自動変速機の油圧制御装置
【課題】 飛び越し変速が可能で断線フェール対策を両立した自動変速機の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】 少なくとも2個のノーマルハイタイプ(以下、NHタイプ)の電磁弁を含み、前記前進n段の変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置される電磁弁と、オンオフの組み合わせにより各シフトパターンに対応する油路を構成する複数のシフトバルブ(以下、SV)と、を有し、SVのオンオフ状態の組み合わせを、前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンと、前記2個のNHタイプの電磁弁を使用する第1の前進変速段(全断線時用固定段)と、前記NHタイプの電磁弁以外の電磁弁を使用する第2の前進変速段(一次ON故障時用固定段)と、の少なくとも2以上の前進変速段の固定シフトパターンにそれぞれ割り当てる。
【解決手段】 少なくとも2個のノーマルハイタイプ(以下、NHタイプ)の電磁弁を含み、前記前進n段の変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置される電磁弁と、オンオフの組み合わせにより各シフトパターンに対応する油路を構成する複数のシフトバルブ(以下、SV)と、を有し、SVのオンオフ状態の組み合わせを、前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンと、前記2個のNHタイプの電磁弁を使用する第1の前進変速段(全断線時用固定段)と、前記NHタイプの電磁弁以外の電磁弁を使用する第2の前進変速段(一次ON故障時用固定段)と、の少なくとも2以上の前進変速段の固定シフトパターンにそれぞれ割り当てる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧源からの油圧を比例電磁弁にて直接制御する方式の自動変速機の油圧制御装置に関し、特にその断線フェールに対する耐性ないし信頼性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
特公平5−63664号公報には、摩擦係合要素の数と同数の電磁弁を用意して、前進6段を選択的に設定可能とした変速機制御装置が開示されている。同公報記載の変速機制御装置は、摩擦係合要素C1〜C5にそれぞれ1つ、計5つの電磁弁(リニアソレノイド等)と、1つのON/OFFソレノイドと、2つのシフトバルブと、を備えて、断線フェール(電気的中断発生)時に、現在選択されている変速段に応じ、変速段の自動切り換え(1st→3rd、2nd〜5th→4th、6th→5th)ができるよう構成されている。
【0003】
また、特許2925505号公報、特許2925506号公報には、5つの摩擦係合要素に対し、2つの電磁弁と3つのシフトバルブ及びシフトバルブを制御する3つのON/OFFソレノイドで前進6段を選択的に設定可能とした変速機制御装置が開示されている。この変速機制御装置は、反力要素となる摩擦係合要素へのライン圧の導入と2つの電磁弁による摩擦係合要素の交換により変速を行うとともに、断線フェール時(電気的中断発生)に対しては、所定の変速段(1st、6thを除く)又は該変速段より高い変速段に維持するよう構成されている。
【0004】
上記特許2925505号公報、特許2925506号公報の構成では、3rd⇔5th、2nd⇔4th⇔6thのような飛び越し変速(以下、スキップシフトという)ができないため、例えば、3rd⇔5thでは3rd⇔4th⇔5thと1段ずつ変速しなければならず変速過多や応答性劣化を感じさせてしまう。そこで、米国特許第6585617号では、上記特許2925505号公報、特許2925506号公報に対し、リニアソレノイドを2個追加(計4個)、シフトバルブを1本低減(計2本)、ON/OFFソレノイドを2個低減(計1個)とし、更に、油圧スイッチ(以下油圧SWという)を1個追加することで、2nd〜6th間のスキップシフトを実現している。
【特許文献1】特公平5−63664号公報
【特許文献2】特許2925505号公報
【特許文献3】特許2925506号公報
【特許文献4】米国特許第6585617号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図54は、特許文献4の油圧回路図の変速制御に関係する部分をブロック図にしたものであり、図55は、同文献のソレノイドパターンにおける各シフトバルブの動き、制御対象のリニアソレノイド(カッコ内はリニアソレノイドのタイプを表し、NHは断線時に係合状態を保持するノーマルハイタイプ、NLは断線時に解放状態に遷移するノーマルロータイプを指す)、断線時に保持される変速段等をまとめたものである。R⇔N⇔Dのガレージ変速では、ON/OFFソレノイド1(以下、S1;特許文献1の符号66に対応)がシフトバルブ1(以下、SV1;特許文献1の符号32に対応)を切換え、リニアソレノイド1(以下、SL1)により、シフトバルブ2(以下、SV2;特許文献1の符号100に対応)を切換えられる構成となっている。また、S1をオン(○)にしSV1をオン側に動作させると、ライン圧(PL)がリニアソレノイド2(以下、SL2)に供給され、SL2を立ち上げることが可能となっている。
【0006】
例えば、図54によれば、Nレンジにおいて、C1クラッチを開放できるレベルの低圧でコントロールバルブからライン圧を減圧した油圧(図54のPL減圧)が油圧スイッチ(以下、油圧SW)をONにするとともにSV2を切換える状態になっている。Rレンジは(SV1の固着という特別な場合を除く)、C3ブレーキとB2(C5)ブレーキの係合、即ち、リニアソレノイド3(以下、SL3)の係合制御、SL2の係合制御により達成される。従って、N→R変速は、Rレンジの選択を検知した後に、先行してSL2を係合状態にしB2(C5)ブレーキを締結させ、R圧がSL3に供給されているのでSL3をゆるやかに係合制御することによって、C3ブレーキ締結によるガレージショックを低減させて行うことができる(図55のRの無関係のソレノイドパターン参照)。
【0007】
一方N→D変速は、上記同様にB2(C5)ブレーキを先行して締結させた後、D圧がSL1に供給されているのでSL1を緩やかに係合制御してC1クラッチの締結によるガレージショックを低減させて、変速段を1stとすることで行われる。そしてさらに、D圧が供給されているリニアソレノイド4(以下、SL4)を係合制御し、B1(C4)ブレーキを係合させるとともに、SL2を解放制御してB2(C5)ブレーキを解放することによって変速段が2ndとなる(図55のDの1−2のソレノイドパターン参照)。
【0008】
次に、図54のS1をON(○)からOFF(×)にすると、ライン圧(PL圧)がSV1、SV2を通って油圧SWをONにし、SV2に設けられた段差によってSV2をON(○)状態に保持するとともに、SL3にライン圧(PL圧)の供給が行われる。また、SV1がOFF(×)状態となることにより、B2(C5)ブレーキと連通状態にあったSL2がC2クラッチと連通され、C1クラッチ、C2クラッチ、C3ブレーキ、B1(C4)ブレーキをそれぞれ独立して制御し、2nd〜6thまで自由に変速が可能となる。
【0009】
一方、特許文献4の構成によると、全断線フェールの発生時は、S1とSV1がそれぞれOFF(×)状態となるため(図55のDの断線のソレノイドパターン参照)、NHタイプのSL2、SL3が立ち上がり、C1クラッチ及びC3ブレーキが係合状態となり、3rdの変速段が構成される。但し、S1がOFF(×)、SV1がON(○)状態の多重変速状態でSL2が係合状態にある場合は、PL圧がSV2をON側にラッチするため、SL2はC2に連通されたままとなり、C2クラッチ及びC3ブレーキが係合されて5thの変速段が構成される。従って、全断線フェールが発生しても、SL2を係合制御しC2クラッチが使用されている4th〜6thの高速時は5thを保持して減速ショックを回避し、再発進時は3rdで「リンプホーム」できるような構成となっている。なお、残りのS1がON(○)、SV1がOFF(×)という場合は、全断線フェールの発生時、B2(C5)ブレーキのみが締結されるN状態となる。
【0010】
上記のとおり、特許文献4の構成では、特許文献1ないし3ではなしえなかった断線フェールとスキップシフトの両立が図られていることになるが、以下のような問題点が残されている。まず第1の問題点は、特許文献2、3に示した簡略構成に対してコスト上のメリットが喪われているという点である。例えば、特許文献2、3に示した簡略構成に比較して、スキップシフトを実現させるためにリニアソレノイドを2個追加するのは構成上仕方ないとしても、追加の油圧スイッチを1個(計5個)必要としている。これに対して、特許文献2、3に示した簡略構成と比較して、ON/OFFソレノイドは3個から1個へ、シフトバルブは2個から1個へと部品点数の低減が図られているが、油圧SWの1増は油圧SWが高価であることもあってこれらの低減分を相殺してしまうため、結局リニアソレノイド2個増加分のコストアップとなってしまっている。
【0011】
また、電気的な断線フェールに関しては、特許文献2、3の構成より向上しているといえるが、あくまで断線時にノーマルロータイプのリニアソレノイドがOFFになることを前提にしているという問題点もある。ここで、ノーマルロータイプのリニアソレノイドがON故障した場合を考える。例えば、C2クラッチ(SL2)とB1(C4)ブレーキ(SL4)を締結した6th走行状態でSL4(NL)が短絡もしくは異物等にてON故障が発生し、変速点にしたがって6→5(C2クラッチとC3ブレーキ締結)、6→4(C1クラッチとC2クラッチ締結)などのダウンシフトが行われると、インターロックが生じるので、油圧SW等にて検出し、6thに戻すことになる。
【0012】
上記状態で走行をする間に2次故障として、例えばSL3(NH)が断線故障を発生したとすると、仮にSL2をON制御しC2クラッチ圧を解放できたとしても、C3ブレーキ(SL3)とB1(C4)ブレーキ(SL4)との組みにより変速段にはならずプラネタリーロックとなってしまう。
【0013】
そこで、シフトパターンを変更して対処することが考えられるが、全断線モード(S1とSV1がそれぞれOFF(×)状態)でも同じ現象となるので、S1がON(○)状態かつSVがOFF(×)状態、あるいは、S1とSV1が共にON(○)状態にする必要がある。そのためには、S1をOFF(×)状態からON(○)状態にすることになるが、その場合、C2クラッチ(SL2)とB1(C4)ブレーキ(SL4)を締結した6thの状態のままでは出力軸ロックとなりかねないので当該変更の前にSL2をON制御しSL2出力圧をOFFにする必要がある。ところが、SL2出力圧をOFFにすると、SL2出力圧にてよってラッチしていたSV2はバネ力にてOFF状態となるため、C4(B1)ブレーキのみを締結したN状態となり駆動力が消失してしまう。
【0014】
以上2次故障でSL3(NH)がOFF故障した場合について述べたが、2次故障でSL2(NH)がOFF故障となった場合も同様であり、特許文献4の構成では強制的(自動的)にN状態となってしまう。
【0015】
更には、上記SL4のON故障が生じた状態で、ユーザによるイグニッションのOFF操作、振動によるケーブル脱落、過電流によるヒューズ飛び等によって全断線となると、S1とSV1がそれぞれOFF(×)状態となるため(図55のDの断線のソレノイドパターン参照)、C1クラッチ(SL2−NH)、C3ブレーキ(SL3−NH)、C4(B1)ブレーキ(SL4のON故障)の締結によるインターロックが発生し、上述した断線フェールが正しく動作しなくなるものと考えられる。全断線である以上、その対応として、シフトパターン変更もリニヤの出力低下もできず、車両が急激に減速することになる。
【0016】
更には、3次故障以上となると、図55に表されたとおり、リニアソレノイドを2個連通し固定段モードにする、あるいは、リニアソレノイド1個のみでNモードにするパターンは存在しないため、必ずインターロックが発生し、AT内部の摩擦材の滑りにて対応するという手段は残っているものの、油圧制御システムとしての対応手段がなくなってしまうと考えられる。
【0017】
要するに、従来技術には、制限された個数のリニアソレノイドを用いてスキップシフトと断線フェール対策を両立するものがあるが、コスト上の課題と、2次、3次フェールに対する耐性向上という課題が残されているといえる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の視点によれば、係合・非係合の組み合わせにより少なくとも前進n段の変速段を構成可能な複数の摩擦係合要素と、電磁弁を介した油圧制御により前記各摩擦係合要素の係合・非係合を制御する制御部とを有する自動変速機の油圧制御装置であって、 少なくとも2個のノーマルハイタイプの電磁弁を含み、前記前進n段の変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置される電磁弁と、オンオフの組み合わせにより前記前進n段の各変速段に対応したシフトパターンに応じて、前記所定の電磁弁から前記所定の摩擦係合要素までの油路を構成する複数のシフトバルブと、を有し、前記シフトバルブのオンオフ状態の特定の組み合わせを、前記自動変速モードに対応した前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンに割り当てるとともに、前記シフトバルブのオンオフ状態のその他の組み合わせの内の一つの組み合わせを、前記2個のノーマルハイタイプの電磁弁を使用する第1の前進変速段(全断線時用固定段)と、前記その他の組み合わせの内の他の組み合わせを前記ノーマルハイタイプ以外の電磁弁を使用する第2の前進変速段(一次ON故障時用固定段)と、の少なくとも2以上の前進変速段の固定シフトパターンにそれぞれ割り当て、前記シフトバルブの動作によって前記固定シフトパターンを選択し車両を走行可能としたこと、を特徴とする自動変速機の油圧制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コスト上も有利であり、自動変速シフトパターンを用いたスキップシフト機能が実現されるとともに、前記2つの固定シフトパターンのいずれかを選択して断線フェールに対する信頼性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
続いて、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図2は、シフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。本実施形態に係る自動変速機の油圧制御装置は、ECU(Electronic Control Unit;図示せず)と、3つのシフトバルブ(以下、それぞれSV1〜SV3という)と、これらシフトバルブをON/OFFする3つのソレノイド(以下、それぞれS1〜S3という)とを有し、ソレノイドS1〜S3の操作により、23の8のシフトパターンを構成可能となっている(図2のレンジD参照)。そして、前記8つのシフトパターンのうち2つを、スキップシフトができる多重変速パターン(第1の自動変速パターン)と、低速段変速ができる低速段変速パターン(第2の自動変速パターン)に割り当て、残りの6つのシフトパターンを固定段に割り当てた構成としている。
【0021】
また、本実施形態は、5つの摩擦係合要素によって6変速段を構成可能となっており、低速段変速パターン(第2の自動変速パターン)では、1st⇔2nd変速が可能なように4つのリニアソレノイドのうち3つ(SL1、SL2、SL4)を制御可能な状態にし(図2のレンジD 1−2参照)、スキップシフトができるパターン(第1の自動変速パターン)では、2nd〜6thの間の変速が可能なように4つのリニアソレノイドすべて(SL1〜SL4)を制御可能な状態とする(図2のレンジD 2〜6参照)。また、1st、2nd、3rd、4th、5th、6thの固定段のシフトパターンでは、当該固定段を構成すべくリニアソレノイド4つのうちの2つが自動的に係合制御される構成としている(図2のレンジD 1、2、3、4、5、6参照)。
【0022】
また、図1、図2を参照すると、C2クラッチとB2ブレーキで共用するSL2の出力油路のみSV2にて切換えるが、その他のリニアソレノイド(SL1、SL3、SL4)はそれぞれC1クラッチ、C3クラッチ、B1ブレーキの制御用に専属させている。
【0023】
そして、上記4つのリニアソレノイドのうち2つ(SL2とSL1又はSL3のいずれか)をノーマルハイタイプ(以下、NH)とし、残りをノーマルロータイプ(以下、NL)とすることによって、2つのNHのリニアソレノイドを使用する全断線時に使用する固定段(5th)と、少なくとも1つのNHのリニアソレノイドを使用するNLのリニアソレノイドのON故障時に使用する固定段を、シフトバルブの選択により構成可能とすることで、一次故障としての全断線による締結不能や、ノーマルロータイプのリニアソレノイドのON故障によるインターロックを回避することが可能となる。
【0024】
図3は、C1クラッチ専用のリニアソレノイドSL1をNLとし、C2クラッチとB2ブレーキで共用するリニアソレノイドSL2をNHとし、C3クラッチ専用のリニアソレノイドSL3をNHとし、B1ブレーキ専用のリニアソレノイドSL4をNLとした場合の本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。Dレンジの全断線フェールでは、少なくとも5thで走行可能であり、NLのSL1にON故障が生じても固定段シフトパターンを選択することによって、他のリニアソレノイドの2次故障に対処することが可能となっている。
【0025】
また、図1を参照すれば明らかなように、本実施形態では、油路本数の増加が最小限に抑えられており、また、各摩擦係合要素と電磁弁(リニアソレノイド)間の油路長を短縮するとともに、AT本体の各摩擦係合要素の配置に適った電磁弁の配置が実現されている。
【0026】
なお、図3の例では、Dレンジ(前進)では5thでしか走行できないため、高速走行時には問題ないが、再発進が困難となる。これに対して、すべてのリニアソレノイドをNHに変更し、固定シフトパターンの選択によって走行可能とすることも可能である。
【0027】
しかしながら、上記のようにすべてのリニアソレノイドをNHに変更した場合、変速モードでは1次故障にてインターロックが生じるため、インターロックを回避するためのフェールバルブ等を新たに配設することになり、部品点数・油路構成が増加してしまう。また、シフトバルブにてリニアソレノイドの出力油路を遮断して、目的とする摩擦係合要素(C1クラッチ、B1ブレーキ)にライン圧を供給するよう油路を構成することも考えられるが、断線フェールのためにシフトバルブの上流側にNLタイプのSL1とSL4を配設することも、シフトバルブの下流にすべてのリニアソレノイドを配置した図1の油路構成の利点(簡略化)が失われてしまう。
【0028】
[実施例1]
そこで、上記実施形態に対して、図4の(a)に例示する直圧タイプのリニアソレノイド、同図(b)、(c)に例示するコントロールバルブ付きリニアソレノイドに共通して適用可能であり、電磁弁の供給ポート(図4のIN)に油圧が供給されている状態で、排出ポート(図4のEX)からライン圧を押し込むことでリニアソレノイドのタイプ(NH/NL)に関係なく、摩擦係合要素を係合状態にできるようにした実施例1について説明する。
【0029】
図5は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図6は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。本実施例では、B2ブレーキを、小さいピストン油室を持つB2Sブレーキと、大きいピストン油室を持つB2Lブレーキとに2分割している点で異なっている他は図3と同様であり、C1クラッチ専用のリニアソレノイドSL1をNLとし、C2クラッチとB2Lブレーキで共用するリニアソレノイドSL2をNHとし、C3クラッチ専用のリニアソレノイドSL3をNHとし、B1ブレーキ専用のリニアソレノイドSL4をNLとしている。
【0030】
また、図6に示されたとおり、S1のオン時に、スキップシフトができる多重変速パターン(第1の自動変速パターン)と、4th、5th、6thの固定段のシフトパターンが選択され、S1のオフ時に、その他の低速段が構成されるようになっており、更に後記するように、C2クラッチへの供給圧でSV1をオン側にラッチするよう構成しているため、S1の故障時に、高速段から低速段への急減速が回避されるようになっている。
【0031】
また、本実施例では、SL1(NL)の排出ポートにライン圧を供給すべく、ON/OFFソレノイドS1、S3が共にOFF(×)状態の場合に限って、前進圧(以下、D圧)をリニアソレノイドSL1の排出ポートに連結し、ON/OFFソレノイドS2の操作にて、固定シフトパターンの1stと3rdを選択可能となっている。なお、以上のように、固定モードの1stと3rdに限定しているのは、油路本数の増加を抑えるためのものであり、スペースの余裕があれば、後述する他の実施例のように、全断線時にすべての固定段において走行可能にすることも可能である。
【0032】
図5を参照してより具体的に説明すると、本実施例の油路構成では、図1の油路構成に対し、前進圧(以下、D圧)をSV2からSV3の切替ポートへと導く油路101と、前記D圧をSV3からSL1の排出ポートに導く油路102が追加されている。また、油路102には、アキュムレータ(N−D ACC)ACC1が配設されており、図示しないオリフィスにてSL1側へのD圧の供給を所定時間遅らせることで、ライン圧の直接導入による変速ショックを来たすことなくN→D変速を行うことが可能となっている。従って、NレンジからDレンジとしS1、S2、S3をそれぞれOFF、ON、OFF(×○×)の状態とすることで、ガレージ変速が成立し、更に、S1、S2、S3をそれぞれOFF、ON、ON(×○○)の状態とすれば、C1クラッチ圧をSL1の出力圧にて制御することによる自動変速も可能となる。
【0033】
また、1st固定シフトパターンにおいて、C1クラッチにライン圧が直接供給される構成となっているということは、ストール発進時等にリニアソレノイドの出力最大圧を超える圧力が必要な場合に、ライン圧を導くためのロックバルブやゲイン切換バルブを追加する必要がないことを意味している。従って、油路構成はシンプルとなり、コストの低減も可能である。
