説明

自動車エアコンシステム及び自動車エアコンシステムの運転方法

【課題】メインバッテリの他にサブバッテリが搭載されている場合であっても、走行に影響を与えることなく効率良く車内空調ができるようにする。
【解決手段】 運転手の乗車前にエアコン23の事前運転を要求するための指令を送信するリモコン11Aと、リモコン11Aから事前運転指令を受信すると、利用形態に基づき走行に必要な標準ルート消費量を演算すると共に、車載バッテリ17の残量を検出して、標準ルート消費量と車載バッテリ17の残量とに基づき事前運転が可能であると判断した場合に、車載バッテリ17で事前運転させる制御部21と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車エアコンシステム及び自動車エアコンシステムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗車前に車内温度を快適な温度に設定するために、事前にエアコンを運転させておくことが望まれる。しかし、電気自動車の場合は、走行にバッテリ電力を用いるので、エアコンの運転によりバッテリを消費してしまうと走行に支障が生じる。そこで、停止時においては、バッテリが商用電源により充電しているときだけエアコンの運転が行えるようになっている。
【0003】
そこで、商用電源によりバッテリを充電していないときでも、走行に支障が起きない範囲でエアコンの事前運転を行いたいと言った要求があった。
【0004】
このような観点から、特開平8−268036号公報には、停車時に送信機からエアコンを事前運転させる電気自動車用冷暖房装置が提案されている。そして、バッテリが充電中でないときは、バッテリの残量が予め設定された電力量より多い場合には事前冷暖房運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−268036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献にかかる電気自動車用冷暖房装置では、バッテリの残量が予め設定された電力量以上の時に事前運転が行えるようにしている。しかし、予め設定する電力についての開示が無いため、例えば通勤先が変更された場合のように利用形態が変化したときには、予め設定された電力量の値が不適切な値になる問題があった。このような場合には、事前運転によるバッテリの残量の低下により、走行に支障をきたす場合が生じる。
【0007】
そこで、本発明の主目的は、利用形態に応じてエアコンシステムの事前運転が行える自動車エアコンシステム及び自動車エアコンシステムの運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる自動車の車内空調を行う自動車エアコンシステムは、運転手の乗車前にエアコンの事前運転を要求するための指令を送信するリモコンと、リモコンから事前運転指令を受信すると、利用形態に基づき走行に必要な標準ルート消費量を演算すると共に、車載バッテリの残量を検出して、標準ルート消費量と車載バッテリの残量とに基づき事前運転が可能であると判断した場合に、車載バッテリで事前運転させる制御部と、を備える。
【0009】
また、自動車の車内空調を行う自動車エアコンシステムの運転方法は、運転手の乗車前にエアコンの事前運転を要求するための指令を送信する手順と、事前運転指令を受信すると、利用形態に基づき走行に必要な標準ルート消費量を演算する手順と、車載バッテリの残量を検出する手順と、標準ルート消費量と車載バッテリの残量とに基づき事前運転が可能であると判断した際に、車載バッテリで事前運転させる手順と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、利用形態に応じてエアコンシステムの事前運転が行えるようにしたので、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる自動車エアコンシステムのブロック図である。
【図2】第1の実施形態にかかる自動車エアコンシステムにおける充電中事前運転処理を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態にかかる自動車エアコンシステムにおけるサブバッテリ事前運転処理を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態にかかる自動車エアコンシステムにおけるメインバッテリ事前運転処理を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態にかかる自動車エアコンシステムにおける標準ルート消費量の演算方法を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる自動車エアコンシステムのブロック図である。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかる自動車エアコンシステムのブロック図である。
