説明

自動工具交換装置の芯出し方法及び芯出し治具

【課題】ATCアームの芯出し作業の作業性を向上させることが可能な自動工具交換装置の芯出し方法及び芯出し治具を提供する。
【解決手段】治具本体にファイバセンサ5を設け、治具本体をATCアーム2の工具把持部3で把持し、主軸を主軸中心線が直交する平面上で軸移動させて、ファイバセンサ5の検査光で主軸6の端面6aを走査した時の受光量の変化を機外のアンプで確認し、受光量が変化した時点の主軸6の座標に基づいてATCアーム2を芯出しするので、機内作業が排除され、芯出し作業の作業性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の自動工具交換装置の芯出し方法及び芯出し治具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動工具交換装置(ATC)を備える工作機械においては、工具交換時に、自動工具交換装置のATCアームの工具把持中心が主軸中心に一致していない、すなわち、芯ずれしていると、主軸のテーパ穴表面に傷を付けるおそれがある。したがって、なんらかの原因でATCアームに芯ずれが生じた場合、ATCアームの工具把持中心を主軸中心に一致させる、すなわち、ATCアームを芯出しする必要がある。
【0003】
典型的に、ATCアームの芯出しは、以下のように実施される。まず、主軸を軸移動させて、ATCアームと主軸とをおおよそ芯合わせする。この状態で、主軸に軸ゲージを装着するとともにATCアームの工具把持部にリングゲージを装着する。次に、主軸をX軸方向又はY軸方向へパルス送りして、確認ゲージのゲージ軸が、軸ゲージに形成された主軸側ゲージ穴とリングゲージに形成されたATCアーム側ゲージ穴とに同時に挿入することができるように調整する。調整後の位置(主軸の位置)を芯出し後の工具交換位置としてNC装置に記憶させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような芯出し作業は、作業者が機内に入って行うため、作業性が悪い。また、作業者が感覚を頼りに行う作業であるため、作業者に熟練が要求されるとともに多くの工数を要していた。
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ATCアームの芯出し作業の作業性を向上させる自動工具交換装置の芯出し方法及び芯出し治具を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の自動工具交換装置の芯出し方法は、主軸は工具を受け入れるための工具装着部を有し、前記主軸の端面には、中心が主軸中心線上に位置する円によって定義される前記工具装着部の開口が形成される工作機械の前記主軸と自動工具交換装置のATCアームとを芯出しする方法であって、前記ATCアームの工具把持部に、該工具把持部の工具把持軸に対して同軸上に投受光センサを取り付けるステップと、前記投受光センサから投光された検査光を前記主軸へ向けて照射する照射ステップと、前記主軸を主軸中心線が直交する平面上で移動させ、前記検査光を、前記開口を定義する円上の2点を通過する第1直線上で走査する第1走査ステップと、前記第1走査ステップで、前記検査光が前記開口を定義する円上の2点を通過して、前記投受光センサによる前記検査光の反射光の受光量が変化した各時点の、前記主軸の第1座標と第2座標とを記録する第1記録ステップと、前記主軸を主軸中心線が直交する平面上で移動させ、前記検査光を、前記開口を定義する円上の2点を通過する第2直線上で走査する第2走査ステップと、前記第2走査ステップで、前記検査光が前記開口を定義する円上の2点を通過して、前記投受光センサによる前記検査光の反射光の受光量が変化した各時点の、前記主軸の第3座標と第4座標とを記録する第2記録ステップと、前記主軸中心線が直交する平面上に設定される平面座標系における、前記第1座標と前記第2座標とによって定義される線分の中点を足とする第1垂線と、前記第3座標と前記第4座標とによって定義される線分の中点を足とする第2垂線との交点を、前記主軸中心線が通過するように前記主軸の工具交換位置を設定する芯出しステップと、を含むことを特徴とする。