説明

自己免疫反応に関係した局所性病変または全身性症状の処置におけるN−アセチル−D−グルコサミンの使用

本発明は、自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変または全身性症状を処置する方法、自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変または全身性症状を処置するためのN−アセチル−D−グルコサミンの使用、および自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変または全身性症状を処置するための薬剤の製造におけるN−アセチル−D−グルコサミンの使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および/または全身性症状の処置におけるN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩の使用、および自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および/または全身性症状の処置用の薬剤の製造におけるN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩の使用に関する。
【0002】
背景技術
現在のところ、自己免疫反応によって引き起こされる発熱、頭痛、めまい、せん妄、悪心、嘔吐、全身倦怠感等のような全身性症状の処置には、二つの主な方法、すなわち、(1)コルチゾン等を用いることによる免疫抑制療法;および(2)支持療法がある。ホルモン類の使用は、多くの副作用を引き起こすことがありうるので、現在のところ、通常は、支持療法が用いられているが、支持療法の効果は、納得のいくものではない。したがって、自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および/または全身性症状の処置用の薬物が、なお必要である。
【0003】
「バイオウェーブ(bio-waves)」理論の研究において、本発明者は、生物波動増殖(organism wave-growth)モデルを提案している。その生物波動増殖の分子機構を深く研究することによって、本発明者は、微小異種構造変化(micro-heterology variation)機構を提唱しているが、その場合、生物の生物学的波動は、絶えず変化していて;その変化速度は、外部環境の変化度に依存し;生物が傷つけられた結果として、その抗原が暴露された後に、または生物の物質が、他の因子のために変性した後に、免疫細胞の機能は変化し、それが、微小異種構造の発生を促し、そして自己免疫反応に関連した局所性病変および全身性症状を引き起こす。
【0004】
生物学的波動の調節因子としてのN−アセチル−D−グルコサミンは、マクロ変動のみならず、高分子物質の振動の安定性にも影響を及ぼすということが判明している。この物質は、高分子物質の生理学的機能を維持し且つ自己免疫反応によって引き起こされる合併症を免れるために、高分子物質の生理学的振動を維持し、生物中の有害な作用を緩和し且つ撃退することができる。概して、この物質は、自己免疫反応によって引き起こされる状態を抑制し、病変を緩和し、治癒を促し、そして状態を排除することができる。
【0005】
本発明者は、驚くべきことに、種々の薬学的に許容しうる担体と組み合わせたN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩が、本発明を実施するために、自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変または全身性症状の処置に適する製剤形態を形成することができるということを発見している。
【0006】
発明の内容
本発明の一つの目的は、自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および全身性症状の処置および抑制におけるN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供することである。
【0007】
本発明のもう一つの目的は、自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および全身性症状の処置および抑制のための薬剤の製造におけるN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩の使用を提供することである。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および全身性症状を処置する方法を提供することである。
本発明において用いられるN−アセチル−D−グルコサミンは、C15NOの分子式および次の構造式(I)を有する化合物である。
【0009】
【化1】

【0010】
本発明において用いることができるN−アセチル−D−グルコサミンの薬学的に許容しうる塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩およびリン酸水素塩などの無機酸で形成される塩、およびクエン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、メチル硫酸塩、ピクリン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、メシラートおよびグルコース−1−リン酸などの有機酸で形成される塩が含まれるが、これに制限されるわけではない。
【0011】
本発明の医薬組成物において、N−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩の含有量は、概して、0.1〜10重量%である。
N−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩の他に、この医薬組成物は、更に、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射等に適する製剤を形成するためにまたは経口投与に適する製剤を形成するために、当該技術分野において周知の賦形剤または担体を含む。
【0012】
