説明

自動販売機によるパウチ食品の販売方法及びパウチ食品用カバー部材

【課題】パウチ食品を自動販売機で1個ずつ確実に販売でき、かさばることなく運びやすく、大きな不要物が残ることがない、自動販売機によるパウチ食品の販売方法及びパウチ食品用カバー部材を提供する。
【解決手段】上部が連結された前後面、及びこの前後面の下辺を連結するフラットな底面を有する枠体51と、口部収容孔57とを有するカバー部材50を用い、口部を口部収容孔57から突出させることにより、パウチ食品にカバー部材50を装着し、これを自動販売機の商品収納ラックに並べて収容し、自動販売機の操作によって商品収納ラックの一端から1個ずつ搬出して、商品搬出装置のバケットにより商品取出し口に搬送させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼリー飲料等が充填されて比較的軟らかいパウチ食品であっても、1個ずつ確実に販売することができる、自動販売機によるパウチ食品の販売方法、及び、その際に用いられるパウチ食品用カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口栓が装着されたストロー状の口部を備える口栓付きパウチに、果汁飲料、ゼリー等の流動食品を充填してなるパウチ食品が市販されている。この種のパウチ食品は、需要が増大しており、自動販売機できるようにすることが望まれている。一方、パック飲料等に適用される自動販売機は、一般に、ラックに商品を一列に並べて収容し、ラック最後部の商品を、プッシャで商品の1個分の厚さだけ押し込むことにより、商品が順次前方に押し出されて、ラック先端から商品が1個ずつ搬出されるようになっている。
【0003】
しかし、パウチ食品は比較的柔軟で変形しやすいため、厚さが一定とならず不揃いになりやすい。そのため、プッシャによって、ラック最後部のパウチ食品を、パウチ1個分の厚さだけ押し込んでも、その前方のパウチ食品が押し潰されてしまって、ラック先端側のパウチ食品を搬出することができない場合があった。また、押込み途中でパウチ食品が変形すると、不安定な状態となって、パウチ食品が倒れてしまうこともあった。
【0004】
上記問題を解決するため、例えば、下記特許文献1には、一対の商品挟持板と、無端状の搬送チェーンと、所定間隔で前後に仕切る商品仕切ピンと、搬送チェーンを駆動する駆動手段とを備えた、自動販売機の商品収納払出装置が記載されている。そして、一対の商品挟持板により、パウチ食品の口部を挟み込んで、奥行方向に移動自在に吊下げて、搬送チェーンにより商品仕切ピンを駆動させて、パウチ食品の口部を順次押すことにより、一つずつパウチ食品が払い出されるようになっている。
【0005】
また、柔軟なパウチ食品を所定形状に保形して、自動販売機で販売可能とした技術として、下記特許文献2には、透明ないしは半透明の合成樹脂で成形された一対の半割品を互いに突き合わせて脱着可能に結合することで、飲料缶用自動販売機での販売が可能な円筒状に構成され、周面には複数の透孔が形成され、内部には販売用のパウチ食品等のパック詰め商品が収容される自動販売機に用いる販売用容器が開示されている。
【0006】
各半割品は、断面半円形で所定長さ伸びる周壁部と、該周壁部の上下両端に固設された半月状の一対の端板部とを備え、一方の端板部に係合孔を有する係合舌片が延設され、他方の端板部に係合爪が突設された、同一形状の成型品からなっている。そして、一方の半割品に対して他方の半割品を上下反転させて組付け、一方の係合舌片の係合孔と他方の係合爪とを係合させると共に、他方の係合舌片の係合孔と一方の係合爪とを係合させることにより、両半割品が接合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−228058号公報
【特許文献2】実用新案登録第3147147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1では、パウチ食品の口部を吊り下げ支持する構造が必要であると共に、その口部を順次押すための機構が必要となり、自動販売機の構造が複雑になるというデメリットがある。また、パウチ食品専用の販売機となっていまい、パック飲料等の他の商品と一緒に販売できないという不都合がある。
【0009】
