細胞の抗腫瘍活性を増強することができる。また、他のサイトカインを使用することも可能である。
【0037】
参考例1
ベクターの構築
ポックス・ウイルス
多数のポックス・ウイルスが、異種タンパク質の発現のための生きたウイルスベクターとして開発されている(Cepkoら, Cell 37:1053-1062 (1984); Morinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4626-4630 (1987); Loweら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:3896-3900 (1987); PanicaliおよびPaoletti, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:4927-4931 (1982); Machettら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:7415-7419 (1982))。代表的な鶏痘および豚痘ウイルスは、それぞれ受託番号VR-229およびVR-363でATCCから入手可能である。ワクシニアのWyeth株は、受託番号VR-325でATCCから入手可能である。
【0038】
親鶏痘ウイルスは、鶏痘ウイルスのPOXVAC-TCワクチン株(Schering Corp.)のプラーク精製分離体である。、
親ワクシニアウイルス(クローンB-3-1)は、Flow Laboratoriesから入手したWyeth株のプラーク精製分離体である。
【0039】
クローンB-3-1を得るために、該Wyeth株を、アカゲザル胎児肺系FRhL(ATCC受託番号CL160)中で以下のとおりに継代した。
継代1: プラーク「B」を10-5.3希釈で拾い上げた。
継代2: プラーク「B-3」を10-1.6希釈で拾い上げた。
継代3: プラーク「B-3-1」を10-1.6希釈で拾い上げた。
継代4〜7: スクロースホスファートグルタマート(SPG)を含有する無血清培地を使用しプラークB-3-1を連続継代して、7代継代レベルの小さな種プールを調製した。
【0040】
頭蓋内感染させた離乳マウスの50%致死性のウイルス感染量(LD50)を測定することにより、Wyethワクシニア株のこのプラーク分離物のビルレンスを評価した。2〜3週齢の免疫適格マウスに、種々の用量(7マウス/用量)のウイルスを接種し、Reed-Muench法(20)を用いて50%終点を計算することにより、接種後2〜12日に死亡したマウス上でLD50を測定した。これらの値を、CDC痘瘡ワクチンのバイアルからウイルスを直接増殖させることにより調製したウイルスストックを用いて得た値と比較した(表1)。
【0041】
【表1】

【0042】
親ウイルスとのインビボ組換え用のDNAベクター
所望の癌関連抗原をコードする遺伝子をポックス・ウイルスのゲノム内に挿入して、親ウイルスタンパク質の正常な相補体の発現と共にそのウイルスによるそれらの発現が可能となるようにする。これは、まず、ポックス・ウイルスとのインビボ組換え用のDNAドナーベクターを構築することにより行なうことができる。
【0043】
一般には、該DNAドナーベクターは、以下の要素を含有する:
(i)該ベクターが原核生物宿主内で増幅されるのを可能にする原核性複製起点、
(ii)該ベクターを含有する原核生物宿主細胞の選択を可能にするマーカーをコードする遺伝子(例えば、抗生物質耐性をコードする遺伝子)、
(iii)所望のタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子(これは、該遺伝子の発現を指令しうる転写プロモーターに隣接して位置する)、および
(iv)要素(iii)の構築物に隣接し、外来遺伝子の挿入部位に位置する親ウイルスゲノムの領域と相同なDNA配列。
【0044】
ポックス・ウイルス内に複数の外来遺伝子を導入するためのドナープラスミドを構築する方法は、WO91/19803に記載されており、参照することによりその技術を本明細書に組入れることとする。一般には、該ドナーベクターの構築のためのすべてのDNA断片(転写プロモーターを含有する断片、および外来遺伝子が挿入される親ウイルスゲノムの領域と相同な配列を含有する断片を含む)は、ゲノムDNAまたはクローン化DNA断片から得ることができる。該ドナープラスミドは、一価、二価または多価であることが可能である(すなわち、1以上の挿入外来遺伝子配列を含有することが可能である)。