【図8】第3の実施形態にかかる自動車エアコンシステムにおけるメインバッテリ事前運転処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態にかかる自動車エアコンシステムのブロック図である。なお、以下の説明においては自動車として電気自動車(ハイブリッドカーを含む)を例に説明するが、ガソリン車であってもよい。
【0013】
エアコンシステム2Aは、車外等の遠隔地から操作することができるリモコン11A、車内にはリモコン11Aからの事前運転要求コマンドを受信する車内アンテナ12A、車内温度検出回路14、車載バッテリ17、エアコン23、制御部21、カーナビゲーションシステム22を備える。そして、運転手が携帯するリモコン11Aを操作することにより、乗車前に車内を快適な温度環境に設定する。
【0014】
車載バッテリ17は、メインバッテリ17aとサブバッテリ17bを含み、充電プラグ20を介して商用電源19から充電が行えるようになっている。走行時における電力供給は、主にメインバッテリ17aが行い、サブバッテリ17bは、メインバッテリ17aの補助バッテリとして機能するものとする。しかし、本発明は、車載バッテリ17をメインバッテリ17aとサブバッテリ17bとから構成されている場合に限定するものではない。即ち、メインバッテリ17aのみの場合でも適用可能である。
【0015】
また、制御部21は、メイン制御部13A、バッテリ制御部15、エアコン制御部16を含んでいる。なお、カーナビゲーションシステム22は、必須の構成要素はない。即ち、カーナビゲーションシステム22を搭載していない自動車に対しても、本発明は適用可能である。
【0016】
図2、図3、図4は、このようなエアコンシステム2Aにおける事前運転手順を示すフローチャートである。事前運転は、商用電源で充電中に行われる充電中事前運転処理(図2の処理)、サブバッテリからの電力で行われるサブバッテリ事前運転処理(図3の処理)、メインバッテリからの電力で行われるメインバッテリ事前運転処理(図4の処理)、に分けられる。
<充電中事前運転処理
ステップSA1: エアコンシステム2Aが起動されると、図2に示す充電中事前運転処理が開始されて、メイン制御部13Aは、リモコン11Aからの事前運転コマンドの受信待ちとなる。
【0017】
ステップSA2: そして、メイン制御部13Aは、事前運転コマンドを受信すると、現在、商用電源19により充電を行っているか否かの判断を行う。商用電源19による充電が行われている場合はステップSA3に進み、商用電源19による充電が行われていない場合は図3に示すサブバッテリ事前運転処理に移る。
【0018】
ステップSA3: 商用電源19による充電が行われている場合は、メイン制御部13Aは、エアコン制御部16に事前運転を指示する。これにより事前運転が開始される。このとき、エアコン23の動作条件(風量や温度等の設定値)は、車内温度検出回路14が検出した車内温度に基づき設定される。設定温度は、例えば夏場であれば19℃、冬場であれば22℃のように設定されているとする。この値は例示であり、また運転手により任意の温度に設定できるようにしても良い。また、前回エアコンを運転した際の設定温度としても良い。運転時間は、例えば自宅の玄関から乗車するまでの徒歩時間の平均時間としてもよい。そして、運転時間内に、設定温度になるように風量等の他の運転条件を設定して運転する。無論、エアコン23の運転条件を予め設定しておくことも可能である。例えば、エアコン23を最高の風量で、かつ、運転可能な最低温度で運転するような設定条件が例示できる。
【0019】
ステップSA4: そして、運転手の乗車を待つ。従って、運転手がリモコン11Aを操作してから乗車するまでエアコン23が動作しているので、運転手は快適な車内環境の状態で乗車することが可能になる。
【0020】
ステップSA5: 運転手の乗車が確認されると、メイン制御部13Aは、エアコン23を停止させる。引き続きエアコン23を運転したい場合は、運転手は、本来のエアコン23の運転手順に従いエアコン23を運転することになる。なお、運転手の乗車は、例えばエンジンキーが装着されたことやエンジン(モータ)が始動したことを検出することにより判断できる。
<サブバッテリ事前運転処理
次に、サブバッテリ事前運転処理を、図3を参照して説明する。
【0021】
ステップSB1: メイン制御部13Aは、バッテリ制御部15にメインバッテリ17a及びサブバッテリ17bの残量を検出させる。メインバッテリ17aの残量を残量Em_a、サブバッテリ17bの残量を残量Es_a、と記載する。従って、搭載バッテリ17の残量Etot_aは、Etot_a=Em_a+Es_aとなる。
