説明

自然エネルギーによって発電された電力の変換装置

【課題】簡易構成で風力等の変動に適切に対応して自然エネルギーを有効利用することが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置101は、発電装置102から受けた交流電圧を第1直流電圧に変換する整流回路1と、第1直流電圧を第2直流電圧に変換する直流電圧変換回路2と、第2および第3直流電圧を受けるための共通の入力端子T1を有し、入力端子T1において受けた直流電圧に基づいて負荷103への交流電圧を生成するインバータ回路4と、整流回路1の出力電流が所定値未満となるように、かつ入力端子T1の電圧が第1所定電圧値以下となるように、直流電圧変換回路2を制御する制御回路7と、入力端子T1の電圧が第1所定電圧値より小さい第2所定電圧値未満の場合には第3直流電圧を出力し、第2所定電圧値以上の場合には直流電圧変換回路2の出力電流に基づいて充電を行なう電池3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の変換装置に関し、特に、自然エネルギーによって発電された電力の変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力等、自然エネルギーによって発電を行なう発電装置が開発されている。たとえば、特許文献1−3には、風力によって発電を行なう発電装置が開示されている。すなわち、発電された交流電圧を整流回路によって整流して直流電圧に変換し、変換した直流電圧をインバータによって交流電圧に変換して負荷に供給する。このような構成により、自然エネルギーの変動によって負荷への供給電力が変動することを防ぐことができる。
【特許文献1】特表2001−522218号公報
【特許文献2】特開平11−62814号公報
【特許文献3】特表2005−538673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1−3記載の発電装置等、風力によって発電を行なう発電装置では、風が弱くなると発電電力が低下する。このため、従来の発電装置はたとえば蓄電池を備え、発電装置の発電電力が不足すると蓄電池を放電させて電力の不足分を補う。
【0004】
しかしながら、特許文献1−2記載の発電装置では、発電電力が不足して発電装置の出力電圧が低下しすぎると発電装置から負荷へまったく電力が供給されなくなってしまう。
【0005】
また、特許文献3記載の発電装置では、風が弱くなっても発電電力を負荷へ供給し続けることが可能であるが、発電機の同期動作および非同期動作を切り替える構成等が必要となるため、発電装置の構成が複雑化してしまう。
【0006】
それゆえに、本発明の目的は、簡易な構成で風力等の変動に適切に対応して自然エネルギーを有効利用することが可能な電力の変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電力の変換装置は、自然エネルギーによって回転する回転機を有し、回転機の回転に基づいて電力を発生する発電装置が外部に配置され、発電装置からの電力を変換して負荷に供給する、自然エネルギーによって発電された電力の変換装置であって、発電装置から受けた交流電圧を第1の直流電圧に変換する整流回路と、整流回路から受けた第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換する直流電圧変換回路と、第3の直流電圧の出力および充電を行なう電池と、第2の直流電圧および第3の直流電圧を受けるための共通の入力端子を有し、入力端子において受けた直流電圧に基づいて負荷に供給すべき交流電圧を生成するインバータ回路と、整流回路の出力電流が所定値未満となるように、かつ入力端子の電圧が第1の所定電圧値以下となるように、直流電圧変換回路の変換する第2の直流電圧の電圧値を制御する制御回路とを備え、電池は、入力端子の電圧が第1の所定電圧値より小さい第2の所定電圧値未満の場合には第3の直流電圧を出力し、入力端子の電圧が第2の所定電圧値以上の場合には直流電圧変換回路の出力電流に基づいて充電を行なう。
【0008】
好ましくは、直流電圧変換回路は、スイッチ素子を含み、整流回路から受けた第1の直流電圧をスイッチ素子でスイッチングすることにより第2の直流電圧に変換し、制御回路は、整流回路の出力電流が所定値未満となるように、かつ入力端子の電圧が第1の所定電圧値以下となるようにスイッチ素子のスイッチングを制御する。
【0009】
好ましくは、直流電圧変換回路は、整流回路から受けた第1の直流電圧が所定電圧値より大きい場合には、整流回路から受けた第1の直流電圧を降圧して所定電圧値以下の直流電圧を生成する降圧回路と、降圧回路から受けた直流電圧を昇圧して第2の直流電圧を生成する昇圧回路とを含む。