この医薬組成物は、単回用量/日、または3〜4用量/日のような複数回用量/日の方式で投与することができる。この医薬組成物の用量は、患者の年齢、状態、症状および投与方式に依存する。概して、75kgの体重を有する成人患者に関して、この医薬組成物の用量は、活性成分に基づき1〜100000mg/日であり、1日に1〜4回投与される。
【0013】
好ましいモデルによれば、抵抗力を増強し、水分を補充し、そして in vivo 安定性を維持するために、N−アセチル−D−グルコサミンを、治療的手順の間中、静脈間滴下注入方式で投与する。
【0014】
慣用的な支持療法と比較したところ、N−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩は、局所性炎症を軽減させ且つ局所性病変および全身性毒性症状を緩和する場合に一層有効であり、速やかに且つ活発に作用し、そしてより良い予後結果を容易にする。
【0015】
発明を実施する態様
本発明の有益な作用を、次の実施例によって更に示すが、これら実施例が、本発明を単に例示するものであり、むしろ、いずれの側面においても本発明の範囲を制限するものではないということは理解されるであろう。
【0016】
実施例1.式(I)の化合物の増進性波動(promoting wave)試験
1.実験材料および方法:
1.1 試料:式(I)の純化合物
1.2 実験材料:
菌株:次の生化学反応特性、すなわち、動態(+)、ウレアーゼ(+)、ラクトース(−)、グルコース(+)、HS(−)、フェニルアラニンデアミナーゼ(+)を満たすプロテウス・ミラビリス(Proteus Mirabilis)。
【0017】
培地:修飾LB培地(成分:1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナトリウム、0.1%グルコース、0.002%TTCおよびpH=7.2〜7.4)。
1.3 実験方法:
対照試料:Proteus Mirabilis を、LBプレートの中心に接種し、37℃で9時間インキュベートした;
試験試料:0.5%の最終濃度を有する式(I)の化合物を、LBプレートに加えた後、Proteus Mirabilis を、同じ方法によって接種し、37℃で9時間培養した。
【0018】
2.実験結果および評価:
対照試料は、連続的に外側に広がった同一中心の環を3時間間隔で示した。試験試料は、同一中心の環を3時間間隔で示したのみならず、対照試料と比較して、各々の環上に多数の微細な波動を示した。
【0019】
実験は、式(I)の化合物の増進性波動機能を研究するのに用いられるバイオウェーブモデルを採用している。それら結果は、式(I)の化合物が、細菌細胞に正常なバイオウェーブ特性を示させることができるのみならず、その波動に一層微細な波動様式を示させることができるということを示した。これらは、式(I)の化合物が、バイオウェーブを増進する機能を有するということを示した。この波動増進性機能は、自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変または全身性症状を処置するおよび抑制するためにN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩を用いることの効果を説明することができる。
【0020】
実施例2.式(I)の化合物の毒物学的試験
式(I)の化合物の毒物学的試験には、次が含まれる。
1.急性毒性試験:経口投与、静脈内投与、および投与用の最大限界量についての試験を含む;
2.エイムス(Ames)試験;
3.マウス骨髄細胞の小核試験
4.マウス精子の異常試験;
5.マウス精巣染色体の異常試験;
6.慢性致死試験;
7.亜慢性毒性(90日間飼養)試験;
8.伝統的奇形誘導試験。
【0021】
これら試験の結果は、式(I)の化合物の急性毒性試験において、2g/kgを超える投薬量を摂取した場合、急性中毒症反応が現れなかったということを示し;長期毒性試験において、最大投薬量は、1g/kgまで達し、そして4週間の処置および観察後、中毒反応はまだなかったし;そして繁殖試験において、マウスに、7mg/kgの常套投薬量を3世代与え、式(I)の化合物は、乳児マウスの妊娠、誕生、哺乳および成長に影響を与えなかったので、式(I)の化合物は、毒性のない物質であるということが証明された。
【0022】
実施例3.微小異種構造変化を調節する細胞学的試験
慣用的な不完全1640培地を、細胞培養に用い、B16腫瘍細胞(Shanghai Institute of Cytobiology の腫瘍細胞ライブラリーより商業的に入手)を、この培地上に接種した。48時間を超えて培養を続けた後、細胞の微小異種構造変化およびそれへのN−アセチル−D−グルコサミンの抑制作用を、代謝老廃物がその増殖環境に影響を及ぼす条件下において観察した。1g/100mlの最終濃度を有するN−アセチル−D−グルコサミンを培地に加えた後、細胞数は、細胞増殖手順の間中、培養時間と共に安定して増加した。N−アセチル−D−グルコサミン不含で培養された対照細胞は、同じ条件下における同じ培地上で増殖できなった。これら試験は、式(I)の化合物の存在下において、細胞は、常に変化している環境に適応するために、細胞微小異種構造変化を調節しうるので、細胞は絶えず増殖しうるということを示した。
【0023】
N−アセチル−D−グルコサミンを、これら試験においてN−アセチル−D−グルコサミン塩酸塩で置き換えた場合(他の条件は変更しなかった)、対照試験と比較したところ、細胞は、常に変化している環境に適応するために、細胞微小異種構造変化をも調節しうるので、細胞は絶えず増殖しうると考えられる。
【0024】
実施例4.N−アセチル−D−グルコサミンが微小異種構造変化を調節する動物試験
B16腫瘍細胞を、50匹のラットの後ろ脚上部に接種し、そしてそれらラットに、式(I)の化合物の5%水溶液を、連続7日間、1日3回、毎回1ml腹腔内注射した。最終的に、45匹のラットでは、充実性腫瘍が現れなかった。式(I)の化合物の投与を伴わない対照群では、多数の増殖性小体が、50匹のラットの内少なくとも40匹で、腫瘍細胞を接種後1〜3日以内に現れ;多数の未熟細胞が、3〜5日以内に現れ;そして最終的に、目に見える充実性腫瘍が、約10日以内に現れた。対照群と比較したところ、これが試験群で現れることはなく、式(I)の化合物は、微小異種構造変化を抑制しうるということが示された。
