説明

自己回復性限流ヒューズ

【課題】誘電泳動力を用いることにより液体マトリックス中で導電性粒子を連鎖させて通電状態を確保する自己回復性限流ヒューズにおいて、過電流時の遮断動作をより確実にする。
【解決手段】非磁性材料の絶縁容器内に、非磁性材料の液体マトリックスを収容し、この液体マトリックスを介して互いに対向する一対の電極を設置する。液体マトリックス中には導電性粒子を流動分散させる。一対の電極間に固体粒子の連鎖により形成されるヒューズエレメントと直交する方向の磁界を発生させる磁界発生部を絶縁容器外部に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体マトリックス中で導電性粒子を連鎖させて通電状態を確保する一方、過電流時には確実に遮断動作を行うことのできる自己回復性限流ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パソコン等の電子機器では、二次電池用の保護素子として正の抵抗温度係数素子即ちPTC素子が用いられている。これら電子機器は、高機能化、長時間駆動化、効率向上化が望まれており、そのために二次電池の大容量化や高電圧化が要求されている。これらの要求に伴って、PTC素子の高電圧化も要求されている。現在、8V程度のPTC素子は実用化されているが、更なる高電圧化に際しては、オフ(OFF)状態である限流時の絶縁性能の向上、即ち、耐電圧の向上が必要である。また、従来のPTC素子は、マトリックスとして、セラミックス、ポリマー等の固体材料を用いたものが主流であり、例えば、ポリエチレン系PTC素子、チタン酸バリウム系PTC素子が用いられているのが現状である(特許文献1、2参照)。
【0003】
図7は、従来のPTC素子の基本動作の原理図である。(A)はオン状態を、(B)はオフ状態を示している。PTC素子は、セラミックス、ポリマー等の固体絶縁物即ち固体マトリックス中にフィラーとしての導電粒子が混入された構造である。通常は、図7(A)に示すように、導電粒子が接触して電極間を橋絡して導電パスが形成されて、オン(ON)状態となっている。一方、PTC素子に過電流が流入し、PTC素子が高温度状態になると、図7(B)に示すように、導電粒子の蒸発又は固体マトリックスの膨張により導電パスが分断され、抵抗が急激に上昇することになり、遮断・限流動作即ちオフ(OFF)状態になる。このように、固体マトリックスの中に導電粒子が存在している従来のPTC素子は、オフ(OFF)状態へは、マトリックスの膨張により導電フィラーのパスを切断することで実現する。
【0004】
しかしながら、現在、耐電圧の低いPTC素子は、携帯電話、コンピュータ用のリチウムイオン電池等の保護装置として広く使用されているが、電池の大容量化に伴い耐電圧の高い素子が要求されている。固体マトリックスでは、構造上、原理的に膨張時にクラックやボイドの発生がある。クラックやボイドは、その部分に気体が存在し、周りは高い誘電率を有する固体マトリックスであるため、電界が集中し、放電が発生し易いものになっている。固体マトリックスを用いたPTC素子は、上記の理由により気中放電が原因になって、材料が劣化し、復帰特性が悪化するという現象が発生することから、PTC素子の構造によっては、安心して使える8V以上の高電圧素子を作製するのは困難であるのが現状である。
【0005】
このため、本発明者らは、このような技術的な背景から、固体マトリックスと比べてクラックやボイドの発生が抑制できる液体マトリックスを使用する自己回復性限流ヒューズを出願した(特許文献3参照)。特許文献3の液体マトリックスを使用する自己回復性限流ヒューズは、クラックやボイドの発生を抑制することによって、耐電圧を向上させ、電圧印加で発生する固体導電粒子の誘電泳動力によって自己修復特性を実現する。これによって、固体導電粒子を液体マトリックスに混入即ち流動分散させることによって接触電気抵抗即ちオン(ON)抵抗を低減することができ、耐電圧向上で高い定格電圧を有する二次電池を保護し、適用範囲を拡大し、効率を向上させ、充電時間を短縮し、メンテナンスフリーを実現する。
【0006】
但し、特許文献3は、オン状態からオフ状態への動作に際して、過電流によるヒューズエレメントの溶断を利用する。即ち、液体マトリックス中で固体導電粒子を連鎖させて通電状態を確保していたオン状態で、電極間に過電流が流れると、液体マトリックス中でジュール熱が発生し、固体導電粒子が蒸発し、散開して遮断・限流動作が働いて遮断・限流状態になる。このように、固体導電粒子の蒸発を利用するため、特に、融点の高いヒューズエレメントを使用する場合には、オフ状態への移行が若干困難となる。また、特許文献3の自己回復性限流ヒューズは、非常用トリップ機能を有していない。