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の自動工具交換装置の芯出し治具は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載された自動工具交換装置の芯出し方法に使用される芯出し治具であって、前記自動工具交換装置のATCアームの工具把持部によって把持される本体部と、前記本体部に設けられ、前記工具把持部の工具把持軸に対して同軸上に位置される投受光センサと、前記投受光センサから投光された検査光の反射光の受光量を表示可能な表示手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、請求可能発明と称する)の態様を例示し、例示された各態様について説明する。ここでは、各態様を、特許請求の範囲と同様に、項に区分すると共に各項に番号を付し、必要に応じて他の項の記載を引用する形式で記載する。これは、請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得る。
なお、以下の各項において、(1)〜(6)項の各々が、特許請求の範囲に記載した請求項1〜6の各々に相当する。
【0008】
(1)主軸は工具を受け入れるための工具装着部を有し、主軸の端面には、中心が主軸中心線上に位置する円によって定義される工具装着部の開口が形成される工作機械の主軸と自動工具交換装置のATCアームとを芯出しする方法であって、ATCアームの工具把持部に、該工具把持部の工具把持軸に対して同軸上に投受光センサを取り付けるステップと、投受光センサから投光された検査光を主軸へ向けて照射する照射ステップと、主軸を主軸中心線が直交する平面上で移動させ、検査光を、開口を定義する円上の2点を通過する第1直線上で走査する第1走査ステップと、第1走査ステップで、検査光が開口を定義する円上の2点を通過して、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が変化した各時点の、主軸の第1座標と第2座標とを記録する第1記録ステップと、主軸を主軸中心線が直交する平面上で移動させ、検査光を、開口を定義する円上の2点を通過する第2直線上で走査する第2走査ステップと、第2走査ステップで、検査光が開口を定義する円上の2点を通過して、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が変化した各時点の、主軸の第3座標と第4座標とを記録する第2記録ステップと、主軸中心線が直交する平面上に設定される平面座標系における、第1座標と第2座標とによって定義される線分の中点を足とする第1垂線と、第3座標と第4座標とによって定義される線分の中点を足とする第2垂線との交点を、主軸中心線が通過するように主軸の工具交換位置を設定する芯出しステップと、を含む自動工具交換装置の芯出し方法。
本項に記載の自動工具交換装置の芯出し方法によれば、主軸中心線が直交する平面上に設定される平面座標系における、第1座標と第2座標とによって定義される線分の中点を足とする第1垂線と、第3座標と第4座標とによって定義される線分の中点を足とする第2垂線との交点を、主軸中心線が通過するように主軸の工具交換位置(座標)を設定することにより、自動工具交換装置のATCアームを主軸に対して芯出しすることができる。
本項の態様において、工作機械を典型的な横型マシニングセンタとした場合、機械座標系のZ軸は、主軸中心線に平行な方向へ延びる座標軸、X軸は、主軸中心線を含む水平面上に位置して主軸中心線に直交する直線に平行な方向へ延びる座標軸、Y軸は、主軸中心線を含む鉛直面上に位置して主軸中心線に直交する直線に平行な方向へ延びる座標軸である。この場合、主軸中心線が直交する平面上に設定される平面座標系は、機械座標系のXY平面に対して平行な平面上に設定される。
ここで、第1直線を前記平面座標系のX軸(以下、単にX軸という)に平行な直線とし、同様に、第2直線を前記平面座標系のY軸(以下、単にY軸という)に平行な直線とする。
この場合、投受光センサから投光された検査光を主軸の端面へ向けて照射して、第1走査ステップでは、主軸を主軸中心線が直交する平面上で+X方向へ軸移動させて、投受光センサから投光された検査光を第1直線上で走査する。次に、第1記録ステップでは、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が最初に急激に変化(低下)した時点の座標、すなわち、第1座標〔x1,y1〕と、次に急激に変化(増加)した時点の座標、すなわち、第2座標〔x2,y2〕と、を記録する。
