説明

苦味を呈する薬物を含有する顆粒および口腔内崩壊錠

【課題】本発明の目的は、苦味を呈する薬物を含有する散剤や顆粒剤、口腔内崩壊錠等において、口腔内で苦味を抑制する(口腔内での溶出量を抑える)ことと、胃内において溶出性を優れたものとすることを両立した散剤や顆粒剤および口腔内崩壊錠等を提供することにある。
【解決手段】(a)苦味を呈する薬物を含有するコア粒子および(b)該コア粒子を被覆するマスキング皮膜を含んでなる薬物含有顆粒であって、
該マスキング皮膜が、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー等、ならびに
D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を含有するマスキング皮膜であることを特徴とする、薬物含有顆粒、ならびに該薬物含有顆粒を含む口腔内崩壊錠等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苦味を呈する薬物を含有する顆粒および口腔内崩壊錠、ならびにその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の錠剤やカプセル剤といった経口固形医薬品は、高齢者にとって嚥下能力の低下から服用が困難な場合がある。また嚥下能力の低い小児にとっても同様である。そのような高齢者や小児に適した剤形として、散剤や顆粒剤がある。また近年、口腔内で速やかに溶解もしくは崩壊する口腔内崩壊錠の開発が望まれている。
苦味を呈する薬物を含有する場合、散剤や顆粒剤および口腔内崩壊錠は、口腔内で速やかに薬物が溶出し苦味が生じて服用が困難な場合がある。一般的に、苦味は少量であっても感じやすいので、薬物の溶出を抑えて苦味を防ぐには、口腔内での薬物の溶出量を極めて微量にする必要がある。しかしながら、散剤や顆粒剤および口腔内崩壊錠において、薬物の溶出を抑える工夫を加えると、口腔内での溶出量を抑えるだけでなく、胃・小腸内での溶出量までも抑えられ、薬物の治療効果に悪影響を及ぼす虞がある。
苦味を呈する薬物を含有する散剤や顆粒剤および口腔内崩壊錠において、口腔内での苦味を抑制し(口腔内での溶出量を抑える)、且つ胃内において溶出性をよくする試みとして、特許文献1〜3に記載のもの等がある。特許文献1および特許文献2には、薬物の不快な味を低減するために腸溶性フィルム基剤等のフィルム基剤で薬物を被覆すること、さらに、腸溶性フィルム基剤に凝集防止剤と崩壊剤とを併用することが記載されている。
また、特許文献3には、塩基性又は酸性の主薬粒子が水不溶性のコーティング膜で被覆されてなる主薬粒子であって、水不溶性のコーティング膜内部に、塩基性の主薬に対して酸性物質が、酸性の主薬に対して塩基性物質が含有されてなる主薬粒子およびこれを用いた口腔内崩壊錠が記載され、さらに、該コーティング剤には、必要に応じて可塑剤、甘味料、分散安定剤、賦形剤、滑沢剤等の当該分野で公知の添加剤を添加してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-063263号公報
【特許文献2】特開2008-214334号公報
【特許文献3】特開2008-260712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、苦味を呈する薬物を含有する散剤や顆粒剤、口腔内崩壊錠等において、口腔内で苦味を抑制する(口腔内での溶出量を抑える)ことと、胃内において溶出性を優れたものとすることを両立した散剤や顆粒剤および口腔内崩壊錠等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の(1)〜(11)に関する。
(1) (a)苦味を呈する薬物を含有するコア粒子および(b)該コア粒子を被覆するマスキング皮膜を含んでなる薬物含有顆粒であって、
該マスキング皮膜が、該皮膜の20〜70重量%のメタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマー、ならびに
該ポリマーに対して40〜250重量%のD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を含有するマスキング皮膜であることを特徴とする、薬物含有顆粒。
(2) (a)シナカルセト、トピラマートもしくはオロパタジンまたはその薬学的に許容される塩を含有するコア粒子および(b)該コア粒子を被覆するマスキング皮膜を含んでなる薬物含有顆粒であって、
該マスキング皮膜が、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、ならびに
D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を含有するマスキング皮膜であることを特徴とする、薬物含有顆粒。
(3) 該コア粒子が、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤ならびにメタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーを含有するコア粒子である、前記(1)または(2)記載の薬物含有顆粒。
(4) 重量平均粒子径が100〜350μmである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の薬物含有顆粒。
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載の薬物含有顆粒と、該苦味を呈する薬物を含有しない口腔内崩壊錠用粉末とを含有してなる口腔内崩壊錠。
(6) (a)苦味を呈する薬物を含有するコア粒子および(b)該コア粒子を被覆するマスキング皮膜を含んでなる薬物含有顆粒の製造方法であって、
該コア粒子を製造する工程、および
得られたコア粒子に、得られるマスキング皮膜の20〜70重量%のメタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマー、ならびに
該ポリマーに対して40〜250重量%のD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を含有するコーティング液を、コーティングしてマスキング皮膜を施す工程を含むことを特徴とする、薬物含有顆粒の製造方法。
(7) 苦味を呈する薬物を含有するコア粒子を製造する工程が、苦味を呈する薬物ならびにD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を、
メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーを含有する結合液で造粒する工程である、前記(6)記載の薬物含有顆粒の製造方法。
(8) (a)シナカルセト、トピラマートもしくはオロパタジンまたはその薬学的に許容される塩を含有するコア粒子および(b)該コア粒子を被覆するマスキング皮膜を含んでなる薬物含有顆粒の製造方法であって、
該コア粒子を製造する工程、および
得られたコア粒子に、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、ならびにD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を含有するコーティング液を、コーティングしてマスキング皮膜を施す工程を含むことを特徴とする、薬物含有顆粒の製造方法。
(9) コア粒子を製造する工程が、シナカルセト、トピラマートもしくはオロパタジンまたはその薬学的に許容される塩、ならびにD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を、
メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーを含有する結合液で造粒する工程である、前記(8)記載の薬物含有顆粒の製造方法。
(10) コア粒子の重量平均粒子径が75〜150μmである、前記(6)〜(9)のいずれかに記載の薬物含有顆粒の製造方法。