【0045】
該ドナーベクターは、好ましくは、挿入された外来DNAを含有する組換えウイルスの同定を可能にするマーカーをコードする追加的遺伝子を含有する。組換えウイルスの同定および単離を可能にするために、いくつかの型のマーカー遺伝子を使用することができる。これらには、抗生物質または化学物質耐性をコードする遺伝子(例えば、Spyropoulosら, J. Virol., 62:1046 (1988); FalknerおよびMoss, J. Virol., 62:1849 (1988); Frankeら, Mol. Cell. Biol. 5:1918 (1985)を参照されたい)、および比色アッセイによる組換えウイルスプラークの同定を可能にする大腸菌(E. coli)lacZ遺伝子などの遺伝子(Panicaliら, Gene, 47:193-199 (1986))が含まれる。
【0046】
ウイルスゲノム内への外来DNA配列の組込みおよび組換え体の単離
感染細胞内でのドナープラスミドDNAとウイルスDNAとの相同組換えにより、所望の要素を含む組換えウイルスが生成する。インビボ組換えのための適当な宿主細胞は、一般には、ウイルスに感染し該プラスミドベクターをトランスフェクトすることが可能な真核生物細胞である。ポックス・ウイルスと共に使用するのに適したそのような細胞の例としては、ニワトリ胚真皮(CED)細胞、HuTK143(ヒト)細胞、およびCV-1およびBSC-40(共にサル腎)細胞が挙げられる。細胞に対するポックス・ウイルスの感染およびこれらの細胞に対するプラスミドベクターのトランスフェクションは、当該技術分野における標準的な技術により行なう(PanicaliおよびPaoletti, 米国特許第4,603,112号、WO89/03429)。
【0047】
インビボ組換えの後、いくつかの技術の1つにより組換えウイルス後代を同定することができる。例えば、親ウイルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子中に外来遺伝子を挿入するようにDNAドナーベクターを設計する場合には、組込まれたDNAを含有するウイルスはTKとなり、これに基づいて選択することができる(Makettら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:7415 (1982))。あるいは、マーカーをコードする遺伝子または指示遺伝子と前記の関心のある外来遺伝子との同時組込みを用いて、組換え後代を同定することができる。1つの好ましい指示遺伝子は、大腸菌(E. coli)lacZ遺伝子であり、β-ガラクトシダーゼを発現する組換えウイルスを、該酵素の発色性基質を用いて選択することができる(Panicaliら, Gene, 47:193 (1986))。
【0048】
インビボ組換えの後、いくつかの技術の1つにより組換えウイルス後代を同定することができる。組込まれた外来DNAの存在は、挿入DNAに特異的な標識化DNAプローブとのハイブリダイゼーションにより検出することができる。しかしながら、好ましい選択方法は、マーカーをコードする遺伝子または指示遺伝子と前記の関心のある遺伝子との同時組込みに基づくものである。好ましい指示遺伝子は、酵素β-ガラクトシダーゼをコードする大腸菌(E. coli)lacZ遺伝子である。β-ガラクトシダーゼを発現する組換えウイルスの選択は、該酵素の発色性基質を用いて行なうことができる。例えば、組換えウイルスは、基質5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシドまたは他のハロゲン化-インドリル-β-D-ガラクトシド(例えば、BluoGalTM)の存在下で青色プラークとして検出される。
【0049】
組換えウイルスにより発現されるウイルス抗原の特徴づけ
組換えウイルスを同定したら、種々の方法を用いて、挿入遺伝子によりコードされるポリペプチドの発現をアッセイすることができる。これらの方法には、ブラックプラークアッセイ(ウイルスプラーク上で行なうin situエンザイムイムノアッセイ)、ウエスタンブロット分析、放射線免疫沈降法(RIPA)およびエンザイムイムノアッセイ(EIA)が含まれる。
【0050】
実施例I
組換えワクシニアウイルス(PROSTVAC)の構築