次に、投受光センサから投光された検査光を主軸の端面へ向けて照射して、第2走査ステップでは、主軸を主軸中心線が直交する平面上で+Y方向へ軸移動させて、投受光センサから投光された検査光を第2直線上で走査する。そして、第2記録ステップでは、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が最初に急激に変化(低下)した時点の座標、すなわち、第3座標〔x3,y3〕と、次に急激に変化(増加)した時点の座標、すなわち、第4座標〔x4,y4〕と、を記録する。
なお、第1及び第2記録ステップにおいて、第1乃至第4座標のZ座標は同一であるので、Z座標の記録は省略することができる。
そして、第1座標と第2座標とによって定義される線分の中点、すなわち、座標〔(x1+x2)/2,(y1+y2)/2〕、を足とするY軸に対して平行な第1垂線と、第3座標と第4座標とによって定義される線分の中点、すなわち、座標〔(x3+x4)/2,(y3+y4)/2〕、を足とするX軸に対して平行な第2垂線との交点を、主軸中心線が通過するように主軸の工具交換位置を設定することにより、自動工具交換装置のATCアームを主軸に対して芯出しすることができる。
本項の態様では、弦の中点を足とする垂線は円の中心を通る、すなわち、同一の円における全ての弦はその円の中心で交わる原理を利用している。
本項の態様では、投受光センサによる検査光の反射光の受光量の変化は、投受光センサ用アンプの表示部の表示を、機外で確認することで知ることが可能であり、芯出し作業の作業性を向上させることができる。また、アンプの表示部の表示を読む作業は作業者によるばらつきが殆どないので、不慣れな作業者であってもATCアームの芯出しを効率的且つ正確に行うことができる。
【0009】
(2)第1座標は、検査光が第1直線と開口を定義する円との2つの交点の一方の点を第1方向へ通過して、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が変化した時点の主軸の座標であり、第2座標は、検査光が第1直線と開口を定義する円との2つの交点の他方の点を第1方向とは逆方向の第2方向へ通過して、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が変化した時点の主軸の座標であり、第3座標は、検査光が第2直線と開口を定義する円との2つの交点の一方の点を第3方向へ通過して、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が変化した時点の主軸の座標であり、第4座標は、検査光が第2直線と開口を定義する円との2つの交点の他方の点を第3方向とは逆方向の第4方向へ通過して、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が変化した時点の主軸の座標である(1)の自動工具交換装置の芯出し方法。
本項に記載の自動工具交換装置の芯出し方法によれば、(1)同様に、工作機械を典型的な横型マシニングセンタとした場合、まず、投受光センサから投光された検査光を主軸の端面へ向けて照射して、第1走査ステップでは、主軸を主軸中心線が直交する平面上で+X方向へ軸移動させて、投受光センサから投光された検査光を第1直線上で第1方向へ走査する。そして、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が急激に変化(低下)した時点の座標、すなわち、第1座標〔x1,y1〕を記録する。
次に、投受光センサから投光された検査光を主軸の端面へ向けて照射して、主軸を主軸中心線が直交する平面上で−X方向へ軸移動させて、投受光センサから投光された検査光を第1直線上で第1方向とは逆方向の第2方向へ走査する。そして、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が急激に変化(低下)した時点の座標、すなわち、第2座標〔x2,y2〕を記録する。
次に、投受光センサから投光された検査光を主軸の端面へ向けて照射して、第2走査ステップでは、主軸を主軸中心線が直交する平面上で+Y方向へ軸移動させて、投受光センサから投光された検査光を第2直線上で第3方向へ向けて走査する。そして、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が急激に変化(低下)した時点の座標、すなわち、第3座標〔x3,y3〕を記録する。