【0034】
また、本実施例の油路構成では、シャトル弁を追加することに代えて、図5の後進圧(以下、R圧)をSV1の切換回路に導く油路111と、更に、前記R圧をSV2に導き強制的にSV2をON(○)状態にする油路112と、が設けられ、SV1がOFF(×)状態の場合であってもR圧が入っていれば、SV2をON(○)状態にし、SL3によって後進段で使用されるC3クラッチを係合できる構成となっている。
【0035】
更に、本実施例の油路構成は、SV1の切換回路から中継されたD圧をSV2からSV3の切換回路に導く油路121と、前記SV3の切換回路から、B2Sブレーキと接続されたシャトル弁へと導く油路122とが設けられており、SV1がOFF(×)状態、SV2がON(○)状態、SV3がOFF(×)状態の場合のときに、D圧がB2Sブレーキに供給され、大きい面積のB2LブレーキにはSL2が連結される。この構成によれば、多段化によるトルク容量の増大とコスト・スペース低減のため1−2ワンウェイクラッチ(O.W.C)を廃止することが可能となる。即ち、NHのSL2がOFF故障した場合にも、B2Sブレーキによる1st発進と、コースト制御を実行することが可能となっている。
【0036】
また、図5では、B2のピストン面積を最適に分割した場合を想定してB2SブレーキにD圧を直接連結したが、断面構成にて最適にできない場合や、車両やエンジンによってコースト制御をきめ細かく設定したい場合などは、図7に示したようにB2Sブレーキとシャトル弁との間にブレーキコントロールバルブ(減圧弁)131を配設することもできる。この構成によれば、後退段のシフトパターンが選択された時はR圧がブレーキコントロールバルブ131のスプリング室に入ることによってブレーキコントロールバルブ131のスプールが同図左側に移動し、R圧がシャトル弁を経由して、ブレーキコントロールバルブ131の供給ポートから出力ポートに連通して、R圧をB2Sブレーキに導くようにし、また1st固定シフトパターンが選択された時には、SV1、SV2、SV3を経由したD圧(油路122の出力)をシャトル弁経由でブレーキコントロールバルブ131の供給ポートに導き、スロットル圧をブレーキコントロールバルブ131のバネ力を助長するようにすれば、スロットル圧に比例して、D圧を減圧してB2Sブレーキを制御する構成が得られる。
【0037】
続いて、本実施例における各シフトパターンが選択された場合の動作を個別に説明する。
[Dレンジ1−2変速モード]
Dレンジ1−2変速モードでは、図8に示すように、マニュアルバルブ(図示せず)からのD圧は常時SL2の供給ポートに連結されている。また、S3はON(○)状態であるため、前記D圧は、SV3の下から2番目の切換回路を経由してSL4の供給ポートに供給される。また、S2がON(○)状態であるため、D圧は同様に、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートに供給される。
【0038】
一方、SV3の下から3番目の切換回路を経由してSV1にD圧を導く油路があるが、SV1がOFF(×)状態であるため遮断され、SL3の供給ポートにD圧は供給されない。またSV1の上から1番目の切換回路を経由するD圧もSV2及びSV3に遮断され、B2SやSL1の排出ポートに供給されることはない。SL2の出力油路はSV1の下から1番目の切換回路を経由し、SV2の下から1番目の切換回路を経過してシャトル弁(チェックボール弁)を経由してB2Lに到達する。
【0039】
上記にてC1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)、B2Lブレーキ(SL2)が制御可能となり、C1クラッチ(SL1)とB2Lブレーキ(SL2)を用いた1st⇔C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)を用いた2nd間の自動変速が可能な、低速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。
【0040】
[Dレンジ2〜6変速モード]
Dレンジ2〜6変速モードでは、図9に示すように、S1がON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、S3がON(○)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路を経由して、SL4の供給ポートにD圧が供給される。また、S2がON(○)状態であるため、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートにD圧が供給され、SV3の下から3番目の切換回路、SV1の下から3番目の切換回路、SV2の下から2番目の切換回路を経由して、SL3の供給ポートにD圧が供給される。
【0041】
一方、D圧をSV1の上から1番目の切換回路に導く油路があるが、これはSV1がON(○)状態であるため遮断され、B2Sブレーキ及びSL1の排出ポートには到達しない。
【0042】
上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)、B1ブレーキ(SL4)が制御可能となり、下記変速段間のスキップシフトが可能な中高速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。また、SL2とSL3はNHのため、リニヤ全断線時は自動的に5thが構成される。
2nd C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)
3rd C1クラッチ(SL1)、C3クラッチ(SL3)
4th C1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)
5th C2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)
6th C2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)
【0043】
[Dレンジ1st固定モード]
Dレンジ1st固定モードでは、図10に示すように、S1がOFF(×)状態、S2がON(○)状態、S3がOFF(×)状態であるため、SL2の出力油圧はSV1の下から1番目の切換回路、SV2の下から1番目の切換回路、シャトル弁を経由し、B2Lに供給される。また、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートにD圧が供給されるとともに、SV1の上から1番目の切換回路、SV3の上から1番目の切換回路も経由してSL1の排出ポートとアキュムレータ(N−D ACC)ACC1にD圧が供給され、結果として、C1クラッチにD圧を供給したことになる。また、SV1の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の上から3番目の切換回路、SV3の下から1番目の切換回路、シャトル弁を経由してB2Sにも到達する。
【0044】
一方、S3がOFF(×)状態であるため、D圧は、SV3の下から2番目の切換回路にて遮断され、SL4の供給ポートには到達しない。同様にSV3の上から2番目の切換回路を経由するD圧も、SV2の下から3番目の切換回路にて遮断されて、SL3の供給ポートには到達しない。
【0045】
上記にてC1クラッチ(D圧)、B2Sブレーキ(D圧)、B2Lブレーキ(SL2)が係合状態となり1stが構成される。ここで、B2Lブレーキを駆動するSL2がOFF故障しても、B2Sブレーキを利用したコースト制御は可能であり、また、ストール発進は無理としても1st走行は可能である。
【0046】
[Dレンジ2nd固定モード]
Dレンジ2nd固定モードでは、図11に示すように、S1、S2がともにOFF(×)状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の下から1番目の切換回路は通過するものの、SV2の下から1番目の切換回路で遮断され、B2LブレーキにもC2クラッチにも到達しない。S3はON(○)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路を経由してSL4の供給ポートにD圧が供給される。同様に、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から2番目の切換回路を経由して、SL1の供給ポートにもD圧が供給される。
【0047】
一方、SV3の下から3番目の切換回路を経由するD圧は、SV1の下から3番目の切換回路に遮断されるので、SL3の供給ポートにD圧を供給することはない。同様に、前記SV1の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SV3の上から1番目の切換回路にも到達するが、そこで遮断されてB2SブレーキやSL1の排出ポートに供給されることはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり2ndが構成される。
【0048】
[Dレンジ3rd固定モード]
Dレンジ3rd固定モードでは、図12に示すように、S1、S2、S3が全部OFF(×)の全断線状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の下から1番目の切換回路は通過するものの、SV2の下から1番目の切換回路で遮断され、B2LブレーキにもC2クラッチにも到達しない。また、SV3の上から2番目の切換回路、SV2の下から3番目の切換回路を経由して、SL3の供給ポートにD圧が供給される。また、SV1の上から1番目の切換回路を経由するD圧は、SV2の上から3番目の切換回路に遮断され、B2Sブレーキには到達しないが、SV2の上から2番目の切換回路を経由するものは、SL1の供給ポートに到達し、SV3の上から1番目の切換回路を経由するものは、SL1の排出ポートとアキュムレータ(N−D ACC)ACC1にも到達する。結果として、C1クラッチにD圧を供給することになる。
【0049】
また、上記状態において、SV3の下から2番目の切換回路によって、SL4の供給ポートへのD圧は遮断されている。上記にてC1クラッチ(D圧)、C3クラッチ(SL3)が係合状態となり3rdが構成され、全リニヤ断線だけでなくON/OFFソレノイドを含めた全断線でも走行ができる。
【0050】
[Dレンジ4th固定モード]
Dレンジ4th固定モードでは、図13に示すように、S1、S2がともにON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、SV2の上から1番目の切換回路を経由して、SL1の供給ポートにD圧が供給される。一方、SV2の上から1番目の切換回路の手前で分岐するD圧は、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL1の排出ポート及びB2Sブレーキに供給されることはない。
【0051】
また、S3がOFF(×)状態であるため、D圧は、SV3の下から2番目の切換回路に遮断されて、SL4の供給ポートにも到達しない。またSV3の上から2番目の切換回路を経由するD圧もSV2の下から3番目の切換回路に遮断されて、SL3の供給ポートに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)が係合状態となり4thが構成される。
【0052】
[Dレンジ5th固定モード]
Dレンジ5th固定モードでは、図14に示すように、S1がON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。一方、S2、S3がともにOFF(×)状態であるため、SV3の上から2番目の切換回路、SV2の下から3番目の切換回路を経由したD圧が、SL3の供給ポートに供給される。
【0053】
また、D圧は、それぞれSV3の下から2番目の切換回路、SV2の上から1番目の切換回路、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL4の供給ポート、SL1の供給ポート、SL1の排出ポート、B2Sブレーキにも到達しない。上記にてC2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)が係合状態となり5thが構成され、全リニヤ断線となっても走行が可能な状態となる。
【0054】
また、C2クラッチが係合している4th以上(後記する6thを含む)で全ソレノイド断線の場合、C2圧(SL2)自身がSV1をON(○)側にラッチしているため、S1がON状態(○)からOFF状態(×)になっても、SV1は、切換えられず保持され、5th走行が可能である。即ち、本実施例の構成によれば、2〜6変速モードで4th以上にて走行している状態において全断線故障が生じた場合は、3rd固定モードにならず5th固定モードとなり、急減速が生じないよう構成されているのである。また、停車後、DレンジからNレンジ、Pレンジ、Rレンジにする操作、イグニッションのOFF操作等により、C2クラッチ圧が下げられた場合には、上記SV1のラッチは解除されるため、再発進では3rd発進が可能であり、更に、S2をオン状態(○)にできる場合には、1st発進が可能な構成となっている。
【0055】
[Dレンジ6th固定モード]
Dレンジ6th固定モードでは、図15に示すように、S1、S3がともにON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、SV3の下から2番目の切換回路を経由して、D圧がSL4の供給ポートに供給される。
【0056】
一方、S2がOFF(×)状態であるため、SV3の下から3番目の切換回路、SV1の下から3番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の下から2番目の切換回路によって遮断され、SL3の供給ポートに到達することはない。また、D圧は、それぞれSV2の上から1番目の切換回路、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL1の供給ポート、SL1の排出ポート、B2Sブレーキにも到達しない。上記にてC2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり6thが構成される。
【0057】
[Rレンジ]
Rレンジでは、S1がOFF(×)状態、S2がON(○)状態のとき、後進走行可能なシフトパターンとなる。R圧の切り替えに関与していないためS3は不定であるが、R⇔N⇔Dのシフトパターンの整合性を考えると、Dレンジ1−2変速モードのシフトパターンと合わせることが好ましい。例えば、S1、S2、S3がそれぞれOFF、ON、ON(×○○)状態のときにDレンジ1−2変速モードとなるようにしたならば、Rレンジも同様に、S1、S2、S3がOFF、ON、ON(×○○)状態のときに後進走行可能となるよう設定する。同様に、S1、S2、S3がそれぞれOFF、ON、OFF(×○×)状態のときにDレンジ1−2変速モードとなるようにしたならば、Rレンジも同様に、S1、S2、S3がOFF、ON、OFF(×○×)状態のときに後進走行可能となるよう設定する。
【0058】
いずれにしてもRレンジが選択されると、図16に示すように、マニュアルバルブ(図示せず)からのR圧は、シャトル弁(チェックボール弁)を経由し、B2SブレーキおよびB2Lブレーキに供給される。また、S1がOFF(×)状態、S2がON(○)状態であるため、SV1の上から2番目の切換回路、SV2の下から2番目の切換回路を経由したR圧が、SL3の供給ポートに供給される。
【0059】
図17は、S1、S2がともにOFF(×)状態になった場合の状態を表した図である。図17に示された通り、本実施例の構成では、R圧がSV2の一端に導き、SV2をON(○)側に強制的に移動させる構成となっているため、全断線時にも後進走行が可能になっている。
【0060】
また、本実施例によれば、Rレンジにおける逆転禁止制御の信頼性が向上されている。図18は、S1、S2がON、OFF(○×)状態ないしON、ON(○○)状態でR圧が掛かっている場合の状態を表した図である。一般の逆転禁止制御では、車速が所定速度以上ではR走行モードに移行しないように、SL3をONにしC3クラッチを解放状態にすることでRevインヒビターを実施している。本実施例によれば、SL3がON故障した場合にも、S1がON(○)状態であれば確実に、SV1の上から2番目の切換回路にてSL3の供給ポートへのR圧の供給を遮断できるようになっている。従って、S1、S2、S3がOFF、ON、OFF(×○×)状態(1st)、S1、S2、S3がOFF、ON、ON(×○○)状態(1−2自動変速)、S1、S2、S3がON、ON、ON(○○○)状態(2〜6自動変速)からRレンジに切り替えられた時にRevインヒビターを確実に実行できる構成となっている。
【0061】
また、本実施例においては、C1クラッチと、B1ブレーキへの油路にそれぞれ油圧スイッチ(油圧SW)が配設されている。上述したDレンジ1−2変速モードで、断線等によるSL2のON故障が生じた場合は、C1クラッチ(SL1)及びB2ブレーキ(SL2)を係合した1stを構成中であれば1stを維持するようにすればよいが、2ndを構成中には、C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)及びB2ブレーキ(SL2)の係合によりインターロックが生ずる。この場合は、上記油圧SWにて当該状態を検知し、1stに戻すことが可能となる。
【0062】
同様に、上述したDレンジ1−2変速モードで、断線等によるSL4のON故障が生じた場合にも同様の現象が生じうるが、この場合も、上記油圧SWにて当該状態を検知し、2ndに維持・戻すことが可能となる。
【0063】
また、本実施例においては、一つ目のON/OFFのソレノイドの1次故障により、Dレンジ固定モードとなった状態から、2つ目のON/OFFのソレノイドの故障対策も措置されている。S1、S2、S3のいずれかが断線ないしON故障したとしても、3つ目のON/OFFのソレノイドを操作することによって、変速段を保持ないし急減速を回避可能となっている。更に、3次故障に至っては、構成中の変速段を維持するか、Nレンジとなるかで、急減速とならない構成となっている。これは、シフトパターンを固定モードにさせることができれば1、2次以上の高次の故障にも対応できることを意味しており、他社のフェールバルブを用いた構成に比べて、フェールバルブ自体の故障によるフェール不成立がない点だけとっても優位である。
【0064】
[実施例2]
続いて、上記第1の実施例に対して油路を追加して下記(1)〜(3)の機能を実現した本発明の第2の実施例について説明する。以下、下記機能すべてを備えたMAX仕様ともいうべき例を挙げて説明するが、(1)〜(3)の機能は、上記第1の実施例に対するオプションとしてそれぞれ独立して採用可能であることはいうまでもない。
(1)リニアソレノイドのON故障早期検知
(2)Rレンジにおける信頼性向上
(3)リニアソレノイドのOFF故障対策
【0065】
図19は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図20は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。図6と図20を対比すると、本実施例で各摩擦係合要素の制御に用いるリニアソレノイドのタイプ(NL/NH)は上記第1の実施例と同様であり、Rレンジに走行可能なパターンの追加(S1がON(○)でも可)が行われている。
【0066】
図19を参照してより具体的に説明すると、本実施例の油路構成では、図5の油路構成に対し、SL2の出力油圧をSV3の端部に導き、SL2の出力油圧が所定値以上となった場合にSV3をOFF(×)側に強制的に移動させる油路201と、リニアソレノイド(SLT)によって切換動作される切換弁211と、切換弁211の第1の切換回路とSL3の排出ポートを連通する油路212と、油路212上に配置されるアキュムレータ(N−R ACC)ACC2と、切換弁211の第2の切換回路とSL2の排出ポートを連通する油路213とが新たに追加されている。
【0067】
[リニアソレノイドのON故障早期検知]
図21に示したように、SL2の出力油圧には、通常の使用領域で使用する変速領域と、変速領域を超え、フェール時に検出されるフェール領域とが設定されている。一方、SV3は、油路201を介して、バルブ端部のバネ室にSL2の出力油圧が導入される構成となっており、SL2の出力油圧が前記変速領域を超えるとOFF(×)側にとなるように構成されている。
【0068】
上記構成により、例えば、SL2がON故障した場合、上記第1の実施例のようにリニアソレノイドのタイプ(NL/NH)によるのではなく、図22に示したように、速やかにS3がON(○)からOFF(×)状態に移行し、Dレンジ1−2変速モードからDレンジ1st固定モードへ、Dレンジ2〜6変速モードからDレンジ4th固定モードへ移行可能となる。上記構成に加えて、SL3とSL4の供給ポートの上流に、SL2の出力油圧によってSL3とSL4の供給圧を遮断する追加の切換弁を配置してもよい。
【0069】
既に説明したように、上記第1の実施例では、Dレンジ1−2変速モードで、断線等によるSL2、SL4のON故障によるインターロックを回避する必要があるが、特に1stとより高速となる2ndでは、インターロックを早期に検知し短期間に適切なシフトパターンに移行する必要がある。しかしながら、油路201の追加及びSV3の構成変更を加えた本実施例によれば、2nd走行状態でSL2がON故障した場合、SL2の出力油圧が変速領域からフェール領域に至る。そして、SV3がOFF(×)状態となるため、SV3の下から2番目の切換回路によってSL4へのD圧供給がカットされ、ECU(Electronic Control Unit)の検知及び処理に依存せず、自動的に2nd→1stダウンシフトが行われる。
【0070】
また、油圧SWが故障した場合に、ECUでモニタする回転変化にてインターロックを検定する方法があるが、上記のように2nd→1stダウンシフト制御を行うこととすれば、インターロックよりも安全である上、インターロックよりも時間的余裕があるので、ECUにて、2ndと1stの違いを検知し、更に安全な固定モードへのシフトパターンにすることができる。
【0071】