【0010】
好ましくは、直流電圧変換回路は、第1端において第1の直流電圧を受けるコイルと、第1端がコイルの第1端に結合される第1のコンデンサと、第1端がコイルの第2端に結合されるスイッチ素子と、アノードがスイッチ素子の第1端に結合されるダイオードと、第1端がダイオードのカソードおよび入力端子に結合され、第2端がスイッチ素子の第2端に結合される第2のコンデンサと、第1端がスイッチ素子の第2端と第2のコンデンサの第2端とに結合され、第2端が第1のコンデンサの第2端に結合される電流検出抵抗とを含み、制御回路は、電流検出抵抗の第2端における電圧に基づいて整流回路の出力電流を検出し、整流回路の出力電流が所定値未満となるように、かつ入力端子の電圧が第1の所定電圧値以下となるようにスイッチ素子のスイッチングを制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成で風力等の変動に適切に対応して自然エネルギーを有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る電力変換システムの構成を示す回路図である。
図1を参照して、電力変換システム201は、電力変換装置101と、風力発電装置102とを備える。電力変換装置101は、整流回路1と、直流電圧変換回路2と、蓄電池3と、インバータ回路4と、ローパスフィルタ5と、直流電圧制御回路6と、インバータ制御回路7とを備える。直流電圧変換回路2は、降圧回路11と、昇圧回路12とを含む。
【0014】
風力発電装置102は、自然エネルギーである風力によって回転する回転機を有し、回転機の回転に基づいて交流電力を発生し、発生した交流電圧を電力変換装置101へ出力する。
【0015】
電力変換装置101は、風力発電装置102から受けた交流電圧を直流電圧に変換し、変換した直流電圧を所定周波数および所定振幅の交流電圧に変換して負荷103へ出力する。
【0016】
より詳細には、整流回路1は、風力発電装置102から受けた交流電圧を直流電圧(第1の直流電圧)に変換する。
【0017】
直流電圧変換回路2は、直流電圧制御回路6から受けた制御信号に基づいて、整流回路1から受けた直流電圧を新たな直流電圧(第2の直流電圧)に変換する。より詳細には、降圧回路11は、整流回路1から受けた直流電圧が所定電圧値より大きい場合には、整流回路から受けた直流電圧を降圧して所定電圧値以下の直流電圧を生成する。なお、降圧回路11は、整流回路1から受けた直流電圧が所定電圧値以下である場合には、整流回路から受けた直流電圧をそのまま出力してもよいし、ある程度降圧して出力してもよい。昇圧回路12は、降圧回路11から受けた直流電圧が所定電圧値以下である場合には、降圧回路11から受けた直流電圧を昇圧して所定電圧値以上の直流電圧を生成する。
【0018】
蓄電池3は、直流電圧(第3の直流電圧)をインバータ回路4へ出力する。また、蓄電池3は、直流電圧変換回路2から受けた直流電流に基づいて充電を行なう。
【0019】
直流電圧制御回路6は、整流回路1の出力電流すなわち風力発電装置102の出力電流が所定値未満となるように、直流電圧変換回路2の変換する直流電圧の電圧値を制御する。
【0020】
インバータ回路4は、インバータ制御回路7から受けた制御信号に基づいて、直流電圧変換回路2から受けた直流電圧および蓄電池3から受けた直流電圧を負荷103に供給すべき交流電圧に変換する。
【0021】
ローパスフィルタ5は、インバータ回路4から受けた交流電圧に含まれる高周波ノイズを除去する。ローパスフィルタ5を通過した交流電圧は負荷103へ出力される。
【0022】
インバータ制御回路7は、ローパスフィルタ5を通過した交流電圧が所定周波数および所定振幅になるように制御信号を生成し、インバータ回路4へ出力する。
【0023】
ここで、具体的に各電圧の数値例をあげると、整流回路1は、風力発電装置102から受けた45V〜225Vの三相交流電圧を変換して70V〜330Vの直流電圧を出力する。
【0024】
降圧回路11は、整流回路1から受けた直流電圧を降圧して25V〜150Vの直流電圧を出力する。
【0025】
昇圧回路12は、降圧回路11から受けた直流電圧を昇圧して205Vの直流電圧をインバータ回路4へ出力する。
【0026】
インバータ回路4は、直流電圧変換回路2から受けた直流電圧および蓄電池3から受けた直流電圧から負荷103に供給すべき振幅100Vの交流電圧を生成する。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