次に、投受光センサから投光された検査光を主軸の端面へ向けて照射して、主軸を主軸中心線が直交する平面上で−Y方向へ軸移動させて、投受光センサから投光された検査光を第2直線上で第3方向とは逆方向の第4方向へ走査する。そして、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が急激に変化(低下)した時点の座標、すなわち、第4座標〔x4,y4〕を記録する。
そして、第1座標と第2座標とによって定義される線分の中点、すなわち、座標〔(x1+x2)/2,(y1+y2)/2〕、を足とするY軸に対して平行な第1垂線と、第3座標と第4座標とによって定義される線分の中点、すなわち、座標〔(x3+x4)/2,(y3+y4)/2〕、を足とするX軸に対して平行な第2垂線との交点を、主軸中心線が通過するように主軸の工具交換位置を設定することにより、自動工具交換装置のATCアームを主軸に対して芯出しすることができる。
本項の態様では、投受光センサによる検査光の反射光の受光量が急激に低下した時点の各座標を読み取る、換言すると、検査光が主軸の端面側から開口側へ走査されて開口に到達した時点の各座標を読み取るので、各座標を読み取る時の条件が同一であり、より精度が高いATCアームの芯出しが可能である。
【0010】
(3)投受光センサは、自動工具交換装置のマガジンに収容可能な芯出し治具に設けられ、芯出し治具は、自動工具交換装置の自動工具交換動作によってATCアームの工具把持部に把持される(1)、(2)の芯出し方法。
本項に記載の芯出し方法によれば、自動工具交換装置の通常の自動工具交換動作によって芯出し治具をATCアームの工具把持部に把持させることが可能であり、芯出し治具をATCアームの工具把持部に取り付けるために作業者が機内に入る必要がないので、芯出し作業の安全性が確保される。
【0011】
(4)前記(1)〜(3)の自動工具交換装置の芯出し方法に使用される芯出し治具であって、自動工具交換装置のATCアームの工具把持部によって把持される本体部と、本体部に設けられ、工具把持部の工具把持軸に対して同軸上に位置される投受光センサと、投受光センサから投光された検査光の反射光の受光量を表示可能な表示手段と、を含む自動工具交換装置の芯出し治具。
本項に記載の芯出し治具によれば、表示手段の表示を機外で確認することで、投受光センサによる検査光の反射光の受光量の変化を知ることが可能であり、芯出し作業の安全性が確保される。
本項の態様において、表示手段は、例えば、投受光センサ用のアンプである。投受光センサとアンプとの間の信号の送受信は、無線通信を使用することができる。
【0012】
(5)自動工具交換装置のマガジンに収納され、自動工具交換装置の自動工具交換動作によってATCアームの工具把持部に把持される(4)の芯出し治具。
本項に記載の芯出し治具によれば、自動工具交換装置の通常の自動工具交換動作によって芯出し治具をATCアームの工具把持部に把持させることが可能であり、芯出し治具をATCアームの工具把持部に取り付けるために作業者が機内に入る必要がないので、芯出し作業の安全性が確保される。
また、投受光センサとアンプとの間の信号を無線を使用して送受信する場合、芯出し治具を使用しない間、芯出し治具を自動工具交換装置のマガジンに収納しておくことが可能であり、芯出し治具を収納するためのスペースを他に確保する必要がない。
【0013】
(6)投受光センサはファイバセンサである(4)、(5)の芯出し治具。
本項に記載の芯出し治具によれば、投受光センサを芯出し治具の本体部、すなわち、ATCアームの工具把持部に対して、容易に且つ高い精度で同軸に位置させることができる。
本項の態様において、本体部は、フランジ形状、すなわち、工具ホルダに対してシャンクを省略した形状とすることが可能であり、芯出し治具を小型化且つ軽量化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ATCアームの芯出し作業の作業性を向上させることが可能な自動工具交換装置の芯出し方法及び芯出し治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ファイバセンサの検査光で主軸の端面を走査する様子を示す説明図である。
【図2】ATCアームの工具把持部で把持された芯出し治具の治具本体を示す正面図である。