【0022】
ステップSB2: 次に、消費量の演算を行う。なお、この消費量には、標準ルートを走行するのに必要な電力(以下、標準ルート消費量)と、事前運転に必要な電力(以下、事前運転消費量という)がある。
【0023】
標準ルート消費量は、通勤ルート等の標準ルートを走行するために必要と見込まれる消費電力で、標準ルート距離、アクセル操作パターン等に基づき演算する。標準ルート消費量を標準ルート消費量Erootとする。図5は、アクセル操作パターンを例示した図で、横軸が走行時間、縦軸がアクセル量を示している。アクセル量は、走行速度に対応し、また単位時間当たりの電力消費量に相当する。従って、斜線領域の面積S1,S2の和が、標準ルート消費量に対応している。無論、通勤ルートのように、走行が決まった時間に、決まったコースを走行する場合のバッテリの消費量は、略決まった値となるので、通勤ルート走行時における消費電力を記憶して、その平均値又は最大量を標準ルート消費量としてもよい。
【0024】
また、目的地がカーナビゲーションシステム22に登録されているような場合は、目的地までの往復距離と平均速度とから標準ルート消費量を演算してもよい。この場合、一般道と高速道路とのどちらを利用するかについての情報は、カーナビゲーションシステム22が案内するルートにより判断する。
【0025】
事前運転消費量は、事前運転を行うために必要とされる電力であり、現在の車内温度、設定温度、運転時間から算出する。この事前運転消費量を事前運転消費量Epreとする。現在の車内温度は、車内温度検出回路14から知ることができる。設定温度は、例えば夏場であれば19℃、冬場であれば22℃のように設定されているとする。この値は例示であり、また運転手により任意の温度に設定できるようにしても良い。また、前回エアコンを運転した際の設定温度としても良い。運転時間は、例えば自宅の玄関から乗車するまでの徒歩時間の平均時間としてもよい。そして、運転時間内に、設定温度になるように風量等の他の運転条件を設定して、設定された運転条件のもとで必要となる電力を演算する。無論、エアコン23の運転条件を予め設定しておくことも可能である。例えば、エアコン23を最高の風量で、かつ、運転可能な最低温度で運転するような設定条件が例示できる。
【0026】
ステップSB3: 搭載バッテリ17の残量Etot_aが検出されると、メイン制御部13Aは、残量Etot_aが走行に支障を与えない量か否かの判断を行う。即ち、Etot_a>Erootのとき、走行可能と判断する。走行に必要な電力は、搭載バッテリ17から供給されるので、電気自動車等においては、搭載バッテリ17の残量を管理するバッテリ管理機能を備えている。しかし、事前運転時においては、自動車のバッテリ管理機能は起動していない状態の場合がある。このような状態で、エアコン23を事前運転させてしまうと、自動車が走行できなくなる不都合が生じる。そこで、車載バッテリ17の残量Etot_aが、少なくとも標準ルート消費量Erootより少ない場合は(Etot_a≦Eroot)、残量がないとしてステップSB4に進む。一方、残量が標準ルート消費量より多い場合は(Etot_a>Eroot)、ステップSB6に進む。
【0027】
ステップSB4: メイン制御部13Aは、車載バッテリに17に対する充電要求を知らせるアラームを発報する。アラームは、音や光で知らせることが可能である。そして、エアコン23が運転中であれば停止して(ステップSB5)、事前運転を終了する。
【0028】
ステップSB6: 車載バッテリ17の残量Etot_aが標準ルート消費量Erootより多い場合は、メイン制御部13Aは、エアコン制御部16にサブバッテリ17bを電源としてエアコン23の事前運転を開始させる。
【0029】
ステップSC6: メイン制御部13Aは、運転手が乗車したか否かを判断する。乗車した場合には、ステップSB5に進み、未だ乗車していない場合にはステップSB8に進む。
【0030】
ステップSB8: ステップSB6において、サブバッテリ17bによりエアコン23は事前運転している。従って、サブバッテリ17bの残量が変化する。そこで、メイン制御部13Aは、バッテリ制御部15にサブバッテリ17bの残量チェックを行わせる。このときのサブバッテリ17bの残量をEs_bとする。
【0031】
ステップSB9: そして、メイン制御部13Aは、検出したサブバッテリ17bの残量Es_bとメインバッテリ17aの残量Em_aとの和Etot_b(=Em_a+Es_b)が、標準ルート消費量Erootより多いか否かを判断する。車載バッテリ17の残量Etot_bが標準ルート消費量Erootより多い場合は(Etot_b>Eroot)、ステップSB10に進み、少ない場合は(Etot_b≦Eroot)、ステップSB5に進む。
