説明

自動車用ホイールカバー

【課題】 同一の規格径寸法のホイールに対しては、その型式に関係なく装着することが可能な汎用性の高いホイールカバーを提供する。
【解決手段】 ディスク状本体6の外周縁部に、ホイールカバーが取り付けられるホイールのリムフランジ部3を挟持するクリップが面状ファスナを用いて所定間隔で複数固定されてなるホイールカバーである。面状ファスナを構成する第1面状部材8がディスク状本体6の裏面側の外周縁部近傍の位置において周方向に所定間隔で複数配置されている。この第1面状部材8と面係合する第2面状部材11が各クリップに設けられている。各クリップは、弾性的に、またはネジ手段による締付力を利用してリムフランジ部3を挾持する挾持部を備えていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のホイールに取り付けられるホイールカバーに関する。さらに詳しくは、規格径寸法が同一であるホイールに対して汎用的に取り付けることが可能なホイールカバーに関する。
【0002】
【従来の技術】図1は、一般的なホイール(特に、スチールホイール)の断面図、およびそのリム部2の拡大図である。図示されているように、リム部の所定位置にはホイール径方向外側に突出するハンプと呼ばれる隆起部が形成されており、これによってタイヤ端部が内側へ移動することを防止している。図において、理解を容易にするためハンプ部を大きく描がいているが、実際のハンプ部は突出量0.5mm程度の僅かな隆起部である。
【0003】一方、図1のホイール1に取り付けられるホイールカバーは、図2に示されているようなものであって、ディスク状本体51と本体裏面から突出する複数の爪部52とを一体的にインジェクション成形したものである。そして、爪部先端の突出部53をハンプ部4の裏側の凹部にはめ込み、さらに、ワイヤーリング70を用いて爪部先端をハンプ裏側の凹部内へとホイール半径方向外側に押圧することによって、ホイールカバー50をホイール1に取り付ける。
【0004】ところが、ホイールには多くの種類があり、たとえ同一直径であっても多様な型式のものがある。そして、多くの場合、型式が異なればハンプ部の位置及び深さ寸法も異なる。したがって、ハンプ部を利用してホイールに固定するホイールカバーでは、各型式のホイールに対して専用のものとならざるをえず、汎用性に乏しかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明が解決すべき技術的課題は、同一の規格径寸法のホイールであれば、その型式に関係なく装着することが可能な汎用性の高いホイールカバーを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段作用効果】前述のように、ホイールの型式が異なれば、たとえ規格径寸法が同一であっても、ハンプの位置は異なる。しかし、リムフランジ部の寸法は、規格径寸法が同じであれば型式によらず実質的に同一となっている。
【0007】本発明は、この点に着目してなされたものであり、ハンプ部ではなくリムフランジ部を利用してホイールカバーをホイールに取り付けることにより、前記課題を解決するものである。
【0008】本発明のホイールカバーにおいては、ディスク状本体の外周縁部に、ホイールカバーが取り付けられるホイールのリムフランジ部を挟持するクリップが面状ファスナを用いて、好ましくは3つ以上所定間隔で複数固定されている。面状ファスナを構成する第1面状部材がディスク状本体の裏面側の外周縁部近傍の位置において周方向に所定間隔で複数配置されるとともに、ディスク状本体裏面側に配置された第1面状部材と面係合する第2面状部材が各クリップに設けられている。
【0009】各クリップは、ホイールのリムフランジ部を挾持する挾持部を備えている。この挾持部は、弾性的に、またはネジ手段による締付力によってリムフランジ部を挾持するものが好ましい。ネジ手段による締付力を利用して挾持する構成を採用した場合には、一層強固な挾持を達成することができる。