同様に、1st走行状態でのSL4のON故障は、2nd→1stダウンシフト直後にて発生すると考えられるが、例えば、2nd→1stダウンシフトによる変速が所定時間以上掛かった場合に、SL2の出力油圧を変速領域からフェール領域にすることで、SL4へのD圧供給を絶ち変速を促進することができる。この場合も、SL2の出力油圧はフェール領域近くまで上昇していると考えられるため、ECUがインターロックを検知してからON/OFFソレノイドによってシフトバルブを切換える方式に比べて、すばやく1stへの切換が可能となる。
【0072】
また、2〜6変速モードでのインターロックも上記1−2変速モードと同様であり、低速段より高速段程、早期にインターロックを検知し、短期間に適切なシフトパターンに移行する必要があるのはいうまでもないが本実施例の構成によれば、4th以上(4th〜6th)でSL2がON故障(断線)した場合、同様にSL2の出力油圧が変速領域からフェール領域に至り、SV3によってSL3及びSL4へのD圧供給がカットされる。その結果、C2クラッチ(SL2−ON)、C1クラッチ(SL1)がともに係合状態となり4thが構成されるため、ECUの検知及び処理に依存せずインターロックが回避される。
【0073】
例えば、2〜6変速モードで4th走行中に、SL2のON故障(断線)が発生した場合4thに維持にされる。一方、2〜6変速モードで5th走行中では、まず、SL3へのD圧供給がカットされてN(C2クラッチのみ係合)となる。そこで回転変化を検知し、4th可ならばSL1をON状態にして4thにシフトダウンし、5thを保持すべきならば、S2をON(○)状態からOFF(×)に変更して固定5thモードにすることができる。同様に6thでもN(C2)となるが、回転変化を検知し、4thが良い場合はSL1をON状態にして4thにシフトダウンし、5thの方が良い場合はS2をON(○)状態からOFF(×)に変更して固定5thモードにシフトダウンすることができる。なお、4th、5thへのシフトダウンが適当でない場合は、6thの保持はできないため、車速が低下してから4th又は5thに移行する制御が可能である。
【0074】
また、2〜6変速モードで2nd走行中の場合は、C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)を係合した状態であり、インターロックはSL3又はSL2のON故障に限定される。同様に、2〜6変速モードで3rd走行中の場合は、C1クラッチ(SL1)、C3クラッチ(SL3)を係合した状態でありインターロックは、SL4又はSL2のON故障に限定される。上記2nd、3rdのインターロックにおいて、SL2のON故障は、上記したように自動的にC2クラッチ(SL2−ON)、C1クラッチ(SL1)がともに係合状態となり4thが構成され、急減速になることはない。
【0075】
一方、2nd走行状態でのSL3のON故障(3rd→2ndシフトダウン)及び3rd走行状態でのSL4のON故障(4th→3rdシフトダウン)の場合は、S2をON(○)状態からOFF(×)状態にして6th固定モードへ、又は、S3をON(○)状態からOFF(×)状態にして4th固定モードへ移行することが考えられる。本実施例では、S3がON故障していた場合でもSV3がスティックしていなければSL2の出力油圧をフェール領域まで引き上げることによって、4th固定モードにすることができる点で、第1の実施例に比べて、フェールセーフの信頼性は向上している。
【0076】
[Rレンジにおける信頼性向上]
図19に示したように、本実施例では、切換弁211と、油路212の追加により、S3がOFF(×)状態、かつ、スロットル圧が所定値以上のときに、マニュアルバルブからのR圧を、SV3の上から1番目の切換回路を経由し、アキュムレータ(N−R ACC)ACC2と、SL3の排出ポートに供給できるような構成となっている。
【0077】
図23は、RレンジでS1、S3がともにOFF(×)状態である場合の状態を表した図であり、図24は、RレンジでS1がON(○)状態、S3がOFF(×)状態である場合の状態を表した図である。図23に表されたとおり、S1、S3がともにOFF(×)状態である場合、R圧は、SL3の排出ポートとともに、アキュムレータ(N−R ACC)ACC2にも供給されるため、SL3がOFF故障しても後進走行が可能であり、また、変速ショックを低減できる構成となっている。
【0078】
一方、図24を参照すると、S1がON(○)状態、S3がOFF(×)状態である場合、ノーマルハイタイプであるはずのSL3が、開状態のとき出力ハイとなり、閉状態のとき出力ロウとなるNLのON/OFFソレノイド相当に変化する。従って、このパターンは、SL3がOFF故障(開)の時には後進を可能とし、SL3がON故障(閉)の時にはRevインヒビターを実施する。
【0079】
[リニアソレノイドのOFF故障対策]
図25に示したように、リニアソレノイド(SLT)には、通常レギュレータバルブの調整用のスロットル圧として動作するスロットル領域と、スロットル領域を超えフェール時に検出されるフェール領域とが設定されている。上記SLTがその端部の油室に導入される切換弁211は、SLTが通常のスロットル領域ではOFF(×)位置を保持し、SLTがフェール領域となった場合にON(○)となるよう付勢されている。
【0080】
例えば、SLTが通常のスロットル領域では、切換弁211の各切換回路を介して、SL2の排出ポートとドレン(EX)とが、SV3の上から1番目の切換回路の出力油路とSL3の排出ポートとが連通される。一方、SLTがフェール領域に至ると、切換弁211の上から2番目の切換回路を介して、SV3の上から3番目の出力油路(S3がOFF(×)状態のときD圧を出力)とSL2の排出ポートとを連通するとともに、切換弁211の上から1番目の切換回路を介して、SV2の上から1番目の出力油路(S2、S3がともにOFF(×)状態のときD圧を出力)とSL3の排出ポートとを連通する。なお、上記[Rレンジにおける信頼性向上]を不要とする場合は、切換弁211の下から1番目の切換回路のみを残し、SL2の排出ポートとEx(ドレン)とを連結した状態と、SL2の排出ポートとD圧出力油路とを連結した状態と、切換可能とすればよい。
【0081】
続いて、本実施例における各シフトパターンが選択された場合の動作を、第1の実施例で既に説明した部分は省略して個別に説明する。
[Rレンジ]
Rレンジでは、SLTの出力圧がスロットル領域の範囲を超えている場合、SL3の状態(ON/OFF)に関係なくC3クラッチにR圧が導入されることはなく、図26のように、C3クラッチは、SL3の状態(ON/OFF)によって制御可能である。Dレンジ1st固定モード、及び、Dレンジ3rd固定モードからRレンジに切り替えられた時に、SLT出力圧がスロットル領域にある場合は、S1をOFF(×)状態からON(○)状態にすることで(図24の状態)とし、Revインヒビターすることになるが、フェールが検出された場合には図26に示したように、仮にS1がOFF故障したとしても、SL3にてC3クラッチ圧を抜くことができる。このことは、3rdの高速でDレンジにて走行中(1次故障フェール中)にRレンジへのミスシフトが行なわれた場合に、C3クラッチ圧を抜きN状態とするフェールセーフ機構が追加可能であることを意味している。
【0082】
S1がON(○)状態にある場合でも、SLTの出力圧がスロットル領域の範囲を超えている場合は、図27に示したとおり完全にN状態とすることができる。Dレンジ4th固定モードやDレンジ5th固定モードからRレンジに切り替えられた場合でも、切換弁211がON(○)側に動作すれば、R圧を絶ち、早期にN状態とすることが可能である。以上、リニアソレノイドのOFF故障対策が施された本実施例によれば、Dレンジとは逆に、フェールを検知次第、後進走行からN状態にできるところにその特徴がある。
【0083】
続いて、Dレンジについては、S3がON(○)状態にある場合は、上記第1の実施例と略同様であるので、S3がOFF(×)状態にある1st、3rd、4th、5thについて説明する。
[Dレンジ1st固定モード]
図28は、Dレンジ1st固定モードが選択されている場合の状態を表した図である。第1の実施例の図10と同じ油路については省略して説明を加えると、本実施例のDレンジ1st固定モードでは、S3がOFF(×)状態であるためSV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、フェールモードにて切換弁211の下から1番目の切換回路を経由してSL2の排出ポートに供給される。このため、SL2がOFF故障した場合でもB2ブレーキにD圧を供給することができ、ストール発進が可能な構成となっている。
【0084】
[Dレンジ3rd固定モード]
図29は、Dレンジ3rd固定モードが選択されている場合の状態を表した図である。第1の実施例の図12と同じ油路については省略して説明を加えると、本実施例のDレンジ3rd固定モードでも、S3がOFF(×)状態であるためSV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、フェールモードにて切換弁211の下から1番目の切換回路を経由してSL2の排出ポートに供給される。これによりSL2の出力油圧はD圧となるが、S2がOFF(×)状態であるため、SV2の下から1番目の切換回路に遮断されてB2Lブレーキに到達することはない。
【0085】
一方、SV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の上から1番目の切換回路を経由して、切換弁211の上から2番目の切換回路に到達し、フェールモードにてアキュムレータとSL3の排出ポートに供給され、SL3の出力圧はD圧となる。上記にてC1クラッチ(D圧)、C3クラッチ(D圧)が係合状態となり3rdが構成され、SL1とSL3のOFF故障に関係なく、走行が可能となる。
【0086】
[Dレンジ4th固定モード]
図30は、Dレンジ4th固定モードが選択されている場合の状態を表した図である。第1の実施例の図13と同じ油路については省略して説明を加えると、本実施例のDレンジ4th固定モードでも、S3がOFF(×)状態であるためSV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、フェールモードにて切換弁211の下から1番目の切換回路を経由してSL2の排出ポートに供給され、SL2の出力圧はD圧となる。上記にてSL2がOFF故障した場合でもC2クラッチを係合し4th走行が可能となっている。
【0087】
なお、本実施例の構成によれば、SL1がOFF故障した場合は、N状態(C2クラッチのみ係合)となる。もちろん、SL1がOFF故障した場合も、各シフトバルブに追加の切換回路を設け、SL1の排出ポートに油圧を供給することにより、走行を可能にする構成を採ることも可能である。
【0088】
[Dレンジ5th固定モード]
図31は、Dレンジ5th固定モードが選択されている場合の状態を表した図である。第1の実施例の図14と同じ油路については省略して説明を加えると、本実施例のDレンジ5th固定モードでも、S3がOFF(×)状態であるためSV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、フェールモードにて切換弁211の下から1番目の切換回路を経由してSL2の排出ポートに供給され、SL2の出力圧はD圧となる。
【0089】
またSV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の上から1番目の切換回路、切換弁211の上から2番目の切換回路を経由し、アキュムレータとSL3の排出ポートに供給され、SL3の出力圧もD圧となる。上記にて、SL2とSL3がそれぞれOFF故障した場合にも、C2クラッチ、C3クラッチそれぞれにD圧を供給し、5th走行が可能となっている。
【0090】
以上のとおり、第2の実施例は、第1の実施例に機能を追加した構成となっている。なお、第2の実施例は,各電磁弁と摩擦係合要素の油路長を短縮し、各電磁弁をAT本体の摩擦係合要素の油口近くに配置した上で、機能向上を図ったものであるが、各電磁弁と摩擦係合要素間の配置の制約を緩めることも可能である。
【0091】
[実施例3]
続いて、上記第1、第2の実施例に対して各電磁弁と摩擦係合要素の油路長の制約を緩めた本発明の第3の実施例について説明する。図32は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図33は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。なお、図32においては、図面の簡略化のためドレン(Ex)の記載を省略してあるが、SVにて阻止された場合は、上記した第1、第2の実施例と同様、そのSVにEx(排出)が好ましく配置され、必要な油路を排出できるものとする。
【0092】
図32と図33を参照すると、本実施例は、シフトバルブの上流側にリニアソレノイドを配置している点で上記第1、第2の実施例と異なっており、その分、各電磁弁と摩擦係合要素間の距離は長くなっている。また、本実施例は、各摩擦係合要素にリニアソレノイドを専属させるのではなく、2つのノーマルハイタイプ(NH)のリニアソレノイドを用意し(SL1及びSL2)、リニアソレノイドの全断線が生じた場合に、前記NHのリニアソレノイドによって極力最寄りの変速段が構成されるよう油路を構成している点で上記第1、第2の実施例と異なっているが、シフトバルブのオンオフ状態の特定の組み合わせを、1−2変速モード及び2〜6変速モードに割り当て、その他を固定変速段モードに割り当てている点では共通している。
【0093】
続いて、本実施例における各シフトパターンが選択された場合の動作を個別に説明する。
[Dレンジ1−2変速モード]
Dレンジ1−2変速モードでは、図34に示すように、SL1の出力油路は、S2がON(○)状態であるため、SV2の下から3番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、S1がOFF(×)状態であるため、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から3番目の切換回路を経由してB2ブレーキに連通される。また、SL4の出力油路は、S3がON(○)状態であるため、SV3の下から1、2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。
【0094】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路と連通するが、S1がOFF(×)状態であるため、SV1の下から1番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)、B2ブレーキ(SL2)が制御可能となり、C1クラッチ(SL1)とB2ブレーキ(SL2)を用いた1stと、C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)を用いた2nd間の自動変速が可能な、低速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。また、SL1とSL2がNHであるため、リニアソレノイドの全断線時には自動的に1stが構成される。
【0095】
[Dレンジ2〜6変速モード]
Dレンジ2〜6変速モードでは、図35に示すように、S1、S2、S3がいずれもON(○)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から3番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から2番目の切換回路を経由してC2クラッチに連通される。また、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路、SV1の下から1番目の切換回路、SV3の上から1番目の切換回路を経由してC3クラッチに連通される。SL4の出力油路は、SV3の下から1、2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。
【0096】
上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)、B1ブレーキ(SL4)が制御可能となり、下記変速段間のスキップシフトが可能な中高速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。また、SL1とSL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時は自動的に4thが構成される。
【0097】
[Dレンジ1st固定モード]
Dレンジ1st固定モードでは、図36に示すように、S1がOFF(×)状態、S2がON(○)状態、S3がOFF(×)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から3番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から3番目の切換回路、シャトル弁を経由してB2ブレーキに連通される。
【0098】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路と連通するが、S1がOFF(×)状態であるため、SV1の下から1番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から1、2番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。
【0099】
上記にてC1クラッチ(SL1)、B2ブレーキ(SL2)が係合状態となり1stが構成される。また、SL1とSL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時も1stが維持される。なお、ON/OFFソレノイドを含めた全断線と、リニアソレノイドの全断線を分けて考えているのは、リニアソレノイドは変速で使われる頻度が非常に高いため、断線ばかりでなく、ハード的なOFF故障も断線として取扱う必要があるためである。ただしイグニッションオフ時等は、上記ON/OFFソレノイドを含めた全断線になる。
【0100】
[Dレンジ2nd固定モード]
Dレンジ2nd固定モードでは、図37に示すように、S1、S2がともにOFF(×)状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から4番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。また、SL4の出力油路は、SV3の下から1、2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。
【0101】
なお、SL1の出力油路は、SV2の下から2番目の切換回路と連通するが、S3がON(○)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL3の出力油路も、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり2ndが構成される。また、SL2はNH、SL4はNLであるため、リニアソレノイドの全断線時はN(C1)となる。
【0102】
[Dレンジ3rd固定モード]
Dレンジ3rd固定モードでは、図38に示すように、S1、S2、S3が全部OFF(×)の全断線状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から2番目の切換回路、SV3の上から2番目の切換回路を経由してC3クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から4番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。
【0103】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から1、2番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。上記にてC3クラッチ(SL1)、C1クラッチ(SL2)が係合状態となり3rdが構成される。また、SL1、SL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時も3rdが維持される。
【0104】
[Dレンジ4th固定モード]
Dレンジ4th固定モードでは、図39に示すように、S1、S2がともにON(○)状態、S3がOFF(×)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から3番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から2番目の切換回路、を経由してC2クラッチに連通される。また、SL2の出力油路からSV1端部の油室に至るラッチ回路が配設されており、SV1端部の油室にSL2出力油圧を導き、SV1がON(○)状態を保持するよう構成されている。
【0105】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路、SV1の下から1番目の切換回路と連通されているが、SV3の上から1番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から1、2番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)が係合状態となり4thが構成される。また、SL1、SL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時も4thが維持される。
【0106】
[Dレンジ5th固定モード]
Dレンジ5th固定モードでは、図40に示すように、S1がON(○)状態、S2、S3がOFF(×)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から2番目の切換回路、SV3の上から2番目の切換回路を経由してC3クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに連通される。
