説明

自在管継手

【課題】可撓管を用いた自在管継手に管路狭窄部を形成しないようにしてフラッシングを良好にする。
【解決手段】シエル2と、該シエル2の内面で摺動するコア3と、からなる自在管継手1にあって、これらのシエル2とコア3の内径側基部にわたる可撓管6を設けることにより、汚物溜りを防いだ継手管路を形成したものにおいて、該コア3が最大の自在変化時にも該可撓管6に当接しないストッパ−を、該シエル2に設けて、可撓管6の管頂側に管路狭窄部ができないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自在管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、球関節をもち、任意の回転が可能なボ−ル継手は管路にも用いられて、部分的な球面の滑動面をもち、角変位(自在振り角変位ともいう)を可能とするボ−ル管継手と称せられて汎用されている。
【0003】
かかるボ−ル管継手は、ポリエチレンや塩ビ等の合成樹脂製管路にも適用され、現在、自在管継手と称せられて汎用されている。
【0004】
かかる自在管継手は基本的には、部分的な球面のシエルとこれに内接するコア(塊状部材)とからなる自在管継手になっている。
【0005】
かかる基本的な自在管継手についての1つの提案(特許文献1)を述べる。
【0006】
この提案の自在管継手は部分的な球面のシエルと、このシエルに自在に内接する塊状のコアとからなり、このシエルの一端側には管路を形成する差口部が一体に設けられ、コアの他端側の内面には受口部が内嵌固着されている。
【0007】
そして、この差口部には下流管が、受口部には上流管がそれぞれ接続するようになっている。
【0008】
ここにおいて、この提案の自在管継手は、特に、前記受口部の内面と、コアの内面とにわたり合成ゴムからなる伸縮自在の弾性筒により、当該継手を自在変化させても、例えば流路勾配を大きくしても、この弾性筒の管底側が伸び、そこに極端な凹部ができず、ひいては、固形物の溜りを防ぐ、とされている。
【特許文献1】特開2003−329182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる自在管継手では、流路勾配を大きくとると、継手内管路頂部側に塊状のコアの内端側が突出し、伸縮自在の弾性筒を変形させて管路狭窄部を形成することにより、満管流による折角のフラッシュ効果を阻害する、という問題がある。
【0010】
また、この自在管継手では弾性筒が伸縮することから、管路掃除棒体を挿入すると、その先端が弾性筒に当接して該弾性筒を変形させ更なる挿入が困難となったり、突き破るおそれがあったりする問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、本発明は、1)1対の部分球面状摺動面をもつ合成樹脂製自在管継手において、該摺動面の1つをシエルで構成し、該シエル内面に、他の1つの該摺動面をもつコアを設け、これらのシエル・コアの内径側基部にわたる可撓管を設けて継手管路を形成した合成樹脂製自在管継手にあって、前記コアが、自在変化時にも前記可撓管に当接しないストッパ−を、シエルに設けて、該コアによる管路狭窄部を形成しないようにしたことを特徴とする合成樹脂製自在管継手にあり、また、2)1対の部分球面状摺動面をもつ合成樹脂製自在管継手において、該摺動面の1つをシエルで構成し、該シエル内面に、他の1つの前記該摺動面をもつコアを設け、これらのシエル・コアの内径側基部にわたる可撓管を設けて継手管路を形成した合成樹脂製自在管継手にあって、前記可撓管を内面平滑で、かつ、そのヒダに強度をもたせたコルゲ−ト管で構成すると共に、該コルゲ−ト管の両端を嵌合支持部で支持することにより、自在変化時にも前記コアによる管路狭窄部を形成しないようにしたことを特徴とする合成樹脂製自在管継手を要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によると、コアのストッパ−を設けたので、継手管路をその管軸を可及的に大きくとった可撓管に構成しながら、当該管軸手を最大に自在変化させても、そのコアの端部が継手管路の全周、特に管頂側に突出せず、したがって、管路狭窄部を形成せず、これを下水設備に適用すれば、汚物溜まりのないことに併せて、フラッシュ効果を得ることができ、ひいては、自在変化角度を大きくとることができる。