【0032】
ステップSB10: 車載バッテリ17の残量Etot_bが標準ルート消費量Erootより多い場合は(Etot_b>Eroot)、メイン制御部13Aは、消費されたサブバッテリ17bのバッテリ消費量Ec_a(=Es_a−Es_b)を演算する。
【0033】
ステップSB11: そして、メイン制御部13Aは、バッテリ消費量Ec_aが事前運転消費量Epreより多いか否かを判断する。この判断は、運転手の乗車が遅れた場合に、際限なく事前運転を行うことを防止するために行う。なお、ここでは、運転手の乗車の遅れをバッテリ消費量により判断するが、時間管理によって行うことも可能である。即ち、運転手の乗車時間(事前運転を行う時間)を予め設定し、この時間に達すると、運転手の乗車の有無にかかわらず事前運転を停止するようにしても良い。
【0034】
サブバッテリ17bのバッテリ消費量Ec_aが、事前運転消費量Epreより多い場合は(Ec_a≧Epre)、ステップSB5に進み、事前運転を停止する。一方、サブバッテリ17bのバッテリ消費量Ec_aが、事前運転消費量Epreより少ない場合は(Ec_a<Epre)、ステップSB12に進む。
【0035】
ステップSB12: サブバッテリ17bの残量Es_bが所定量D_aより多いか否かを判断する。この所定量D_aは、「ゼロ」でも良いが、緊急時に備えて予め設定された量とすることも可能である。そして、サブバッテリ17bの残量Es_bが所定量D_aより多い場合は(Es_b>D_a)、ステップSC6に戻り事前運転を継続する。一方、サブバッテリ17bの残量Es_bが所定量D_aより少ない場合は(Es_b≦D_a)、ステップSB13に進む。
【0036】
ステップSB13: サブバッテリ17bの残量が不十分であるので、メイン制御部13Aは、サブバッテリ17bに対する充電要求を知らせるアラームを発報する。
<メインバッテリ事前運転処理
以上によりサブバッテリを電源とする事前運転処理が終了する。次に、メインバッテリ事前運転処理を、図4を参照して説明する。
【0037】
ステップSC1: メイン制御部13Aは、エアコン制御部16にメインバッテリ17aにより事前運転を行わせる。
【0038】
ステップSC2: メイン制御部13Aは、運転手が乗車したか否かを判断する。乗車した場合には、ステップSC6に進み事前運転を停止し、未だ乗車していない場合にはステップSC3に進む。
【0039】
ステップSC3: メイン制御部13Aは、メインバッテリ17aの残量Em_bをバッテリ制御部15に検出させる。
【0040】
ステップSC4: メインバッテリ17aの残量Em_bが標準ルート消費量Erootより多いか否かを判断する。この段階では、サブバッテリ17bに残量が無い状態であるので、メインバッテリ17aの残量Em_bが標準ルート消費量Erootより多い必要がある。メインバッテリ17aの残量Em_bが標準ルート消費量Erootより多い場合は(Em_b>Eroot)、ステップSC9に進み事前運転を継続するが、メインバッテリ17aの残量Em_bが標準ルート消費量Erootより少ない場合は(Em_b≦Eroot)は、これ以上事前運転するための電力が無いので、ステップSC5に進む。
【0041】
ステップSC5: メインバッテリ17aの残量が不十分であるので、メイン制御部13Aは、メインバッテリ17aに対する充電要求を知らせるアラームを発報して、ステップSC6に進み事前運転を停止する。
【0042】
ステップSC9: 次に、メイン制御部13Aは、バッテリ消費量Ec_b(=Es_a+Em_a−Em_b)を演算する。
【0043】
ステップSC10: そして、メイン制御部13Aは、バッテリ消費量Ec_bが事前運転消費量Epreより多いか否かを判断する。この判断は、運転手の乗車が遅れた場合に、際限なく事前運転を行うことを防止するために行う。この場合も、時間管理により、運転手の乗車が遅れた場合に、事前運転を停止するようにしても良い。
【0044】
そして、バッテリ消費量Ec_bが、事前運転消費量Epreより多い場合は(Ec_b≧Epre)、ステップSC6に進み、事前運転を停止する。一方、バッテリ消費量Ec_bが、事前運転消費量Epreより少ない場合は(Ec_b<Epre)、ステップSC2に戻り事前運転を継続する。
【0045】
以上説明したように、運転手が携帯するリモコンから自動車のエアコンシステムを事前運転させるので、運転手が乗車する際には、車内を快適な温度環境にすることが可能になる。
【0046】
特に、これまでの自動車のエアコンシステムは、バッテリの消費を抑えるために、停車時(非運転時)においては商用電源から充電を行っている場合にのみ事前運転が可能であったが、標準ルート消費量を算出し、メインバッテリやサブバッテリの残量との比較により事前運転が可能か否かを判断するので、充電中でなくても走行に支障が生じない範囲で、エアコンシステムを事前運転することが可能になる。