図2を参照して、電力変換装置101は、整流回路1と、直流電圧変換回路2と、蓄電池3と、インバータ回路4と、ローパスフィルタ5と、直流電圧制御回路6と、インバータ制御回路7と、抵抗R2と、ダイオードD2とを備える。直流電圧変換回路2は、降圧回路11と、昇圧回路12とを含む。インバータ回路4は、NチャネルMOSトランジスタM11〜M14と、コイルL2と、トランスTR1と、コンデンサC3と、入力端子T1およびT2とを含む。直流電圧制御回路6は、発電電流監視回路21と、昇圧電圧監視回路22と、充電電流監視回路23と、PWM制御信号生成回路24とを含む。昇圧回路12は、コンデンサ(第1のコンデンサ)C1と、コンデンサ(第2のコンデンサ)C2と、コイルL1と、電流検出抵抗R1と、NチャネルMOSトランジスタ(スイッチ素子)M1と、ダイオードD1とを含む。
【0028】
コイルL1は、第1端が降圧回路11の出力に結合される。コンデンサC1は、第1端がコイルL1の第1端に結合される。NチャネルMOSトランジスタM1は、ドレイン(第1端)がコイルL1の第2端に結合される。ダイオードD1は、アノードがNチャネルMOSトランジスタM1のドレインに結合される。コンデンサC2は、第1端がダイオードD1のカソードおよび入力端子T1に結合され、第2端がNチャネルMOSトランジスタM1のソースおよび入力端子T2に結合される。電流検出抵抗R1は、第1端がNチャネルMOSトランジスタM1のソースとコンデンサC2の第2端とに結合され、第2端がコンデンサC1の第2端に結合される。
【0029】
インバータ制御回路7は、ローパスフィルタ5を通過した交流電圧が所定周波数および所定振幅になるように制御信号CONT1〜CONT4を生成し、NチャネルMOSトランジスタM11〜M14へ出力する。
【0030】
NチャネルMOSトランジスタM11〜M14は、制御信号CONT1〜CONT4に基づいてそれぞれスイッチングを行ない、コンデンサC2の両端電圧である直流電圧を交流電圧に変換してトランスTR1の一次巻線に出力する。
【0031】
トランスTR1の二次巻線に誘起された交流電圧は、ローパスフィルタ5を通過して負荷103へ出力される。
【0032】
図3は、風力発電装置102の出力特性を示すグラフ図である。
図3を参照して、一般的に、風力発電装置は、ある値以上の電流を出力させると、出力電圧が急激に低下する。すなわち、一般的に、回転機を有する風力発電機は、たとえば風が弱まって発電電力が低下すると、発電電圧も低下する。また、一般的な電源装置、たとえばインバータ等の変換装置は常に負荷に必要な電力を供給するように動作するため、電源装置の入力電圧すなわち風力発電機の発電電圧が低下すると、さらに電源装置の入力電流すなわち風力発電機の出力電流が増加することになる。このため、風が弱まって発電電力および発電電圧が低下した状態において、図3に示すように風力発電機からある値以上の電流を流そうとすると、風力発電機の出力電流はさらに急激に低下してしまい、電力の供給ができなくなってしまう。
【0033】
そこで、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、直流電圧制御回路6は、整流回路1の出力電流すなわち風力発電装置102の出力電流が電流値IA未満となるように、直流電圧変換回路2の変換する直流電圧の電圧値を制御する。つまり、直流電圧制御回路6は、風力発電装置102の出力電流を制限することにより、過電流による整流回路1の出力電圧の低下を防ぐ。
【0034】
通常時、すなわち風力発電装置102の発電電力の方が負荷103の消費電力より大きい場合には、電流検出抵抗R1を通して流れる電流は、電流制限を行なうべき電流値IAより小さい。したがって、直流電圧制御回路6は電流制限を行なわない、つまり、入力端子T1およびT2間の電圧すなわちコンデンサC2の両端電圧を低下させない。
【0035】
そして、直流電圧制御回路6は、入力端子T1およびT2間の電圧すなわちコンデンサC2の両端電圧を、蓄電池3が充電を行なう電圧になるように直流電圧変換回路2を制御する。たとえば、蓄電池3の公称電圧が180Vである場合、直流電圧制御回路6は、コンデンサC2の両端電圧が205Vになるように直流電圧変換回路2を制御する。より詳細には、昇圧電圧監視回路22は、コンデンサC2の両端電圧Vcを監視して、電圧Vcが205V以下であるか否かをPWM制御信号生成回路24へ通知する。PWM制御信号生成回路24は、コンデンサC2の両端電圧Vcが205Vより大きい場合には、NチャネルMOSトランジスタM1のゲートへ出力する制御信号CONT5のデューティ比を小さくする。そうすると、所定期間におけるNチャネルMOSトランジスタM1のオン期間が短くなり、コンデンサC2の両端電圧Vcが小さくなる。一方、PWM制御信号生成回路24は、コンデンサC2の両端電圧Vcが205Vより小さい場合には、制御信号CONT5のデューティ比を大きくし、コンデンサC2の両端電圧Vcを大きくする。
