説明

航空機パラメータを推定するための方法およびシステム

【課題】航空機パラメータを推定するための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】航空機の軌道を予測するための航空機の軌道予測器パラメータを推定するのに適した方法およびシステムである。この方法およびシステムには、航空機に関する軌道予測情報を受け取るステップと、次に、さもなければ地上自動化システムには未知である航空機の軌道予測器パラメータを推定(抽出)するためにこの情報を使用するステップが含まれている。次に、航空機の軌道を予測するために地上自動化システムの1つまたは複数の軌道予測器に軌道予測器パラメータを適用することができる。特定の実施形態では、この方法およびシステムは、利用可能な空対地通信リンク機能を利用することができ、この利用可能な空対地通信リンク機能には、軌道ベース運航(TBO)の一部として利用することができるデータリンク機能を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、航空交通を管理するための方法およびシステムに関する。より詳細には、本発明の態様には、調整可能パラメータを介して適合させることができるモデルを使用して航空機の軌道を予測するための方法およびシステムが含まれている。これらのパラメータは、直接的な物理的意味(例えば重量)を有することができ、あるいはこれらのパラメータは、例えば質量に対する推力の比率などの2つの物理変数の比率の場合のように抽象的なものであってもよい。正確な軌道予測は、多くの航空交通制御および軌道管理アプリケーションにとって要であり、また、パラメータを推定する能力により、予測精度のレベルの改善が促進される。好ましいことには、軌道予測方法およびシステムは、Air Navigation System Provider(ANSP)またはOperations Control Center(OCC)の自動化システムを利用することができる。
【背景技術】
【0002】
Trajectory−Based Operations(TBO)は、US Next Generation Air Transport System(NextGen)およびEurope’s Single European Sky ATM Research(SESAR)の両方の要となるコンポーネントである。この概念を前進させるために、両方のプログラムに大変な努力が払われている。航空機軌道同期化および軌道交渉は、既存のTBO概念における要の能力であり、また、空域運航の効率を改善するためのフレームワークを提供している。また、TBOで実施される軌道同期化および交渉は、空域の使用者(飛行運航者(航空会社)、飛行運航管理者、操縦室職員、Unmanned Aerial Systemsおよび軍事上の使用者を含む)によるそれらの優先(使用者優先)軌道に近い軌道の定期飛行を可能にしており、延いては燃料および時間の節約を始めとするビジネス目的、風最適経路指定および気象セルを迂回する方向のTBO概念への組込みを可能にしている。したがって軌道同期化および交渉をサポートし、延いてはTBOの採用を容易にし、かつ、促進することができる技術がもたらされることが望ましい。
【0003】
本明細書において使用されているように、航空機の軌道は、航空機が離陸から着陸までの間に追従する三次元の時系列シーケンスであり、軌道ベクトルの時系列セットによって数学的に記述することができる。一方、航空機の飛行計画は、出発に先立って地方民間航空当局と共にパイロットまたは飛行運航管理者によってファイルされる情報と呼ぶことができ、この情報は、物理文書情報または電子情報のいずれかであり、出発点および着陸点、途中の予測時間などの情報が含まれており、また、航空交通制御(ATC)が追跡サービスおよび経路指定サービスを提供するために使用することができる他の一般的な情報が含まれている。飛行軌道の概念には、中心線を有する軌道経路が存在していることが含まれており、この中心線を位置不確実性および時間不確実性が取り囲んでいる。軌道同期化は、航空機の軌道表現における異なる表現間の相違を解決するプロセスであって、残りの他のすべての相違が運航上重大ではなくなるように解決するプロセスとして定義することができる。運航上重大ではない相違を構成しているものが何であるかは、軌道の意図されている使用法によって様々である。比較的より大きい相違は、戦略的需要予測のためには場合によっては許容可能であり、一方、戦術的分離管理に使用するためにはこれらの相違をはるかに小さくしなければならない。
【0004】
