説明

芳香族エステル化合物の製造方法

【課題】芳香族カルボン酸と多価活性水素化合物とが縮合した、目的の構造の芳香族エステル化合物を高純度で製造できる方法の提供。
【解決手段】2価以上の活性水素含有化合物(A)の活性水素含有基と3価以上の芳香族ポリカルボン酸無水物(B)の−CO−O−CO−基とを反応させて得られた化合物(C)にアルキレンオキサイドを反応させてなる、芳香族エステル化合物(D)の製造方法。例えば化合物(A)のポリエチレングリコールと化合物(B)無水トリメット酸無水物をアルカリ触媒下で反応させ、その後、化合物(C)エチレンオキサイドと反応させ、目的の芳香族エステル化合物(D)を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族エステル化合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、芳香族カルボン酸と多価活性水素化合物とが縮合した構造の芳香族エステル化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族カルボン酸と多価活性水素化合物とが縮合した構造の芳香族エステル化合物は、ウレタンフォームやウレタン樹脂の強度向上剤として使用できる(特許文献1)。また、多価エステル化合物は、一般に多価カルボン酸化合物のエステル化により製造される(特許文献2)。しかし、芳香族カルボン酸と活性水素化合物の脱水反応や、芳香族カルボン酸塩とハロゲン化物の反応により、この芳香族エステル化合物の合成を行うと、エステル交換反応などの副反応により、純度の高い目的の芳香族エステル化合物が合成できず、強度向上剤としての物性が悪くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際出願番号PCT/JP2011/000866
【特許文献2】特許第4063766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は芳香族カルボン酸と多価活性水素化合物とが縮合した、目的の構造の芳香族エステル化合物を高純度で製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、2価以上の活性水素含有化合物(A)の活性水素含有基と3価以上の芳香族ポリカルボン酸無水物(B)の−CO−O−CO−基とを反応させて得られた化合物(C)にアルキレンオキサイドを反応させてなる、下記一般式(I)で表される構造を有する芳香族エステル化合物(D)の製造方法である。
【0006】
【化1】

【0007】
[一般式(I)中、R1は(ポリ)オキシアルキレングリコールから1個の活性水素を除いた残基を表す。;Yは3価以上の芳香族ポリカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基を表す。;aは2≦a≦(Bの芳香環置換基数−2)を満たす整数である。;Zはm価の活性水素含有化合物から活性水素を除いた残基を表す。;mは2以上の整数を表す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法にて得られた芳香族エステル化合物(D)は、高純度である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の芳香族エステル化合物の製造方法は、2価以上の活性水素含有化合物(A)の活性水素含有基と3価以上の芳香族ポリカルボン酸無水物(B)の−CO−O−CO−基とを反応させて得られた化合物(C)にアルキレンオキサイドを反応させてなることを特徴とする芳香族エステル化合物(D)の製造方法である。本発明の製造方法によって製造される芳香族エステル化合物(D)は、下記一般式(I)で表される構造を有する。
【0010】
【化2】

【0011】
一般式(I)中、R1は(ポリ)オキシアルキレングリコールから1個の活性水素を除いた残基を表す。;Yは3価以上の芳香族ポリカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基を表す。Zはm価の活性水素含有化合物から活性水素を除いた残基を表す。
【0012】
Y上の置換基の配置としては、2個のカルボニル基が隣接し、3個目のカルボニル基と1又は2個目のカルボニル基の間に置換基として水素が配置された構造が好ましい。
【0013】
Yを構成する3価以上の芳香族ポリカルボン酸としては、トリメリット酸、ヘミリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレン−2,3,6トリカルボン酸及び2,3,6−アントラセントリカルボン酸等の炭素数8〜18の芳香族ポリカルボン酸が挙げられる。化合物(D)をポリウレタンフォーム用強度向上剤として使用する場合のハンドリング及びポリウレタンフォームの機械物性(伸び、引っ張り強度、圧縮硬さ)向上の観点から、Yに使用する芳香族ポリカルボン酸は単環式化合物が好ましく、さらに好ましくはトリメリット酸及びピロメリット酸である。また、本発明の製造方法で用いる原料(すなわち、3価以上の芳香族ポリカルボン酸無水物(B))としては、これら好ましい芳香族ポリカルボン酸の無水物が好ましく、さらに好ましくは無水トリメリット酸及び無水ピロメリット酸である。
【0014】
一般式(I)中のaは2≦a≦(Bの芳香環置換基数−2)を満たす整数である。芳香環置換基数とは、芳香環を構成する炭素原子に結合する置換基の数である。例えば、炭素6個から構成される単環の芳香環では、芳香環置換基数が6であり、aとして2〜4を取りうる。芳香環が単環の芳香環の場合、機械物性(伸び、引っ張り強度、圧縮硬さ)向上の観点から、aは2、3が好ましい。