また、特許文献2の販売用容器では、上記のように、一方の半割品に対して他方の半割品を上下反転させて組付けて、各半割品の上下両端板部の係合孔及び係合爪をそれぞれ係合させなければならず、作業性に問題がある。また、容器自体が大きくかさばり、パウチ食品を取出した後の容器の処理が大変となる。更に、各半割品は同一形状をなしているとはいえ、係合孔を有する係合舌片や係合爪等を備え、比較的複雑な形状をなしているので、コストの点で問題がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、比較的簡便でパウチ食品を自動販売機で1個ずつ確実に販売することができ、かさばることなく運びやすく、大きな不要物が残ることがない、自動販売機によるパウチ食品の販売方法及びパウチ食品用カバー部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の1つは、商品収納ラックに商品を一列に並べて収容し、該商品収納ラックの一端から商品を1個ずつ搬出して、商品搬出装置のバケットで受けて、商品取出口に搬送するように構成された自動販売機により、キャップが装着された口部を有する袋状の容器に飲食品を充填したパウチ食品を販売する方法において、
上部が連結された前後面、及びこの前後面の下辺を連結するフラットな底面を有する枠体と、この枠体の上部中央に設けられた口部収容孔とを有するカバー部材を用い、
前記キャップが装着された口部を前記口部収容孔から突出させることにより、前記パウチ食品に前記カバー部材を装着し、
このカバー部材を装着したパウチ食品を、前記自動販売機の前記商品収納ラックに並べて収容し、前記自動販売機の操作によって前記商品収納ラックの一端から1個ずつ搬出して、前記商品搬出装置のバケットにより前記商品取出し口に搬送させることを特徴とする自動販売機によるパウチ食品の販売方法を提供する。
【0012】
本発明のもう1つは、キャップが装着された口部を有する袋状の容器に飲食品を充填したパウチ食品を、自動販売機で販売するため、該パウチ食品に装着されるカバー部材であって、
上部が連結された前後面、及びこの前後面の下辺を連結するフラットな底面を有する枠体と、この枠体の上部中央に設けられた口部収容孔とを有し、
前記キャップが装着された口部を前記口部収容孔から突出させることにより、前記パウチ食品に装着されるように構成されていることを特徴とするパウチ食品用カバー部材を提供する。
【0013】
本発明によれば、パウチ食品にカバー部材が装着されるので、パウチ食品を所定形状に保形して一定厚さに保持することができ、更に、カバー部材のフラットな底面で支持されて、パウチ食品を起立した状態に維持することができる。そして、カバー部材を装着したパウチ食品を商品収納ラックに並べて収容し、商品収納ラックの一端から1個ずつ搬出するようにしたので、柔軟で押し潰されやすいパウチ食品でも、1個ずつ確実に搬出して、商品取出し口から取出すことができる。このように、パウチ食品にカバー部材を装着するだけの簡単な構成で、パウチ食品を搬出することができ、上記特許文献1のようなパウチ食品を吊り下げ支持するような特別な機械構造が不要となるので、パウチ食品の流通コストを低減することができる。また、一般的な自動販売機で他のパック飲料などと一緒に販売することができる。
【0014】
また、パウチ食品にカバー部材を装着する際には、カバー部材の側方からパウチ食品を挿入し、その口部を口部収容孔から突出させるだけで、簡単に装着することができ、その作業性を向上させることができる。更に、カバー部材は、枠体及び枠体上部の口部収容孔だけの簡単な構造となっているので、不要物となったときにかさばらず、製造コストも低減することができる。
【0015】
本発明においては、前記カバー部材は、上部が連結された前後面、及びこの前後面の下辺を連結するフラットな底面を有する枠体と、この枠体の上部中央に設けられた口部収容孔と、前記枠体の上部の一側方から前記口部収容孔に至るスリットとを有しており、
前記パウチ食品の口部のキャップの下方に位置する部分を、前記スリットを通して前記口部収容孔に挿入することにより、前記パウチ食品に前記カバー部材を装着されるように構成されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、カバー部材の枠体に口部収容孔に至るスリットが設けられているので、カバー部材の枠体の上部一側方から、パウチ食品の口部のキャップの下方に位置する部分を、スリットを通して押し込むだけの簡単な操作で、口部収容孔に口部が挿入されて、パウチ食品にカバー部材を装着することができ、装着作業性をより向上させることができる。
【0017】
