説明

自転車用リアハブ

【課題】駆動力を計測可能であって、1つのセンサで、駆動部における広範囲の捩れを測定することができる自転車用リアハブを得る。
【解決手段】転車用リアハブ10は、ハブ軸20と、駆動部22と、ハブシェル24と、駆動力計測部26と、を備える。駆動部22は、ハブ軸20に回転自在に支持され、スプロケット集合体を装着可能である。ハブシェル24は、ハブ軸20に回転自在に支持され、駆動部22の回転が伝達される。駆動力計測部26は、液圧センサ58を有する。駆動部22は、ハブシェル24に連結される連結部52を有する。連結部52には内部に液体が充填される貯蔵部54が設けられる。液圧センサ58は、液体の圧力を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブ、特に、自転車の後輪のハブを構成する自転車用リアハブに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車用リアハブは、後輪の回転中心に配置されるハブ軸と、ハブ軸回りに回転自在に装着されるハブシェルと、ハブシェルに軸方向に隣接して配置されるフリーホイールと、を備えている。フリーホイールは、チェーンに噛み合うスプロケットの回転をハブシェルに伝達する。このフリーホイールとハブシェルとの間にライダーの駆動力を測定可能な駆動力測定部が配置される自転車用リアハブが、従来知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の自転車用リアハブは、フリーホイールとハブシェルとを連結する連結部材を有する。連結部材は、円筒形状に形成され、一端部にスプロケットが装着され、他端部がハブシェルと連結される。連結部材には、その連結部の捩れを検出するための歪みゲージが設けられ、連結部の捩れ量が検出される。この計測された捩れ量により、ライダーの駆動力を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6418797号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のリアハブでは、広範囲の捩れを測定するためには、複数個所に歪みゲージを貼り付ける必要がある。
【0006】
本発明の課題は、駆動力を計測可能であって、広範囲の捩れを複数のセンサを用いなくても測定することができる自転車用リアハブを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る自転車用リアハブは、ハブ軸と、駆動部と、ハブシェルと、駆動力計測部と、を備える。駆動部は、ハブ軸に回転自在に支持され、駆動力伝達部材を装着可能である。ハブシェルは、ハブ軸に回転自在に支持され、駆動部の回転が伝達される。駆動力計測部は、液圧センサを有する。駆動部は、ハブシェルに連結される連結部を有する。連結部には内部に液体が充填される貯蔵部が設けられる。液圧センサは、液体の圧力を検出する。
【0008】
この自転車用リアハブでは、駆動部の回転がハブシェルに伝達されるとき、駆動部に設けられる貯蔵部が伝達される駆動力に応じて変形する。この変形により貯蔵部内の液体の圧力が変化する。この液体の圧力の変化による信号により駆動力を検出できる。貯蔵部内の圧力は貯蔵部が局所的に変形してもほぼ一定になるので、1つのセンサで、駆動部における広範囲の捩れを測定することができる。
【0009】
発明2に係る自転車用リアハブは、発明1に記載の自転車用リアハブにおいて、貯蔵部は、第1貯蔵部、および第1貯蔵部と液圧センサを連結する第2貯蔵部を有する。この場合には、液圧センサから離れた位置に第1貯蔵部が配置されても、第1貯蔵部の圧力を液圧センサにより計測できる。
【0010】
発明3に係る自転車用リアハブは、発明2に記載の自転車用リアハブにおいて、第2貯蔵部は、連結部の外表面に連通する。この場合には、駆動部内ではなく駆動部の外表面部に液圧センサを配置でき、液圧センサの配置の制限が緩和される。
【0011】
発明4に係る自転車用リアハブは、発明2または3に記載の自転車用リアハブにおいて、連結部は筒状である。第1貯蔵部は、ハブ軸の周方向に間隔を隔てて複数配置される。貯蔵部は、複数の第1貯蔵部を互いに連通する第3貯蔵部をさらに有する。