【0015】
一般式(I)中のZはm価の活性水素含有化合物(A)から活性水素を除いた残基を表す。活性水素化合物(A)は、本発明の製造方法において芳香族ポリカルボン酸無水物(B)と反応させる。一般式(I)において、mは2以上の整数を表し、2〜8が好ましい。
【0016】
活性水素含有化合物(A)としては、水酸基含有化合物、及び、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、これらのアルキレンオキサイド(以下、AOと略す)付加物、分子内に2種以上の活性水素含有官能基を有する化合物が含まれる。
【0017】
水酸基含有化合物としては、2〜8価の多価アルコール、及び多価フェノール等が含まれる。具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3及び1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等の2価アルコール;グリセリン及びトリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体等の4〜8価のアルコ―ル;フロログルシン、クレゾール、ピロガロ―ル、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノ―ルA、ビスフェノールF、及び、ビスフェノールS、1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロキシアントラセン等の多価フェノ―ル;ポリブタジエンポリオール;ひまし油系ポリオール;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2〜100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)並びに米国特許3265641号明細書に記載のポリフェノール等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味し、以下において同様である。
【0018】
アミノ基含有化合物としては、ポリアミン及びアミノアルコール等が含まれる。具体的には、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジエチレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;ピペラジン及びN−アミノエチルピペラジン等の複素環式ポリアミン;ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン;フェニレンジアミン、トリレンジアミン及びジフェニルメタンジアミン等の芳香族ポリアミン;モノエタノ―ルアミン、ジエタノ―ルアミン及びトリエタノ―ルアミン等のアルカノ―ルアミン;ジカルボン酸と過剰のポリアミンとの縮合により得られるポリアミドポリアミン;ポリエーテルポリアミン;ヒドラジン(ヒドラジン及びモノアルキルヒドラジン等)、ジヒドラジッド(コハク酸ジヒドラジッド及びテレフタル酸ジヒドラジッド等)、グアニジン(ブチルグアニジン及び1−シアノグアニジン等);ジシアンジアミド等;が挙げられる。
【0019】
チオール基含有化合物としては、2〜8価の多価チオールが挙げられる。具体的にはエチレンジチオール及び1、6−ヘキサンジチオール等が挙げられる。
【0020】
活性水素含有化合物としては、分子内に2種以上の活性水素含有官能基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基及び、チオール基等)を有する化合物も使用できる。
【0021】
また、活性水素含有化合物(A)としては、上記活性水素含有化合物のAO付加物を使用することもできる
【0022】
活性水素含有化合物に付加させるAOとしては、炭素数2〜6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略す)、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略す)、1,3−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0023】
化合物(D)をポリウレタンフォーム用強度向上剤として使用する場合のハンドリング及びポリウレタンフォームの機械物性(伸び、引っ張り強度、圧縮硬さ)向上の観点から、活性水素含有化合物(A)には、2〜8価の水酸基含有化合物を用いることが好ましく、さらに好ましくは2価の水酸基含有化合物である。
【0024】
一般式(I)中、R1は(ポリ)オキシアルキレングリコールから1個の活性水素を除いた残基を表す。
オキシアルキレン基としては、炭素数2〜6のオキシアルキレン基、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシ(フェニル)エチレン及びオキシテトラメチレン基等が挙げられる。これらのうち、性状や反応性の観点から、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基が好ましく、より好ましくはオキシエチレン基である。
(ポリ)オキシアルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン(ブロック又はランダム)グリコール等が挙げられる。
