説明

苗挿し機

【課題】本発明は、苗支持体に供給した苗の姿勢を直立状態に正して、苗取り装置が苗を確実に取り出して育苗器に苗挿しを行うようにすることで、育苗器に欠株が生じないようにすることを課題とする。
【解決手段】苗支持体15の側面に形成する苗取り出し用開口部15cから苗把持ハンド5b、5cが内部に侵入し苗30を把持して苗支持体15から取り出し育苗器1に苗挿しを行う育苗移植機において、苗把持ハンド5b、5cの下側に先端をV字状に凹ませた根元押し具18を苗把持ハンド5b、5cと共に進退すべく設けると共に、苗支持体15内の上部に前記根元押し具18に対抗してV字状の上部ガイド板19を設けた苗挿し機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗挿し機に関するもので、作業者が苗を供給した苗支持体をコンベアで育苗器上に搬送しながら、苗挿装置によって育苗器に苗挿しを行わせるものである。
【背景技術】
【0002】
い草苗や、たばこ苗等は、幼苗時に育苗器へ数度の苗挿しを行ってから圃場に本植えされる。この育苗器への苗挿しを苗挿装置によって機械的に苗挿しする苗挿し機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−117048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知の苗挿し機は、コンベアで移動する苗支持体に作業者が苗を供給し、育苗器上に移動した苗支持体から苗取り装置で苗を取り出して育苗器に苗挿しを行うようにしているが、苗支持体に供給した苗が内部で倒れていると苗取り装置がうまく苗をつかんで取り出せないことがあり、育苗器の苗床に欠株が生じることがあった。
【0005】
そこで、本発明は、苗支持体に供給した苗の姿勢を直立状態に正して、苗取り装置が苗を確実に取り出して育苗器に苗挿しを行うようにすることで、育苗器に欠株が生じないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、苗支持体15の側面に形成する苗取り出し用開口部15cから苗把持ハンド5b,5cが内部に侵入し苗30を把持して苗支持体15から取り出し育苗器1に苗挿しを行う苗挿し機において、苗把持ハンド5b,5cの下側に先端をV字状に凹ませた根元押し具18を苗把持ハンド5b,5cと共に進退すべく設けると共に、苗支持体15内の上部に前記根元押し具18に対抗してV字状の上部ガイド板19を設けて苗挿し機を構成した。
【0007】
この構成で、例え、苗支持体15内に苗30が斜めに倒れて供給されていても、上部ガイド板19が苗30の上部を苗支持体15の中央へ寄せて苗30を起立状態とし、苗把持ハンド5b,5cの苗支持体15内への侵入に伴って根元押し具18がV字状凹みで苗30の根元を苗支持体15の中央へ寄せて苗30を直立させ、この苗30を苗把持ハンド5b,5cで把持する。
【発明の効果】
【0008】
苗支持体15に供給された苗30の姿勢が起立状態となって、この苗30を苗把持ハンド5b,5cで把持するために把持ミスが無くなり、連続作業が可能になる。
また、苗30の草丈が短くても上部ガイド板19と根元押し具18で直立状態になるので、苗把持ハンド5b,5cの苗取出しが良好に行われて、育苗器1への苗挿しが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】苗挿し機の平面図
【図2】苗挿し機の側面図
【図3】苗支持体の一部斜視図
【図4】苗支持体の分解斜視図
【図5】苗挿し装置の斜視図
【図6】横移動プレート作動用カムの構成とその差動態様を示す図
【図7】苗置台を示す斜視図
【図8】苗支持体の側断面図
【図9】苗支持体の正面図
【図10】苗支持体の平断面図
【図11】育苗器における苗挿し位置を示す平面図
【図12】育苗器移送装置の部分拡大斜視図
【図13】セルトレイを載せるアンダートレイと桟との位置関係を示す図
【図14】水稲専用苗箱と桟との位置関係を示す図
【図15】水稲・野菜兼用苗箱と桟との位置関係を示す図
【図16】穴列を複数列設けた育苗器移送装置の部分拡大斜視図
