説明

自転車用リアハブ

【課題】精度よく駆動力を計測可能であって、駆動力計測部の組み立てを容易にする。
【解決手段】自転車用リアハブ10は、ハブ軸20と、駆動部22と、ハブシェル24と、少なくとも一つの第1対向部54と、少なくとも一つの第2対向部56と、駆動力計測部26と、を備える。駆動部22は、ハブ軸20に回転自在に支持され、スプロケット集合体を装着可能である。ハブシェル24は、ハブ軸20に回転自在に支持され、駆動部22の回転が伝達される。第1対向部54は、駆動部22に設けられる。第2対向部56は、ハブシェル24に設けられ第1対向部54と対向可能である。駆動力計測部26は、第1対向部54および第2対向部56と接触可能に設けられる圧力センサを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブ、特に、自転車の後輪のハブを構成する自転車用リアハブに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車用リアハブは、後輪の回転中心に配置されるハブ軸と、ハブ軸回りに回転自在に装着されるハブシェルと、ハブシェルに軸方向に隣接して配置されるフリーホイールと、を備えている。フリーホイールは、チェーンに噛み合うスプロケットの回転をハブシェルに伝達する。このフリーホイールとハブシェルとの間にライダーの駆動力を測定可能な駆動力測定部が配置される自転車用リアハブが、従来知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の自転車用リアハブは、フリーホイールとハブシェルとを連結する連結部材を有する。連結部材は、円筒形状に形成され、一端部にスプロケットが装着され、他端部がハブシェルと連結される。連結部材には、その連結部の捩れを検出するための歪みゲージが設けられ、連結部の捩れ量が検出される。この計測された捩れ量により、ライダーの駆動力を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6418797号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のリアハブでは、歪みゲージを連結部に直接貼り付けており、たとえば貼り付けるための接着剤の厚みを均一にする必要があるため、組立てることが難しい。
【0006】
本発明の課題は、精度よく駆動力を計測可能であって、駆動力計測部の組み立てを容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る自転車用リアハブは、ハブ軸と、駆動部と、ハブシェルと、少なくとも一つの第1対向部と、少なくとも一つの第2対向部と、駆動力計測部と、を備える。駆動部は、ハブ軸に回転自在に支持され、駆動力伝達部材を装着可能である。ハブシェルは、ハブ軸に回転自在に支持され、駆動部の回転が伝達される。第1対向部は、駆動部に設けられる。第2対向部は、ハブシェルに設けられ第1対向部と対向可能である。駆動力計測部は、第1対向部および第2対向部と接触可能に設けられる圧力センサを有する。
【0008】
この自転車用リアハブでは、駆動部の回転がハブシェルに伝達されるとき、第1対向部と第2対向部とに接触可能な圧力センサに作用する圧力が駆動力(トルク)に応じて変化する。この圧力の変化による信号により駆動力を検出できる。ここでは、圧力センサによる圧力の変化で駆動力を計測できるので、駆動力計測部の組み立てが容易である。
【0009】
発明2係る自転車用リアハブは、発明1に記載の自転車用リアハブにおいて、ハブシェルは、軸方向の一端部と他端部とを有し、第2対向部は、ハブシェルの駆動力伝達部材側の一端部に設けられる。この場合には、駆動力伝達部材に近接した位置で駆動部からハブシェルに駆動力が伝達されるので、構成をコンパクトにすることができる。
【0010】
発明3に係る自転車用リアハブは、発明1または2に記載の自転車用リアハブにおいて、第1対向部および第2対向部のハブ軸回りの位置を調整する位置調整機構をさらに備える。この場合には、圧力センサに接触する第1対向部と第2対向部のハブ軸回りの相対位置を調整できるので、さらに計測精度が高くなる。
【0011】
発明4に係る自転車用リアハブは、発明1から3のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、第2対向部は、第1対向部の回転駆動方向の下流側に近接して設けられる。
【0012】