【0047】
また、タイマにより毎日、設定した時刻にエアコンを事前運転することも可能である。これにより、毎日リモコンを操作しなくても、快適な車内環境が整った状態で乗車することが可能になる。このとき、メイン制御部は車内温度を検知し、乗車予定時刻までの車内温度を計算した上で、エアコンの事前運転時間又は事前運転消費量が最小になるように制御できるようにしてもよい。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態を説明する。図6は、本実施形態にかかる、自動車用エアコン遠隔操作装置を備えたエアコンシステム2Bのブロック図である。なお、第1の実施の形態と同一構成に関しては、同一符号を用いて説明を適宜省略する。
【0048】
第1の実施形態にかかるエアコンシステムでは、リモコンから車内アンテナに事前運転コマンドを送信(片方向通信)するのみであった。これに対して本実施形態では、車内アンテナを介して車内温度を知ることができるようにした。
【0049】
本実施形態にかかるエアコンシステム2Bは、遠隔地から車内に通信するリモコン11Bと、車内にはリモコン11Bと通信するための車内アンテナ12B、メイン制御部(Electronic Control Unit)13B、車内温度検出回路14、バッテリ制御部15、エアコン制御部16、メインバッテリ17a、サブバッテリ17b、商用電源19、商用電源19からの充電を行うための充電プラグ20、エアコン23、カーナビゲーションシステム22から構成される。
【0050】
第2の実施形態にかかるエアコンシステム2Bと第1の実施形態にかかるエアコンシステム2Aとは、リモコン、車内アンテナ、メイン制御部が異なると共にエアコンを複数台備えている点が異なっている。即ち、リモコン11Bは、車内アンテナ12Bに事前運転コマンドを送信すると共に、この車内アンテナ12Bから送信された車内温度情報を受信する機能を有する。この車内温度情報は、車内温度検出回路14により検出された車内温度に関する情報で、メイン制御部が車内アンテナ12Bを介して送信する。
【0051】
これにより、運転者は現在の車内温度を適宜知ることができるようになり、事前運転の必要性が把握できると共に、温度環境を事前に知った上で乗車することが可能となる。
【0052】
また、車内温度が所定温度に達したときに、メイン制御部13Bは、そのことを示す内容の車内温度情報をアラームとして発報することで、運転者は、エアコンシステム2Bの事前運転の必要性が判断できるようになる。
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態を説明する。図7は、本実施形態にかかる、自動車用エアコン遠隔操作装置を備えたエアコンシステム2Cのブロック図である。なお、第1の実施の形態と同一構成に関しては、同一符号を用いて説明を適宜省略する。
【0053】
これまでの実施形態にかかるエアコンシステムにおいては、事前運転の運転条件は、メインバッテリやサブバッテリの残量にかかわらず一定であった。これに対して、本実施形態ではメインバッテリやサブバッテリの残量に応じて事前運転の運転条件を変更するようにした。
【0054】
本実施形態にかかるエアコンシステム2Cは、遠隔地から車内への操作を行えるリモコン11Aと、車内にはリモコン11Aからのコマンドを受信する車内アンテナ12A、メイン制御部(Electronic Control Unit)13A、車内温度検出回路14、バッテリ制御部15、エアコン制御部16、メインバッテリ17a、サブバッテリ17b、商用電源19、商用電源19からの充電を行うための充電プラグ20、第1エアコン23a、第2エアコン23b、カーナビゲーションシステム22から構成される。このような複数台のエアコンは、例えば運転席側の配置されたエアコン(これを第1エアコン23aとする)と、後部シート側に配置されたエアコン(これを第2エアコン23bとする)が例示できる。
【0055】
図8はかかるエアコンシステム2Cの動作を示すフローチャートである。なお、図8はメインバッテリ事前運転処理のフローチャートを示している。充電中事前運転処理やサブバッテリ事前運転処理に付いては、第1の実施形態と同じであるので、説明を省略する。また、図8におけるステップSC1〜SC6,SC9,SC10は、図4と同じなので、説明を省略する。従って、本実施形態における特異な処理は、ステップSC7及びステップSC8である。但し、ステップSA3,SB6,SC1における事前運転は、第1エアコン23a及び第2エアコン23bの事前運転である。
【0056】
