説明

船舶推進機

【課題】シフト機構に過剰な荷重がかかっていることを精度よく検出することができる船舶推進機を提供する。
【解決手段】船舶推進機は、エンジンと、ドライブシャフトと、プロペラシャフトと、シフト機構と、操作力伝達機構41と、磁歪センサ25と、を備える。ドライブシャフトは、エンジンからの動力を伝達する。プロペラシャフトは、ドライブシャフトから伝達される動力によって回転駆動される。シフト機構は、ドライブシャフトからプロペラシャフトへ伝達される動力の回転方向を切り換える。操作力伝達機構は、シフト機構に連結されている。操作力伝達機構は、シフト機構を動作させるためのシフト操作力をシフト機構に伝達する。磁歪センサは、操作力伝達機構にかかっている荷重を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶推進機に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶推進機は、エンジンの動力によってプロペラを駆動することにより、船舶を推進させる。また、船舶推進機は、プロペラの回転方向を切り換えるためのシフト機構を備えている。シフト機構は、ドライブシャフトからプロペラシャフトへ伝達される動力の回転方向を切り換える。これにより、船舶の前進と後進とが切り換えられる。例えば、特許文献1に開示されている船舶推進機では、シフトケーブルがスライダを介して、シフト操作軸に連結されている。シフト操作がシフトケーブルを介してスライダに伝達されることによって、スライダが移動する。スライダの移動によってシフト操作軸が動作する。このシフト操作軸の動作によって、シフト機構がプロペラシャフトの回転方向を切り換える。
【0003】
上記の特許文献1の船舶推進機では、スライダの近傍にリミットスイッチが配置されている。シフト操作によってスライダにかかっている荷重が所定値以上になると、スライダが回転してリミットスイッチを押す。リミットスイッチが押されると、リミットスイッチからECUにON信号が送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−332903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の船舶推進機に搭載されている機構を利用すれば、スライダに過剰な荷重がかかっていることを検出することができる。例えば、シフト操作が行われているにも関わらず、シフト機構に含まれるドッグクラッチとベベルギアとの噛み合いに時間を要している場合には、その間にシフト機構に大きな荷重がかかる。このとき、上記のように、シフト機構にかかる荷重によってスライダが回転してリミットスイッチを押すことにより、ECUにリミットスイッチのON信号が送られる。このため、ECUは、リミットスイッチのON信号によって、シフト機構に過剰な荷重がかかっていることを検出することができる。そして、ECUは、シフト機構に過剰な荷重がかかっていると判定したときには、エンジンの出力を抑える制御を行うなどの対策を講じることにより、速やかにシフト機構を切り換えることができる。
【0006】
しかし、上記のような船舶推進機では、シフトケーブル、スライダ、或いは、シフト操作軸などの機構の経年変化により、スライダを回転させるための荷重が変動することがある。すなわち、同じ荷重であっても、経年変化によって、スライダが回転したり回転しなかったりすることが生じ得る。この場合、スライダの回転では、シフト機構に過剰な荷重がかかっていることを精度よく検出することは困難である。
【0007】
本発明の課題は、シフト機構に過剰な荷重がかかっていることを精度よく検出することができる船舶推進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る船舶推進機は、エンジンと、ドライブシャフトと、プロペラシャフトと、シフト機構と、操作力伝達機構と、磁歪センサと、を備える。ドライブシャフトは、エンジンからの動力を伝達する。プロペラシャフトは、ドライブシャフトから伝達される動力によって回転駆動される。シフト機構は、ドライブシャフトからプロペラシャフトへ伝達される動力の回転方向を切り換える。操作力伝達機構は、シフト機構に連結されている。操作力伝達機構は、シフト機構を動作させるためのシフト操作力をシフト機構に伝達する。磁歪センサは、操作力伝達機構にかかっている荷重を検出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る船舶推進機では、操作力伝達機構にかかっている荷重が磁歪センサによって検出される。このため、操作力伝達機構の経年変化の影響を抑えて、シフト機構に過剰な荷重がかかっていることを精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る船舶推進機を示す側面図。