【図3】実施例1の説明図であって、特に、第1走査ステップ及び第1記録ステップを説明するための主軸の端面の正面図である。
【図4】実施例1の説明図であって、特に、第2走査ステップ及び第2記録ステップを説明するための主軸の端面の正面図である。
【図5】芯出しステップの説明図であって、主軸の端面の正面図である。
【図6】実施例2の説明図であって、特に、第1走査ステップ及び第1記録ステップを説明するための主軸の端面の正面図である。
【図7】実施例2の説明図であって、特に、第2走査ステップ及び第2記録ステップを説明するための主軸の端面の正面図である。
【図8】実施例2の他の実施形態の説明図であって、特に、第1走査ステップ及び第1記録ステップを説明するための主軸の端面の正面図である。
【図9】実施例2の他の実施形態の説明図であって、特に、第2走査ステップ及び第2記録ステップを説明するための主軸の端面の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
ここでは、横型マシニングセンタ(工作機械)における自動工具交換装置の芯出し方法及び芯出し治具1を説明するが、工作機械は、横型マシニングセンタに限定されない。なお、ここで説明される芯出し方法及び芯出し治具1は、ATCアームが旋回する公知の自動工具交換装置及びNC制御装置を備える典型的な横型マシニングセンタに適用したのもである。したがって、明細書の記載を簡潔にすることを目的に、横型マシニングセンタ及び自動工具交換装置の詳細な説明を省略する。
【0017】
また、以下の説明において、便宜上、横型マシニングセンタに設定される機械座標に基づいて方向を表す。すなわち、図3乃至図5における左方向を+X方向、図3乃至図5における右方向を−X方向、図3乃至図5における上方向を+Y方向、図3乃至図5における下方向を−Y方向を、図1における右方向を+Z方向、図1における左方向を−Z方向、図3乃至図5における左右方向をX軸方向、図3乃至図5における上下方向をY軸方向、図1における左右方向をZ軸方向、と各々定義する。
【0018】
図1は、ATCアーム2の工具把持部3によって把持された芯出し治具1を示す。芯出し治具1は、治具本体と表示手段とによって構成される。治具本体は、本体部4と、ファイバセンサ5(投受光センサ)とを含む。表示手段は、ファイバセンサ5から無線によって送信された受光量のアナログ信号をデジタル変換して数値として表示可能なアンプを含む。なお、ファイバセンサ5から無線によって送信された受光量とは、ファイバセンサ5の投光部から検査対象物(本実施形態では主軸6の端面6a)へ向けて検査光7が投光された時の、受光部によって受光された反射光8の光量である。また、ファイバセンサ5は、市販のものを適用することができる。
【0019】
治具本体の本体部4は、典型的な工具ホルダのフランジ(ATCアーム2の工具把持部3に把持される部分)に相当するフランジ部9と、シャンクに相当するシャンク部10とを含む。そして、図2に示されるように、工具把持部3によってフランジ部9が把持されて治具本体がATCアーム2に取り付けられた状態では、ファイバセンサ5の軸、すなわち、ファイバセンサ5の投光部から投光される検査光の光軸が、ATCアーム2の工具把持部3の工具把持中心Cに一致、すなわち、工具把持軸に一致するように構成されている。
【0020】
なお、治具本体の本体部4には、シャンク部10を軸直角方向へ貫通してファイバセンサ5を収容するための溝12が形成されている。そして、本実施形態では、治具本体を主軸6の工具装着部11に装着する必要がない、すなわち、通常の工具ホルダのように、シャンク部10にプルスタッドを取り付ける必要ないので、シャンク部10は、ファイバセンサ5を保護することができる程度にZ軸方向長さが設定される。
【0021】
次に、前述した芯出し治具1を用いて主軸6とATCアーム2とを芯出しする方法を説明する。
【実施例1】
【0022】
まず、NC制御装置の工具交換指令により、自動工具交換装置のマガジンに収納された芯出し治具1の治具本体を、ATCアーム2の工具把持部3によって把持させる。なお、アンプ(表示手段)は、表示を作業者が確認できるように機外の適当な位置に置かれている。
【0023】
[照射ステップ]
次に、主軸6を軸移動させて、図3に示されるように、ATCアーム2の工具把持部3に把持された治具本体のファイバセンサ5(投受光センサ)から投光される検査光7(図1参照)を、主軸6の端面6aの照射位置P1に照射する。なお、照射位置P1は、予め決定された位置であってもよいし、適当な位置であってもよい。