TBOの究極の目的は、空間(緯度、経度および高度)および時間における正確な四次元軌道(4DT)を使用することによって航空機の将来の位置に関連する不確実性を小さくすることである。改良された軌道予測によって得られる正確な4DTを使用することにより、個々の対応する到着空港に接近中の航空機のグループに対する地理上の位置(メータリングフィックス、アライバルフィックスまたはコーナポストと呼ばれている)への到着時間を予測する能力を始めとする、航空機の将来の飛行経路の不確実性を劇的に小さくする能力が得られる。このような能力は、現在の「クリアランスベース制御」手法(航空機の現在の状態の観察に依存している)から、使用者優先軌道に沿った飛行を航空機に許容することを目的とする軌道ベース制御手法への重大な変化を意味している。したがってTBOのための重要なイネーブラーは、正確な計画軌道(恐らくは複数の軌道)の利用可能性、および空域のより有効な使用を可能にするための可変情報を備えたATCの提供のみならず、適切なDecision Support Tools(DST)と共に使用されると、空域の使用者によってファイルされる要求に対処し、かつ、ATC制約に合致するためにATCによる試行−計画差代替解決を可能にする、より正確な軌道予測器である。TBOの他のイネーブラーは、航空機と地上の間でデータを交換する能力である。例えばコントローラパイロットデータリンク通信(CPDLC)および自動従属監視コントラクト(ADSC)技術などのいくつかの空対地通信プロトコルおよび航空電子工学性能規格が存在しており、あるいは現在開発中である。
【0005】
多くの軌道モデル化および軌道予測フレームワークが存在しており、また、提案され、かつ、空と地上の自動化システムに現在使用されている多くのツールが存在しており、例えば、「Predicting Aircraft Trajectory,」という名称のWO 2009/042405 A2、「System and Method for Stochastic Aircraft Flight−Path Modeling,」という名称のUS7248949、および「Trajectory Prediction.」という名称のUS 2006/0224318 A1に記載されている。しかしながら、これらの軌道モデル化ならびに軌道予測方法およびシステムは、明確な形態で利用することができない、あるいは明確な形態では知られていないパラメータであって、それにもかかわらずより高いレベルの予測精度を達成するためには軌道予測器が使用しなければならないパラメータを引き出し、あるいは推定するための能力については全く開示していない。予測精度を改善するためには、航空機の性能特性についてのより良好な知識が必要である。しかしながら、いくつかのケースでは、運航者にとっては戦略上の情報および所有権上の情報と見なされる情報に関する問題のため、性能情報を地上オートメーションと直接共有することができない。このカテゴリの2つの典型的な例は、航空機の重量およびコスト指数である。他のケースでは、関連する性能パラメータを通信するために使用される空対地通信システムの帯域幅がしばしば制約される。
【0006】
一部には検証活動および利益評価の不足のため、TBOの実施に他の大きな懸隔が残っている。そのため、General Electric CompanyおよびLockheed Martin Corporationは、Air Traffic Management(ATM)領域におけるTBOの採用を促進することを意図した技術をもたらすことを目的としたJoint Strategic Research Initiative(JSRI)を創設している。JSRIの努力には、軌道交渉および同期化概念を調査し、かつ、評価するための、GEのFlight Management System(FMS)および航空機の専門的技術の使用、ならびにEn Route Automation Modernization(ERAM)およびCommon Automated Radar Terminal System(Common ARTS)を始めとするLockheed MartinのATC領域の専門的技術の使用が含まれている。地上自動化システムは、一般に、スケジューリング、対立予測、分離管理および適合性監視などの臨界航空交通制御および交通の流れ管理機能を計画し、かつ、実施するために必要な情報を提供する、航空機の時間および空間における経路を予測することができる軌道予測器を提供している。航空機に搭載されるFMSは、航空機の自動飛行制御システム(AFCS)による閉ループ誘導のための軌道を使用することができる。多くの近代のFMSも、地上システムによって航空機に割り当てることができる要求到着時間(RTA)に合致することができる。
【0007】
上記の技術的能力にも関わらず、使用者が使用者のビジネス目的を全うし、かつ、すべてのATC目的(安全な分離、交通の流れ、等々)を完全に尊重する有効な航空交通制御プロセスを保証するためには、軌道予測器が必要とするパラメータを利用可能な情報、例えばダウンリンク情報から得ることができる方法を始めとする、Trajectory−Based Operationsに関連する問題が残っている。詳細には、軌道予測器によって使用される、要となるパラメータ、例えば航空機の性能に関連するパラメータを得る能力を有することにより、地上自動化システムの予測精度の向上を可能にする必要性が存在している。しかしながら、航空機およびエンジンの製造者は、財産的および商用的に敏感な詳細な航空機性能データを慎重に考慮し、それが場合によっては地上自動化システムのための詳細で、かつ、正確な航空機性能データの利用可能性を制限している。さらに、航空機の推力特性、抵抗特性および燃料流量特性は、航空機の老化および保守からの時間によって大きく変化し、これらの変化は、地上自動化システムには恐らく分からないか、あるいは明確に得ることは不可能である。いくつかのケースでは、運航者にとっては戦略上の情報および所有権上の情報と見なされる情報に関連する問題のため、総重量およびコスト指数などの航空機性能情報を地上オートメーションと直接共有することはできない。これらの性能パラメータが直接共有されたとしても、航空機および地上自動化システムによって使用される航空機性能モデルは、場合によっては著しく異なっているため、直接使用されると、実際にはこれらの性能パラメータによって地上軌道予測の精度が悪くなる可能性がある。
