説明

船舶の微小気泡発生用空気吹き出し口の清掃装置

【課題】 微小気泡発生用空気吹き出し口への海生生物の付着を防止する。
【解決手段】 船首部2の浸水部に、微小気泡発生用空気吹き出し口7を有する空気吹き出し器10が設けてある船舶における空気吹き出し器10に、一端をコンプレッサ19に接続したブロー用空気管20の他端を接続する。定期的にあるいは随時、コンプレッサ19からの圧縮空気22をブロー用空気管20内に導いて空気吹き出し口7よりブローさせ、空気吹き出し口7を清掃する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は船体表面を微小気泡で覆いながら航行できるように船舶の船首部の没水表面に設けてある微小気泡発生用の空気吹き出し口を清掃するために用いる清掃装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】船舶の航行時には、流体としての海水の粘性のために船体の周りに海水による境界層が形成されるが、この境界層の中では、海水の流速は船体表面が零で船体表面から離れるに従い急激に大きく変化する傾向にあり、船体の表面に海水の摩擦抵抗が作用し船体抵抗の大きな要素の一つとなっている。
【0003】そのため、近年、上記船体の表面に作用する摩擦抵抗を減少させて推進性能を向上させるための研究が進められており、その対策の一つとして、船体表面から微小気泡(マイクロバブル)を噴出させ、船体の浸水部(没水部)表面の境界層内に微小気泡を吹き込んで船体の浸水部表面を微小気泡で覆うことにより船体表面に作用する摩擦抵抗を低減することを狙ったマイクロバブル推進法の研究が進められている。
【0004】マイクロバブル推進法を具現化して船体摩擦抵抗を低減させるために本特許出願人は、図4(イ)(ロ)に示す如き摩擦抵抗低減装置を出願している。すなわち、船体1の船首部2の浸水部で且つ船底や船尾の方向へ流線3が向かうようになっている流線領域でしかも最も静圧の小さい位置(吃水線D.L.よりもやや下側位置)の船側外板4に、船殻骨材5の位置を避けて開口部6を船首尾方向に並べて設け、該各開口部6に、たとえば、直径を2mmとした多数の空気吹き出し口(細孔)7を5mmの配列ピッチで穿設した多孔板8を、船側外板4と面一になるように嵌入させて水密に取り付け、且つ該各多孔板8の内側に、空気吹き出し口7の位置を取り囲むようにシーチェスト9を固設して空気吹き出し器10を構成し、一方、上記船体1の船首部2の甲板上に、電動機12によって駆動されるブロワ13を加圧空気供給装置として設置し、該ブロワ13に接続した分配ヘッダー15に、複数本の空気送給管14を接続して、該各空気送給管14の先端を上記各空気吹き出し器10のシーチェスト9に各々接続し、シーチェスト9内に導いた加圧空気16を空気吹き出し口7より水中へ吹き出させることにより所要径の微小気泡17を発生させて流線3に乗せて船尾側へ沿わせるようにしたものである。11は流量調整弁を示す。
【0005】上記出願されている摩擦抵抗低減装置の場合、発生した微小気泡17を流線3に乗せて流すことができるため、船首尾方向前端側の空気吹き出し器10から発生させられる微小気泡17は船底に入るような流線3に沿って流れ、後端側の空気吹き出し器10から発生させられる微小気泡17ほど船側に沿って流れることになり、船体表面を微小気泡17で覆うことができて、船体1の摩擦抵抗を低減することができるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、空気吹き出し器10の空気吹き出し口7は細孔で没水部に位置しているため、船舶の航行時には問題は生じないが、たとえば、船舶を港等に停泊させているとき等には、空気吹き出し口7から加圧空気16を吹き出させるようにはしないことから、貝類や藻類等の海生生物が空気吹き出し口7に付着して空気吹き出し口7を閉塞させてしまうことが考えられる。
【0007】そこで、本発明は、海生生物の付着を防止して空気吹き出し口が閉塞してしまうことがないようにすることができるような船舶の微小気泡発生用空気吹き出し口の清掃装置を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、船首部の浸水部所要位置に、ブロワから送給された加圧空気を多数の空気吹き出し口より水中へ吹き出させて微小気泡を発生させるようにしてある空気吹き出し器に、コンプレッサから導いた圧縮空気を上記空気吹き出し口よりブローさせるためのブロー用空気管を接続した構成とする。
【0009】コンプレッサからの圧縮空気をブロー用空気管を通し空気吹き出し器内に導いて空気吹き出し口よりブローさせると、空気吹き出し口が圧縮空気のブローによって清掃されるため、付着した海生生物の除去と海生生物の付着が防止される。
【0010】又、空気吹き出し口にブロー用蒸気管を接続した構成として、空気吹き出し口から蒸気をブローさせると、清掃効果をより高めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】図1(イ)(ロ)は本発明の実施の一形態を示すもので、図4(イ)(ロ)に示したと同様な構成としてある摩擦抵抗低減装置を備えた船舶において、船体1の船首部2に位置する甲板上に、電動機18によって駆動されるコンプレッサ19を設置し、該コンプレッサ19に接続した分配ヘッダー21に、複数本のブロー用空気管20を接続して、該各ブロー用空気管20の先端を各空気吹き出し器10のシーチェスト9に各々接続し、シーチェスト9内に導いた圧縮空気22を空気吹き出し口7よりブローさせられるようにする。23は各ブロー用空気管20の開閉弁を示す。