【0107】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から1、2番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。上記にてC3クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)が係合状態となり5thが構成される。また、SL1、SL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時も5thが維持される。
【0108】
[Dレンジ6th固定モード]
Dレンジ6th固定モードでは、図41に示すように、S1、S3がともにON(○)状態、S2がOFF(×)状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の上から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに連通される。また、SL4の出力油路は、SV3の下から1、2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。
【0109】
なお、SL1の出力油路は、SV2の下から2番目の切換回路と連通されているが、SV3の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL3の出力油路も、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。上記にてC2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり6thが構成される。また、SL2はNH、SL4はNLであるため、リニアソレノイドの全断線時はN(C2)となる。
【0110】
以上のDレンジの動作において、2ndと6th固定モード選択時におけるリニアソレノイドの全断線時にN状態となってしまうが、2ndの場合は、1−2変速モード、2〜6変速モード、3rd固定モードへ移行し、これらのリニアソレノイドの全断線時の変速段にて走行することが可能となる。同様に、6thの場合は、2〜6変速モード、5th固定モード,3rd固定モードへ移行し、これらのリニアソレノイドの全断線時の変速段にて走行することが可能となる。
【0111】
[Rレンジ]
Rレンジでは、図42に示すように、S3がOFF(×)状態、S1、S2が不定状態である。R圧は、SV2の端部油室に導かれSV2を強制的にOFF(×)状態にするとともに、SL1と、シャトル弁を経由してB2ブレーキに供給されるが、SL2、SL3、SL4には供給されない。SL1の出力油路は、SV2がOFF(×)状態となるため、SV2の下から2番目の切換回路、SV3の上から2番目の切換回路を経由し、C3クラッチに連通される。
【0112】
上記にてB2ブレーキ(R圧)、C3クラッチ(SL1)が係合状態となり後進段が構成される。また、SL1はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時はRが維持される。
【0113】
図43は、RレンジにてSV1がON(○)側にスティックした場合の状態を表した図であるが、本実施例の構成によれば、SV2の下から1番目の切換回路、SV3の上から2番目の切換回路を経由して、R圧をC3に到達させ、R走行を維持することが可能である。また、図42の状態からSL1がON故障(断線故障)が発生した状態において、高速走行状態からRレンジが選択された場合、S3をON(○)状態にするリバースインヒビター制御を行うことで、C3クラッチにR圧が到達することを防ぐことができる。
【0114】
上述した第3の実施例では、自動変速モードにてNLタイプのリニアソレノイドがON故障した場合のためにインターロックを検知する仕組みが必要となるが、上記した第2の実施例同様に、リニアソレノイドのON故障早期検知機能を備えることが好ましいといえる。また、リニアソレノイドのOFF故障対策も施されていることが好ましいといえる。
【0115】
[実施例4]
図44は上記した観点から第3の実施例の機能向上を図った自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。図44を参照すると、SL3及びSL4の供給ポートの上流側に設けられたアプライバルブ(APP.V)と、電磁弁で駆動する切換弁211が追加された構成となっている。アプライバルブ(APP.V)は、SL2の出力圧が所定値以上になると、SL3とSL4の供給圧(D圧)を遮断してExに連通させる。
【0116】
上述したDレンジ1−2変速モードで、断線等によるSL2のON故障が生じた場合、C1クラッチ(SL1)及びB1ブレーキ(SL4)を係合した2ndを構成中には、C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)及びB2ブレーキ(SL2)の係合によりインターロックが生じうる。しかしながら本実施例の構成によれば、最終的にSL2の出力圧が所定値以上となると、アプライバルブが切換えられ、B1ブレーキ(SL4)を強制解放するので、そのままのシフトパターンでも1st走行が可能となる。また、アプライバルブがスティックした場合は、適宜配置する油圧SW等で当該状態を検知することにより、シフトパターンを変更して固定モードに移行できるのでNモードにする必要もない。
【0117】
また、本実施例の構成では、切換弁211の動作により、SL1とSL2の排出ポートに油圧を供給して強制的に出力圧を維持することが可能となっている。切換弁211のON/OFFは、変速に係わらないスロットル圧を制御するSLT等の他の電磁弁を好ましく用いることができ、上述した第2の実施例と同様、切換弁211は、電磁弁の出力圧が所定のフェール領域に到った場合に動作し、SL1とSL2の排出ポートに油圧を供給する。
【0118】
なお、SL2は、Dレンジのみ用いるのでD圧を供給するものとし、SL1は前進時にはD圧を供給し、後進時にはC3クラッチに限定するためにSV2の切換回路を経由しR圧を供給するものとする。上記構成とすることによって、各固定モードにてSL1、SL2がOFF故障しても、切換弁211を作動させることによって変速段を維持することが可能となる。第4の実施例は、第3の実施例の構成に対し、2本のバルブを追加するだけで構成可能であり、油圧SWを必要な箇所(SL3,SL4,SV3)に付加するよりもコスト上有利である。
【0119】
[実施例5]
続いて、上記第3、4の実施例と同様の構成を採りつつ、各固定モードにおけるリニアソレノイドの全断線時に必ず変速段が構成されるようにした第5の実施例について説明する。図45は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図46は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。なお、図45においても、図面の簡略化のためドレン(Ex)の記載を省略してあるが、SVにて阻止された場合は、上記した第1、第2の実施例と同様、そのSVにEx(排出)が好ましく配置され、必要な油路を排出できるものとする。
【0120】
図45と図46を参照すると、上記第3、第4の実施例に対し、SV2、SV3に切換回路を追加した構成となっている。より具体的には、SL4の出力油路をSV3直後でB1ブレーキに連結するのではなく、SV2を連通した後にB1ブレーキと連結したことと、SL1の出力油路をSV3、SV2を介しB1ブレーキにも連結可能としたことである。この結果、2nd固定モード、6th固定モードでのB1ブレーキの制御にSL1が割り当てられ、図46に表されたように、すべての固定段モードで、リニアソレノイドの全断線時にそれぞれ元の変速段を維持できるような構成となっている。また、2〜6変速モードではリニアソレノイドの全断線時に3rdとなるよう構成されている。
【0121】
続いて、上記第3の実施例で既に説明した走行モードについては説明を省略し、2nd、6th固定モードについて説明する。
【0122】
[Dレンジ2nd固定モード]
Dレンジ2nd固定モードでは、図47に示すように、S1、S2がともにOFF(×)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から4番目の切換回路、SV3の上から4番目の切換回路、SV2の下から2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から4番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。
【0123】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から2番目の切換回路に連通するが、SV2の下から1番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL1)が係合状態となり2ndが構成される。また、SL1、SL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時は2ndが維持される。
【0124】
[Dレンジ6th固定モード]
Dレンジ6th固定モードでは、図48に示すように、S1、S3がともにON(○)状態、S2がOFF(×)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から4番目の切換回路、SV3の上から4番目の切換回路、SV2の下から2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに連通される。
【0125】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から2番目の切換回路に連通するが、SV2の下から1番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。上記にてC2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL1)が係合状態となり6thが構成される。また、SL1、SL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時は6thが維持される。
【0126】
[実施例6]
なお、上記第5の実施例も第4の実施例と同様の機能向上を図ることが可能である。図49は、本発明の第6の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。図49を参照すると、第6の実施例も、第4の実施例と同様、SL3及びSL4の供給ポートの上流側に設けられたアプライバルブ(APP.V)と、電磁弁で駆動する切換弁211が追加された構成となっている。その動作は、上述した第4の実施例と同様であるため説明は省略する。
【0127】
以上、本発明の第3ないし第6の実施例を説明したが、油圧SWを追加することによってその信頼性を向上させることも可能である。図50は、本発明の第3の実施例のSL3、SL4の下流側にそれぞれ油圧スイッチSW3、SW4を配設した例である。図51は、本発明の第4の実施例のアプライバルブの下流側に油圧スイッチSW−APPを配設した例である。図52は、本発明の第5の実施例のSL3、SL4の下流側にそれぞれ油圧スイッチSW3、SW4を配設した例である。図53は、本発明の第5の実施例のアプライバルブの下流側に油圧スイッチSW−APPを配設した例である。
【0128】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、油路の追加、制御の追加など各種の変形を加えることが可能である。例えば、上記した各実施例において、S3がON(○)状態のときのみ、図示していないロックアップ用リニアソレノイドを連結し、車速等による上記1−2自動変速モード等への切換えの検知後、ロックアップを行う構成とすれば、1stでリニアソレノイドが故障しても直ちにエンストすることを回避できる。
【0129】
また、上記した実施の形態では、5つの摩擦係合要素で前進6速段を有する自動変速機に適用した例を挙げて説明したが、その他の自動変速機にも適用可能である。例えば、上記した実施の形態では、3個のシフトバルブを用いた23=8パターンをそれぞれ2つの自動変速モードと、すべての固定段モードに割り当てるものとしたが、自動変速モードを1つとした場合には、残りの一つを予備パターンとしたり、7つの固定段に割り当てることが可能である。
【0130】
また、7速段以上でスキップシフトを実現するには、各摩擦係合要素を駆動するリニアソレノイドの数が増大することになるが、その場合にも本発明を同様に適用可能であり、適宜シフトバルブを増やすことによって、シフトパターンを増やし、フェールに対する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自動変速機の油圧制御装置のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図3】電磁弁のタイプ(NH/NL)を割り当てて、図2の表を書き直した表である。
【図4】本発明の実施例で使用可能な電磁弁を説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施例のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図7】本発明の第1の実施例に油圧回路に、ブレーキコントロールバルブ(減圧弁)を配設した例である。
【図8】本発明の第1の実施例における1−2変速モードの状態を表した図である。
【図9】本発明の第1の実施例における2〜6変速モードの状態を表した図である。
【図10】本発明の第1の実施例における1st固定モードの状態を表した図である。
【図11】本発明の第1の実施例における2nd固定モードの状態を表した図である。
【図12】本発明の第1の実施例における3rd固定モードの状態を表した図である。
【図13】本発明の第1の実施例における4th固定モードの状態を表した図である。
【図14】本発明の第1の実施例における5th固定モードの状態を表した図である。
【図15】本発明の第1の実施例における6th固定モードの状態を表した図である。
【図16】本発明の第1の実施例におけるRレンジ選択時の状態を表した図である。
【図17】本発明の第1の実施例におけるRレンジ選択時に、S1、S2がともにOFF(×)状態になった場合の状態を表した図である。
【図18】本発明の第1の実施例におけるRレンジ選択時に、S1、S2がON、OFF(○×)状態ないしON、ON(○○)状態である場合の状態を表した図である。
【図19】本発明の第2の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図20】本発明の第2の実施例のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図21】SL2の出力油圧と指示電流の関係を説明するための図である。
【図22】本発明の第2の実施例におけるSL2がON(○)状態、かつ、S3がON(○)状態からOFF(×)状態に移行した場合の摩擦係合要素及びリニアソレノイドの挙動を説明するための表である。
【図23】本発明の第2の実施例におけるRレンジ選択時に、S1、S3がともにOFF(×)状態である場合の状態を表した図である。
【図24】本発明の第2の実施例におけるRレンジ選択時に、S1がON(○)状態、S3がOFF(×)状態である場合の状態を表した図である。
【図25】SLTの出力油圧と指示電流の関係を説明するための図である。
【図26】本発明の第2の実施例におけるRレンジ選択時に、切換弁が作動した状態を表した図である。
【図27】本発明の第2の実施例におけるRレンジ選択時に、切換弁が作動した別の状態を表した図である。
【図28】本発明の第2の実施例における1st固定モードの状態を表した図である。
【図29】本発明の第2の実施例における3rd固定モードの状態を表した図である。
【図30】本発明の第2の実施例における4th固定モードの状態を表した図である。
【図31】本発明の第2の実施例における5th固定モードの状態を表した図である。
【図32】本発明の第3の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図33】本発明の第3の実施例のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図34】本発明の第3の実施例における1−2変速モードの状態を表した図である。
【図35】本発明の第3の実施例における2〜6変速モードの状態を表した図である。
【図36】本発明の第3の実施例における1st固定モードの状態を表した図である。
【図37】本発明の第3の実施例における2nd固定モードの状態を表した図である。
【図38】本発明の第3の実施例における3rd固定モードの状態を表した図である。
【図39】本発明の第3の実施例における4th固定モードの状態を表した図である。
【図40】本発明の第3の実施例における5th固定モードの状態を表した図である。
【図41】本発明の第3の実施例における6th固定モードの状態を表した図である。
【図42】本発明の第3の実施例におけるRレンジ選択時の状態を表した図である。
【図43】本発明の第3の実施例におけるRレンジ選択時にS2のONスティック(固着)が発生した状態を表した図である。
【図44】本発明の第4の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図45】本発明の第5の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図46】本発明の第5の実施例のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図47】本発明の第5の実施例における2nd固定モードの状態を表した図である。
【図48】本発明の第5の実施例における6th固定モードの状態を表した図である。
【図49】本発明の第6の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図50】本発明の第3の実施例の油圧回路に油圧スイッチを追加した例を表した図である。
【図51】本発明の第4の実施例の油圧回路に油圧スイッチを追加した例を表した図である。
【図52】本発明の第5の実施例の油圧回路に油圧スイッチを追加した例を表した図である。
【図53】本発明の第6の実施例の油圧回路に油圧スイッチを追加した例を表した図である。
【図54】特許文献4の油圧回路図の変速制御に関係する部分のブロック図である。
【図55】特許文献4のソレノイドパターンにおける各シフトバルブの動き、制御対象のリニアソレノイド、断線時に保持される変速段等をまとめた図である。
【符号の説明】
【0132】
ACC、ACC1、ACC2 アキュムレータ
EX 排出ポート
IN 供給ポート
OUT 出力ポート
S1、S2、S3 ON/OFFソレノイド
SL1、SL2、SL3、SL4、SLT リニアソレノイド
SV1、SV2、SV3 シフトバルブ
SW、SW3、SW4、SW−APP 油圧スイッチ
101、111、112、121、122、201、212、213 油路
131 ブレーキコントロールバルブ(減圧弁)
211 切換弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧源からの油圧を比例電磁弁にて直接制御する方式の自動変速機の油圧制御装置に関し、特にその断線フェールに対する耐性ないし信頼性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
特公平5−63664号公報には、摩擦係合要素の数と同数の電磁弁を用意して、前進6段を選択的に設定可能とした変速機制御装置が開示されている。同公報記載の変速機制御装置は、摩擦係合要素C1〜C5にそれぞれ1つ、計5つの電磁弁(リニアソレノイド等)と、1つのON/OFFソレノイドと、2つのシフトバルブと、を備えて、断線フェール(電気的中断発生)時に、現在選択されている変速段に応じ、変速段の自動切り換え(1st→3rd、2nd〜5th→4th、6th→5th)ができるよう構成されている。
【0003】
また、特許2925505号公報、特許2925506号公報には、5つの摩擦係合要素に対し、2つの電磁弁と3つのシフトバルブ及びシフトバルブを制御する3つのON/OFFソレノイドで前進6段を選択的に設定可能とした変速機制御装置が開示されている。この変速機制御装置は、反力要素となる摩擦係合要素へのライン圧の導入と2つの電磁弁による摩擦係合要素の交換により変速を行うとともに、断線フェール時(電気的中断発生)に対しては、所定の変速段(1st、6thを除く)又は該変速段より高い変速段に維持するよう構成されている。
【0004】
上記特許2925505号公報、特許2925506号公報の構成では、3rd⇔5th、2nd⇔4th⇔6thのような飛び越し変速(以下、スキップシフトという)ができないため、例えば、3rd⇔5thでは3rd⇔4th⇔5thと1段ずつ変速しなければならず変速過多や応答性劣化を感じさせてしまう。そこで、米国特許第6585617号では、上記特許2925505号公報、特許2925506号公報に対し、リニアソレノイドを2個追加(計4個)、シフトバルブを1本低減(計2本)、ON/OFFソレノイドを2個低減(計1個)とし、更に、油圧スイッチ(以下油圧SWという)を1個追加することで、2nd〜6th間のスキップシフトを実現している。
【特許文献1】特公平5−63664号公報
【特許文献2】特許2925505号公報
【特許文献3】特許2925506号公報
【特許文献4】米国特許第6585617号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図54は、特許文献4の油圧回路図の変速制御に関係する部分をブロック図にしたものであり、図55は、同文献のソレノイドパターンにおける各シフトバルブの動き、制御対象のリニアソレノイド(カッコ内はリニアソレノイドのタイプを表し、NHは断線時に係合状態を保持するノーマルハイタイプ、NLは断線時に解放状態に遷移するノーマルロータイプを指す)、断線時に保持される変速段等をまとめたものである。R⇔N⇔Dのガレージ変速では、ON/OFFソレノイド1(以下、S1;特許文献1の符号66に対応)がシフトバルブ1(以下、SV1;特許文献1の符号32に対応)を切換え、リニアソレノイド1(以下、SL1)により、シフトバルブ2(以下、SV2;特許文献1の符号100に対応)を切換えられる構成となっている。また、S1をオン(○)にしSV1をオン側に動作させると、ライン圧(PL)がリニアソレノイド2(以下、SL2)に供給され、SL2を立ち上げることが可能となっている。