本発明においては、前記カバー部材は、透明なプラスチックシートで形成されていることが好ましい。これによれば、カバー部材が透明なので、パウチ食品の外面に施された文字や図柄等を視認することができ、自動販売機の商品収納ラックにそのまま収容するだけでよく、自動販売機の前面に商品見本等を置く必要がなくなりコスト低減が図れる。それに加え、カバー部材がプラスチックシートなので、カバー部材を硬すぎず柔らかすぎず適度な剛性に保持することができる。
【0018】
本発明においては、前記カバー部材は、前後壁と、該前後壁の下辺を連結する底壁と、該前後壁の上辺を連結する天壁とを有する、側方から見て矩形状の枠体からなることが好ましい。これによれば、カバー部材は、前後壁、底壁及び天壁からなる矩形状の枠体をなしているので、前後壁が平行となり、自動販売機における取扱い性が向上すると共に、前後壁を互いに近接させるように扁平な形状に折り畳むことができるので、カバー部材の管理や搬送時にかさばらず利便性が向上する。
【0019】
本発明においては、前記カバー部材の前記天壁の中央部に前記口部収容孔が形成され、前記天壁の一側辺に凹状の切欠き部が設けられ、この切欠き部と前記口部収容孔との間に前記スリットが形成されていることが好ましい。
【0020】
これによれば、天壁の一側辺に凹状の切欠き部が形成されているので、この切欠き部をガイドにして、パウチ食品のキャップ下方部分を天壁内方側へ押し込むことにより、スリットを押し広げつつ通過させて口部収容孔に挿入することができ、パウチ食品にカバー部材を容易に装着することができる。
【0021】
このように、パウチ食品のキャップ下方部分を受け入れる凹状の切欠き部を設けて挿入ガイドとしたので、スリットの隙間を小さくし、かつ、所定長さで形成しても、挿入を容易にすることができると共に、パウチ食品からカバー部材が外れないように、しっかりと装着することができる。このため、自動販売機の商品取出し口に落下したときにカバー部材が外れてしまうことを防止し、外れたカバー部材が商品取出し口に溜まってしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パウチ食品にカバー部材を装着することにより、パウチ食品を所定形状に保形して一定厚さに保持できると共に、カバー部材のフラットな底面で起立状態に維持することができるので、他のパック飲料などと同様に、自動販売機から1個ずつ確実に搬出して、商品取出し口から取出すことができる。
【0023】
また、カバー部材の側方からパウチ食品を挿入し、口部を口部収容孔から突出させるだけで、簡単にカバー部材を装着することができ、装着作業性を向上させることができる。更に、カバー部材の口部収容孔からパウチ食品の口部が突出するので、カバー部材を取外すことなく、そのままパウチ食品を食することもでき、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の自動販売機によるパウチ食品の販売方法に用いられる、自動販売機の斜視図である。
【図2】同自動販売機の正面図である。
【図3】同自動販売機の商品搬出装置の斜視図である。
【図4】同自動販売機の商品収納ラックの斜視図である。
【図5】同自動販売機の商品収納ラックの搬出機構を示す説明図である。
【図6】本発明のパウチ食品用カバー部材の一実施形態を示す斜視図である。
【図7】同カバー部材をパウチ食品に装着させた状態を示す斜視図である。
【図8】同カバー部材を折り畳んだ状態の斜視図である。
【図9】同カバー部材を装着したパウチ食品を、商品収納ラックに収納した状態を示す斜視図である。
【図10】本発明のパウチ食品用カバー部材の他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】同カバー部材をパウチ食品に装着させた状態を示す斜視図である。
【図12】同カバー部材を折り畳んだ状態の斜視図である。
【図13】本発明のパウチ食品用カバー部材の更に他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0026】
図1には、本発明に用いられる自動販売機の一例が示されている。この自動販売機10は、前方が開口したラック収容棚11aを有する箱状の本体11と、この本体11に開閉可能に取付けられた扉12とを有している。前記本体11のラック収容棚11aには、後述する商品収納ラック30(以下、「ラック30」という)が上下縦方向に複数段及び左右横方向に複数列で収納されるようになっている。また、図2を併せて参照すると、前記扉12のラック収容棚11aに対応する部分には、透明パネル12aが配置され、ラック30に収容されたパウチ食品P(図7参照)を視認可能となっている。更に、扉12の下方には、パウチ食品Pを取出すための商品取出し口12bが設けられている。