【図2】エンジンの制御系及び船舶推進機が備える操作装置を示すブロック図
【図3】図1におけるIII−III断面の一部を示す図。
【図4】操作力伝達機構の斜視図。
【図5】他の実施形態に係る船舶推進機の断面の一部を示す図。
【図6】図5に示すシフトアクチュエータ及びリンク機構の拡大図。
【図7】他の実施形態に係る磁歪センサの取付位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る船舶推進機について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る船舶推進機1を示す側面図である。船舶推進機1は、船外機である。船舶推進機1は、エンジンカバー2、上部ケーシング3、下部ケーシング4、エンジン5、ブラケット6を含む。エンジンカバー2は、エンジン5を収容する。エンジンカバー2は、上部エンジンカバー2aと下部エンジンカバー2bとを含む。上部エンジンカバー2aは、下部エンジンカバー2bの上方に配置されている。上部ケーシング3は、下部エンジンカバー2bの下方に配置されている。下部ケーシング4は、上部ケーシング3の下方に配置されている。船舶推進機1は、ブラケット6を介して図示しない船体に取り付けられる。
【0012】
エンジン5は、エンジンカバー2内に配置される。エンジン5は、エキゾーストガイド部7上に配置されている。エキゾーストガイド部7は、下部エンジンカバー2b内に配置されている。エンジン5は、多気筒エンジンであり、各気筒は上下方向に並んで配置される。エンジン5は、クランク軸12を含む。クランク軸12は、鉛直方向に沿って延びている。上部ケーシング3及び下部ケーシング4内には、ドライブシャフト11が配置される。ドライブシャフト11は、上部ケーシング3及び下部ケーシング4内において上下方向に沿って配置される。ドライブシャフト11は、エンジン5のクランク軸12に連結されており、エンジン5からの動力を伝達する。下部ケーシング4の下部には、プロペラ13が配置される。プロペラ13は、エンジン5の下方に配置されている。プロペラ13にはプロペラシャフト14が連結されている。プロペラシャフト14は、前後方向に沿って配置されている。プロペラシャフト14は、シフト機構15を介してドライブシャフト11の下部に連結されている。プロペラシャフト14は、ドライブシャフト11から伝達される動力によって回転駆動される。
【0013】
シフト機構15は、ドライブシャフト11からプロペラシャフト14へ伝達される動力の回転方向を切り換える。シフト機構15は、ピニオンギア16と前進用ギア17と後進用ギア18とドッグクラッチ19とを含む。ピニオンギア16は、ドライブシャフト11に連結されている。ピニオンギア16は、前進用ギア17及び後進用ギア18と噛み合っている。前進用ギア17と後進用ギア18とは、プロペラシャフト14に対して相対回転可能に設けられている。ドッグクラッチ19は、プロペラシャフト14に対して相対回転不能に取り付けられている。また、ドッグクラッチ19は、プロペラシャフト14の軸線方向に沿って、前進位置と後進位置と中立位置とに移動可能に設けられている。ドッグクラッチ19は、後述する操作部材31(図2参照)の操作に応じて、前進位置と後進位置と中立位置とに移動する。ドッグクラッチ19は、前進位置において、前進用ギア17とプロペラシャフト14とを相対回転不能に固定する。この場合、ドライブシャフト11の回転は、前進用ギア17を介してプロペラシャフト14に伝達される。これにより、船体を前進させる方向にプロペラ13が回転する。また、ドッグクラッチ19は、後進位置において、後進用ギア18とプロペラシャフト14とを相対回転不能に固定する。この場合、ドライブシャフト11の回転が後進用ギア18を介してプロペラシャフト14に伝達される。これにより、船体を後進させる方向にプロペラ13が回転する。ドッグクラッチ19が前進位置と後進位置との間の中立位置に位置する場合には、前進用ギア17と後進用ギア18とは、それぞれプロペラシャフト14に対して相対回転可能となる。すなわち、ドライブシャフト11からの回転は、プロペラシャフト14には伝達されず、プロペラシャフト14は空転可能となる。
