説明

自動ワインダの巻取停止装置

【目的】 巻取ユニットにおいて、糸継が不要で惰性巻がなくリボン巻の発生がない状態でパッケージの回転を停止させることを可能とする。
【構成】 定長装置17で計測されるパッケージ3の巻取糸長が満管設定値より少し手前の糸長設定値に達した時点から、ドラムモータ9のインバータ8を制御して、パッケージの回転速度を満管時には十分遅い回転数になるように徐々に減速させ、巻取糸長が満管設定値になった時点で、クレードルリフタ14によりパッケージをリフトアップし且つパッケージブレーキ15を作動させ、ドラムの回転停止又は停止直前にリフトダウンさせる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動ワインダの巻取停止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動ワインダでは、ドラム駆動により、その駆動面とパッケージの周面との摩擦接触によってパッケージを回転させ、ドラム溝に案内されて左右にトラバースする糸をパッケージに巻き取っている。
【0003】従来、上記パッケージへの巻取糸長が設定値に達しパッケージが満管になった場合の巻取停止方法としては、■糸が繋がった状態でドラム及びパッケージを慣性で回転させておき、パッケージの回転が停止するのを待つ、■糸を一旦カットしてからドラムの回転を停止させ、パッケージの停止後、オートドッフィングの便宜のために上記カットした糸の糸継モードに入り、その後少し糸を走らせてみて糸が繋がっていれば糸継成功の表示ランプを点灯し、玉揚台車によりオートドッフィングされるのを待つ、等の方法が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記■の停止方法では、糸のカットはしないので糸継は不要であるが、惰性巻の状態となるのでリボン巻が発生しやすく、惰性巻の分だけ無駄に糸が巻き取られることになる。
【0005】また上記■の方法では、糸をカットして停止するのでリボン巻は発生しないが、オートドッフィングの前処理として必ずその糸継が必要となる。また、糸をカットした後に再度糸が繋がったかどうかを確認するために、少し糸を走らせてみる必要があり、無駄な動作を行うことになる。更に、この糸継目は必ず同じ糸長位置に作成されるため、織機等の後工程で問題となる。
【0006】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、糸継が不要で、リボン巻の発生がないパッケージ停止装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明の巻取停止装置は、パッケージの巻取糸長が満管設定値より少し手前の糸長設定値に達した時点から、ドラムモータのインバータを制御してパッケージの回転速度を満管時には十分遅い回転数になるように徐々に減速させ、巻取糸長が満管設定値になった時点で、パッケージをリフトアップし且つパッケージブレーキを作動させ、ドラムの回転停止又は停止直前にリフトダウンさせる手段を設けたものである。
【0008】
【作用】パッケージの回転速度は、満管の少し手前の時点から満管時点までの減速区間において、停止とみなし得るような十分遅い速度までまで徐々に減速され、この減速区間の間、パッケージはドラムに当接され且つリボンブレーク作用を付与されながら、糸を巻き取る。このため、パッケージにリボン巻は発生しなくなる。また、糸のカットをしないで巻取を停止できるため、糸をカットした場合にはその後になされるであろう無駄な糸継動作をなくすことができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【0010】図1は、多数並設されて自動ワインダを構成する巻取ユニットの一つを示したもので、ドラム1の駆動面に、クレードル2に支持されたパッケージ3の周面を摩擦接触させ、ドラム駆動によりパッケージ3を回転することにより、給糸ボビン4から糸道を通ってドラム溝5に案内されて左右にトラバースする糸をパッケージ3に巻き取るようになっている。6は糸走行検出器6aを具備するヤーンクリアラであり、巻取ユニットにはこの他に糸継装置も設けられている。
【0011】各巻取ユニットは、CPUを主体とするユニット制御装置7、インバータ装置8、ドラムモータ9、ドラム回転検出器10及びパッケージ回転検出器13を備えている。14はクレードル2のリフタ,15はパッケージブレーキである。ドラム回転検出器10は、ドラム軸に設けられたピックアップホイール11と、このホイール歯の通過を検出する近接センサ12とから成り、ドラム1の回転速度に比例した数の検出パルスを出力する。パッケージ回転検出器13も同様な構成であり、パッケージ3の回転速度に比例した数の検出パルスを出力する。
【0012】パッケージ回転検出器13からの検出パルスは、ユニット制御装置7内のカウンタにより計数されて、パッケージ3の回転速度が検出される。ユニット制御装置7は、RAM,ROMを含むマイコンを主体として構成され、インバータ装置8へ与える運転速度指令として、■巻取開始時の立上げ速度,■高速に巻取るための巻取速度,■パッケージが満管となる少し手前から予め定めた運転速度曲線に乗せて減速させる立下げ速度の3種の指令を作成する機能を有している。ユニット制御装置7は、これらの運転速度指令をインバータ装置8に与え、パッケージ回転検出器13よりフィードバックされるパッケージ回転速度を確認しつつ、ドラムモータ9の回転速度を可変速制御する。即ち、インバータ装置8は、ユニット制御装置7よりインバータ運転速度指令が与えられると、その運転速度指令に応じたパッケージ回転速度となるように、ドラムモータ9に与えるV/f信号をコントロールする。