【0024】
[第1走査ステップ]
次に、主軸6を主軸中心線が直交する平面上で+X方向(図3における左方向)へ軸移動させて、ファイバセンサ5から投光された検査光7を、X軸に対して平行な第1直線L1上で、図3における右方向へ走査する。この場合、第1直線L1は、主軸6の工具装着部11の開口を定義する円13上の2点(P3及びP4)を通過する直線である。なお、主軸6の軸移動は、パルス送り或いは自動送りを選択することができる。
[第1記録ステップ]
そして、アンプの表示、すなわち、ファイバセンサ5の受光部によって受光される反射光8(図1参照)の受光量が最初に急激に変化(低下)した時点の座標P3〔x1,y1〕と、次に急激に変化(増加)した時点の座標P4〔x2,y2〕とを記録する。
【0025】
次に、主軸6を軸移動させて、図4に示されるように、ファイバセンサ5から投光される検査光7を、主軸6の端面6aの照射位置Q1に照射する。なお、照射位置Q1は、予め決定された位置であってもよいし、適当な位置であってもよい。
[第2走査ステップ]
次に、主軸6を主軸中心線が直交する平面上で+Y方向(図4における上方向)へ軸移動させて、ファイバセンサ5から投光された検査光7を、Y軸に対して平行な第2直線L2上で、図4における下方向へ走査する。この場合、第2直線L2は、主軸6の工具装着部の開口を定義する円13上の2点(Q3及びQ4)を通過する直線である。
[第2記録ステップ]
そして、アンプの表示、すなわち、ファイバセンサ5の受光部によって受光される反射光8の受光量が最初に急激に変化(低下)した時点の座標Q3〔x3,y4〕と、次に急激に変化(増加)した時点の座標Q4〔x4,y4〕とを記録する。
【0026】
[芯出しステップ]
次に、図5に示されるように、第1座標P3と第2座標P4とによって定義される線分S1の中点M1、すなわち、座標〔(x1+x2)/2,(y1+y2)/2〕、を足とするY軸に対して平行な第1垂線V1と、第3座標Q3と第4座標Q4とによって定義される線分S2の中点M2、すなわち、座標〔(x3+x4)/2,(y3+y4)/2〕、を足とするX軸に対して平行な第2垂線V2との交点Iを、主軸中心線が通過するように、主軸6の工具交換位置を設定(補正)することにより、自動工具交換装置のATCアーム2を主軸6に対して芯出しすることができる。
【0027】
実施例1によれば、芯出し治具1の治具本体にファイバセンサ5(投受光センサ)を設け、治具本体をATCアーム2の工具把持部3で把持し、主軸を軸移動させて、ファイバセンサ5からATCアーム2の工具把持中心に対して同軸上で投受光される検査光で主軸6の端面6aを走査した時の受光量の変化を機外のアンプで確認し、受光量が変化した時点の主軸6の座標に基づいて、主軸6と自動工具交換装置のATCアーム2とを芯出しするので、作業者が機内に入る作業が皆無となり、芯出し作業の作業性を向上させることができる。また、アンプの表示部の表示を読む作業は作業者によるばらつきが殆どなく、作業者に熟練が要求されないため、不慣れな作業者であっても、ATCアーム2の芯出しを効率的且つ正確に行うことができる。
また、自動工具交換装置の通常の自動工具交換動作によって芯出し治具1の治具本体をATCアーム2の工具把持部3に把持させることができるので、機内作業を排除することができる。
【実施例2】
【0028】
まず、前述した実施例1同様、NC制御装置の工具交換指令により、自動工具交換装置のマガジンに収納された芯出し治具1の治具本体を、ATCアーム2の工具把持部3によって把持させる。
【0029】
[照射ステップ]
次に、主軸6を軸移動させて、図6に示されるように、ATCアーム2の工具把持部3に把持された治具本体のファイバセンサ5(投受光センサ)から投光される検査光7(図1参照)を、主軸6の端面6aの照射位置P1に照射する。なお、照射位置P1は、予め決定された位置であってもよいし、適当な位置であってもよい。
【0030】
[第1走査ステップ、第1記録ステップ]
次に、主軸6を主軸中心線が直交する平面上で+X方向(図6における左方向)へ軸移動させて、ファイバセンサ5から投光された検査光7を、X軸に対して平行な第1直線L1上で、図6における右方向(第1方向)へ走査する。この場合、第1直線L1は、主軸6の工具装着部11の開口を定義する円13上の2点、P3(一方の点)及びP4(他方の点)を通過する直線である。なお、主軸6の軸移動は、パルス送り或いは自動送りを選択することができる。
