説明

自動車用ドアウインドウのディビジョンバー構造

【課題】 ガラスモールの外観上の見栄えを良好とし、且つディビジョンバーの取付作業性及び取付精度を共に向上させる。
【解決手段】 ガラスチャンネル9はガラス側に開口して配置される。ドアインナパネル7はガラスチャンネル9の一方の側壁10の外面に接合され、ドアアウタパネル8はガラスチャンネル9の他方の側壁11の外面に接合される。ディビジョンバー2の上部はガラスチャンネル9の下方から挿入される。ブラケット15は、ディビジョンバー2の上部に接合され、ドアインナパネル7に固定される。ガラスモール17はガラスチャンネル9の開口側領域を覆う。一方の側壁10には切欠部22が設けられ、ドアインナパネル7のガラス周縁部7aには凹部23が曲折形成されている。凹部23とブラケット15とには、スクリュー16の締結用の孔部24,25がそれぞれ形成されている。ディビジョンバー2の上部は、ガラスチャンネル2の間に嵌合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアウインドウのディビジョンバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用ドアウインドウのディビジョンバーの上部取付構造として、ガラスチャンネルとドアインナパネルとドアアウタパネルとディビジョンバーとガラスモールとを備えたものがある。
【0003】
ガラスチャンネルは、相対向する一方及び他方の側壁を含む略コの字形断面を有し、ガラス側に開口して配置される。ドアインナパネルは、ガラスチャンネルの一方の側壁の外面に接合され、ドアアウタパネルは、他方の側壁の外面に接合される。ディビジョンバーの上部は、ガラスチャンネルの一方及び他方の側壁の間に下方から挿入される。ディビジョンバーの上部にはブラケットが接合され、ブラケットとガラスチャンネルの一方の側壁とドアインナパネルとが重ねられた状態でスクリューによって締結固定される。ガラスモールは、ガラスチャンネルの開口側領域を覆う。
【0004】
【特許文献1】特開2001−171350号
【特許文献2】特開平10−157459号
【特許文献3】特許第3367338号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構造では、スクリューがドアインナパネルの車室内側から挿入されるため、スクリューの頭部はドアインナパネルの車室内側に露出してしまう。ここで、ドアインナパネルのガラス周縁部を含む領域を覆うようにガラスモールを構成することにより、ガラスモールによってスクリューの頭部を覆うことが可能である。
【0006】
しかし、ガラスモールによってスクリューの頭部を単に覆うだけでは、ガラスモールのうちスクリューの頭部を覆う箇所において部分的な盛り上がりが発生し、ガラスモールが変形してドアインナパネルから浮き上がるため、外観上の見栄えが損なわれてしまう。
【0007】
また、ガラスモールの端部がドアインナパネルから浮き上がって捲れてしまうと、ガラスモールの装着位置がずれたりガラスモールが外れてしまう一因となる。
【0008】
また、ディビジョンバーの取付時には、ガラスモールのリップをめくりながらガラスチャンネルの一方の側壁とドアインナパネルとが接合された2枚合わせのパネルの孔を通して、ブラケットに形成されたねじ部に向かってスクリューをアプローチさせるため、その取付作業が煩雑となる。
【0009】
ここで、ガラスチャンネルの一方の側壁とドアインナパネルとにそれぞれ形成されるスクリュー取付用の孔部の大きさに余裕を持たせることにより、スクリューのアプローチが容易になり、ディビジョンバーの取付作業性を向上させることも可能である。しかし、係る構造では、ドアのインナパネルに対するディビジョンバーの取付位置にばらつきが生じ易くなり、取付精度の低下を招く。
【0010】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、ガラスモールの外観上の見栄えが良好であり、且つディビジョンバーの取付作業性及び取付精度を共に向上させることが可能な自動車用ドアウインドウのディビジョンバー構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る自動車用ドアウインドウのディビジョンバー構造は、ガラスチャンネルと、ドアインナパネルと、ドアアウタパネルと、ディビジョンバーと、ブラケットと、ガラスモールと、を備える。