(11) 前記(6)〜(10)のいずれかに記載の製造方法によって得られた薬物含有顆粒と、該苦味を呈する薬物を含有しない口腔内崩壊錠用粉末とを混合する工程、および
得られた混合粉体を圧縮形成する工程を含むことを特徴とする口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、苦味を呈する薬物を含有する散剤や顆粒剤および口腔内崩壊錠において、口腔内で苦味を抑制する(口腔内での溶出量を抑える)ことと、胃内において溶出性を優れたものとすることを両立した散剤や顆粒剤および口腔内崩壊錠等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1〜3、ならびに比較例1で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒についての溶出試験結果である。横軸はサンプリング時間、縦軸は溶出率を示す。□は実施例1、●は実施例2、■は実施例3、○は比較例1を示す。
【図2】実施例1〜3、ならびに比較例1で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒についての溶出試験結果である。横軸はサンプリング時間、縦軸は溶出率を示す。□は実施例1、●は実施例2、■は実施例3、○は比較例1を示す。
【図3】実施例4〜6、ならびに比較例2で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒についての溶出試験結果である。横軸はサンプリング時間、縦軸は溶出率を示す。□は実施例4、●は実施例5、■は実施例6、○は比較例2を示す。
【図4】実施例4〜6、ならびに比較例2で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒についての溶出試験結果である。横軸はサンプリング時間、縦軸は溶出率を示す。□は実施例4、●は実施例5、■は実施例6、○は比較例2を示す。
【図5】実施例8で得られたオロパタジン塩酸塩含有口腔内崩壊錠についての溶出試験結果である。横軸はサンプリング時間、縦軸は溶出率を示す。
【図6】実施例8で得られたオロパタジン塩酸塩含有口腔内崩壊錠についての溶出試験結果である。横軸はサンプリング時間、縦軸は溶出率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の薬物含有顆粒は、(a)苦味を呈する薬物を含有するコア粒子および(b)該コア粒子を被覆するマスキング皮膜を含んでなる。
【0009】
本発明における苦味を呈する薬物としては、苦味を呈する薬物であれば特に制限されるものではないが、好ましくは、口腔内での苦味を抑制するために、口腔内での薬物溶出量を、1回投与量の40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下にすることを必要とされている薬物があげられる。口腔内での薬物溶出量は、散剤や顆粒剤、口腔内崩壊錠等を摂取後、口腔内に滞留している時間、例えば30秒以内に、口腔内に溶出する薬物の量を意味する。例えば、日本薬局方15(日局)記載の溶出試験法第2法(回転パドル法)に従う、試験液として水900mLを用いた、37℃、50rpmの条件下での溶出試験、または、口腔内での薬物溶出量をシミュレートしたin vitro試験である注射筒正倒立法(錠剤1錠を注射筒にとり、水5 mLを加え、10秒間に1回の速さで正倒立を繰り返す、中村康彦,「不快な味のマスキング技術と徐放製剤に関する研究」, “ファーマテックジャパン(PHAEM TECH JAPAN)”, 2005年, 21巻, 5号, p.163-169参照)を行った場合に、試験開始後30秒以内の薬物溶出量が、1回投与量の40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下であることを意味する。
なお、本発明における苦味は、味覚としての酸味、塩味、苦味、辛味、渋味、刺激味、アルカリ味、金属味等を包含し、薬物を摂取する上で障壁となる味または刺激を包含する。
本発明における苦味を呈する薬物としては、具体的には、シナカルセト、トピラマート、オロパタジン等およびそれらの薬学的に許容される塩等があげられる。
【0010】
薬学的に許容される塩は、例えば薬学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。薬学的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、例えば酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩があげられ、薬学的に許容される金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩があげられ、薬学的に許容されるアンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、薬学的に許容される有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、薬学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、例えばリジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の付加塩があげられる。
【0011】
苦味を呈する薬物を含有するコア粒子は、苦味を呈する薬物を、該コア粒子の0.5〜80重量%含有することが好ましく、1〜50重量%含有することがより好ましく、2〜30重量%含有することがさらに好ましく、5〜20重量%含有することが最も好ましい。また、苦味を呈する薬物の粒子径は、体積平均粒子径で2〜150μmであるのが好ましく、15〜100μmであるのがより好ましく、25〜50μmであるのがさらに好ましい。本発明において体積平均粒子径は、例えば顕微鏡法またはレーザー法にて定方向径を測定し、測定されたそれぞれの数値を球形粒子の径であるとみなして体積平均粒子径を計算することにより求めればよい。
【0012】
苦味を呈する薬物を含有するコア粒子は、苦味を呈する薬物の他に、一般的な添加剤を含んでいてもよいが、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤ならびにメタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーを含有することが好ましく、D-マンニトール、乳糖およびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤ならびにアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーを含有することがより好ましく、D-マンニトールおよびメタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーを含有することが最も好ましい。本発明において、苦味を呈する薬物を含有するコア粒子に、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤ならびにメタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーを含有することは、口腔内で苦味を抑制する(口腔内での溶出量を抑える)ことと、胃内において溶出性を優れたものとすることを、より優れたものとする点で好ましい。
【0013】
苦味を呈する薬物を含有するコア粒子は、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤、好ましくはD-マンニトール、乳糖およびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤、より好ましくはD-マンニトールを20〜95重量%、より好ましくは40〜90重量%、さらに好ましくは60〜85重量%含有することが好ましい。