【0025】
N−アセチル−D−グルコサミンを、これら試験においてN−アセチル−D−グルコサミン塩酸塩で置き換えた場合(他の条件は変更しなかった)、対照試験と比較したところ、N−アセチル−D−グルコサミン塩酸塩も、微小異種構造変化を抑制する機能を示した。
【0026】
実施例5.全身性エリテマトーデスの処置のためのN−アセチル−D−グルコサミンの使用
明確な全身性エリテマトーデスを有する患者である Mrs. Liu に、式(I)の化合物のカプセル剤を、入院期間中に連続7日間、1日3回、毎回100mg投与した。その患者の症状は、ある程度軽減し、そして抗核抗体の血清力価は、1:160から1:40へと減少して、正常レベルに近づいた。
【0027】
実施例6.甲状腺機能亢進症の処置のためのN−アセチル−D−グルコサミンの使用
患者である Mr. Shen に、式(I)の化合物のカプセル剤を、下痢を処置する期間中に連続7日間、1日3回、毎回100mg投与した。驚くべきことに、この化合物は、甲状腺機能亢進症を処置するのにより良い作用を示すということが判明し、そして甲状腺機能亢進症の処置のための式(I)の化合物の治療的作用は、血清中のT3およびT4の試験によって確かめられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および全身性症状の処置および抑制におけるN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項2】
自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および全身性症状を処置するおよび抑制するための薬剤の製造におけるN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項3】
前記薬剤が、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射または経口投与に適する製剤である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
成人患者用の前記薬剤の用量が、活性成分に基づき1mg/日〜100000mg/日であり、そして前記薬剤を、1日に1回〜4回投与する、請求項2または請求項3に記載の使用。
【請求項5】
自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および全身性症状を処置するおよび抑制する方法であって、有効量のN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩を含む医薬組成物を患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
前記医薬組成物が、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射または経口投与に適する製剤である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
成人患者用の前記医薬組成物の用量が、活性成分に基づき1mg/日〜100000mg/日である、請求項5または請求項6に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および全身性症状の処置および抑制におけるN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項2】
自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および全身性症状を処置するおよび抑制するための薬剤の製造におけるN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項3】
前記薬剤が、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射または経口投与に適する製剤である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
成人患者用の前記薬剤の用量が、活性成分に基づき1mg/日〜100000mg/日であり、そして前記薬剤を、1日に1回〜4回投与する、請求項2または請求項3に記載の使用。
【請求項5】
自己免疫反応によって引き起こされる局所性病変および全身性症状を処置するおよび抑制するための医薬組成物であって、有効量のN−アセチル−D−グルコサミンまたはその薬学的に許容しうる塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射または経口投与に適する製剤である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
成人患者用の前記医薬組成物の用量が、活性成分に基づき1mg/日〜100000mg/日である、請求項5または請求項6に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2006−521296(P2006−521296A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504204(P2006−504204)
【出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【国際出願番号】PCT/CN2004/000275
【国際公開番号】WO2004/084913
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505362517)中国人民解放▲軍▼第三▲軍▼医大学 (2)
【出願人】(505362506)バイオ−ウエイヴ・インスティチュート・オブ・スツォウ・ハイ−テク・ニュー・ディストリクト・コーポレーション・リミテッド (2)
【出願人】(505362492)ベイジン・シノ−ホンコン・ダフ・サイエンス・アンド・テクノロジー・オブ・バイオウェイブ・カンパニー・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】