発明5に係る自転車用リアハブは、発明1から4のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、第1対向部は、径方向外側に延びるアーム部を有する。この場合には、第1対向部を第2対向部とを対向させやすい。
【0013】
発明6に係る自転車用リアハブは、発明1から5のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、第2対向部は、ハブシェルの内周部から突出する。この場合には、第1対向部を第2対向部とを対向させやすい。
【0014】
発明7に係る自転車用リアハブは、発明1から6のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、第1対向部は、駆動部の外周面から突出し、第2対向部は、ハブシェルの内周部から突出する。この場合には、第1対向部を第2対向部とさらに対向させやすい。
【0015】
発明8に係る自転車用リアハブは、発明1から7のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、ハブシェルに第1対向部に対向して設けられる第3対向部をさらに備え、第2対向部と前記第3対向部の間に前記第1対向部が設けられる。この場合には、第1対向部が第2対向部および第3対向部に挟まれるので、第1対向部と第2対向部との初期位置を安定させることができる。
【0016】
発明9に係る自転車用リアハブは、発明1から8のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、第1対向部および第2対向部は、ハブ軸の周方向に間隔を隔てて複数設けられる。これにより、圧力を複数箇所で検出できるので、駆動力の計測精度が向上する。
【0017】
発明10に係る自転車用リアハブは、発明1から9のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、圧力センサの出力に基づく情報を無線により外部に送信する無線送信部をさらに備える。圧力センサがハブ軸まわりに回転しても、その出力を外部に取り出すことが容易となる。
【0018】
発明11に係る自転車用リアハブは、発明1から10のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、圧力センサに電力を供給する電源をさらに備える。この場合には、電源が設けられるので、リアハブと別体で電源を設ける必要がない。
【0019】
発明12に係る自転車用リアハブは、発明11に記載の自転車用リアハブにおいて、電源は電池である。この場合には、電源の構成が簡素になる。
【0020】
発明13に係る自転車用リアハブは、発明11に記載の自転車用リアハブにおいて、電源は発電機である。この場合には、自転車が走行していると発電するため、外部からの充電または電池の交換が不要になる。
【0021】
発明14に係る自転車用リアハブは、発明1から13のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、駆動部は、ハブ軸に回転自在に支持される第1部材と、第1部材に回転自在に支持され、駆動力伝達部材を装着可能な第2部材と、第2部材の自転車の進行方向の回転を第1部材に伝達可能なワンウェイクラッチと、を有する。この場合には、自転車の進行方向の回転だけがハブシェルに伝達される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、圧力センサによる圧力の変化で駆動力を計測できるので、駆動力計測部の組み立てが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による自転車用リアハブの半截断面図。
【図2】自転車用リアハブの要部断面図。
【図3】図1の切断面線III−IIIから見た断面図。
【図4】第2実施形態の図2に相当する図。
【図5】図4の切断面線V−Vから見た断面図。
【図6】第3実施形態の図2に相当する図。
【図7】図5の切断面線VII−VIIから見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
