説明

自動演奏装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、演奏データを読み出すテンポ(自動演奏のテンポ)を自動的に変更することができる自動演奏装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動演奏装置に自動演奏を行わせる場合、そのテンポ、すなわち、演奏データを読み出すテンポ(基本テンポ)を設定して自動演奏をスタートさせる。
【0003】さらに、演奏データ中に、基本テンポに対する割合を示すテンポ変更データを記録しておき、このテンポ変更データが読みだされたとき、このテンポ変更データに基づき、基本テンポからテンポを自動変更する自動演奏装置があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしこのような自動演奏装置では、基本データがどのようなテンポであるかに拘らずテンポ変更データとして記憶されている割合でテンポが変更されるため、曲の緩急が考慮されずテンポ変化は伴うものの単調な変化の自動演奏しかできなかった。
【0005】この発明は、以上のような欠点に鑑みてなされたもので基本テンポに応じてテンポ変更の度合いを変化させる自動演奏装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、演奏データの基本読出テンポを記憶するテンポ記憶手段と、該読出テンポの変更の程度を指示するテンポ変更データを含む演奏データを記憶する記憶手段と、前記演奏データの読み出しを前記基本読出テンポに基づいて開始し、前記テンポ変更データが読み出されたのちは後記テンポ変更手段が指示する読出テンポに変更して前記演奏データの読み出しを継続する読出手段と、前記記憶手段からテンポ変更データが読み出されたとき、該テンポ変更データが指示する変更の程度前記基本読出テンポとに応じてテンポ変化率を決定するテンポ変化率決定手段と、該テンポ変化率決定手段が決定したテンポ変化率を前記基本読出テンポに乗算することによって読出テンポを算出し、前記読出手段に指示するテンポ変更手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
【作用】この発明の自動演奏装置では、テンポ記憶手段に記憶されている基本読出テンポに基づいて自動演奏(演奏データの読み出し)をスタートする。読み出された自動演奏データにテンポ変更データがあったとき、該テンポ変更データが指示する変更の程度および基本読出テンポとに応じた変化率で読出テンポを更新する。これにより、設定されている基本読出テンポに合わせた適当なテンポ制御が可能になる。
【0008】このように、演奏データ中に記憶されたテンポ変更データのみによらず、そのときの読出テンポに対応する程度に読出テンポを変更することにより、テンポ変更データの指示をそのときの読出テンポに応じて最も的確に実現することができる。
【0009】
【実施例】図面を参照してこの発明の実施例である自動演奏機能を備えた電子楽器について説明する。この電子楽器は鍵盤を備えた電子楽器であり、かつ複数のリズムのパターンを記憶しており、指定されたリズムのパターンを適当に組み合わせて発音することができる。記憶しているリズムの種類は8ビート,タンゴ等の16種類があり、各リズム毎にノーマルパターン,イントロパターン,エンディングパターンおよびフィルインパターンを記憶している。ノーマルパターンとは曲中で通常に演奏されるリズムパターンであり、イントロパターン,エンディングパターンは曲の先頭および最後に演奏されるパターンであり、フィルインパターンとは曲の間に挿入されるパターンである。各リズム種類はリズム選択スイッチで選択され、そのリズム内でどのパターンを演奏するかはパターンスイッチで選択される。
【0010】図1は同電子楽器のブロック図である。この電子楽器はCPU10によって制御されバス11を介して各回路部が接続されている。バス11にはCPU10のほかROM12,RAM13,パターンメモリ14,タイマ15,押鍵検出回路16,スイッチ検出回路17,表示回路18および音源回路19が接続されている。押鍵検出回路には鍵盤22が接続され、スイッチ検出回路17にはパネルスイッチ23が接続されている。ROM12には後述するフローチャートで示されるプログラムが記憶されており、RAM13には各種レジスタが設定される。パターンメモリ14には、図3に示すように複数のリズム種類毎にリズムパターンが記憶されている。押鍵検出回路16は、鍵盤22を構成する各キーのオン/オフおよびその押鍵の強度を検出して出力する回路である。スイッチ検出回路17はパネルスイッチ23(図2参照)の各スイッチやテンポ制御ダイヤルの操作内容を検出する。表示回路18は図2に示すLCD30の表示内容を制御する。音源回路19は複数の発音チャンネルを備えており、各チャンネル毎に独立して楽音信号を形成する。形成された楽音信号はサウンドシステム24に入力され、増幅された後スピーカなどから出力される。
