説明

自動車のモール及びそのモールを挟着された側部窓ガラスの取付方法

【課題】自動車の側部窓ガラスの下辺に挟着されるモールについて、少ない部品点数で構成され、自動車組み立て時の作業工数を増やすことなく、前記自動車の側部窓ガラス装着部に前記モールを挟着された側部窓ガラスを取付けた後で、前記側部窓ガラスからの脱落を防止できるモールを提供する。
【解決手段】自動車の側部窓ガラス2の下辺を挟着する窓ガラス挟着部12を有するモール1であり、前記モール1の側部窓ガラス装着部12のフランジ面側に、溝141を設けたモール裏側部材14が備えられており、溝141の開口面が、側部窓ガラス装着部12のフランジ面と向き合うようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の側部窓ガラス装着部に固定される側部窓ガラスの下辺に挟着されるモールと、そのモールを挟着された側部窓ガラスの自動車の側部窓ガラス装着部への取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の側部窓ガラス装着部に固定されている側部窓ガラスには、その周辺部にモールが取付けられている場合がある。窓ガラス周辺部を挟着するモールとしては、モール本体と、前記モール本体に装着されるモール装着部を有する複数の前記モール本体に対してスライド自在のモールクリップとで前記側部窓ガラスの周辺部を挟着するモール(特許文献1)や、図7に示すような前記側部窓ガラスの車外側に当接される突成形部と前記側部窓ガラスの車内面側に当接される挟持片とを一体的に成形しており、前記突成形部と前記挟持片とで前記側部窓ガラスの下辺を挟着するモール(特許文献2)が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の側部窓ガラスに挟着するモールでは、前記モールを挟着した前記側部窓ガラスと前記モールの前記モール本体に装着される複数のモールクリップの中の一部のモールクリップに前記モールを挟着した前記側部窓ガラスを前記自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面に位置決め及び仮止めをするためのロケートピンが備えられている。前記モールを挟着した前記側部窓ガラスを前記自動車の側部窓ガラス装着部の前記フランジ面に取付けるときには、前記側部窓ガラスの前記モールで挟着されている箇所よりも内側の周辺部に接着剤を塗布し、前記ロケートピンを前記側部窓ガラス装着部のフランジ面の所定の位置に設けた位置決め孔に嵌合する。
【0004】
特許文献1の実施例で示されているモールでは、前記側部窓ガラスの上辺及び下辺を一体のモールで挟着している。仮に、特許文献1で記載されているモールが、前記側部窓ガラスの下辺のみを挟着するモールである場合、前記モールのモールクリップの一部にロケートピンが備えられているため、前記モールで挟着された側部窓ガラスを前記自動車の側部窓ガラス装着部の前記フランジ面に接着する際に、前記モールは前記自動車の側部窓ガラス装着部の前記フランジ面に仮止めされ、前記モールが車体から脱落することを防ぐことができる。
【0005】
また、図7に示す特許文献2に記載の側部窓ガラスの下辺に挟着するモールでは、前記モールは、前記側部窓ガラスの下辺に挟着されているだけであり、前記自動車の側部窓ガラス装着部への固定と位置決めは、前記側部窓ガラスに備えられたボルトを、前記自動車の側部窓ガラス装着部の前記フランジ面の所定の位置に設けた位置決め孔に挿入し、ナットで前記ボルトを締め付けることで行う。そのため、前記側部窓ガラスを前記自動車の側部窓ガラス装着部へ取付けた後で、前記モールの位置決めを行う必要がなく、自動車組み立て時に作業を円滑に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−80917号公報
【特許文献2】実開昭61−169716号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のモールが前記側部窓ガラスの下辺のみを挟着するモールである場合、前記モールと前記側部窓ガラスの両方にロケートピンを備えているため、前記側部窓ガラスを前記自動車の側部窓ガラス装着部に取付けた後で、前記モールの位置が所定の位置からずれている場合に、前記モールの位置決めを行わなければならず、自動車組み立て時の作業工数を増やしてしまう問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載のモールは、特許文献1に比べると、部品点数は少ないが、前記側部窓ガラスの下辺に挟着されているだけであるので、前記側部窓ガラスを前記自動車の側部窓ガラス装着部に取付けた後で、前記モールが、脱落してしまう可能性があった。
【0009】