【図17】育苗器載置部材を示す平面図
【図18】育苗器載置部材を示す正面図
【図19】位置検出補助具を示す斜視図
【図20】位置検出補助具を示す断面図
【図21】倒れ防止具及び側方倒れ防止具を示す斜視図
【図22】育苗器移送装置の部分拡大斜視図(a)とゴム板の斜視図(b)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
本実施例の苗挿し機の平面図を図1に、側面図を図2に示し、これら図1と図2に基づいて苗挿し機の全体的な構成について説明する。
【0011】
この苗挿し機は、例えば親株から株分けしたいぐさ苗を育苗器に苗挿しすることができる。その他、キク苗を挿し木してもよい。
苗挿し機は、育苗器1を載置して移送方向Rに向かって移送する育苗器移送装置Aと、作業者が供給する苗30を支持する苗支持体15が周回する苗供給装置Cと、該苗支持体15内の苗30を把持して前記育苗器移送装置Aに設置された育苗器1に苗30を挿す苗挿し装置Bと育苗器1のセル内の土に穴を開ける穴開け装置Dを備えている。
【0012】
育苗器移送装置Aには育苗器1の左右幅と略同じ幅に一対の枠体2,2が設けられ、該一対の枠体2,2の両端部には駆動軸4cが掛け渡され、該駆動軸4cに固着された駆動プーリ4bが駆動用モータ(図示せず)により駆動する。前記駆動プーリ4bの回転により該駆動プーリ4bに掛け渡された移送ベルト3が移動することで、該移送ベルト3上に載置された育苗器1が移送方向Rに移送される。
【0013】
育苗器1には苗30を挿入できるセル1aを多数(本実施の形態では一列につき20個)設けられている。
苗挿し装置Bに苗30を供給する苗供給装置Cは、カップ形状の苗支持体15を平面視で略長円形状に形成する苗供給装置枠体16に沿って多数(本実施の形態では把持具5aの4倍の数である40個)連続して数珠繋ぎで配置している。苗支持体15を周回移動させる一対のスプロケット17,17は、苗供給装置枠体16の両端部にそれぞれ設けられ、一方のスプロケット17が駆動体となり、一対のスプロケット17,17間に掛け渡された図示しないチェーンの駆動で他方のスプロケット17も連動する。一対のスプロケット17、17が回動すると苗支持体15の全体はスプロケット17,17の作用を受けて押され、苗供給装置枠体16に沿って略長円形状の軌跡を描いてS方向に周回移動する。
【0014】
また、図7に示す如く、前記平面視略長円形状の苗供給装置枠体16上方に、苗供給装置枠体16から左右の支枠11,12でスライドレール6cを介して上下二段の苗置台6a,6bを設けている。この苗置台6a,6bは苗支持体15に供給する苗30を置く台で、端から作業者Nが苗30を取り出して無くなるに従って、苗置台6a,6bを作業者N側へスライドすることで苗30を苗置台6a,6bから取出し易くしている。
【0015】
次に苗支持体15について、図3のその一部斜視図と図4の分解斜視図により説明する。
苗支持体15は平面視円状に形成する上側苗支持部15aと、正面視五角形状で底部15bを三角形状に形成し、背面側下部を前に下り傾斜させた背部斜面15hと表面側に苗取り出し用開口部15cを形成した受け体15dから構成している。
【0016】
上側苗支持部15aと受け体15dとは多数の苗収容体15を連結させる上下2枚のプレート23a,23bそれぞれに2つずつ形成する孔23c,23dに挿入し、受け体15dの上面に屈曲形成した取付部15fを上側苗支持部15aに形成している溝部15gに差し込み、連結環24を受け体15dの後部から挟み付けるよう取り付け、受け体15dの苗取り出し用開口部15cが歪み等により開いて受け体15dが上側苗支持部15aから脱落することを防止している。前記プレート23aとプレート23bとは上下が互い違いに重なる状態で苗収容体15を各孔23c,23dに挿入することで連結する。
【0017】
図8〜図10に、苗収容体15への苗30の投入状態を示している。
上側苗支持部15aの内部には苗取り出し用開口部15c側に向かってV字に形成した上部ガイド板19を下り傾斜に設けて苗30の茎が左右中央に寄るようにし、苗30の根元が底部15bと背部斜面15hで苗収容体15の中央に寄るようにしている。苗把持ハンド5b,5cの把持部にはゴム板20を張り付けて苗30を傷つけないようにしている。