【0012】
この場合に、駆動部の周方向に複数の第1貯蔵部が配置され、それらが第3貯蔵部により連通されるので、複数の第1貯蔵部を設けても貯蔵される液体の圧力は同じになる。このため、第1貯蔵部を駆動力によって変形しやすい形状とすることができる。
【0013】
発明5に係る自転車用リアハブは、発明2から4のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、第1貯蔵部の貯蔵空間は、長手方向および短手方向を有する。第1貯蔵部の貯蔵空間の長手方向はハブ軸方向に対して傾いて配置される。この場合には、第1貯蔵部の貯蔵空間の長手方向がハブ軸方向に対して傾いて配置されるので、駆動部に周方向に捩れが発生したときに、第1貯蔵部の容積を変化しやすくすることができる。
【0014】
発明6に係る自転車用リアハブは、発明2または3に記載の自転車リアハブにおいて、第1貯蔵部は、ハブ軸まわりで螺旋状に形成される。この場合には、駆動部に周方向に捩れが発生したときに、第1貯蔵部の容積を変化しやすくすることができる。
【0015】
発明7に係る自転車用リアハブは、発明1から6のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、液圧センサの出力に基づく情報を無線により外部に送信する無線送信部をさらに備える。たとえば液圧センサがハブシェルとともに回転しても、その出力を外部に取り出すことが容易となる。
【0016】
発明8に係る自転車用リアハブは、発明1から7のいずれかに記載の自転車用リアハブにおいて、液圧センサに電力を供給する電源をさらに備える。
【0017】
発明9に係る自転車用リアハブは、発明8に記載の自転車用リアハブにおいて、電源は電池である。この場合には、電源の構成が簡素になる。
【0018】
発明10に係る自転車用リアハブは、発明8に記載の自転車用リアハブにおいて、電源は発電機である。この場合には、自転車が走行していると発電するため、外部からの充電または電池の交換が不要になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、1つのセンサで、駆動部における広範囲の捩れを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態による自転車用リアハブの断面図。
【図2】図1における自転車用リアハブの要部断面図。
【図3】連結部の平面図。
【図4】図3の切断面線IV−IVから見た断面図。
【図5】第2実施形態の図2に相当する図。
【図6】第2実施形態の図4に相当する図。
【図7】第3実施形態の図4に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による自転車用リアハブ10は、自転車のフレームの後部に設けられるハブ軸装着部102に装着可能である。リアハブ10は、ハブ軸20と、駆動部22と、ハブシェル24と、駆動力計測部26と、無線送信部28と、を備える。ハブシェル24は、ハブ軸20に第1軸受46により回転自在に支持される。駆動部22は、ハブ軸20に第2軸受47により回転自在に支持される。駆動力計測部26は、ライダーの駆動力を測定可能である。無線送信部28は、測定された駆動力に関する情報を無線送信する。無線送信された駆動力に関する情報は、たとえば自転車のハンドル部に装着可能な図示しないサイクルコンピュータに表示される。なお、サイクルコンピュータには、自転車の速度、クランクの回転速度(ケイデンス)、走行距離等の情報も表示される。
【0022】
<ハブ軸>
ハブ軸20は、クイックレリーズ機構29が装着される中空の軸本体30と、軸本体30の第1端部(図2の左側の端部)に装着される第1ロックナット32と、軸本体30の第2端部(図2右側の端部)に装着される第2ロックナット34と、を有する。第1ロックナット32および第2ロックナット34にハブ軸装着部102が装着可能となっている。ここでは、第1ロックナット32および第2ロックナット34がハブ軸装着部102に装着される構成を記載しているが、軸本体30がフレームにハブ軸装着部102に装着される構成としてもよい。
【0023】