本発明は、これらの問題点の解決を図る。すなわち、自動車の側部窓ガラスの下辺に挟着されるモールについて、少ない部品点数で構成でき、自動車組み立て時の作業工数を増やすことなく、前記自動車の側部窓ガラス装着部に前記モールを挟着された側部窓ガラスを取付けた後で、前記側部窓ガラスからの脱落を防止できるモールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自動車の側部窓ガラスの下辺を挟着する窓ガラス挟着部を有するモールであり、前記モールの自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面側に、溝を設けたモール裏側部材が備えられており、前記溝の開口面が、前記自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面と向き合っていることを特徴とするモールである。
【0011】
そして、前記モールの前記モール裏側部材の上面を、前記モールの長さ方向に延びる平坦な面として、前記平坦な面を前記側部窓ガラスと前記自動車の側部窓ガラス装着部の前記フランジ面とを接着する接着剤を接着させるためのプライマーを塗布するためのプライマー塗布面として用いてもよい。
【0012】
また、前記モールの前記窓ガラス挟着部の入口付近を前記自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面側に折り曲げて傾斜させ、窓ガラス挟着部の傾斜部を設けてもよい。
【0013】
さらにまた、前記モールの前記窓ガラス挟着部の入口に、前記窓ガラス挟着部の内側に突出している窓ガラス当接リップを設けてもよい。
【0014】
前記モールで前記側部窓ガラスの下辺を挟着し、前記側部窓ガラスの周辺部にプライマーと接着剤を塗布し、前記側部窓ガラスを前記自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面に接着したときには、前記接着剤が前記側部窓ガラスと前記自動車の側部窓ガラス装着部の前記フランジ面に挟まれて、前記溝に前記接着剤が流れ込むように取付ける。
【0015】
また、前記モールで前記側部窓ガラスの下辺を挟着し、前記側部窓ガラスにプライマーを塗布するときに、同時に前記プライマー塗布面にもプライマーを塗布するようにするとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自動車のモールは、自動車の側部窓ガラスの下辺に挟着される窓ガラス挟着部を有するモールであり、前記モールの自動車の側部窓ガラス装着部側に、前記自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面に、その開口部が向き合う溝を備えたモール裏側部材を設けた。そのため、前記側部窓ガラスを前記自動車の側部窓ガラス装着部の前記フランジ面に接着した時には、前記側部窓ガラスの下辺に挟着されたモールの上部に塗布された接着剤が、前記自動車の側部窓ガラス装着部の前記フランジ面に押付けられて、前記接着剤の一部が、前記溝に流れ込む。そして、前記溝に流れ込んだ接着剤が固まると、その固まった接着剤が、前記溝に引っ掛かり、前記モールが、前記側部窓ガラスから脱落するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1に係わるモールを側部窓ガラスの下辺に挟着したときの側部窓ガラスを裏側から見た様子を示した図。
【図2】実施例1に係わるモールを挟着した側部窓ガラスを自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面に接着させたときの、前記モール付近を示した断面図。
【図3】実施例1に係わるモールを挟着した側部窓ガラスを自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面に接着させるときの、前記モール付近を示した断面図。
【図4】実施例1に係わるモールを側部窓ガラスに挟着するときの、前記モール付近を示した断面図。
【図5】実施例2に係わるモールを側部窓ガラスの下辺に挟着したときの側部窓ガラスを裏側から見た様子を示した図。
【図6】実施例2に係わるモールを挟着した側部窓ガラスを自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面に接着させたときの、前記モール付近を示した断面図。
【図7】従来例に係わるモールを挟着した側部窓ガラスを自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面に接着させたときの、前記モール付近を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<本発明のモールの構成>
本発明のモールは、例えば図1のモール1のように側部窓ガラス2の下辺に挟着している。そして、図1のモール1付近での断面を示したものが、図2及び図3である。
【0019】