【0006】
例えば、図54によれば、Nレンジにおいて、C1クラッチを開放できるレベルの低圧でコントロールバルブからライン圧を減圧した油圧(図54のPL減圧)が油圧スイッチ(以下、油圧SW)をONにするとともにSV2を切換える状態になっている。Rレンジは(SV1の固着という特別な場合を除く)、C3ブレーキとB2(C5)ブレーキの係合、即ち、リニアソレノイド3(以下、SL3)の係合制御、SL2の係合制御により達成される。従って、N→R変速は、Rレンジの選択を検知した後に、先行してSL2を係合状態にしB2(C5)ブレーキを締結させ、R圧がSL3に供給されているのでSL3をゆるやかに係合制御することによって、C3ブレーキ締結によるガレージショックを低減させて行うことができる(図55のRの無関係のソレノイドパターン参照)。
【0007】
一方N→D変速は、上記同様にB2(C5)ブレーキを先行して締結させた後、D圧がSL1に供給されているのでSL1を緩やかに係合制御してC1クラッチの締結によるガレージショックを低減させて、変速段を1stとすることで行われる。そしてさらに、D圧が供給されているリニアソレノイド4(以下、SL4)を係合制御し、B1(C4)ブレーキを係合させるとともに、SL2を解放制御してB2(C5)ブレーキを解放することによって変速段が2ndとなる(図55のDの1−2のソレノイドパターン参照)。
【0008】
次に、図54のS1をON(○)からOFF(×)にすると、ライン圧(PL圧)がSV1、SV2を通って油圧SWをONにし、SV2に設けられた段差によってSV2をON(○)状態に保持するとともに、SL3にライン圧(PL圧)の供給が行われる。また、SV1がOFF(×)状態となることにより、B2(C5)ブレーキと連通状態にあったSL2がC2クラッチと連通され、C1クラッチ、C2クラッチ、C3ブレーキ、B1(C4)ブレーキをそれぞれ独立して制御し、2nd〜6thまで自由に変速が可能となる。
【0009】
一方、特許文献4の構成によると、全断線フェールの発生時は、S1とSV1がそれぞれOFF(×)状態となるため(図55のDの断線のソレノイドパターン参照)、NHタイプのSL2、SL3が立ち上がり、C1クラッチ及びC3ブレーキが係合状態となり、3rdの変速段が構成される。但し、S1がOFF(×)、SV1がON(○)状態の多重変速状態でSL2が係合状態にある場合は、PL圧がSV2をON側にラッチするため、SL2はC2に連通されたままとなり、C2クラッチ及びC3ブレーキが係合されて5thの変速段が構成される。従って、全断線フェールが発生しても、SL2を係合制御しC2クラッチが使用されている4th〜6thの高速時は5thを保持して減速ショックを回避し、再発進時は3rdで「リンプホーム」できるような構成となっている。なお、残りのS1がON(○)、SV1がOFF(×)という場合は、全断線フェールの発生時、B2(C5)ブレーキのみが締結されるN状態となる。
【0010】
上記のとおり、特許文献4の構成では、特許文献1ないし3ではなしえなかった断線フェールとスキップシフトの両立が図られていることになるが、以下のような問題点が残されている。まず第1の問題点は、特許文献2、3に示した簡略構成に対してコスト上のメリットが喪われているという点である。例えば、特許文献2、3に示した簡略構成に比較して、スキップシフトを実現させるためにリニアソレノイドを2個追加するのは構成上仕方ないとしても、追加の油圧スイッチを1個(計5個)必要としている。これに対して、特許文献2、3に示した簡略構成と比較して、ON/OFFソレノイドは3個から1個へ、シフトバルブは2個から1個へと部品点数の低減が図られているが、油圧SWの1増は油圧SWが高価であることもあってこれらの低減分を相殺してしまうため、結局リニアソレノイド2個増加分のコストアップとなってしまっている。
【0011】
また、電気的な断線フェールに関しては、特許文献2、3の構成より向上しているといえるが、あくまで断線時にノーマルロータイプのリニアソレノイドがOFFになることを前提にしているという問題点もある。ここで、ノーマルロータイプのリニアソレノイドがON故障した場合を考える。例えば、C2クラッチ(SL2)とB1(C4)ブレーキ(SL4)を締結した6th走行状態でSL4(NL)が短絡もしくは異物等にてON故障が発生し、変速点にしたがって6→5(C2クラッチとC3ブレーキ締結)、6→4(C1クラッチとC2クラッチ締結)などのダウンシフトが行われると、インターロックが生じるので、油圧SW等にて検出し、6thに戻すことになる。
【0012】
上記状態で走行をする間に2次故障として、例えばSL3(NH)が断線故障を発生したとすると、仮にSL2をON制御しC2クラッチ圧を解放できたとしても、C3ブレーキ(SL3)とB1(C4)ブレーキ(SL4)との組みにより変速段にはならずプラネタリーロックとなってしまう。
【0013】
そこで、シフトパターンを変更して対処することが考えられるが、全断線モード(S1とSV1がそれぞれOFF(×)状態)でも同じ現象となるので、S1がON(○)状態かつSVがOFF(×)状態、あるいは、S1とSV1が共にON(○)状態にする必要がある。そのためには、S1をOFF(×)状態からON(○)状態にすることになるが、その場合、C2クラッチ(SL2)とB1(C4)ブレーキ(SL4)を締結した6thの状態のままでは出力軸ロックとなりかねないので当該変更の前にSL2をON制御しSL2出力圧をOFFにする必要がある。ところが、SL2出力圧をOFFにすると、SL2出力圧にてよってラッチしていたSV2はバネ力にてOFF状態となるため、C4(B1)ブレーキのみを締結したN状態となり駆動力が消失してしまう。
【0014】
以上2次故障でSL3(NH)がOFF故障した場合について述べたが、2次故障でSL2(NH)がOFF故障となった場合も同様であり、特許文献4の構成では強制的(自動的)にN状態となってしまう。
【0015】
更には、上記SL4のON故障が生じた状態で、ユーザによるイグニッションのOFF操作、振動によるケーブル脱落、過電流によるヒューズ飛び等によって全断線となると、S1とSV1がそれぞれOFF(×)状態となるため(図55のDの断線のソレノイドパターン参照)、C1クラッチ(SL2−NH)、C3ブレーキ(SL3−NH)、C4(B1)ブレーキ(SL4のON故障)の締結によるインターロックが発生し、上述した断線フェールが正しく動作しなくなるものと考えられる。全断線である以上、その対応として、シフトパターン変更もリニヤの出力低下もできず、車両が急激に減速することになる。
【0016】
更には、3次故障以上となると、図55に表されたとおり、リニアソレノイドを2個連通し固定段モードにする、あるいは、リニアソレノイド1個のみでNモードにするパターンは存在しないため、必ずインターロックが発生し、AT内部の摩擦材の滑りにて対応するという手段は残っているものの、油圧制御システムとしての対応手段がなくなってしまうと考えられる。
【0017】
要するに、従来技術には、制限された個数のリニアソレノイドを用いてスキップシフトと断線フェール対策を両立するものがあるが、コスト上の課題と、2次、3次フェールに対する耐性向上という課題が残されているといえる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の視点によれば、係合・非係合の組み合わせにより少なくとも前進n段の変速段を構成可能な複数の摩擦係合要素と、電磁弁を介した油圧制御により前記各摩擦係合要素の係合・非係合を制御する制御部とを有する自動変速機の油圧制御装置であって、 少なくとも2個のノーマルハイタイプの電磁弁を含み、前記前進n段の変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置される電磁弁と、オンオフの組み合わせにより前記前進n段の各変速段に対応したシフトパターンに応じて、前記所定の電磁弁から前記所定の摩擦係合要素までの油路を構成する複数のシフトバルブと、を有し、前記シフトバルブのオンオフ状態の特定の組み合わせを、前記自動変速モードに対応した前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンに割り当てるとともに、前記シフトバルブのオンオフ状態のその他の組み合わせの内の一つの組み合わせを、前記2個のノーマルハイタイプの電磁弁を使用する第1の前進変速段(全断線時用固定段)と、前記その他の組み合わせの内の他の組み合わせを前記ノーマルハイタイプ以外の電磁弁を使用する第2の前進変速段(一次ON故障時用固定段)と、の少なくとも2以上の前進変速段の固定シフトパターンにそれぞれ割り当て、前記シフトバルブの動作によって前記固定シフトパターンを選択し車両を走行可能としたこと、を特徴とする自動変速機の油圧制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コスト上も有利であり、自動変速シフトパターンを用いたスキップシフト機能が実現されるとともに、前記2つの固定シフトパターンのいずれかを選択して断線フェールに対する信頼性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
続いて、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図2は、シフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。本実施形態に係る自動変速機の油圧制御装置は、ECU(Electronic Control Unit;図示せず)と、3つのシフトバルブ(以下、それぞれSV1〜SV3という)と、これらシフトバルブをON/OFFする3つのソレノイド(以下、それぞれS1〜S3という)とを有し、ソレノイドS1〜S3の操作により、23の8のシフトパターンを構成可能となっている(図2のレンジD参照)。そして、前記8つのシフトパターンのうち2つを、スキップシフトができる多重変速パターン(第1の自動変速パターン)と、低速段変速ができる低速段変速パターン(第2の自動変速パターン)に割り当て、残りの6つのシフトパターンを固定段に割り当てた構成としている。
【0021】
また、本実施形態は、5つの摩擦係合要素によって6変速段を構成可能となっており、低速段変速パターン(第2の自動変速パターン)では、1st⇔2nd変速が可能なように4つのリニアソレノイドのうち3つ(SL1、SL2、SL4)を制御可能な状態にし(図2のレンジD 1−2参照)、スキップシフトができるパターン(第1の自動変速パターン)では、2nd〜6thの間の変速が可能なように4つのリニアソレノイドすべて(SL1〜SL4)を制御可能な状態とする(図2のレンジD 2〜6参照)。また、1st、2nd、3rd、4th、5th、6thの固定段のシフトパターンでは、当該固定段を構成すべくリニアソレノイド4つのうちの2つが自動的に係合制御される構成としている(図2のレンジD 1、2、3、4、5、6参照)。
【0022】
また、図1、図2を参照すると、C2クラッチとB2ブレーキで共用するSL2の出力油路のみSV2にて切換えるが、その他のリニアソレノイド(SL1、SL3、SL4)はそれぞれC1クラッチ、C3クラッチ、B1ブレーキの制御用に専属させている。
【0023】
そして、上記4つのリニアソレノイドのうち2つ(SL2とSL1又はSL3のいずれか)をノーマルハイタイプ(以下、NH)とし、残りをノーマルロータイプ(以下、NL)とすることによって、2つのNHのリニアソレノイドを使用する全断線時に使用する固定段(5th)と、少なくとも1つのNHのリニアソレノイドを使用するNLのリニアソレノイドのON故障時に使用する固定段を、シフトバルブの選択により構成可能とすることで、一次故障としての全断線による締結不能や、ノーマルロータイプのリニアソレノイドのON故障によるインターロックを回避することが可能となる。
【0024】
図3は、C1クラッチ専用のリニアソレノイドSL1をNLとし、C2クラッチとB2ブレーキで共用するリニアソレノイドSL2をNHとし、C3クラッチ専用のリニアソレノイドSL3をNHとし、B1ブレーキ専用のリニアソレノイドSL4をNLとした場合の本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。Dレンジの全断線フェールでは、少なくとも5thで走行可能であり、NLのSL1にON故障が生じても固定段シフトパターンを選択することによって、他のリニアソレノイドの2次故障に対処することが可能となっている。
【0025】
また、図1を参照すれば明らかなように、本実施形態では、油路本数の増加が最小限に抑えられており、また、各摩擦係合要素と電磁弁(リニアソレノイド)間の油路長を短縮するとともに、AT本体の各摩擦係合要素の配置に適った電磁弁の配置が実現されている。
【0026】
なお、図3の例では、Dレンジ(前進)では5thでしか走行できないため、高速走行時には問題ないが、再発進が困難となる。これに対して、すべてのリニアソレノイドをNHに変更し、固定シフトパターンの選択によって走行可能とすることも可能である。
【0027】
しかしながら、上記のようにすべてのリニアソレノイドをNHに変更した場合、変速モードでは1次故障にてインターロックが生じるため、インターロックを回避するためのフェールバルブ等を新たに配設することになり、部品点数・油路構成が増加してしまう。また、シフトバルブにてリニアソレノイドの出力油路を遮断して、目的とする摩擦係合要素(C1クラッチ、B1ブレーキ)にライン圧を供給するよう油路を構成することも考えられるが、断線フェールのためにシフトバルブの上流側にNLタイプのSL1とSL4を配設することも、シフトバルブの下流にすべてのリニアソレノイドを配置した図1の油路構成の利点(簡略化)が失われてしまう。
【0028】
[実施例1]
そこで、上記実施形態に対して、図4の(a)に例示する直圧タイプのリニアソレノイド、同図(b)、(c)に例示するコントロールバルブ付きリニアソレノイドに共通して適用可能であり、電磁弁の供給ポート(図4のIN)に油圧が供給されている状態で、排出ポート(図4のEX)からライン圧を押し込むことでリニアソレノイドのタイプ(NH/NL)に関係なく、摩擦係合要素を係合状態にできるようにした実施例1について説明する。
【0029】
図5は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図6は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。本実施例では、B2ブレーキを、小さいピストン油室を持つB2Sブレーキと、大きいピストン油室を持つB2Lブレーキとに2分割している点で異なっている他は図3と同様であり、C1クラッチ専用のリニアソレノイドSL1をNLとし、C2クラッチとB2Lブレーキで共用するリニアソレノイドSL2をNHとし、C3クラッチ専用のリニアソレノイドSL3をNHとし、B1ブレーキ専用のリニアソレノイドSL4をNLとしている。
【0030】
また、図6に示されたとおり、S1のオン時に、スキップシフトができる多重変速パターン(第1の自動変速パターン)と、4th、5th、6thの固定段のシフトパターンが選択され、S1のオフ時に、その他の低速段が構成されるようになっており、更に後記するように、C2クラッチへの供給圧でSV1をオン側にラッチするよう構成しているため、S1の故障時に、高速段から低速段への急減速が回避されるようになっている。
【0031】
また、本実施例では、SL1(NL)の排出ポートにライン圧を供給すべく、ON/OFFソレノイドS1、S3が共にOFF(×)状態の場合に限って、前進圧(以下、D圧)をリニアソレノイドSL1の排出ポートに連結し、ON/OFFソレノイドS2の操作にて、固定シフトパターンの1stと3rdを選択可能となっている。なお、以上のように、固定モードの1stと3rdに限定しているのは、油路本数の増加を抑えるためのものであり、スペースの余裕があれば、後述する他の実施例のように、全断線時にすべての固定段において走行可能にすることも可能である。
【0032】
図5を参照してより具体的に説明すると、本実施例の油路構成では、図1の油路構成に対し、前進圧(以下、D圧)をSV2からSV3の切替ポートへと導く油路101と、前記D圧をSV3からSL1の排出ポートに導く油路102が追加されている。また、油路102には、アキュムレータ(N−D ACC)ACC1が配設されており、図示しないオリフィスにてSL1側へのD圧の供給を所定時間遅らせることで、ライン圧の直接導入による変速ショックを来たすことなくN→D変速を行うことが可能となっている。従って、NレンジからDレンジとしS1、S2、S3をそれぞれOFF、ON、OFF(×○×)の状態とすることで、ガレージ変速が成立し、更に、S1、S2、S3をそれぞれOFF、ON、ON(×○○)の状態とすれば、C1クラッチ圧をSL1の出力圧にて制御することによる自動変速も可能となる。
【0033】
また、1st固定シフトパターンにおいて、C1クラッチにライン圧が直接供給される構成となっているということは、ストール発進時等にリニアソレノイドの出力最大圧を超える圧力が必要な場合に、ライン圧を導くためのロックバルブやゲイン切換バルブを追加する必要がないことを意味している。従って、油路構成はシンプルとなり、コストの低減も可能である。
【0034】
また、本実施例の油路構成では、シャトル弁を追加することに代えて、図5の後進圧(以下、R圧)をSV1の切換回路に導く油路111と、更に、前記R圧をSV2に導き強制的にSV2をON(○)状態にする油路112と、が設けられ、SV1がOFF(×)状態の場合であってもR圧が入っていれば、SV2をON(○)状態にし、SL3によって後進段で使用されるC3クラッチを係合できる構成となっている。
【0035】
更に、本実施例の油路構成は、SV1の切換回路から中継されたD圧をSV2からSV3の切換回路に導く油路121と、前記SV3の切換回路から、B2Sブレーキと接続されたシャトル弁へと導く油路122とが設けられており、SV1がOFF(×)状態、SV2がON(○)状態、SV3がOFF(×)状態の場合のときに、D圧がB2Sブレーキに供給され、大きい面積のB2LブレーキにはSL2が連結される。この構成によれば、多段化によるトルク容量の増大とコスト・スペース低減のため1−2ワンウェイクラッチ(O.W.C)を廃止することが可能となる。即ち、NHのSL2がOFF故障した場合にも、B2Sブレーキによる1st発進と、コースト制御を実行することが可能となっている。
【0036】
また、図5では、B2のピストン面積を最適に分割した場合を想定してB2SブレーキにD圧を直接連結したが、断面構成にて最適にできない場合や、車両やエンジンによってコースト制御をきめ細かく設定したい場合などは、図7に示したようにB2Sブレーキとシャトル弁との間にブレーキコントロールバルブ(減圧弁)131を配設することもできる。この構成によれば、後退段のシフトパターンが選択された時はR圧がブレーキコントロールバルブ131のスプリング室に入ることによってブレーキコントロールバルブ131のスプールが同図左側に移動し、R圧がシャトル弁を経由して、ブレーキコントロールバルブ131の供給ポートから出力ポートに連通して、R圧をB2Sブレーキに導くようにし、また1st固定シフトパターンが選択された時には、SV1、SV2、SV3を経由したD圧(油路122の出力)をシャトル弁経由でブレーキコントロールバルブ131の供給ポートに導き、スロットル圧をブレーキコントロールバルブ131のバネ力を助長するようにすれば、スロットル圧に比例して、D圧を減圧してB2Sブレーキを制御する構成が得られる。
【0037】
続いて、本実施例における各シフトパターンが選択された場合の動作を個別に説明する。
[Dレンジ1−2変速モード]
Dレンジ1−2変速モードでは、図8に示すように、マニュアルバルブ(図示せず)からのD圧は常時SL2の供給ポートに連結されている。また、S3はON(○)状態であるため、前記D圧は、SV3の下から2番目の切換回路を経由してSL4の供給ポートに供給される。また、S2がON(○)状態であるため、D圧は同様に、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートに供給される。
【0038】
一方、SV3の下から3番目の切換回路を経由してSV1にD圧を導く油路があるが、SV1がOFF(×)状態であるため遮断され、SL3の供給ポートにD圧は供給されない。またSV1の上から1番目の切換回路を経由するD圧もSV2及びSV3に遮断され、B2SやSL1の排出ポートに供給されることはない。SL2の出力油路はSV1の下から1番目の切換回路を経由し、SV2の下から1番目の切換回路を経過してシャトル弁(チェックボール弁)を経由してB2Lに到達する。
【0039】
上記にてC1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)、B2Lブレーキ(SL2)が制御可能となり、C1クラッチ(SL1)とB2Lブレーキ(SL2)を用いた1st⇔C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)を用いた2nd間の自動変速が可能な、低速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。
【0040】
[Dレンジ2〜6変速モード]
Dレンジ2〜6変速モードでは、図9に示すように、S1がON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、S3がON(○)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路を経由して、SL4の供給ポートにD圧が供給される。また、S2がON(○)状態であるため、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートにD圧が供給され、SV3の下から3番目の切換回路、SV1の下から3番目の切換回路、SV2の下から2番目の切換回路を経由して、SL3の供給ポートにD圧が供給される。
【0041】
一方、D圧をSV1の上から1番目の切換回路に導く油路があるが、これはSV1がON(○)状態であるため遮断され、B2Sブレーキ及びSL1の排出ポートには到達しない。
【0042】