ステップSC7: メイン制御部13Aは、メインバッテリ17aの残量Em_bが運転条件変更基準量D_bより多いか否かを判断する。なお、運転条件変更基準量D_bは、予め設定されているとする。例えば、運転条件変更基準量D_bを、事前運転消費量Epreの1/4のように設定できる。
【0057】
このステップでは、メインバッテリ17aの残量Em_bは標準ルート消費量Erootより多い状態である(Em_b>Eroot)。しかし、事前運転が完了した際に、直ぐに運転手が乗車するとは限らない。このような場合には、事前運転が完了してから運転手が乗車するまでの間に、車内温度等が変化する場合がある。例えば、真夏で日差しが強い場所に駐車しているような場合である。このような場合には、事前運転の完了間際になると、略車内温度は所望する温度に達していると考えられるので、運転条件を変更して、運転手が乗車すると予想される時間まで事前運転を継続することが好ましい。
【0058】
特に、メインバッテリの残量が少なく(Em_b≒Eroot)、現状の事前運転条件では、事前運転が完了できないような場合、可能な限り、事前運転を継続して、運転手が乗車する前に事前運転を停止しないようにすることが好ましい。
【0059】
ステップSC8: そこで、メインバッテリ17aの残量が所定量D_a以下になった場合は(Em_b≦D_b)、現在事前運転されているエアコン(第2エアコン23b)を停止する。
【0060】
なお、上述した説明では、複数台のエアコンにおける動停止を個別に行うことにより事前運転条件の変更を行ったが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、搭載バッテリの残量に応じて設定温度や風量を変更することも可能である。
【0061】
これにより、搭載バッテリの残量に応じた事前運転条件の設定変更ができて、運転手が乗車した際に快適な車内環境を達成することが可能になる。
【0062】
以上説明した本発明の特徴を以下に纏める。
<付記1>
自動車の車内空調を行う自動車エアコンシステムであって、
運転手の乗車前にエアコンの事前運転を要求するための指令を送信するリモコンと、
前記リモコンから事前運転指令を受信すると、利用形態に基づき走行に必要な標準ルート消費量を演算すると共に、車載バッテリの残量を検出して、前記標準ルート消費量と前記車載バッテリの残量とに基づき前記事前運転が可能であると判断した場合に、前記車載バッテリで前記事前運転させる制御部と、を備えることを特徴とする自動車エアコンシステム。
<付記2>
付記1に記載の自動車エアコンシステムであって、
前記制御部は前記リモコンに車内温度を通知することを特徴とする自動車エアコンシステム。
<付記3>
付記1又は2に記載の自動車エアコンシステムであって、
前記車載バッテリが、走行時における電力供給を主に行うメインバッテリと、該メインバッテリの補助をなすサブバッテリとを含み、
前記制御部が、前記事前運転を行う際には、前記メインバッテリより前記サブバッテリからの電力供給を優先することを特徴とする自動車エアコンシステム。
<付記4>
付記1乃至3のいずれか1項に記載の自動車エアコンシステムであって、
前記制御部は、商用電源による前記搭載バッテリの充電が行われていない場合に、前記搭載バッテリにより前記事前運転を行うことを特徴とする自動車エアコンシステム。
<付記5>
付記1乃至4のいずれか1項に記載の自動車エアコンシステムであって、
前記制御部が、前記搭載バッテリの残量に応じて、前記事前運転の運転条件を変更することを特徴とする自動車エアコンシステム。
<付記6>
付記5に記載の自動車エアコンシステムであって、
前記事前運転の運転条件変更は、複数のエアコンが搭載されている場合、前記車載バッテリの残量に応じて前記事前運転する前記エアコンの運転台数を制御する変更であることを特徴とする自動車エアコンシステム。
<付記7>
付記5に記載の自動車エアコンシステムであって、
前記事前運転の運転条件変更は、前記車載バッテリの残量に応じて前記事前運転する前記エアコンの設定温度を調整する変更であることを特徴とする自動車エアコンシステム。
<付記8>
自動車の車内空調を行う自動車エアコンシステムの運転方法であって、
運転手の乗車前にエアコンの事前運転を要求するための指令を送信する手順と、
前記事前運転指令を受信すると、利用形態に基づき走行に必要な標準ルート消費量を演算する手順と、
車載バッテリの残量を検出する手順と、
前記標準ルート消費量と前記車載バッテリの残量とに基づき前記事前運転が可能であると判断した際に、前記車載バッテリで前記事前運転させる手順と、を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
<付記9>
付記8に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