図2に示されるように、本発明のモール1は、側部窓ガラス2の下辺に挟着している。ここで、モール1を側部窓ガラス2の下辺に挟着したときに、側部窓ガラス2の、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41側をモール1の裏側と呼び、その反対側をモール1の表側と呼ぶこととする。
【0020】
本発明のモール1は、例えば、ステンレス鋼などの金属材料で構成される金属製芯材11と、金属製芯材11の一部がコの字状に折り曲げられた窓ガラス挟着部12を備えており、金属製芯材11を芯材とした複合押出成形により、モール1の裏側にモール裏側部材14を樹脂で形成し、モール1の表側に車体当接リップ13を樹脂で形成している。
【0021】
窓ガラス挟着部12を形成する際に、窓ガラス挟着部12の入口付近を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41側に折り曲げ、窓ガラス挟着部の傾斜部121としてもよい。
【0022】
モール1の裏側においては、モール裏側部材14には、接着剤入り込み溝141を設けており、接着剤入り込み溝141の開口面は、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41と向き合っている。そして、モールの長さ方向に沿って、その上面を平坦にしておき、プライマー塗布面142としてもよい。
【0023】
モール1の表側には、金属製芯材11の先端部に車体当接リップ13を設けている。そして、窓ガラス挟着部12の入口に窓ガラス挟着部12の内側に突出するように窓ガラス当接リップ15を設けてもよい。
【0024】
<本発明のモールに側部窓ガラスの下辺を挿入するとき>
図4は、本発明のモール1に側部窓ガラス2の下辺を窓ガラス挟着部12に挿入するときの様子を示したモール1と側部窓ガラス2の断面図である。このとき、窓ガラス挟着部12には、その入口に窓ガラス挟着部の傾斜部121が形成されているため、側部窓ガラス2を窓ガラス挟着部12に挿入するときに、円滑に窓ガラス挟着部12に挿入することができる。
【0025】
窓ガラス挟着部12の幅は、少なくとも一部においては、側部窓ガラス2の厚さよりも少し狭くなるように形成されている。そのため、窓ガラス挟着部12の入口の表側に窓ガラス当接リップ15を設けていない場合には、側部窓ガラス2の下辺を窓ガラス挟着部12で挟着したときに、窓ガラスの挟着部の入口は広がってしまい、側部窓ガラス2と窓ガラス挟着部12の入口の表側との間に隙間が生じてしまう。そのため、前記隙間にチリや埃が入る不具合や、前記隙間そのものが見栄えを損なってしまうという不具合を生じてしまう。
【0026】
そこで、窓ガラス当接リップ15を窓ガラス挟着部12の入口の表側に設けた場合、窓ガラス挟着部12の内側に突出して設けられているため、側部窓ガラス2を窓ガラス挟着部12に挿入したときに、窓ガラス当接リップ15が、側部窓ガラス2の表側に当接する。そのため、窓ガラス当接リップ15を設けることによって、側部窓ガラス2と窓ガラス挟着部12の入口の表側との間に生じる隙間に、前記隙間にチリや埃が入る不具合や、前記隙間の存在が側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4に取付けたときの見栄えを損なってしまうという不具合を生じないようにすることができる。
【0027】
<本発明のモールを挟着した側部窓ガラスの自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面への接着方法>
図3は、本発明のモール1を挟着した側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に接着させるときの様子を示すモール付近の断面図である。
【0028】
側部窓ガラス2を接着させるときには、予め、側部窓ガラスの周辺部にダムラバー5を両面テープ8で貼り付け、側部窓ガラス2のダムラバー5の外側の周辺部にプライマーを塗り、側部窓ガラスのプライマー塗布層72を形成し、プライマー塗布層上にウレタン接着剤を側部窓ガラス2の周辺部に沿って塗布する。側部窓ガラス2の下辺のモール1が挟着されている領域においては、側部窓ガラスのプライマー塗布層72をモール1とダムラバー5とに挟まれる領域に設けている。また、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41にも、側部窓ガラスのプライマー塗布層72に合うようにプライマーを塗布し、車体側部窓ガラス装着部のプライマー塗布層71を形成する。
【0029】