【0008】
上記に加えて、地上自動化システムの予測精度を向上させるそれらの能力は、より有効な空域運航をサポートする必要性、航空機飛行計画あるいは空域制約における潜在的な修正の影響、および関連する性能パラメータを通信するための帯域幅に対する制約と相俟った航空交通レベルの拡張によってさらに複雑化している。
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、軌道予測器パラメータを推定するのに適した方法およびシステムが提供され、いくつかの例では、この方法およびシステムは、利用可能な空対地通信リンク機能を利用することができ、この利用可能な空対地通信リンク機能には、計画航空システム向上の一部として利用することができるデータリンク機能を含むことができる。また、本発明によれば、現在の運航が考慮され、その場合、音声通信の利用がより有効である。好ましいことには、本発明の方法およびシステムによれば、航空機および地上軌道予測器によって使用される航空機性能モデルが直接マップしない場合であっても、地上自動化システムは、その軌道予測アルゴリズムによって使用される、要となるパラメータを推定することによってそれらの予測精度を高くすることができる。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、上記方法には、航空機に関する軌道予測情報を受け取るステップと、次に、さもなければ地上自動化システムには未知である航空機の軌道予測器パラメータを推定(抽出)するためにこの情報を使用するステップが含まれている。本発明の好ましい実施形態では、次に、航空機の軌道を予測するために地上自動化システムの1つまたは複数の軌道予測器に軌道予測器パラメータを適用することができる。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、Bayesian推定などのパラメータ予測技法を適用することにより、未知の軌道予測器パラメータに関する先行情報を回帰的に改善することができる。航空機の軌道予測器パラメータは、航空機に対して予測される軌道予測情報(例えば、一般的には航空機のオンボード軌道予測器から利用することができる正確なモデルからの情報)と、他の軌道予測器によって生成される一組の軌道予測情報とを比較することによって予測することができる。上記一組の軌道予測情報は、予測すべきパラメータ入力を可能な値全体にわたって変化させることによって生成することができ、しかる後に、比較に基づいてパラメータ予測値を更新することができる。したがって不確実性に富んだ難題ではあっても、これらの技法が適用されると、未知の軌道予測器パラメータに関するその前の知識を使用することができる。本発明の他の好ましい態様には、航空機の軌道予測器パラメータの予測値を予測し、かつ、改良するための確率密度関数(PDF)および更新プロセスの使用が含まれている。
【0012】
本発明の他の態様には、上で説明した方法およびステップを実行するように適合されたシステムが含まれている。
【0013】
本発明の技術的効果は、航空機の軌道予測器パラメータを推定し、それにより地上ベース軌道予測器の精度を著しく改善する能力である。上で説明した、航空機の軌道を予測するための方法には、航空機の性能に関連する監視および測定データの使用を組み込むことができるが、本発明は、航空機の軌道の予測を試行している従来技術によるシステムおよび方法の場合のように、監視および測定データの使用にのみ依存しているわけではない。したがって、あらゆる事象において、本発明による地上ベース軌道予測器の精度を著しく改善する能力は、とりわけ、これらのパラメータのより良好な知識を必要とする飛行ステージの間、例えばContinuous Descent Arrivals(CDA)を実行している間のより良好な計画能力、と言い換えることができる。本発明のパラメータ推定プロセスによって可能な他の潜在的な利点には、空対地通信システムの狭い帯域幅の利用、および特定の戦略に関連するコストを予測するための改善された能力が含まれており、これらの利点により、ATCシステムは、航空機がもたらすコストが考慮された戦略助言を生成することができる。
【0014】
本発明の他の態様および利点は、以下の詳細な説明からより深く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい態様による、空域内の航空機の四次元軌道を予測するためのパラメータ推定プロセスのブロック図である。
【図2】航空機の離陸重量上の航空機の上昇飛行の頂点(T/C)ポイントに対応する、経路に沿った航空機の距離の依存性を証明する3つの曲線を含んだグラフである。