そして、アンプの表示、すなわち、ファイバセンサ5の受光部によって受光される反射光8(図1参照)の受光量が急激に変化(低下)した時点の座標P3〔x1,y1〕を記録する。
【0031】
次に、主軸6を軸移動させて、図6に示されるように、ファイバセンサ5から投光される検査光7を、主軸6の端面6aの照射位置P2に照射する。この状態で、主軸6を主軸中心線が直交する平面上で−X方向(図6における右方向)へ軸移動させて、ファイバセンサ5から投光された検査光7を、第1直線L1上で、第1方向とは逆方向の第2方向(図6における左方向)へ向けて走査する。
そして、アンプの表示、すなわち、ファイバセンサ5の受光部によって受光される反射光8の受光量が急激に変化(低下)した時点の座標P4〔x2,y2〕を記録する。
【0032】
次に、主軸6を軸移動させて、図7に示されるように、ファイバセンサ5から投光される検査光7を、主軸6の端面6aの照射位置Q1に照射する。なお、照射位置Q1は、予め決定された位置であってもよいし、適当な位置であってもよい。
[第2走査ステップ、第2記録ステップ]
次に、主軸6を主軸中心線が直交する平面上で+Y方向(図7における上方向)へ軸移動させて、ファイバセンサ5から投光された検査光7を、Y軸に対して平行な第2直線L2上で、図7における下方向(第3方向)へ走査する。この場合、第2直線L2は、主軸6の工具装着部の開口を定義する円13上の2点、Q3(一方の点)及びQ4(他方の点)を通過する直線である。
そして、アンプの表示、すなわち、ファイバセンサ5の受光部によって受光される反射光8の受光量が急激に変化(低下)した時点の座標Q3〔x3,y4〕を記録する。
【0033】
次に、主軸6を軸移動させて、図7に示されるように、ファイバセンサ5から投光される検査光7を、主軸6の端面6aの照射位置Q2に照射する。この状態で、主軸6を主軸中心線が直交する平面上で−Y方向(図7における下方向)へ軸移動させて、ファイバセンサ5から投光された検査光7を、第2直線L2上で、第3方向とは逆方向の第4方向(図7における上方向)へ走査する。
そして、アンプの表示、すなわち、ファイバセンサ5の受光部によって受光される反射光8の受光量が急激に変化(低下)した時点の座標Q4〔x4,y4〕を記録する。
【0034】
[芯出しステップ]
実施例2における芯出しステップは前述した実施例1における芯出しステップ(図5参照)と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0035】
実施例2によれば、前述した実施例1と同等の効果を得ることができる。また、実施例2では、投受光センサ5による検査光7の反射光8の受光量が急激に低下した時点の各座標P3、P4、Q3、Q4を読み取る、換言すると、検査光7が主軸6の端面6a側から開口側へ走査されて開口(円13)に到達した時点の各座標P3、P4、Q3、Q4を読み取るので、各座標P3、P4、Q3、Q4を読み取る時の条件(受光量が低下する)が同一であり、より精度が高いATCアーム2の芯出しが可能である。
【0036】
なお、実施例2では、図6及び図7に示されるように、第1走査ステップにおける走査方向(第1方向及び第2方向)及び第2走査ステップにおける走査方向(第3方向及び第4方向)を、主軸6の端面6a側から開口側へ走査したが、図8及び図9に示されるように、第1走査ステップにおける走査方向(第1方向及び第2方向)及び第2走査ステップにおける走査方向(第3方向及び第4方向)を、開口側から主軸6の端面6a側へ走査して、投受光センサ5による検査光7の反射光8の受光量が急激に増加した時点の各座標P3、P4、Q3、Q4を読み取ってもよい。
【0037】
前述した実施形態は上記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することができる。
本発明を横型マシニングセンタに適用した場合を説明したが、本発明を縦型マシニングセンタに適用することができる。