図2に示すように、軸本体30の第1端部の内周面には、雌ネジ部30aが形成される。軸本体30の第1および第2端部の外周面には、第1雄ネジ部30bおよび第2雄ネジ部30cがそれぞれ形成される。第1ロックナット32は、雌ネジ部30aに螺合する雄ねじ部を有し、軸本体30にねじ込んで固定される。第2ロックナット34は、第2雄ネジ部30cに螺合する雌ねじ部を有し、軸本体30にねじ込んで固定される。
【0024】
<駆動部>
駆動部22は、いわゆるフリーホイールと呼ばれる部材を含んで構成される。駆動部22は、ハブ軸20に回転自在に支持される第1部材40と、第1部材40の外周側に配置される第2部材42と、第1部材40と第2部材42との間に配置されるワンウェイクラッチ44と、連結部52と、を有する。
【0025】
第1部材40は、第2軸受47によりハブ軸20に回転自在に支持される筒状の部材である。第2軸受47は、第2内輪体47aと、第2外輪体47bと、複数の第2転動体47cと、を有する。第2内輪体47aは、外周部にねじが形成され、軸本体30の第2雄ネジ部30cにねじ込んで固定される。第2外輪体47bは、内周部にねじが形成され、第1部材40の外周面に形成される雄ねじ部にねじ込んで固定される。複数の第2転動体47cは、第2内輪体47aおよび第2外輪体47bの間に周方向に間隔を隔てて設けられる。第2転動体47cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第2転動体47cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0026】
第1部材40は、ワンウェイクラッチ44のクラッチ爪44aが収納される凹部40aを外周部に有する。第1部材40の第1端部(図2の左側の端部)は、ハブシェル24の内周側まで延びている。第1部材40は、凹部40aが設けられる第1筒部40bと、第1筒部40bより大径の第2筒部40cと、を有する。第2筒部40cは、第1筒部40bの第1端部側に配置される。第2筒部40cの外周面には、第2部材42を回転自在に支持する第3軸受48の第3玉押し面48aおよびハブシェル24を回転自在に支持する第5軸受50の第5玉押し面50aが形成される。第2筒部40cは、ハブシェル24と連結される連結部52を有する。
【0027】
第2部材42は、第3軸受48および第4軸受49により第1部材40に対して回転自在に支持される筒状部材である。第3軸受48は、前述した第3玉押し面48aと、第3玉受け面48bと、複数の第3転動体48cとによって形成される。第3玉受け面48bは、第2部材42の第1端部(図2の左側の端部)の内周面に形成される。複数の第3転動体48cは、第3玉押し面48aと第3玉受け面48bとの間に周方向に間隔を隔てて設けられる。第3転動体48cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第3転動体48cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0028】
第4軸受49は、第2外輪体47bの外周面に形成された第4玉押し面49aと、第4玉受け面49bと、複数の第4転動体49cとによって形成される。第4玉受け面49bは、第2部材42のハブ軸方向の中間部の内周面に形成される。複数の第4転動体49cは、第4玉押し面49aと第4玉受け面49bとの間に周方向に間隔を隔てて設けられる。第4転動体49cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第4転動体49cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0029】
第2部材42は、図1に示すように、外周面にスプロケット集合体80を装着するスプロケット装着部42aを有する。スプロケット集合体80は、第2部材42と一体的に回転する。スプロケット集合体80は、駆動力伝達部材の一例である。スプロケット装着部42aは、たとえば、外周部に周方向に間隔を隔てて配置された凸部または凹部を有するスプラインを有する。スプロケット集合体80は、図1に示すように、歯数が異なる複数(たとえば9個)のスプロケット80a〜80iを有する。スプロケット集合体80のいずれかのスプロケットに噛み合うチェーン81により、図示しないクランクの回転が駆動部22に伝達される。ここでは、スプロケット装着部42aに複数のスプロケットが装着されるが、スプロケット装着部42aに装着されるスプロケットの数は、1つであってもよい。