【0036】
このとき、直流電圧変換回路2は、蓄電池3を充電しながらインバータ回路4に電力を供給している。すなわち、直流電圧変換回路2の出力電流が、蓄電池3およびインバータ回路4へ流れる。
【0037】
ここで、蓄電池3の充電時は、直流電圧変換回路2からの直流電流がダイオードD2を流れずに抵抗R2を流れる。充電電流監視回路23は、抵抗R2の両端電圧を監視する。充電電流監視回路23は、抵抗R2の両端電圧が所定電圧より大きい場合には、過充電であると判断してPWM制御信号生成回路24へ通知する。PWM制御信号生成回路24は、充電電流監視回路23から過充電である旨の通知を受けた場合には、昇圧電圧監視回路22の監視結果に関わらず、制御信号CONT5のデューティ比を小さくする。そうすると、所定期間におけるNチャネルMOSトランジスタM1のオン期間が短くなり、コンデンサC2の両端電圧Vcが小さくなり、直流電圧変換回路2から蓄電池3への直流電流が小さくなり、過電流が解消する。
【0038】
一方、電力不足時、すなわち風力発電装置102の発電電力が低下して負荷103の消費電力より小さくなることにより風力発電装置102の発電電圧が低下した場合、あるいは負荷103の消費電力が増加することによりインバータ回路4への供給電力が増加した場合には、電流検出抵抗R1を通して流れる電流が増加し、電流制限を行なうべき電流値IAより大きくなる。
【0039】
電流検出抵抗R1を通して流れる電流が電流値IAより大きくなると、直流電圧制御回路6は電流制限を行なう。すなわち、直流電圧制御回路6は、コンデンサC2の両端電圧が小さくなるように直流電圧変換回路2を制御する。
【0040】
そして、コンデンサC2の両端電圧が低下してたとえば180V未満となると、蓄電池3は放電し、負荷103に供給すべき電力に対する発電電力の不足分をインバータ回路4に供給する。
【0041】
ここで、コンデンサC2の両端電圧をVcとし、インバータ回路4の入力電流をIinvとし、昇圧回路12が降圧回路11から受ける直流電圧をViとし、昇圧回路12が降圧回路11から受ける直流電流をIiとし、蓄電池3の放電電流をIbとすると、以下の式が成立する。
【0042】
Vc×Iinv=Vi×Ii+Vc×Ib・・・(1)
すなわち、発電電力の低下により直流電圧Viが低下する、あるいは負荷103の消費電力の増大によりインバータ回路4への供給電力が増加すると、電流検出抵抗R1を通して流れる電流すなわち風力発電装置102の出力電流が大きくなる。ここで、電流検出抵抗R1のインバータ回路4側の端子は零電位である。このため、電流検出抵抗R1の降圧回路11側の端子電圧は負電圧となる。発電電流監視回路21は、電流検出抵抗R1の降圧回路11側の端子電圧が小さくなり、電流値IAに対応する電圧値以下になると、降圧回路11の出力電流すなわち整流回路1の出力電流が電流値IA以上になったと認識してPWM制御信号生成回路24へ通知する。
【0043】
PWM制御信号生成回路24は、発電電流監視回路21から通知を受けて、制御信号CONT5のデューティ比を小さくする。そうすると、所定期間におけるNチャネルMOSトランジスタM1のオン期間が短くなり、コンデンサC2の両端電圧Vcが小さくなる。
【0044】
また、蓄電池3は、コンデンサC2の両端電圧Vcが小さくなることから、式(1)を満たすように放電電流Ibを大きくする。そうすると、電流検出抵抗R1を通して流れる電流が電流値IA未満となる。つまり、蓄電池3は、発電電力の不足分を補う。
【0045】
図4は、風力発電装置102の発電電圧および発電電流と電力変換装置101の出力電圧および出力電流とを測定した結果を示す図である。図4は、負荷103の負荷抵抗(消費電力)が400Wである場合を示している。ここで、風力発電装置102の出力電圧(発電電圧)は三相交流電圧であり、周波数は約400Hzである。ただし、風力発電装置102の出力電圧の周波数は、風力発電装置102の発電電圧値に応じて変動する。また、電力変換装置101の出力電圧は周波数が60Hzの単相交流電圧である。
【0046】
図4を参照して、たとえば風力発電装置102の発電電圧が90Vであり、発電電流が2.86Aの場合には、発電電力は90×2.86×√3≒445[W]となる。この場合、直流電圧変換回路2は、蓄電池3を充電しながらインバータ回路4に電力を供給する。風力発電装置102の発電電圧が105V〜225Vの場合も発電電力が400Wを超えるため、90Vの場合と同様となる。
【0047】