【0014】
図2は、エンジン5の制御系及び船舶推進機1が備える操作部材31を示すブロック図である。エンジン5は、ECU21(Engine Control Unit)によって制御される。ECU21は、本発明の制御部に相当する。ECU21は、エンジン5の制御プログラムを記憶している。ECU21は、各種のセンサ(図示せず)が検出したエンジン5に関する情報に基づいて、燃料噴射装置22と、スロットル弁23と、点火装置24との動作を制御する。燃料噴射装置22は、エンジン5の燃焼室に供給する燃料を噴射する。スロットル弁23の開度が変更されることにより、燃焼室へ送られる混合気の量が調整される。点火装置24は、燃焼室内の燃料に点火する。なお、図2では図示されていないが、燃料噴射装置22とスロットル弁23と点火装置24とは、エンジン5の各気筒ごとに備えられている。
【0015】
操作部材31は、船体に取り付けられる。操作部材31は、例えば、操作レバーである。操作部材31は、操作部材31の操作に応じて、エンジン5の出力を制御するための操作信号をECU21に入力する。ECU21は、操作部材31からの操作信号に基づいて、エンジン5を制御する。オペレータが操作部材31を操作することによって、操作部材31の位置に応じた検出値の操作信号が出力される。これにより、スロットル開度が制御され、船体の速度を制御することができる。また、オペレータは、操作部材31を操作することによって、船体の前進と後進とを切り換えることができる。具体的には、操作部材31は、前進位置(F)と後進位置(R)と中立位置(N)とに切換可能である。操作部材31の操作は、後述する操作力伝達機構41を介して、シフト機構15に伝達される。
【0016】
図3は、図1におけるIII−III断面の一部を示す図である。図4は、操作力伝達機構41の斜視図である。操作力伝達機構41は、上述したシフト機構15に連結されており、シフト機構15を動作させるためのシフト操作力をシフト機構15に伝達する。具体的には、操作力伝達機構41は、操作部材31に加えられたシフト操作力をシフト機構15に伝達する。操作力伝達機構41は、ワイヤ42と、スライダ43と、ガイド部材44と、リンク機構45と、シフトロッド46とを含む。ワイヤ42は、操作部材31に連結されている。ワイヤ42は、下部エンジンカバー2bに形成された貫通孔20を通って、エンジンカバー2の内部に挿入されている。スライダ43は、ワイヤ42に連結されている。ワイヤ42の先端は、スライダ43に対して揺動可能に連結されている。ガイド部材44は、スライダ43の移動を案内する。ガイド部材44は、溝部44aを含む。スライダ43は、溝部44a内に配置されている。スライダ43は、溝部44aに沿って移動する。ガイド部材44は、船舶推進機1に対して固定的に設けられている。例えば、ガイド部材44は、エキゾーストガイド部7に固定されてもよい。リンク機構45は、スライダ43に連結されている。リンク機構45は、シフトロッド46に連結されている。具体的には、リンク機構45は、第1リンク部材47と第2リンク部材48とを含む。第1リンク部材47は、スライダ43に対して揺動可能に連結されている。第1リンク部材47は、屈曲した形状を有する。第2リンク部材48の第1端部48aは、第1リンク部材47に対して揺動可能に連結されている。第2リンク部材48の第2端部48bは、シフトロッド46の上部に固定されている。第1端部48aが第1リンク部材47から力を加えられることによって、第2リンク部材48がシフトロッド46の中心軸周りに回転する。すなわち、リンク機構45は、スライダ43の直線運動をシフトロッド46の回転運動に変換する。図4に示すように、シフトロッド46の下部には、クランク部49が設けられている。クランク部49は、シフトロッド46の中心軸から偏心して配置されている。クランク部49は、シフトロッド46が中心軸周りに回転することにより、シフト機構15のドッグクラッチ19(図1参照)に接触して、ドッグクラッチ19を移動させる。
【0017】