【0018】
苗把持ハンド5b,5cの下側に根元押し具18を設けて、この苗把持ハンド5b,5cの苗収容体15内への侵入に伴って根元押し具18が苗30の根元側を押して、例え苗30が倒れていても起立状態として苗把持ハンド5b,5cが確実に苗30を把持するようになる。
【0019】
また、苗供給装置Cの一端(図1の紙面左側半分)は育苗器1の左右幅方向より側方に向かって突出して配置しているので、作業者Nが苗支持体15に苗30を投入する苗投入場所Mとなるスペースを形成している。そして、作業者Nが苗30を投入する苗投入場所Mは、苗30を把持具5aで把持する苗把持位置Fに隣接するスペ−スになる。
【0020】
苗供給装置枠体16の上面には苗挿し機の運転停止を行う切換スイッチ20を設け、苗投入場所Mの近傍には図示はしないが電源スイッチ、リセットスイッチ、そして各種装置を作動させるシーケンサー等を内蔵する操作盤や、苗供給装置Cの周回速度を作業者Nが足で調節するフットスイッチ等、作業者Nが操作する各種装置を集中的に備え、作業者Nが苗収容体15に苗30を投入しながら育苗器移送装置Aを運転・制御することができるよう構成している。
【0021】
図2に示す穴開け装置Dは、育苗器1のセル1aに詰めている土に苗30を差し込むための穴を作る作孔装置であり、育苗器1の長手方向に配置されるセル1aの数(本実施の形態では20個)に対応して配置されたセル1aと同一数の穴開けピン22aを取り付けている。穴開け装置Dで育苗器1のセル1aに詰めている土に苗30を差し込むための穴を開けた後、移送ベルト3で育苗器1が図2の矢印R方向へセル1aの1個分に移動するので、苗把持部5でセル1a内の土に苗30を順次差し込むことができる。
【0022】
図5に一対の苗把持ハンド5b,5cを含む把持部5の斜視図を示す。苗挿し装置Bは苗30を保持するとき苗30の茎を1本ずつ両側から把持する把持具5aを多数傭えている。なお、本実施の形態では10個の把持具5aを並列して把持具プレート5mに取り付けて把持部5を形成することで、同時に10本の苗30を育苗器1に苗挿しできるよう構成している。
【0023】
また、把持具5aはハンド開閉モ−タ10により開閉する一対の苗把持ハンド5b,5cと根元押し具18を備えている。該把持具5aは一対の苗把持ハンド5b,5cと各苗把持ハンド5b,5cとそれぞれ一体で横方向に移動するプレート5d,5eと該プレート5d,5eにそれぞれ連結したアーム5f,5gなどからなるリンク部材と該リンク部材を介して作動させるハンド開閉カム5jを備えている。該カム5jはハンド開閉モータ10の回転軸に固定されているので、ハンド開閉モータ10が回転するとリンク部材を介して一対の苗把持ハンド5b,5cが開閉動作する。
【0024】
苗把持部5の把持具プレ−ト5mの裏面はア−ム33bの一端で支持され、ア−ム33bの他端は横移動プレ−ト8上に配置された前後移動用モ−タ33の回転軸に固定されたカム33a(図1)に取り付けられることで、把持部5は移送方向Rに沿った方向に前後移動可能に構成している。
【0025】
横移動プレ−ト8にはア−ム35bの一端を取り付け、ア−ム35bの他端を横支持プレ−ト9上に配置された横移動用モータ35の回転軸に固定されたカム35aに取り付けられることで、横移動プレ−ト8は横支持プレ−ト9に沿って移送方向Rと交差する方向Sに沿って育苗器移送装置Aの左右内側を移動可能に構成している。
【0026】
また、前記左右移動用モータ35の駆動により円形カム35aが回転すると、図6に示すように円形カム35aの周辺部に設けられた凹部35a1に各一対の苗把持ハンド5b,5cの苗30の把持位置検出用のリミットスイッチ37の端子37aが入り込む構成になっている。そして、上記左右移動用モータ35の駆動で横移動プレート8が移動すると苗把持部5も移動する。横移動プレート8の移動中はリミットスイッチ37の端子37aがカム35aの外周面を摺動している。そして、端子37aがカム35aに設けた凹部35a1に嵌まると左右移動用モ−タが駆動停止し、横移動プレート8及び苗把持部5も停止する。