【0012】
ガラスチャンネルは、相対向する一方及び他方の側壁を含む略コの字形断面を有し、ガラス側に開口してガラス周りに配置される。ドアインナパネルは、ガラスチャンネルの一方の側壁の外面に接合され、ドアアウタパネルは、ガラスチャンネルの他方の側壁の外面に接合される。ディビジョンバーは、ガラスチャンネルの一方及び他方の側壁の間に下方から挿入される上部を有する。ブラケットは、ディビジョンバーの上部に接合され、スクリューによってドアインナパネルに締結固定される。ガラスモールは、ドアインナパネルのガラス周縁部とドアアウタパネルのガラス周縁部とを含むガラスチャンネルの開口側領域を覆う。
【0013】
ガラスチャンネルの一方の側壁には切欠部が設けられている。ドアインナパネルのディビジョンバー取付部には、ドアアウタパネル側に突出して切欠部に収容される凹部が曲折形成されている。ドアインナパネルの凹部とブラケットとには、スクリューの締結用の孔部がそれぞれ形成されている。ディビジョンバーの上部は、スクリューの締結用の二つの孔部の位置が合うように、ガラスチャンネルの一方及び他方の側壁の間に嵌合される。
【0014】
上記構成では、ガラスチャンネルの一方の側壁には切欠部が設けられ、ドアインナパネルのディビジョンバー取付部には、ドアアウタパネル側に突出して切欠部に収容される凹部が曲折形成され、この凹部にスクリューの締結用の孔部が形成されている。すなわち、ドアインナパネルの外面は、凹部がそれ以外の領域よりも凹んだ状態となり、この凹部の外面上からスクリューの頭部が突出し、このスクリューの頭部がガラスモールによって覆われた状態となる。係る状態において、ドアインナパネルの凹部以外の領域に対するスクリューの頭部の突出量は、凹部の凹み分だけ相殺されるため、ガラスモールのうちスクリューの頭部を覆う箇所の部分的な盛り上がりを減少させ又は盛り上がりの発生を解消することができる。また、ガラスモールのリップ裏面を薄肉化することとあわせれば、突出量を更に減少することができる。従って、ガラスモールが変形してドアインナパネルから浮き上がることを抑えることができ、外観上の見栄えが向上する。
【0015】
また、浮き上がりに起因するガラスモールの端部の捲れの発生が抑えられるので、ガラスモールの装着位置がずれたりガラスモールが外れてしまうことを確実に防止することができる。
【0016】
また、ディビジョンバーの取付時には、ドアインナパネルの凹部とブラケットとにそれぞれ形成されたスクリューの締結用の二つの孔部の位置が合うように、ディビジョンバーの上部をガラスチャンネルの一方及び他方の側壁の間に嵌合すればよい。すなわち、二つの孔部の位置を合わせるだけで済むため、その取付作業性が向上する。
【0017】
さらに、ディビジョンバーは、ブラケットを介してドアインナパネルに対してのみ締結されるため、ディビジョンバーの取付位置の精度が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガラスモールの外観上の見栄えが良好となり、且つディビジョンバーの取付作業性及び取付精度を共に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係るリヤドアの外観斜視図、図2は本実施形態に係る自動車用ドアウインドウのディビジョンバー構造を示す図1のII−II断面図、図3は図2のディビジョンバー構造の分解斜視図、図4は図3のガラスチャンネルの要部斜視図、図5は図3のドアインナパネルの要部斜視図である。
【0021】
図1に示すように、リヤドア1の上部には、上下方向に略直線状に延びるディビジョンバー2によって二つの領域に区分された開口部3,4が設けられ、各開口部3,4にそれぞれウインドウパネル5,6が配置されている。一方(本実施形態では車両前側)の開口部3に配置されたウインドウパネル5は、リヤドア1内のウインドウレギュレータ(図示外)によって開口部3内を昇降自在に設けられ、他方(本実施形態では車両後側)の開口部4に配置されたウインドウパネル6は、リヤドア1に対して固定されている。