具体的には、図2に示すように、オペレータが操作部材31を前進位置(F)に移動させると、図4に示すように、ワイヤ42がD1f方向に引かれる。すると、スライダ43がD2f方向に移動する。スライダ43の動きは、リンク機構45によってシフトロッド46に伝達され、それによりシフトロッド46がD3f方向に回転する。そして、クランク部49がD4f方向に移動することにより、図1に示すドッグクラッチ19が前進位置に移動する。また、オペレータが操作部材31を後進位置(R)に移動させると、図4に示すように、ワイヤ42がD1r方向に押される。すると、スライダ43がD2r方向に移動する。スライダ43の動きは、リンク機構45によってシフトロッド46に伝達され、それによりシフトロッド46がD3r方向に回転する。そして、クランク部49がD4r方向に移動することにより、図1に示すドッグクラッチ19が後進位置に移動する。
【0018】
図2及び図4に示すように、船舶推進機1は、磁歪センサ25を備えている。磁歪センサ25は、操作力伝達機構41にかかっている荷重を検出する。具体的には、磁歪センサ25は、シフトロッド46に取り付けられており、シフトロッド46と同軸に配置されている。磁歪センサ25は、第2リンク部材48の下方に位置している。磁歪センサ25は、シフトロッド46にかかっている捻り方向の荷重を検出する。すなわち、磁歪センサ25は、シフトロッド46にかかっているトルクを検出する。磁歪センサ25は、図示しない磁性体と検出コイルとを含んでおり、磁性体が歪むことによって生じる磁場の変化に応じた出力電圧を検出コイルによって検出する。これにより、磁歪センサ25は、トルクに応じた出力電圧を検出することができる。磁歪センサ25としては、例えば、日本国特許公開公報2004−184190号に公開されているものなど、公知のものが利用可能である。
【0019】
上述したECU21は、磁歪センサ25によって検出された荷重が所定値以上であるときには、エンジン5の回転速度を抑制する制御を実行する。エンジン5の回転速度を抑制する制御としては、例えば、点火カット、噴射カット、スロットル開度を絞る、点火時期の変更、混合気の希薄化、などの方法が挙げられる。エンジン5の回転速度を抑制する制御として、これらの方法のいずれか1つが実行されてもよい。或いは、エンジン5の回転速度を抑制する制御として、上記の複数の方法が組み合わせて実行されてもよい。点火カットでは、点火装置24を制御することにより、混合気への点火が停止される。噴射カットでは、燃料噴射装置22を制御することにより、燃料の噴射が停止される。スロットル開度を絞る場合には、スロットル弁23を制御することにより、スロットル開度が低減される。点火時期の変更では、燃料への点火が、適正な時期よりも遅く実行される。混合気の希薄化では、スロットル弁23及び/又は燃料噴射装置22を制御することにより、混合気中の燃料の割合が低減される。なお、点火カット及び/又は噴射カットの対象は、エンジン5の全気筒、又は、一部の複数の気筒、又は、1つの気筒であってもよい。また、点火カット及び/又は噴射カットの対象は、指定の気筒、又は、エンジン5の回転速度を抑制する制御の実行のタイミングと同期した気筒であってもよい。さらに、点火カット及び/又は噴射カットは、1度だけ、又は、連続的に、又は、断続的に実行されてもよい。
【0020】
本発明の実施形態に係る船舶推進機1では、操作力伝達機構41にかかっている荷重が磁歪センサ25によって検出される。このため、操作力伝達機構41の経年変化の影響を抑えて、シフト機構15に過剰な荷重がかかっていることを精度よく検出することができる。
【0021】
また、磁歪センサ25によって検出された荷重が所定値以上であるときには、エンジン5の回転速度を抑制する制御が実行されるので、シフト操作時のシフト機構15への荷重を低減することができる。さらに、磁歪センサ25によって荷重を精度よく検出できるため、荷重低減効果を安定的に得ることができる。このため、船舶推進機1の操作性を安定させることができる。
【0022】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0023】