図1に示すように、本発明の第1実施形態による自転車用リアハブ10は、自転車のフレームの後部に設けられるハブ軸装着部102に装着可能である。リアハブ10は、ハブ軸20と、駆動部22と、ハブシェル24と、第1対向部54と、第2対向部56と、第3対向部57と、位置調整機構59と、駆動力計測部26と、無線送信部28と、を備える。ハブシェル24は、ハブ軸20に第1軸受46により回転自在に支持される。駆動部22は、ハブ軸20に第2軸受47により回転自在に支持される。駆動力計測部26は、ライダーの駆動力を測定可能である。無線送信部28は、測定された駆動力に関する情報を無線送信する。無線送信された駆動力に関する情報は、たとえば自転車のハンドル部に装着可能な図示しないサイクルコンピュータに表示される。なお、サイクルコンピュータには、自転車の速度、クランクの回転速度(ケイデンス)、走行距離等の情報も表示される。
【0025】
<ハブ軸>
ハブ軸20は、クイックレリーズ機構29が装着される中空の軸本体30と、軸本体30の第1端部(図2の左側の端部)に装着される第1ロックナット32と、軸本体30の第2端部(図2右側の端部)に装着される第2ロックナット34と、を有する。第1ロックナット32および第2ロックナット34にハブ軸装着部102が装着可能となっている。ここでは、第1ロックナット32および第2ロックナット34がハブ軸装着部102に装着される構成を記載しているが、軸本体30がフレームにハブ軸装着部102に装着される構成としてもよい。
【0026】
図2に示すように、軸本体30の第1端部の内周面には、雌ネジ部30aが形成される。軸本体30の第1および第2端部の外周面には、第1雄ネジ部30bおよび第2雄ネジ部30cがそれぞれ形成される。第1ロックナット32は、雌ネジ部30aに螺合する雄ねじ部を有し、軸本体30にねじ込んで固定される。第2ロックナット34は、第2雄ネジ部30cに螺合する雌ねじ部を有し、軸本体30にねじ込んで固定される。
【0027】
<駆動部材>
駆動部22は、いわゆるフリーホイールと呼ばれる部材を含んで構成される。駆動部22は、ハブ軸20に回転自在に支持される第1部材40と、第1部材40の外周側に配置される第2部材42と、第1部材40と第2部材42との間に配置されるワンウェイクラッチ44と、を有する。
【0028】
第1部材40は、第2軸受47によりハブ軸20に回転自在に支持される筒状の部材である。第2軸受47は、第2内輪体47aと、第2外輪体47bと、複数の第2転動体47cと、を有する。第2内輪体47aは、外周部にねじが形成され、軸本体30の第2雄ネジ部30cにねじ込んで固定される。第2外輪体47bは、内周部にねじが形成され、第1部材40の外周面に形成される雄ねじ部にねじ込んで固定される。複数の第2転動体47cは、第2内輪体47aおよび第2外輪体47bの間に周方向に間隔を隔てて設けられる。第2転動体47cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第2転動体47cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0029】
第1部材40は、ワンウェイクラッチ44のクラッチ爪44aが収納される凹部40aを外周部に備える第1筒部40bを有する。第1部材40の第1端部(図2の左側の端部)は、ハブシェル24の内周側まで延びている。第1部材40は、第1筒部40bの第1端部側(図2の左側の端部)に、第1筒部40bよりも大径の第2筒部40cを有する。第1筒部40bと第2筒部40cとの境界部分の外周面には、第3軸受48を構成する第3玉押し面48aが形成される。第2筒部40cの外周面には、ハブシェル24を駆動部22に回転自在に支持するための第5軸受50の第5玉押し面50aが形成される。
【0030】
第2部材42は、第3軸受48および第4軸受49により第1部材40に対して回転自在に支持される筒状部材である。第3軸受48は、前述した第3玉押し面48aと、第3玉受け面48bと、複数の第3転動体48cとによって形成される。第3玉受け面48bは、第2部材42の第1端部(図2の左側の端部)の内周面に形成される。複数の第3転動体48cは、第3玉押し面48aと第3玉受け面48bとの間に周方向に間隔を隔てて設けられる。第3転動体48cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第3転動体48cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0031】