前記車内温度を通知する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
<付記10>
付記8又は9に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
走行時における電力供給を主に行うメインバッテリと、該メインバッテリの補助をなすサブバッテリとを含む前記車載バッテリにより前記事前運転を行う際に、前記メインバッテリより前記サブバッテリからの電力供給を優先して電力供給を行う手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
<付記11>
付記8乃至10のいずれか1項に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
商用電源による前記搭載バッテリの充電が行われていない場合に、前記搭載バッテリにより前記事前運転を行う手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
<付記12>
付記8乃至11のいずれか1項に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
前記搭載バッテリの残量に応じて、前記事前運転の運転条件を変更する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
<付記13>
付記12に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
複数のエアコンが搭載されている場合、前記車載バッテリの残量に応じて前記事前運転する前記エアコンの運転台数を制御する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
<付記14>
付記12に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
前記車載バッテリの残量に応じて前記事前運転する前記エアコンの設定温度を調整する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
<付記9>
付記8に記載の自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法であって、
前記制御部が、前記事前運転を行う際には、前記車載バッテリに含まれる走行時における電力供給を行うメインバッテリより該メインバッテリの補助をなすサブバッテリからの電力供給を優先させる手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法。
<付記10>
付記9に記載の自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法であって、
前記サブバッテリの残量が十分でなく、前記メインバッテリの残量が十分な場合には、前記メインバッテリにより電力供給を行って前記事前運転させ手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法。
<付記11>
付記8乃至10のいずれか1項に記載の自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法であって、
前記制御部は、予め設定された条件の元で走行した際に消費される電力と前記事前運転に必要な電力との和が、前記車載バッテリに残っている場合に、前記事前運転が可能と判断する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法。
<付記12>
付記8乃至11のいずれか1項に記載の自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法であって、
車内温度を前記リモコンに通知する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法。
<付記13>
付記8乃至12のいずれか1項に記載の自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法であって、
複数のエアコンが搭載されている場合に、前記車載バッテリの残量に応じて前記事前運転する前記エアコンの運転台数を制御する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法。
<付記14>
付記8乃至13のいずれか1項に記載の自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法であって、