上記の実施形態では、操作部材31の操作がワイヤ42、スライダ43、リンク機構45などの機械的な機構によって伝達されているが、電気的な機構によって伝達されてもよい。例えば、図5に示すように、操作力伝達機構51は、シフトアクチュエータ52とリンク機構53とを含む。シフトアクチュエータ52は、上述した操作部材31(図2参照)の操作に基づいて駆動される。具体的には、シフトアクチュエータ52は、電動シリンダであり、本体部54と可動部55を含む。本体部54は、船舶推進機1に対して固定的に設けられている。本体部54は、エンジン5に固定されている。或いは、本体部54は、エキゾーストガイド部7に固定されてもよい。ECU21は、操作部材31の操作に応じた操作信号を操作部材31から入力される。ECU21は、操作部材31からの操作信号に基づいて、シフトアクチュエータ52を制御する。シフトアクチュエータ52は、ECU21からの指令信号に応じて、本体部54に対して可動部55を移動させる。可動部55は、ロッド状の部材であり、本体部54に対して伸縮する。可動部55は、ガイドレール56に対して相対移動可能に配置されている。ガイドレール56は、溝部56aを含む。可動部55は、溝部56a内に配置されている。可動部55は、溝部56aに沿って移動する。ガイドレール56は、船舶推進機1に対して固定的に設けられている。例えば、ガイドレール56は、支持部57を介して、エンジン5に固定されている。或いは、ガイドレール56は、支持部57を介して、エキゾーストガイド部7に固定されてもよい。可動部55は、ガイドレール56に沿って移動する。
【0024】
図6(a)は、図5に示すシフトアクチュエータ52及びリンク機構53の拡大図である。図6(b)は、シフトアクチュエータ52及びリンク機構53の側面図である。リンク機構53は、第1リンク部材61と第2リンク部材62とを含む。第1リンク部材61は、可動部55に連結されている。第1リンク部材61は、上リンク部材64と下リンク部材65と連結部材63とを含む。上リンク部材64の基端部64aと下リンク部材65の基端部65aとは、共通の回転軸66を介して、それぞれ回転可能に支持されている。上リンク部材64は、ガイドレール56の上方に配置されている。上リンク部材64の先端部64aは、可動部55に対して揺動可能に連結されている。下リンク部材65は、ガイドレール56の下方に配置されている。下リンク部材65の先端部65bは、連結部材63の一端部と一体化されている。連結部材63の他端部は、第2リンク部材62に対して揺動可能に連結されている。下リンク部材65の基端部65aと先端部65bとの間の中間部65cは、可動部55に対して揺動可能に連結されている。第1リンク部材61は、第2リンク部材62に対して揺動可能に連結されている。第2リンク部材62は、シフトロッド46に固定されている。
【0025】
オペレータが操作部材31を前進位置(F)に移動させると、ECU21は、シフトアクチュエータ52を制御することによって、可動部55をD11f方向に移動させる。すると、下リンク部材65が回転軸66周りに回転して、下リンク部材65の先端部65bが、D12f方向に移動する。下リンク部材65の動きは、連結部材63を介して第2リンク部材62に伝達され、これにより、第2リンク部材62の先端部63aがD13f方向に移動する。それによりシフトロッド46がD14f方向に回転する。そして、上記の実施形態と同様に、図4に示すように、クランク部49がD4f方向に移動することにより、図1に示すドッグクラッチ19が前進位置に移動する。また、オペレータが操作部材31を後進位置(R)に移動させると、図6に示すように、ECU21は、シフトアクチュエータ52を制御することによって、可動部55をD11r方向に移動させる。すると、下リンク部材65が回転軸66周りに回転して、下リンク部材65の先端部65bが、D12r方向に移動する。下リンク部材65の動きは、連結部材63を介して第2リンク部材62に伝達され、これにより、第2リンク部材62の先端部63aがD13r方向に移動する。それによりシフトロッド46がD14r方向に回転する。そして、上記の実施形態と同様に、図4に示すように、クランク部49がD4r方向に移動することにより、図1に示すドッグクラッチ19が後進位置に移動する。
【0026】
以上のように、操作部材31の操作が電気的な機構を介して伝達される構造においても、上記の実施形態に係る船舶推進機1と同様の効果を奏することができる。
【0027】
ECU21は、磁歪センサ25のキャリブレーション制御を行ってもよい。ECU21は、例えばシフト機構15の組み付け時においてシフト機構15が中立状態であるときの荷重を磁歪センサ25によって検出し、その値をキャリブレーションの基準値として記憶しておく。その後、ECU21は、シフト機構15が中立状態であるときに磁歪センサ25によって検出した荷重と、記憶された基準値とに基づいて磁歪センサ25のキャリブレーションを行う。これにより、磁歪センサ25の検出の精度を向上させることができる。