【0027】
図1に示すように、本体11のラック収容棚11aの前方には、ラック30に収容されたパウチ食品Pを1個ずつ受け取って、前記商品取出し口12bへと搬送する、商品搬出装置20(以下、「搬出装置20」という)が配置されている。図3を併せて参照すると、この搬出装置20は、コ字状をなしたフレーム21と、このフレーム21の両側部に架設され、本体11の上下方向に縦移動する上下移動台22と、この上下移動台22上に配置されて、本体11の左右方向に横移動するバケット24とを有している。
【0028】
フレーム21の両側部には、モータ22aにより回動するプーリ22bを介して、ワイヤ22cが張設されており、その一端が上下移動台22の両側部に連結され、他端がフレーム21下方のウェイト22dに連結されている。そして、フレーム21上方のモータ22aが駆動し、プーリ22bを介してワイヤ22cが上下に摺動すると、上下移動台22が上下方向に移動するようになっている。
【0029】
一方、上下移動台22に配置されたバケット24は、図示しないモータ、プーリ、プーリに張設されたベルト等からなる駆動機構により、上下移動台22上を左右方向に移動可能となっている。
【0030】
そして、扉12の前面に配置された操作部12c(図2参照)によるボタン操作により、図示しない電気回路を介して上下移動台22及びバケット24に電気信号が送られると、上下移動台22が上下方向に移動すると共に、バケット24が左右方向にそれぞれ移動して、所定のラック30の前方にバケット24が配置されるようになっている。
【0031】
更にバケット24には、図5に示すように、後述するラック30のレバー38を押し込んで、ゲート39を上方に回動させるレバー押込み部25と、同じく後述するラック30のベルト34を回動させて、プッシャ35をラック前方側へと移動させるラック駆動部26とを有している。
【0032】
レバー押込み部25は、ブラケット25aに支持されたモータ25bと、バケット24の後方側(ラック30側)に向けて伸び、前記モータ25b及び図示しないギヤを介して回動するボールネジ25cと、該ボールネジ25cが螺挿されたスライド板25dと、同スライド板25dに固設され、ラック30側へ突出した押込みピン25eとを有している。また、スライド板25dには、後述するラック30のラックギヤ36に歯合する連結ギヤ27が支持されている。したがって、モータ25bが駆動してボールネジ25cが回動すると、それに伴ってスライド板25dが矢印Fのように前後にスライドし、押込みピン25eがバケット24の後面から出没すると共に、連結ギヤ27がラック30側へと突出するようになっている。
【0033】
一方、ラック駆動部26は、モータ26aと、このモータ26aによって回転する駆動ギヤ26bと、この駆動ギヤ26bに歯合する第1従動ギヤ26cと、この第1従動ギヤ26cにベルト26dを介して連動する第2従動ギヤ26eと、この第2従動ギヤ26eに歯合する前記連結ギヤ27とを有している。したがって、モータ26aが回転すると、駆動ギヤ26b、第1従動ギヤ26c、ベルト26d、第2従動ギヤ26eを介して、連結ギヤ27が回転する。また、第1従動ギヤ26cは、プーリ26fとの間に調節されたコンベヤベルト26gも連動させるようになっている。このコンベヤベルト26gは、ラック30先端から押出されるパウチ食品Pを、バケット内方に移動させる役割をなしている。
【0034】
そして、前記レバー押込み部25のスライド板25dがラック30側へと移動し、ラック駆動部26により回動する連結ギヤ27がラック30側へ突出すると、同連結ギヤ27がラック30のラックギヤ36に噛み合って、ラックギヤ36を回動させるようになっている。
【0035】
図4,9に示すように、パウチ食品Pが収容されるラック30は、所定方向に長く伸び、上面及び前面が開口した箱状をなし、複数のパウチ食品Pを一列に並べて収容可能となっている。この実施形態におけるラック30は、幅方向中央であって長手方向に延設された仕切り板31で2つのパウチ収容部32,32が画成されており、パウチ食品Pを2列に並べて収容可能となっている。
【0036】