【0022】
次に、ディビジョンバー2の上端部分の接続構造について、図2〜図5に基づいて説明する。
【0023】
リヤドア1の上部において、リヤドア1を構成するドアインナパネル7及びドアアウタパネル8のガラス周縁部7a,8aの間にはガラスチャンネル9が配置され、ドアインナパネル7及びドアアウタパネル8のガラス周縁部7a,8aとガラスチャンネル9とによって、開口部4の上部が区画されている。
【0024】
ガラスチャンネル9は、相対向する一方及び他方の側壁10,11と両側壁10,11の上端同士を連結する上壁26とを含む略コの字形断面を有し、下向きに開口して配置されている。ドアインナパネル7の車幅外側の側面は、ガラスチャンネル9の一方の側壁10の外面(車幅方向内側の側面)に接合され、ドアアウタパネル8の車幅方向内側の側面は、ガラスチャンネル9の他方の側壁11の外面(車幅方向外側の側面)に接合されている。
【0025】
ディビジョンバー2は、相対向する一方及び他方の側板12,13と両側板12,13の中間部同士を連結する連結板14とを含む略H形状を有し、その上部がガラスチャンネル9の一方及び他方の側壁10,11の間に下方から挿入される。
【0026】
ディビジョンバー2の連結板14の上部には、ディビジョンバー2の延設方向と交叉する方向(本実施形態では車両後方)へ延びる板状のブラケット15が固着されている。ブラケット15は、スクリュー16によってドアインナパネル7のガラス周縁部7aに締結固定される。
【0027】
ドアインナパネル7のガラス周縁部7aとドアアウタパネル8のガラス周縁部8aとを含むガラスチャンネル9の開口側領域には、弾性を有するガラスモール17が嵌合されている。ガラスモール17は、略W状断面を有し、モール基部18と、モール基部18の一端から折り返されてドアインナパネル7のガラス周縁部7aに密着するイン側のリップ部19と、モール基部18の一端から折り返されてドアアウタパネル8のガラス周縁部8aに密着するアウタ側のリップ部20と、を備えている。モール基部18には、その一端側で開口し、ウインドウパネル6が嵌合されるパネル嵌合凹部21が形成されている。係るガラスモール17により、ガラスチャンネル9の開口側領域が密封状態で覆われる。
【0028】
ガラスチャンネル9の一方の側壁10の下端には、下方へ開口する略矩形状の切欠部22が形成されている。一方、ドアインナパネル7のガラス周縁部7aには、ドアアウタパネル8側(車両外側)に突出して切欠部22に収容される凹部23が曲折形成されている。ドアインナパネル7の凹部23とブラケット15とには、上記スクリュー16の締結用の孔部24,25がそれぞれ形成されている。凹部23の孔部24は、スクリュー16の挿通を許容する貫通孔であり、ブラケット15の孔部25は、スクリュー16の雄ネジと螺合する雌ネジである。ディビジョンバー2の上部は、スクリュー16の締結用の二つの孔部24,25の位置が合うように、ガラスチャンネル9の一方及び他方の側壁10,11の間に嵌合される。係る状態で、スクリュー16は、凹部23の孔部24から車両外側に向かって挿入されて、ブラケット15の孔部25と螺合する。
【0029】
本実施形態によれば、ガラスチャンネル9の一方の側壁10には切欠部22が設けられ、ドアインナパネル7のガラス周縁部7aには、ドアアウタパネル8側に突出して切欠部22に収容される凹部23が曲折形成され、この凹部23にスクリューの締結用の孔部24が形成されている。すなわち、ドアインナパネル7のガラス周縁部7a外面は、凹部23がその近傍の領域よりも凹んだ状態となり、この凹部23の外面上からスクリュー16の頭部16aが突出し、このスクリュー16の頭部16aがガラスモール17のリップ部19によって覆われた状態となる。
【0030】
係る状態において、ドアインナパネル7の凹部23の近傍の領域に対するスクリュー16の頭部16aの突出量は、凹部23の凹み分だけ相殺されるため、ガラスモール17のリップ部19うちスクリュー16の頭部16aを覆う箇所の部分的な盛り上がりが減少し又は盛り上がりの発生自体が解消される。従って、スクリュー16の頭部16aに起因してガラスモール17のリップ部19が変形してドアインナパネル7の外面から浮き上がることを抑えることができ、外観上の見栄えが向上する。また、スクリューの頭部16aを覆うガラスモール17のリップ部19の裏面をスクリューの頭部16a近傍のみ薄肉化することとあわせれば、更に見栄えが向上する。