【0030】
ワンウェイクラッチ44は、第2部材42の自転車の進行方向の回転だけを第1部材40に伝達するために設けられる。これにより、クランクの進行方向の回転だけがハブシェル24に伝達される。またハブシェル24の進行方向の回転は第2部材42に伝達されない。ワンウェイクラッチ44は、凹部40aに第1姿勢および第2姿勢に揺動自在に設けられるクラッチ爪44aと、第2部材42の内周面に形成されたラチェット歯44bと、クラッチ爪44aを付勢する付勢部材44cと、を有する。クラッチ爪44aは第1姿勢でラチェット歯44bに接触し、第2姿勢でラチェット歯44bから離脱する。付勢部材44cは、第1部材40に形成された環状溝に装着される。付勢部材44cは、金属線材をC字状に湾曲して形成されたバネ部材であり、クラッチ爪44aを第1姿勢側に付勢する。
【0031】
連結部52は、駆動部22からハブシェル24にわたる駆動力伝達経路に設けられ筒状の部分である。連結部52は、第1端部(図2の左側の端部)がハブシェル24にセレーションによって連結される。これによって、駆動部22とハブシェル24とが一体的に回転可能となる。駆動部22と連結部52とは一体形成されてもよく、セレーションによって結合されてもよい。
【0032】
連結部52には内部に液体が充填される貯蔵部54が設けられる。液体は、たとえば水、オイルなどである。貯蔵部54は、図2、図3および図4に示すように、複数の第1貯蔵部54aと、第2貯蔵部54bと、第3貯蔵部54cと、を有する。第1貯蔵部54aは、連結部52の周方向に間隔を隔てて放射状に複数配置される。図では、18個の第1貯蔵部54aが設けられるが、第1貯蔵部54aの数はこれに限られない。第1貯蔵部54aは、図3に示すように、長手方向Aおよび短手方向Bとを有する。第1貯蔵部54aは、たとえば直方体または楕円体であってもよい。第1貯蔵部54aの長手方向Aは、ハブ軸方向に対して傾いて配置される。ここでは、リアハブの径方向外側から見たとき、第1貯蔵部54aの長手方向Aが、ハブ軸方向に対して傾いて配置される。この傾きは、たとえば1度から45度の範囲である。このように第1貯蔵部54aをハブ軸方向に対して傾けて配置することにより、第1貯蔵部54aの容積が変化しやすくなり、駆動部22の第1部材40に周方向に捩れが発生すると、液体の圧力が上昇する。これにより、駆動部22における広範囲の捩れが液体の圧力の変化として現れる。
【0033】
第2貯蔵部54bは、複数の第1貯蔵部54aのうちの一つに連なり、駆動力計測部26の後述する液圧センサ58に結合される。第2貯蔵部54bの貯蔵空間は、第1貯蔵部54aの貯蔵空間に連なり、連結部の外表面に連通する。この第2貯蔵部54bの外表面に連通する部分に液圧センサ58が設けられる。
【0034】
第3貯蔵部54cは、複数の第1貯蔵部54aを互いに連結するために設けられる。第3貯蔵部54cの貯蔵空間は、相互に隣接する第1貯蔵部54aの貯蔵空間に連なる。第3貯蔵部54cを設けることにより、複数の第1貯蔵部54aの液体の圧力が等しくなる。
【0035】
<ハブシェル>
ハブシェル24は、図2に示すように、第1端部(図2の左側の端部)が第1軸受46によりハブ軸20の軸本体30に回転自在に支持される。ハブシェル24の第2端部(図2の右側の端部)は、前述したように第5軸受50により駆動部22を介してハブ軸20の軸本体30に回転自在に支持される。第1軸受46は、内周面にねじが形成され、軸本体30の第1雄ネジ部30bにねじ込んで固定される第1内輪体46aと、第1外輪体46bと、複数の第1転動体46cと、を有する。第1転動体46cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第1転動体46cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0036】