苦味を呈する薬物を含有するコア粒子は、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマー、好ましくはアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマー、より好ましくはメタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーを、0.01〜50重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%含有することが好ましい。
【0014】
苦味を呈する薬物を含有するコア粒子は、苦味を呈する薬物、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤ならびにメタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーの他に、他の薬物および/または他の添加剤を含有していてもよい。
他の添加剤としては、一般的な固形製剤において、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等の用途に用いられるものがあげられる。
他の添加剤としての賦形剤としては、例えば糖(例えば白糖、マルトース等)、糖アルコール(例えばソルビトール等)、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン等)、セルロース(例えば結晶セルロース、粉末セルロース等)、難水溶性無機塩(例えばタルク、軽質無水ケイ酸等)等があげられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
他の添加剤としての結合剤としては、例えばセルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルメロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、セルロース(例えば結晶セルロース等)、デンプン(例えばアルファ化デンプン等)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、アラビアゴム、ゼラチン等があげられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
他の添加剤としての滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等があげられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0015】
他の添加剤としての崩壊剤としては、例えばセルロース誘導体(例えばクロスカルメロースナトリウム、カルメロースナトリウム、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等)、デンプン(例えばアルファ化デンプン、部分アルファ化デンプン等)、デンプン誘導体(カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等)、クロスポビドン、ベントナイト等があげられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。また、本発明における苦味を呈する薬物を含有するコア粒子は、良好な製造性および/または速やかな薬物の溶出性を呈するために、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスポビドン等から選ばれる1つ以上の崩壊剤を含有することが好ましい。さらに、安定性をより優れたものとする点で、トピラマートおよびその薬学的に許容される塩を含んでなるコア粒子は、クロスカルメロースナトリウムまたはカルメロースナトリウムを含有することがより好ましく、オロパタジンおよびその薬学的に許容される塩を含んでなるコア粒子は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有することがより好ましい。
苦味を呈する薬物を含有するコア粒子は、崩壊剤、好ましくはクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチおよびクロスポビドンから選ばれる1つ以上の崩壊剤を、0.5〜50重量%、より好ましくは1〜25重量%、さらに好ましくは3〜15重量%含有することが好ましい。
また、苦味を呈する薬物を含有するコア粒子は、色素、遮光剤、香料等を含有していてもよく、色素、遮光剤または香料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄(具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄等)、酸化亜鉛、酸化ケイ素、ベンガラ、カーボンブラック、薬用炭、硫酸バリウム、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、銅クロロフィン、各種香料等があげられる。
【0016】
苦味を呈する薬物を含有するコア粒子は、球形、円柱形、不定形等いずれの形状でもよいが、本発明におけるコア粒子は、例えば流動層造粒で得られるような不定形の粒子であっても、良好にマスキングされる。該コア粒子の粒子径は、重量平均粒子径で30〜500μmであるのが好ましく、50〜300μmであるのがより好ましく、75〜150μmであるのがさらに好ましい。本発明において重量平均粒子径は、例えば篩い分け法で求めればよい。
【0017】
マスキング皮膜は、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマー、好ましくはアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマー、より好ましくはメタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーを含有する。本発明において、マスキング皮膜に、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーを含有することは、安定性をより優れたものとする点でも、より好ましい。
【0018】
本発明において、メタクリル酸コポリマーSおよびメタクリル酸コポリマーLとしては、例えば日局または薬添規に収載のものがあげられる。
本発明におけるメタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーとは、メタクリル酸とアクリル酸エチルの共重合樹脂のことであり、例えば、薬添規乾燥メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL100-55(レーム社)等)、薬添規メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL30D-55(レーム社)等)中のメタクリル酸とアクリル酸エチルの共重合樹脂等があげられる。
本発明におけるアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーとは、アクリル酸エチルとメタクリル酸メチルの共重合樹脂のことであり、例えば、薬添規アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー分散液(オイドラギットNE30D(レーム社)等)中のアクリル酸エチルとメタクリル酸メチルの共重合樹脂等があげられる。