検査光をX軸及びY軸に対して平行な方向へ走査したが、これらの座標軸に対して斜めに走査することができる。すなわち、第1直線L1はX軸に対して平行な直線でなくてよく、同様に、第2直線L2はY軸に対して平行な直線でなくてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 芯出し治具、2 ATCアーム、3 工具把持部、5 ファイバセンサ(投受光センサ)、6 主軸、6a 端面、7 検査光、8 反射光、13 円(開口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸は工具を受け入れるための工具装着部を有し、前記主軸の端面には、中心が主軸中心線上に位置する円によって定義される前記工具装着部の開口が形成される工作機械の前記主軸と自動工具交換装置のATCアームとを芯出しする方法であって、
前記ATCアームの工具把持部に、該工具把持部の工具把持軸に対して同軸上に投受光センサを取り付けるステップと、
前記投受光センサから投光された検査光を前記主軸へ向けて照射する照射ステップと、
前記主軸を主軸中心線が直交する平面上で移動させ、前記検査光を、前記開口を定義する円上の2点を通過する第1直線上で走査する第1走査ステップと、
前記第1走査ステップで、前記検査光が前記開口を定義する円上の2点を通過して、前記投受光センサによる前記検査光の反射光の受光量が変化した各時点の、前記主軸の第1座標と第2座標とを記録する第1記録ステップと、
前記主軸を主軸中心線が直交する平面上で移動させ、前記検査光を、前記開口を定義する円上の2点を通過する第2直線上で走査する第2走査ステップと、
前記第2走査ステップで、前記検査光が前記開口を定義する円上の2点を通過して、前記投受光センサによる前記検査光の反射光の受光量が変化した各時点の、前記主軸の第3座標と第4座標とを記録する第2記録ステップと、
前記主軸中心線が直交する平面上に設定される平面座標系における、前記第1座標と前記第2座標とによって定義される線分の中点を足とする第1垂線と、前記第3座標と前記第4座標とによって定義される線分の中点を足とする第2垂線との交点を、前記主軸中心線が通過するように前記主軸の工具交換位置を設定する芯出しステップと、
を含むことを特徴とする自動工具交換装置の芯出し方法。
【請求項2】
前記第1座標は、前記検査光が前記第1直線と前記開口を定義する円との2つの交点の一方の点を第1方向へ通過して、前記投受光センサによる前記検査光の反射光の受光量が変化した時点の前記主軸の座標であり、
前記第2座標は、前記検査光が前記第1直線と前記開口を定義する円との2つの交点の他方の点を前記第1方向とは逆方向の第2方向へ通過して、前記投受光センサによる前記検査光の反射光の受光量が変化した時点の前記主軸の座標であり、
前記第3座標は、前記検査光が前記第2直線と前記開口を定義する円との2つの交点の一方の点を第3方向へ通過して、前記投受光センサによる前記検査光の反射光の受光量が変化した時点の前記主軸の座標であり、
前記第4座標は、前記検査光が前記第2直線と前記開口を定義する円との2つの交点の他方の点を前記第3方向とは逆方向の第4方向へ通過して、前記投受光センサによる前記検査光の反射光の受光量が変化した時点の前記主軸の座標であることを特徴とする請求項1に記載された芯出し方法。
【請求項3】
前記投受光センサは、前記自動工具交換装置のマガジンに収容可能な芯出し治具に設けられ、前記芯出し治具は、自動工具交換装置の自動工具交換動作によって前記ATCアームの工具把持部に把持されることを特徴とする請求項1又は2に記載された芯出し方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された自動工具交換装置の芯出し方法に使用される芯出し治具であって、
前記自動工具交換装置のATCアームの工具把持部によって把持される本体部と、
前記本体部に設けられ、前記工具把持部の工具把持軸に対して同軸上に位置される投受光センサと、
前記投受光センサから投光された検査光の反射光の受光量を表示可能な表示手段と、
を含むことを特徴とする自動工具交換装置の芯出し治具。
【請求項5】
前記自動工具交換装置のマガジンに収納され、前記自動工具交換装置の自動工具交換動作によって前記ATCアームの工具把持部に把持されることを特徴とする請求項4に記載された芯出し治具。
【請求項6】
前記投受光センサはファイバセンサであることを特徴とする請求項4又は5に記載された芯出し治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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