ラック30の底部33の幅方向中央には、図示しない回動軸を介してベルト34がラック30の長手方向に沿って張設されており、このベルト34の後方の基端部に、プッシャ35が取付けられている。また、ラック30の前方開口部側の回動軸には、ラックギヤ36が固設され、これに前述のバケット24の回動する連結ギヤ27が噛み合うと、ベルト34が回動して、プッシャ35を前方へと移動させて、パウチ食品Pを1個ずつラック先端から搬出するようになっている。
【0037】
更に、ラック30の底部33前方には、上下に揺動するストッパ37が設けられている。このストッパ37は、ラック30が本体11のラック収容棚11aに収納されていないときに、上方に揺動してパウチ食品Pの落下防止を図ると共に、ラック30がラック収容棚11aに収納されると下方に揺動するようになっている。
【0038】
また、ラック30の各パウチ収容部32の前端には、図示しない付勢手段により前方に付勢されたレバー38と、同レバー38の上方であって、上下に回動可能なゲート39とが設けられている。そして、前記押込みピン25eがバケット24後面から突出して、付勢手段の付勢力に抗してレバー38が押し込まれると、ゲート39が上方に回動して、ラック30の前方開口が開いてパウチ食品Pを搬出可能な状態となる。一方、押込みピン25eがバケット部24内方に引き込まれると、付勢手段によりレバー38が前方に押出されると共に、ゲート39が下方に回動して、ラック30の前方開口部を閉じるようになっている。
【0039】
上記ラック30に収容されるパウチ食品Pは、図7に示すように、キャップ5が螺着された細長ストロー状の口部3を有しており、合成樹脂フィルムに金属箔をラミネートした素材から形成されて、可撓性を有すると共に袋状をなした容器1に、果汁飲料や、流動性のあるゼリー飲料等の飲食品などが充填されてなるものである。また、口部3のキャップ5の下方部分は、キャップ5よりも細い円柱状をなしている。以下の説明上、この部分を首部7といい、この首部7が本発明における「パウチ食品の口部のキャップの下方に位置する部分」を意味する。
【0040】
そして、このパウチ食品Pに、本発明におけるパウチ食品用カバー部材50(以下、「カバー部材50」という)が装着されるようになっている。図6〜9を参照して説明すると、このカバー部材50は、上部が連結された前後面、及びこの前後面の下辺を連結するフラットな底面を有する枠体51と、この枠体51の上部中央に設けられると共に、前記パウチ食品Pの口部3を突出させる口部収容孔57とを有している。
【0041】
この実施形態における枠体51は、所定距離を空けて互いに平行に配置され、長方形の板状をなした前壁52及び後壁53と、これら前後壁52,53の長手方向に沿った側辺に直交する下辺を連結する長板状の底壁54と、同じく前後壁52,53の長手方向に沿った側辺に直交する上辺を連結し、前記底壁54に平行な長板状の天壁55とを有し、両側部が開口すると共に側方から見て矩形状をなしている。
【0042】
更に、枠体51の天壁55の中央部に、口部収容孔57が形成されている。この実施形態における口部収容孔57は、略楕円形状をなすと共に、その長軸が天壁55の長手方向に沿って配置されている。また、長板状の天壁55の一側辺(前後壁52,53に連結された長手方向に沿った側辺に直交する側辺)には、凹状の切欠き部58が形成されている。この切欠き部58は、パウチ食品Pの円柱状の首部7を受け入れることができるように円弧状をなしている。
【0043】
そして、切欠き部58と前記口部収容孔57との間にスリット59が形成されている。この実施形態のスリット59は、天壁55の幅方向中央であって、長手方向に沿って直線状に伸びる細長い溝状をなしており、その一端が凹状の切欠き部58の底部中央に連通し、他端が口部収容孔57に連通している。
【0044】
また、カバー部材50の口部収容孔57、切欠き部58、及びスリット59の寸法は、装着するパウチ食品Pの首部7の外径の大きさによっても異なるが、例えば、首部7の外径が11mmの場合、次のように設定されている。すなわち、図8に示すように、略楕円形状の口部収容孔57の短軸側の開口幅Aは、12〜25mmであることが好ましく、切欠き部58の開口幅A´は、12〜25mmであることが好ましい。更に、スリット59の長さBは、8〜30mmであることが好ましく、スリット59の開口幅tは、1mm以下であることが好ましい。それは単に天壁55を切断しただけでもよいし、0.01〜1mmになるように調節してもよい。また、口部収容孔57の開口幅Aと切欠き部58の開口幅A´とは同一であることが好ましい。
【0045】