上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)、B1ブレーキ(SL4)が制御可能となり、下記変速段間のスキップシフトが可能な中高速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。また、SL2とSL3はNHのため、リニヤ全断線時は自動的に5thが構成される。
2nd C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)
3rd C1クラッチ(SL1)、C3クラッチ(SL3)
4th C1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)
5th C2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)
6th C2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)
【0043】
[Dレンジ1st固定モード]
Dレンジ1st固定モードでは、図10に示すように、S1がOFF(×)状態、S2がON(○)状態、S3がOFF(×)状態であるため、SL2の出力油圧はSV1の下から1番目の切換回路、SV2の下から1番目の切換回路、シャトル弁を経由し、B2Lに供給される。また、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートにD圧が供給されるとともに、SV1の上から1番目の切換回路、SV3の上から1番目の切換回路も経由してSL1の排出ポートとアキュムレータ(N−D ACC)ACC1にD圧が供給され、結果として、C1クラッチにD圧を供給したことになる。また、SV1の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の上から3番目の切換回路、SV3の下から1番目の切換回路、シャトル弁を経由してB2Sにも到達する。
【0044】
一方、S3がOFF(×)状態であるため、D圧は、SV3の下から2番目の切換回路にて遮断され、SL4の供給ポートには到達しない。同様にSV3の上から2番目の切換回路を経由するD圧も、SV2の下から3番目の切換回路にて遮断されて、SL3の供給ポートには到達しない。
【0045】
上記にてC1クラッチ(D圧)、B2Sブレーキ(D圧)、B2Lブレーキ(SL2)が係合状態となり1stが構成される。ここで、B2Lブレーキを駆動するSL2がOFF故障しても、B2Sブレーキを利用したコースト制御は可能であり、また、ストール発進は無理としても1st走行は可能である。
【0046】
[Dレンジ2nd固定モード]
Dレンジ2nd固定モードでは、図11に示すように、S1、S2がともにOFF(×)状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の下から1番目の切換回路は通過するものの、SV2の下から1番目の切換回路で遮断され、B2LブレーキにもC2クラッチにも到達しない。S3はON(○)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路を経由してSL4の供給ポートにD圧が供給される。同様に、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から2番目の切換回路を経由して、SL1の供給ポートにもD圧が供給される。
【0047】
一方、SV3の下から3番目の切換回路を経由するD圧は、SV1の下から3番目の切換回路に遮断されるので、SL3の供給ポートにD圧を供給することはない。同様に、前記SV1の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SV3の上から1番目の切換回路にも到達するが、そこで遮断されてB2SブレーキやSL1の排出ポートに供給されることはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり2ndが構成される。
【0048】
[Dレンジ3rd固定モード]
Dレンジ3rd固定モードでは、図12に示すように、S1、S2、S3が全部OFF(×)の全断線状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の下から1番目の切換回路は通過するものの、SV2の下から1番目の切換回路で遮断され、B2LブレーキにもC2クラッチにも到達しない。また、SV3の上から2番目の切換回路、SV2の下から3番目の切換回路を経由して、SL3の供給ポートにD圧が供給される。また、SV1の上から1番目の切換回路を経由するD圧は、SV2の上から3番目の切換回路に遮断され、B2Sブレーキには到達しないが、SV2の上から2番目の切換回路を経由するものは、SL1の供給ポートに到達し、SV3の上から1番目の切換回路を経由するものは、SL1の排出ポートとアキュムレータ(N−D ACC)ACC1にも到達する。結果として、C1クラッチにD圧を供給することになる。
【0049】
また、上記状態において、SV3の下から2番目の切換回路によって、SL4の供給ポートへのD圧は遮断されている。上記にてC1クラッチ(D圧)、C3クラッチ(SL3)が係合状態となり3rdが構成され、全リニヤ断線だけでなくON/OFFソレノイドを含めた全断線でも走行ができる。
【0050】
[Dレンジ4th固定モード]
Dレンジ4th固定モードでは、図13に示すように、S1、S2がともにON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、SV2の上から1番目の切換回路を経由して、SL1の供給ポートにD圧が供給される。一方、SV2の上から1番目の切換回路の手前で分岐するD圧は、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL1の排出ポート及びB2Sブレーキに供給されることはない。
【0051】
また、S3がOFF(×)状態であるため、D圧は、SV3の下から2番目の切換回路に遮断されて、SL4の供給ポートにも到達しない。またSV3の上から2番目の切換回路を経由するD圧もSV2の下から3番目の切換回路に遮断されて、SL3の供給ポートに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)が係合状態となり4thが構成される。
【0052】
[Dレンジ5th固定モード]
Dレンジ5th固定モードでは、図14に示すように、S1がON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。一方、S2、S3がともにOFF(×)状態であるため、SV3の上から2番目の切換回路、SV2の下から3番目の切換回路を経由したD圧が、SL3の供給ポートに供給される。
【0053】
また、D圧は、それぞれSV3の下から2番目の切換回路、SV2の上から1番目の切換回路、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL4の供給ポート、SL1の供給ポート、SL1の排出ポート、B2Sブレーキにも到達しない。上記にてC2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)が係合状態となり5thが構成され、全リニヤ断線となっても走行が可能な状態となる。
【0054】
また、C2クラッチが係合している4th以上(後記する6thを含む)で全ソレノイド断線の場合、C2圧(SL2)自身がSV1をON(○)側にラッチしているため、S1がON状態(○)からOFF状態(×)になっても、SV1は、切換えられず保持され、5th走行が可能である。即ち、本実施例の構成によれば、2〜6変速モードで4th以上にて走行している状態において全断線故障が生じた場合は、3rd固定モードにならず5th固定モードとなり、急減速が生じないよう構成されているのである。また、停車後、DレンジからNレンジ、Pレンジ、Rレンジにする操作、イグニッションのOFF操作等により、C2クラッチ圧が下げられた場合には、上記SV1のラッチは解除されるため、再発進では3rd発進が可能であり、更に、S2をオン状態(○)にできる場合には、1st発進が可能な構成となっている。
【0055】
[Dレンジ6th固定モード]
Dレンジ6th固定モードでは、図15に示すように、S1、S3がともにON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、SV3の下から2番目の切換回路を経由して、D圧がSL4の供給ポートに供給される。
【0056】
一方、S2がOFF(×)状態であるため、SV3の下から3番目の切換回路、SV1の下から3番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の下から2番目の切換回路によって遮断され、SL3の供給ポートに到達することはない。また、D圧は、それぞれSV2の上から1番目の切換回路、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL1の供給ポート、SL1の排出ポート、B2Sブレーキにも到達しない。上記にてC2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり6thが構成される。
【0057】
[Rレンジ]
Rレンジでは、S1がOFF(×)状態、S2がON(○)状態のとき、後進走行可能なシフトパターンとなる。R圧の切り替えに関与していないためS3は不定であるが、R⇔N⇔Dのシフトパターンの整合性を考えると、Dレンジ1−2変速モードのシフトパターンと合わせることが好ましい。例えば、S1、S2、S3がそれぞれOFF、ON、ON(×○○)状態のときにDレンジ1−2変速モードとなるようにしたならば、Rレンジも同様に、S1、S2、S3がOFF、ON、ON(×○○)状態のときに後進走行可能となるよう設定する。同様に、S1、S2、S3がそれぞれOFF、ON、OFF(×○×)状態のときにDレンジ1−2変速モードとなるようにしたならば、Rレンジも同様に、S1、S2、S3がOFF、ON、OFF(×○×)状態のときに後進走行可能となるよう設定する。
【0058】
いずれにしてもRレンジが選択されると、図16に示すように、マニュアルバルブ(図示せず)からのR圧は、シャトル弁(チェックボール弁)を経由し、B2SブレーキおよびB2Lブレーキに供給される。また、S1がOFF(×)状態、S2がON(○)状態であるため、SV1の上から2番目の切換回路、SV2の下から2番目の切換回路を経由したR圧が、SL3の供給ポートに供給される。
【0059】
図17は、S1、S2がともにOFF(×)状態になった場合の状態を表した図である。図17に示された通り、本実施例の構成では、R圧がSV2の一端に導き、SV2をON(○)側に強制的に移動させる構成となっているため、全断線時にも後進走行が可能になっている。
【0060】
また、本実施例によれば、Rレンジにおける逆転禁止制御の信頼性が向上されている。図18は、S1、S2がON、OFF(○×)状態ないしON、ON(○○)状態でR圧が掛かっている場合の状態を表した図である。一般の逆転禁止制御では、車速が所定速度以上ではR走行モードに移行しないように、SL3をONにしC3クラッチを解放状態にすることでRevインヒビターを実施している。本実施例によれば、SL3がON故障した場合にも、S1がON(○)状態であれば確実に、SV1の上から2番目の切換回路にてSL3の供給ポートへのR圧の供給を遮断できるようになっている。従って、S1、S2、S3がOFF、ON、OFF(×○×)状態(1st)、S1、S2、S3がOFF、ON、ON(×○○)状態(1−2自動変速)、S1、S2、S3がON、ON、ON(○○○)状態(2〜6自動変速)からRレンジに切り替えられた時にRevインヒビターを確実に実行できる構成となっている。
【0061】
また、本実施例においては、C1クラッチと、B1ブレーキへの油路にそれぞれ油圧スイッチ(油圧SW)が配設されている。上述したDレンジ1−2変速モードで、断線等によるSL2のON故障が生じた場合は、C1クラッチ(SL1)及びB2ブレーキ(SL2)を係合した1stを構成中であれば1stを維持するようにすればよいが、2ndを構成中には、C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)及びB2ブレーキ(SL2)の係合によりインターロックが生ずる。この場合は、上記油圧SWにて当該状態を検知し、1stに戻すことが可能となる。
【0062】
同様に、上述したDレンジ1−2変速モードで、断線等によるSL4のON故障が生じた場合にも同様の現象が生じうるが、この場合も、上記油圧SWにて当該状態を検知し、2ndに維持・戻すことが可能となる。
【0063】
また、本実施例においては、一つ目のON/OFFのソレノイドの1次故障により、Dレンジ固定モードとなった状態から、2つ目のON/OFFのソレノイドの故障対策も措置されている。S1、S2、S3のいずれかが断線ないしON故障したとしても、3つ目のON/OFFのソレノイドを操作することによって、変速段を保持ないし急減速を回避可能となっている。更に、3次故障に至っては、構成中の変速段を維持するか、Nレンジとなるかで、急減速とならない構成となっている。これは、シフトパターンを固定モードにさせることができれば1、2次以上の高次の故障にも対応できることを意味しており、他社のフェールバルブを用いた構成に比べて、フェールバルブ自体の故障によるフェール不成立がない点だけとっても優位である。
【0064】
[実施例2]
続いて、上記第1の実施例に対して油路を追加して下記(1)〜(3)の機能を実現した本発明の第2の実施例について説明する。以下、下記機能すべてを備えたMAX仕様ともいうべき例を挙げて説明するが、(1)〜(3)の機能は、上記第1の実施例に対するオプションとしてそれぞれ独立して採用可能であることはいうまでもない。
(1)リニアソレノイドのON故障早期検知
(2)Rレンジにおける信頼性向上
(3)リニアソレノイドのOFF故障対策
【0065】
図19は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図20は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。図6と図20を対比すると、本実施例で各摩擦係合要素の制御に用いるリニアソレノイドのタイプ(NL/NH)は上記第1の実施例と同様であり、Rレンジに走行可能なパターンの追加(S1がON(○)でも可)が行われている。
【0066】
図19を参照してより具体的に説明すると、本実施例の油路構成では、図5の油路構成に対し、SL2の出力油圧をSV3の端部に導き、SL2の出力油圧が所定値以上となった場合にSV3をOFF(×)側に強制的に移動させる油路201と、リニアソレノイド(SLT)によって切換動作される切換弁211と、切換弁211の第1の切換回路とSL3の排出ポートを連通する油路212と、油路212上に配置されるアキュムレータ(N−R ACC)ACC2と、切換弁211の第2の切換回路とSL2の排出ポートを連通する油路213とが新たに追加されている。
【0067】
[リニアソレノイドのON故障早期検知]
図21に示したように、SL2の出力油圧には、通常の使用領域で使用する変速領域と、変速領域を超え、フェール時に検出されるフェール領域とが設定されている。一方、SV3は、油路201を介して、バルブ端部のバネ室にSL2の出力油圧が導入される構成となっており、SL2の出力油圧が前記変速領域を超えるとOFF(×)側にとなるように構成されている。
【0068】
上記構成により、例えば、SL2がON故障した場合、上記第1の実施例のようにリニアソレノイドのタイプ(NL/NH)によるのではなく、図22に示したように、速やかにS3がON(○)からOFF(×)状態に移行し、Dレンジ1−2変速モードからDレンジ1st固定モードへ、Dレンジ2〜6変速モードからDレンジ4th固定モードへ移行可能となる。上記構成に加えて、SL3とSL4の供給ポートの上流に、SL2の出力油圧によってSL3とSL4の供給圧を遮断する追加の切換弁を配置してもよい。
【0069】
既に説明したように、上記第1の実施例では、Dレンジ1−2変速モードで、断線等によるSL2、SL4のON故障によるインターロックを回避する必要があるが、特に1stとより高速となる2ndでは、インターロックを早期に検知し短期間に適切なシフトパターンに移行する必要がある。しかしながら、油路201の追加及びSV3の構成変更を加えた本実施例によれば、2nd走行状態でSL2がON故障した場合、SL2の出力油圧が変速領域からフェール領域に至る。そして、SV3がOFF(×)状態となるため、SV3の下から2番目の切換回路によってSL4へのD圧供給がカットされ、ECU(Electronic Control Unit)の検知及び処理に依存せず、自動的に2nd→1stダウンシフトが行われる。
【0070】
また、油圧SWが故障した場合に、ECUでモニタする回転変化にてインターロックを検定する方法があるが、上記のように2nd→1stダウンシフト制御を行うこととすれば、インターロックよりも安全である上、インターロックよりも時間的余裕があるので、ECUにて、2ndと1stの違いを検知し、更に安全な固定モードへのシフトパターンにすることができる。
【0071】
同様に、1st走行状態でのSL4のON故障は、2nd→1stダウンシフト直後にて発生すると考えられるが、例えば、2nd→1stダウンシフトによる変速が所定時間以上掛かった場合に、SL2の出力油圧を変速領域からフェール領域にすることで、SL4へのD圧供給を絶ち変速を促進することができる。この場合も、SL2の出力油圧はフェール領域近くまで上昇していると考えられるため、ECUがインターロックを検知してからON/OFFソレノイドによってシフトバルブを切換える方式に比べて、すばやく1stへの切換が可能となる。
【0072】
また、2〜6変速モードでのインターロックも上記1−2変速モードと同様であり、低速段より高速段程、早期にインターロックを検知し、短期間に適切なシフトパターンに移行する必要があるのはいうまでもないが本実施例の構成によれば、4th以上(4th〜6th)でSL2がON故障(断線)した場合、同様にSL2の出力油圧が変速領域からフェール領域に至り、SV3によってSL3及びSL4へのD圧供給がカットされる。その結果、C2クラッチ(SL2−ON)、C1クラッチ(SL1)がともに係合状態となり4thが構成されるため、ECUの検知及び処理に依存せずインターロックが回避される。
【0073】
例えば、2〜6変速モードで4th走行中に、SL2のON故障(断線)が発生した場合4thに維持にされる。一方、2〜6変速モードで5th走行中では、まず、SL3へのD圧供給がカットされてN(C2クラッチのみ係合)となる。そこで回転変化を検知し、4th可ならばSL1をON状態にして4thにシフトダウンし、5thを保持すべきならば、S2をON(○)状態からOFF(×)に変更して固定5thモードにすることができる。同様に6thでもN(C2)となるが、回転変化を検知し、4thが良い場合はSL1をON状態にして4thにシフトダウンし、5thの方が良い場合はS2をON(○)状態からOFF(×)に変更して固定5thモードにシフトダウンすることができる。なお、4th、5thへのシフトダウンが適当でない場合は、6thの保持はできないため、車速が低下してから4th又は5thに移行する制御が可能である。
【0074】
また、2〜6変速モードで2nd走行中の場合は、C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)を係合した状態であり、インターロックはSL3又はSL2のON故障に限定される。同様に、2〜6変速モードで3rd走行中の場合は、C1クラッチ(SL1)、C3クラッチ(SL3)を係合した状態でありインターロックは、SL4又はSL2のON故障に限定される。上記2nd、3rdのインターロックにおいて、SL2のON故障は、上記したように自動的にC2クラッチ(SL2−ON)、C1クラッチ(SL1)がともに係合状態となり4thが構成され、急減速になることはない。
【0075】
一方、2nd走行状態でのSL3のON故障(3rd→2ndシフトダウン)及び3rd走行状態でのSL4のON故障(4th→3rdシフトダウン)の場合は、S2をON(○)状態からOFF(×)状態にして6th固定モードへ、又は、S3をON(○)状態からOFF(×)状態にして4th固定モードへ移行することが考えられる。本実施例では、S3がON故障していた場合でもSV3がスティックしていなければSL2の出力油圧をフェール領域まで引き上げることによって、4th固定モードにすることができる点で、第1の実施例に比べて、フェールセーフの信頼性は向上している。
【0076】
[Rレンジにおける信頼性向上]
図19に示したように、本実施例では、切換弁211と、油路212の追加により、S3がOFF(×)状態、かつ、スロットル圧が所定値以上のときに、マニュアルバルブからのR圧を、SV3の上から1番目の切換回路を経由し、アキュムレータ(N−R ACC)ACC2と、SL3の排出ポートに供給できるような構成となっている。
【0077】
図23は、RレンジでS1、S3がともにOFF(×)状態である場合の状態を表した図であり、図24は、RレンジでS1がON(○)状態、S3がOFF(×)状態である場合の状態を表した図である。図23に表されたとおり、S1、S3がともにOFF(×)状態である場合、R圧は、SL3の排出ポートとともに、アキュムレータ(N−R ACC)ACC2にも供給されるため、SL3がOFF故障しても後進走行が可能であり、また、変速ショックを低減できる構成となっている。
【0078】
一方、図24を参照すると、S1がON(○)状態、S3がOFF(×)状態である場合、ノーマルハイタイプであるはずのSL3が、開状態のとき出力ハイとなり、閉状態のとき出力ロウとなるNLのON/OFFソレノイド相当に変化する。従って、このパターンは、SL3がOFF故障(開)の時には後進を可能とし、SL3がON故障(閉)の時にはRevインヒビターを実施する。
【0079】
[リニアソレノイドのOFF故障対策]
図25に示したように、リニアソレノイド(SLT)には、通常レギュレータバルブの調整用のスロットル圧として動作するスロットル領域と、スロットル領域を超えフェール時に検出されるフェール領域とが設定されている。上記SLTがその端部の油室に導入される切換弁211は、SLTが通常のスロットル領域ではOFF(×)位置を保持し、SLTがフェール領域となった場合にON(○)となるよう付勢されている。