前記車載バッテリの残量に応じて前記事前運転する前記エアコンの設定温度を調整する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法の運転方法。
【符号の説明】
【0063】
2A〜2C エアコンシステム
11A,11B リモコン
12A,12A 車内アンテナ
13A,13B メイン制御部
14 車内温度検出回路
15 バッテリ制御部
16 エアコン制御部
17 車載バッテリ
17a メインバッテリ
17b サブバッテリ
19 商用電源
21 制御部
23 エアコン
23a 第1エアコン
23b 第2エアコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車内空調を行う自動車エアコンシステムであって、
運転手の乗車前にエアコンの事前運転を要求するための指令を送信するリモコンと、
前記リモコンから事前運転指令を受信すると、利用形態に基づき走行に必要な標準ルート消費量を演算すると共に、車載バッテリの残量を検出して、前記標準ルート消費量と前記車載バッテリの残量とに基づき前記事前運転が可能であると判断した場合に、前記車載バッテリで前記事前運転させる制御部と、を備えることを特徴とする自動車エアコンシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車エアコンシステムであって、
前記制御部は前記リモコンに車内温度を通知することを特徴とする自動車エアコンシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動車エアコンシステムであって、
前記車載バッテリが、走行時における電力供給を主に行うメインバッテリと、該メインバッテリの補助をなすサブバッテリとを含み、
前記制御部が、前記事前運転を行う際には、前記メインバッテリより前記サブバッテリからの電力供給を優先することを特徴とする自動車エアコンシステム。
【請求項4】
自動車の車内空調を行う自動車エアコンシステムの運転方法であって、
運転手の乗車前にエアコンの事前運転を要求するための指令を送信する手順と、
前記事前運転指令を受信すると、利用形態に基づき走行に必要な標準ルート消費量を演算する手順と、
車載バッテリの残量を検出する手順と、
前記標準ルート消費量と前記車載バッテリの残量とに基づき前記事前運転が可能であると判断した際に、前記車載バッテリで前記事前運転させる手順と、を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
【請求項5】
請求項4に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
前記車内温度を通知する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
走行時における電力供給を主に行うメインバッテリと、該メインバッテリの補助をなすサブバッテリとを含む前記車載バッテリにより前記事前運転を行う際に、前記メインバッテリより前記サブバッテリからの電力供給を優先して電力供給を行う手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
商用電源による前記搭載バッテリの充電が行われていない場合に、前記搭載バッテリにより前記事前運転を行う手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか1項に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
前記搭載バッテリの残量に応じて、前記事前運転の運転条件を変更する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
【請求項9】
請求項8に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
複数のエアコンが搭載されている場合、前記車載バッテリの残量に応じて前記事前運転する前記エアコンの運転台数を制御する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。
【請求項10】
請求項8に記載の自動車エアコンシステムの運転方法であって、
前記車載バッテリの残量に応じて前記事前運転する前記エアコンの設定温度を調整する手順を含むことを特徴とする自動車エアコンシステムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−96757(P2012−96757A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248541(P2010−248541)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】