説明

自己流動性水硬性組成物

【課題】本発明は、速硬性、作業特性(高流動性、長可使時間)および硬化特性(高強度、高耐摩耗性、高平滑性、着色可能性)に優れ、セルフレベリング材として好適に使用できる自己流動性水硬性組成物の提供を目的とする。
【解決手段】アルミナセメント、石膏および高炉スラグよりなる水硬性成分、硫酸アルミニウムおよびリチウム塩よりなる凝結調整剤、減水剤、および、高分子エマルジョンよりなる自己流動性水硬性組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般建造物の床下地材調製、または、工場、倉庫、駐車場、ガソリンスタンド、厨房等における着色可能な床仕上げ材に使用されるセルフレベリング材として優れた特性を有する自己流動性水硬性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】セルフレベリング材として使用される水硬性組成物の具備すべき第一の条件が、自己水平性を確保するために必要な高い流動性であることは当然であるが、早期開放を可能にするに十分な速硬性を有していることおよび、施工作業を容易にする面から適度の可使時間が取れることも要求される。更に、硬化後の硬化体の特性例えば、強度、表面性状、寸法安定性、耐水性を含めた耐化学薬品性が高いことも必要である。セルフレベリング材として使用される水硬性組成物については既に多くの技術が開示されているが、セルフレベリング材の具備すべきこの複数の要件を満たすため、開示技術の多くが、急硬性の水硬性成分に、流動化剤、凝結調整剤を加えて流動性および凝結速度を制御したものに更に、増粘剤、消泡剤等複数の混和剤を添加した複雑な組成を有している。
【0003】例えば、特開昭61−155241号公報には、フッ酸無水石膏、高炉スラグおよび珪酸カルシウムより成る水硬性成分に、凝結促進材として硫酸ソーダ、硫酸カリ、硫酸アルミニウムを添加し、更に減水剤、消泡剤、保水剤、高分子エマルジョンを添加して成るセルフレベリング材が開示されている。また、特開平5−9049号公報には、各種ポルトランドセメントまたは混合セメントに、凝結促進材として炭酸マグネシウム、カルシウムアルミネート、硫酸アルミニウムから選ばれる一種以上を添加し、更に減水材、増粘剤を加えた組成を有する組成物が開示されている。特公平6−8197号公報においても、高炉スラグ、カルシウムアルミネートおよび石膏よりなる水硬性成分に、凝結速度をコントロールするためにオキシカルボン酸(塩)、炭酸アルカリまたは重炭酸アルカリ、燐酸塩等を凝結遅延剤として添加したものに更に高分子エマルジョンを添加したものが開示されている。更に、特開平8−217508号公報においては、セメントにカルシウムアルミネートとアルカリまたはアルカリ土類金属硫酸塩よりなる急硬剤と、オキシカルボン酸(塩)系の有機物及び/または水酸化カルシウム、アルミン酸塩、炭酸アルカリ等の無機化合物を凝結遅延剤として添加して凝結速度を調整したものに公知の各種流動化剤、消泡剤を加えたものが開示されている。
【0004】今迄に開示された技術はそれなりに改善効果は認められるものの、速硬性、作業特性、硬化体特性全ての面を勘案すると更なる改良が必要であり、特に、他の特性を犠牲にすることなく施工当日の軽歩行および表面仕上げを可能にする材料の開発が強く望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、速硬性、作業特性(高流動性、長可使時間)および硬化特性(高強度、高耐摩耗性、高平滑性、着色可能性)に優れ、セルフレベリング材として好適に使用できる自己流動性水硬性組成物の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者等は、急硬性を本質的に有しており且つ硬化特性の優れた水硬性成分と、適当な凝結調整剤、高分子エマルジョンおよび流動性改良剤より成る組成物が、上記課題の解決された組成物となることを知り、本発明を完成した。すなわち、本発明は、アルミナセメント、石膏および高炉スラグよりなる水硬性成分、硫酸アルミニウムおよびリチウム塩よりなる凝結調整剤、高分子エマルジョン、および、減水剤よりなる自己流動性水硬性組成物に関する。以下に、本発明を詳しく説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】セルフレベリング材として使用される自己流動性水硬性組成物には、水硬性成分により大別すると、石膏系とセメント系の二種が存在する。石膏系は、寸法安定性が良く、短時間で硬化すると云う長所があるものの、剥離および錆の発生が容易に生じまた耐水性が低いと云う欠点を有している。一方、セメント系は、高耐水性、高表面硬度という長所を有しているが、普通ポルトランドセメント系では硬化速度が低く、乾燥収縮が大きいと云う欠点を有しており、速硬性セメント系では硬化速度面では改善されるものの、流動性が低く、作業性が低いと云う欠点を有している。本発明においては、アルミナセメント、石膏および高炉スラグよりなる水硬性成分を使用することで、互いの欠点を補いこの問題を解決している。