【図3】本発明に使用することができるパラメータ更新プロセスを定性的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によれば、さもなければ地上自動化システムには未知である航空機性能パラメータを推定するための方法およびシステムが記述される。好ましいことには、これらの性能パラメータは、音声および/またはデータであってもよい通信リンクを介して航空機運航者によって提供される航空機状態データおよび軌道インテント情報から引き出される。詳細には、本発明の方法およびシステムは、利用可能である場合、計画航空システム向上の一部として利用することができるデータリンク機能を始めとするデータリンク機能を利用することができる。また、本発明の方法およびシステムは、現在の運航を考慮することも可能であり、音声通信の利用がより有効であり、その場合、有用な情報は、一般的にはパイロットによって音声を介して伝送される、メータリングフィックスに対するTop of Descent(ToD)ポイントの位置、あるいはホイールオフポイントに対するTop of Climbの位置などの要となる軌道変更点を含むことができる。さらに、監視情報を使用して推定プロセスを改善することも可能である。推定されたパラメータは、軌道予測、試行計画および航空機運航コストの予測などの目的のために、地上自動化システムを使用して航空機の挙動をモデル化するために使用される。
【0017】
既に説明したように、Air Traffic Management(ATM)技法は、四次元つまり緯度、経度、高度および時間(4DT)における将来への航空機の状態の投影に依存している。航空機の4DTを使用して、航空機の計画飛行に関わる潜在的な問題、例えば複数の航空機間の分離規格の予測損失などの潜在的な問題、および割り当てられた航空交通制御資源の、所与の空域における極めて多数の航空機を安全に処理する能力に関連する潜在的な問題を検出することができる。このような問題が検出されると、本発明を使用して、さもなければ未知の航空機性能パラメータを推定することができ、この推定から、航空機に対する1つまたは複数の試行すなわち「もし〜ならどうか」軌道を予測することができ、また、他の4DTが安全で、かつ、効果的な方法で特定の問題を軽減することができるかどうかを決定するために、この予測を使用して飛行計画すなわち軌道に対する潜在的な修正の影響を評価することができる。推定された航空機性能パラメータにより、地上自動化システムは、航空機の性能モデルの精度を、さもなければ利用可能であり、かつ、広く使用されている精度を超えて改善することができ、それにより航空交通制御は、より正確に軌道予測および試行計画を実行することができる。注目すべきことには、このような性能モデルへのアクセスを有する予測器方法およびシステムによって、予測される軌道の精度が向上し、また、航空機運航コストの考察を試行計画プロセスに組み込むことができる。
【0018】
図1は、本発明の一態様によるパラメータ推定プロセスおよびシステムを概略的に示したものである。この線図では、すべてのブロックは、地上システム上で実施することができる機能を示している。例えばこれらの機能は、航空交通制御センタまたは航空会社運航センタに常駐させることができる。地上システムは、予測された軌道に関する情報を航空機から受け取る。この情報が航空機から直接もたらされる場合、その情報をADS−C(Automatic Dependence Surveillance Contract)などのデータ伝送リンクを介して伝送することができる。伝送されるデータのエレメントは、規格ARINC702A−3に定義されているFlight Management Computer(FMC)の「Trajectry Intent Bus」から得ることができる。また、この情報は、航空会社運航センタから発することができることも予知可能であり、その場合、共同制作航空交通制御目的のため、および飛行計画をファイルするために既に使用されている地上ベースネットワークと同様の地上ベースネットワークを介してその情報を航空交通制御に通信することができる。さらに、音声通信を介して情報を伝送することも可能であり、その場合、データは、航空機の軌道を画定するいくつかのエレメントを含むことができ、FMCにキー入力されるメータリングフィックスにおけるRequired Time of Arrival(RTA)、軌道変更点(Top of Climb、Top of Descent、等々)またはMode Control Panelにキー入力されるパラメータはその例である。情報自体は、1)速度スケジュール、想定された風、等々などの軌道予測プロセスへの入力(u)と、2)出力、より具体的には予測垂直プロファイル(TA/C)またはそのエレメントのうちのいくつか、の2つのグループに分割することができる。パラメータ推定プロセスに使用される垂直プロファイルまたはそのエレメントのうちのいくつかは、地上自動化システムにはしばしば未知であり、したがって推定する必要がある性能関連パラメータに関する詳細情報を使用して構築されることが仮定されている。垂直プロファイル情報の抽出は、線図の中に専用ブロックで示されている。別法としては、このステップは航空機によって実施することも可能であり、その場合、垂直プロファイルは、地上自動化システムに直接提供されることになる。ダウンリンクされる垂直プロファイルは、時間、経路に沿った距離および高度からなる一組n個の三次元ポイントによって表すことができる。
【0019】
【数1】