本発明におけるアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーとは、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルの共重合樹脂のことであり、例えば、薬添規アミノアクリルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRS100(レーム社)、オイドラギットRSPO(レーム社)、オイドラギットRL100(レーム社)、オイドラギットRLPO(レーム社)等)、アミノアクリルメタクリレートコポリマーRSの分散液(オイドラギットRL30D(レーム社)、オイドラギットRS30D(レーム社)等)中のアクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルの共重合樹脂等があげられる。
【0019】
マスキング皮膜は、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマー、好ましくはアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマー、より好ましくはメタクリル酸アクリル酸エチルコポリマーを、該皮膜の好ましくは20〜70重量%含有し、より好ましくは30〜60重量%含有し、さらに好ましくは40〜50重量%含有する。
【0020】
さらに、マスキング皮膜は、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤、好ましくはD-マンニトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤、より好ましくD-マンニトールを含有する。本発明において、マスキング皮膜が、D-マンニトールを含有することは、安定性をより優れたものとする点でも、より好ましい。
【0021】
本発明において、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールとしては、例えば日局または薬添規に収載のものがあげられる。また、これらは水和物(例えば、乳糖水和物等)も包含する。
【0022】
マスキング皮膜は、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーのポリマーの総量に対して好ましくは40〜250重量%含有し、より好ましくは60〜150重量%含有し、さらに好ましくは80〜120重量%含有する。
また、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマー、ならびにD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤の総量が、マスキング皮膜の50〜99重量%であることが好ましく、70〜98重量%であることがより好ましく、80〜95重量%であることがさらに好ましい。
【0023】
マスキング皮膜は、遮光性を呈する化合物を含有していてもよく、該化合物としては例えば遮光性を呈する金属化合物、ケイ素化合物、有機化合物、錯体物質等があげられ、好ましくは酸化チタン、酸化鉄(具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄等)、酸化亜鉛、酸化ケイ素、ベンガラ、カーボンブラック、薬用炭、硫酸バリウム、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、銅クロロフィン等があげられる。
マスキング皮膜は、さらに例えば、他のコーティング基剤、可塑剤、その他のコーティング剤等を含有していてもよい。
他のコーティング基剤としては、例えば胃溶性フィルムコーティング基剤、腸溶性フィルムコーティング基剤、徐放性フィルムコーティング基剤等があげられ、胃溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等の合成高分子等があげられ、腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース アセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、セラック等の天然物等があげられ、徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えば、エチルセルロース等のセルロース系高分子等があげられ、好ましくは、エチルセルロースがあげられる。
【0024】
可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、トリアセチン、ブチルフタリルブチルグリコレート、グリセリルカプリル酸エステル等のエステル;グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール等があげられる。
【0025】
その他のコーティング剤としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、カルナバロウ等があげられる。
【0026】
マスキング皮膜が、さらに遮光性を呈する化合物、他のコーティング基剤、可塑剤、その他のコーティング剤等を含有する場合には、それぞれ一般的な含有量でよいが、できるだけ少量であることが好ましい。なお、例えば、エチルセルロースは、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーと、エチルセルロースとの重量比で1:4〜1:0、好ましくは1:3〜3:1、より好ましくは2:3〜3:2に相当する量を含有していてもよい。
【0027】
マスキング皮膜は1つの層に限らず複数の層で形成されていてもよい。この場合、各層に用いる成分の種類および/または配合量を変えてもよい。
【0028】
マスキング皮膜の量は、コア粒子に対して、味マスキングが達成される厚みになるような充分な量である必要があるが、顆粒の粒子径によって適宜に設定すればよい、例えば、コア粒子の重量平均粒子径が75〜150μmである場合には、コア粒子の15〜120重量%が好ましく、20〜90重量%がより好ましく、30〜70重量%がさらに好ましい。また、マスキング皮膜の量は、速やかな胃内放出もできる量であることが好ましい。本発明において、速やかな胃内放出とは、例えば、日局記載の溶出試験法第2法(回転パドル法)に従う、試験液として水900mLを用いた、37℃、50rpmの条件下での溶出試験に、好ましくは試験開始後30分以内の薬物溶出量が75重量%以上、より好ましくは15以内の薬物溶出量が75重量%以上の薬物が溶出することをいう。
【0029】
本発明の薬物含有顆粒は、球形、円柱形、不定形等いずれの形状でもよい。本発明の薬物含有顆粒は、その大きさによって、散剤と呼ばれるもの、細粒剤と呼ばれるもの(例えば30号(500μm)ふるいを通過しないものが全量の10重量%以下)、顆粒剤と呼ばれるもののいずれでもよく、本発明の薬物含有顆粒の粒子径は、篩い分け法で測定したときの重量平均粒子径で75〜850μmであるのが好ましく、100〜500μmであるのがより好ましく、125〜350μmであるのがさらに好ましい。
【0030】
本発明の薬物含有顆粒の製造方法としては、例えば、苦味を呈する薬物を含有するコア粒子を製造する工程、および得られたコア粒子に、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーLおよびメタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーならびにD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を含有するコーティング液を、コーティングしてマスキング皮膜を施す工程を含む製造方法があげられる。
【0031】