【0010】本明細書においていう面状ファスナとは、表面に接合手段を備える略平板状の2つの面状部材が、互いの接合面を圧接することによって離合可能に係合するものである。例えば、2つの面状部材の各接合面に弾性変形可能な “きのこ状"の突起を多数密集して形成し、きのこ群を有する各面を当接させた状態で両部材を互いに圧接すると、 “きのこ"の頭部が互いに係合し、この結果、両部材はある程度の外力を加えなければ離れることはなくなる。きのこ状の突起に代わる他の接合手段を用いた構成としては、2つの面状部材の一方の接合面に多数のループ部を形成するとともに他方の接合面に多数のフック部を形成したマジックテープ(登録商標)のごとき構成等が考えられる。また、くり返し使用可能な両面テープを採用することも可能で、この場合には面状部材の一方を省略することができる。
【0011】係る構成のホイールカバーにおいては、クリップは、フランジ部のハンプ部ではなくリムフランジ部と係合するものである。そして、前記したように、リムフランジ部の位置および寸法は、同一規格径のホイールであれば型式に関係なくほぼ同一である。したがって、本発明のホイールカバーは、規格径寸法が同一のホイールであればその型式を問わず、高い汎用性で取り付けることが可能である。さらに言うならば、ハンプの形成されていないホイールに対しても取り付けることができる。
【0012】また、クリップをリムフランジ部の周方向の任意の位置に配置することができるので、バランスウエイトがリムフランジ部に設けられていても、ホイールカバーの取付自由度が制限されることもない。
【0013】さらに、クリップはホイールカバー本体の外周縁部に取り付けられている。すなわち、従来のホイールカバーの場合のようなホイールカバー外周縁部よりも内側の位置から突出する爪部材が不要となるので、ホイールカバー本体の形状が円板に近いシンプルものとなる。したがって、インジェクション成形によらずに、簡単な形状の型を使用してプレート状の素材から真空成形等によって経済的に製造することができ、コスト面においても有利である。
【0014】さらに、クリップは面状ファスナを利用してホイールカバー本体に固定されるので、ホイールカバーのリムフランジ部への取付作業において、ホイールカバー本体裏面に固定された第1面状部材とリムフランジ部に取り付けられたクリップの第2面状部材との相対位置は、あまりに厳格に一致していなくても、両部材の接合面にある程度のオーバーラップ部が存在していれば足りる。換言すれば、第1面状部材と第2面状部材との相対位置のある程度のずれを吸収することができる。このことは、ホイールカバーの製造(ホイールカバー本体への第1面状部材の取付け)、およびホイールカバーのリムフランジ部への取付作業において非常に有利である。
【0015】クリップがホイールのリムフランジ部を弾性的に挾持する挾持部を備えている場合には、該挾持部に台座部を連設することが好ましい。台座部は、第2面状部材が設けられる平面部を有しており、この平面部は、ホイール径方向内側に向かってホイールカバー面と平行に延在するとともに、ホイールカバーの装着時においてリム部内壁近傍にまで延在する支持脚を有している。
【0016】また、クリップがネジ手段による締付力によってホイールのリムフランジ部を挾持する挾持部を備えている場合には、該挾持部を、リムフランジ部外面に沿う湾曲板と、該湾曲板の側縁部からホイール径方向内側に向かってホイールカバー面と平行に延在しており前記第2面状部材が設けられる平面部と、ホイールカバーの装着時において平面部からリム部内壁近傍にまで延在する支持脚と、から構成し、ホイールのリムフランジ部を湾曲板に対して押圧付勢するネジ手段を支持脚に形成したネジ孔に螺合させることが好ましい。
【0017】以上のように、ホイール径方向内側に向かってホイールカバー面と平行に延在する平面部に第2面状部材を設けた場合には、ホイールカバーの装着時においてクリップは、その大部分がリムフランジ部よりもホイール径方向内側に位置することとなり、リムフランジのホイール径方向外側(つまり、タイヤが載置される側)に存在する部分は比較的少なくなる。すなわち、車両走行中におけるタイヤの変形がクリップに及ぼす影響が小さい。
