説明

自動二輪車

【課題】車幅方向外側を向くように配置されているラジエーターを備え、ラジエーターに走行風を効率的に導くことができ、足載せ面の前後方向寸法を大きくでき、かつ、タンデムフートレストの配置自由度が高い自動二輪車を提供する。
【解決手段】自動二輪車1は、前方視においてシートフレーム部9d1と重なるように、クランクシャフト15aの車幅方向外側に配置されているラジエーター17と、シート10の下方において、エンジン15、ラジエーター17、シートフレーム部9d1,9d2及びタンデムフートブラケット19a、19bの少なくとも一部の前方と、タンデムフートブラケット19a、19b及びシートフレーム部9d1,9d2の車幅方向外側とを覆うカウル20dとを備えている。カウル20dの内側には、ラジエーター17に走行風を導く第1の導風通路20fが、平面視において、タンデムフートブラケット19aと重なるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車に関する。詳細には、本発明は、クランクシャフトの車幅方向外側に、車幅方向外側を向くように配置されているラジエーターを備える自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1などに記載されているように、クランクシャフトの車幅方向外側に配置されており、車幅方向外側を向くように配置されているラジエーター(以下、本明細書において、「横置きラジエーター」というものとする。)を備える自動二輪車が知られている。
【0003】
横置きラジエーターを用いた場合、冷却対象となるシリンダヘッドやシリンダボディと、ラジエーターとの間の距離が短くなる。このため、シリンダヘッドやシリンダボディとラジエーターとを接続する冷却液通路の長さを短くすることができる。また、横置きラジエーターを用いた場合、クランクシャフトによりラジエーターファンを直接駆動することができる。従って、横置きラジエーターを用いることにより、ラジエーター周りの構成をシンプルにすることができる。
【0004】
さらに、横置きラジエーターを用いた場合、エンジンよりも前方にラジエーター及び冷却液通路の配置スペースを確保する必要がない。よって、横置きラジエーターは、排気量が小さい自動二輪車をはじめ、種々の自動二輪車に広く用いられるようになってきている。
【0005】
上述のように、横置きラジエーターは、風受け面が車幅方向外側を向くように配置されている。このため、平面視において前方を向いている通常のラジエーターとは異なり、横置きラジエーターは走行風を直接受けにくい。従って、横置きラジエーターを備える自動二輪車においては、横置きラジエーターに対して、どのように走行風を導くかが問題となる。
【0006】
例えば、下記の特許文献1に記載の自動二輪車では、図12に示すように、横置きラジエーター101がサイドカバー102から露出するように配置されている。そして、横置きラジエーター101の車幅方向外側に導風部材103が配置されている。このようにすることにより、サイドカバー102の車幅方向外側を流れる走行風を横置きラジエーター101に導いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−132356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、図12に示す自動二輪車100では、サイドカバー102の車幅方向外側を流れる走行風が、導風部材103によって、横置きラジエーター101に導かれる。このため、横置きラジエーター101に効率的に走行風を導くためには、サイドカバー102の横置きラジエーター101の前に位置する部分の後端部102aを、できる限り車幅方向の内側に位置させる必要がある。しかしながら、通常、後端部102aの車幅方向内側には、車体フレームの一部を構成するシートフレーム部が配置されている。従って、後端部102aを車幅方向の内側に配置することが困難である。
【0009】
後端部102aをできる限り車幅方向の内側に位置させる方法としては、図12に示すように、前後方向において、車体フレーム104の横置きラジエーター101の前側に位置するシートフレーム部104aを横置きラジエーター101から大きく離れた位置に配置する方法が考えられる。この場合、後端部102aとシートフレーム部104aとが車幅方向において位置的に干渉しない。よって、後端部102aを車幅方向の内側に配置しやすい。従って、横置きラジエーター101に対して走行風を効率的に導くことが可能となる。
【0010】
しかしながら、シートフレーム部104aを前方に離して配置した場合、ライダーの足を載せるための足載せ面105の前後方向における長さが短くなるという問題がある。
【0011】