【0008】アルミナセメントは、潜在的に急硬性を有しており、硬化後は耐化学薬品性、耐火性に優れた硬化体を与える。また、潜在水硬性を有する高炉スラグの存在により、その欠点である硬化体強度の経時的な低下も抑制される。更に、硫酸根の共存下では、カルシウムサルフォアルミネート水和物等を生成し、硬化体中水分減少速度が増し、施工当日の仕上げ材施工を可能にする。アルミナセメントは鉱物組成が異なるものが数種知られ市販されているが、何れも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することが出来る。
【0009】石膏は本質的に急硬性であり、硬化後の寸法安定性を保持するのに必要な成分であるが、その添加量は、アルミナセメント100重量部当たり、25〜120重量部、好ましくは40〜100重量部とするのが良い。25重量部より少ないと寸法安定性が低下し、120重量部より多くなると耐水性が低下し、水による異常膨張が生じることがあり、好ましくない。また、石膏は、無水、半水等の各石膏がその種類を問わず、一種または二種以上の混合物として使用できる。
【0010】高炉スラグは、乾燥収縮が小さいことから、硬化体の耐クラック性を高めるだけでなく、アルミナセメントの硬化体強度を向上させる効果も有している。また、アルミナセメント水和物の転移に起因する強度低下を抑制する効果も有している。高炉スラグの量は、アルミナセメント100重量部に対し、15〜400重量部、好ましくは50〜300重量部とする。15重量部より少ないと、収縮が大きくなり、また、400重量部より大になると、強度が逆に低下することがある。ここで述べた成分より成る水硬性成分は潜在的に急硬性を有しており、次に述べる凝結調整剤を添加して、凝結速度を施工に適した条件にコントロールすることにより、施工後1時間半で軽歩行が可能な初期強度を得ることができ、4時間後には、仕上材施工に取り掛かることが可能となる。
【0011】アルミナセメント、石膏、高炉スラグより成る水硬性成分には、更にポルトランドセメントを添加することもできる。低価格のポルトランドセメントの添加は、セルフレベリング材のコスト減に効果があるが、その量が多過ぎると流動性が低下するため、添加量は、アルミナセメント100重量部に対して40重量部より少なくするのが良い。
【0012】セルフレベリング材の具備すべき他の重要な要件は、適度の可使時間が取れることである。本発明では、前記した水硬性成分に、凝結促進材としてのリチウム塩と、凝結遅延材としての硫酸アルミニウムを同時に添加することにより、可使時間の調整が可能なことを見出した。アルミナセメントの水和反応に対するリチウム塩の一種としての炭酸リチウムと、硫酸アルミニウムの添加効果を示す例を図1に示す。図1おいて、横軸は成分混練後の経過時間を、縦軸は水和反応に伴う発熱量を表わしており、発熱ピークはその時間において水和反応すなわち凝結が進行していることを示す。アルミナセメントだけでは最大発熱ピークは300分以降に存在し凝結が非常に遅いが、炭酸リチウムの添加で最大発熱ピークは約90分にシフトし、凝結が大幅に促進されることが分かる。しかし、約20分後の発熱ピークも大きく、この発熱を生み出す凝結反応による流動性の低下が大きく、十分な可使時間の確保は困難である。それに対し、更に硫酸アルミニウムを添加すると、最大ピークは長時間側に30分程度シフトし凝結は若干遅延されるが、20分後の発熱ピークも小さくなり、この発熱ピークを生み出す凝結反応による流動性の低下が抑制され、十分な可使時間の確保が可能になる。
【0013】リチウム化合物が、アルミナセメントの凝結促進作用を示すことは知られているが、その効果は非常に大きく、これは、少量の添加でも十分な効果が得られる利点となる反面、均一な混合が困難なことと、可使時間を施工に適した条件内で再現性良くコントロールするのが困難であるというマイナス要因ともなっている。一方、硫酸アルミニウムについては、各種セメント、石膏等水硬性物質の凝結促進材としての作用を有していることが知られている。例えば、前述した特開昭61−155241号および同平5−9049号公報には、凝結促進材としての硫酸アルミニウムの添加が記載されている。この硫酸アルミニウムがアルミナセメントを主成分とする水硬性成分の凝結遅延材として働くこと、および、凝結促進材であるリチウム塩との併用により、水硬性成分の凝結速度コントロールに大きな効果を発揮することについて知見を得たのは本発明が始めてである。