ヒト前立腺特異的抗原の全オープンリーディングフレームをコードする786bpのDNA断片を、ヒト転移性前立腺腺癌細胞系LnCaP.FGC(CRL 1740, American Type Culture Collection (ATCC), Rockville MD)から抽出した全RNAから逆転写PCR(GeneAmp RNA PCR Kit, Perkin Elmer, Norwalk, CT)により増幅した。PSAコード配列から導き出した推定アミノ酸配列は、公開されている配列(Lundwallら, FEBS Letters, 214:317-322, (1987))とほとんど同一であり、220位のアスパラギンがチロシンに変化している点で異なるにすぎないことが示された。PSAの全コード配列、5’非翻訳領域の41ヌクレオチドおよび3’非翻訳領域の520ヌクレオチドを含有するPSA DNA断片を、ワクシニアウイルス導入ベクターpT116のXbaI制限エンドヌクレアーゼ切断部位中へ挿入した。pT1001と称される得られたプラスミドは、ワクシニアウイルス40Kプロモーター(Gritzら, J. Virol. 64:5948-5957, (1990))の制御下のPSA遺伝子および鶏痘ウイルスC1プロモーター(Jenkinsら, AIDS Research and Human Retroviruses 7:991-998, (1991))の制御下の大腸菌(E. coli)lacZ遺伝子を含有する。これらの外来遺伝子は、ワクシニアゲノムのHindIII M領域からのDNA配列に隣接する。図1は、PT1001のプラスミド地図である。
【0051】
ワクシニアのWyeth(New York City Board of Health)株からのプラーク精製分離体を、組換えワクシニアウイルスPROSTVACの構築において親ウイルスとして使用した。組換えワクシニアウイルスの作製は、Wyethワクシニアゲノム中のワクシニア配列と、pT1001をトランスフェクトしたワクシニア感染RK13細胞(CCL37, ATCC)内のpT1001中の対応配列との相同組換えにより行なった。文献記載(Panacaliら, 1986)のとおり、ハロゲン化インドリル-β-D-ガラクトシド(Bluo-gal)の存在下でlacZ遺伝子産物の発現を検出する、ウイルスプラーク上でin situで行なう発色性アッセイを用いて、組換えウイルスを同定した。適切な青色組換えウイルスを、4ラウンドのプラーク精製により精製した。感染RK13細胞ライセートを清澄化し、ついで36%ショ糖クッションに通して遠心分離することにより、ウイルスストックを調製した。
【0052】
実施例II
組換え鶏痘ウイルス(rF-CEA)の構築
組換え鶏痘ウイルスの作製は、挿入する異種配列を保持するプラスミドベクターと鶏痘DNAとのインビボでの相同組換えにより行なう。該プラスミドベクターは、鶏痘ウイルスゲノムの非必須領域からのウイルス配列に隣接したタンパク質コード配列に結合したポックスウイルスプロモーターをそれぞれが含む1以上のキメラ遺伝子を含有する。該プラスミドを、親鶏痘ウイルスに感染した細胞内にトランスフェクトする。プラスミド上の鶏痘配列とウイルスゲノム内の対応DNAとの組換えにより、該ウイルスゲノム内への該プラスミド上のキメラ遺伝子の挿入が生じる。
【0053】
インビボ組換えによる親鶏痘ウイルスゲノム内へのCEA遺伝子の挿入に使用するプラスミドベクター(pT109)を、図3に示す。このベクターは、以下の要素を含有する:(1)該ベクターが細菌宿主内で増幅されるのを可能にする原核生物複製起点、(2)該プラスミドを含有する原核生物宿主細胞の選択を可能にする、抗生物質アンピシリンに対する耐性をコードする遺伝子、(3)鶏痘ゲノムのBamHIJ領域と相同なDNA配列(これは、相同組換えによるこの領域内への外来遺伝子の挿入を導く)、(4)CEA遺伝子に結合したワクシニア40K転写プロモーターを含むキメラ遺伝子、(5)大腸菌(E. coli)lacZ遺伝子に結合した鶏痘C1転写プロモーターを含む第2キメラ遺伝子。
【0054】
CEAをコードする遺伝子は、Kaufmanら((1991) Int. J. Cancer 48, 900-907)の開示(参照することによりこの開示を本明細書に組入れることとする)のとおり、ヒト結腸癌細胞系からのRNAに由来するcDNAライブラリーから米国国立癌研究所(the National Cancer Institute)で単離された。
【0055】
鶏痘ウイルスのPOXVAC-TCワクチン株からのプラーク精製分離体を、この組換えワクチン用の親ウイルスとして使用した。該プラスミドベクターと該ウイルスDNAとのインビボ組換えにより、ワクシニア40Kプロモーターの転写指令下のCEA遺伝子とC1プロモーターの制御下のlacZ遺伝子とが鶏痘ウイルスゲノムのBamHIJ領域内に挿入されている組換えウイルスが生成した。