また、サイドカバー102の車幅方向外側を流れる走行風を横置きラジエーター101に効率的に導くためには、タンデムフートレスト106の位置も問題となる。すなわち、タンデムフートレスト106が横置きラジエーター101の車幅方向外側や前方に配置されている場合は、タンデムフートレスト106や、タンデムフートレスト106におかれた足によって、走行風が横置きラジエーター101に導かれることが阻害される。よって、走行風を横置きラジエーター101に効率的に導くためには、タンデムフートレスト106を、横置きラジエーター101よりも上方か、または後方に配置する必要がある。従って、自動二輪車1には、タンデムフートレスト106の配置自由度が低いという問題もある。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、クランクシャフトの車幅方向外側に、車幅方向外側を向くように配置されているラジエーターを備える自動二輪車であって、ラジエーターに走行風を効率的に導くことができ、足載せ面の前後方向寸法を大きくでき、かつ、タンデムフートレストの配置自由度が高い自動二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る自動二輪車は、車体フレームと、シートと、足載せ部材と、ユニットスイング式のエンジンと、ラジエーターと、タンデムフートレストと、タンデムフートブラケットと、カウルとを備えている。車体フレームは、ヘッドパイプと、ダウンフレーム部と、ロアフレーム部と、左右一対のシートフレーム部とを有する。ダウンフレーム部は、ヘッドパイプ側から下方に向かって延びている。ロアフレーム部は、ダウンフレーム部の下端部側から後方に向かって延びている。左右一対のシートフレーム部のそれぞれは、ロアフレーム部の後端部側から上方に向かって延びている。シートは、左右一対のシートフレームの上に設けられている。足載せ部材は、足載せ面を有する。足載せ面は、ロアフレーム部の上方であって、前後方向において、ダウンフレーム部とシートフレーム部との間に位置している。エンジンは、クランクシャフトと、クランクケースと、シリンダボディと、シリンダヘッドとを有している。クランクシャフトは、車幅方向に延びている。クランクケースは、クランクシャフトを収納している。シリンダボディは、クランクケースに接続されている。シリンダヘッドは、シリンダボディの先端に接続されている。シリンダヘッドは、車幅方向において、左右一対のシートフレーム部の間に位置している。エンジンは、車体フレームに揺動可能に支持されている。ラジエーターは、前方視において右側及び左側のシートフレーム部のうちの一方と重なるように配置されている。ラジエーターは、右側及び左側のシートフレーム部のうちの一方の後方であってクランクシャフトの車幅方向外側に配置されている。ラジエーターは、主面を有する。主面は、車幅方向外側を向いている。タンデムフートレストは、ラジエーターよりも前方であって、右側及び左側のシートフレーム部のうちの一方の車幅方向外側に配置されている。タンデムフートブラケットは、右側及び左側のシートフレーム部のうちの一方から車幅方向外側に延びている。タンデムフートブラケットは、タンデムフートレストと車体フレームとを接続している。カウルは、シートの下方において、エンジン、ラジエーター、シートフレーム部及びタンデムフートブラケットの少なくとも一部の前方と、タンデムフートブラケット及びシートフレーム部の車幅方向外側とを覆っている。本発明に係る自動二輪車では、カウルの内側に、ラジエーターに走行風を導く第1の導風通路が、平面視において、タンデムフートブラケットと重なるように形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クランクシャフトの車幅方向外側に、車幅方向外側を向くように配置されているラジエーターを備える自動二輪車であって、ラジエーターに走行風を効率的に導くことができ、足載せ面の前後方向寸法を大きくでき、かつ、タンデムフートレストの配置自由度が高い自動二輪車が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】自動二輪車の略図的右側面図である。
【図2】自動二輪車の略図的平面図である。
【図3】車体フレームを説明するための自動二輪車の略図的右側面図である。
【図4】車体フレームの略図的斜視図である。
【図5】エンジンの一部分を表す略図的断面図である。
【図6】エンジンの略図的右側面図である。
【図7】エンジン、車体フレーム、ラジエーター及びタンデムフートレストの配置を説明するための略図的模式平面図である。
【図8】自動二輪車の略図的正面図である。但し、フロントフォーク、前輪、ハンドル等は描画を省略している。
【図9】図8における線IX−IXにおける略図的断面図である。
【図10】導風部材の車幅方向に沿った略図的断面図である。
【図11】導風部材の水平方向に沿った略図的断面図である。
【図12】特許文献1に記載の自動二輪車の略図的右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1に示す自動二輪車1を例に挙げて説明する。なお、以下の説明において、前後左右の方向は、シート10に着座したライダーから視たときの方向をいうものとする。