【0018】また、ホイールカバーの装着時において平面部からリム部内壁近傍にまで延在する支持脚を設けた場合には、ホイールカバー本体に固定された第1面状部材とクリップに設けられた第2面状部材とを係合させる際に、支持脚がリム内壁部に当接し、この結果、係合荷重に対する反作用的な力が生じる。したがって、面状ファスナの接合、すなわちホイールカバーの装着作業が容易となる。
【0019】さらに、クリップがホイールのリムフランジ部を弾性的に挾持する挾持部を備えている場合には、該挾持部を、リムフランジ部とクリップの一部とを弾性的に挾持する弾性薄板材(とくに金属板)からなる別部材で構成することが好ましい。
【0020】この場合には、クリップの構成要素のうちリムフランジ部よりもホイール径方向外側に位置する部分はさらに少なくなり、車両走行中におけるタイヤの変形がクリップに及ぼす影響をさらに小さくすることができる。
【0021】同様に、クリップがネジ手段による締付力によってホイールのリムフランジ部を挾持する挾持部を備えている場合には、該挾持部の前記湾曲板と平面部と支持脚とを薄板材(とくに金属板)からなる別部材で構成すれば、リムフランジ部外面に沿う湾曲板も薄肉化されて同様の効果を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明のホイールカバーの実施形態を図3〜11を参照して以下に詳細に説明する。まず、図3〜7を参照して第1の実施形態を説明する。
【0023】本発明のホイールカバーは、ホイールへの装着のためのクリップをディスク状本体の外周縁部に面状ファスナを利用して固定してなるものである。図3に、ホイールカバー本体の一例を示した。ホイールカバー本体6はディスク状であって、その裏面側の外周縁部からやや内側の位置に、面状ファスナを構成する一方の接合片8が周方向に沿って等間隔に3つ固定されている。接合片8は、図3の下方に拡大して示されているように、長方形のプレート基板18の表面に “きのこ状"の突起19が多数密集して形成されてなるものであって、プレート基板18の裏面17に塗布された接着剤によってディスク状本体6の裏面に固定される。接合片8は、溶着によってディスク状本体裏面に固定されてもよい。各接合片8は、後述のように、同様のきのこ状突起が多数形成されたクリップの平板11と面接合する。
【0024】図4に、ホイール1のリムフランジ部3に取り付けられた状態のクリップを示した。クリップ10は、図4に示されているように、ホイールのリムフランジ部3を挾持する挾持部20と、ホイールカバー本体6の裏面に取り付けられた接合片8と接合する平板11を備えた台座部30とから構成される。
【0025】挾持部20は、リムフランジ部3のホイール径方向内面3aのホイール軸断面方向の湾曲に沿って湾曲する第1湾曲板14と、同じくリムフランジ部3のホイール径方向外面3bのホイール軸断面方向の湾曲に沿って湾曲する第2湾曲板15とが、リムフランジ端縁3cを跨ぐ連結部16を介して連接されることによって構成されている。また、クリップ10は、リムフランジ部分3の周方向の湾曲に適合させるために長手方向に僅かに湾曲させてある。
【0026】クリップ10は、プラスチック等のある程度の弾性を有する素材から作られている。そして、クリップ10のリムフランジ部3への取付けは、図5に示したように、第1湾曲板14と第2湾曲板15との間の溝にリムフランジ部3を挿入した状態で、挾持部20をリムフランジ部3のホイール軸断面方向の湾曲に沿って図中矢印方向に移動させながら両湾曲板14、15の弾性変形を利用して回転挿入することによって行なわれる。クリップ10は、第1湾曲板14と第2湾曲板15とがその弾性力によってリムフランジ部3を挾持することによりリムフランジ部3に固定される。なお、図5においては、平板11に形成されたきのこ状突起の図示は省略してある。
【0027】一方、台座部30は、図4に示されるように、挾持部20の連結部16からホイール径方向内側に向かってホイールカバー面と平行に突出する長方形の平板11と、その裏面側からホイールリム部内面2aに向かって直角方向に延在する柱状の支持脚12とから構成される。平板11の表面には、ホイールカバー本体6の裏面に固定された接合片8のきのこ状突起19と同様のきのこ状突起13が多数密集して形成されている。