【0056】
β-ガラクトシダーゼの発色アッセイを用いて、lacZおよびCEA配列を含有する組換えウイルスを同定した。この方法は、鶏痘ウイルスが、CED細胞の単層上での増殖の際に、明瞭なプラークを形成する能力を利用するものである。インビボ組換えの後、明瞭なプラークが認められるようになるまで後代ウイルスを細胞に感染させ、この時点で、該プラークにβ-ガラクトシダーゼの発色性基質(Bluo-gal)を重層した。lacZを発現するウイルスプラークが、透明な背景に対して青色で出現した。該細胞単層から陽性プラークを拾い、それらの後代をさらに増殖させた。プラークの単離および再プレーティング(Bluo-galの存在下)のラウンドの繰返しにより、所望の組換え体を精製した。陽性組換え体を増幅して、CED細胞上に種ストックを得た。ついで該種ストックを、力価測定、ゲノムおよびタンパク質発現分析に付した。
【0057】
プラスミド導入ベクターの構造を、XbaIおよびBamHIを使用する制限エンドヌクレアーゼ消化により確認した。さらに、これらの酵素による消化の産物を、CEA遺伝子と鶏痘BamHI J配列に対応する標識化プローブを使用するサザンブロット分析に付した。これらの方法により可視化したDNA断片は、予想されたサイズを有し、CEA遺伝子の存在が明らかに示され、したがって該プラスミドの予想された構造が確認された。
【0058】
以下の表2に記載する組換えポックス・ウイルスは、同様の方法を用いて構築することができる。
【0059】
【表2】

【0060】
均等物
当業者であれば、本明細書に記載の本発明の特定の実施態様に対する多数の均等物を認識し、あるいは単なる通常の実験によりそれを確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の請求の範囲に含まれると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TBC-CEA、PROSTVAC、rV-B7.1、rF-B7.1、rF-CEA、rV-MUC-1およびrF-PSAよりなる群から選ばれる組換えポックス・ウイルス。
【請求項2】
該ポックス・ウイルスがTBC-CEAである、請求項1に記載の組換えポックス・ウイルス。
【請求項3】
該ポックス・ウイルスがPROSTVACである、請求項1に記載の組換えポックス・ウイルス。
【請求項4】
該ポックス・ウイルスがrV-B7.1である、請求項1に記載の組換えポックス・ウイルス。
【請求項5】
該ポックス・ウイルスがrF-B7.1である、請求項1に記載の組換えポックス・ウイルス。
【請求項6】
該ポックス・ウイルスがrF-CEAである、請求項1に記載の組換えポックス・ウイルス。
【請求項7】
該ポックス・ウイルスがrV-muc-1である、請求項1に記載の組換えポックス・ウイルス。
【請求項8】
該ポックス・ウイルスがrF-PSAである、請求項1に記載の組換えポックス・ウイルス。
【請求項9】
癌胎児性抗原を発現する腫瘍を有する宿主を治療する方法であって、該宿主を組換えポックス・ウイルスTBC-CEAまたはrF-CEAの有効量と接触させることを含んでなる方法。
【請求項10】
前立腺特異的抗原を発現する腫瘍を有する宿主を治療する方法であって、該宿主を組換えポックス・ウイルスPROSTVACまたはrF-PSAの有効量と接触させることを含んでなる方法。
【請求項11】
muc-1抗原を発現する腫瘍を有する宿主を治療する方法であって、該宿主を組換えポックス・ウイルスrV-muc-1またはrF-muc-1の有効量と接触させることを含んでなる方法。
【請求項12】
腫瘍を有する宿主を治療する方法であって、該宿主の腫瘍細胞を組換えポックス・ウイルスrV-B7.1またはrF-B7.1の有効量と接触させることを含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−278997(P2009−278997A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171254(P2009−171254)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【分割の表示】特願平10−508844の分割
【原出願日】平成9年7月15日(1997.7.15)
【出願人】(500554265)アメリカ合衆国 (4)
【Fターム(参考)】