第4軸受49は、第2外輪体47bの外周面に形成された第4玉押し面49aと、第4玉受け面49bと、複数の第4転動体49cとによって形成される。第4玉受け面49bは、第2部材42のハブ軸方向の中間部の内周面に形成される。複数の第4転動体49cは、第4玉押し面49aと第4玉受け面49bとの間に周方向に間隔を隔てて設けられる。第4転動体49cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第4転動体49cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0032】
第2部材42は、図1に示すように、外周面にスプロケット集合体80を装着するスプロケット装着部42aを有する。スプロケット集合体80は、第2部材42と一体的に回転する。スプロケット集合体80は、駆動力伝達部材の一例である。スプロケット装着部42aは、たとえば、外周部に周方向に間隔を隔てて配置された凸部または凹部を有するスプラインを有する。スプロケット集合体80は、図1に示すように、歯数が異なる複数(たとえば9個)のスプロケット80a〜80iを有する。スプロケット集合体80のいずれかのスプロケットに噛み合うチェーン81により、図示しないクランクの回転が駆動部22に伝達される。ここでは、スプロケット装着部42aに複数のスプロケットが装着されるが、スプロケット装着部42aに装着されるスプロケットの数は、1つであってもよい。
【0033】
図2に示すように、ワンウェイクラッチ44は、第2部材42の自転車の進行方向の回転だけを第1部材40に伝達するために設けられる。これにより、クランクの進行方向の回転だけがハブシェル24に伝達される。またハブシェル24の進行方向の回転は第2部材42に伝達されない。ワンウェイクラッチ44は、凹部40aに第1姿勢および第2姿勢に揺動自在に設けられるクラッチ爪44aと、第2部材42の内周面に形成されたラチェット歯44bと、クラッチ爪44aを付勢する付勢部材44cと、を有する。クラッチ爪44aは第1姿勢でラチェット歯44bに接触し、第2姿勢でラチェット歯44bから離脱する。付勢部材44cは、第1部材40に形成された環状溝に装着される。付勢部材44cは、金属線材をC字状に湾曲して形成されたバネ部材であり、クラッチ爪44aを第1姿勢側に付勢する。
【0034】
<ハブシェル>
ハブシェル24は、ハブ軸方向で分割可能な構造である。ハブシェル24は、図2に示すように、第1端部(図2の左側の端部)が第1軸受46によりハブ軸20の軸本体30に回転自在に支持される。ハブシェルの第2端部(図2の右側の端部)は、前述したように第5軸受50により駆動部22を介してハブ軸20の軸本体30に回転自在に支持される。第1軸受46は、内周面にねじが形成され、軸本体30の第1雄ネジ部30bにねじ込んで固定される第1内輪体46aと、第1外輪体46bと、複数の第1転動体46cと、を有する。第1転動体46cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第1転動体46cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0035】
第5軸受50は、前述した第5玉押し面50aと、ハブシェル24の第2端部の内周部にたとえば圧入固定された第5外輪体50bと、複数の第5転動体50cと、を有する。第5転動体50cは、第5玉押し面50aと第5外輪体50bとの間に周方向に間隔を隔てて配置される。第5転動体50cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第5転動体50cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0036】
ハブシェル24の外周部には、自転車の後輪のスポークを連結するための第1ハブフランジ24aおよび第2ハブフランジ24bがハブ軸20の軸方向に間隔を隔てて環状に突出して形成される。
【0037】
<第1対向部>
第1対向部54は、図2および図3に示すように、駆動部22の第1部材40の第1端部に設けられる。第1対向部54は、第1部材40の外周部から外方に突出し、ここでは第2筒部40cから径方向外側に突出して設けられる。第1対向部54は、第2筒部40cの外周部からハブシェル24の内周面に向けて延びるアーム部54aを有する。なお、第1対向部54は、少なくとも一つあればよい。第1対向部54は、第5軸受50の外輪体50よりも半径方向の外方まで延びる。第1対向部54は、駆動部22と一体に形成されている。第1実施形態では、第1対向部54は、周方向に180度間隔を隔てて2個設けられる。
【0038】
<第2対向部>
