説明

自動車のアウターハンドル装置

【課題】アウターハンドル装置において、できるだけ簡素な構造をもって、自動車の衝突時にドアのロックの解除を阻止する機能をより確実に持たせる。
【解決手段】ハンドルブラケットBには、ハンドル本体Hの引き操作により付勢体の付勢に抗して正転されるようにハンドル本体Hに連係されると共に、この正転によってドアロック装置に連係された伝達部材をロックを解除させる位置に移動させる回動体10が備えられている。自動車の衝突によりハンドル本体Hに前記引き操作の操作方向xへ向けた移動を生じさせる力が作用されたときに、回動体10がその回動中心軸13の軸一端側10gを軸他端側10hより車外側Exに位置させるように傾動してこの回動体10の軸受け部12に形成されたストッパ部12aにこの回動体10の一部を係当させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のドアの外側に備えられて車外からの引き操作によりドアロック装置によるこのドアのロックを解除させるアウターハンドル装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドルの車外側への引き操作によりドアのロックを解除させるハンドル装置において、自動車の衝突時、典型的には側面衝突時にハンドルにこの操作の方向への移動力が作用されたときに同時にハンドル装置を構成する回動体を車外側にスライド移動させてこのロックの解除がなされないようにしたものがある。(特許文献1参照)しかるに、この特許文献1に示されるものにあっては、前記衝突時に回動体を全体として車外側にスライド移動させてドアアウタパネル側に設けたストッパに係合させるものであった。また、この特許文献1に示されるものにあっては、通常時はかかる回動体をロック解除方向に回動させないように付勢するバネと、回動体をストッパに係合しない位置に位置づけるバネとの2つのバネを少なくとも必要とさせるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−36535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のアウターハンドル装置において、できるだけ簡素な構造をもって、自動車の衝突時にドアのロックの解除を阻止する機能をより確実に持たせる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、自動車のアウターハンドル装置を、自動車のドアに備えられて車外からの引き操作によりドアロック装置によるこのドアのロックを解除させるアウターハンドル装置であって、
ハンドル本体と、ドア側に固定されてこのハンドル本体を前記引き操作可能にドアに支持させるハンドルブラケットとを有しており、
ハンドルブラケットには、
ハンドル本体の前記引き操作により付勢体の付勢に抗して正転されるようにハンドル本体に連係されると共に、この正転によって前記ドアロック装置に連係された伝達部材を前記ロックを解除させる位置に移動させる回動体が備えられており、
自動車の衝突により前記ハンドル本体に前記引き操作の操作方向へ向けた移動を生じさせる力が作用されたときに、この回動体がその回動中心軸の軸一端側を軸他端側より車外側に位置させるように傾動してこの回動体の軸受け部に形成されたストッパ部にこの回動体の一部を係当させるようになっているものとした。
【0006】
ハンドル本体に前記のような力が作用されたときは、回動体も同じ向きの力の作用を受けて前記のように傾動し、このときストッパ部に係当部が係当して回動体の正転が阻止される。これにより、ハンドル本体に前記のような力が作用されたときに、確実に回動体の正転を阻止してドアのロックを阻止することができる。すなわち、ストッパ部に対して回動体の一部を回動体の傾動によって係当させることから、この係当に回動体全体の移動は不要であり、しかも、ストッパ部が回動中心軸の軸受け部に形成されていることから、この係当のための回動体の傾動量は必要最小限化にすることができ、前記ロックの阻止を確実になさしめることができる。
【0007】
前記回動体は、その回動中心軸の軸一端をこれに対する軸受け部に形成された長穴状をなす軸穴に収めて軸支されるようにすると共に、この軸受け部に前記ストッパ部を設けるようにすることが、この発明の好適な態様の一つである。
【0008】
また、回動体の傾動を前記付勢体の付勢の抗してなされるようにしておくことが、この発明の好適な態様の一つである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、簡素な構造でありながら、自動車の衝突時にはドアのロックの解除を確実に阻止するアウターハンドル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1はアウターハンドル装置の斜視図である。