【0014】本発明で使用可能なリチウム塩としては、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム等の無機酸塩および酢酸リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウム、グリコール酸リチウム等の有機酸塩を挙げることが出来るが、中でも、炭酸リチウムの使用が特に好ましい。一方、硫酸アルミニウムとしては、無水または各種含水量の硫酸アルミニウムの他、硫酸アルミニウムを含む各種ミョウバンを挙げることが出来る。
【0015】上述のように、本発明においては、水硬性成分に凝結促進材としてのリチウム塩と、凝結遅延材としての硫酸アルミニウムを同時に添加することにより、可使時間の調整を行ない、セルフレベリング材としての使用を容易にする。従って、凝結促進剤と凝結遅延剤の比、すなわち、硫酸アルミニウムと炭酸リチウムの比は、本発明のセルフレベリング材の特性を左右する大きな因子である。本発明においては、硫酸アルミニウムとリチウム塩の比をモル比で、1〜50の範囲にするのが良い。リチウム塩に対する硫酸アルミニウムがモル比で1より小さいと、凝結が速すぎ、自己流動性が低下するため、可使時間が短くなりすぎて施工に支障を来たし、また、50より大では、速硬性が低下し、早期開放が困難になるからである。
【0016】本発明では、リチウム化合物と硫酸アルミニウを併用する凝結調整剤を使用することにより、着色が可能という効果も付与することが出来る。すなわち、リチウム化合物による凝結促進により材料分離の低減が可能となるため、色ムラが発生し難くなる。また、もし色ムラが発生しても、硫酸アルミニウム添加により十分な流動保持時間が確保できるため、トンボ掛けによる表面処理作業でその除去が容易である。
【0017】前記硫酸アルミニウム、リチウム塩に加えて、凝結遅延作用が従来知られている、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸等のオキシカルボン酸、または、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩の一種または二種以上を添加しても良い。オキシカルボン酸またはその塩の添加量は、水硬性成分100重量部当たり0.5重量部以下とする。添加量が多くなると、流動性の低下や硬化不良およびそれに伴うブリージング水の発生により表面不良が生じる場合がある。
【0018】セルフレベリング材が具備すべき最も基本的な要因は高い流動性である。材料分離を抑制し、且つ、高強度の硬化体を得るには水/水硬性成分比を下げる必要があるが、水/水硬性成分を低くしても高い流動性を確保するため、減水剤の添加が必要である。特に、本発明における水硬性成分の一つであるアルミナセメントの発現強度は、水/セメント比の影響を大きく受けることから、減水剤を使用して水/水硬性成分比を小さくすることが不可欠である。減水剤は、ナフタレン系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の市販のものが、その種類を問わず使用できるが、量的には、余り少ないと十分な効果が発現せず、また多すぎても添加量に見合った効果は期待できず不0経済であるだけでなく、硬化不良を招くので、その添加量は水硬性成分100重量部当たり0.1〜5重量部とするのが良い。
【0019】本発明における自己流動性水硬性組成物は、更に高分子エマルジョンを添加することにより、下地コンクリートとの接着性および耐クラック性が向上するだけでなく、硬化体の耐摩耗性を上げることができ、仕上げ材としての使用が可能になる。高分子エマルジョンは、例えば、エチレン−酢酸ビニル、スチレン−ブタジエン、アクリロニトリル−ブダジエン等の共重合体、または、ポリブテン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル等のホモ重合体等の市販のものがその種類を問わず使用できる。高分子エマルジョンの添加量は、水硬性成分100重量部当たり1〜25重量部とするのが良い。少なすぎると十分な効果が発現しないし、多すぎると流動性の低下を招くだけでなく、空気泡を連行して硬化体の表面状態を悪くし、強度低下が生じることがある。