第2対向部56は、第1対向部54の矢印Aで示す回転方向の下流側に近接し、かつ第1対向部54に対向して設けられる。矢印Aで示す回転方向は、自転車が前進するときに回転する方向である。第2対向部56は、ハブシェル24の第2端部側(図2の右側の端部)に設けられる。第2対向部56は、第5軸受50に近接して設けられる。第2対向部56は、ハブシェル24の内周部から駆動部22に向けて突出する突出部56aを有する。第1対向部54のアーム部54aと第2対向部56の突出部56aとの、回転方向で相互に対向する対向面は、は平行に配置されるのが好ましい。第2対向部56は、第1対向部54と同じ数設けられる。第2対向部56は、ハブシェル28と一体に形成されている。
【0039】
<第3対向部>
第3対向部57は、ハブシェル24に第1対向部54に対向して設けられる。第3対向部57は、ハブシェル26の内周部から突出する。第3対向部57は、第1対向部54を挟んで第2対向部56と逆側に配置される。したがって、第2対向部56と第3対向部57の間に第1対向部54が設けられる。第3対向部57は、第1対向部54の矢印Aで示す回転方向の上流側の表面に接触するか、あるいはこの表面から所定の距離離反して配置される。第3対向部57は、ハブシェル28と一体に形成されている。
【0040】
<位置調整機構>
位置調整機構59は、第1対向部54と第2対向部56とのハブ軸20の軸回りの相対位置を調整し、圧力センサ58に作用する初期の圧力を調整する。位置調整機構59は、第3対向部57に形成されたネジ孔57aにねじ込まれる調整ネジ59aを有する。調整ネジ59aは、たとえば六角穴付きボルトであり、先端が第1対向部54に接触可能である。調整ネジ59aは、ハブシェル24に貫通して形成された調整孔24cにアーレンキーを挿通して回すことができる。調整孔24cは、キャップ65により塞がれている。
【0041】
<駆動力計測部>
駆動力計測部26は、少なくとも一つの圧力センサ58を有する。圧力センサ58は、第1対向部54と第2対向部56とに接触して配置される。圧力センサ58は、駆動部22からハブシェル24に駆動力が伝達される駆動力伝達経路において、駆動力に応じて与えられる圧力を検出する。駆動力はトルクを含む。第1対向部54の回転は、圧力センサ58を介して第2対向部56に与えられる。所定以上の駆動力が与えられたときに第1対向部54と第2対向部56との一部分が接触して、過度の圧力が圧力センサに与えられることを抑制してもよい。
【0042】
<無線送信部>
無線送信部28は、ハブシェル24の内周部に固定される回路基板28bを有する。圧力センサ58と回路基板28bとは図示しない配線で電気的に接続される。回路基板28bには、マイクロコンピュータ、圧力センサ58からの出力を増幅する増幅器、増幅器によって増幅された信号をデジタル信号に変換するAD(Analog-Digital)変換回路および無線送信回路等の電子部品と、電源としての充電池28cとが搭載される。本実施形態では、マイクロコンピュータ、増幅器、およびAD変換回路は、駆動力計測部26の一部を構成する。
【0043】
無線送信部28は、圧力センサ58の出力に基づく情報を無線送信する。無線送信部28から無線送信された情報は、図示しないサイクルコンピュータにより駆動力、トルク、およびパワーの少なくともいずれかとして表示される。圧力センサ58の出力に基づいて、回路基板28bに設けられるマイクロコンピュータにおいて、駆動力、トルクおよびパワーの少なくともいずれかを算出してもよく、またサイクルコンピュータにおいて、受信した情報に基づいて、駆動力、トルクおよびパワーの少なくともいずれかを算出してもよい。充電池28cの代わりに、一次電池を設けてもよい。充電池28cまたは一次電池は、回路基板28bに着脱可能に設けられる。
【0044】
このように構成されたリアハブ10では、自転車に取り付けられてライダーがペダルをこぐと、ライダーの踏力が駆動力として駆動部22からハブシェル24に伝達される。このとき、駆動力伝達経路に配置される圧力センサ58の圧力が変化する。この変化を表す電気信号を回路基板28bで処理し、無線送信部28がサイクルコンピュータに無線送信する。サイクルコンピュータでは、無線送信された駆動力を表す情報を受信して表示する。これにより、ライダーは、自分が発生している駆動力、トルク、パワーなどを知ることができる。
【0045】
ここでは、圧力センサ58による圧力の変化で駆動力を計測できるので、駆動力計測部26の組み立てが容易である。
【0046】
<第2実施形態>
以降の説明では、第1実施形態と構成および形状が同様な部材についての説明を省略する。