【特許文献1】特開平6−215903号公報
【特許文献2】特開2005−285999号公報
【特許文献3】特許第3955956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、係る問題点を解決して、誘電泳動力を用いることにより液体マトリックス中で導電性粒子を連鎖させて通電状態を確保する自己回復性限流ヒューズにおいて、過電流時の遮断動作をより確実にすることを目的としている。
【0008】
本発明は、自己回復性限流ヒューズの遮断動作として、素子に流れる電流と素子に印加される磁界及び電極とヒューズエレメント(導電性物体)の配置を工夫して、電流と磁界の相互作用(電磁力)によりヒューズエレメントを操作し、遮断動作を実現する。これによって、特に、融点の高いヒューズエレメントを使用する場合には効果的で不可欠な遮断手法を提供する。
【0009】
また、本発明は、非常用トリップ機能としても応用でき、素子の機能性(安全性)の向上にも貢献する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の自己回復性限流ヒューズは、非磁性材料の絶縁容器内に、非磁性材料の液体マトリックスを収容し、この液体マトリックスを介して互いに対向する一対の電極を設置する。液体マトリックス中には導電性粒子を流動分散させる。一対の電極間に導電性粒子の連鎖により形成されるヒューズエレメントと直交する方向の成分を有する磁界を発生させる磁界発生部を絶縁容器外部に備える。
【0011】
一対の電極間に導電性粒子の連鎖が形成されるオン状態では、一対の電極への電圧印加により液体マトリックス中の導電性粒子に作用する誘電泳動力によって導電性粒子が互いに連続して接続される。過電流時に、磁界発生部により発生する磁界がヒューズエレメントに流れる電流と作用して発生する電磁力が、ヒューズエレメントを切断するか、或いはヒューズエレメントを電極外に押し出してオフ状態とする。これによって、このオン状態とオフ状態を繰り返し行うことを可能にした自己回復性機能を有する。
【0012】
また、本発明の自己回復性限流ヒューズは、磁界発生部の磁界強度を変化させることのできる磁界強度変化装置を備え、かつ、この磁界強度変化装置は、自己回復性限流ヒューズと直列に備えた過電流検出部により検出された過電流、或いは、非常用トリップ入力部からの非常用トリップ信号又はオフ動作確認信号を受けて、磁界強度を大きく変化させることによりヒューズエレメントをオフ状態にする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のヒューズエレメント溶断以外の新しい手法の遮断原理に基づいて、融点の高いヒューズエレメント材料に対しての遮断を実施することができる。また、動作確認用や非常用トリップ機能としての安全性向上にも貢献でき、素子の適用範囲や応用範囲が広がる効果がある。
【0014】
本発明によれば、1)粒子を溶かさずに(溶けない粒子を使用した場合にも)オフ動作を行うことが可能となる、2)オフ動作を確認するための漏電ブレーカのテストボタンのようなリセット機構を付加することもでき、安全に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明の誘電泳動力を用いた自己回復性限流ヒューズの概略構成を例示する図であり、(A)はオン維持定常状態を示し、(B)及び(C)は過電流時及び切断時の動作をそれぞれ説明する図である。図示の自己回復性限流ヒューズは、非磁性材料の絶縁容器内に、非磁性材料の液体マトリックスを収容し、液体マトリックスを介して互いに対向する電極を設置する。絶縁容器は、所定の縦方向長さを有する断面円形状、或いは矩形状に構成し、一対の電極は、その絶縁容器の内側に固定されている。一対の電極には、それぞれ外部からの配線が接続されることになる。液体マトリックス中には、導電性を有する固体粒子を流動分散させると共に、絶縁容器外部に磁界発生部を備える。なお、以下、導電性粒子として固体粒子を用いた場合を例として説明するが、導電性粒子としては固体粒子に限らず、水銀などの導電性液体粒子を用いることができる。
【0016】