【0013】船舶を長期的に停泊させておくときに空気吹き出し器10の空気吹き出し口7を清掃する場合には、圧縮空気22のブローを定期的にあるいは随時行うようにする。この場合、ブロワ13系の空気送給管14の流量調整弁11を閉じ、コンプレッサ19系のブロー用空気管20の開閉弁23を開き、電動機18によってコンプレッサ19を駆動させるようにする。これにより、コンプレッサ19にて圧縮された圧縮空気22がブロー用空気管20を通りシーチェスト9内に導かれ、多孔板8に穿設されている各空気吹き出し口7よりブローされる。このため、空気吹き出し口7の外側に貝類等の海生生物が付着していても、海生生物は吹き飛ばされて空気吹き出し口7は清掃されることになる。又、定期的に圧縮空気22を空気吹き出し口7から吹き出させることにより、海生生物が空気吹き出し口7に付着することを防止することができる。したがって、停泊中で空気吹き出し口7から加圧空気16を吹き出さないときでも空気吹き出し口7が塞がることはなく、加圧空気16の吹き出し性能が良好に維持される。
【0014】次に、図2は本発明の他の実施の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)に示したと同様な構成において、シーチェスト9に、開閉弁24を備えたブロー用蒸気管25を接続した構成を付加したものである。なお、ブロー用蒸気管25の上流側端部は甲板上に導いて開口させ、機関室から導いた作業用蒸気管に接続できるようにしてある。
【0015】図2に示すようにした場合は、ブロー用蒸気管25を通してシーチェスト9内に導いた高温の蒸気26を空気吹き出し口7からブローすることができるので、たとえ、停泊時等に空気吹き出し口7に海生生物が付着してしまったとしても、それを除去し易くすることができ、清掃効果をより高めることができる。
【0016】なお、上記実施の形態では、船側外板4に多孔板8を嵌め付けて空気吹き出し器10を構成するようにした船舶への適用例を示したが、たとえば、図3(イ)に示す如く、船首部2の船側外板4に空気吹き出し口7を直接穿設して、その内側にシーチェスト9を取り付けることにより空気吹き出し器10を構成するようにした船舶、あるいは、図3(ロ)に示す如く、船首部2の船側外板4の表面部に、前面に多孔板8を組み付けた枠体27を取り付けることにより空気吹き出し器10を構成するようにした船舶等においても同様に適用できること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0017】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明の船舶の微小気泡発生用空気吹き出し口の清掃装置によれば、船首部の浸水部所要位置に、ブロワから送給された加圧空気を多数の空気吹き出し口より水中へ吹き出させて微小気泡を発生させるようにしてある空気吹き出し器に、コンプレッサから導いた圧縮空気を上記空気吹き出し口よりブローさせるためのブロー用空気管を接続した構成としてあるので、定期的あるいは随時、ブロー用空気管を通して空気吹き出し器内に圧縮空気を供給して空気吹き出し口よりブローさせるようにすることにより、空気吹き出し口に付着した海生生物の除去ならびに空気吹き出し口への海生生物の付着を防止することができ、又、ブロー用蒸気管を通して導いた蒸気のブローを併用することによって、空気吹き出し口の清掃効果を更に高めることができる、という優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における船舶の微小気泡発生用空気吹き出し口の清掃装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は船首部の概略側面図、(ロ)は(イ)のA−A線拡大矢視図である。
【図2】本発明の他の実施の形態を示す概要図である。
【図3】本発明の適用例を示すもので、(イ)は船側外板に空気吹き出し口を直接穿設した船舶への適用例図、(ロ)は船側外板に多孔板を組み付けた枠体を取り付けた船舶への適用例図である。
【図4】最近提案されている摩擦抵抗低減装置を装備した船舶を示すもので、(イ)は船首部の概略図、(ロ)は(イ)のB−B線拡大矢視図である。
【符号の説明】
1 船体
2 船首部
4 船側外板
7 空気吹き出し口
10 空気吹き出し器
13 ブロワ
14 空気送給管
16 加圧空気
17 微小気泡
19 コンプレッサ
20 ブロー用空気管
22 圧縮空気
25 ブロー用蒸気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 船首部の浸水部所要位置に、ブロワから送給された加圧空気を多数の空気吹き出し口より水中へ吹き出させて微小気泡を発生させるようにしてある空気吹き出し器に、コンプレッサから導いた圧縮空気を上記空気吹き出し口よりブローさせるためのブロー用空気管を接続した構成を有することを特徴とする船舶の微小気泡発生用空気吹き出し口の清掃装置。
【請求項2】 空気吹き出し口にブロー用蒸気管を接続した請求項1記載の船舶の微小気泡発生用空気吹き出し口の清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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