【0047】
図4に示すように、第2実施形態のリアハブ110では、駆動部122の第1部材140の第2筒部140cがハブシェル124のハブ軸方向の中間部まで延びている。したがって、第1対向部154および第2対向部156がハブシェル124の中間部に配置される。図5に示すように第1対向部154の形状は、図3に示すアーム部154aを有する第1実施形態のものと同じである。圧力センサ158は、第2対向部156に設けられる。これにより、圧力センサ258の配線長さが短くなる。第2対向部156および第3対向部157は、ハブシェル124の内周部に凹んで形成される対向凹部156aに設けられる。対向凹部156aは第1対向部154の先端部分を囲むように凹んで形成される。第1対向部154のアーム部154aと対向凹部156aとの、回転方向で相互に対向する対向面は、平行に配置されるのが好ましい。
また、位置調整機構59も第1実施形態の図3に示すものと同じ構成である。圧力センサ158は、第1対向部154と第2対向部156の間に両者に接触して配置される。
【0048】
また、リアハブ110では、圧力センサ158および無線送信部28の電源として発電機60が設けられる。発電機60は、ハブ軸20の軸本体30の外周面に固定される磁石62と、磁石62の外周側に磁石62に対向して配置される回転子64とを有する。回転子64は、ハブシェル224の内周面に固定されるコイルボビンと、コイルボビンに巻き付けられる発電コイルと、発電コイルの周囲に配置されるヨークと、を有する。発電コイルの出力が無線送信部28に設けられる整流器によって直流に整流される。整流された電力は、回路基板28bに装着される充電池28cに蓄えられ電源として使用される。
【0049】
このような構成の第2実施形態では、駆動力伝達経路を構成する第1対向部154および第2対向部156がハブシェル124の中間部に配置されるので、ハブシェル124の捩れが小さくなり、駆動力が左右の第1ハブフランジ124aおよび第2ハブフランジ124bに均等に伝達されやすい。
【0050】
<第3実施形態>
図6に示すように、第3実施形態のリアハブ210では、駆動部222の第1部材240の第2筒部240cがハブシェル124の第1端部(図5の左側の端部)に近接した位置まで延びている。したがって、第1対向部254および第2対向部256がハブシェル224の第1軸受46に近接して配置される。図7に示すように、ハブシェル224に設けられる第2対向部256は突起部256aを有し、第1実施形態と同様な形状である。圧力センサ258は、第2対向部156に設けられる。第3実施形態では、第1対向部254は、駆動部222に設けられる環状部材254aの外周部に設けられる。環状部材254aは、第2筒部240cに設けられ、第1部材240に一体に形成される。第1対向部254は、環状部材254aに凹んで形成された対向凹部254bを有する。対向凹部254bは、第2対向部256の先端部分を囲むように凹んで形成される。第3対向部257はハブシェル224ではなく、対向凹部254bの第1対向部256に対向する壁面に設けられる。第1対向部254の対向凹部254bと第2対向部256との、回転方向で相互に対向する対向面は、平行に配置されるのが好ましい。
【0051】
位置調整機構259は、第3実施形態ではハブシェル224ではなく、第2筒部204cに設けられる。位置調整機構259は、第2筒部204cの環状部材254aに形成されるネジ孔254bにねじ込まれる調整ネジ259aを有する。また、ハブシェル224に貫通して形成された調整孔224cに連通する調整孔254cが環状部材254aに形成される。
【0052】
無線送信部228は、たとえばハブシェル224の第1端部の外周部に配置される。無線送信部228は、ハブシェル224の外周面に固定されるケース部228aを有する。ケース部228aは、ハブシェル224に固定される固定部228dを有する。固定部228dには、ハブシェル224が挿通する。固定部228dは、ナット部材227を締めることによって、ナット部材227とハブシェル224との間で、これらに直接または間接的に挟まれて固定される。ケース部228aの内部には、回路基板228bが配置される。圧力センサ258と回路基板28bとは図示しない配線で電気的に接続される。回路基板228bには、マイクロコンピュータ、圧力センサ258からの出力を増幅する増幅器、増幅器によって増幅された信号をデジタル信号に変換するAD(Analog-Digital)変換回路および無線送信回路等の電子部品と、電源としての充電池228cとが搭載される。