【図2】図2はアウターハンドル装置の要部分解斜視図である。
【図3】図3はアウターハンドル装置の取り付け状態を示した要部平面図である。
【図4】図4はアウターハンドル装置の要部背面図である。
【図5】図5はアウターハンドル装置の側面図である。
【図6】図6はアウターハンドル装置の要部平面図であり、回動体の一部がストッパ部に係当した状態を示している。
【図7】図7は図6の状態における要部背面図である。
【図8】図8は図6の状態における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図8に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について説明する。この実施の形態にかかるアウターハンドル装置は、自動車のドアDの外側に備えられて車外からの引き操作によりドアロック装置(図示は省略する。)によるこのドアDのロックを解除させるものである。
【0012】
かかるアウターハンドル装置は、ハンドル本体Hと、ドアD側に固定されてこのハンドル本体Hを前記引き操作可能にドアDに支持させるハンドルブラケットBとを有している。
【0013】
図示の例では、ハンドル本体Hは、バー両端部1、2間を把持部3とした棒状をなすように構成されている。ハンドル本体Hのバー一端部1にはドアDのアウタパネルDp内に入り込む延長部4が連接されている。この延長部4はアウタパネルDp内において縦向きの回動軸5をもって回動可能に支持されるようになっている。一方、ハンドル本体Hのバー他端部2の背面側にはこの背面に直交する向きに突き出す連係部6が形成されている。この連係部6はハンドルブラケットBを前後に貫通する貫通孔9を通じてドアDのアウタパネルDp内に入り込むようになっている。この連係部6には、その突きだし方向に長く続く受け入れ穴6aが上下方向に貫通するように設けられている。図示の例では、ハンドル本体Hは、後述するハンドルブラケットBに内蔵された回動体10の付勢体の付勢により、通常はかかる連係部6をドアDのアウタパネルDp内に最も入り込ませた位置に位置づけられるようになっている。(図3〜図5/以下、ハンドル本体Hのこの位置を未操作位置という。)この未操作位置にあるハンドル本体Hの把持部3を把持してこのハンドル本体Hを引き操作すると、ハンドル本体Hは前記バー一端部1側を回動中心としてバー他端部2をドアDのアウタパネルDpから離れる向きに移動させ、この移動により連係部6は車外側Exに移動される。(図6〜図8)図示の例では、この連係部6の移動により後述の付勢体の付勢に抗して回動体10が正転され、この回動体10の正転によって前記ドアロック装置に連係された伝達部材(図示は省略する。)がこのドアロック装置による前記ロックを解除させる位置に移動されるようになっている。図示の例では、回動体10に伝達部材に対する連結部10bが形成されており、回動体10が正転すると伝達部材が下方に押し込まれてドアロック装置のラッチをドア枠側に設けたストライカとの係合を解く位置に移動させるようになっている。
【0014】
ハンドルブラケットBは、背面7をドアDのアウタパネルDpに対する取り付け部8としている。また、このハンドルブラケットBには、前記貫通孔9が形成されていると共に、このハンドルブラケットBの背面7側には、ハンドル本体Hの前記引き操作により付勢体の付勢に抗して正転されるようにハンドル本体Hに連係されると共に、この正転によって前記ドアロック装置に連係された伝達部材を前記ロックを解除させる位置に移動させる回動体10が備えられている。
【0015】
図示の例では、ハンドルブラケットBの背面7において、前記貫通孔9を挟んだ左右両側にそれぞれ、後方に突き出す壁部11が形成されている。貫通孔9はハンドルブラケットBにおけるこの左右の壁部11、11に挟まれた箇所の下側に設けられている。前記回動体10は、この左右の壁部11、11におけるこの貫通孔9の形成位置よりも上方に位置される箇所間に回動可能に支持されるようになっている。すなわち、図示の例では、かかる左右の壁部11、11の上側が回動体10の回動中心軸13の軸受け部12として機能するようになっている。ハンドル本体Hの連係部6は貫通孔9を通じて左右の壁部11、11よりもさらに後方に入り込むようになっている。回動体10はその回動中心軸13よりも下方にレバー部10aを備えており、このレバー部10aは連係部6の受け入れ穴6aに上方から入り込んでいる。