推定しなければならないパラメータは、ブロック「Parameter Initialization」で示されているプロセスで初期化される。パラメータ推定プロセスで、すべてのパラメータが確率密度関数(PDF)によって表され、この確率密度関数は、任意の性質の関数であってもよい(Gaussian、一様、等々)。さらに、本発明によって提供される方法の特定の一例示化では、PDFは、「パーティクル」としても知られている無作為サンプルによって近似することができる。したがってパラメータは、
【0020】
【数2】

に従って、「ビリーフ」とも呼ばれているパーティクル集合Θ0として初期化することができる。
【0021】
S個の無作為サンプルの各々は、それらの確率
【0022】
【数4】

に比例する重みと結合したシステムのパラメータ
【0023】
【数3】

が何であるか、に関する仮定を構成している。例えば、パラメータ離陸質量mの場合、航空機質量は、航空機のタイプに応じて、製造者によって規定される特定の範囲の値のみを有することができ、例えばmMINとmMAXの間の値のみを有することができる。プロセスの開始時に、この範囲がパラメータ推定プロセスのために利用することができる唯一の情報であり、また、離陸質量が推定すべき唯一のパラメータである場合、PDFのサンプルは、その範囲θO〜U(mMIN、mMAX)内の可能すべての値にわたる一様な分布に従って分布することになる。この実例による例では、パーティクルの重みは、一様分布に準拠する値1/NSを使用して初期化されることになる。図1に示されているように、飛行計画などの他の情報源を使用して、航空機の質量に関連するPDFを初期化し、飛行長さ規定および燃料保存規定により良好に整合する値により高い確率を割り当てることも可能である。常時収集される統計情報を使用してプロセスを開始することも可能である。これらのパラメータは、地上ベース軌道予測器が使用することができる航空機性能モデルの一部になる。
【0024】
高速時間モードで走る軌道予測器自体は、パラメータ推定プロセスに使用される。軌道予測器は、最初に、ビリーフΘk内のすべてのサンプルに対応する一組の軌道TGND,kを生成する。Θkは、推定プロセスのk番目のステップにおける予測の状態を表している。重み関数w=fW(Θ)は、集合TGND,k内の個々の軌道
【0025】
【数5】

の重みを計算する。重み計算にはいくつかの代替が存在しており、そのうちの1つには、ダウンリンクされる、基準(TA/C)として使用される軌道に対する確率的解釈の割当てが含まれている。したがって計算される重みは、TA/C内に存在している
【0026】
【数6】

内の軌道ポイントの確率に比例している。単一の軌道ポイントが1つずつ処理される場合、個々のパーティクル「i」の重みは、
【0027】
【数7】

として計算することができる。
【0028】
別法としては、すべての軌道ポイントを一度に計算することも可能である。したがって重みは、TA/C内に存在している
【0029】
【数8】

内のn個のすべての軌道ポイントの総確率に比例することになる。
【0030】
【数9】

【0031】
【数10】

を計算するための可能性の1つには、距離メトリック(ポイント
【0032】
【数12】

から軌道TA/Cまでの距離)
【0033】
【数11】

を画定し、また、広がりσの測度である、軌道TA/Cの周囲のGaussian広がりを仮定することが含まれている。したがって
【0034】
【数13】

である。
【0035】
実際の重みは、
【0036】
【数14】

を正規化することによって計算することができ、
【0037】
【数15】

である。
【0038】
計算の速度を速くするために、三角分布などの代替分布を使用してパーティクルの重みを決定することも可能である。
【0039】
パラメータ予測プロセスの次のステップには、既に計算済みの重みおよびビリーフから更新済みパラメータビリーフを決定するステップが含まれている。このステップは、線図には「Parameter Update Process」として示されている。ビリーフのパーティクル表現を使用した実例による例に引き続いて、このステップは、重み
【0040】
【数16】