【0027】
図6に示すカム35aは定速回転する左右移動用モータ35により一方向にフル回転するのではなく、往復運動を繰り返す。図6に示すようにカム35aに設けた凹部35a1が45度の角度毎に4個設けられている。カム35aの135度の回転で横移動プレ−ト8は育苗器1の一列分を4回で挿し木する横移動をする。従って、一対の苗把持ハンド5b,5cが10組設けられているので、これらの4回の作動で一列に40本の苗30を挿す。このとき、苗把持ハンド5b,5cが苗供給装置Cの苗支持体15にある苗30を把持する位置は、各苗挿し行程で変化しない。
【0028】
苗挿し工程は、図11に示すように、1回目の苗挿し行程で育苗器1の〇印の位置に苗30を挿し、2回目の苗挿し行程で育苗器1の△印の位置に苗30を挿し、3回目の苗挿し行程で育苗器1の□印の位置に苗30を挿し、4回目の苗挿し行程で育苗器1の×印の位置に苗30を挿す。従って、各苗把持ハンド5b,5cは既に挿された苗30の間に次の苗30を挿し、育苗器1の一列において隣接位置の苗30を同時に挿し木しないので、苗把持ハンド5b,5cの寸法に対して極めて小さな株間で苗30を苗挿しでき、育苗器1に苗30を密植することができ、育苗器1が苗箱の場合にはマット状に苗30を挿すことができて、後行程で移植機により圃場に苗30を移植するときに欠株が発生するのを防止できる。
【0029】
尚、苗把持部5を上下方向に昇降動作させるための上下移動用モ−タ26は、その駆動で横支持プレ−ト9を縦支持プレ−ト7に沿って上下方向に昇降動作させることで苗把持部5を昇降動作させる構成で、苗把持ハンド5b,5cが苗30を把持した状態で育苗器1が下方に移動してくるのを待って、育苗器1を検出するとさらに下降して苗挿しを行う。この育苗器1の移動を待つ時間が3分を過ぎると作業を中断したものとして各モータ類の駆動電源を切る。
【0030】
次に、本苗挿し機の作業状態について説明する。
操作盤の電源スイッチ、運転スイッチを押すと苗挿し機の装置各部が作動を開始する。作業者Nは苗投入場所Mにいて周回する苗収容体15に一本ずつ苗30を投入していく。苗収容体15に収容した苗30は下方向を略一回転して苗把持位置Fまで周回する。そのとき、センサ(図示せず)はスプロケット17の歯数をカウントしており、設定する歯数をカウントする毎に一時停止する。
【0031】
尚、苗供給装置枠体16に苗支持体15の移動をカウントするセンサを設け、このセンサが実施例では10個をカウントすると一時停止するようにすると、苗支持体15の停止位置をより正確に出来る。
【0032】
一方、育苗器移送装置Aのベルト3上で育苗器1が移送される。苗挿し装置Bと穴開け装置Dが育苗器1内の土に作用する苗挿し位置にある。この構成により、育苗器1内の一列分のセル内の土に穴開け装置Dで穴を開け、次いで苗挿し装置Bが苗30を該セル内の穴に苗30を植え付ける動作を行う毎に育苗器移送装置Aが間欠的に前進している。
【0033】
尚、育苗器移送装置Aは左右移動用モ−タ35が育苗器1の一列にある全部のセル1a内に同時に苗30を植え付ける間は移動停止し、一列分の全てのセル1a内に20個の苗30を植え付けた後はセル1aの1個分だけ前進する。
【0034】
苗供給装置Cが苗把持位置Mで停止したら、苗把持具5aがそれぞれ対向する苗収容体15に収容する苗30を取りに前進する。苗把持具5aが苗収容体15の苗供給開口部15eから苗30を把持する位置まで進むと開閉モ−タ10が駆動して苗30を把持し、再度元の位置まで後進する。そして、苗30を把持した苗把持具5aは下降し、前記穴開け装置Dで開けた穴に苗30の根元部分を挿入する。
【0035】
苗挿し動作が終了したら、苗把持ハンド5b,5cは苗30を放し後進・上昇して元の位置に戻る。この苗挿し作業の工程中に次の工程で苗挿しする苗30を供給するために、苗収容体15が設定したスプロケット17の回転数分周回する。この周回時に苗支持体15の上方からエアーを吹き込むエアーノズルを設けて、苗支持体15内に残る土を吹き出すことで内部を清掃し次に供給する苗30を苗支持体15の底部まで落下させ、苗挿しの深さを安定させるようにすれば良い。
【0036】