苦味を呈する薬物を含有するコア粒子の製造は、例えば湿式造粒法、乾式造粒法等により行うことができる。湿式造粒法としては、例えば、押し出し造粒法(スクリュー押し出し造粒装置、ロール押し出し式造粒装置等による)、転動造粒法(回転ドラム型造粒装置、遠心転動造粒装置等による)、流動層造粒法(流動層造粒乾燥装置、転動流動層造粒装置、攪拌流動層造粒機等による)、攪拌造粒法(攪拌造粒装置等による)等があげられるが、いずれの場合も、例えば薬物および添加剤を混合し、得られた混合物に溶媒または結合剤液を添加して造粒し、得られた造粒物を乾燥する方法であることが好ましい。溶媒としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等の有機溶媒、水、これらの混合溶媒等があげられ、結合剤液としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等の有機溶媒、水、これらの混合溶媒等にメタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーまたは結合剤(他と添加剤としての結合剤と同義)を溶解または分散したものがあげられ、好ましくは、(a)メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーLおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーから選ばれる1つ以上のポリマーが溶解している有機溶媒系の液、
(b)メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーLおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれる1つ以上のポリマーを、該ポリマーに対して30〜100重量%のクエン酸トリエチルが溶解している水系の液に懸濁して得られた液
(c)薬添規乾燥メタクリル酸コポリマーLDおよび/または薬添規アミノアクリルメタクリレートコポリマーRSを水に懸濁して得られた液、ならびに
(d)薬添規メタクリル酸コポリマーLDおよび/または薬添規アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー分散液、から選ばれる1つ以上の液があげられ、
より好ましくは、 (c)薬添規乾燥メタクリル酸コポリマーLDおよび/または薬添規アミノアクリルメタクリレートコポリマーRSを水に懸濁して得られた液、ならびに
(d)薬添規メタクリル酸コポリマーLDおよび/または薬添規アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー分散液、から選ばれる1つ以上の液があげられ、
さらに好ましくは、薬添規乾燥メタクリル酸コポリマーLDを水に懸濁して得られた液、または薬添規メタクリル酸コポリマーLDがあげられる。
乾式造粒法としては、例えば市販の乾式造粒機を用いフレークを製造するか、打錠機によってスラッグ錠を製造し、得られたフレークまたはスラッグ錠を市販の解砕機または整粒機で破砕することで造粒物を得る破砕造粒法等があげられる。
コア粒子の製造は、攪拌造粒法、転動造粒法または流動層造粒法で行うことがより好ましく、攪拌造粒法で行うことがさらに好ましい。
また、好ましくはそれぞれの造粒物は、適宜粉砕および/または篩い分けすることにより所望の重量平均粒子径を有するようにできる。
【0032】
薬物の体積平均粒子径を2〜150μmにするには、例えば、粗結晶を、篩によって分級して、体積平均粒子径が2〜150μmのものを得てもよいが、粗結晶を、例えば高速回転ミル、ローラーミル、ジェットミル、ボールミル等に分類される粉砕機、好ましくは高速回転ミルに分類される粉砕機を用いて粉砕して体積平均粒子径が15〜100μmのものを得ることが好ましい。高速回転ミルに分類される粉砕機としては、例えばハンマーミル、ピンミル、ケージミル、せん断型ミル、インパクトミル、エアロフォールミル等があげられ、好ましくはハンマーミルがあげられる。
【0033】
また、苦味を呈する薬物を含有するコア粒子の製造方法において、苦味を呈する薬物と、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤とを混合する工程を含むことが好ましい。
【0034】
また、苦味を呈する薬物を含有するコア粒子の製造方法において、苦味を呈する薬物ならびにD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤に、他の薬物および/または他の添加剤(前記と同義)を混合する工程を含むことが好ましい。
いずれの混合工程においても、用いる混合機に制限はないが、例えばV型混合機、コーン型混合機、水平円筒型混合機、リボン型混合機、高速攪拌型、気流攪拌型等の混合専用機で混合しても、例えば流動層造粒乾燥機、高速攪拌造粒機等の造粒機で混合してもよい。
【0035】
得られたコア粒子に、マスキング皮膜を施すには、例えば、従来型のパン型コーティング機、通気式コーティング機、流動層型コーティング装置(流動層造粒乾燥装置等)、転動流動型コーティング装置(転動流動層造粒装置、攪拌流動層造粒機等)、遠心転動型コーティング装置(遠心転動造粒装置等)等を用いる。
【0036】
マスキング皮膜の各構成成分を、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等の有機溶媒、水、これらの混合溶媒等に、溶解または懸濁して、コーティング液を得ることができるが、マスキング皮膜の各構成成分を、水に溶解または懸濁して、水系のコーティング液とすることが好ましい。
【0037】
コーティング液として好ましくは、(a)メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーLおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーから選ばれる1つ以上のポリマーが溶解している有機溶媒系の液、
(b)メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーLおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれる1つ以上のポリマーを、該ポリマーに対して30〜100重量%のクエン酸トリエチルが溶解している水系の液に懸濁して得られた液
(c)薬添規乾燥メタクリル酸コポリマーLDおよび/または薬添規アミノアクリルメタクリレートコポリマーRSを水に懸濁して得られた液、ならびに
(d)薬添規メタクリル酸コポリマーLDおよび/または薬添規アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー分散液、から選ばれる1つ以上の液があげられ、
より好ましくは、 (c)薬添規乾燥メタクリル酸コポリマーLDおよび/または薬添規アミノアクリルメタクリレートコポリマーRSを水に懸濁して得られた液、ならびに
(d)薬添規メタクリル酸コポリマーLDおよび/または薬添規アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー分散液、から選ばれる1つ以上の液があげられ、
さらに好ましくは、薬添規乾燥メタクリル酸コポリマーLDを水に懸濁して得られた液、または薬添規メタクリル酸コポリマーLDがあげられる。
【0038】
さらに、コーティング液は、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤、好ましくはD-マンニトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤、より好ましくD-マンニトールを含有する。コーティング液中で、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤は、溶解していても懸濁していても構わないが、水に溶解していることが好ましい。有機溶媒系の液に、該賦形剤を懸濁させる場合には、該賦形剤の水溶液に、有機溶媒を加えて微細な結晶を析出させて、懸濁状態にすることが好ましい。
【0039】
また、本発明は、本発明の薬物含有顆粒と、苦味を呈する薬物(前記と同義)を含有しない口腔内崩壊錠用粉末とを含有してなる口腔内崩壊錠も提供する。