また、回動体10はその回動中心軸13よりも上方に前記伝達部材に対する連結部10bを備えている。また、前記付勢体は、図示の例では、バネ巻回部14aに前記回動中心軸13を通して、左右の壁部11、11間にこのバネ巻回部14aを位置させると共に、このバネ巻回部14aから引き出されたバネ一端14bを回動体10に当接させ、かつ、このバネ巻回部14aから引き出されたバネ他端14cを壁部11に当接させた、ねじりコイルバネ14によって構成されている。かかる左右の壁部11、11とこの間に支持される回動体10はハンドルブラケットBの取り付け部8より後方に位置され、ドアDのアウタパネルDpの内方に位置される。そして、回動体10が正転されるとき、このねじりコイルバネ14のバネ巻回部14aがより弾性変形されるようになっている。回動体10のレバー部10aはこの回動体10の正転前の位置において連係部6の受け入れ穴6aの後端の穴壁6bに当接されており、これにより、ハンドル本体Hは未操作位置に位置づけられる。(図3〜図6)ハンドル本体Hを引き操作すると連係部6は車外側Exに移動され、これに伴ってレバー部10aも車外側Exに移動されることから、回動体10は正転し連結部10bは下方に移動し、伝達部材が下方に押し込まれ、ドアDのロックが解除される。
【0016】
また、この実施の形態にかかるアウターハンドル装置あっては、自動車の衝突により前記ハンドル本体Hに前記引き操作の操作方向xへ向けた移動を生じさせる力が作用されたときに、この回動体10がその回動中心軸13の軸一端側10gを軸他端側10hより車外側Exに位置させるように傾動してこの回動体10の軸受け部12に形成されたストッパ部12aにこの回動体10の一部を係当させるようになっている。
【0017】
図示の例では、回動体10における前記連結部10bの外周部にかかるストッパ部12aに対する係当部10cが形成されている。そしてハンドル本体Hに前記のような力が作用されない限り、連結部10bの車外側Exに向けられた側部は軸受け部12の後方に向けられた側部よりも後方にあって回動体10の正転時には軸受け部12に接触しないようになっている。(図5)一方、ハンドル本体Hに前記のような力が作用されたときは、回動体10も同じ向きの力の作用を受けて前記のように傾動し、このときストッパ部12aに係当部10cが図示の例では上方から突き当たって回動体10の正転が阻止されるようになっている。(図8)これにより、この実施の形態にかかるアウターハンドル装置あっては、ハンドル本体Hに前記のような力が作用されたときに、確実に回動体10の正転を阻止してドアDのロックを阻止することができる。すなわち、ストッパ部12aに対して回動体10の一部を回動体10の傾動によって係当させることから、この係当に回動体10全体の移動は不要であり、しかも、ストッパ部12aが回動中心軸13の軸受け部12に形成されていることから、この係当のための回動体10の傾動量は必要最小限化にすることができ、前記ロックの阻止を確実になさしめることができる。
【0018】
具体的には、回動体10は、シャフト状をなす回動中心軸13の通し孔10jの形成された中心部10iから下方に突き出す前記レバー部10aと、この中心部10iから上方に突き出す連結部10bとを有している。回動中心軸13の軸他端側10hにおいて、中心部10i、レバー部10a及び連結部10bの側面は同面上に位置されている。左右の壁部11、11の一方、図示の例では、図2における右側の壁部11の内面と中心部10iとの間には間隔が形成されており、この間に前記ねじりコイルバネ14のバネ巻回部14aが位置されるようになっている。
【0019】
回動中心軸13は、左右の壁部11、11の上部、すなわち前記軸受け部12にそれぞれ形成された軸穴12bと回動体10の前記通し孔10jとに通されている。図中符号13aはこの回動中心軸13の頭部であり、符号15は回動中心軸13の先端に止め付けられたEリングである。
【0020】
回動体10の連結部10bは、回動中心軸13の軸線に筒軸線を略平行に配した略円筒状を呈するように構成されている。連結部10bにおける回動中心軸13の軸一端側10gに位置される筒端10dは図2における右側の壁部11の外面と略同じ位置に位置されている。前記伝達部材はこの連結部10bの筒口10eを利用してこの連結部10bに取り付けられるクリップ18を介してこの連結部10bに連結されるようになつている。
【0021】
回動体10が正転前の位置にある状態において、かかる連結部10bの下方に向けられた部分には、この連結部10bの外周部に刻みつけられるようにこの連結部10bの筒軸線に沿って続く溝10fが設けられており、この溝10fによって前記係当部10cが構成されている。