このような磁界発生部は、発生する磁界が、過電流によりヒューズエレメント(固体粒子の連鎖)に流れる電流と作用して発生する電磁力が、ヒューズエレメントを切断するか、ヒューズエレメントを電極外に押し出す方向に配置する。図1において、ヒューズエレメントと直交する方向の成分を有する磁界が紙面のおもて面から裏面方向に発生するように、磁界発生部は配置されている。この磁界は、ヒューズエレメントと直交する方向の成分が、十分な値を有していれば良いが、発生磁界をヒューズエレメントと直交させることにより効率よく作用させることができる。磁界発生部としては、永久磁石或いはコイルを用いることができる。また、この自己回復性限流ヒューズへの配線中に流れる電流により、磁界を発生するよう配線を位置決めすることができる。この際、設定された過電流値で、オフ動作させるのに必要な磁界が得られれば十分である。或いは、この配線により発生する磁界は、永久磁石或いは磁界発生コイルと組み合わせて用いることができる。磁界発生部により発生する磁界の強さは、それらと絶縁容器の間の相対位置を変えることにより、或いは磁界発生コイルの巻き数により行う。
【0017】
図1(A)に示すオン維持定常状態で、電源(図示省略)からの電力が、図示の自己回復性限流ヒューズを介して、負荷(図示省略)に供給されている。このため、この自己回復性限流ヒューズの電極間に電圧が印加されている。このとき、液体マトリックス中の固体粒子が導電性を有するために、この固体粒子には誘電泳動力FDEP が作用する。これによって、図1(A)に示すように、導電性を有する固体粒子が互いに連続して接続され、導電パス(ヒューズエレメント)を形成する。このとき、磁界発生部により紙面のおもて面から裏面方向に発生した磁界強度Bと、ヒューズエレメントに流れる電流Iとの相互作用により、そのいずれにも直交する方向の電磁力Fが働く。この電磁力Fは、電極間の距離に相当するヒューズエレメントの長さをLとして、F=IBLであることが知られているように、流れる電流値Iに比例する。それ故、磁界発生部の磁界強度B、及び液体マトリックスの粘度などを適切に予め設定しておくことにより、オン維持定常状態では、電磁力Fが、導電パスを切断する程には大きくならないようにしておく。
【0018】
図2には、液体マトリックス中における固体導電粒子に働く誘電泳動力FDEP が示されている。液体マトリックスに固体導電粒子を分散混入し、電極間に電圧を印加したオン状態では、水平方向成分FDEPrと垂直方向成分FDEPzとから成る誘電泳動力FDEPが固体導電粒子に作用する。即ち、液体マトリックス中の固体導電粒子には、図2に示すように、重力、粘性力、浮力、及び摩擦力が作用し、それによって、誘電泳動力FDEPが働くことになり、固体導電粒子に矢印Aの方向に移動動作が発現する。
【0019】
図1(A)に示すオン維持定常状態では、液体マトリックス中の固体粒子の誘電泳動力FDEP によって、固体粒子を効率よく電極間に収集即ち捕集し、固体粒子同士が連鎖する現象が発生し、固体粒子がパールチェーン化して導電パスが形成され、オン(ON)即ち通電状態になる。
【0020】
次に、図1(B)に示すように、自己回復性限流ヒューズに過電流が流れたとする。このとき、導電性を有する固体粒子に作用して、過電流に比例して発生する大きな電磁力Fが、固体粒子の連鎖により構成されるヒューズエレメントを切断するか、或いは、電極外に押し出す。
【0021】
図1(C)は、このようにして、ヒューズエレメントが切断された状態を示している。電流路は切断されているが、電極間に電源からの電圧は依然として印加されている。この状態では、液体マトリックス中で浮遊状態の固体粒子に誘電泳動力FDEP が働いて固体粒子が電極間に捕集されて橋絡即ち連鎖し、再び、図1(A)に示す通電即ちオン状態になる。
【0022】
このように、液体マトリックス中の固体粒子が電極間に捕集して元に復帰し、固体粒子が電極間でパールチェーン化して、オフ状態からオン状態へ変化し、また、固体粒子が連鎖したオン状態で、自己回復性限流ヒューズに過電流が流れると、オン状態からオフ状態へ変化する。このように、この自己回復性限流ヒューズは、上記の状態が繰り返し行われ、自己回復性機能を果たすことになる。
【0023】
図3は、本発明の誘電泳動力を用いた別の自己回復性限流ヒューズの概略構成を例示する図である。図示の自己回復性限流ヒューズは、L形状の一対の電極を用いる。これによっても、図1を参照して説明した自己回復性限流ヒューズと同様に機能する。電極形状は、スロープ、階段状等の電極間の距離が徐々にまたは急激に遠くなる形状にして、互いに対向する先端側において、少なくとも、電磁力Fが作用する側を切除した形状にして、液体マトリックスで満たす必要がある。これについて、さらに、図4を参照して説明する。
【0024】