図3のようにモール裏側部材14の上面にモール1の長さ方向に平坦な面を形成している場合、それをプライマー塗布面142として利用することができ、プライマー塗布面142上にプライマーを塗布し、モールのプライマー塗布層73を形成することができる。プライマーは、はけやフェルトなどの布にしみ込ませて塗布するため、幅広にプライマーを塗布することができる。そのため、側部窓ガラスのプライマー塗布層72が、プライマー塗布面142の近くになるように設定すると、側部窓ガラス2とプライマー塗布面142に同時にプライマーを塗布することができ、自動車の組立工程において、側部窓ガラス2の自動車の側部窓ガラス装着部4への取付作業を効率よく行うことができるようになる。
【0030】
図2に示すように、プライマー塗布面142にプライマー塗布層73を形成しておくと、側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面へ接着したときに、プライマー塗布面142にもウレタン接着剤6が接着する。そのため、側部窓ガラス2とモール1とがウレタン接着剤6によって接着されることになるため、モール1が側部窓ガラス2から脱落することを防ぐことができる。
【0031】
また、図2から、側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に装着したとき、ウレタン接着剤6が、側部窓ガラス2と自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41とで挟まれるため、上下に広がり、その一部が、モール1のモール裏側部14に設けられた接着剤入り込み溝141に入り込み、接着剤入り込み溝に入り込んだ接着剤部61を形成する。接着剤入り込み溝に入り込んだ接着剤部61が固まると、モール1は、接着剤入り込み溝141で接着剤入り込み溝に入り込んだ接着剤部61に引っ掛かるため、モール1の側部窓ガラス2からの脱落を防ぐことができる。
【0032】
さらにまた、図2に示すように、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41は、奥まったところに形成されており、車体表面からフランジ面41まではゆるやかな傾斜や段差で構成される窓枠面42となっている。側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4の所定の位置に接着したとき、車体当接リップ13が、窓枠面42に当接し、モール1が、側部窓ガラス2と窓枠面42との間に挟まるので、モール1の側部窓ガラス2からの脱落をある程度抑える効果が期待できる。
【0033】
本発明のモールは、図1〜図4のように、押出成形によって窓ガラス挟着部12、接着剤入り込み溝141を備えたモール裏側部材14などを一括して成形しているが、図5、図6のように、モール本体17に、接着剤入り込み溝14を備えたモール裏側部材14を設けたモールクリップ16を複数個装着することによって、図1〜図4のモール1と同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、本発明のモールを押出成形で製作する場合には、図1〜図4のように金属芯材11をステンレス鋼などの金属で形成し、その他の構成要素を複合押出成形によって樹脂で形成することが一般的だが、本モールを全て樹脂で成形することも可能である。
【実施例】
【0035】
以下に本発明の各実施例について説明する。
【0036】
<実施例1>
[実施例1のモールの構成]
図4は、本発明の実施例1のモールに、側部窓ガラス2を挿入しようとしている様子を示した断面図である。
【0037】
図4より、本発明のモール1は、ステンレス製の金属材料で構成される金属製芯材11と、金属製芯材11の一部がコの字状に折り曲げられた窓ガラス挟着部12を備えており、さらに、窓ガラス挟着部12の入口付近を自動車の側部窓ガラス装着部4側に折り曲げ、窓ガラス挟着部の傾斜部121としている。
【0038】
そして、金属製芯材11を芯材として、複合押出成形により、車体当接リップ13と、モール裏側部材14と、窓ガラス当接リップとが樹脂で形成されている。そして、モール裏側部材14には、接着剤入り込み溝141と、プライマー塗布面142とが備えられている。
【0039】
車体当接リップ13は、モール1の表側の金属製芯材11の先端部に設けられている。また、窓ガラス当接リップ15は、モール1の表側の窓ガラス挟着部12の入口に、窓ガラス挟着部12の内側に突出するように設けられている。
【0040】
モール裏側部材14は、モール1の裏側に設けられている。モール裏側部材14に備えられている接着剤入り込み溝141の開口面は、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に向き合っている。また、モール裏側部材14に備えられているプライマー塗布面142は、モールの長さ方向に沿って、モール裏側部材14の上面を平坦にしたものである。
【0041】
[実施例1のモールを側部窓ガラスに挟着させる方法]