無線送信部228は、圧力センサ258の出力に基づく情報を無線送信する。無線送信部228から無線送信された情報は、図示しないサイクルコンピュータにより駆動力、トルク、およびパワーの少なくともいずれかとして表示される。圧力センサ258の出力に基づいて、回路基板228bに設けられるマイクロコンピュータにおいて、駆動力、トルクおよびパワーの少なくともいずれかを算出してもよく、またサイクルコンピュータにおいて、受信した情報に基づいて、駆動力、トルクおよびパワーの少なくともいずれかを算出してもよい。充電池228cの代わりに、一次電池を設けてもよい。充電池228cまたは一次電池は、ケース部228aから着脱可能に設けられる。ケース部228aには、たとえば充電池228cを充電するときに用いられる端子が設けられてもよい。
【0053】
このように無線送信部228をハブシェル224の外部に設けることにより、無線送信部228から出力される電波がハブシェル224により遮断されにくくなる。
【0054】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
(a)前記実施形態では、ワンウェイクラッチを有するいわゆるフリーハブを含んで駆動部22を構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、フリーハブを有さないリアハブにも本発明を適用できる。
【0056】
(b)前記実施形態では、クイックレリーズ機構29を有するリアハブを例示したが、クイックレリーズ機構を有さないリアハブにも本発明を適用できる。
【0057】
(d)前記実施形態では、電源として発電機及び充電池を例示したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、充電可能なコンデンサ等の蓄電素子を用いてもよい。また、電源として充電不能な一次電池を用いてもよい。
【0058】
(e)前記第2実施形態では、発電機60は圧力センサ158および無線送信部28の電力供給に用いられるが、本発明はこれに限定されない。無線送信部において、発電機60から出力される交流の電力波形を検波してリアハブの回転速度信号を得てもよい。得られた回転速度信号に関する情報と、駆動力測定部によって測定した駆動力であるトルクとを用いて、マイクロコンピュータにおいてパワーを計算してもよい。また、無線送信部が回転速度信号に関する情報をサイクルコンピュータに送信することにより、後輪の周長を乗算することにより、サイクルコンピュータでの車速表示に用いることができる。
【0059】
(f)前記各実施形態の構成は、相互に組み合わせることができる。たとえば、第1および第2実施形態において、第2実施形態のようにハブシェルの内部に発電機を設けてもよい。この場合、発電機は、ハブ軸に発電コイルを設けて、ハブシェルまたは第1部材に磁石を設ける構成とすることができる。また第2実施形態において、発電機の代わりに一次電池または二次電池を設けてもよい。
【0060】
(g)前記各実施形態では、位置調整機構を備えているが、位置調整機構は設けられなくてもよい。これによって構成を簡素化することができる。また位置調整機構は前述した構成に限られない。たとえば第2対向部を回転方向に移動可能に設ける構成としておいてもよいし、たとえば第1および第3対向部の対向する部分にハブ軸方向に延びる溝を設けておき、この溝に板状部材を挿入することによって、第1および第2対向部の相対位置を調整してもよい。厚さの異なる複数の板状部材を入れ替えれば、第1および第2対向部の相対位置を容易に調整することができる。
【0061】
(h)第1対向部および第2対向部は、周方向に180度間隔を隔てて2個設けられているが、第1対向部および第2対向部の数は、1つずつであってもよいし、3つ以上であってもよい。複数対の第1対向部54および第2対向部56は、ハブ軸20の中心軸線まわりに回転対称となる位置に設けられるのが好ましい。また複数の第1対向部54は、周方向に隣接する第1対向部54との距離が等しくなるように配置され、複数の第2対向部56は、周方向に隣接する第2対向部56との距離が等しくなるように配置されるのが好ましい。
【0062】
(i)前記各実施形態において、第3対向部および位置調整機構は設けない構成としてもよい。たとえば複数の第1対向部が近接して設けられる場合、第1対向部の間に第2対向部が挟まれる構成であってもよい。
【0063】