また、風力発電装置102の発電電圧が75Vであり、発電電流が2.62Aの場合には、発電電力は75×2.62×√3≒340[W]となる。この場合、負荷103の消費電力に対して風力発電装置102の発電電力が不足するが、蓄電池3が放電することにより、風力発電装置102の発電電力の不足分を補う。風力発電装置102の発電電圧が0V〜60Vの場合も発電電力が400W未満となるため、75Vの場合と同様となる。
【0048】
したがって、電力変換装置101は、0V〜225Vの広範囲の発電電圧において安定して振幅約100Vの交流電圧を生成することができる。
【0049】
ここで、一般的な電力変換装置の動作可能範囲は、定格入力電圧の±10%の範囲である。たとえば、一般的な電力変換装置の定格入力電圧が150Vである場合、所望の出力である振幅100Vの交流電圧を生成できるのは発電電圧が135V〜165Vの範囲にある場合のみである。一方、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、風力発電装置102の発電電圧が45V〜225Vの範囲において1.52A以上の発電電流が風力発電装置102から電力変換装置101へ供給されている。すなわち、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、広範囲の発電電圧において自然エネルギーを有効利用することができる。
【0050】
ところで、特許文献1−2記載の発電装置では、発電電力が不足して発電装置の出力電圧が低下しすぎると発電装置から負荷へまったく電力が供給されなくなってしまう。また、特許文献3記載の発電装置では、風が弱くなっても発電電力を負荷へ供給し続けることが可能であるが、発電機の同期動作および非同期動作を切り替える構成等が必要となるため、発電装置の構成が複雑化してしまう。
【0051】
しかしながら、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、直流電圧制御回路6は、風力発電装置102の出力電流が所定値未満となるように、かつインバータ回路4の入力電圧すなわち入力端子T1およびT2間の電圧が第1の所定電圧値となるように、直流電圧変換回路2の変換する直流電圧の電圧値を制御する。蓄電池3は、インバータ回路4の入力電圧が第1の所定電圧値より小さい第2の所定電圧値未満の場合には直流電圧を出力し、インバータ回路4の入力電圧が第2の所定電圧値以上の場合には直流電圧変換回路2の出力電流に基づいて充電を行なう。
【0052】
このような構成により、風力発電装置の発電電力が低下して風力発電装置の発電電力が不足しても、あるいは負荷の消費電力が増加して風力発電装置の発電電力が不足しても、インバータ回路を介して負荷に発電電力を供給し続けることができるとともに、発電機の同期動作および非同期動作を切り替える構成を備えない簡易な構成とすることができる。したがって、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、簡易な構成で風力等の変動に適切に対応して自然エネルギーを有効利用することができる。
【0053】
また、本発明の実施の形態に係る電力変換装置では、降圧回路11は、整流回路1から受けた直流電圧が所定電圧値より大きい場合には、整流回路から受けた直流電圧を降圧して所定電圧値以下の直流電圧を生成する。昇圧回路12は、降圧回路11から受けた直流電圧が所定電圧値以下である場合には、降圧回路11から受けた直流電圧を昇圧して所定電圧値以上の直流電圧を生成する。このような構成により、前述のように一般的な電力変換装置と比べてより広範囲の発電電圧において安定して所定の交流電圧を生成することができる。本発明は、発電電力が気象条件等によって大きく変動する風力等、自然エネルギーによって発電された電力を変換する場合に特に有効である。
【0054】
なお、本発明の実施の形態に係る電力変換装置は蓄電池3を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。蓄電池に限らず、充放電可能な電池として用いることが可能なデバイスであればよい。たとえば、電力変換装置が蓄電池の代わりに大容量のコンデンサ等の素子を備える構成であってもよい。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力変換システムの構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図3】風力発電装置の出力特性を示すグラフ図である。