図12には本発明の一実施例である育苗器移送装置Aの部分拡大斜視図を示す。図13では駆動軸4cが矢印E方向に回転することにより平ベルトからなる移送ベルト3が矢印R方向に育苗器1を移送している。そして移送ベルト3の端に育苗器1の搬送方向に沿って所定のピッチ毎に設けた複数の穴42からなる穴列74を構成し、育苗器1を所定の搬送ピッチ毎に搬送できる構成としている。
【0037】
すなわち一定間隔にベルト幅方向に桟40を設けた移送ベルト3で、苗挿しをする育苗器1を移送する構成において、移送ベルト3の内側の端部には前記穴42を検出するための光電式のセンサ41を設けている。尚、該センサ41の位置は穴42が検出できる位置であれば特に限定されない。そしてセンサ41が穴42を検出するたびに、移送ベルト3が停止する構成としている。
【0038】
移送ベルト3は、駆動ローラ75と従動ローラ76とに巻きかけられ、搬送用モータ77の駆動で前記駆動ローラ75が駆動して搬送作動する。前記駆動ローラ75並びに従動ローラ76の表面及び移送ベルト3の裏面には凹凸を設けていないので、不慮の要因により搬送負荷が大きいときでも駆動ローラ75並びに従動ローラ76に対して移送ベルト3がスリップでき、育苗器1が所望の停止位置を越えて移送されてしまうようなことを防止でき、所望の苗挿し位置で苗挿しできる。
【0039】
尚、前記桟40により育苗器1を押しながら移送するが、桟40の高さを25乃至30mmに設定しているので、図13乃至図15に示すように、セルトレイ1を載せるアンダートレイ67、水稲・野菜兼用苗箱78及び水稲専用苗箱79の何れの育苗器であっても、育苗器の上端から桟40が突出せずに苗挿し作業の邪魔にならず、また桟40で育苗器の端面が位置決めされるので、穴42と育苗器1との位置関係がずれにくく育苗器1の移送精度が向上する。
【0040】
また、図16に示すように、移送ベルト3に穴ピッチの異なる穴列74を複数列設け、搬送する育苗器1に応じて搬送ピッチを切り替えできる構成とすることができる。尚、移送ベルト3の内側に設けた光電式のセンサ41を左右方向にスライドさせて移動することができ、該センサ41を検出すべき穴列74に対応する左右位置に移動させて搬送ピッチを切り替える構成としている。複数の穴列74は、128穴セルトレイ用、200穴セルトレイ用、水稲・野菜兼用苗箱用及び水稲専用苗箱用の4列が左右に配列されている。これにより、育苗器移送装置Aを各種育苗器に対応させることができる。
【0041】
図17及び図18に示すように、育苗器移送装置Aの移送始端部において、移送ベルト3の左右両側に該移送ベルト3の上面より高く桟40の上端より低い育苗器載置部材80を設けることができる。尚、育苗器1はその長手方向が左右方向となるように育苗器移送装置Aに供給するようになっているので、移送ベルト3の左右幅より育苗器1の左右幅が広くなり、移送ベルト3から突出する育苗器1の左右両端部を前記育苗器載置部材80上に載置するようになる。これにより、作業者が育苗器載置部材80上に載置した育苗器1は、その端が桟40に当たって押されることによりはじめて育苗器載置部材80上を滑りながら移送されることになり、桟40と育苗器1の端面とを密着させることができて、穴42と育苗器との位置関係が適正になり育苗器の移送精度が向上する。尚、育苗器載置部材80の前後長さYは、育苗器1を容易に載置できるように育苗器1の前後幅より長く設定されている。
【0042】
また、図19に示すように、前記のような穴列74に代えて、位置検出補助具81を育苗器に装着することができる。この位置検出補助具81は、育苗器1の短辺片側だけでなく、両短辺に装着することで、移送ベルト3に置く育苗器1の方向を注意する必要が無くなる。
【0043】
