説明

芳香筆記具

【課題】 芳香の発散が長期間にわたって持続する芳香筆記具を提供する。
【解決手段】 担体に液体香料を含浸させた香料保持体を軸筒内に内蔵する。極細繊維を引き揃えて棒状に成形したインキ貯蔵体に吸蔵されたインキが連続気泡を有する中継芯を介してペン体に供給される中綿式の筆記具においては、担体としてインキ吸蔵体ないし中継芯と同一物を使用し、この担体に液体香料を含浸させた香料保持体をインキ吸蔵体と直接接触しない状態で軸筒内に内蔵させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香を発散させて興趣に富んだ芳香筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆記時に芳香を発散させたり、筆跡に芳香が残留するインキを使用した筆記具は、安らかで癒される気分が得られ、また興趣に富んだ筆記具となるので、一部において実用化されている。
【特許文献1】特開2007−237722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来から実用化されている芳香筆記具は、インキ内に芳香液を溶解したものが主流である。しかし、芳香液はほとんどが油性であるので、水性インキにはほとんど溶解されない。また、油性インキに対しても芳香液を0.1〜1%程度溶解させるのが限度であった。これ以上溶解させると、インキとしての本来の機能が阻害されることになる。つまり、芳香液の絶対量が少ないので、購入当初は筆記具からほどよい芳香が漂うが、少し期間が経過するとほとんど芳香が発生しなくなる不具合がある。そこで本発明は、芳香の発散が長期間にわたって持続する芳香筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる目的を達成するために、本発明の芳香筆記具は、液体を吸蔵可能な担体に液体香料を含浸させた香料保持体を軸筒内に内蔵するが、ことに、極細繊維を引き揃えて棒状に成形したインキ貯蔵体に吸蔵されたインキが連続気泡を有する中継芯を介してペン体に供給される、いわゆる中綿式の筆記具においては、担体としてインキ吸蔵体ないし中継芯と同一物を使用し、この担体に液体香料を含浸させた香料保持体をインキ吸蔵体と直接接触しない状態で軸筒内に内蔵させる。
【発明の効果】
【0005】
液体を吸蔵可能な担体に液体香料を含浸させた香料保持体を軸筒内に内蔵するので、担体の大きさや含浸能を適当に選定することにより、含浸する液体香料の量を任意に調整できるので、長期間芳香が発生させることができる。また、極細繊維を引き揃えて棒状に成形したインキ貯蔵体と連続気泡を有する中継芯を使用する中綿式の筆記具の場合は、液体香料を含浸させる担体としてこのインキ吸蔵体ないし中継芯と同一物を使用することができ、担体用の材料を別途に用意する必要がない。また、香料保持体をインキ吸蔵体と直接接触しない状態で軸筒内に内蔵するので、インキ本来の機能が液体の香料により阻害されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図面は中綿式の筆記具を示すが、中綿式に限られるものではない。図1におい尾端側内面に縦リブ11が形成された軸筒1の先端開口には口金5が圧入して固着されており、口金5の先端開口にはペン体4を保持する先口6が固着されている。口金5の内面には縦リブ51が形成されている。また、不使用時においては、クリップと一体になった頭栓71が固着されたキャップ7が口金5に被せられる。
【0007】
インキ吸蔵体2は巻縮した極細繊維を引き揃えて棒状に成形したものであり、水性インキや油性インキが吸蔵されている。このインキ吸蔵体2は軸筒1の縦リブ11と口金5の縦リブ51により保持されている。インキ吸蔵体2の先端面には連続気泡を有する合成樹脂製の中継芯3が差し込まれており、中継芯3の先端はペン体4に接続されている。したがって、インキ吸蔵体2内のインキは中継芯3を介してペン体4に供給されて筆記に供されるが、ペン体4と先口6の間には微小な通気溝が形成されており、筆記によりインキ吸蔵体2内のインキが消費されるとそれに見合う量の空気がこの通気溝を通ってインキ吸蔵体2内に吸収される。
【0008】
担体に液体香料が含浸された香料保持体9が軸筒1尾端の縦リブ11により保持されている。担体は液体香料を含浸できるものであればいずれであってもよいが、本実施例ではインキ吸蔵体2と同一のものを使用している。または連続気泡を有する中継芯3も担体として使用できるが、このように、中綿式の筆記具にあっては、インキ吸蔵体2や中継芯3をそのまま担体とて使用できるので、担体の材料を別途に用意する必要がない。液体香料は、ローズやラベンダーなどの花やイチゴやかんきつ類などの果実の匂いを発散するものが数多く製造販売されており、その原液を使用する。
【0009】
使用時にキャップ7を取ると、香料保持体9から発生した芳香はインキ吸蔵体2と軸筒1および口金5の間の隙間、そしてペン体4と先口6の間の通気溝を通って外部に発散するが、担体に含浸できる液体香料の量はインキに溶解するものに比べてずっと多くすることができるので、長期間にわたって芳香を発散することができる。また、インキ吸蔵体2の尾端面と香料保持体9の先端面には隙間があり、両者は接触していない。このため、液体香料がインキ吸蔵体2内のインキに混入することがなく、インキ本来の機能が阻害されることがない。
【0010】
図2は両頭の中綿式筆記具を示すが、双方のインキ吸蔵体2、2の尾端には詰栓8、8が被されており、2つの詰栓8により担体に液体香料を含浸させた香料保持体9が保持されている。つまり、香料保持体9はインキ吸蔵体2と直接接触しないように保持されている。この例においても、多くの液体香料を含浸できるので長期間にわたって芳香を発散することができ、またインキ本来の機能が阻害されることがないことは図1の実施例の場合と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明実施例の断面図である。
【図2】他の実施例の断面図である。
【符号の説明】
【0012】
1 軸筒
11 縦リブ
2 インキ吸蔵体
3 中継芯
4 ペン体
5 口金
51 縦リブ
6 先口
7 キャップ
71 頭栓
8 詰栓
9 香料保持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸蔵可能な担体に液体香料を含浸させた香料保持体を軸筒内に内蔵したことを特徴とする芳香筆記具。
【請求項2】
極細繊維を引き揃えて棒状に成形したインキ貯蔵体に吸蔵されたインキが連続気泡を有する中継芯を介してペン体に供給される筆記具において、
前記担体が該インキ吸蔵体ないし該中継芯と同一物であり、この担体に液体香料を含浸させた香料保持体が該インキ吸蔵体と直接接触しない状態で軸筒内に内蔵されたことを特徴とする芳香筆記具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−143106(P2009−143106A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322738(P2007−322738)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)
【Fターム(参考)】