に比例する確率を有する元の一組のΘk-1からサンプルを引き出すことによって新しい一組のパーティクルΘkを生成するステップからなる重要性再サンプリングを適用するステップを実施することができる。航空機から更新済みの予測が得られ、および/または航空機の監視および測定データ(測定された軌道および状態データ)が利用可能になると、予測すべきパラメータを常に改良するプロセスが継続される。
【0041】
図3は、サンプルされた一様分布から始まって単峰形分布に到達するパラメータ更新プロセスを定性的方法で示したものであり、このプロセスにより、最も期待し得る予測ならびに確実性の測度を引き出すことができる。重み付けステップおよび再サンプリングステップなどのパラメータ推定プロセスの主要なステップをこの線図から観察することができる。
【0042】
パラメータは、必ずしも一次元パラメータでなくてもよいことに留意することは重要である。推定すべき主パラメータとしての航空機の離陸質量の使用は、単に説明のためにすぎない。予測すべきパラメータのベクトルを拡張して離陸質量および例えばコスト指数kCIを含むことは単純である。同様に、Monte Carlo連続予測を使用してパラメータ推定プロセスを説明することも可能である。別法としては、異なる表現のビリーフを使用する他のBayesian予測型技法を適用することも可能であり、例えばヒストグラム、グリッド、さらには適切である場合、パーティクルの代わりにパラメータ表現(例えばGaussian)を適用することができる。
【0043】
図1に示されているパラメータ推定プロセスおよびシステムは、航空機が適切に装備していないか、あるいはビジネスに関連する理由から、飛行運航者は、航空機が共有することができる情報に関する束縛を強いられており、そのために実際問題として多くの航空機はそれらの4DT軌道を正確に予測するために必要なデータの一部またはすべてを提供することができない、という事実から生じている問題に対処している。このような状況の下で、ATCシステムは、図1に示されているパラメータ推定プロセスおよびシステムを使用して、正確な軌道予測のために必要な航空機性能パラメータに関連するデータの一部またはすべてを計算し、かつ、推定することができる。燃料最適速度、詳細には予測4DTは、ATCシステムがアクセスを有していない航空機性能パラメータ(航空機質量、エンジン定格およびエンジン寿命など)に関連するデータに依存するため、適切に装備した航空機が提供することができる特定のデータは、ATCシステムによって推定され、あるいは生成されるデータよりも正確であることが期待される。したがってパラメータ推定プロセスおよびシステムは、好ましいことには、他の航空機性能データを予測するためにATCシステムを補助することができる航空機性能特性に関連するデータをATCシステムがより正確に推定することができるよう、特定のステップを取るように適合されており、上記他の航空機性能データには、燃料最適速度、予測4DT、およびこのデータが航空機自体から提供されない場合にそれらに影響を及ぼす要因が含まれている。以下で説明するように、重要な航空機性能パラメータは、部分的に航空機状態データおよび軌道インテント情報から引き出され、これらの航空機状態データおよび軌道計画情報は、通常、通信データリンクを介して、あるいは音声を介して航空機によって提供されるデータと共に含まれている。適宜、あるいは追加として、監視情報を使用して推定プロセスを改善することも可能である。次に、推定されたパラメータを使用して、具体的には軌道予測目的、試行計画、および異なる試行計画または軌道戦術に関連する運航コスト予測のためにATCシステムによって航空機の挙動がモデル化される。
【0044】
航空機の軌道を予測するためには、ATCシステムは、航空機の現在の計画4DTおよび/または航空機の飛行計画の故意でない変化を表す様々な「もし〜ならどうか」4DTを生成するために使用することができる航空機の性能モデルに依存しなければならない。このような地上ベース軌道予測は、大いに物理学ベースの予測であり、恐らくは不確実性と結合した様々なパラメータを含んだ航空機の性能のモデルを利用している。考察中の航空機のタイプに対して一般的であると見なされるいくつかのパラメータは、製造者の仕様から、あるいは商用的に利用可能な性能データから得ることができる。より変わりやすい傾向を示す他の特定のパラメータを知ることも可能であり、例えばファイルされる飛行計画にそれらを含めることができ、あるいは航空機運航者がそれらを直接提供することができる。しかしながら、他のパラメータは直接提供されず、したがって航空機から得られる情報から、また、適宜、監視情報からATCシステムによって推定しなければならない。これらのパラメータを推定することができる方法については、以下で説明する。
【0045】
エンジン推力、空力抵抗、燃料流量、等々などの航空機の性能パラメータは、軌道を予測するために広く使用されている。さらに、これらのパラメータは、航空機の垂直(高度)プロファイルおよび速度に根本的に影響を及ぼす。したがって性能パラメータの推定は、航空機の4DTの垂直部分に対して最大の関連性を有している。しかしながら、航空機の推力特性、抵抗特性および燃料流量特性は、航空機の老化および保守からの時間によって大きく変化し、これらの変化はATCシステムには恐らく分からない。いくつかのケースでは、運航者にとっては戦略上の情報および所有権上の情報と見なされる情報に関連する問題のため、総重量およびコスト指数などの航空機性能情報を地上オートメーションと直接共有することはできない。