本発明における口腔内崩壊錠用粉末としては、一般的な口腔内崩壊錠を製するのに用いるものがあげられ、例えば、国際公開第97/47287号パンフレット、国際公開第2005/004923号パンフレット、特開2003-034655号公報、国際公開第2003/074085号パンフレット等に記載の、公知の口腔内崩壊錠用粉末があげられ、好ましくは、体積平均粒子径30μm 以下の糖アルコールまたは糖類、および崩壊剤を含有する口腔内崩壊錠用粉末(国際公開第97/47287号パンフレット参照)、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体を含有する口腔内崩壊錠用粉末(国際公開第2005/004923号パンフレット参照)等があげられる。
【0040】
本発明における口腔内崩壊錠用粉末は、糖および/または糖アルコールを含有することが好ましく、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の物質を含有することがより好ましい。口腔内崩壊錠用粉末は、糖および/または糖アルコール、好ましくはD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上、より好ましくはD-マンニトール、乳糖およびエリスリトールから選ばれた1つ以上、さらに好ましくD-マンニトールを50〜98重量%、より好ましくは60〜98重量%、さらに好ましくは70〜98重量%含有する。
糖および/または糖アルコールは、体積平均粒子径(前記と同義)が5〜150μmであるのが好ましく、10〜50μmであるのがより好ましく、15〜30μmであるのがさらに好ましい。
【0041】
また、口腔内崩壊錠用粉末は、糖および糖アルコール以外の添加剤を含有していてもよく、例えば、デンプン、デンプン誘導体、セルロース、セルロース誘導体、難水溶性無機塩(例えばタルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム等)、結合剤(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、アラビアゴム、ゼラチン等)、崩壊剤(例えばクロスポビドン、ベントナイト等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等)、甘味剤(例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン等)、酸味料(例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等)、抗酸化剤(例えば、トコフェロール、アスコルビン酸、塩酸システイン、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル等)、着色剤(例えば、酸化チタン、酸化鉄(具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄等)、酸化亜鉛、酸化ケイ素、ベンガラ、カーボンブラック、薬用炭、硫酸バリウム、カラメル、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、銅クロロフィン、食用青色2号、カロチノイド色素、トマト色素等)、香料(例えば、レモンフレーバー、レモンライムフレーバー、グレープフルーツフレーバー、アップルフレーバー等)等を含有していてもよく、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
なお、セルロース(例えば結晶セルロース、粉末セルロース等)、セルロース誘導体(例えばクロスカルメロースナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム等)、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、α化デンプン、部分α化デンプン等)、デンプン誘導体(ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム等)等を、崩壊剤として含有していても構わない。本発明においては、それらも崩壊剤である。
【0042】
口腔内崩壊錠用粉末に含有できる崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン等が好ましく、クロスカルメロースナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン等がより好ましい。
口腔内崩壊錠用粉末は、崩壊剤、好ましくはクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチおよびクロスポビドンから選ばれた1つ以上の崩壊剤、より好ましくはクロスポビドンを、0.01〜50重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%含有することが好ましい。口腔内崩壊錠用粉末が崩壊剤を含有することは、口腔内崩壊錠の口腔内崩壊時間を、より短縮する点で好ましい。
【0043】
口腔内崩壊錠用粉末は、難水溶性無機塩、好ましくはタルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、ケイ酸カルシウムおよびリン酸カルシウムから選ばれた1つ以上の難水溶性無機塩を、より好ましくは軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸ナトリウムおよびケイ酸カルシウムから選ばれた1つ以上の難水溶性無機塩を、0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%含有することが好ましい。口腔内崩壊錠用粉末が難水溶性無機塩を含有することは、口腔内崩壊錠の口腔内崩壊時間を、より短縮する点で好ましい。また、口腔内崩壊錠用粉末が難水溶性無機塩を含有することは、口腔内崩壊錠の錠剤硬度を高める点でも好ましい。
【0044】
本発明における口腔内崩壊錠用粉末は、口腔内崩壊錠用粉末に含有できる添加剤を混合しただけの混合物であってもよいが、造粒された粉末であることが好ましい。本発明における口腔内崩壊錠用粉末が、造粒された粉末である場合には、少なくとも糖および/または糖アルコールを含有する粉末を造粒することで得られ、造粒に水または結合剤液を用いる場合には、糖および/または糖アルコールおよび前記の口腔内崩壊錠用粉末に含有できる他の添加剤の一部または全部を、溶解または懸濁して加えて造粒してもよい。
本発明における口腔内崩壊錠用粉末が、造粒された粉末である場合の、造粒は、例えば湿式造粒法、乾式造粒法等により行うことができる。湿式造粒法としては、例えば、押し出し造粒法(スクリュー押し出し造粒装置、ロール押し出し式造粒装置等による)、転動造粒法(回転ドラム型造粒装置、遠心転動型造粒装置等による)、流動層造粒法(流動層造粒装置、転動流動層造粒装置等による)、攪拌造粒法(攪拌造粒装置等による)等があげられ、いずれの場合も、例えば口腔内崩壊錠用粉末に含有できる添加剤を混合し、得られた混合物に溶媒または結合剤液を添加して造粒し、得られた造粒物を乾燥する方法であることが好ましい。溶媒としては、例えば水、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、これらの混合溶媒等があげられ、結合剤液としては、例えば水、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、これらの混合溶媒等に口腔内崩壊錠用粉末に含有できる結合剤を溶解したものがあげられるが、水が最適である。乾式造粒法としては、例えば市販の乾式造粒機を用いフレークを製造するか、打錠機によってスラッグ錠を製造し、得られたフレークまたはスラッグ錠を市販の解砕機または整粒機で破砕することで造粒物を得る破砕造粒法等があげられる。該造粒は、攪拌造粒法、転動造粒法または流動層造粒法で行うことがより好ましく、攪拌造粒法で行うことがさらに好ましい。
【0045】