【0080】
例えば、SLTが通常のスロットル領域では、切換弁211の各切換回路を介して、SL2の排出ポートとドレン(EX)とが、SV3の上から1番目の切換回路の出力油路とSL3の排出ポートとが連通される。一方、SLTがフェール領域に至ると、切換弁211の上から2番目の切換回路を介して、SV3の上から3番目の出力油路(S3がOFF(×)状態のときD圧を出力)とSL2の排出ポートとを連通するとともに、切換弁211の上から1番目の切換回路を介して、SV2の上から1番目の出力油路(S2、S3がともにOFF(×)状態のときD圧を出力)とSL3の排出ポートとを連通する。なお、上記[Rレンジにおける信頼性向上]を不要とする場合は、切換弁211の下から1番目の切換回路のみを残し、SL2の排出ポートとEx(ドレン)とを連結した状態と、SL2の排出ポートとD圧出力油路とを連結した状態と、切換可能とすればよい。
【0081】
続いて、本実施例における各シフトパターンが選択された場合の動作を、第1の実施例で既に説明した部分は省略して個別に説明する。
[Rレンジ]
Rレンジでは、SLTの出力圧がスロットル領域の範囲を超えている場合、SL3の状態(ON/OFF)に関係なくC3クラッチにR圧が導入されることはなく、図26のように、C3クラッチは、SL3の状態(ON/OFF)によって制御可能である。Dレンジ1st固定モード、及び、Dレンジ3rd固定モードからRレンジに切り替えられた時に、SLT出力圧がスロットル領域にある場合は、S1をOFF(×)状態からON(○)状態にすることで(図24の状態)とし、Revインヒビターすることになるが、フェールが検出された場合には図26に示したように、仮にS1がOFF故障したとしても、SL3にてC3クラッチ圧を抜くことができる。このことは、3rdの高速でDレンジにて走行中(1次故障フェール中)にRレンジへのミスシフトが行なわれた場合に、C3クラッチ圧を抜きN状態とするフェールセーフ機構が追加可能であることを意味している。
【0082】
S1がON(○)状態にある場合でも、SLTの出力圧がスロットル領域の範囲を超えている場合は、図27に示したとおり完全にN状態とすることができる。Dレンジ4th固定モードやDレンジ5th固定モードからRレンジに切り替えられた場合でも、切換弁211がON(○)側に動作すれば、R圧を絶ち、早期にN状態とすることが可能である。以上、リニアソレノイドのOFF故障対策が施された本実施例によれば、Dレンジとは逆に、フェールを検知次第、後進走行からN状態にできるところにその特徴がある。
【0083】
続いて、Dレンジについては、S3がON(○)状態にある場合は、上記第1の実施例と略同様であるので、S3がOFF(×)状態にある1st、3rd、4th、5thについて説明する。
[Dレンジ1st固定モード]
図28は、Dレンジ1st固定モードが選択されている場合の状態を表した図である。第1の実施例の図10と同じ油路については省略して説明を加えると、本実施例のDレンジ1st固定モードでは、S3がOFF(×)状態であるためSV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、フェールモードにて切換弁211の下から1番目の切換回路を経由してSL2の排出ポートに供給される。このため、SL2がOFF故障した場合でもB2ブレーキにD圧を供給することができ、ストール発進が可能な構成となっている。
【0084】
[Dレンジ3rd固定モード]
図29は、Dレンジ3rd固定モードが選択されている場合の状態を表した図である。第1の実施例の図12と同じ油路については省略して説明を加えると、本実施例のDレンジ3rd固定モードでも、S3がOFF(×)状態であるためSV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、フェールモードにて切換弁211の下から1番目の切換回路を経由してSL2の排出ポートに供給される。これによりSL2の出力油圧はD圧となるが、S2がOFF(×)状態であるため、SV2の下から1番目の切換回路に遮断されてB2Lブレーキに到達することはない。
【0085】
一方、SV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の上から1番目の切換回路を経由して、切換弁211の上から2番目の切換回路に到達し、フェールモードにてアキュムレータとSL3の排出ポートに供給され、SL3の出力圧はD圧となる。上記にてC1クラッチ(D圧)、C3クラッチ(D圧)が係合状態となり3rdが構成され、SL1とSL3のOFF故障に関係なく、走行が可能となる。
【0086】
[Dレンジ4th固定モード]
図30は、Dレンジ4th固定モードが選択されている場合の状態を表した図である。第1の実施例の図13と同じ油路については省略して説明を加えると、本実施例のDレンジ4th固定モードでも、S3がOFF(×)状態であるためSV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、フェールモードにて切換弁211の下から1番目の切換回路を経由してSL2の排出ポートに供給され、SL2の出力圧はD圧となる。上記にてSL2がOFF故障した場合でもC2クラッチを係合し4th走行が可能となっている。
【0087】
なお、本実施例の構成によれば、SL1がOFF故障した場合は、N状態(C2クラッチのみ係合)となる。もちろん、SL1がOFF故障した場合も、各シフトバルブに追加の切換回路を設け、SL1の排出ポートに油圧を供給することにより、走行を可能にする構成を採ることも可能である。
【0088】
[Dレンジ5th固定モード]
図31は、Dレンジ5th固定モードが選択されている場合の状態を表した図である。第1の実施例の図14と同じ油路については省略して説明を加えると、本実施例のDレンジ5th固定モードでも、S3がOFF(×)状態であるためSV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、フェールモードにて切換弁211の下から1番目の切換回路を経由してSL2の排出ポートに供給され、SL2の出力圧はD圧となる。
【0089】
またSV3の上から3番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の上から1番目の切換回路、切換弁211の上から2番目の切換回路を経由し、アキュムレータとSL3の排出ポートに供給され、SL3の出力圧もD圧となる。上記にて、SL2とSL3がそれぞれOFF故障した場合にも、C2クラッチ、C3クラッチそれぞれにD圧を供給し、5th走行が可能となっている。
【0090】
以上のとおり、第2の実施例は、第1の実施例に機能を追加した構成となっている。なお、第2の実施例は,各電磁弁と摩擦係合要素の油路長を短縮し、各電磁弁をAT本体の摩擦係合要素の油口近くに配置した上で、機能向上を図ったものであるが、各電磁弁と摩擦係合要素間の配置の制約を緩めることも可能である。
【0091】
[実施例3]
続いて、上記第1、第2の実施例に対して各電磁弁と摩擦係合要素の油路長の制約を緩めた本発明の第3の実施例について説明する。図32は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図33は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。なお、図32においては、図面の簡略化のためドレン(Ex)の記載を省略してあるが、SVにて阻止された場合は、上記した第1、第2の実施例と同様、そのSVにEx(排出)が好ましく配置され、必要な油路を排出できるものとする。
【0092】
図32と図33を参照すると、本実施例は、シフトバルブの上流側にリニアソレノイドを配置している点で上記第1、第2の実施例と異なっており、その分、各電磁弁と摩擦係合要素間の距離は長くなっている。また、本実施例は、各摩擦係合要素にリニアソレノイドを専属させるのではなく、2つのノーマルハイタイプ(NH)のリニアソレノイドを用意し(SL1及びSL2)、リニアソレノイドの全断線が生じた場合に、前記NHのリニアソレノイドによって極力最寄りの変速段が構成されるよう油路を構成している点で上記第1、第2の実施例と異なっているが、シフトバルブのオンオフ状態の特定の組み合わせを、1−2変速モード及び2〜6変速モードに割り当て、その他を固定変速段モードに割り当てている点では共通している。
【0093】
続いて、本実施例における各シフトパターンが選択された場合の動作を個別に説明する。
[Dレンジ1−2変速モード]
Dレンジ1−2変速モードでは、図34に示すように、SL1の出力油路は、S2がON(○)状態であるため、SV2の下から3番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、S1がOFF(×)状態であるため、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から3番目の切換回路を経由してB2ブレーキに連通される。また、SL4の出力油路は、S3がON(○)状態であるため、SV3の下から1、2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。
【0094】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路と連通するが、S1がOFF(×)状態であるため、SV1の下から1番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)、B2ブレーキ(SL2)が制御可能となり、C1クラッチ(SL1)とB2ブレーキ(SL2)を用いた1stと、C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)を用いた2nd間の自動変速が可能な、低速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。また、SL1とSL2がNHであるため、リニアソレノイドの全断線時には自動的に1stが構成される。
【0095】
[Dレンジ2〜6変速モード]
Dレンジ2〜6変速モードでは、図35に示すように、S1、S2、S3がいずれもON(○)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から3番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から2番目の切換回路を経由してC2クラッチに連通される。また、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路、SV1の下から1番目の切換回路、SV3の上から1番目の切換回路を経由してC3クラッチに連通される。SL4の出力油路は、SV3の下から1、2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。
【0096】
上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)、B1ブレーキ(SL4)が制御可能となり、下記変速段間のスキップシフトが可能な中高速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。また、SL1とSL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時は自動的に4thが構成される。
【0097】
[Dレンジ1st固定モード]
Dレンジ1st固定モードでは、図36に示すように、S1がOFF(×)状態、S2がON(○)状態、S3がOFF(×)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から3番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から3番目の切換回路、シャトル弁を経由してB2ブレーキに連通される。
【0098】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路と連通するが、S1がOFF(×)状態であるため、SV1の下から1番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から1、2番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。
【0099】
上記にてC1クラッチ(SL1)、B2ブレーキ(SL2)が係合状態となり1stが構成される。また、SL1とSL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時も1stが維持される。なお、ON/OFFソレノイドを含めた全断線と、リニアソレノイドの全断線を分けて考えているのは、リニアソレノイドは変速で使われる頻度が非常に高いため、断線ばかりでなく、ハード的なOFF故障も断線として取扱う必要があるためである。ただしイグニッションオフ時等は、上記ON/OFFソレノイドを含めた全断線になる。
【0100】
[Dレンジ2nd固定モード]
Dレンジ2nd固定モードでは、図37に示すように、S1、S2がともにOFF(×)状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から4番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。また、SL4の出力油路は、SV3の下から1、2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。
【0101】
なお、SL1の出力油路は、SV2の下から2番目の切換回路と連通するが、S3がON(○)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL3の出力油路も、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり2ndが構成される。また、SL2はNH、SL4はNLであるため、リニアソレノイドの全断線時はN(C1)となる。
【0102】
[Dレンジ3rd固定モード]
Dレンジ3rd固定モードでは、図38に示すように、S1、S2、S3が全部OFF(×)の全断線状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から2番目の切換回路、SV3の上から2番目の切換回路を経由してC3クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から4番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。
【0103】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から1、2番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。上記にてC3クラッチ(SL1)、C1クラッチ(SL2)が係合状態となり3rdが構成される。また、SL1、SL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時も3rdが維持される。
【0104】
[Dレンジ4th固定モード]
Dレンジ4th固定モードでは、図39に示すように、S1、S2がともにON(○)状態、S3がOFF(×)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から3番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から2番目の切換回路、を経由してC2クラッチに連通される。また、SL2の出力油路からSV1端部の油室に至るラッチ回路が配設されており、SV1端部の油室にSL2出力油圧を導き、SV1がON(○)状態を保持するよう構成されている。
【0105】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路、SV1の下から1番目の切換回路と連通されているが、SV3の上から1番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から1、2番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)が係合状態となり4thが構成される。また、SL1、SL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時も4thが維持される。
【0106】
[Dレンジ5th固定モード]
Dレンジ5th固定モードでは、図40に示すように、S1がON(○)状態、S2、S3がOFF(×)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から2番目の切換回路、SV3の上から2番目の切換回路を経由してC3クラッチに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに連通される。
【0107】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から1、2番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。上記にてC3クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)が係合状態となり5thが構成される。また、SL1、SL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時も5thが維持される。
【0108】
[Dレンジ6th固定モード]
Dレンジ6th固定モードでは、図41に示すように、S1、S3がともにON(○)状態、S2がOFF(×)状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の上から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに連通される。また、SL4の出力油路は、SV3の下から1、2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。
【0109】
なお、SL1の出力油路は、SV2の下から2番目の切換回路と連通されているが、SV3の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL3の出力油路も、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。上記にてC2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり6thが構成される。また、SL2はNH、SL4はNLであるため、リニアソレノイドの全断線時はN(C2)となる。
【0110】
以上のDレンジの動作において、2ndと6th固定モード選択時におけるリニアソレノイドの全断線時にN状態となってしまうが、2ndの場合は、1−2変速モード、2〜6変速モード、3rd固定モードへ移行し、これらのリニアソレノイドの全断線時の変速段にて走行することが可能となる。同様に、6thの場合は、2〜6変速モード、5th固定モード,3rd固定モードへ移行し、これらのリニアソレノイドの全断線時の変速段にて走行することが可能となる。
【0111】
[Rレンジ]
Rレンジでは、図42に示すように、S3がOFF(×)状態、S1、S2が不定状態である。R圧は、SV2の端部油室に導かれSV2を強制的にOFF(×)状態にするとともに、SL1と、シャトル弁を経由してB2ブレーキに供給されるが、SL2、SL3、SL4には供給されない。SL1の出力油路は、SV2がOFF(×)状態となるため、SV2の下から2番目の切換回路、SV3の上から2番目の切換回路を経由し、C3クラッチに連通される。
【0112】
上記にてB2ブレーキ(R圧)、C3クラッチ(SL1)が係合状態となり後進段が構成される。また、SL1はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時はRが維持される。
【0113】
図43は、RレンジにてSV1がON(○)側にスティックした場合の状態を表した図であるが、本実施例の構成によれば、SV2の下から1番目の切換回路、SV3の上から2番目の切換回路を経由して、R圧をC3に到達させ、R走行を維持することが可能である。また、図42の状態からSL1がON故障(断線故障)が発生した状態において、高速走行状態からRレンジが選択された場合、S3をON(○)状態にするリバースインヒビター制御を行うことで、C3クラッチにR圧が到達することを防ぐことができる。
【0114】
上述した第3の実施例では、自動変速モードにてNLタイプのリニアソレノイドがON故障した場合のためにインターロックを検知する仕組みが必要となるが、上記した第2の実施例同様に、リニアソレノイドのON故障早期検知機能を備えることが好ましいといえる。また、リニアソレノイドのOFF故障対策も施されていることが好ましいといえる。
【0115】
[実施例4]
図44は上記した観点から第3の実施例の機能向上を図った自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。図44を参照すると、SL3及びSL4の供給ポートの上流側に設けられたアプライバルブ(APP.V)と、電磁弁で駆動する切換弁211が追加された構成となっている。アプライバルブ(APP.V)は、SL2の出力圧が所定値以上になると、SL3とSL4の供給圧(D圧)を遮断してExに連通させる。
【0116】
上述したDレンジ1−2変速モードで、断線等によるSL2のON故障が生じた場合、C1クラッチ(SL1)及びB1ブレーキ(SL4)を係合した2ndを構成中には、C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)及びB2ブレーキ(SL2)の係合によりインターロックが生じうる。しかしながら本実施例の構成によれば、最終的にSL2の出力圧が所定値以上となると、アプライバルブが切換えられ、B1ブレーキ(SL4)を強制解放するので、そのままのシフトパターンでも1st走行が可能となる。また、アプライバルブがスティックした場合は、適宜配置する油圧SW等で当該状態を検知することにより、シフトパターンを変更して固定モードに移行できるのでNモードにする必要もない。