【0028】図6に、ホイールカバー装着時における、ホイールカバー本体6、クリップ10、およびホイール1の相対関係を示した。図6においては、ホイールカバー本体6に付された黒丸は接合片が固定されている位置を示している。また、クリップ10の台座部30の図示は省略している。
【0029】ホイールカバーの安定した取付けのためには、クリップ10はディスク状本体の円周方向に沿って少なくとも3つ等間隔で配置することが好ましい。しかし、リムフランジ部表面にバランスウエイトが配置されている場合等、等間隔で配置できない場合には、バランスウエイトを避けつつ、できるだけ等間隔に近い配置にすればよい。
【0030】図6に示されているように、まずホイールカバーのクリップ10をホイールのリムフランジ部3に固定し、その後で、ホイールカバー本体裏面に固定された接合片8をクリップ10の台座部30の平板11と係合させることによって、ホイールカバーをホイール1に取り付けることが好ましい。この場合に、図4から分かるように、接合片8が平板11を図中上方から押圧したときに、平板11の裏面からリムフランジ内壁部2aへ向かって下方へと延在する柱状の支持脚12の端部12aがリムフランジ内壁部2aと当接し、接合片による押圧力に対して反作用的な力が生じる。この結果、接合片8と平板11とを容易に面接合させることができる。
【0031】ディスク状のホイールカバー本体裏面に固定された接合片8と、クリップ10の平板11とは、いわゆる面状ファスナを構成する。すなわち、接合片8と平板11とを、互いのきのこ状突起の一群を当接させた状態で圧接すると、きのこ状突起の両群が弾性変形して、きのこ状突起の頭部同士が係合する。この結果、接合片8と平板11とは、ある程度の外力を加えないかぎり離合することはなくなる。つまり、ホイールカバーがホイールに固定される。この状態を図7に断面図で示した。図7から、面状ファスナを構成する接合片8と平板11とが面接合することによって、ホイールカバーがホイールに固定されている様子が分かる。
【0032】図示の例においては、きのこ状突起は平板11に直接的に一体成形されている。すなわち平板11が面状ファスナの一方の面状部材を構成している。しかし、平板11の表面に接合片8と同様の部材を接着または溶着することも考えられる。
【0033】また、図示の例においては、面状ファスナを構成する接合片8および平板11には、互いに係合可能な同様のきのこ状突起が多数密集して形成されているが、他の例としては、接合片および平板の一方に多数のループを設け、他方にはこのループと係合可能なフック部を多数形成してなるマジックテープ(登録商標)のごとき構成を採用してもよい。また、ディスク状本体の裏面またはクリップの平板の表面のいずれか一方にくり返し使用可能な両面テープを設け、この両面テープを利用してホイールカバーをホイールに固定することも考えられる。
【0034】前記したように、挾持部20は、第1湾曲板14と第2湾曲板15とが弾性力によってリムフランジ部分3を挾持することによりリムフランジ部に固定されている。したがって、ホイールカバー本体に固定された接合片8とクリップの平板11との相対位置にずれがある場合には、クリップをリムフランジ部3に沿って周方向にスライドさせて、そのずれを修正することができる。さらに、面状ファスナを構成する接合片8と平板11とは、両者に形成された各きのこ群の間にある程度のオーバーラップ部が存在すれば接合可能であるから、接合片と平板との相対位置のずれを修正する場合にあまりに厳密に両者の相対位置を合わせる必要はなく、各きのこ群にある程度のオーバーラップ部が存在すれば足りる。同様に、接合片と平板とのホイール径方向における相対位置にある程度のずれがある場合でも、両者のきのこ群の間にある程度のオーバーラップ部が存在するのであれば、接合片の固定位置をずらして相対位置を修正する必要はない。
【0035】図3および6からも分かるようにホイールカバー本体6は、従来のものに比べて円板状に近いシンプルな形状である。すなわち、図2のホイールカバー50の場合のようなホイールカバー周縁部よりも内側から突出する爪部52を備えていない。したがって、インジェクション成形等によらなくても、シンプルな形状の型を使用した真空成形によって簡単に製造することができる。