【0011】図2は同電子楽器の操作パネルを示す図である。操作パネルには前記LCD30のほか、テンポ調整ダイヤル31,パターンスイッチ32およびリズム選択スイッチ33が設けられている。テンポ調整ダイヤル31は自動演奏されるリズムパターンの基本的なテンポ(基本テンポ)を設定するダイヤルである。パターンスイッチ32は4個のキースイッチ32a〜32dからなっており、それぞれのスイッチの機能は、自動演奏のスタート/ストップおよびノーマルパターンの指定(スタート/ストップスイッチ32b),イントロパターンまたはエンディングパターンの挿入指定(イントロ/エンディングスイッチ32a),フィルインパターン1/2の挿入指定(フィル1スイッチ32c,フィル2スイッチ32d)である。リズム選択スイッチ33は16のキーからなっており、それぞれが1つのリズム種類に対応している。また、パターンスイッチ32,リズム選択スイッチ33のそれぞれに対応してLED34a〜34dおよび35が設けられている。各LEDは対応するスイッチがオンされたとき点灯する。
【0012】図3はパターンメモリ14に記憶されるリズムパターンデータを示す図である。パターンメモリ14にはリズム選択スイッチ33に含まれる16個のそれぞれで選択されるリズム種類毎にイントロ,ノーマル,フィル(フィルイン)1,フィル2およびエンディングの5種類のパターンが記憶されている。各パターンは1〜2小節分の演奏データ群であり、同図右側に示すように、複数のタイミングデータ,ノートナンバデータで構成されている。タイミングデータはこのパターンの小節先頭からのタイミング(クロック数)で示され、ノートナンバデータはそのとき発音されるリズム楽器の種類に対応している。また、これらのデータの途中にテンポチェンジデータが挿入される。テンポチェンジデータは、基本テンポからどの程度(何%)遅くするかを指定するデータであり、データに対応する値は図4のテンポ変化テーブルに記憶されている。曲中におけるテンポ変化の例を図5に示しておく。
【0013】第6図〜第12図は同電子楽器の動作を示すフローチャートである。
【0014】第6図はメインルーチンを示している。メインルーチンにおいては、まずイニシャライズ動作を実行する(n1)。イニシャライズ動作とはレジスタのリセットなどの動作である。この動作は電源投入直後に実行される。こののち押鍵処理(n2)、リズム選択処理(n3)、テンポ設定処理(n4)、リズム演奏処理(n5)およびその他の処理(n6)を繰り返し実行する。押鍵処理(n2)は鍵盤22の各キーのオン/オフに基づいて楽音の発音/消音を制御する動作である。リズム選択処理n3はリズム選択スイッチ33のオンに基づいてそのリズム番号をセットする動作である。テンポ設定処理n4はテンポ調整ダイヤル31の操作に基づいて自動演奏の基本テンポを設定する動作である。リスム演奏処理(n5)はパターンスイッチ32a〜32dのオンに基づいてリズムの自動演奏を実行する動作である。
【0015】図7はリズム選択処理を示すフローチャートである。まずn10でリズム選択スイッチ33の何れかがオンされたか否かを判断する。オンされていない場合にはそのままリターンする。オンされた場合にはパターン番号レジスタPTNにオンされたスイッチの番号をセットし、そのスイッチに対応して設けられているLEDを点灯する(n11,n12)。これと同時に他のスイッチに対応するLEDを消灯する。
【0016】図8はテンポ設定処理を示すフローチャートである。先ずn15においてテンポ調整ダイヤル31の操作があったか否かを判断する。操作がない場合にはそのままリターンする。操作があった場合にはその操作によって指定されたテンポ値をテンポ値レジスタTEMPOにセットする(n16)。この値をLCD30に表示するとともに(n17)、この値をタイマ15に対して指示する(n18)。
【0017】図9はタイマインタラプト動作を示すフローチャートである。この動作はタイマ15の一定時間毎の割込によって実行される動作である。タイマ15による割込は前記テンポ値(TEMPO)およびテンポチェンジデータによって可変であある。この動作においてはテンポクロックレジスタTCに1を加算する(n20)。この加算によってTCが96になった場合には1小節のカウントが完了したとしてTCをクリアして(n22)リターンする。TCが96になっていない場合には1小節の途中であるとしてそのままリターンする。すなわち、この実施例では説明を簡略化するため、リズムを4拍子系に限定し、1小節(4拍)を96の固定値でカウントするようにしている。
