説明

自動販売機

【課題】自動販売機の商品取出口を、扉正面から突出した「突出状態」と扉正面から突出しない「収納状態」とに容易に変更できるようにする。
【解決手段】自動販売機本体の前面を開閉する外扉14に開設された開口24の背面側の下方には、自動販売機本体の商品収納室から搬出される商品を受容する商品受容部材30が配設されている。商品受容部材30は、前後方向に分離可能な第1の受容部材30A及び第2の受容部材30Bを含む。第1の受容部材30Aは、外扉14の後方側に位置しつつ外扉14に一体的に固定される。また、第2の受容部材30Bは、第1の受容部材30Aに対して前方にスライド可能に配置され、少なくとも第1の受容部材30Aの方向に押し込んだ「収納状態」と第1の受容部材30Aから離れる方向に引き出した「突出状態」とにおいて、外扉14の内側から外扉14に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種容器に充填された飲料などの商品を販売する自動販売機に関する。
【背景技術】
【0002】
商品を販売する自動販売機の商品取出口について、特開平8−87661号公報(特許文献1)に記載されるように、上面及び背面を開放した箱状体を引き出すことによって、商品の取り出しを容易にする技術が提案されている。そして、箱状体を引き出して商品取出口を前方に突出させると、その上方からの商品の視認性が向上することから、商品の取り出しが容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−87661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、箱状体を引き出して商品取出口を前方に突出させても、商品が依然として奥まった位置にあるので、商品の搬出状態が相変わらず分かり難い。また、商品を取り出すために開閉扉を開くことに加え箱状体を引き出す必要があり、利用者にとって不便である。さらに、箱状体を引き出す構造が、何らかの原因により作動しなくなるおそれもある。このため、商品取出口を前方に突出させることが考えられるが、自動販売機の設置先によっては、扉の正面からの突出が規制されていたり、通行人がぶつかって怪我をしたり商品取出口が壊れてしまったりすることが懸念される場合がある。
【0005】
そこで、本発明は従来技術の問題点に鑑み、商品取出口を、扉正面から突出した「突出状態」と、扉正面から突出しない「収納状態」と、に容易に変更できるようにした、自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
自動販売機は、商品収納室を備えた自動販売機本体と、自動販売機本体の前面を開閉する外扉と、自動販売機本体の商品収納室から搬出される商品を商品受容部材で受容し、商品受容部材で受容した商品を外扉に開設された開口を介して取り出すための商品取出装置と、を備える。そして、商品受容部材は、前後方向に分離可能な第1の受容部材及び第2の受容部材を含む。第1の受容部材は、外扉の後方側に位置しつつ外扉に一体的に固定される。第2の受容部材は、第1の受容部材に対して前方にスライド可能に配置され、少なくとも第1の受容部材の方向に押し込んだ第1の位置と第1の受容部材から離れる方向に引き出した第2の位置とにおいて、外扉の内側から外扉に固定される。
【発明の効果】
【0007】
商品取出口を、外扉から突出しない第1の位置(収納状態)と、外扉から突出した第2の位置(突出状態)と、に容易に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】自動販売機の一例を示す斜視図である。
【図2】商品取出装置の詳細を示す断面図である。
【図3】商品受容部材の詳細を示す斜視図である。
【図4】収納状態における商品取出装置の固定方法を示す断面図である。
【図5】収納状態における商品取出装置の外観を示す斜視図である。
【図6】突出状態における商品取出装置の固定方法を示す断面図である。
【図7】突出状態における商品取出装置を示す断面図である。
【図8】突出状態における商品取出装置の外観を示す斜視図である。
【図9】商品視認性の向上を説明する説明図である。
【図10】開閉扉を外開きから内開きへと変更する手順を示し、(A)〜(C)は第1手順〜第3手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は、自動販売機の一例を示す。
自動販売機10は、前面が開口した自動販売機本体12と、自動販売機本体12の前面開口を開閉する左右開きの外扉14と、を有している。
【0010】
自動販売機本体12は、内部を上下に仕切ることにより、商品を収納する商品収納室が上部側に設けられ、商品収納室を冷却又は加熱する機器を収納する機械室が下部側に設けられている。商品収納室は、上面側、背面側、底面側及び左右両側面側が断熱材によって囲まれ、前面側が断熱性の内扉16によって開閉されるようになっている。内扉16の下部には、商品収納室と外扉14に取り付けられた商品取出装置18とを連通する商品搬出口20が左右方向に複数開設され、商品収納室に収納された商品が商品搬出口20を介して商品取出装置18に搬出されるようになっている。また、各商品搬出口20の上端側には、商品搬出口20を開閉する搬出扉22が取り付けられている。搬出扉22は、商品収納室から商品搬出口20へと搬出された商品によって押し開けられ、商品を商品取出装置18へと搬出するようになっている。