【0036】また、図7からも分かるように、ホイールカバーの装着時においては、クリップは、その構成要素の大部分がリムフランジ部3よりもホイール径方向内側(図中右側)に位置することとなり、リムフランジ部3のホイール径方向外側(図中左側であって、タイヤが載置される側)に存在する部分は第2湾曲板15だけである。すなわち、車両走行中におけるタイヤの変形がクリップに及ぼす影響が小さい。
【0037】このように、車両走行中にタイヤから受ける影響を考えた場合に、クリップは、リムフランジ部3のホイール径方向外側に位置する部分が少ない方が好ましい。この点に着目して為された変形例であるクリップ10'を第2の実施形態として図8および9を参照して説明する。
【0038】図8は、クリップ10'のリムフランジ部3への取付方法を示す斜視図であり、図9は、クリップ10'の取付後における図8中の9−9線断面図である。クリップ10'は、クリップ10に対して挾持部20に相当する部分のみが異なっており他の部分については同様である。したがって、異なる部分についてのみ説明するものとし、きのこ状突起の図示も省略している。
【0039】クリップ10'は、平板11のホイール径方向外側端部から図中下方に延在する壁部28を備えている。この壁部28の上端部からやや下寄りの位置からは、さらにホイール径方向外側に突出し、リムフランジ部3への取付時においてフランジ部内表面3aと当接する突出部29が設けられている。そして、突出部29の上表面34の中央部付近には、固定金具25の一方の脚部26を受け入れる挿入口33が形成されている。
【0040】固定金具25は、図8に示されているようにホイールカバー径方向断面が略U字状で、リムフランジ部3の周方向に所定長さで延在する金具である。金具25は、一方の脚部26は、クリップ10'の壁部28に沿い得る平板状であって、他方の脚部27は、リムフランジ部3の外表面3bの表面形状に沿うように湾曲している。
【0041】クリップ10'は固定金具25を用いてホイールのリムフランジ部3に取り付けられる。その取付方法は、まず、クリップ10'を、突出部29をリムフランジ部の内面3aに、支持脚12の端部12aをリム部内面2aに、それぞれ当接させた状態で、リムフランジ部3の内側に配置し、この状態で、取付金具25を図9中上方から矢印方向に押し込むことによって行う。つまり、固定金具25の平板状脚部26が突出部29に形成された挿入口33に挿入されるように、かつ、湾曲脚部27がリムフランジ部3の外表面3b上を沿うように、固定金具25を図9中上方から下方へと移動させる。この結果、固定金具25がその弾性力によって、クリップ10'の突出部29とリムフランジ部3とを挾持することによって、クリップ10'をリムフランジ部3に固定する。図8および9からも分かるように、突出部29の表面は、リムフランジ部の内面3aに沿うように湾曲している。
【0042】固定金具25は、比較的薄い金属板で作られているので、第1の形態におけるクリップ10と一体成形された挾持部20と比較した場合、第2湾曲板15よりも金具25の湾曲脚部27の方が薄い。すなわち、第2の形態の場合の方が、クリップをリムフランジ部3に取り付けた場合に、リムフランジ部のホイール径方向外側に位置する部分が少なく、車両走行中にタイヤから受ける影響がより小さい。
【0043】図10および11には、本発明の第3の実施形態を示した。第1および第2の実施形態においては、クリップの挾持部はホイールのリムフランジ部を弾性的に挾持するものであったが、第3の実施形態においては、クリップの挾持部はネジ手段による締付力を利用してリムフランジ部を挾持するものである。他の主な構成および作用は第1および第2の実施形態に示したものと同様である。
【0044】図10は、本実施例に係るクリップ110の全体的な構成を説明する分解斜視図である。図11は、クリップ110を備えたホイールカバーがホイールに固定された状態を示す断面図であって、図7に対応するものである。