【0046】
上記に鑑みて、本発明の推定プロセスにはパラメータ初期化プロセスが必要である。航空機の上昇飛行段中の推力は、主としてディレートされた出力設定を仮定した変動で、特定の範囲内で知るべきである、という仮定が可能であることが決定されている。この不確実性は、推力のための統計的モデルであって、3つの異なるディレーティング設定を考慮した統計的モデルを実際に画定することによって考慮することができる。図2は、離陸重量(TOW)の関数としての上昇飛行の頂点(T/C)ポイントに対応する、経路に沿った距離(T/C Dist)の依存性を表す3つの曲線をプロットしたものである。図2によって表されている計算は、模擬Flight Management System(FMS)を使用して実施されたものである。これらの曲線は、特定の上昇飛行モードの3つの可能性、つまり航空機のFMSに入力される情報に明記されている「Maximum Climb」、「Climb Derate 1」および「Climb Derate 2」を表している。図2から分かるように、上昇飛行の頂点までの距離と、特定の値のTOWまでのTOWとの間には直接依存性が存在している。所与のT/C Dist予測の場合、および上昇飛行モードが分からない場合、ある範囲の可能TOW値が存在する。T/C Dist予測における不確実性は、TOWにも余分の不確実性をもたらしている。例えば曲線の中央付近では、T/C Distにおける5nmiの不確実性は、未知の上昇飛行モードを考慮すると、TOWにおける6klbの不確実性に相当する。また、重量範囲も航空機製造者仕様から分かり、この重量範囲は、ファイルされる飛行計画から得られる知識、および適用可能な規定(空港間の距離、代替空港までの距離、最少保存、等々)から得られる知識を使用してさらに狭めることができる。
【0047】
推定プロセスに必要な、航空機速度、想定風速およびロール角を含む予測モデルへの追加入力は、横方向プロファイル情報から引き出すことができ、また、航空機の垂直プロファイルを予測するために使用することができる。このような入力は、航空機からダウンリンクすることができ、また、通常は、近代の飛行管理システム(ARINC 702A)、例えばいわゆるインテントバスで既に利用可能な情報から得ることができる。ダウンリンクされる情報は、軌道予測器への入力と、予測垂直プロファイルへの入力の2つの主要片に分離することができる。
【0048】
上記に鑑みて、本発明は、航空機の離陸重量(質量)を推定するために、離陸および上昇飛行の間、航空機の予測軌道の知識を使用することができる。航空機の燃料流量の予測を利用することができる場合、これを使用して、メータリングフィックスへのその航空機の接近を含むその後続する運航の間、航空機の重量を予測することができる。後続する監視および測定データ、例えば予測軌道に関連する航空機状態(上昇飛行または降下の速度および割合など)の測値を始めとする軌道および状態データを使用して、燃料流量および予測重量の予測を改良することができる。航空機の最小燃料−コスト速度および予測軌道パラメータなどの航空機の性能パラメータに関連する追加データは、航空機の質量に依存することが分かっているため、次に航空機の重量を使用してこれらの追加データを推定することができる。一例として航空機の重量は、航空機の離陸重量を離陸中に生じる上昇飛行の頂点までの距離に相関させることによって推定される。次に複数の生成ステップを使用して、離陸中および離陸に引き続いて航空機の垂直プロファイルを予測することができる。個々の生成ステップには、複数の生成ステップのうちの1つから得られる航空機の予測高度を、航空機によって報告される航空機の現在の高度と比較するステップが含まれている。次に現在の高度と予測高度の差を使用して、先行情報に基づく新しい一組の推定パラメータが生成され(第1のサイクルで)、あるいはその前の推定結果に基づく新しい一組の推定パラメータが生成される。航空機から得られると、新しい情報を使用して最新の推定パラメータを連続プロセスで更新することができる。次に最新の推定パラメータが、軌道予測器によって使用される航空機性能モデルに供給される。
【0049】
以上、本発明について、特定の実施形態に関連して説明したが、当業者は他の形態を採用することが可能であることは明らかである。例えばパラメータ推定システムおよびプロセスのコンポーネントの機能は、同様(必ずしも等価物である必要はない)の機能を発揮することができる異なるコンポーネントによって実施することができる。したがって本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の軌道を予測するために軌道予測器が使用することができる航空機性能パラメータを推定する方法であって、
航空機に関する軌道予測情報を受け取るステップと、次に