【0011】
商品取出装置18は、図2に示すように、外扉14の下部に開設された開口24と、開口24を開閉するための開閉扉26と、搬出扉22の不正な開放を規制するための防盗板28と、を有している。開口24は、商品搬出口20の前方に位置する外扉14の前面を左右方向に延びる略矩形形状をなしている。
【0012】
開口24の背面側の下方には、商品搬出口20を介して商品収納室から搬出された商品BTLを受容するための商品受容部材30が配設されている。商品受容部材30は、少なくとも開口24の幅と同一の幅を有し、図3に示すように、前後方向に分離可能な第1の受容部材30A及び第2の受容部材30Bを含む。第1の受容部材30Aは、公知の手段によって外扉14に固定され、前方側に位置しつつ板面が水平面上に延びる部分と、その後端側から板面が斜め後方上部へと延びる部分と、を有する。第2の受容部材30Bは、後方側に位置しつつ板面が水平面上に延びる部分と、その前端部から板面が斜め前方上方へと延びる部分と、その上端部から板面が上方へと延びる部分と、を有する。第2の受容部材30Bの水平面上に延びる部分は、例えば、第1の受容部材30Aの水平面上に延びる部分の下面とこれを補強する補強部材32の上面との間にスライド可能に挟持されている。そして、第1の受容部材30Aと第2の受容部材30Bとを組み合わせることで、下方に向かって突出する凹部が形成され、ここで商品搬出口20から搬出される商品BTLを受容する。なお、第2の受容部材30Bのスライド構造は、例えば、前後方向に延びるスリットにピンが挿通する構成など、公知の手段を適用してもよい。
【0013】
また、第2の受容部材30Bの前面には、開口24から第2の受容部材30Bの一部が見えることを防止するため、開口24の幅を越えて左右方向に延びる略矩形形状の化粧板34が固定されている。化粧板34の背面側には、化粧板34を外扉14に固定することにより、第2の受容部材30Bを外扉14に固定するため、トラスネジなどの締結部材が螺合する雌ネジが複数形成されている。一方、化粧板34が取り付けられる外扉14のパネルには、化粧板34の雌ネジに対応した位置に締結部材が挿通する挿通孔が開設されている。さらに、化粧板34の上端には、開閉扉26の下端側が着座するときの衝撃を緩和する目的で、例えば、ウレタンなどの弾性体からなる緩衝部材36が取り付けられている。
【0014】
開口24の背面側の左右両端には、商品受容部材30の左右両端から上方へと延びる側板38が設けられている。さらに、開口24の背面側の上方には、前方に向かって下り傾斜した上面板40が配設されている。
【0015】
開閉扉26は、合成樹脂などの透明板からなり、開口24の背面側の上部に上端が回転自由に取り付けられている。開閉扉26は、開口24を閉じた状態で上方からの商品BTLの視認性を向上させるべく、その上部が斜めに形成されている。開閉扉26は、下端側を前方に回転させることによって開口24を開放し、自重によって開口24を閉鎖する。ここで、開閉扉26によって開口24を閉鎖するときの衝撃を緩和するため、開閉扉26の回転速度を低下させるダンパ機能を備えるようにしてもよい。
【0016】
防盗板28は、左右方向に延びる金属製の板状部材からなり、商品搬出口20と開口24との間に配設されている。防盗板28は、上面板40の下面側に連結軸を介して前後に回転自由に端部が取り付けられている。防盗板28は、開口24から挿入された手によって後方に回転し、下端側が搬出扉22の前面に接触することにより、搬出扉22の前方への回転を規制する。なお、自動販売機10を室内に設置するなど、搬出扉22の不正な開放を規制する必要がない場合には、防盗板28を設けなくてもよい。
【0017】
以上のように構成された自動販売機10において、商品取出口を突出させない収納状態とする場合には、図4に示すように、第2の受容部材30Bを第1の受容部材30Aの方向に押し込み、外扉14の内側から、パネルの挿通孔を介して化粧板34の雌ネジに、締結部材の一例としてのトラスネジ42を螺合させる。すると、化粧板34が外扉14に固定されるため、化粧板34と一体化された第2の受容部材30Bが外扉14に固定されることとなる。このとき、開口24の下方には、図5に示すように、化粧板34が現われるが、化粧板34によって第2の受容部材30Bが覆い隠されるので、その外見が見苦しくなることを抑制できる。
【0018】
一方、商品取出口を突出させた突出状態とする場合には、外扉14の内側から、外扉14に対して化粧板34を固定していたトラスネジ42を取り外し、第1の受容部材30Aに対する第2の受容部材30Bの結合を解除する。そして、図6に示すように、第2の受容部材30Bを前方へと引き出し、外扉14に対して第2の受容部材30Bを固定する。
【0019】