【0045】図10に示したクリップは、プレート基板118の表面に多数のきのこ状突起113が密集して形成されてなる接合片108と、金属板から湾曲成形された挾持部120とから構成されている。
【0046】挾持部120は、装着時にリムフランジ部外面3bに沿う湾曲板121と、湾曲板121の上縁部からホイール径方向内側に向かってホイールカバー面と平行に延在する平面部122と、平面部122の内径側縁部から湾曲板121と同じ方向に折り返されてなる支持板123とから構成されている。支持板123は、その先端がさらに折り返されており、この折返し部124は平面部122の裏面付近にまで延在している。また、支持板123および折返し部124には、それぞれ、中央部付近にネジ孔125、126が形成されている。これらのネジ孔125、126には、ボルト130が螺合される。
【0047】図11の断面図に示したように、クリップ110はボルト130の締付力によってリムフランジ部3を挾持する。すなわち、湾曲板121をリムフランジ部外面3bに沿わせて配置し、支持板および折返し部のネジ孔125、126に螺合させたボルト130を締付けると、ボルト先端130aがリムフランジ部3を湾曲板121に対して押圧付勢する。この結果、クリップ110はリムフランジ部3に固定される。
【0048】支持板123および折返し部124は、第1および第2の実施形態のクリップにおける支持脚12(図4および図9参照)に相当するものである。つまり、接合片8が接合片108を図11中上方から押圧したときに、支持板123と折返し部124との境界部にあたる湾曲面123aがリムフランジ内壁部2aと当接し、接合片による押圧力に対して反作用的な力が生じる。
【0049】なお、接合片108は、そのプレート基板118の両側縁が裏側に向かって折り返されており、この折返し部109を挾持部120の両側縁部に弾性係合させることによって、挾持部120に固定される。
【0050】図示の例では、金属製の挾持部120に別部材としての接合片108が取り付けられているが、挾持部と接合片とをプラスチック成形等によって一体的に構成することも考えられる。しかし、挾持部を金属板から作った場合の方が、クリップをリムフランジ部3に取り付けた場合に、リムフランジ部のホイール径方向外側に位置する部分が少なく、車両走行中にタイヤから受ける影響がより小さい。このことは、既に説明した第1の実施形態と第2の実施形態との関係と同じである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一般的なホイールの概略断面図、およびそのリム部の拡大図である。
【図2】 図1のホイールに対して従来のホイールカバーが装着された状態を示す部分部断面図である。
【図3】 本発明に係るホイールカバー本体の一例を示す斜視図である。
【図4】 図3のホイールカバー本体に取り付けられるクリップをリムフランジ部材に取り付けられた状態で示す斜視図である。
【図5】 図4のクリップのリムフランジ部への取付けを説明する断面図である。
【図6】 図4のクリップを使用した場合について、ホイールカバー装着時の、ホイールカバー本体、クリップ、およびホイールの相対関係を示す概略図である。
【図7】 図4のクリップを使用した場合について、ホイールカバーとホイールとの装着状態を示す断面図である。
【図8】 本発明に係るクリップの他の例を示す斜視図である。
【図9】 図8のクリップの装着状態を図8中の9−9線において示す断面図である。
【図10】 本発明に係るクリップのさらに他の例を示す分解斜視図である。
【図11】 図10のクリップの装着状態を示す断面図であって、図7に対応するものである。
【符号の説明】
1 ホイール
2 リム部
2a リム部内面
3 リムフランジ部
3a リムフランジ部内面
3b リムフランジ部外面
3c リムフランジ端縁
4 ハンプ部
6 ホイールカバー本体
8 接合片
10、10' クリップ
11 平板
12 支持脚
13 きのこ状突起
14 第1湾曲板
15 第2湾曲板
16 連結部
17 プレート基板の裏面
18 プレート基板
19 きのこ状突起
20 挾持部