モール1の窓ガラス挟着部12に、側部窓ガラス2の下辺を挟着させるときには、図4のように、側部窓ガラス2の下辺を、窓ガラス挟着部の傾斜部121に当接させて、窓ガラス挟着部の傾斜部121に沿って、窓ガラス挟着部12に挿入するようにするとよい。実施例1のモール1では、窓ガラス挟着部の傾斜部121を備えているため、側部窓ガラス2を円滑に窓ガラス挟着部12に挿入することができる。
【0042】
窓ガラス挟着部12の幅は、少なくとも一部では、側部窓ガラス2の厚さよりも狭くなっている。そのため、側部窓ガラス2を窓ガラス挟着部12に挿入したときには、窓ガラス挟着部12の入口の幅が広がってしまう。実施例1のモール1においては、窓ガラス挟着部12の入口の表側に、窓ガラス当接リップ15を窓ガラス挟着部12の内側に突出するように設けているため、上記のように窓ガラス挟着部12の入口の幅が広がってしまっても、側部窓ガラス2の表面に、窓ガラス当接リップ15が当接することになる。そのため、窓ガラス当接リップ15が設けられることにより、側部窓ガラス2を窓ガラス挟着部12に挿入したことで、窓ガラス挟着部12の入口の幅が広がり、側部窓ガラスの表面と窓ガラス挟着部12との間に隙間が生じるのを防ぐことができる。
【0043】
[側部窓ガラスを自動車の側部窓ガラス装着部のフランジ面に接着する方法]
図1は、側部窓ガラス2の下辺に実施例1のモール1を挟着したときの側部窓ガラス2を裏側から見た様子を示したものである。実施例1のモール1を挟着した側部窓ガラス2は、図示していないドアと接する側部窓ガラスの側辺に側辺モール3を設けており、さらに、側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4に取付ける際に、位置決めを円滑に行うために、側部窓ガラス2の下辺部の2箇所にロケートピンを接着し、側部窓ガラス2の上辺部の一箇所にファスナー22を接着している。そして、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41には、予め側部窓ガラス2に接着した2箇所のロケートピン22に対応した位置にロケートピン22を挿入するための図示しない位置決め孔を設けてあり、さらに、側部窓ガラス2に接着されているファスナー22に対応した位置に図示しないファスナーを接着させている。
【0044】
図3は、実施例1のモール1を挟着した側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に接着しようとしている様子を示したモール1付近の断面図である。側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に接着する際には、まず側部窓ガラス2の裏面にダムラバー5を側部窓ガラス2の周辺に沿って、側部窓ガラス2を一周させて、両面テープ8で貼り付ける。また、側部窓ガラス2の裏面のダムラバー5よりも外側の周辺に沿って、プライマーを塗布し、側部窓ガラスのプライマー塗布層72を形成する。
【0045】
モール1を挟着している側部ガラス2の下辺においては、側部窓ガラス2の裏面には、ダムラバー5とモール裏側部材14との間に挟まれた領域にはけやフェルト布を用いてプライマーを塗布して、側部窓ガラスのプライマー塗布層72とする。また、モール裏側部材14の上面に設けているプライマー塗布面142にもプライマーを塗布する。
【0046】
図3のように側部窓ガラス2の裏面の下辺のプライマー塗布層72の位置を、モール裏側部材14に設けたプライマー塗布面142の近くにしておくと、はけやフェルト布を用いて側部窓ガラスの下辺の裏側の面にプライマーを塗布する際に、同時にはけやフェルト布がプライマー塗布面142にも接触するように塗布することができ、作業効率を上げることができる。
【0047】
また、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41にも、側部窓ガラスのプライマー塗布層72に対応した位置に、プライマーを塗布して、自動車の側部窓ガラス装着部のプライマー塗布層71を形成しておく。
【0048】
そして、図3のように側部窓ガラスのプライマー塗布層72上にウレタン接着剤6を側部窓ガラス2の周辺部を一周するように塗布する。
【0049】
そして側部窓ガラス2に接着されているロケートピン21及びファスナー22がそれぞれ、側部窓ガラス2に接着したロケータピン21及びファスナー22の位置に合うように自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に設けたロケートピンを挿入するための位置決め孔及びファスナーに合うように位置決めし、側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に押付けて、接着させる。
【0050】