本発明の口腔内崩壊錠は、本発明の薬物含有顆粒を、苦味を呈する薬物(前記と同義)を含有しない口腔内崩壊錠用粉末と混合し、打錠機で圧縮成形することにより製造することができる。口腔内崩壊錠用粉末が、造粒された粉末である場合には、本発明の薬物含有顆粒を、該造粒された口腔内崩壊錠用粉末と混合し、所望により、さらに口腔内崩壊錠用粉末に含有できる添加剤(崩壊剤等)を造粒しないで、加えて混合し、打錠機で圧縮成形することにより製造してもよい。
【0046】
本発明の口腔内崩壊錠において、薬物含有顆粒に、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤ならびにメタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーを含有することは、口腔内崩壊錠の口腔内崩壊時間に影響(崩壊遅延)が少ない点で好ましい。また、口腔内崩壊錠の錠剤硬度を高める点で好ましい。
【0047】
本発明に用いることができる打錠機は、特に限定されず、例えばロータリー打錠機、油圧プレス機等の打錠機を用いることができる。また、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸またはその金属塩、ショ糖脂肪酸エステルまたはグリセリン脂肪酸エステル、硬化油脂等の滑沢剤を、杵臼にあらかじめ極微量塗布された杵臼を有する打錠機を用いてもよく、いわゆる外部滑沢圧縮成形方法を用いて口腔内崩壊錠を製造してもよい。
【0048】
本発明において口腔内崩壊錠の形状としては、具体的には、例えば丸錠、三角錠、砲丸錠等が好ましい。本発明の錠剤の大きさは、特に制限されないが、例えば質量で0.1〜1g、直径で0.5〜1.5cmであるのが好ましい。
【0049】
本発明において口腔内崩壊錠は、例えばかけ、くずれ等が生じない硬度を有しているのが好ましい。錠剤の硬度は、一般的に錠剤硬度計で錠剤の直径方向の破壊強度として測定されるが、その値は20〜200Nであるのが好ましく、30〜150Nであるのがより好ましく、40〜100Nであるのが特に好ましい。錠剤の硬度は、市販の錠剤破壊強度測定機、例えば、ジャパンマシナリー製PTB-311E型により測定できる。
【0050】
本発明において口腔内崩壊錠は、口腔内の崩壊時間が1分以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましい。例えば、口腔内崩壊時間をシミュレートしたin vitro試験である吸水時間測定法(砂田久一,“ケミカル&ファーマシューティカル・ブレチン(Chem. Pharm. Bull)”, 1996年, 第44巻, 11号, p.2121-2127参照)を行った場合は、錠剤表面全てに色素液が浸潤するまでに要した時間(吸水時間)が1分以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましい。
【0051】
次に、実施例および試験例により、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例および試験例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0052】
オロパタジン塩酸塩(協和発酵キリン社製、体積平均粒子径およそ30μm)2000.0 g、D-マンニトール(製品名Pearlitol 25C、ロケットジャパン社製、体積平均粒子径およそ20μm、以下同じ)9120.0 g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(製品名L-HPC、信越化学工業社製、以下同じ)640.1 gおよび黄色三二酸化鉄(製品名黄色三二酸化鉄、癸巳化成社製、以下同じ)16.0 gを、攪拌造粒機(バーチカルグラニュレーターFM-VG-65、パウレックス社製、以下同じ)に入れて混合し、メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL30D-55、レーム社、以下同じ)2400.2 gを加えて造粒した。得られた造粒物を整粒機(コーミルQC-194S、パウレック社製、以下同じ)で湿式整粒した。得られた湿式整粒品を流動層造粒乾燥機(WSG-30、パウレック社製、以下同じ)で乾燥し、整粒機(パワーミル P-3、ダルトン社製、以下同じ)で乾式整粒して、コア粒子(重量平均粒子径およそ85μm)を得た。
一方、D-マンニトール224.0 g、クエン酸トリエチル(シトロフレックス2、森村商事、以下同じ)112.2 gおよび水2860.4 gを混合し、さらにメタクリル酸コポリマーLD1120.0 gおよびタルク(製品名タルク、キハラ化成社製、以下同じ)128.0 gを混合して、コーティング液を得た。
得られたコア粒子1000.1 gを、流動層造粒乾燥機に入れ、得られたコーティング液をスプレーし、コア粒子に対して重量で52%の皮膜を施した。得られたコーティング顆粒200.0 gを、定温恒温器(DK 600、ヤマト科学社製、以下同じ)を用いて乾燥し、目開き850μmの篩を用いて篩分し、オロパタジン塩酸塩含有顆粒(重量平均粒子径(篩い分け法、以下同じ)およそ250μm)を得た。
【実施例2】
【0053】
D-マンニトール280.2 g、クエン酸トリエチル112.2 gおよび水2991.1 gを混合し、さらにメタクリル酸コポリマーLD 933.4 gおよびタルク128.1 gを混合して、コーティング液を得た。
実施例1で得られたコア粒子1000.2 gを、流動層造粒乾燥機に入れ、得られたコーティング液をスプレーし、コア粒子に対して重量で52%の皮膜を施した。得られたコーティング顆粒200.0 gを、実施例1と同様に乾燥および篩分し、オロパタジン塩酸塩含有顆粒(重量平均粒子径およそ250μm)を得た。
【実施例3】
【0054】
D-マンニトール336.0 g、クエン酸トリエチル112.1 gおよび水3121.9 gを混合し、さらにメタクリル酸コポリマーLD746.8 gおよびタルク128.0 gを混合して、コーティング液を得た。
実施例1で得られたコア粒子1000.2 gを、流動層造粒乾燥機に入れ、得られたコーティング液をスプレーし、コア粒子に対して重量で52%の皮膜を施した。得られたコーティング顆粒200.0 gを、実施例1と同様に乾燥および篩分し、オロパタジン塩酸塩含有顆粒(重量平均粒子径およそ250μm)を得た。
【0055】
比較例1
クエン酸トリエチル112.1 gおよび水2337.9 gを混合し、さらにメタクリル酸コポリマーLD1866.8 gおよびタルク128.0 gを混合して、コーティング液を得た。
実施例1で得られたコア粒子1000.2 gを、流動層造粒乾燥機に入れ、得られたコーティング液をスプレーし、コア粒子に対して重量で52%の皮膜を施した。得られたコーティング顆粒200.1 gを、実施例1と同様に乾燥および篩分し、オロパタジン塩酸塩含有顆粒(重量平均粒子径およそ250μm)を得た。
【0056】
【表1】

【0057】
試験例1
実施例1〜3、ならびに比較例1で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒について、苦味マスキングを評価するために、溶出試験を行った。
(溶出試験)
溶出試験は日局第2法(回転パドル法)に従い、試験液は水900mLを用いて行い、操作条件は、37℃、50rpmで実施した。試験開始0.5分後にサンプリングされた溶出液について、高速液体クロマトグラフィー法によりオロパタジンの溶出量を定量し、溶出プロファイルとして評価した。
高速液体クロマトグラフィー条件
カラム;Inertsil C8 4.6×250mm GL Sciences Inc.
カラム温度;40℃付近の一定温度
移動相;0.05mol/Lリン酸緩衝液(pH3.5) : アセトニトリル = 550mL : 450mL + ラウリル硫酸ナトリウム 2.3g
検出方法 :紫外線吸光光度法 (波長299nm)
試験例1の結果を図1に示す。実施例1〜3および比較例1で得られた、いずれのオロパタジン塩酸塩含有顆粒も、0.5分時点の溶出量が30%以下となり、苦味をマスキングすることができた。
【0058】
試験例2