このとき、外扉14の前面に対する第2の受容部材30Bの突出寸法を規制するために、外扉14と第2の受容部材30Bとの間に、図3に示すような、左右一対のスペーサ44を介在させる。スペーサ44は、その下部に化粧板34が収まる段部44Aを有する。また、スペーサ44の対向する一側面には、開閉扉26の下端側が着座して密閉性を高める着座部44Bが形成されている。さらに、スペーサ44の少なくとも段部44Aには、締結部材の一例としてのトラスネジ42が挿通する挿通孔44Cが開設されている。なお、スペーサ44は、閉塞部材の一例として挙げられる。
【0020】
そして、図6及び図7に示すように、外扉14の前面にスペーサ44を介在させて化粧板34を配置し、外扉14の挿通孔及びスペーサ44の挿通孔44Cを介して、外扉14の内側からトラスネジ42を化粧板34の雌ネジに螺合することで、外扉14に対して化粧板34を固定する。化粧板34を固定すると、これと一体化された第2の受容部材30Bも外扉14に固定される。このとき、スペーサ44により、図8に示すように、外扉14の前面と開閉扉26との間に存在する側方の隙間が閉じられることから、自動販売機10を室外に設置しても、開口24から内部に埃や雨などが侵入することを抑制できる。また、商品取出口を突出させた突出状態では、スペーサ44の段部44Aは化粧板34が収まる形状をなしているため、化粧板34からスペーサ44へと至る面を滑らかな外観とすることができる。さらに、スペーサ44の背面及び段部44Aを除く他の面を化粧板34と同様な色、デザインとすれば、デザイン上の統一性を確保することができる。
【0021】
商品取出口を突出させると、商品受容部材30の奥行き寸法が大きくなることから、図9に示すように、自動販売機10の利用者は、防盗板28に邪魔されずに商品BTLの全体を視認することが可能となり、その利便性を向上させることができる。
【0022】
第1の受容部材30Aに対して第2の受容部材30Bを前後方向にスライド可能とすることで、防盗板28を備えない自動販売機10を室内に設置する場合、開閉扉26を外開きから内開きへと簡単に切り換えることができる。即ち、図10に示すように、第2の受容部材30Aを前方に引き出し、開閉扉26と第2の受容部材30Bとの干渉を回避した状態で、開閉扉26を内側へと回転させる。そして、この状態で第2の受容部材30Bを押し込むと、開閉扉26の先端が開口24の内側に位置するようになる。このようにすれば、商品BTLを取り出すときに、開閉扉26を押し込むだけでよく、商品取出性を向上させることができる。なお、内開きから外開きへと切り換える場合には、前述した手順を逆に辿ればよい。
【0023】
以上の自動販売機10においては、外扉14に対する第2の受容部材30Bの固定は、化粧板34の固定を介して間接的に行っていたが、外扉14の内側において、例えば、第1の受容部材30Aに対して第2の受容部材30Bを固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 自動販売機
12 自動販売機本体
14 外扉
18 商品取出装置
24 開口
26 開閉扉
30 商品受容部材
30A 第1の受容部材
30B 第2の受容部材
34 化粧板
44 スペーサ
44B 着座部
BTL 商品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品収納室を備えた自動販売機本体と、
前記自動販売機本体の前面を開閉する外扉と、
前記外扉に取り付けられ、前記自動販売機本体の商品収納室から搬出される商品を商品受容部材で受容し、前記商品受容部材で受容した商品を前記外扉に開設された開口を介して取り出すための商品取出装置と、
を備え、
前記商品受容部材は、前後方向に分離可能な第1の受容部材及び第2の受容部材を含み、前記第1の受容部材は、前記外扉の後方側に位置しつつ前記外扉に一体的に固定される一方、前記第2の受容部材は、前記第1の受容部材に対して前方にスライド可能に配置され、少なくとも前記第1の受容部材の方向に押し込んだ第1の位置と前記第1の受容部材から離れる方向に引き出した第2の位置とにおいて前記外扉の内側から前記外扉に固定される、
自動販売機。
【請求項2】
前記開口を開閉する開閉扉と、
前記第2の受容部材を前記第2の位置に引き出した状態において、前記外扉の前面と前記開閉扉の両側部との間に存在する側方の隙間を閉塞する閉塞部材と、
を更に備えた、請求項1に記載の自動販売機。
【請求項3】
前記第2の受容部材の前面に、該第2の受容部材の一部を覆い隠す化粧板が取り付けられ、
前記閉塞部材は、前記化粧板と前記外扉との間に少なくとも一部が介在される、左右一対のスペーサからなる、
請求項2に記載の自動販売機。
【請求項4】
前記スペーサの対向する一側面に、前記開閉扉の下端部が着座する着座部が形成されている、
請求項3に記載の自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−208708(P2012−208708A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73441(P2011−73441)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】