【0018】図10〜図12はリズム演奏処理を示すフローチャートである。この動作においては先ずn30,n40,n50においてスタート/ストップスイッチ32b,イントロ/エンディングスイッチ32aまたはフィル1/2スイッチ32c,32dのオンがあるか否かを判断する。スタート/ストップスイッチ32bのオンがあった場合にはプレイフラグPLAYを反転する(n31)。この結果プレイフラグPLAYが1になった場合にはリズムの自動演奏を開始するためテンポクロックレジスタTCをクリアし(n33)、スタート/ストップスイッチ32bに対応するLED34bを点灯する(n34)。次にイントロフラグINTROの内容を判断する(n35)。INTRO=1になっていれば曲の最初にイントロパターンを演奏するためPTNで示されるリズム種類のイントロパターンの先頭アドレスを指示する(n36)。イントロフラグINTROに0をセットするとともにイントロ/エンディングスイッチ32aに対応して設けられているLED34aを消灯する(n37)。このLED34aはこの動作に先立って実行されているイントロ/エンディングスイッチ32aのオンに対応する動作において点灯されたものである。一方、n35においてイントロフラグINTRO=0の場合にはノーマルパターンから自動演奏を開始するためPTNで示されるリズム番号のノーマルパターンの先頭アドレスを指示する(n38)。
【0019】さらにスタートスイッチがオンされた結果プレイフラグPLAYが0となった場合にはn32からn39に進み、全てのスイッチに対応するLED34,35を消灯するとともに、各種スイッチのオンに対応してセットされた全てのフラグをリセットして(n39)以下の動作に進む。
【0020】n40においてイントロ/エンディングスイッチ32aがオンされたことを判断した場合には、このときプレイフラグPLAYがセットしているかどうかを判断する(n41)。プレイフラグPLAYがセットしているときにイントロ/エンディングスイッチ32aがオンされた場合には、その演奏の最後にエンディングパターンを挿入することを意味するためイントロフラグINTROに2をセットする(n42)。すなわち、INTRO=1がイントロパターンからのスタートを指示し、INTRO=2がエンディングパターンへの移行(終了)を指示する。一方、プレイフラグPLAYがリセットしているときにイントロ/エンディングスイッチ32aがオンされた場合には、スタート/ストップスイッチ32bがオンされて自動演奏が開始するときイントロパターンから開始することを意味するため、イントロフラグINTROに1をセットする(n43)。こののちイントロ/エンディングスイッチ32aに対応するLED34aを点灯する(n44)。
【0021】さらにn50でフィルインスイッチ32c,32dのオンがあったことを判断した場合にはn51においてプレイフラグPLAYがセットしているか否かを判断する。セットしていない場合にはフィルインスイッチのオンが意味を持たず無効であるためそのまま次の動作(n60)に進む。プレイフラグPLAYがセットしている場合にはフィルイン1スイッチ32cがオンされたか,フィルイン2スイッチ32dがオンされたかを判断する(n52)。フィルイン1スイッチ32cがオンされた場合にはFILL1フラグをセットするとともに(n53)、フィルイン1スイッチ32cに対応するLED34cを点灯する(n54)。一方、フィルイン2スイッチ32dがオンされた場合には、FILL2フラグをセットするとともに(n55)、フィルイン2スイッチ32dに対応して設けられているLED34dを点灯する(n56)。
【0022】以上のスイッチオン対応動作ののち自動演奏動作を実行する。自動演奏動作はプレイフラグPLAYがセットしているときのみ実行されるため、まず、プレイフラグPLAYがセットしているか否かを判断する(n60)。リセットしいてる場合には自動演奏動作を実行する必要がないためそのままリターンする。プレイフラグPLAYがセットしている場合にはそのとき指示されているアドレスのタイミングデータを読み出す(n61)。そのデータの内容がタイマインタラプト動作でカンウトアップされるテンポクロックTCと一致した場合には(n62)、アドレスを歩進してタイミングデータの次に記憶されているデータを読み出す(n63)。TCとタイミングデータとが一致しなかった場合にはn62からリターンする。n63でアドレスに続くデータが読み出された場合にはそのデータがどのようなデータであるかを判断する(n70〜n76)。読み出されたデータがノートナンバデータであった場合にはn70からn80に進みそのノートナンバを音源回路19に出力する。音源回路19においてはこのノートナンバーに基づいたリズム楽器の楽音信号を形成する。読み出されたデータがテンポチェンジデータであった場合にはn72からn81に進む。n81では読み出されたテンポチェンジデータおよび基本テンポ値TEMPOでテンポ変化テーブル(図4)を検索し、変化したテンポデータを読み出してタイマ15に出力する。一方、エンドデータが読み出された場合(n73)には、読み出していたパターンが終了したことを意味するため、次にどのパターンを読み出すかを判断する。このため、フィルインフラグFILL1=1またはFILL2=1か(n74)、イントロフラグINTRO=2か(n75)、エンドフラグEND=1か(n76)を判断する。FILL1=1またはFILL2=1の場合には、ノーマルパターンから、フラグで指定されたフィルインデータに移行するため、n74からn82に進む。n82ではリズム種類PTNの指定されたフィルインパターンの先頭アドレスを指示し、該当のフィルフラグFILL1/2をリセットするとともに対応するLEDを消灯する(n83)。また、イントロフラグINTRO=2の場合にはエンディングパターンに移行するためn75からn84に進む。