尚、図19に示す育苗器移送装置Aは、間隔を空けて幅狭の移送ベルト3を左右に2本設けて構成されている。前記位置検出補助具81は、ステンレスにより金属製となっており、下側が開放する断面形状コの字型の前後方向に長いプレートにより構成され、水平状の上部分82と、該上部分82の左右一側端から下方へ折れ曲がって延びる挿込部分83と、前記上部分82の左右他側端から下方へ折れ曲がって延びる位置検出用部分84とで構成される。前記位置検出用部分84に前後に所定間隔おきに切り欠き85を設けることで、この互いの切り欠き85の間に前後幅が所定幅の位置検出用部材86が所定間隔おきに前後に複数個構成される。そして、上部分82の下面が育苗器(苗箱)1の縁部87の上面に接するように、位置検出補助具81を育苗器(苗箱)の縁部87に上側から係合させる。このとき、位置検出補助具81の挿込部分83が、育苗器(苗箱)の内側面に接するように育苗器(苗箱)の内部に上側から挿入される。
【0044】
また、前記上部分82の左右幅が育苗器(苗箱)の縁部の左右幅と同等かそれより大きくなっているため、前記位置検出用部分81が育苗器(苗箱)の側壁の外側側方に露出した状態となる。従って、前記挿込部分83は、複数の位置検出用部材86が育苗器1の外側に位置するように育苗器1に装着するための装着用部材となる。
【0045】
尚、育苗器(苗箱)に予め苗床(培土)が収容されているので、苗床(培土)により前記挿込部分83が育苗器(苗箱)の内側面側に押し付けられることになり、位置検出補助具81が育苗器1にしっかりと装着される。また、位置検出補助具81の上部分82の左右幅を育苗器(苗箱)の縁部87の左右幅と同等に構成すれば、挿込部分83と位置検出用部分84とで育苗器(苗箱)の縁部87を挟み込み該縁部87に位置検出補助具81を嵌め込んでしっかりと装着でき、位置検出補助具81が育苗器1から脱落するようなことを防止できる。
【0046】
位置検出補助具81の位置検出用部分84は、位置検出用センサ88で検出されるが、この位置検出用センサ88の移送方向R手前に位置検出補助具押え70を枠体2に設けて、浮き上がった位置検出補助具81を抑え込み、位置検出用部材86が位置検出用センサ88の位置を通過するようにしている。
【0047】
尚、育苗器移送装置Aでセルトレイを搬送する際には、該セルトレイを載せるアンダートレイ(育苗器の一種)の縁部に位置検出補助具81を装着すればよい。
育苗器移送装置Aにおいて、育苗器1の搬送経路の直ぐ左側の側方には、穴開け装置Dの穴開け位置に移動してくる育苗器1を検出するための位置検出用センサ88と、苗挿し装置Bによる苗挿し位置にある育苗器1を検出するための苗挿し位置検出用センサ89とを枠体2に固着して設けている。これらの位置検出用センサ88と苗挿し位置検出用センサ89は、金属を検出する光電式のセンサであり、樹脂製の育苗器1自体には反応せず、金属製である前記位置検出補助具81の位置検出用部材86を検出する構成となっている。
【0048】
そして、該位置検出用センサ88と苗挿し位置検出用センサ89が位置検出用部材86を検出すると育苗器移送装置Aによる育苗器1の搬送駆動を停止させ、育苗器1の所定の位置で苗挿し装置Bによる苗挿し作業及び穴開け装置Dによる穴開け作業が行われ、この動作が完了すると育苗器移送装置Aの搬送駆動が再開し、次の位置検出用部材86を位置検出用センサ88と苗挿し位置検出用センサ89が検出すると、再度育苗器移送装置Aの駆動を停止させる。
【0049】
従って、位置検出用部材86を位置検出用センサ88と苗挿し位置検出用センサ89が検出する度に育苗器移送装置Aの搬送駆動を停止させ、育苗器移送装置Aにより所定の搬送ピッチ毎に間欠的に育苗器1を搬送する構成となっている。
【0050】
よって、位置検出用部材86や位置検出用部分84の切り欠き85の前後幅を、セルトレイのセルの大きさにあまり制限されずに位置検出用センサ88と苗挿し位置検出用センサ89が高精度で位置検出できるように設定できる。ひいては、位置検出用部材86や位置検出用部分84の切り欠き85の前後幅を、これらに土などの異物が付着しないように設定できる。
【0051】
また、位置検出用部分84は、育苗器1の外側に位置するので、育苗器1内の培土等が付着しにくくなる。これらにより、位置検出用センサ88と苗挿し位置検出用センサ89で前記位置検出用部材86を適確に検出することができ、所望の位置で精度良く育苗器1を停止させることができ、穴開けあるいは苗挿しの処理を育苗器1の複数のセル毎に適確に行える。また、複数のセルを有さない苗箱等の育苗器でも、所定のピッチ毎に精度良く育苗器1を停止させることができ、穴開けあるいは苗挿しの処理を育苗器内の所定のピッチ毎に適確に行える。