さもなければ地上自動化システムには未知である前記航空機の軌道予測器パラメータを推定するために前記軌道予測情報を使用するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記航空機に関する前記軌道予測情報が前記航空機から伝送される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記受け取るステップが、前記航空機と前記地上自動化システムの間の通信リンクの使用を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記軌道予測情報が、前記航空機の少なくとも1つの軌道変更点の相対位置を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記航空機性能パラメータが、前記少なくとも1つの軌道変更点の前記相対位置から推定される前記航空機の離陸重量を含み、前記少なくとも1つの軌道変更が、上昇飛行の頂点または降下の頂点のうちの少なくとも1つを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記航空機の軌道を予測するために、前記軌道予測器パラメータを前記地上自動化システムの1つまたは複数の軌道予測器に適用するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記使用するステップが、前記航空機の前記軌道予測情報を、軌道予測器を使用して、前記航空機の前記軌道予測器パラメータを可能な値全体にわたって変化させることによって生成された一組の軌道予測情報と比較するステップと、次に前記比較に基づいて少なくとも1つの軌道予測器パラメータを更新するステップによって前記航空機の前記軌道予測器パラメータのうちの前記少なくとも1つを予測するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記使用するステップが、前記航空機の前記軌道予測器パラメータを推定するために前記航空機の監視および測定データを使用するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記使用するステップが、前記航空機の前記軌道予測器パラメータを予測し、かつ、改良するために、確率密度関数の使用およびプロセスを更新するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
航空機の軌道を予測するために軌道予測器によって使用される航空機性能パラメータを推定するためのシステムであって、
航空機に関する軌道予測情報を受け取るための手段と、
さもなければ地上自動化システムには未知である前記航空機の軌道予測パラメータを推定するために前記航空機に関する前記軌道予測情報を使用するための手段と
を備えるシステム。
【請求項11】
前記航空機から前記航空機に関する前記軌道予測情報を伝送するための手段をさらに備える、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記受け取る手段が、前記航空機と前記地上自動化システムの間の通信リンクを備える、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記軌道予測情報が、前記航空機の少なくとも1つの軌道変更点の相対位置を含む、請求項10記載のシステム。
【請求項14】
前記航空機性能パラメータが、前記少なくとも1つの軌道変更点の前記相対位置から推定される前記航空機の離陸重量を含む、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記システムが、前記航空機の軌道を予測するために、前記航空機性能パラメータを前記地上自動化システムの1つまたは複数の軌道予測器に適用するための手段をさらに備える、請求項10記載のシステム。
【請求項16】
前記使用手段が、前記航空機の前記軌道予測情報を、軌道予測器を使用して、前記航空機の軌道予測器パラメータを可能な値全体にわたって変化させることによって生成された一組の軌道予測情報と比較することによって前記航空機の前記軌道予測器パラメータのうちの少なくとも1つを予測する手段と、前記比較に基づいて前記少なくとも1つの軌道予測器パラメータを更新するための手段とを備える、請求項10記載のシステム。
【請求項17】
前記使用手段が、前記航空機の軌道予測器パラメータを推定するために前記航空機の監視および測定データを受け取り、かつ、使用するための手段をさらに備える、請求項10記載のシステム。
【請求項18】
前記使用手段が、前記航空機の軌道予測器パラメータを予測し、かつ、改良するために、確率密度関数を実行し、かつ、プロセスを更新するための手段をさらに備える、請求項10記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−96988(P2013−96988A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−233352(P2012−233352)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】