【0017】
図1は、自動二輪車の略図的右側面図である。図2は、自動二輪車の略図的平面図である。図3は、車体フレームを説明するための自動二輪車の略図的右側面図である。
【0018】
図1〜図3に示す自動二輪車1は、ユニットスイング式のエンジン15を備えるスクーターである。より詳細には、車幅方向右側から左側にわたって形成されている足載せ面21aを有し、かつ、タンデムフートレスト18aを有する2人乗りのスクーターである。
【0019】
(車体フレーム9)
図3に示すように、自動二輪車1は、車体フレーム9を備えている。図4は、車体フレームの略図的斜視図である。図4に示すように、車体フレーム9は、ヘッドパイプ9aを備えている。ヘッドパイプ9aには、右側ダウンフレーム部9b1と、左側ダウンフレーム部9b2とが接続されている。右側及び左側ダウンフレーム部9b1,9b2のそれぞれは、ヘッドパイプ9a側から下方に向かって延びている。より詳細には、右側及び左側ダウンフレーム部9b1,9b2のそれぞれは、ヘッドパイプ9aから一旦車幅方向外側に向かって延びた後、途中部において折れ曲がり、その後、下方に向かって延びている。
【0020】
右側及び左側ダウンフレーム部9b1,9b2の下端部のそれぞれには、右側及び左側ロアフレーム部9c1、9c2が接続されている。図3に示すように、右側及び左側ロアフレーム部9c1、9c2のそれぞれは、右側及び左側ダウンフレーム部9b1,9b2の下端部のそれぞれからほぼ水平に、後方に向かって延びている。
【0021】
右側及び左側ロアフレーム部9c1,9c2の後端部のそれぞれには、右側及び左側シートフレーム部9d1,9d2が接続されている。右側及び左側シートフレーム部9d1,9d2のそれぞれは、右側及び左側ロアフレーム部9c1,9c2の後端部のそれぞれから、後方に向かって斜め上方に延びている。
【0022】
図3に示すように、右側及び左側シートフレーム部9d1,9d2の上方には、シート10が設けられている。このシート10は、ライダー7及びパッセンジャー6(図1を参照)が着座できるタンデムシートである。
【0023】
自動二輪車1の走行中において、パッセンジャー6の足は、タンデムフートレスト18a、18bに載置される。タンデムフートレスト18a、18bは、図3に示すように、後述するラジエーター17よりも前方であって、シートフレーム部9d1,9d2の車幅方向外側に配置されている。タンデムフートレスト18a、18bは、図4に示すタンデムフートブラケット19a、19bにより右側及び左側シートフレーム部9d1,9d2に接続されている。詳細には、タンデムフートブラケット19a、19bは、シートフレーム部9d1,9d2から、車幅方向外方に延びている。タンデムフートレスト18a、18bは、タンデムフートブラケット19a、19bの外側端部に、回転可能に取り付けられている。
【0024】
図4に示すヘッドパイプ9aには、図示しないステアリングシャフトが回転可能に挿入されている。ステアリングシャフトは、図1〜図3に示すハンドル12と、図3に示すフロントフォーク13に接続されている。フロントフォーク13の下端部には、前輪11が回転可能に支持されている。
【0025】
図4に示すように、車体フレーム9には、ロアフレーム部9c1,9c2の後端部と、シートフレーム部9d1,9d2とに接続されている左右一対のブラケット9e1,9e2が設けられている。この左右一対のブラケット9e1,9e2には、ピボット軸8が取り付けられている。図3に示すように、ピボット軸8には、ユニットスイング式のエンジン15が揺動可能に取り付けられている。
【0026】
(エンジン15)
次に、主として、図5〜図7を参照しつつエンジン15について説明する。
【0027】
図5に示すように、エンジン15は、クランクシャフト15aを備えている。クランクシャフト15aは、車幅方向に延びている。クランクシャフト15aは、クランクケース15hに収納されている。
【0028】
クランクケース15hの前端部には、シリンダボディ15cが接続されている。シリンダボディ15cの内部には、円筒状のシリンダ15c1が形成されている。このシリンダ15c1には、コンロッド15bを介してクランクシャフト15aに接続されている図示しないピストンが変位可能に収納されている。
【0029】
図6及び図7に示すように、シリンダボディ15cの前端部には、シリンダヘッド15gが接続されている。このシリンダヘッド15gは、図3及び図7に示すように、車幅方向において、右側シートフレーム部9d1と、左側シートフレーム部9d2(図4を参照)との間に位置している。すなわち、エンジン15は、シリンダヘッド15gが車幅方向において、右側及び左側シートフレーム部9d1、9d2間に位置するように、車体フレーム9に揺動可能に懸架されている。
【0030】