図4(A)及び(B)は、それぞれ、図1及び図3に例示したものと同一のものである。また、図4(C)及び(D)は、不適切な電極形状を説明する図である。この不適切電極形状では、(C)及び(D)に示すいずれの例においても、電極が絶縁容器の端まであって、電極対向側でその間隔が一定となっている。このため、過電流時の電磁力Fが、図示の方向に固体粒子に作用しても、固体粒子の連鎖が一端に片寄ることがあっても、電極端から外れず、それ故、連鎖の切断が困難である。これに対して、図4(A)及び(B)に示す電極形状では、過電流時の電磁力Fにより、固体粒子の連鎖が電極端から外れて、切断されることになる。
【0025】
このように、電極形状は、不平等電界を形成し、粒子が電極と接触しやすくて、接触抵抗が高くならない形状、例えば、スロープ、階段状等の徐々に高くなる形状にして、一対の電極が互いに対向する面側の側面において、絶縁容器との間に間隔を形成する。
【0026】
電極材質は、高融点材料単体、又は高融点材料を含む合金とし、耐アーク性や電食に強い材料から作製することができる。例えば、ガラス基板上に、又は金属基板上に形成された酸化膜上に、Al、Cu、Ag、Au、Ni、Crから選ばれる一種又は複数種の導電性金属から成る薄膜によって構成することができ、その他、W、Ti、ステンレス鋼等の高融点材料を用いたり、添加して構成し、繰り返し使用を可能にすることができる。
【0027】
図5は、磁界発生について説明する図である。磁界発生部としては、上述したように、永久磁石或いは電磁石を用いることができる。この場合、磁界Bは、図5において、紙面に垂直に、例えば表側から裏側に向けて発生するように配置する。また、自己回復性限流ヒューズへの配線中に流れる電流により、磁界を発生するよう配線を位置決めすることができる。この場合、簡単には、自己回復性限流ヒューズと並行にした配線により磁界を発生させることができるが、さらに十分な電磁力を確保するためには、図示したように、ヒューズエレメントを中心として、円筒形状の鉄心を配置し、その周囲を1巻き或いは複数巻き回るように配線したコイルにより磁界を発生させる。
【0028】
図6は、本発明の自己回復性限流ヒューズをオフ状態にするために、磁界強度を変化させる遮断装置を例示する図である。図示したように、電源供給ライン内に、図1或いは図3を参照して前述した自己回復性限流ヒューズと、過電流検出部が直列に挿入されている。さらに、この自己回復性限流ヒューズに付加されている磁界発生部の磁界強度を変化させることのできる磁界強度変化装置が備えられている。
【0029】
過電流が過電流検出部で検出されたときに、磁界強度変化装置は、磁界強度を大きく変化させる。或いは、過電流が流れていない場合も、非常用トリップ入力部からの非常用トリップ信号又はオフ動作確認信号などを受けて、遮断ができるように構成する。この磁界強度の変化は、永久磁石の場合はその位置を変化させることにより、或いは、コイルの場合はコイル位置又はコイル電流を変化させることにより行うことができる。自己回復性限流ヒューズの固体粒子に作用する電磁力F(=IBL)は、磁界発生部の磁界強度Bにも比例する。それ故に、非常時に磁界強度Bを大きく変化させることにより自己回復性限流ヒューズを外部よりオフさせることが可能となる。
【0030】
また、自己回復性限流ヒューズは、例えば、地震や衝突等の機械的な衝撃や振動に対して固体粒子の互いの接続状態のパールチェーンが切れることで、電流遮断を行う機械的な衝撃に対する保護素子として利用することができ、防災・衝撃保護用素子として発揮させることができる。また、自己回復性限流ヒューズについて、オフ状態からオン状態への復帰速度の調節は、目的に応じて、粘性力の異なる液体マトリックスの種類の選択、及び電極のギャップ間の距離と電極の形状による電界値の設定によって対応することができる。
【0031】
本発明の自己回復性限流ヒューズは、固体粒子に、磁界発生部からの発生磁界を作用させるために、液体マトリックスとしては、非磁性体であることが条件となる。例えば、純水を含む脱イオン化水、絶縁性オイル、絶縁性有機高分子材料、絶縁性有機高分子材料ゲルから選ばれる一種又は複数種から成るマトリックスで構成することができる。また、液体マトリックスは、液体窒素等の冷媒を用いて粒子や電極等の金属を冷却することによって、オン抵抗を低減することができる。
【0032】
また、液体マトリックスとしては、完全に流動性のある液体だけでなく、ゲル状物質を使用することも考えられる。ゲル状物質を使用して自己回復性限流ヒューズとすることは、固体粒子の捕集効率の低下原因となる粒子の遠方への散開を防止でき、実使用での液漏れ等の問題を無くす利点がある。
【0033】