【0013】
請求項2の発明によると、内面平滑で、かつ、ヒダに強度をもたせたコルゲ−ト管を長寸の継手管路に構成したので、ヒダの変形抵抗力により、自在変化させても全内面を滑らかな弯曲面とすることができると共に、コルゲ−ト管の両端を凹凸のない嵌合支持部で支持するので、前記滑らかな弯曲面に更に資すると共に、その組立作業を容易にすることができ、その上、掃除棒等の挿入を容易とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を添付図面に示す実施例により詳細に述べる。
【0015】
図1は本発明の実施例の断面図(自在変化前の縦断面図)、図2は図1の説明図(自在変化後の一部断面図)である。
【0016】
先ず、本発明の実施例の概要を述べる。
【0017】
本発明の実施例は、塩ビ管同士や塩ビ管と塩ビますの接続部とを接続するために用いる塩ビ製自在管継手1であって、一方の接続口(ゴム輪受口)4と一体成形(ブロ−成形等)した部分球面をもつ外側のシエル2と、この接続口4の反対側であって、自在変化前に同一直線状管軸aにある他方の接続口(差口)(または自在管継手が一体化された、ます本体接続部)5と一体化した部分球面をもち、かつ、内側の管路を直接形成しないコア3と、からなり、この自在管継手1にあって、これらのシエル2、コア3の各内径の管路側にわたり1つの管路長さを大きくとった可撓管6を設け、しかも、該コア3を、前記他方の接続口5に設けられ、かつ、外面に部分球面を形成して前記シエル2の内面で滑動する環状体7で構成し、その環状体7は当該自在管継手1が最大に自在変化(例えば片側15度)しても、その自由端たる端部が前記可撓管6に当接しない薄片に構成していて、しかも所定の継手強度をもたせている。
【0018】
したがって、この自在管継手1では、内、外のシエル、コア2、3が継手強度を保ちながら自在振り角の変位を担持する第1の部材を構成し、このシエル、コア2、3の内径側にあって、これらのシエル、コア2、3の管路側全面から間隔を設けて長寸の管路を形成し、かつ、前記自在振り角の変位に追随する可撓管6たる第2の部材を構成し、これらの機能分担した第1、第2の部材からなる自在管継手1にしたから、次のような効果を奏するに至った。
【0019】
(イ)可撓管6は長寸に構成できて、かつ、継手強度を必要としない。
【0020】
(ロ)特に、コア3を薄片で構成しているので、自在変位ができるスペ−スが確保され、最大自在変化をしても、すなわち、シエル2の凹内面で大きく摺動させても、なおかつ、シエル2に付設したストッパ−にコア3の内面が当接するので、コア3の端部が管路側に突出せず、ひいては、管路狭窄部を形成しない。
【0021】
(ハ)更に、可撓管6を内面平滑の2重のコルゲ−ト管(波形管ともいい、管壁外面にヒダ12を付し、伸縮や弯曲が容易な管をいい、例えば合成樹脂製波形管を更に伸縮するため独立または螺旋状補強線体を管壁に埋蔵したものをいう)にすると、内面が一層平滑性にすぐれ、しかも、継手の維持管理が良好にできる。
【0022】
(ニ)また、コア3側を可及的に停止させた使用法の場合や、コア3をます本体の開口部に設けて固定したときの使用法の場合には、シエル2のみが最大限滑動することになって、その結果、管路狭窄部を発生させない。
【0023】
次に、本実施例の自在管継手1を詳細に述べる。
【0024】
本実施例の塩ビ製自在管継手1を、例えば呼び径75mmφ、100mmφ、150mmφ、または200mmφの排水設備に用いた場合、自在振り角θを大きく形成(例えば片側15度)した状態でも、その管路底部側には滑らかな弯曲面8を形成し、排水の流れによるフラッシング効果を発生可能として、いわゆる汚物溜りを形成させないようにしている。
【0025】
前記外側のシエル2と、リップ付シ−ル21を装着するゴム輪受口用溝9とはその全体を射出成形、またはコ−ルドパリソン法によるブロ−成形するときに形成する。
【0026】
このシエル2の内径側の膨出基部側には、内向突条で構成したゴム輪受口ストッパ−10を形成した第1の取付リング11を内嵌して接着固定している。
【0027】
この第1の取付リング11におけるゴム輪受口ストッパ−10の反ゴム輪受口側には、前記可撓管6の一端側における外面のヒダ12を抱持する半割りリング13を接着内嵌合して該可撓管6の一端を片持ち状に支持するようにして管路内面を平滑化している。