第5軸受50は、前述した第5玉押し面50aと、ハブシェル24の第2端部の内周部にたとえば圧入固定された第5外輪体50bと、複数の第5転動体50cと、を有する。第5転動体50cは、第5玉押し面50aと第5外輪体50bとの間に周方向に間隔を隔てて配置される。第5転動体50cは、図示しないリテーナに回転可能に保持されて、周方向に所定の間隔をあけて配置される。第5転動体50cは、球体であってもよく、ローラであってもよい。
【0037】
ハブシェル24の外周部には、自転車の後輪のスポークを連結するための第1ハブフランジ24aおよび第2ハブフランジ24bがハブ軸20の軸方向に間隔を隔てて環状に突出して形成される。ハブシェル24の第2端部(図2の右側の端部)での内周部には連結部52の第1端部(図2の左側の端部)を連結する連結部24cが形成される。連結部54は、第5軸受50よりもハブシェル24の第1端部側で、第5軸受50の近傍に設けられる。
【0038】
<駆動力計測部>
駆動力計測部26は、貯蔵部54に充填される液体の圧力を検出する液圧センサ58を有する。
【0039】
液圧センサ58は、第2貯蔵部54bの貯蔵空間を塞ぐように連結部52の外表部に設けられる。本実施形態では、液圧センサ58は、連結部52の第2端部(図2の左側の端部)の端面に設けられる。液圧センサ58は、貯蔵部54の液体の圧力を検出する。この液圧センサ58によって検出される情報は、自転車用リアハブ10に作用する駆動力に対応するので、この情報を用いて自転車用リアハブ10に作用する駆動力を計測することができる。液圧センサ58は、たとえば液体によって押圧される押圧部を有し、貯蔵部54の容積が変化したときに、液体によって押圧部が押圧されて、押圧部が変形あるいは移動することによって、液体による圧力を検出する。
【0040】
<無線送信部>
無線送信部28は、ハブシェル24の内周面に固定される回路基板28bを有する。センサ58と回路基板28bとは図示しない配線で電気的に接続される。回路基板28bには、マイクロコンピュータ、液圧センサ58からの出力を増幅する増幅器、増幅器によって増幅された信号をデジタル信号に変換するAD(Analog-Digital)変換回路および無線送信回路等の電子部品と、電源としての充電池28cとが搭載される。本実施形態では、マイクロコンピュータ、増幅器、およびAD変換回路は、駆動力計測部26の一部を構成する。
【0041】
無線送信部28は、液圧センサ58の出力に基づく情報を無線送信する。無線送信部28から無線送信された情報は、図示しないサイクルコンピュータにより駆動力、トルク、およびパワーの少なくともいずれかとして表示される。液圧センサ58の出力に基づいて、回路基板28bに設けられるマイクロコンピュータにおいて、駆動力、トルクおよびパワーの少なくともいずれかを算出してもよく、またサイクルコンピュータにおいて、受信した情報に基づいて、駆動力、トルクおよびパワーの少なくともいずれかを算出してもよい。充電池28cの代わりに、一次電池を設けてもよい。充電池28cまたは一次電池は、回路基板28bに着脱自在に設けられる。
【0042】
このように構成されたリアハブ10では、自転車に取り付けられてライダーがペダルをこぐと、ライダーの踏力が駆動力として駆動部22からハブシェル24に伝達される。このとき、連結部52の貯蔵部54の容積が変化して内部の圧力が変化する。この変化を液圧センサ59で検出し、液圧センサ59から出力される電気信号を回路基板28bで処理し、無線送信部28がサイクルコンピュータに無線送信する。サイクルコンピュータでは、無線送信された駆動力を表す情報を受信して表示する。これにより、ライダーは、自分が発生している駆動力、トルク、パワーなどを知ることができる。
【0043】
ここでは、広範囲で一定になる液体の圧力変化で駆動力を計測できるので、1つのセンサで、駆動部における広範囲の捩れを測定することができるようになる。
【0044】
<第2実施形態>
以降の説明では、第1実施形態と構成および形状が同様な部材についての説明を省略する。
【0045】
図5に示すように、第2実施形態のリアハブ110では、液圧センサ58および無線送信部28の電源として発電機60が設けられる。発電機60は、ハブ軸20の軸本体30の外周面に固定される磁石62と、磁石62の外周側に磁石62に対向して配置される回転子64とを有する。回転子64は、ハブシェル224の内周面に固定されるコイルボビンと、コイルボビンに巻き付けられる発電コイルと、発電コイルの周囲に配置されるヨークと、を有する。発電コイルの出力が無線送信部28に設けられる整流器によって直流に整流される。整流された電力は、回路基板28bに装着される充電池28cに蓄えられ電源として使用される。