n84ではPTNで示されるリズム種類のエンディングパターンの先頭アドレスを指示し(n84)、このエンディングパターン演奏ののち自動演奏を終了させるためエンディングフラグENDに1をセットする(n85)。一方、エンドデータがよみだされたとき、エンディングフラグEND=1の場合には、エンディングパターンの演奏を終了したため自動演奏を終了するため、n76からn86に進む。n87においてはプレイフラグPLAY,エンディングフラグENDおよびイントロフラグINTROを全てリセットし、LEDを全て消灯したのちリターンする。さらに、エンディングフラグEND,フィルインフラグFILL,イントロフラグINTROが全てリセットしているときにエンドデータが読み出された場合にはノーマルパターンの繰り返しであるためn76からn87に進み同じノーマルパターンの先頭アドレスを指示してリターンする。
【0023】この実施例はリアルタイムにイントロパターン,エンディングパターンなどを指示するようにしたが、予め演奏パターンの順序を記憶しておくパターンシーケンスにおいても適用することができる。また本実施例はリズムパターンについて説明しているが、コードパターン,ベースパターンなどのパターンデータに適用することもできる。また、テンポ変更データは基本パターンの何%にするというデータで構成したが、その他のテンポ変更方式を用いることもできる。またパターンデータはユーザが任意に作成できるようにしてもよく、またROMに予め記憶しておくようにしてもよい。さらにテンポの変更はクロック周波数を変更する方式のみならず、テンポクロックのカウント値を変更する方式を用いてもよい。
【0024】
【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、テンポ変更データおよび基本読出テンポに基づいて読出テンポの変更を行うため、テンポ変更データが指示するテンポ変更の態様を基本読出テンポに最も適する程度に実現することができ、どのようなテンポで自動演奏が行われていても自然なテンポ変更が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】はこの発明の実施例である電子楽器のブロック図、
【図2】は同電子楽器の操作パネルを示す図、
【図3】は同電子楽器に記憶されているリズムパターンの構成を示す図、
【図4】は電子楽器におけるテンポチェンジデータのテーブルを示す図、
【図5】はテンポチェンジの例を示す図、
【図6】は同電子楽器の動作を示すフローチャート、
【図7】は同電子楽器の動作を示すフローチャート、
【図8】は同電子楽器の動作を示すフローチャート、
【図9】は同電子楽器の動作を示すフローチャート、
【図10】は同電子楽器の動作を示すフローチャート、
【図11】は同電子楽器の動作を示すフローチャート、
【図12】は同電子楽器の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
14−パターンメモリ、31−テンポ調整ダイヤル、32−パターンスイッチ、33−リズム選択スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 演奏データの基本読出テンポを記憶するテンポ記憶手段と、該読出テンポの変更の程度を指示するテンポ変更データを含む演奏データを記憶する記憶手段と、前記演奏データの読み出しを前記基本読出テンポに基づいて開始し、前記テンポ変更データが読み出されたのち後記テンポ変更手段が指示する読出テンポに変更して前記演奏データの読み出しを継続する読出手段と、前記記憶手段からテンポ変更データが読み出されたとき、該テンポ変更データが指示する変更の程度前記基本読出テンポとに応じてテンポ変化率を決定するテンポ変化率決定手段と、該テンポ変化率決定手段が決定したテンポ変化率を前記基本読出テンポに乗算することによって読出テンポを算出し、前記読出手段に指示するテンポ変更手段と、を備えたことを特徴とする自動演奏装置。

【図1】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図2】
image rotate


【図6】
image rotate


【図9】
image rotate


【図3】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図12】
image rotate


【特許番号】第2757567号
【登録日】平成10年(1998)3月13日
【発行日】平成10年(1998)5月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−126
【出願日】平成3年(1991)1月7日
【公開番号】特開平4−234793
【公開日】平成4年(1992)8月24日
【審査請求日】平成5年(1993)7月2日
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【参考文献】
【文献】特開 平2−161499(JP,A)
【文献】特公 平1−55471(JP,B2)