【0028】
したがって、この第1の取付リング11は環体で形成され、その内面軸方向中央に突条があって、一方側をゴム輪受口ストッパ−10とし、他方側を可撓管6の一端を支持する短筒状内嵌合支持部22にした断面略T字状に形成しているので、1つの部材で受口ストッパ−10と、可撓管嵌合支持部と、コア3の自在変化ストッパ−と、の機能を兼用して果し、構造簡素化部品点数節減化に資している。
【0029】
特に、この環体の第1の取付リング11の自由端側外面を、環状体のコア3の自由端が当接するようにした自在変化用ストッパ−としており、ひいては、環状体のコア3の自由端が可撓管6に当接しないようにしている。
【0030】
前記内側のコア3を支持する第2の取付リング14と、差口たる接続口5とは、全体を射出成形するときに形成される。
【0031】
この第2の取付リング14の外面の一部は、継手管路を直接形成しない薄片状のコア3の延長部を構成すると共に、その外面の残部には、係止溝15とシ−ル溝16とを並設している。
【0032】
この係止溝15には、コア3の内面に設けた突条17が嵌合し、シ−ル溝16のOリングでシ−ルすることにより、第2の取付リング14とコア3とを密接一体化している。
【0033】
したがって、この薄片のコア3を組付容易としながら、それ自体は単独で滑動ないし妄動せず、内側の球面接合部として良好に機能するようにしている。
【0034】
このコア3には、外面を部分球面に形成して前記シエル2の内面で滑動するようにし、その球面の最大径の外面にOリング溝18を周設し、Oリング19を装着している。
【0035】
したがって、このシエル2とコア3とにより、自在管継手1の強度と水密性と自在振り角θとの各機能を担持するようにしている。
【0036】
また、前記のように第2の取付リング14はコア3の基部を形成しているが、この第2の取付リング14の若干拡径した内面には、前記可撓管6の他端側おける外面のヒダ12を抱持する半割リング20を接着嵌合して、該可撓管6の他端を片持状に短筒状内嵌支持する嵌合支持部23を形成している。
【0037】
したがって、この可撓管6はその両端側の短筒状の第1、第2の取付リング11、14に形成された嵌合支持部22、23により両端を支持しているので、その管軸が大きくとれ、しかも、自在変化の時でも極端な弯曲をせず、ひいては、管路内面を平滑化して汚物溜りや管路狭窄部を形成しないことに資している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例の断面図である。
【図2】図1の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 自在管継手
2 シエル
3 コア
6 可撓管
7 環状体
12 ヒダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の部分球面状摺動面をもつ合成樹脂製自在管継手において、
該摺動面の1つをシエルで構成し、該シエル内面に、他の1つの該摺動面をもつコアを設け、これらのシエル・コアの内径側基部にわたる可撓管を設けて継手管路を形成した合成樹脂製自在管継手にあって、
前記コアが、自在変化時にも前記可撓管に当接しないストッパ−を、シエルに設けて、該コアによる管路狭窄部を形成しないようにしたことを特徴とする合成樹脂製自在管継手。
【請求項2】
1対の部分球面状摺動面をもつ合成樹脂製自在管継手において、
該摺動面の1つをシエルで構成し、該シエル内面に、他の1つの前記該摺動面をもつコアを設け、これらのシエル・コアの内径側基部にわたる可撓管を設けて継手管路を形成した合成樹脂製自在管継手にあって、
前記可撓管を内面平滑で、かつ、そのヒダに強度をもたせたコルゲ−ト管で構成すると共に、該コルゲ−ト管の両端を嵌合支持部で支持することにより、自在変化時にも前記コアによる管路狭窄部を形成しないようにしたことを特徴とする合成樹脂製自在管継手。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−138438(P2006−138438A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330284(P2004−330284)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】