【0046】
また、連結部152に設けられる貯蔵部154の複数(たとえば15個)の第1貯蔵部154aは、図6に示すように、ハブ軸の半径方向に対して傾いて配置される。第1貯蔵部154aの一つに第2貯蔵部154bが設けられる。第2貯蔵部154bの貯蔵空間は、第1実施形態と同様に連結部152の外表面に連通する。複数の第1貯蔵部154aは、複数の第3貯蔵部154cにより互いに連通される。第2実施形態の第1貯蔵部154aの長手方向はハブ軸方向に沿って配置される。
【0047】
このような構成の第2実施形態のリアハブ110でも第1実施形態と同様に、広範囲で一定になる液体の圧力変化で駆動力を計測できるので、1つのセンサで、駆動部における広範囲の捩れを測定することができるようになる。
【0048】
<第3実施形態>
第1および第2実施形態では、第1貯蔵部が複数設けられるが、図7に示すように、第3実施形態のリアハブ210では、貯蔵部254の第1貯蔵部254aは一つ設けられる。したがって第3貯蔵部は設けられない。第1貯蔵部254aは、連結部252の内部にハブ軸方向から見て螺旋状に、たとえば360度の範囲にわたって形成される。なお、螺旋の範囲は360度以上でもよいし、360度以下でもよい。
【0049】
第3実施形態では、一つの第1貯蔵部254aを設けているだけであるので、第3貯蔵部による圧力損失が生じにくくなる。
【0050】
このような第3実施形態のリアハブ210でも、第1および第2実施形態と同様に、広範囲で一定になる液体の圧力変化で駆動力を計測できるので、1つのセンサで、駆動部における広範囲の捩れを測定することができるようになる。ここでは、ハブ軸方向から見て第1貯蔵部254aが螺旋状に形成されているが、第1貯蔵部254aは、コイルスプリングの形状のような、軸方向に螺旋状に延びる形状としてもよい。このような構成であっても同様の効果を得ることができる。
【0051】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
(a)前記実施形態では、ワンウェイクラッチを有するいわゆるフリーハブを含んで駆動部22を構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、フリーハブを有さないリアハブにも本発明を適用できる。
【0053】
(b)前記実施形態では、クイックレリーズ機構29を有するリアハブを例示したが、クイックレリーズ機構を有さないリアハブにも本発明を適用できる。
【0054】
(d)前記実施形態では、電源として発電機及び充電池を例示したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、充電可能なコンデンサ等の蓄電素子を用いてもよい。また、電源として充電不能な一次電池を用いてもよい。
【0055】
(e)前記第2実施形態では、発電機60は液圧センサ58および無線送信部28の電力供給に用いられるが、本発明はこれに限定されない。無線送信部において、発電機60から出力される交流の電力波形を検波してリアハブの回転速度信号を得てもよい。得られた回転速度信号に関する情報と、駆動力測定部によって測定した駆動力であるトルクとを用いて、マイクロコンピュータにおいてパワーを計算してもよい。また、無線送信部が回転速度信号に関する情報をサイクルコンピュータに送信することにより、後輪の周長を乗算することにより、サイクルコンピュータでの車速表示に用いることができる。
【0056】
(f)前記各実施形態の構成は、相互に組み合わせることができる。たとえば、第1および第2の実施形態において、第2実施形態のようにハブシェルの内部に発電機を設けてもよい。この場合、発電機は、ハブ軸に発電コイルを設けて、ハブシェルまたは第1部材に磁石を設ける構成とすることができる。また第2実施形態において、発電機の代わりに一次電池または二次電池を設けてもよい。
【0057】