【0117】
また、本実施例の構成では、切換弁211の動作により、SL1とSL2の排出ポートに油圧を供給して強制的に出力圧を維持することが可能となっている。切換弁211のON/OFFは、変速に係わらないスロットル圧を制御するSLT等の他の電磁弁を好ましく用いることができ、上述した第2の実施例と同様、切換弁211は、電磁弁の出力圧が所定のフェール領域に到った場合に動作し、SL1とSL2の排出ポートに油圧を供給する。
【0118】
なお、SL2は、Dレンジのみ用いるのでD圧を供給するものとし、SL1は前進時にはD圧を供給し、後進時にはC3クラッチに限定するためにSV2の切換回路を経由しR圧を供給するものとする。上記構成とすることによって、各固定モードにてSL1、SL2がOFF故障しても、切換弁211を作動させることによって変速段を維持することが可能となる。第4の実施例は、第3の実施例の構成に対し、2本のバルブを追加するだけで構成可能であり、油圧SWを必要な箇所(SL3,SL4,SV3)に付加するよりもコスト上有利である。
【0119】
[実施例5]
続いて、上記第3、4の実施例と同様の構成を採りつつ、各固定モードにおけるリニアソレノイドの全断線時に必ず変速段が構成されるようにした第5の実施例について説明する。図45は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図46は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。なお、図45においても、図面の簡略化のためドレン(Ex)の記載を省略してあるが、SVにて阻止された場合は、上記した第1、第2の実施例と同様、そのSVにEx(排出)が好ましく配置され、必要な油路を排出できるものとする。
【0120】
図45と図46を参照すると、上記第3、第4の実施例に対し、SV2、SV3に切換回路を追加した構成となっている。より具体的には、SL4の出力油路をSV3直後でB1ブレーキに連結するのではなく、SV2を連通した後にB1ブレーキと連結したことと、SL1の出力油路をSV3、SV2を介しB1ブレーキにも連結可能としたことである。この結果、2nd固定モード、6th固定モードでのB1ブレーキの制御にSL1が割り当てられ、図46に表されたように、すべての固定段モードで、リニアソレノイドの全断線時にそれぞれ元の変速段を維持できるような構成となっている。また、2〜6変速モードではリニアソレノイドの全断線時に3rdとなるよう構成されている。
【0121】
続いて、上記第3の実施例で既に説明した走行モードについては説明を省略し、2nd、6th固定モードについて説明する。
【0122】
[Dレンジ2nd固定モード]
Dレンジ2nd固定モードでは、図47に示すように、S1、S2がともにOFF(×)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から4番目の切換回路、SV3の上から4番目の切換回路、SV2の下から2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から4番目の切換回路を経由してC1クラッチに連通される。
【0123】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から2番目の切換回路に連通するが、SV2の下から1番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL1)が係合状態となり2ndが構成される。また、SL1、SL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時は2ndが維持される。
【0124】
[Dレンジ6th固定モード]
Dレンジ6th固定モードでは、図48に示すように、S1、S3がともにON(○)状態、S2がOFF(×)状態であるため、SL1の出力油路は、SV2の下から4番目の切換回路、SV3の上から4番目の切換回路、SV2の下から2番目の切換回路を経由してB1ブレーキに連通される。また、SL2の出力油路は、SV1の上から2番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに連通される。
【0125】
なお、SL3の出力油路は、SV2の上から2番目の切換回路で遮断されC3クラッチに到達することはない。同様にSL4の出力油路も、SV3の下から2番目の切換回路に連通するが、SV2の下から1番目の切換回路で遮断されB1ブレーキに到達することはない。上記にてC2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL1)が係合状態となり6thが構成される。また、SL1、SL2はNHであるため、リニアソレノイドの全断線時は6thが維持される。
【0126】
[実施例6]
なお、上記第5の実施例も第4の実施例と同様の機能向上を図ることが可能である。図49は、本発明の第6の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。図49を参照すると、第6の実施例も、第4の実施例と同様、SL3及びSL4の供給ポートの上流側に設けられたアプライバルブ(APP.V)と、電磁弁で駆動する切換弁211が追加された構成となっている。その動作は、上述した第4の実施例と同様であるため説明は省略する。
【0127】
以上、本発明の第3ないし第6の実施例を説明したが、油圧SWを追加することによってその信頼性を向上させることも可能である。図50は、本発明の第3の実施例のSL3、SL4の下流側にそれぞれ油圧スイッチSW3、SW4を配設した例である。図51は、本発明の第4の実施例のアプライバルブの下流側に油圧スイッチSW−APPを配設した例である。図52は、本発明の第5の実施例のSL3、SL4の下流側にそれぞれ油圧スイッチSW3、SW4を配設した例である。図53は、本発明の第5の実施例のアプライバルブの下流側に油圧スイッチSW−APPを配設した例である。
【0128】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、油路の追加、制御の追加など各種の変形を加えることが可能である。例えば、上記した各実施例において、S3がON(○)状態のときのみ、図示していないロックアップ用リニアソレノイドを連結し、車速等による上記1−2自動変速モード等への切換えの検知後、ロックアップを行う構成とすれば、1stでリニアソレノイドが故障しても直ちにエンストすることを回避できる。
【0129】
また、上記した実施の形態では、5つの摩擦係合要素で前進6速段を有する自動変速機に適用した例を挙げて説明したが、その他の自動変速機にも適用可能である。例えば、上記した実施の形態では、3個のシフトバルブを用いた23=8パターンをそれぞれ2つの自動変速モードと、すべての固定段モードに割り当てるものとしたが、自動変速モードを1つとした場合には、残りの一つを予備パターンとしたり、7つの固定段に割り当てることが可能である。
【0130】
また、7速段以上でスキップシフトを実現するには、各摩擦係合要素を駆動するリニアソレノイドの数が増大することになるが、その場合にも本発明を同様に適用可能であり、適宜シフトバルブを増やすことによって、シフトパターンを増やし、フェールに対する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自動変速機の油圧制御装置のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図3】電磁弁のタイプ(NH/NL)を割り当てて、図2の表を書き直した表である。
【図4】本発明の実施例で使用可能な電磁弁を説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施例のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図7】本発明の第1の実施例に油圧回路に、ブレーキコントロールバルブ(減圧弁)を配設した例である。
【図8】本発明の第1の実施例における1−2変速モードの状態を表した図である。
【図9】本発明の第1の実施例における2〜6変速モードの状態を表した図である。
【図10】本発明の第1の実施例における1st固定モードの状態を表した図である。
【図11】本発明の第1の実施例における2nd固定モードの状態を表した図である。
【図12】本発明の第1の実施例における3rd固定モードの状態を表した図である。
【図13】本発明の第1の実施例における4th固定モードの状態を表した図である。
【図14】本発明の第1の実施例における5th固定モードの状態を表した図である。
【図15】本発明の第1の実施例における6th固定モードの状態を表した図である。
【図16】本発明の第1の実施例におけるRレンジ選択時の状態を表した図である。
【図17】本発明の第1の実施例におけるRレンジ選択時に、S1、S2がともにOFF(×)状態になった場合の状態を表した図である。
【図18】本発明の第1の実施例におけるRレンジ選択時に、S1、S2がON、OFF(○×)状態ないしON、ON(○○)状態である場合の状態を表した図である。
【図19】本発明の第2の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図20】本発明の第2の実施例のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図21】SL2の出力油圧と指示電流の関係を説明するための図である。
【図22】本発明の第2の実施例におけるSL2がON(○)状態、かつ、S3がON(○)状態からOFF(×)状態に移行した場合の摩擦係合要素及びリニアソレノイドの挙動を説明するための表である。
【図23】本発明の第2の実施例におけるRレンジ選択時に、S1、S3がともにOFF(×)状態である場合の状態を表した図である。
【図24】本発明の第2の実施例におけるRレンジ選択時に、S1がON(○)状態、S3がOFF(×)状態である場合の状態を表した図である。
【図25】SLTの出力油圧と指示電流の関係を説明するための図である。
【図26】本発明の第2の実施例におけるRレンジ選択時に、切換弁が作動した状態を表した図である。
【図27】本発明の第2の実施例におけるRレンジ選択時に、切換弁が作動した別の状態を表した図である。
【図28】本発明の第2の実施例における1st固定モードの状態を表した図である。
【図29】本発明の第2の実施例における3rd固定モードの状態を表した図である。
【図30】本発明の第2の実施例における4th固定モードの状態を表した図である。
【図31】本発明の第2の実施例における5th固定モードの状態を表した図である。
【図32】本発明の第3の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図33】本発明の第3の実施例のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図34】本発明の第3の実施例における1−2変速モードの状態を表した図である。
【図35】本発明の第3の実施例における2〜6変速モードの状態を表した図である。
【図36】本発明の第3の実施例における1st固定モードの状態を表した図である。
【図37】本発明の第3の実施例における2nd固定モードの状態を表した図である。
【図38】本発明の第3の実施例における3rd固定モードの状態を表した図である。
【図39】本発明の第3の実施例における4th固定モードの状態を表した図である。
【図40】本発明の第3の実施例における5th固定モードの状態を表した図である。
【図41】本発明の第3の実施例における6th固定モードの状態を表した図である。
【図42】本発明の第3の実施例におけるRレンジ選択時の状態を表した図である。
【図43】本発明の第3の実施例におけるRレンジ選択時にS2のONスティック(固着)が発生した状態を表した図である。
【図44】本発明の第4の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図45】本発明の第5の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図46】本発明の第5の実施例のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図47】本発明の第5の実施例における2nd固定モードの状態を表した図である。
【図48】本発明の第5の実施例における6th固定モードの状態を表した図である。
【図49】本発明の第6の実施例の油圧回路を表したブロック図である。
【図50】本発明の第3の実施例の油圧回路に油圧スイッチを追加した例を表した図である。
【図51】本発明の第4の実施例の油圧回路に油圧スイッチを追加した例を表した図である。
【図52】本発明の第5の実施例の油圧回路に油圧スイッチを追加した例を表した図である。
【図53】本発明の第6の実施例の油圧回路に油圧スイッチを追加した例を表した図である。
【図54】特許文献4の油圧回路図の変速制御に関係する部分のブロック図である。
【図55】特許文献4のソレノイドパターンにおける各シフトバルブの動き、制御対象のリニアソレノイド、断線時に保持される変速段等をまとめた図である。
【符号の説明】
【0132】
ACC、ACC1、ACC2 アキュムレータ
EX 排出ポート
IN 供給ポート
OUT 出力ポート
S1、S2、S3 ON/OFFソレノイド
SL1、SL2、SL3、SL4、SLT リニアソレノイド
SV1、SV2、SV3 シフトバルブ
SW、SW3、SW4、SW−APP 油圧スイッチ
101、111、112、121、122、201、212、213 油路
131 ブレーキコントロールバルブ(減圧弁)
211 切換弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合・非係合の組み合わせにより少なくとも前進n段の変速段を構成可能な複数の摩擦係合要素と、電磁弁を介した油圧制御により前記各摩擦係合要素の係合・非係合を制御する制御部とを有する自動変速機の油圧制御装置であって、
少なくとも2個のノーマルハイタイプの電磁弁を含み、前記前進n段の変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置される電磁弁と、
オンオフの組み合わせにより前記前進n段の各変速段に対応したシフトパターンに応じて、前記所定の電磁弁から前記所定の摩擦係合要素までの油路を構成する複数のシフトバルブと、を有し、
前記シフトバルブのオンオフ状態の特定の組み合わせを、前記自動変速モードに対応した前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンに割り当てるとともに、前記シフトバルブのオンオフ状態のその他の組み合わせの内の一つの組み合わせを、前記2個のノーマルハイタイプの電磁弁を使用する第1の前進変速段と、前記その他の組み合わせの内の他の組み合わせを前記ノーマルハイタイプ以外の電磁弁を使用する第2の前進変速段と、の少なくとも2以上の前進変速段の固定シフトパターンにそれぞれ割り当て、前記シフトバルブの動作によって前記固定シフトパターンを選択し車両を走行可能としたこと、
を特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記シフトバルブのすべてがオフ状態である場合に、前記第1の前進変速段に対応する摩擦係合要素に油圧を供給する固定シフトパターンが選択されること、
を特徴とする請求項1に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記シフトバルブのオンオフの組み合わせによって、自動変速シフトパターンのうち、後進段を構成する際に使用する摩擦係合要素に油圧が供給される1−2自動変速モードと、2−n自動変速モードとを切り替え可能であり、
前記2−n自動変速モードで、前記後進用の摩擦係合要素への油路が遮断されるよう油路を構成したこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記シフトバルブの内、所定のシフトバルブのオンオフによって、高速段側のシフトパターンと低速段側のシフトパターンとが決定され、
高速段構成時の摩擦係合要素からの油圧によって前記所定のシフトバルブの状態を保持するラッチ回路を備え、ノーマルロータイプの電磁弁のシフトバルブの故障による急減速を回避可能としたこと、
を特徴とする請求項1ないし3いずれか一に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項5】
前記シフトバルブに、前記ノーマルハイタイプの電磁弁のドレンポートと、所定の油圧供給油路とを連通状態ないし非連通状態に切換可能な切換油路を配設し、
前記シフトバルブのオンオフの組み合わせによって前記固定シフトパターンが選択された場合に、前記ノーマルハイタイプの電磁弁の供給ポートに加えて前記ドレンポート側から油圧を導入し、前記ノーマルハイタイプの電磁弁の故障モードに拘わらず摩擦係合要素を締結可能としたこと、
を特徴とする請求項1ないし4いずれか一に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項6】
前記切換油路の上流側に、アキュムレータと、オリフィスとを配設したこと、
を特徴とする請求項5に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項1】
係合・非係合の組み合わせにより少なくとも前進n段の変速段を構成可能な複数の摩擦係合要素と、電磁弁を介した油圧制御により前記各摩擦係合要素の係合・非係合を制御する制御部とを有する自動変速機の油圧制御装置であって、
少なくとも2個のノーマルハイタイプの電磁弁を含み、前記前進n段の変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置される電磁弁と、
オンオフの組み合わせにより前記前進n段の各変速段に対応したシフトパターンに応じて、前記所定の電磁弁から前記所定の摩擦係合要素までの油路を構成する複数のシフトバルブと、を有し、
前記シフトバルブのオンオフ状態の特定の組み合わせを、前記自動変速モードに対応した前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンに割り当てるとともに、前記シフトバルブのオンオフ状態のその他の組み合わせの内の一つの組み合わせを、前記2個のノーマルハイタイプの電磁弁を使用する第1の前進変速段と、前記その他の組み合わせの内の他の組み合わせを前記ノーマルハイタイプ以外の電磁弁を使用する第2の前進変速段と、の少なくとも2以上の前進変速段の固定シフトパターンにそれぞれ割り当て、前記シフトバルブの動作によって前記固定シフトパターンを選択し車両を走行可能としたこと、
を特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記シフトバルブのすべてがオフ状態である場合に、前記第1の前進変速段に対応する摩擦係合要素に油圧を供給する固定シフトパターンが選択されること、
を特徴とする請求項1に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記シフトバルブのオンオフの組み合わせによって、自動変速シフトパターンのうち、後進段を構成する際に使用する摩擦係合要素に油圧が供給される1−2自動変速モードと、2−n自動変速モードとを切り替え可能であり、
前記2−n自動変速モードで、前記後進用の摩擦係合要素への油路が遮断されるよう油路を構成したこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記シフトバルブの内、所定のシフトバルブのオンオフによって、高速段側のシフトパターンと低速段側のシフトパターンとが決定され、
高速段構成時の摩擦係合要素からの油圧によって前記所定のシフトバルブの状態を保持するラッチ回路を備え、ノーマルロータイプの電磁弁のシフトバルブの故障による急減速を回避可能としたこと、
を特徴とする請求項1ないし3いずれか一に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項5】
前記シフトバルブに、前記ノーマルハイタイプの電磁弁のドレンポートと、所定の油圧供給油路とを連通状態ないし非連通状態に切換可能な切換油路を配設し、
前記シフトバルブのオンオフの組み合わせによって前記固定シフトパターンが選択された場合に、前記ノーマルハイタイプの電磁弁の供給ポートに加えて前記ドレンポート側から油圧を導入し、前記ノーマルハイタイプの電磁弁の故障モードに拘わらず摩擦係合要素を締結可能としたこと、
を特徴とする請求項1ないし4いずれか一に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項6】
前記切換油路の上流側に、アキュムレータと、オリフィスとを配設したこと、
を特徴とする請求項5に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
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【図28】
【図29】
【図30】
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【図32】
【図33】
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【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
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【図48】
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【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【公開番号】特開2007−32733(P2007−32733A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218000(P2005−218000)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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