図5に示すように、クランクケース15h内において、クランクシャフト15aの左側端部には、変速装置15dが設けられている。この変速装置15dを介して、クランクシャフト15aの回転が出力軸15eに伝達される。その結果、出力軸15eに取り付けられている後輪16が回転する。
【0031】
(ラジエーター17)
図5〜図7に示すように、エンジン15の車幅方向外側には、ラジエーター17が配置されている。具体的には、クランクシャフト15aの車幅方向外側には、ラジエーター17が配置されている。より、具体的には、ラジエーター17は、クランクケース15hの外側において、クランクシャフト15aの右方に配置されている。このラジエーター17は、図6に示すシリンダボディ15cやシリンダヘッド15gなどを冷却するための冷却水などの冷却液を冷却するためのものである。
【0032】
本実施形態では、クランクシャフト15aの右側端部に設けられているラジエーターファン15fが回転することにより、ラジエーター17の車幅方向外側を流れる走行風がラジエーター17側に引き込まれる。これにより、ラジエーター17及びラジエーター17内の冷却液が冷却される。
【0033】
次に、本実施形態におけるラジエーター17の配置について説明する。
【0034】
ラジエーター17は、主として走行風を受ける風受け面としての主面17aを有している。ラジエーター17は、主面17aが車幅方向外側を向くように配置されている。すなわち、主面17aの法線17a1(図5を参照)は、車幅方向外側を向いている。換言すれば、ラジエーター17は、前後方向に沿って配置されている。本実施形態では、主面17aの法線17a1は、車幅方向と平行である。
【0035】
なお、主面17aが車幅方向外側を向くとは、主面17aの法線17a1と車幅方向外側とのなす角度が45°以下であることをいう。
【0036】
図7に示すように、ラジエーター17は、前方視、すなわち、前後方向において、右側シートフレーム部9d1と重なるように、右側シートフレーム部9d1の後方に配置されている。
【0037】
(車体カバー20)
図1及び図2に示すように、自動二輪車1には、車体の一部を覆う車体カバー20が設けられている。車体カバー20は、フロントカウル20aと、図8及び図9に示すインナーパネル20bと、図1及び図9に示すレッグシールド20cと、図1に示すサイドカウル20dとを備えている。フロントカウル20aは、図4に示すヘッドパイプ9aの前方と、車両前部の一部の側方とを覆っている。図8及び図9に示すように、インナーパネル20bは、フロントカウル20aの下部の前方に取り付けられている。一方、図9に示すように、レッグシールド20cは、フロントカウル20aの後方に取り付けられている。
【0038】
図1及び図2に示すように、サイドカウル20dは、シート10の下方に配置されている。このサイドカウル20dにより、エンジン15、ラジエーター17、右側及び左側シートフレーム部9d1,9d2及びタンデムフートブラケット19a、19bの少なくとも一部の前方と、タンデムフートブラケット19a、19b及び右側及び左側シートフレーム部9d1,9d2の車幅方向外方とが覆われている。詳細には、本実施形態では、タンデムフートブラケット19a、19b及び右側及び左側シートフレーム部9d1,9d2の全体が、サイドカウル20dにより実質的に覆われている。
【0039】
また、図3に示すように、本実施形態では、ラジエーター17の主面17aの少なくとも一部の車幅方向外方がサイドカウル20dにより覆われている。具体的には、ラジエーター17の主面17aの前部の一部の車幅方向外方がサイドカウル20dにより覆われている。
【0040】
(足載せ部材21)
主として図3に示すように、車体カバー20のレッグシールド20cとサイドカウル20dとの間の部分には、足載せ部材21が配置されている。この足載せ部材21は、フートボードとも呼ばれる部材である。
【0041】
足載せ部材21は、エンジン15及びラジエーター17の前方に配置されている。足載せ部材21には、足載せ面21aが形成されている。この足載せ面21aは、ライダー7(図1を参照)が自動二輪車1の走行中に足を載せるための面である。図3に示すように、足載せ面21aは、側面視において、ダウンフレーム部9b1,9b2と、シートフレーム部9d1,9d2との間に位置している。図10に示すように、足載せ面21aは、右側及び左側ロアフレーム部9c1,9c2の上方に設けられている。足載せ面21aは、車幅方向の一端から他端に至って延びるように平坦に形成されている。
【0042】
ここで、「足載せ面が平坦である」とは、足載せ面の車幅方向中央にトンネル部を形成するための凸部がないことをいう。「足載せ面が平坦である」とは、ライダーが足載せ面のいずれの部分にも足をのせることができる程度に平坦であることを意味する。すなわち、足載せ面には、例えば滑り止めのためなどの凹凸が形成されていてもよい。
【0043】