25 固定金具
26 平板状脚部
27 湾曲脚部
28 壁部
29 突出部
30 台座部
33 挿入口
34 突出部の上表面
50 ホイールカバー
51 ディスク状本体
52 爪部
53 突出部
70 ワイヤーリング
108 接合片
110 クリップ
113 きのこ状突起
118 プレート基板
119 プレート基板の折返し部
120 挾持部
121 湾曲板
122 平面部
123 支持板
123a 湾曲面
124 折返し部
125、126 ネジ孔
130 ボルト
130a ボルト先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ディスク状本体(6)の外周縁部に、ホイールカバーが取り付けられるホイールのリムフランジ部(3)を挟持するクリップ(10、10'、110)が面状ファスナを用いて所定間隔で複数固定されてなるホイールカバーであって、面状ファスナを構成する第1面状部材(8)がディスク状本体(6)の裏面側の外周縁部近傍の位置において周方向に所定間隔で複数配置されており、ディスク状本体裏面側に配置された第1面状部材(8)と面係合する第2面状部材(11、108)が各クリップ(10、10'、110)に設けられていることを特徴とする、ホイールカバー。
【請求項2】 前記クリップ(10、10')は、ホイールのリムフランジ部(3)を弾性的に挟持する挾持部(20)を備えていることを特徴とする、請求項1記載のホイールカバー。
【請求項3】 前記クリップの挾持部(20)には、第2面状部材(11)が設けられる平面部(11)を有する台座部(30)が連設されており、台座部の平面部(11)は、ホイール径方向内側に向かってホイールカバー面と平行に延在しており、ホイールカバーの装着時においてリム部内壁(2a)近傍にまで延在する支持脚(12)を有していることを特徴とする、請求項2記載のホイールカバー。
【請求項4】 前記クリップ(10')の挾持部は、リムフランジ部(3)とクリップ(10')の一部とを弾性的に挾持する弾性薄板材(25)からなる別部材で構成されていることを特徴とする、請求項2または3記載のホイールカバー。
【請求項5】 前記弾性薄板材(25)は金属板(25)であることを特徴とする、請求項4記載のホイールカバー。
【請求項6】 前記クリップ(110)は、ネジ手段(130)による締付力によってホイールのリムフランジ部(3)を挟持する挾持部(120)を備えていることを特徴とする、請求項1記載のホイールカバー。
【請求項7】 前記クリップの挾持部(120)は、リムフランジ部外面(3b)に沿う湾曲板(121)と、該湾曲板の一縁部からホイール径方向内側に向かってホイールカバー面と平行に延在しており前記第2面状部材が設けられる平面部(122)と、ホイールカバーの装着時において平面部(122)からリム部内壁(2a)近傍にまで延在する支持脚(123、124)と、を備えており、ホイールのリムフランジ部(3)を湾曲板(121)に対して押圧付勢するネジ手段(130)が支持脚(123、124)に形成されたネジ孔(125、126)に螺合していることを特徴とする、請求項6記載のホイールカバー。
【請求項8】 前記クリップ(110)の挾持部は、湾曲板(121)と平面部(122)と支持脚(123、124)とが薄板材(120)からなる別部材で構成されていることを特徴とする、請求項7記載のホイールカバー。
【請求項9】 前記薄板材(120)は金属板(120)であることを特徴とする、請求項8記載のホイールカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図10】
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【公開番号】特開平9−123704
【公開日】平成9年(1997)5月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−57826
【出願日】平成8年(1996)3月14日
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)