【0025】
本発明の製造方法において、2価以上の活性水素含有化合物(A)の活性水素含有基と3価以上の芳香族ポリカルボン酸無水物(B)の−CO−O−CO−基とを反応させて化合物(C)を得る。
【0026】
本発明における(A)と(B)との使用割合は、その反応基のモル比が1:2〜2:1(活性水素含有基:−CO−O−CO−基)の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1:1.2〜1.2:1であり、特に好ましくは1:1である。
【0027】
(A)と(B)との反応温度としては20℃〜140℃が好ましく、より好ましくは50℃〜140℃であり、特に好ましくは80℃〜130℃である。
【0028】
(A)と(B)の反応の際に溶媒を用いてもよい。使用できる溶媒としては、炭化水素、エーテル、ケトン及びハロゲン化炭化水素等の中性かつ活性水素を持たない化合物が好ましく、溶解度の観点から、さらに好ましくはエーテル及びケトン、特に好ましくはアセトン及びジオキサンである。また反応の際にアルカリ触媒を用いてもよい。アルカリ触媒としては、アミン触媒が好ましく、特に好ましくは、N−エチルモルフォリンである。
【0029】
本発明の製造方法において、化合物(C)にアルキレンオキサイドを反応させて芳香族エステル化合物(D)を得る。
【0030】
化合物(C)に付加させるAOとしては、炭素数2〜6のAO、例えば、EO、PO、1,3−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、性状や反応性の観点から、PO、EOが好ましく、より好ましくはEOである。
【0031】
強度向上剤のハンドリング及びポリウレタンフォームの機械物性(伸び、引っ張り強度、圧縮硬さ)向上の観点から、アルキレンオキサイドの付加量としては、カルボキシル基に対して、モル比で1〜1.4倍であることが好ましく、さらに好ましくは1.1〜1.35倍である。設定範囲よりもアルキレンオキサイドが少ない場合は、未反応カルボン酸が残存することで物性に悪影響を及ぼし、多い場合はエステル交換反応が起こり、副生成物が発生する。
【0032】
(C)とアルキレンオキサイドの反応温度としては20℃〜110℃が好ましく、より好ましくは50℃〜110℃であり、特に好ましくは80℃〜100℃である。
【0033】
(C)とアルキレンオキサイドとの反応の際に溶媒を用いてもよい。使用できる溶媒としては、炭化水素、エーテル、ケトン及びハロゲン化炭化水素等の中性かつ活性水素を持たない化合物が好ましく、溶解度の観点から、さらに好ましくはエーテル及びケトン、特に好ましくはアセトン及びジオキサンである。また反応の際にアルカリ触媒を用いてもよい。触媒としては、アミン触媒が好ましく、特に好ましくは、N−エチルモルフォリンである。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
<ポリエーテルポリオールの水酸基価>
実施例中、ポリエーテルポリオール(P)、ポリエーテルポリオール成分(p)の水酸基価(mgKOH/g)はJIS K0070(1992年版)に規定の方法にて測定した値である。
【0036】
<ポリエーテルポリオールの分子量分布>
ポリエーテルポリオールの分子量分布の測定は、ポリエーテルポリオールのTHF溶液を調製し、GPC装置(日本ウォーターズ(株)製,製品名:Alliance (カラム:TSKgelSuperH4000、H3000、H2000)を使用した。
【0037】
実施例1
攪拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製 PEG−600;数平均分子量600、水酸基価187)1モル、無水トリメリット酸2モル及びアルカリ触媒(N−エチルモルフォリン)0.010モルを仕込み、窒素雰囲気下、0.02MPa、130±5℃で6時間反応させた。その後EO4.5モルを80±5℃、圧力0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、80±5℃で2時間熟成し、強度向上剤A−1を得た。A−1の測定値は表1記載の通り。
【0038】
実施例2
実施例1と同様のオートクレーブに、ポリプロピレングリコールEOチップ品(三洋化成工業株式会社製 サンニックスPL−910;数平均分子量800のポリプロピレングリコールにEOを2モル付加したもの、水酸基価125)1モル、無水トリメリット酸2モル及びアルカリ触媒(N−エチルモルフォリン)0.010モルを仕込み、窒素雰囲気下、0.02MPa、130±5℃で7時間反応させた。さらに、EO4.5モルを80±5℃、圧力0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、80±5℃で2時間熟成し、強度向上剤A−2を得た。A−2の測定値は表1記載の通り。
【0039】
実施例3
実施例1と同様のオートクレーブに、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学株式会社製 PTMG−1000;数平均分子量1000、水酸基価112)1モル、無水トリメリット酸2モル及びアルカリ触媒(N−エチルモルフォリン)0.010モルを仕込み、窒素雰囲気下、0.02MPa、130±5℃で9時間反応させた。さらに、EO4.5モルを80±5℃、圧力0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、80±5℃で2時間熟成し、強度向上剤A−3を得た。A−3の測定値は表1記載の通り。