また、フィラーを構成する固体粒子は、オン状態時に電流路を形成する導電性材料である必要がある。加えて、オフ状態からオン状態に復帰させる際に誘電泳動力を作用させるために、導電性材料である必要がある。例えば、固体粒子材料として、錫(Sn)粒子、亜鉛(Zn)粒子、インジウム(In)粒子、ビスマス(Bi)粒子等の中から選択される一種又は複数種と、カーボン粒子、銅(Cu)粒子、アルミニウム(Al)粒子、銀(Ag)粒子、金(Au)粒子等から選択される一種又は複数種とから成る材料を用いることができる。また、例えば、液体材料として、水銀(Hg)を用いることができる。
【実施例】
【0034】
本発明の自己回復性限流ヒューズの数値例は、以下の通りである。ヒューズ素子サイズは、30×16mm、定常電流は、数mAから数10Aである。0.5A−7Aの範囲の過電流で遮断を確認した。電極4間ギャップ長の一例は、狭い場合で、30μm、広い場合で、150μmとした。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の誘電泳動力を用いた自己回復性限流ヒューズの概略構成を例示する図である。
【図2】液体マトリックス中における固体導電粒子に働く誘電泳動力FDEP を説明する図である。
【図3】本発明の誘電泳動力を用いた別の自己回復性限流ヒューズの概略構成を例示する図である。
【図4】(A)及び(B)は、それぞれ、図1及び図3に例示したものと同一のものであり、(C)及び(D)は、不適切な電極形状を説明する図である。
【図5】磁界発生について説明する図である。
【図6】本発明の自己回復性限流ヒューズをオフ状態にするために、磁界強度を変化させる遮断装置を例示する図である。
【図7】従来のPTC素子の基本動作の原理図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性材料の絶縁容器内に、非磁性材料の液体マトリックスを収容し、この液体マトリックスを介して互いに対向する一対の電極を設置し、
該液体マトリックス中には導電性粒子を流動分散させ、
前記一対の電極間に導電性粒子の連鎖により形成されるヒューズエレメントと直交する方向の成分を有する磁界を発生させる磁界発生部を前記絶縁容器外部に備えた、
ことから成る自己回復性限流ヒューズ。
【請求項2】
前記一対の電極間に導電性粒子の連鎖が形成されるオン状態では、前記一対の電極への電圧印加により液体マトリックス中の導電性粒子に作用する誘電泳動力によって導電性粒子が互いに連続して接続され、かつ、過電流時に、前記磁界発生部により発生する磁界がヒューズエレメントに流れる電流と作用して発生する電磁力が、ヒューズエレメントを切断するか、或いはヒューズエレメントを電極外に押し出してオフ状態とし、かつ、このオン状態とオフ状態を繰り返し行うことを可能にした自己回復性機能を有する請求項1に記載の自己回復性限流ヒューズ。
【請求項3】
前記一対の電極は、スロープ或いは階段状にして、電極間の距離が徐々にまたは急激に遠くなる形状にした請求項1に記載の自己回復性限流ヒューズ。
【請求項4】
前記一対の電極は、高融点材料単体又は高融点材料を含む合金とし、耐アーク性や電食に強い材料から作製した請求項1に記載の自己回復性限流ヒューズ。
【請求項5】
前記磁界発生部の磁界強度を変化させることのできる磁界強度変化装置を備え、かつ、この磁界強度変化装置は、自己回復性限流ヒューズと直列に備えた過電流検出部により検出された過電流、或いは、非常用トリップ入力部からの非常用トリップ信号又はオフ動作確認信号を受けて、磁界強度を大きく変化させることにより前記ヒューズエレメントをオフ状態にする請求項1に記載の自己回復性限流ヒューズ。
【請求項6】
前記磁界発生部として、永久磁石、磁界発生コイル、或いはこの自己回復性限流ヒューズへの配線中に流れる電流により発生する磁界を単独で、若しくはこれらを組み合わせて用いる請求項1に記載の自己回復性限流ヒューズ。
【請求項7】
前記磁界発生部により発生する磁界の強さは、該磁界発生部と前記絶縁容器の間の相対位置を変えることにより、或いは磁界発生コイルに流す電流値を変えることにより行う請求項6に記載の自己回復性限流ヒューズ。
【請求項8】
前記磁界発生部により発生する磁界の強さを変化させることにより、設定遮断電流を変化させる請求項1に記載の自己回復性限流ヒューズ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−117271(P2009−117271A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291555(P2007−291555)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【出願人】(000102429)エス・オー・シー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】