【0022】
一方、図2における右側の壁部11の上部、すなわち、右側の軸受け部12には、後方に向けて突き出す突出部12dが設けられており、この突出部12dによって前記ストッパ部12aが構成されている。
【0023】
左右の壁部11、11の上部、すなわち左右の軸受け部12、12の一方に形成された軸穴12bは、前後方向に長さ方向を略沿わせた長穴状をなすように構成されている。図示の例では、図2における右側の軸受け部12の軸穴12bがこのような長穴状をなすように構成されている。これにより、前記回動中心軸13の軸一端側10gは前後方向に移動可能にこの軸受け部12に支持される。一方、左右の軸受け部12、12の他方に形成された軸穴12bは回動中心軸13の外径よりもやや大きい穴径を持つように構成されている。
【0024】
付勢体となるねじりコイルバネ14は、バネ一端14bを回動体10の中心部10iと連結部10bとの連接箇所に下方から押し当てていると共に、バネ他端14cを右側の壁部11の上部と下部との間の中間部16に後方から引っ掛けている。図示の例では、回動体10が正転するとこのねじりコイルバネ14のバネ一端14bとバネ他端14cとが上下方向において近づきバネ巻回部14aが弾性変形されて回動体10に逆転方向の付勢力を作用させるようになっている。また、回動体10の回動中心軸13の軸一端側10gの車外側Exへの移動は、ねじりコイルバネ14のバネ他端14cとバネ巻回部14aの巻回中心との間の間隔を増大させる弾性変形によって許容されるようになっており、これにより回動中心軸13の軸一端は通常時は長穴状をなす軸穴12bの後端12cに押しつけられている。(図5)
【0025】
自動車の衝突により前記ハンドル本体Hに前記引き操作の操作方向xへ向けた移動を生じさせる力が作用されたときは、前記付勢体としてのねじりコイルバネ14に弾性変形を生じながら回動体10は傾動される。すなわち、この実施の形態にあっては、かかる付勢体としてのねじりコイルバネ14によって、ハンドル本体Hに前記のような力が作用されない状態では回動体10をハンドル本体Hの引き操作をしたときに前記正転をする位置に位置づけている。(図5)
【符号の説明】
【0026】
B ハンドルブラケット
H ハンドル本体
x 操作方向
Ex 車外側
10 回動体
10g 軸一端側
10h 軸他端側
12 軸受け部
12a ストッパ部
13 回動中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアに備えられて車外からの引き操作によりドアロック装置によるこのドアのロックを解除させるアウターハンドル装置であって、
ハンドル本体と、ドア側に固定されてこのハンドル本体を前記引き操作可能にドアに支持させるハンドルブラケットとを有しており、
ハンドルブラケットには、
ハンドル本体の前記引き操作により付勢体の付勢に抗して正転されるようにハンドル本体に連係されると共に、この正転によって前記ドアロック装置に連係された伝達部材を前記ロックを解除させる位置に移動させる回動体が備えられており、
自動車の衝突により前記ハンドル本体に前記引き操作の操作方向へ向けた移動を生じさせる力が作用されたときに、この回動体がその回動中心軸の軸一端側を軸他端側より車外側に位置させるように傾動してこの回動体の軸受け部に形成されたストッパ部にこの回動体の一部を係当させるようになっていることを特徴とする自動車のアウターハンドル装置。
【請求項2】
回動体の傾動が付勢体の付勢の抗してなされるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の自動車のアウターハンドル装置。
【請求項3】
回動体は、その回動中心軸の軸一端をこれに対する軸受け部に形成された長穴状をなす軸穴に収めて軸支されると共に、
この軸受け部にストッパ部を設けてあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車のアウターハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−1951(P2012−1951A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136916(P2010−136916)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000101916)イオ インダストリー株式会社 (5)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)