【0040】
実施例4
実施例1と同様のオートクレーブに、ポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製 PEG−200;数平均分子量200、水酸基価561)1モル、無水トリメリット酸2モル及びアルカリ触媒(N−エチルモルフォリン)0.010モル、ジオキサンを25wt%仕込み、窒素雰囲気下、0.13MPa、130±5℃で5時間反応させた。その後EO4.5モルを80±5℃、圧力0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、80±5℃で2時間熟成した。熟成終了後、溶媒、副生成物を−0.1MPaにて1時間減圧除去して、強度向上剤A−4を得た。A−4の測定値は表1記載の通り。
【0041】
実施例5
実施例1と同様のオートクレーブに、PEG−200を1モル、無水トリメリット酸2モル及びアルカリ触媒(N−エチルモルフォリン)0.010モル、ジオキサンを25wt%仕込み、窒素雰囲気下、0.50MPa、130±5℃で5時間反応させた。その後EO5.3モルを100±5℃、圧力0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、100±5℃で2時間熟成した。熟成終了後、溶媒、副生成物を−0.1MPaにて1時間減圧除去して、強度向上剤A−5を得た。A−5の測定値は表1記載の通り。
【0042】
実施例6
実施例1と同様のオートクレーブに、PEG−600を1モル、無水ピロメリット酸2モル及びアルカリ触媒(N−エチルモルフォリン)0.010モルを仕込み、窒素雰囲気下、0.02MPa、130±5℃で6時間反応させた。その後EO2.3モルを80±5℃、圧力0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、80±5℃で2時間熟成し、強度向上剤A−5を得た。A−5の測定値は表1記載の通り。
【0043】
比較例1
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、PEG−600を1モル、無水トリメリット酸2モルを仕込み、窒素雰囲気下、0.02MPa、130±5℃で12時間反応させた。その後エチレングリコール4モルを140℃±5℃で生成する水を留去しながら7時間反応させ、B−1を得た。B−1の測定値は表1記載の通り。
【0044】
比較例2
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、PEG−600を1モル、無水トリメリット酸2モルを仕込み、130℃±5℃で12時間反応させた後、トリエチルアミン4モル、2−クロロエタノール4モルを入れ、80℃±5℃で5時間反応させた。その後、分液を行い、B−2を得た。B−2の測定値は表1記載の通り。
【0045】
比較例3
実施例1において、EO4.5モルとする代わりに、EO6モルとする以外は実施例1と同様にして、B−3を得た。B−3の測定値は表1記載の通り。
【0046】
【表1】

【0047】
表1において、本発明実施例1〜6の製造方法で合成した芳香族エステル化合物は、比較例1〜3の製造方法で合成した化合物よりも分子量分布が極めて小さく、高純度で目的物を得ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の芳香族エステル化合物の製造方法では、高純度で目的物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価以上の活性水素含有化合物(A)の活性水素含有基と3価以上の芳香族ポリカルボン酸無水物(B)の−CO−O−CO−基とを反応させて得られた化合物(C)にアルキレンオキサイドを反応させてなる、下記一般式(I)で表される構造を有する芳香族エステル化合物(D)の製造方法。
【化1】

[一般式(I)中、R1は(ポリ)オキシアルキレングリコールから1個の活性水素を除いた残基を表す。;Yは3価以上の芳香族ポリカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基を表す。;aは2≦a≦(Bの芳香環置換基数−2)を満たす整数である。;Zはm価の活性水素含有化合物から活性水素を除いた残基を表す。;mは2以上の整数を表す。]
【請求項2】
化合物(C)のカルボキシル基とアルキレンオキサイドとのモル比(カルボキシル基:アルキレンオキサイド)が1:1〜1.4である請求項1に記載の芳香族エステル化合物の製造方法。
【請求項3】
化合物(A)が2価の水酸基含有化合物であり、(B)が無水トリメリット酸及び/又は無水ピロメリット酸である請求項1又は2に記載の芳香族エステル化合物の製造方法。
【請求項4】
アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドである請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族エステル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2013−1678(P2013−1678A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134431(P2011−134431)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】