なお、本発明において、足載せ面は、車幅方向の一端から他端に至って延びるように形成されている必要は必ずしもない。例えば、車幅方向の中央部にトンネル部が設けられており、そのトンネル部の車幅方向両側であって、シートフレーム部の前方に一対の足載せ面が形成されていてもよい。
【0044】
本実施形態では、図10に示すように、足載せ部材21は、足載せ面21aが表面に形成されている天板部21bと、底壁部21cと、側壁部21d1,21d2とを備えている。これら天板部21bと、底壁部21cと、側壁部21d1,21d2とによって、足載せ部材21の内部に、第2の導風通路21eが区画形成されている。この第2の導風通路21eは、以下に詳細に説明するように、サイドカウル20dの内側に形成されている第1の導風通路20f(図7を参照)に走行風を導くための通路である。
【0045】
図9及び図11に示すように、導風通路21eは、足載せ部材21を車体前後方向に貫通している。図9に示すように、導風通路21eの前端部は、インナーパネル20bとレッグシールド20cとの間の空間20eに接続されている。図8及び図9に示すように、インナーパネル20bには、2つの上部開口20b1と、2つの下部開口20b2とが形成されている。これら上部開口20b1と下部開口20b2とによってインナーパネル20bの後方の空間20eが、インナーパネル20bの前方と連通されている。従って、導風通路21eは、空間20eと、上部開口20b1及び下部開口20b2とを介してインナーパネル20bの前方と連通している。
【0046】
一方、第2の導風通路21eの後端部は、図7及び図11に示すように、エンジン15やラジエーター17が配置されているサイドカウル20dの内側に形成されている第1の導風通路20fに接続されている。この第1の導風通路20fは、詳細には、サイドカウル20dの内側の、右側タンデムフートブラケット19aと平面視において重なる位置に形成されている。そして、第1の導風通路20fの後端部は、ラジエーター17の主面17aよりも前側であって、ラジエーター17の主面17aよりも車幅方向外側に開口している。このため、第2の導風通路21eから第1の導風通路20fに流入した走行風は、ラジエーター17の主面17aに供給される。
【0047】
また、図1及び図11に示すように、ラジエーター17の車幅方向外側には、導風部材30が配置されている。詳細には、図11に示すように、導風部材30は、ラジエーター17の車幅方向外側であって、かつサイドカウル20dの後端部よりも内側に位置している。すなわち、導風部材30は、第1の導風通路20fの後側開口の後方に位置している。このため、第1の導風通路20fからの走行風は、導風部材30によってラジエーター17の主面17aに効率的に導かれる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、走行風は、サイドカウル20dの内側に形成されている第1の導風通路20fを経由してラジエーター17に効率的に供給される。このため、サイドカウル20dの外側を流れる走行風をラジエーター17に供給する必要は必ずしもない。よって、サイドカウル20dのラジエーター17の前方に位置する部分の後端部を車幅方向の内側に位置させる必要は必ずしもない。従って、図3に示すように、前後方向において、右側シートフレーム部9d1をラジエーター17に近接して配置することができる。すなわち、右側シートフレーム部9d1及び左側シートフレーム部9d2をより後方に配置することができる。従って、右側及び左側シートフレーム部9d1,9d2の前方に位置する足載せ面21aの前後方向における長さを長くすることができる。
【0049】
また、サイドカウル20dの車幅方向外側において、ラジエーター17の前方や車幅方向外側にタンデムフートレスト18aを配置しても、第1の導風通路20fを経由したラジエーター17への走行風の供給がほとんど阻害されない。従って、本実施形態においては、タンデムフートレスト18a、18bを、ラジエーター17の前方や車幅方向外側に配置することも可能である。従って、本実施形態では、タンデムフートレスト18a、18bの配置自由度が高い。
【0050】
以上より、本実施形態によれば、ラジエーター17に走行風を効率的に導くことができるのみならず、足載せ面21aの前後方向における寸法を長くでき、かつ、タンデムフートレスト18a、18bの配置自由度を高くすることができる。
【0051】
また、平面視において、タンデムフートブラケット19aと第1の導風通路20fとが重なっているため、例えば、タンデムフートブラケット19aと第1の導風通路20fとを平面視において重ならないように配置する場合よりも自動二輪車1の車幅方向寸法を小さくできる。
【0052】
また、本実施形態では、上述のように、右側シートフレーム部9d1及び左側シートフレーム部9d2をより後方に配置することができる。従って、右側及び左側タンデムフートレスト18a、18bと、右側及び左側シートフレーム部9d1、9d2との間の距離を短くできる。従って、大型の右側及び左側タンデムフートブラケット19a、19bが必ずしも必要ではなく、右側及び左側タンデムフートレスト18a、18bを右側及び左側シートフレーム部9d1、9d2に対して容易に取り付けることができる。