(g)前記3つの実施形態における貯蔵部の形状は一例であり、本発明はこれらの形状に限定されない。貯蔵部は、連結部の捩れに対して容積変化する形状であればどのような形状でもよい。少なくとも1つの貯蔵部を備えればよい。
【0058】
(h)前記実施形態では、液圧センサ58は、連結部52の第2端部の端面に設けられるが、液圧センサは連結部52の外表部のいずれの場所にでも設けることができる。この場合、液圧センサが設けられる部位まで液体を導くように、第2貯蔵部を形成すればよい。
【0059】
(i)第2貯蔵部を設けないで、液圧センサを、第1貯蔵部の貯蔵空間に設ける構成としてもよい。この場合圧力センサからの電気信号を取り出すための配線を連結部52に設けて、外部に電気信号を取り出せばよい。
【0060】
(j)また液体の温度を測定する温度センサを設けて、温度変化によって変化する圧力センサの出力を補正するように構成してもよい。この場合、たとえば回路基板に設けられるマイクロコンピュータによって補正値を求めればよい。
【0061】
(k)前記実施形態において、第1〜第5軸受のいずれか1つまたは複数をすべり軸受に変更してもよい。この場合には、重量を軽減することができる。
【0062】
(l)前記実施形態において、第1部材のうち、フリーホイールを構成する部分を、他の部分から着脱自在に構成してもよい。このように構成するとフリーホイールを自由に交換することができる。第1部材のうち着脱可能な部分は、セレーションなどの連結機構によって他の部分に結合されればよい。
【符号の説明】
【0063】
10、110,210 リアハブ
20 ハブ軸
22 駆動部
24 ハブシェル
26 駆動力計測部
28 無線送信部
28c 充電池
52、152,252 連結部
54、154,254 貯蔵部
54a,154a,254a 第1貯蔵部
54b,154b,254b 第2貯蔵部
54c,154c 第3貯蔵部
58 液圧センサ
60 発電機
80 スプロケット集合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車用リアハブであって、
ハブ軸と、
前記ハブ軸に回転自在に支持され、駆動力伝達部材を装着可能な駆動部と、
前記ハブ軸に回転自在に支持され、前記駆動部の回転が伝達されるハブシェルと、
液圧センサを有する駆動力計測部と、を備え、
前記駆動部は、前記ハブシェルに連結される連結部を有し、前記連結部には内部に液体が充填される貯蔵部が設けられ、
前記液圧センサは、前記液体の圧力を検出する、自転車用リアハブ。
【請求項2】
前記貯蔵部は、第1貯蔵部、および前記第1貯蔵部と液圧センサを連結する第2貯蔵部を有する、請求項1に記載の自転車用リアハブ。
【請求項3】
前記第2貯蔵部は、前記連結部の外表面に連通する、請求項2に記載の自転車用リアハブ。
【請求項4】
前記連結部は筒状であり、
前記第1貯蔵部は、前記ハブ軸の周方向に間隔を隔てて複数配置され、
前記貯蔵部は、前記複数の第1貯蔵部を互いに連通する第3貯蔵部をさらに有する、請求項2または3に記載の自転車用リアハブ。
【請求項5】
前記第1貯蔵部の貯蔵空間は、長手方向および短手方向を有し、
前記第1貯蔵部の貯蔵空間の長手方向はハブ軸方向に対して傾いて配置される、請求項2から4のいずれか一項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項6】
前記第1貯蔵部は、ハブ軸まわりで螺旋状に形成される、請求項2または3に記載の自転車用リアハブ。
【請求項7】
前記液圧センサの出力に基づく情報を無線により外部に送信する無線送信部をさらに備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
コイルに電力を供給する電池を有する。
【請求項8】
前記液圧センサに電力を供給する電源をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の自転車用リアハブ。
【請求項9】
前記電源は電池である、請求項8に記載の自転車用リアハブ。
【請求項10】
前記電源は発電機である、請求項8記載の自転車用リアハブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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