【0013】ユニット制御装置7は、自動ワインダの一端側に位置する定長装置17と通信回線16により接続されている。定長装置17は、RAM,ROMを含むマイコンを主体として構成され、各ユニット毎にパッケージでの糸の巻取長(巻取量)及び糸継ミスの巻返し回数等の各種データ,運転状況の把握,各種設定値の一括設定等を行い得る。この定長装置17における糸の巻取糸長の計測は、ヤーンクリアラ6の糸走行信号とドラム回転検出器10のドラムパルスとのAND出力を定長カウンタで計数することで行われる。この場合、定長装置17には、糸種(番手,材料)、ドラムの形状,接圧,テンション等を考慮して、予めパッケージが満管となる巻取糸長の「満管設定値」と、その少し手前の適切なドラム減速開始時期を示す巻取糸長の「減速開始設定値」とが設定記憶されており、これらの設定値になったときは、その旨の信号を該当するユニット制御装置7に与えるようになっている。
【0014】次に、パッケージが満管となる場合の停止動作について説明する。
【0015】図2において、通常の巻取期間中は、ユニット制御装置7から高速の巻取速度指令がインバータ装置8に与えられ、パッケージ3が高速に回転される。定長装置17における巻取糸長の計測値が、予めパッケージが満管となる少し手前の「減速開始設定値」に達すると(図2のa点)、ユニット制御装置7はインバータ装置8に与えている運転速度指令を、巻取速度から立下げ速度指令に切り替える。これにより、パッケージの回転速度は、予め定めた運転速度曲線に乗せられて減速されて行く。巻取糸長が満管時の「満管設定値」に達すると(図2のb点)、ユニット制御装置7は、パッケージリフタ14を作動させてクレードル2をリフトアップさせると共に、パッケージブレーキ15を作動させる。このa〜b区間において、パッケージ3の回転速度は殆どゼロ状態まで低下されているため、パッケージ3はブレーキ力により直ぐに停止する(図2のc点)。
【0016】パッケージ3の回転がゼロになると(図2のc点)、ユニット制御装置7は、パッケージリフタ14及びパッケージブレーキ15を非作動状態に戻し、クレードル2をリフトダウンさせると共に、パッケージブレーキ15の作動を解除する。この後、満管となって巻取が停止した旨を玉揚台車及びオペレータに知らせるため、当該巻取ユニットに設けてあるグリーンランプを点灯させる。
【0017】自動ワインダの錘間を移動可能な玉揚台車は、このグリーンランプの点灯している巻取ユニットがあると、当該巻取ユニットに停止し、切断されていない糸をたぐり寄せて把持し、クレードルからの満管パッケージの釈放、新たな紙管のセットと糸端の巻き付け等を行って、オートドッフィングを実行することになる。
【0018】上記実施例の停止装置によれば、糸のカットをしないで巻取を停止できるため、糸をカット及びその糸継動作という無駄をなくすことができる。また、パッケージ3は、満管の少し手前(a点)から満管(b点)までの減速区間において、高速の巻取速度から停止とみなし得る速度まで徐々に減速され、かつ、その間ドラム1に当接され且つリボンブレークのすべり動作を付与されるため、糸の巻き取りにおいてリボン巻を発生しない。かかる効果は、パッケージリフタ14及びパッケージブレーキ15を非作動状態に戻すタイミングを、パッケージ3が停止する直前に設定することによっても得ることができる。
【0019】尚、満管時点以後の減速区間b〜cにおける運転速度曲線は、パッケージブレーキ15におけるブレーキ作用のきき具合により、適切なパターンに設定することができ、満管時点bを正確に停止時点cと一致させ得る場合には、ブレーキ区間b〜cをなくすことができる。
【0020】
【発明の効果】以上のように、本発明の停止装置によれば、糸のカットをしないで巻取を停止できるため、糸カット及び糸継動作の無駄をなくすことができる。また、パッケージは、満管直前から満管時点までの減速区間において、停止とみなし得るような十分遅い速度まで徐々に減速され且つその間リボンブレーク作用を付与されるため、リボン巻を発生しなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の巻取停止装置を適用した巻取ユニットの構成を示す概要図である。
【図2】本発明の巻取停止装置の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
1 ドラム
2 クレードル
3 パッケージ
4 給糸ボビン
5 ドラム溝
6 ヤーンクリアラ
6a 糸走行検出器
7 ユニット制御装置
8 インバータ装置
9 ドラムモータ
10 ドラム回転検出器
11 ピックアップホイール
12 近接センサ
13 パッケージ回転検出器
14 クレードルリフタ
15 パッケージブレーキ
16 通信回線
17 定長装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 パッケージの巻取糸長が満管設定値より少し手前の糸長設定値に達した時点から、ドラムモータのインバータを制御してパッケージの回転速度を満管時には十分遅い回転数になるように徐々に減速させ、巻取糸長が満管設定値になった時点で、パッケージをリフトアップし且つパッケージブレーキを作動させ、ドラムの回転停止又は停止直前にリフトダウンさせる手段を設けたことを特徴とする自動ワインダの巻取停止装置。

【図1】
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【図2】
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