上記カバー部材50の材質としては、例えば、ペット(PET:ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックシートや、薄い金属板、厚紙等を用いることができる。特に比較的柔らかく適度な剛性も有するプラスチックシートが好ましく、透明なものがより好ましい。このように、カバー部材50がプラスチックである場合には、カバー部材50を硬すぎず柔らかすぎず適度な剛性に保持することができ、パウチ食品Pの保形性を高め、一定厚さに保持しやすくなり、更に、パウチ食品Pを食するときに押し潰しやすくなるという利点が得られる。また、カバー部材50が透明な場合には、パウチ食品Pの外面に施された文字や図柄等を視認することができ、前記ラック30にそのまま収容することができる。すなわち、自動販売機10の前面に商品見本等を置く必要がなくなるので、コストの低減を図ることができる。
【0046】
また、カバー部材50は、前述したように、前後壁52,53と底壁54と天壁55とを有し、側方から見て矩形状の枠体51からなっているので、パウチ食品Pをカバーする前は、図8に示すように、前後壁52,53の上辺及び下辺を介して、前後壁52,53を互いに近接させるように折り曲げることにより、扁平な形状に折り畳むことができる。その結果、カバー部材50をかさばらずにコンパクトな形状とすることができるので、管理や搬送時等の利便性が向上する。
【0047】
次に、上記構成からなる自動販売機10及びカバー部材50を用いた、本発明による自動販売機によるパウチ食品の販売方法(以下、「販売方法」という)及び本発明によるカバー部材の使用方法について説明する。
【0048】
まず、図8に示すように折り畳まれた状態のカバー部材50を、図6に示すように矩形枠状に組み立てる。そして、パウチ食品Pの首部7を、凹状の切欠き部58に整合させると共に、枠体51の側部開口に、パウチ食品Pの首部7より下方部分を整合させる。その状態で、パウチ食品Pをカバー部材50内方へ向けて押し込む。すると、首部7が細長溝状のスリット59を押し広げつつ通過し、首部7が口部収容孔57に挿入されて、同口部収容孔57から口部3のキャップ5が突出すると共に、パウチ食品Pの首部7よりも下方部分が枠体51の内部に挿入配置されて、図7に示すように、パウチ食品Pにカバー部材50を装着することができる。
【0049】
このように、この実施形態では、首部7を受け入れ可能な凹状の切欠き部58が、スリット59とは別に形成されていて、この凹状の切欠き部58から首部7を押し込むことにより、スリット59を押し広げつつ挿入するように構成されているので、スリット59の開口幅を特に大きくする必要がなく、小さな開口幅で形成することができ、パウチ食品Pからカバー部材50が外れないように、しっかりと装着することができる。その結果、後述するように、パウチ食品Pが自動販売機10の商品取出し口12bに搬出されたときに、パウチ食品Pからカバー部材50が外れることを確実に防止でき、外れたカバー部材50が商品取出し口12bに溜まってしまうことを効果的に防止することができる。
【0050】
また、上記のようにカバー部材50の内部に、側方開口部からパウチ食品Pを挿入し、スリット59を通し押し込んで、口部3を口部収容孔57から突出させるだけの単純な操作で、パウチ食品Pにカバー部材50をスムーズかつ簡単に装着することができる。これに対して上記特許文献2では、一方の半割品に対して他方の半割品を上下反転させた後、係合孔と係合爪とを係合させるといった煩雑な作業が必要であったが、本発明では、そういった作業が不要となるので、カバー部材50の装着作業性を向上させることができる。
【0051】
そして、カバー部材50が装着されたパウチ食品Pを、ラック30の各パウチ収容部32,32に、一列に並べて収容する(図9参照)。その後、ラック30を、本体11のラック収容棚11aの所定位置に収容すると、ラック30のストッパ37が下方に揺動して、パウチ食品Pの搬出待機状態となる。
【0052】
上記のように各ラック30をセットした後、所望のパウチ食品Pを購入したい旨を、扉12の操作部12cを操作して指示する。すると、図示しないセンサ等によって、所定のラック30の縦位置に一致するように、上下移動台22が上下方向に移動すると共に、所定のラック30の横位置に一致するように、バケット24が左右方向に移動して、所定のラック30の前方にバケット24が配置される。
【0053】