【0052】
尚、位置検出用部材86の個数及び配列ピッチが異なる複数種の位置検出補助具81を用意すれば、位置検出補助具81を付け替えて育苗器の搬送ピッチを変更することができ、1個の育苗器に挿す苗の本数を変更することができる。また、育苗器の形態に応じて位置検出補助具81を設定することができる。
【0053】
また、位置検出補助具81は、金属製であるので、金属を検出する光電式の位置検出用センサ88と苗挿し位置検出用センサ89により水や土あるいは苗を誤検出するようなことを防止でき、育苗器の搬送を適正に行える。更には、位置検出補助具81は、ステンレス製であるので、水や土等がかかる状態で複数回使用しても錆が発生するようなことが防止され、位置検出用センサ88と苗挿し位置検出用センサ89により精度良く検出できる。
【0054】
図21に示す如く、苗挿し位置には、挿した苗が育苗器の搬送上手側に倒れるのを防止する倒れ防止具90を設けている。この倒れ防止具90は、モータ91の駆動によりカム板92、クランクロッド93を介して昇降する構成となっており、苗把持ハンド5b,5cで苗を挿すときには上方へ退避する構成となっている。この倒れ防止具90により、育苗器に挿した苗が苗把持ハンド5b,5c側に倒れるのを防止する。尚、前記カム板92の外周には回転方向において180度ごとの位置にカム溝92aを設け、該カム溝92aをリミットスイッチ94により倒れ防止具90が昇降作動したことを検出する構成となっている。
【0055】
また、育苗器移送装置Aの左右両側には、挿した苗が左右側方に倒れるのを防止する側方倒れ防止具95を設けている。これらの倒れ防止具90及び側方倒れ防止具95により、育苗器に既に挿した苗が倒れて次に苗を挿すときの邪魔になって苗挿しの障害になるようなことを防止できる。
【0056】
図22には本発明の一実施例である育苗器移送装置Aの部分拡大斜視図を示す。穴開け装置Dの手前に、セル1aを用いないで全体に土をまんべんなく入れた育苗器1の表面の土の凹凸をならすためのブラシ57又はゴム板58を設けており、育苗器1が矢印G方向に移送され、ブラシ57やゴム板58により育苗器1の表面の土を均した後、苗挿しをする箇所に穴をあけ、苗挿しをする構成としている。これにより、育苗器1の表面の土の凹凸をなくすことができ、苗挿し位置の正確さや苗挿しする深さなどの苗挿しの精度が向上する。
【0057】
図22(a)ではブラシ57によって、苗箱1に入った土の表面の凹凸を平らにしてから穴をあけ、挿し木を行う場合を示している。セルトレイ1を用いる場合も同様に土の表面の凹凸を平らにしてから、穴をあけ、苗挿しを行えば良い。また、ブラシ57ではなく図22(b)に示したようなゴム板58を穴開け装置Dの手前に設けても土の表面の凹凸を平らにすることができるが、これらブラシ57やゴム板58に限定されない。
【符号の説明】
【0058】
1 育苗器
5b、5c 苗把持ハンド
15 苗支持体
15c 苗取り出し用開口部
18 根元押し具
19 上部ガイド板
30 苗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗支持体(15)の側面に形成する苗取り出し用開口部(15c)から苗把持ハンド(5b)、(5c)が内部に侵入し苗(30)を把持して苗支持体(15)から取り出し育苗器(1)に苗挿しを行う苗挿し機において、苗把持ハンド(5b)、(5c)の下側に先端をV字状に凹ませた根元押し具(18)を苗把持ハンド(5b)、(5c)と共に進退すべく設けると共に、苗支持体(15)内の上部に前記根元押し具(18)に対抗してV字状の上部ガイド板(19)を設けてなる苗挿し機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2011−78336(P2011−78336A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231629(P2009−231629)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】