(j)前記実施形態において、第1〜第5軸受のいずれか1つまたは複数をすべり軸受に変更してもよい。この場合には、重量を軽減することができる。
【0064】
(k)前記実施形態において、第1部材のうち、フリーホイールを構成する部分を、他の部分から着脱自在に構成してもよい。このように構成するとフリーホイールを自由に交換することができる。第1部材のうち着脱可能な部分は、セレーション等の連結機構によって他の部分に結合されればよい。
【符号の説明】
【0065】
10,110,210 リアハブ
20 ハブ軸
22,122,222 駆動部
24,124,224 ハブシェル
26 駆動力計測部
28,228 無線送信部
28c 充電池
40,140 第1部材
40c,140c 第2筒部
42 第2部材
54,154,254 第1対向部
56,156,256 第2対向部
57 第3対向部
58,158,58 圧力センサ
59 位置調整機構
60 発電機
80 スプロケット集合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車用リアハブであって、
ハブ軸と、
前記ハブ軸に回転自在に支持され、駆動力伝達部材を装着可能な駆動部と、
前記ハブ軸に回転自在に支持され、前記駆動部の回転が伝達されるハブシェルと、
前記駆動部に設けられる少なくとも一つの第1対向部と、
前記ハブシェルに設けられ前記第1対向部と対向可能な少なくとも一つの第2対向部と、
前記第1対向部および前記第2対向部と接触可能に設けられる圧力センサを有する駆動力計測部と、
を備える自転車用リアハブ。
【請求項2】
前記ハブシェルは、軸方向の一端部と他端部とを有し、
前記第2対向部は、前記ハブシェルの駆動力伝達部材側の一端部に設けられる、前記請求項1に記載の自転車用リアハブ。
【請求項3】
前記第1対向部および前記第2対向部のハブ軸回りの相対位置を調整する位置調整機構をさらに備える、請求項1または2に記載の自転車用リアハブ。
【請求項4】
前記第2対向部は、前記第1対向部の回転駆動方向の下流側に近接して設けられる、請求項1から3のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項5】
前記第1対向部は、径方向外側に延びるアーム部を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項6】
前記第2対向部は、前記ハブシェルの内周面から突出する、請求項1から5のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項7】
前記第1対向部は、前記駆動部の外周面から突出し、前記第2対向部は、前記ハブシェルの内周面から突出する、請求項1から6のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項8】
前記ハブシェルに第1対向部に対向して設けられる第3対向部をさらに備え、
前記第2対向部と前記第3対向部の間に前記第1対向部が設けられる、請求項1から7のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項9】
前記第1対向部および前記第2対向部は、前記ハブ軸の周方向に間隔を隔てて複数設けられる、請求項1から8のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項10】
前記圧力センサの出力に基づく情報を無線により外部に送信する無線送信部をさらに備える、請求項1から9のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項11】
前記圧力センサに電力を供給する電源をさらに備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項12】
前記電源は電池である、請求項11に記載の自転車用リアハブ。
【請求項13】
前記電源は発電機である、請求項11に記載の自転車用リアハブ。
【請求項14】
前記駆動部は、
前記ハブ軸に回転自在に支持される第1部材と、
前記第1部材に回転自在に支持され、前記駆動力伝達部材を装着可能な第2部材と、
前記第2部材の前記自転車の進行方向の回転を前記第1部材に伝達可能なワンウェイクラッチと、を有する、請求項1から13のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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