そして、バケット24のレバー押込み部25のスライド板25dが、ラック30側へと移動し、押込みピン25eがバケット24後面から突出して、付勢手段の付勢力に抗してラック30のレバー38を押し込むことにより、ゲート39が上方に回動して、ラック30の前方開口部が開く。それと共に、バケット24のラック駆動部26により回動する連結ギヤ27がラック30側へ突出する。すると、この連結ギヤ27がラック30のラックギヤ36に噛み合って、ラックギヤ36を回動させることにより、ベルト34が回動して、プッシャ35が前方へと移動する。そして、このプッシャ35により最後方のパウチ食品Pが押し込まれると共に、それよりも前方のパウチ食品Pが順次押し込まれて、最終的にラック30の前方開口部(一端)からパウチ食品Pが押し出される。このとき、プッシャ35は、パウチ食品1個の厚さ分だけ、移動するように制御されている。そして、ラック30の前方開口部からパウチ食品Pが1個ずつ搬出されて、バケット24へと受け渡された後、搬出装置20が初期位置へと戻って、商品取出し口12bへとパウチ食品Pが搬送される。
【0054】
このように、この販売方法によれば、カバー部材50をパウチ食品Pに装着することにより、パウチ食品Pの外面が枠体51でカバーされて、所定形状に保形することができると共に、パウチ食品Pを一定厚さに保持することができ、更に、カバー部材50のフラットな底壁54でパウチ食品Pが支持されて、パウチ食品Pを起立した状態に維持することができる。そして、これを上述したように、自動販売機10のラック30に並べて収容し、ラックの30一端から1個ずつ搬出することにより、柔軟で押し潰されやすいパウチ食品Pでも、1個ずつ確実に搬出して、商品取出し口12bから取出すことができる。このように本発明においては、パウチ食品Pにカバー部材50を装着するだけの簡単な構成で、パウチ食品Pを通常の自動販売機により1個ずつ確実に搬出することができ、上記特許文献1のようなパウチ食品を吊り下げ支持するような特別な機械構造が不要となるので、パウチ食品Pの流通コストを低減することができる。
【0055】
図10〜12には、本発明におけるパウチ食品用カバー部材の他の実施形態が示されている。このパウチ食品用カバー部材50a(以下、「カバー部材50a」という)は、前記実施形態のカバー部材50と異なり、凹状の切欠き部58が形成されておらず、口部収容孔57から天壁55の一側辺に向けて、次第に開口幅が広くなり、略ハの字状をなすスリット59aが形成されているものである。
【0056】
そして、カバー部材50aの側方から、パウチ食品Pの首部7を押し込んで、スリット59aを通して口部収容孔57へと挿入することにより、図11に示すようにパウチ食品Pにカバー部材50aを装着することができる。
【0057】
この実施形態では、カバー部材50aに、略ハの字状をなしたスリット59aを設けたことにより、パウチ食品Pの挿入がより容易となる。また、前記実施形態と同様に、図11に示すように、カバー部材50aを扁平な形状に折り畳むことができる。
【0058】
図13には、本発明におけるパウチ食品用カバー部材の更に他の実施形態が示されている。このパウチ食品用カバー部材50b(以下、「カバー部材50b」という)は、上辺どうしが互いに連結した前後壁52,53と、該前後壁52,53の下辺を連結する底壁54とを有し、側方から見て略三角形状の枠体51からなっている。そして、前後壁52,53に、半円状の切欠きがそれぞれ設けられていて、これらが口部収容孔57をなしている。そして、カバー部材50bの側方開口から、パウチ食品Pをやや斜めにして挿入して、口部3を口部収容孔57から突出させることにより、パウチ食品Pにカバー部材50bを装着することができる。この実施形態のカバー部材50bでは、天壁55が不要となるので、よりシンプルな構造とすることができ、その製造コストをより一層低減することができる。
【符号の説明】
【0059】
P パウチ食品
1 容器
3 口部
5 キャップ
7 首部
10 自動販売機
11 本体
11a ラック収容棚
12 扉
12a 透明パネル
12b 商品取出し口
12c 操作部
20 商品搬出装置(搬出装置)
21 フレーム
22 上下移動台
22a モータ
22b プーリ
22c ワイヤ
22d ウェイト
24 バケット
25 レバー押込み部
25a ブラケット
25b モータ
25c ボールネジ
25d スライド板
25e 押込みピン
26 ラック駆動部
26a モータ
26b 駆動ギヤ
26c 第1従動ギヤ
26d ベルト
26e 第2従動ギヤ
26f プーリ
26g コンベヤベルト
27 連結ギヤ
30 商品収納ラック(ラック)
31 仕切り板
32 パウチ収容部
33 底部