【0031】
また、浮き上がりに起因するガラスモール17のリップ部19の捲れの発生が抑えられるので、ガラスモール17の装着位置がずれたりガラスモール17が外れてしまうことを確実に防止することができる。
【0032】
また、ディビジョンバー2の取付時には、ドアインナパネル7の凹部23とブラケット15とにそれぞれ形成されたスクリュー16の締結用の二つの孔部24,25の位置が合うように、ディビジョンバー2の上部をガラスチャンネル9の一方及び他方の側壁10,11の間に嵌合すればよい。すなわち、二つの孔部24,25の位置を合わせるだけで済むため、その取付作業性が向上する。
【0033】
さらに、ディビジョンバー2は、全ての取付点をドアインナパネル7にのみ設定しているため、複数の部材に対して固定される場合に比して、ディビジョンバー2の取付位置の精度が向上する。
【0034】
なお、本実施形態は本発明の一例であり、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、ガラスモール17の外観上の見栄えが良好となり、且つディビジョンバー2の取付作業性及び取付精度を共に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、様々な自動車のドアウインドウのディビジョンバー構造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るリヤドアの外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係る自動車用ドアウインドウのディビジョンバー構造を示す図1のII−II断面図である。
【図3】図2のディビジョンバー構造の分解斜視図である。
【図4】図3のガラスチャンネルの要部斜視図である。
【図5】図3のドアインナパネルの要部斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1:リヤドア
2:ディビジョンバー
5,6:ウインドウパネル
7:ドアインナパネル
7a:ドアインナパネルのガラス周縁部
8:ドアアウタパネル
8a:ドアアウタパネルのガラス周縁部
9:ガラスチャンネル
10:一方の側壁
11:他方の側壁
15:ブラケット
16:スクリュー
16a:スクリューの頭部
17:ガラスモール
22:切欠部
23:凹部
24,25:スクリューの締結用の孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する一方及び他方の側壁を含む略コの字形断面を有し、ガラス側に開口してガラス周りに配置されるガラスチャンネルと、
前記一方の側壁の外面に接合されるドアインナパネルと、
前記他方の側壁の外面に接合されるドアアウタパネルと、
前記一方及び他方の側壁の間に下方から挿入される上部を有するディビジョンバーと、
前記ディビジョンバーの上部に接合され、スクリューによって前記ドアインナパネルに締結固定されるブラケットと、
前記ドアインナパネルのガラス周縁部と前記ドアアウタパネルのガラス周縁部とを含む前記ガラスチャンネルの開口側領域を覆うガラスモールと、を備え、
前記一方の側壁に切欠部を設け、
前記ドアインナパネルのディビジョンバー取付部に、前記ドアアウタパネル側に突出して前記切欠部に収容される凹部を曲折形成し、
前記ドアインナパネルの凹部と前記ブラケットとに、前記スクリューの締結用の孔部をそれぞれ形成し、
前記二つの孔部の位置が合うように、前記ディビジョンバーの上部を前記一方及び他方の側壁の間に嵌合する
ことを特徴とする自動車用ドアウインドウのディビジョンバー構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−137346(P2006−137346A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329498(P2004−329498)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)