図2は、側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラスの装着部4のフランジ面41に接着させたときのモール1付近の様子を示した断面図である。図2においては、ウレタン接着剤6が、側部窓ガラス2によって、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に押されて広がり、その一部が、モール裏側部材14に備えられた接着剤入り込み溝141に入り込み、接着剤入り込み溝に入り込んだ接着剤部61を形成している。また、モール裏側部材14のプライマー塗布面142にも、ウレタン接着剤6が接着している。
【0051】
ウレタン接着剤6が固まると、モール1は、接着剤入り込み溝141で接着剤入り込み溝に入り込んだ接着剤部61に引っ掛かることになるため、モール1の側部窓ガラス2からの脱落を防ぐことができる。
【0052】
また、プライマー塗布面142にウレタン接着剤6が接着されているため、モール1と側部窓ガラス2とがウレタン接着剤6によって接着されることとなり、モール1が側部窓ガラス2から脱落しないようにすることができる。
【0053】
さらにまた、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41は、奥まったところに形成されており、車体表面からフランジ面41までは窓枠面42としてゆるやかな傾斜となっている。側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41の所定の位置に接着したとき、車体当接リップ13が、窓枠面42に当接し、モール1が、側部窓ガラス2と窓枠面42との間に挟まるので、モール1の側部窓ガラス2からの脱落をある程度抑える効果が期待できる。
【0054】
<実施例2>
図5は、側部窓ガラス2の下辺に実施例2のモール1を挟着したときの側部窓ガラス2を裏側から見たときの様子を示した図である。
【0055】
実施例2のモール1は、ステンレス製のモール本体17に、複数のモールクリップ16をモール本体17から抜けないように装着した構成となっている。
【0056】
図6は、実施例2のモール1を装着した側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4に接着したときの様子を示す、モール1のモールクリップ16が装着されている箇所の断面図である。
【0057】
実施例2のモール1は、車体当接リップ13を設けたステンレス製のモール本体1を備えており、複数のモールクリップ16が装着されている。モールクリップ16には、モール裏側部材14が設けられている。モール裏側部材14には、接着剤入り込み溝141が備えられており、接着剤入り込み溝141の開口面は、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に向き合っている。
【0058】
モール1の窓ガラス挟着部12は、モール本体17の先端部に設けた樹脂製のシール部18と、モール裏側部材14とで挟まれる領域となる。モール裏側部材14の側部窓ガラス2と対向する面には図示しないバネなどの弾性手段が取付けられているため、モール1は、前記弾性手段によって、シール部18に押付けられるため、側部窓ガラス2の下辺にしっかりと挟着される。
【0059】
実施例2のモール1を挟着した側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に接着する方法は、実施例1に示した接着方法と同様である。
【0060】
図6に示すように、側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に接着させる際には、側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に押付けることとなるため、ウレタン接着剤6が、側部窓ガラス2によって、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41に押されて広がり、その一部が、接着剤入り込み溝141に入り込み、接着剤入り込み溝に入り込んだ接着剤部61が形成されることになる。
【0061】
ウレタン接着剤6が固まると、モール1は、接着剤入り込み溝141で接着剤入り込み溝に入り込んだ接着剤部61に引っ掛かることになるため、モール1の側部窓ガラス2からの脱落を防ぐことができる。
【0062】
さらに、自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41は、奥まったところに形成されており、車体表面からフランジ面41までは窓枠面42として段差が形成されている。側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラス装着部4のフランジ面41の所定の位置に接着したとき、車体当接リップ13が、窓枠面42に当接し、モール1が、側部窓ガラス2と窓枠面42との間に挟まるので、モール1の側部窓ガラス2からの脱落をある程度抑える効果が期待できる。
【0063】