34 ベルト
35 プッシャ
36 ラックギヤ
37 ストッパ
38 レバー
39 ゲート
50,50a,50b パウチ食品用カバー部材(カバー部材)
51 枠体
52 前壁
53 後壁
54 底壁
55 天壁
57 口部収容孔
58 切欠き部
59,59a スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品収納ラックに商品を一列に並べて収容し、該商品収納ラックの一端から商品を1個ずつ搬出して、商品搬出装置のバケットで受けて、商品取出口に搬送するように構成された自動販売機により、キャップが装着された口部を有する袋状の容器に飲食品を充填したパウチ食品を販売する方法において、
上部が連結された前後面、及びこの前後面の下辺を連結するフラットな底面を有する枠体と、この枠体の上部中央に設けられた口部収容孔とを有するカバー部材を用い、
前記キャップが装着された口部を前記口部収容孔から突出させることにより、前記パウチ食品に前記カバー部材を装着し、
このカバー部材を装着したパウチ食品を、前記自動販売機の前記商品収納ラックに並べて収容し、前記自動販売機の操作によって前記商品収納ラックの一端から1個ずつ搬出して、前記商品搬出装置のバケットにより前記商品取出し口に搬送させることを特徴とする自動販売機によるパウチ食品の販売方法。
【請求項2】
前記カバー部材は、上部が連結された前後面、及びこの前後面の下辺を連結するフラットな底面を有する枠体と、この枠体の上部中央に設けられた口部収容孔と、前記枠体の上部の一側方から前記口部収容孔に至るスリットとを有しており、
前記パウチ食品の口部のキャップの下方に位置する部分を、前記スリットを通して前記口部収容孔に挿入することにより、前記パウチ食品に前記カバー部材を装着する請求項1記載のパウチ食品の販売方法。
【請求項3】
前記カバー部材は、透明なプラスチックシートで形成されている請求項1又は2記載の自動販売機によるパウチ食品の販売方法。
【請求項4】
前記カバー部材は、前後壁と、該前後壁の下辺を連結する底壁と、該前後壁の上辺を連結する天壁とを有する、側方から見て矩形状の枠体からなる請求項1〜3のいずれか1つに記載のパウチ食品の販売方法。
【請求項5】
前記カバー部材の前記天壁の中央部に前記口部収容孔が形成され、前記天壁の一側辺に凹状の切欠き部が設けられ、この切欠き部と前記口部収容孔との間に前記スリットが形成されている請求項4記載の自動販売機によるパウチ食品の販売方法。
【請求項6】
キャップが装着された口部を有する袋状の容器に飲食品を充填したパウチ食品を、自動販売機で販売するため、該パウチ食品に装着されるカバー部材であって、
上部が連結された前後面、及びこの前後面の下辺を連結するフラットな底面を有する枠体と、この枠体の上部中央に設けられた口部収容孔とを有し、
前記キャップが装着された口部を前記口部収容孔から突出させることにより、前記パウチ食品に装着されるように構成されていることを特徴とするパウチ食品用カバー部材。
【請求項7】
上部が連結された前後面、及びこの前後面の下辺を連結するフラットな底面を有する枠体と、この枠体の上部中央に設けられた口部収容孔と、前記枠体の上部の一側方から前記口部収容孔に至るスリットとを有し、
前記パウチ食品の口部のキャップの下方に位置する部分を、前記スリットを通して前記口部収容孔に挿入することにより、前記パウチ食品に装着されるように構成されている請求項6記載のパウチ食品用カバー部材。
【請求項8】
前記カバー部材は、透明なプラスチックシートで形成されている請求項6又は7記載のパウチ食品用カバー部材。
【請求項9】
前記カバー部材は、前後壁と、該前後壁の下辺を連結する底壁と、該前後壁の上辺を連結する天壁とを有する、側方から見て矩形状の枠体からなる請求項6〜8のいずれか1つに記載のパウチ食品用カバー部材。
【請求項10】
前記カバー部材の前記天壁の中央部に前記口部収容孔が形成され、前記天壁の一側辺に凹状の切欠き部が設けられ、この切欠き部と前記口部収容孔との間に前記スリットが形成されている請求項9記載のパウチ食品用カバー部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−22625(P2011−22625A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164342(P2009−164342)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】