【図4】風力発電装置102の発電電圧および発電電流と電力変換装置101の出力電圧および出力電流とを測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 整流回路、2 直流電圧変換回路、3 蓄電池、4 インバータ回路、5 ローパスフィルタ、6 直流電圧制御回路、7 インバータ制御回路、11 降圧回路、12 昇圧回路、21 発電電流監視回路、22 昇圧電圧監視回路、23 充電電流監視回路、24 PWM制御信号生成回路、101 電力変換装置、102 風力発電装置、103 、201 電力変換システム、C1 コンデンサ(第1のコンデンサ)、C2 コンデンサ(第2のコンデンサ)、C3 コンデンサ、L1,L2 コイル、R1,R2 抵抗、D1,D2 ダイオード、T1,T2 入力端子、M1 NチャネルMOSトランジスタ(スイッチ素子)、M11〜M14 NチャネルMOSトランジスタ、TR1 トランス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギーによって回転する回転機を有し、前記回転機の回転に基づいて電力を発生する発電装置が外部に配置され、前記発電装置からの電力を変換して負荷に供給する、自然エネルギーによって発電された電力の変換装置であって、
前記発電装置から受けた交流電圧を第1の直流電圧に変換する整流回路と、
前記整流回路から受けた第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換する直流電圧変換回路と、
第3の直流電圧の出力および充電を行なう電池と、
前記第2の直流電圧および前記第3の直流電圧を受けるための共通の入力端子を有し、前記入力端子において受けた直流電圧に基づいて前記負荷に供給すべき交流電圧を生成するインバータ回路と、
前記整流回路の出力電流が所定値未満となるように、かつ前記入力端子の電圧が第1の所定電圧値以下となるように前記直流電圧変換回路の変換する前記第2の直流電圧の電圧値を制御する制御回路とを備え、
前記電池は、前記入力端子の電圧が前記第1の所定電圧値より小さい第2の所定電圧値未満の場合には前記第3の直流電圧を出力し、前記入力端子の電圧が前記第2の所定電圧値以上の場合には前記直流電圧変換回路の出力電流に基づいて充電を行なう、自然エネルギーによって発電された電力の変換装置。
【請求項2】
前記直流電圧変換回路は、スイッチ素子を含み、前記整流回路から受けた前記第1の直流電圧を前記スイッチ素子でスイッチングすることにより前記第2の直流電圧に変換し、
前記制御回路は、前記整流回路の出力電流が所定値未満となるように、かつ前記入力端子の電圧が第1の所定電圧値以下となるように前記スイッチ素子のスイッチングを制御する請求項1記載の自然エネルギーによって発電された電力の変換装置。
【請求項3】
前記直流電圧変換回路は、
前記整流回路から受けた前記第1の直流電圧が所定電圧値より大きい場合には、前記整流回路から受けた前記第1の直流電圧を降圧して前記所定電圧値以下の直流電圧を生成する降圧回路と、
前記降圧回路から受けた直流電圧を昇圧して前記第2の直流電圧を生成する昇圧回路とを含む請求項1記載の自然エネルギーによって発電された電力の変換装置。
【請求項4】
前記直流電圧変換回路は、
第1端において前記第1の直流電圧を受けるコイルと、
第1端が前記コイルの第1端に結合される第1のコンデンサと、
第1端が前記コイルの第2端に結合されるスイッチ素子と、
アノードが前記スイッチ素子の第1端に結合されるダイオードと、
第1端が前記ダイオードのカソードおよび前記入力端子に結合され、第2端が前記スイッチ素子の第2端に結合される第2のコンデンサと、
第1端が前記スイッチ素子の第2端と前記第2のコンデンサの第2端とに結合され、第2端が前記第1のコンデンサの第2端に結合される電流検出抵抗とを含み、
前記制御回路は、前記電流検出抵抗の第2端における電圧に基づいて前記整流回路の出力電流を検出し、前記整流回路の出力電流が所定値未満となるように、かつ前記入力端子の電圧が第1の所定電圧値以下となるように前記スイッチ素子のスイッチングを制御する請求項1記載の自然エネルギーによって発電された電力の変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−191780(P2008−191780A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23352(P2007−23352)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(594126218)株式会社松永製作所 (1)
【出願人】(504368413)オーハツ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】