実施例2のモール1は、モール1に複数装着されたモールクリップ16に設けられたモール裏側部材14に接着剤入り込み溝141を備えることになる。そのため、実施例1のようにモール1の長さ方向の全体に接着剤入り込み溝141を設けている場合に比べて、実施例2のモール1では、モール1を接着剤入り込み溝141で引っ掛ける力が弱くなる。しかしながら、実施例2のような構成であっても実用上問題なく用いることが可能である。
【0064】
以上好適な実施の形態について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられるものである。
【0065】
<従来例>
図7は、特許文献2に示されている従来例のモール9が挟着された側部窓ガラス2を自動車の側部窓ガラスの装着部4のフランジ面41に接着させたときの従来例のモール9付近の様子を示した断面図である。
【0066】
従来例のモール9は、側部窓ガラス2の下辺を従来例のモール9の表側に設けられたと突成形部91と、従来例のモール9の裏側に設けられた挟持片92とで挟着されているのみであり、本発明のモール1で示されるような接着剤入り込み溝141を備えたモール裏側部材14は備えていない。
【符号の説明】
【0067】
1 モール
11 金属製芯材
12 窓ガラス挟着部
121 窓ガラス挟着部の傾斜部
13 車体当接リップ
14 モール裏側部材
141 接着剤入り込み溝
142 プライマー塗布面
15 窓ガラス当接リップ
16 モールクリップ
17 モール本体
2 側部窓ガラス
21 ロケートピン
22 ファスナー
3 側辺モール
4 自動車の側部窓ガラス装着部
41 フランジ面
42 窓枠面
5 ダムラバー
6 ウレタン接着剤
61 接着剤入り込み溝に流れ込んだ接着剤
71 自動車の側部窓ガラス装着部のプライマー塗布層
72 側部窓ガラスのプライマー塗布層
73 モールのプライマー塗布層
8 両面テープ
9 従来例のモール
91 突成形部
92 挟持片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の側部窓ガラス(2)の下辺を挟着する窓ガラス挟着部(12)を有するモール(1)において、
前記モール(1)の自動車の側部窓ガラス装着部(4)のフランジ面(41)側に、溝(141)を設けたモール裏側部材(14)が備えられており、前記溝(141)の開口面が、前記自動車の側部窓ガラス装着部(4)のフランジ面(41)と向き合っていることを特徴とするモール。
【請求項2】
前記モール(1)の前記モール裏側部材(14)の上面を、前記モールの長さ方向に延びる平坦な面(142)として、前記平坦な面(142)を前記側部窓ガラス(2)と前記自動車の側部窓ガラス装着部(4)の前記フランジ面(41)とを接着する接着剤(6)を接着させるためのプライマーを塗布するためのプライマー塗布面(142)として用いることを特徴とする請求項1に記載のモール。
【請求項3】
前記モール(1)の前記窓ガラス挟着部(12)の入口付近を前記自動車の側部窓ガラス(2)の前記フランジ面(41)側に折り曲げて傾斜させ、窓ガラス挟着部の傾斜部(121)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のモール。
【請求項4】
前記モール(1)の前記窓ガラス挟着部(12)の入口に、前記窓ガラス挟着部(12)の内側に突出している窓ガラス当接リップ(15)を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のモール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載のモール(1)で前記側部窓ガラス(2)の下辺を挟着し、前記側部窓ガラス(2)の周辺部にプライマーと接着剤を塗布し、前記側部窓ガラス(2)を前記自動車の側部窓ガラス装着部(4)のフランジ面(41)に接着したときに、前記接着剤が前記側部窓ガラス(2)と前記自動車の側部窓ガラス装着部(4)の前記フランジ面(41)に挟まれて、前記溝(141)に前記接着剤が流れ込むことを特徴とする側部窓ガラスの取付方法。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれかに記載のモール(1)で前記側部窓ガラス(2)の下辺を挟着し、前記側部窓ガラス(2)にプライマーを塗布するときに、同時に前記プライマー塗布面(142)にもプライマーを塗布することを特徴とする側部窓ガラスの取付方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−32106(P2013−32106A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169295(P2011−169295)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)