【0028】
上記の実施形態では、磁歪センサ25は、シフトロッド46に取り付けられているが、磁歪センサ25の取付位置はシフトロッド46に限られない。また、磁歪センサ25は、捻り方向の荷重に限らず、伸縮方向の荷重を検出するものであってもよい。伸縮方向の荷重を検出する磁歪センサとしては、例えば、日本国特許公開公報2010−38913号に公開されているものなど、公知のものが利用可能である。また、この場合、図7に示すように、磁歪センサ25の取付位置は、ワイヤ42(位置A)とスライダ43(位置B)と第1リンク部材47(位置C)のいずれか、或いは、これらの組み合わせであることが好ましい。或いは、磁歪センサ25の取付位置は、図7に示す位置A,B,C及びシフトロッド46のいずれか、或いは、これらの組み合わせであってもよい。
【0029】
上記の実施形態では、船舶推進機の一例として船外機が挙げられているが、他の種類の船舶推進機に対して本発明が適用されてもよい。例えば、船内外機に対して本発明が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、シフト機構に過剰な荷重がかかっていることを精度よく検出することができる船舶推進機を提供することができる。
【符号の説明】
【0031】
5 エンジン
11 ドライブシャフト
14 プロペラシャフト
15 シフト機構
41,51 操作力伝達機構
25 磁歪センサ
1 船舶推進機
46 シフトロッド
21 ECU
33 シフト操作部材
42 ワイヤ
43 スライダ
45,53 リンク機構
46 シフトロッド
44 ガイド部材
52 シフトアクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンからの動力を伝達するドライブシャフトと、
前記ドライブシャフトから伝達される動力によって回転駆動されるプロペラシャフトと、
前記ドライブシャフトから前記プロペラシャフトへ伝達される動力の回転方向を切り換えるシフト機構と、
前記シフト機構に連結されており、前記シフト機構を動作させるためのシフト操作力を前記シフト機構に伝達する操作力伝達機構と、
前記操作力伝達機構にかかっている荷重を検出する磁歪センサと、
を備える船舶推進機。
【請求項2】
前記操作力伝達機構は、シフトロッドを含み、
前記磁歪センサは、前記シフトロッドにかかっている荷重を検出する、
請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項3】
前記磁歪センサによって検出された荷重が所定値以上であるときには、前記エンジンの回転速度を抑制する制御を実行する制御部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の船舶推進機。
【請求項4】
前記シフト機構が中立状態であるときの前記荷重を前記磁歪センサによって検出し、前記シフト機構が中立状態であるときの前記荷重に基づいて前記磁歪センサのキャリブレーションを行う制御部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の船舶推進機。
【請求項5】
オペレータによって操作される操作部材をさらに備え、
前記操作力伝達機構は、前記操作部材に連結されたワイヤと、前記ワイヤに連結されたスライダと、前記スライダに連結されたリンク機構と、前記リンク機構に連結されたシフトロッドとを含み、
前記磁歪センサは、前記シフトロッドにかかっている荷重を検出する、
請求項1から4のいずれかに記載の船舶推進機。
【請求項6】
前記操作力伝達機構は、前記スライダの移動を案内するガイド部材をさらに含み、
前記ガイド部材は、前記船舶推進機に対して固定的に設けられている、
請求項5に記載の船舶推進機。
【請求項7】
オペレータによって操作される操作部材をさらに備え、
前記操作力伝達機構は、前記操作部材の操作に基づいて駆動されるアクチュエータと、前記アクチュエータに連結されたリンク機構と、前記リンク機構に連結されたシフトロッドとを含み、
前記磁歪センサは、前記シフトロッドにかかっている荷重を検出する、
請求項1から4のいずれかに記載の船舶推進機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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