【0020】前記の水硬性成分、凝結調整剤、減水剤および高分子エマルジョンを必須成分とすることにより、流動性に優れているだけでなく可使時間を10分から30分の間に調整することが可能であり、且つ、硬化体特性の優れたセルフレベリング材を得ることが出来るが、以上の必須成分に加えて、必要に応じて、消泡剤、増粘剤を添加するのが好ましい。消泡剤、増粘剤の添加は、硬化体表面における骨材分離、気泡の発生を抑制し、硬化体外観の改善に好ましい効果を与える。消泡剤としては、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル系等合成物質または植物由来の天然物質等、公知のものが使用可能であり、また、増粘剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系、カゼイン、ゼラチン、ペクチン等の蛋白質系、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のラテックス系、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアモド、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー系等の公知のものが使用可能である。消泡剤、増粘剤の添加量は、水硬性成分100重量部に対して、それぞれ、2重量部以下および1重量部以下とするのが良い。消泡剤を2重量部より多く加えても消泡効果の更なる増加は認められず、増粘剤の量が多すぎると流動性の低下を招く恐れがある。
【0021】本発明の自己流動性水硬性組成物には、更に、フライアッシュ、石灰石粉、シリカ質粉等、公知の増量材を添加することが出来る。増量材の添加により、流動性が改善され好ましい結果を与えるが、添加量が多すぎると、強度発現性の低下を招くので、その添加量は水硬性成分100重量部当たり200重量部以下とするのが望ましい。また、そのサイズは45mm以下とするのが効果の点から好ましい。
【0022】本発明による自己流動性水硬性組成物は、水と混練したセメントペーストとして使用することも出来るが、各種骨材および/または増量材を添加して使用するのがその特性を活かした使い方である。骨材としては珪砂、川砂、海砂、高炉スラグ、各種砕石が使用できるがその径は2mm以下とするのが望ましい。また、骨材の添加量は、水硬性成分100重量部当たり、200重量部以下とするのが望ましい。200重量部より大となると流動性の低下を招くだけでなく、強度発現性が低下することがある。
【0023】
【実施例】以下に具体例を示して、本発明の内容を更に詳しく説明する。
実施例1〜6及び比較例1〜7(1)使用原料 各例の実施に当たっては、次の原料を使用した。
アルミナセメント :ブレーン比表面積3,000cm2/g モノカルシウムアルミネート含有量45重量% 石膏 :II型無水石膏、ブレーン比表面積4,000cm2/g 高炉スラグ :ブレーン比表面積4,500cm2/g 硫酸アルミニウム :無水物 市販品 炭酸リチウム :市販品 減水剤 :メラミン系分散剤、市販品 高分子エマルジョン:エチレンー酢酸ビニル共重合体樹脂粉末、市販品 増粘剤 :メチルセルローズ系増粘剤、市販品 消泡剤 :シリコン系消泡剤、市販品 骨材 :6号珪砂
【0024】(2)水硬性組成物、モルタル試験体の調製水硬性組成物成分として、構成成分量を種々変えた水硬性成分100重量部に、所定量の、硬化速度調整剤、減水剤および高分子エマルジョン、更に必要に応じて増粘剤および消泡剤を加えたものに更に、骨材100重量部および水44重量部を加えて3分間混練したものをモルタル試験体とした。各例における各成分の配合割合を表1に示す。
【0025】(3)モルタルの特性の測定生成モルタル試験体について以下の測定を行ない、自己流動性水硬性組成物の特性を評価した。各測定項目には、セルフレベリング材としての実用性の観点から表2に示した合否の判定基準を設けた。
フロー値:JASS 15M−103に準拠して測定した。
圧縮強度:JIS R 5201に示される4×4×16mmの型枠にモルタルを型詰めして20℃、湿度80%で3時間気中養生した後脱型し、更に気中(20℃、湿度80%)または水中(20℃、湿度80%の気中で1日間養生したものについて更に20℃水中で養生)で所定期間追加養生した成型体について、JIS R 5201記載の方法に則って測定した。
長さ変化率:JIS R 5201に示される4×4×16mmの型枠にモルタルを型詰めして20℃、湿度80%で1日間気中養生した後脱型して得られた成型体について、JISS A 1125に示されるコンパレーター法により測定した。