【0053】
特に、本実施形態では、右側及び左側タンデムフートレスト18a、18bが右側及び左側シートフレーム部9d1、9d2の車幅方向外側に配置されている。このため、右側及び左側タンデムフートレスト18a、18bを右側及び左側シートフレーム部9d1、9d2に対して容易に取り付けることができる。
【0054】
また、本実施形態では、第1の導風通路20fの車幅方向外側に設けられているサイドカウル20dは、ラジエーター17の主面17aの少なくとも一部を覆っている。具体的には、サイドカウル20dは、ラジエーター17の主面17aの前部の一部を覆っている。従って、第1の導風通路20fを流れる走行風をより効果的にラジエーター17に供給することができる。従って、エンジン15の冷却性能をより向上することができる。
【0055】
また、第1の導風通路20fへは、足載せ部材21の内部に形成されている第2の導風通路21eを経由して走行風が供給される。このため、第1の導風通路20fへの走行風の供給効率を高めることができる。よって、走行風をさらに効果的にラジエーター17に供給することができる。従って、エンジン15の冷却性能をさらに向上することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 自動二輪車
9 車体フレーム
9a ヘッドパイプ
9b1 右側ダウンフレーム部
9b2 左側ダウンフレーム部
9c1 右側ロアフレーム部
9c2 左側ロアフレーム部
9d1 右側シートフレーム部
9d2 左側シートフレーム部
10 シート
15 エンジン
15a クランクシャフト
15c シリンダボディ
15g シリンダヘッド
15h クランクケース
17 ラジエーター
17a ラジエーターの主面
18a、18b タンデムフートレスト
19a、19b タンデムフートブラケット
20d サイドカウル
20f 第1の導風通路
21 足載せ部材
21a 足載せ面
21e 第2の導風通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプ側から下方に向かって延びるダウンフレーム部と、前記ダウンフレーム部の下端部側から後方に向かって延びるロアフレーム部と、前記ロアフレーム部の後端部側から上方に向かって延びる左右一対のシートフレーム部とを有する車体フレームと、
前記左右一対のシートフレームの上に設けられているシートと、
前記ロアフレーム部の上方であって、前後方向において、前記ダウンフレーム部と前記シートフレーム部との間に位置している足載せ面を有する足載せ部材と、
車幅方向に延びるクランクシャフトと、前記クランクシャフトを収納するクランクケースと、前記クランクケースに接続されているシリンダボディと、前記シリンダボディの先端に接続されており、車幅方向において、前記左右一対のシートフレーム部の間に位置しているシリンダヘッドとを有し、前記車体フレームに揺動可能に支持されているユニットスイング式のエンジンと、
前方視において前記右側及び左側のシートフレーム部のうちの一方と重なるように、前記右側及び左側のシートフレーム部のうちの一方の後方であって前記クランクシャフトの車幅方向外側に配置されており、車幅方向外側を向く主面を有するラジエーターと、
前記ラジエーターよりも前方であって、前記右側及び左側のシートフレーム部のうちの一方の車幅方向外側に配置されているタンデムフートレストと、
前記右側及び左側のシートフレーム部のうちの一方から車幅方向外側に延びており、前記タンデムフートレストと前記車体フレームとを接続するタンデムフートブラケットと、
前記シートの下方において、前記エンジン、前記ラジエーター、前記シートフレーム部及び前記タンデムフートブラケットの少なくとも一部の前方と、前記タンデムフートブラケット及び前記シートフレーム部の車幅方向外側とを覆うカウルと、
を備え、
前記カウルの内側には、前記ラジエーターに走行風を導く第1の導風通路が、平面視において、前記タンデムフートブラケットと重なるように形成されている自動二輪車。
【請求項2】
前記カウルは、前記ラジエーターの主面の少なくとも一部の車幅方向外側を覆っている、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記足載せ部材の内部には、前記第1の導風通路に走行風を導くための第2の導風通路が形成されている、請求項1に記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−245794(P2012−245794A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220838(P2009−220838)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)