乾燥日数:混練したモルタルを300×300mmコンクリート板上へ厚さ10mmで流し込み硬化後、ケット水分計にて表面水分を測定。表面水分が8%以下になるまでに要した日数を乾燥日数とした。
摩耗損量:混練したモルタルを、幅100mm×長さ7mmの型枠に厚さ10mmで充填し、20℃、湿度80%で7日間気中養生した後、脱型して得られた成型体を試料とし、デーバー摩耗試験機(試験条件:摩耗輪型式H−22 過重250g、回転数2000回)にて摩耗損失量を測定した。
色ムラ:水硬性成分100重量部に対しFe2 3 系赤色顔料2重量部を追加成分として添加したモルタルを300×300mmコンクリート板上へ厚さ10mmで流し込み、20℃、湿度65%で28日養生した後、目視による観察を行なった。色ムラの観察されないものを良、観察されるものを不良とした。
モルタル特性の測定結果を表2に示す。
【0026】
【表1】


【0027】
【表2】


【0028】表2の結果は、本発明の範囲内に含まれる組成を有する組成物は、全ての項目について判定基準をクリアーしておりセルフレべリング材として優れた特性を有しているのに対し、本発明の範囲を外れる組成を有する組成物では、ある項目では判定基準をクリアーしても他の項目で判定基準をクリアーできず、複数の機能を要求されるセルフレベリング材としては適当でないことを示している。
【0029】
【発明の効果】本発明の自己流動性水硬性組成物は、セルフレベリング材として十分な流動性を有しているだけでなく、十分な長さの流動保持時間が確保できることから打設作業性に優れているだけでなく、速硬性、速乾性にも優れていることから工期短縮、例えば、施工当日の軽歩行・表面仕上げも可能になる。加えて、耐摩耗性、寸法安定性特性、強度等硬化体特性の面でも優れ、直接仕上げ材としても使用可能である。また、色むらなく着色することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 炭酸リチウム、硫酸アルミニウムが、アルミナセメントの水和反応に及ぼす効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】アルミナセメント、石膏および高炉スラグよりなる水硬性成分、硫酸アルミニウムおよびリチウム塩よりなる凝結調整剤、高分子エマルジョン、および、減水剤よりなる自己流動性水硬性組成物。
【請求項2】水硬性成分が、アルミナセメント100重量部に対して、石膏25〜120重量部および高炉スラグ15〜400重量部よりなる、請求項1に記載の自己流動性水硬性組成物。
【請求項3】リチウム塩が炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウムである、請求項1または2に記載の自己流動性水硬性組成物。
【請求項4】リチウム塩に対する硫酸アルミニウムのモル比が1〜50である、請求項1から3までの何れかに記載の自己流動性水硬性組成物。
【請求項5】硫酸アルミニウムとリチウム塩の合量が、水硬性成分100重量部に対して0.05〜5重量部である、請求項1から4までの何れかに記載の自己流動性水硬性組成物。
【請求項6】高分子エマルジョンの量が、水硬性成分100重量部に対して1〜25重量部である、請求項1から5までの何れかに記載の自己流動性水硬性組成物。
【請求項7】減水剤の量が、水硬性成分100重量部に対して0.1〜5重量部である、請求項1から6までの何れかに記載の自己流動性水硬性組成物。
【請求項8】アルミナセメント、石膏および高炉スラグよりなりアルミナセメント100重量部に対する割合が石膏25〜120重量部、高炉スラグ15〜400重量部である水硬性成分、硫酸アルミニウムおよび炭酸リチウムよりなり硫酸アルミニウムと炭酸リチウムの合量が、水硬性成分100重量部に対して0.05〜5重量部であり、且つ炭酸リチウムに対する硫酸アルミニウムのモル比が1〜50である凝結調整剤、水硬性成分100重量部に対して1〜25重量部の高分子エマルジョン、および、水硬性成分100重量部に対して0.1〜5重量部の減水剤よりなる自己流動性水硬性組成物。
【請求項9】請求項1から8までの何れかに記載の自己流動性水硬性組成物に、更に、増粘剤、消泡剤および増量材から選ばれる一種または二種以上を添加して成る自己流動性水硬性組成物。
【請求項10】請求項1から9までの何れかに記載の自己流動性水硬性組成物に、更に、骨材および水を添加して成る、モルタルまたはコンクリート。

【図1】
image rotate