実施例1〜3、ならびに比較例1で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒について、胃内においての溶出性を評価するために、溶出試験を行った。
(溶出試験)
溶出試験は日局第2法(回転パドル法)に従い、試験液は日局1液900mLを用いて行い、操作条件は、37℃、50rpmで実施した。試験開始5、10、15および30分後にサンプリングされた溶出液について、試験例1と同様にオロパタジンの溶出量を定量し、溶出プロファイルとして評価した。
試験例2の結果を図2に示す。比較例1で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒は、15分までに溶出量が75%に達しなかったのに対して、実施例1〜3で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒は、15分までに溶出量が75%を超え、速やかな溶出性を示した。
【実施例4】
【0059】
実施例1で得られたコア粒子1000.1 gを、流動層造粒乾燥機に入れ、実施例1で得られたコーティング液をスプレーし、コア粒子に対して重量で69%の皮膜を施した。得られたコーティング顆粒200.0 gを、実施例1と同様に乾燥および篩分し、オロパタジン塩酸塩含有顆粒(重量平均粒子径およそ250μm)を得た。
【実施例5】
【0060】
実施例1で得られたコア粒子1000.2 gを、流動層造粒乾燥機に入れ、実施例2で得られたコーティング液をスプレーし、コア粒子に対して重量で69%の皮膜を施した。得られたコーティング顆粒200.0 gを、実施例1と同様に乾燥および篩分し、オロパタジン塩酸塩含有顆粒(重量平均粒子径およそ250μm)を得た。
【実施例6】
【0061】
実施例1で得られたコア粒子1000.2 gを、流動層造粒乾燥機に入れ、実施例3で得られたコーティング液をスプレーし、コア粒子に対して重量で69%の皮膜を施した。得られたコーティング顆粒200.0 gを、実施例1と同様に乾燥および篩分し、オロパタジン塩酸塩含有顆粒(重量平均粒子径およそ250μm)を得た。
【0062】
比較例2
実施例1で得られたコア粒子1000.2 gを、流動層造粒乾燥機に入れ、比較例1で得られたコーティング液をスプレーし、コア粒子に対して重量で69%の皮膜を施した。得られたコーティング顆粒200.2 gを、実施例1と同様に乾燥および篩分し、オロパタジン塩酸塩含有顆粒(重量平均粒子径およそ250μm)を得た。
【0063】
【表2】

【0064】
試験例3
実施例4〜6、ならびに比較例2で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒について、苦味マスキングを評価するために、溶出試験を行った。
(溶出試験)
試験例1と同様に溶出試験を実施した。試験開始0.5分後にサンプリングされた溶出液について、試験例1と同様にオロパタジンの溶出量を定量し、溶出プロファイルとして評価した。
試験例3の結果を図3に示す。実施例4〜6および比較例2で得られた、いずれのオロパタジン塩酸塩含有顆粒も、0.5分時点の溶出量が30%以下となり、苦味をマスキングすることができた。
【0065】
試験例4
実施例4〜6、ならびに比較例2で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒について、胃内においての溶出性を評価するために、溶出試験を行った。
(溶出試験)
試験例2と同様に溶出試験を実施した。試験開始5、10、15および30分後にサンプリングされた溶出液について、試験例1と同様にオロパタジンの溶出量を定量し、溶出プロファイルとして評価した。
試験例4の結果を図4に示す。比較例2で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒は、15分までに溶出量が75%に達しなかったのに対して、実施例4〜6で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒は、15分までに溶出量が75%を超え、速やかな溶出性を示した。
【実施例7】
【0066】
オロパタジン塩酸塩920.0 g、D-マンニトール4195.2 g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース294.4 gおよび黄色三二酸化鉄7.36 gを、攪拌造粒機に入れて混合し、メタクリル酸コポリマーLD 1104.1gを加えて造粒した。造粒工程を2回繰り返した。得られた造粒物を整粒機で湿式整粒し,
流動層造粒乾燥機で乾燥、整粒機で乾式整粒して、コア粒子(重量平均粒子径およそ125μm)を得た。
一方、D-マンニトール1728.0 g、クエン酸トリエチル192.1 gおよび水11791.0 gを混合し、さらにメタクリル酸コポリマーLD 5760.0 gおよびタルク640.0 gを混合して、コーティング液を得た。
得られたコア粒子9996.8 gを、流動層造粒乾燥機に入れ、得られたコーティング液20111.0 gをスプレーしてマスキング皮膜を施した。得られたコーティング顆粒を、目開き710μmの篩で篩分し、オロパタジン塩酸塩含有顆粒(重量平均粒子径およそ200μm)を得た。
【0067】
【表3】

【実施例8】
【0068】
D-マンニトール4815.4 g、クロスポビドン(製品名PVPP XL-10、ISPジャパン社製、以下同じ)234.7 g、軽質無水ケイ酸(製品名アドソリダー101、ワイ・ケイ・エフ社製、以下同じ)23.5g(他も含めて積極的記載する)および黄色三二酸化鉄4.7 gを、バーチカルグラニュレーター(FM-VG-25P、パウレックス社製)に入れて混合し、水1223.3 gを加えて造粒した。得られた造粒物を整粒機で湿式整粒した。得られた湿式整粒品を流動層造粒乾燥機で乾燥、整粒機で乾式整粒する工程を、数回繰り返して、口腔内崩壊錠用粉末を得た。
得られた口腔内崩壊錠用粉末27801.6 gと、実施例7で得られたオロパタジン塩酸塩含有顆粒7142.4 g、アスパルテーム(製品名アスパルテーム、味の素社製、以下同じ)33.6 g、香料33.6 gおよびステアリン酸マグネシウム(製品名ステアリン酸マグネシウム、太平化学産業社製、以下同じ)64.0 gを混合機(ツインブレードミキサーTBM-150、特寿工作所社製、以下同じ)で混合し、打錠用粉粒体を得た。
杵および臼に、錠剤1錠あたりステアリン酸マグネシウムおよそ0.4 mgになる量を吹き付ける外部装置を備えた打錠機(HT-AP15SS、畑鉄鋼所社製)にて、得られた打錠用粉粒体を打錠し、オロパタジン塩酸塩含有口腔内崩壊錠(径方向の錠剤硬度62 N、ジャパンマシナリー製PTB-311E型を使用)を得た。
【0069】
【表4】

【0070】
試験例5
実施例8で得られたオロパタジン塩酸塩含有口腔内崩壊錠について、苦味官能試験を行った。
(苦味官能試験法)
オロパタジン塩酸塩含有口腔内崩壊錠を口腔内に含み、崩壊するまで保持する。次に、試験試料を吐き出し、水で濯いだ後に苦味を採点基準に従って評価した。
採点基準: 5:苦味を感じない、4:苦味は感じるが気にならない、3:苦味はあるが薬と考えると服用可能、2:無理すれば服用できるが苦痛となる苦味、1:飲み込むことができない苦味
成人7名にて試験を実施した結果、採点の平均点は4.4であり、実施例8で得られたオロパタジン塩酸塩含有口腔内崩壊錠は、十分な苦味マスキング性を示した。
【0071】
試験例6
実施例8で得られたオロパタジン塩酸塩含有口腔内崩壊錠について、苦味マスキングを評価するために、注射筒正倒立法を行った。
錠剤1錠を注射筒にとり、水5 mLを加え、10秒間に1回の速さで所定の時間回転撹拌した。その後、メンブランフィルターでろ過した試料溶液(10秒、20秒、30秒)について、試験例1と同様に高速液体クロマトグラフィー法によりオロパタジンの溶出量を定量し、溶出プロファイルとして評価した。試験例6の結果を図5に示す。
30秒時点の溶出量が30%以下となり、苦味をマスキングすることができた。
【0072】
試験例7
実施例8で得られたオロパタジン塩酸塩含有口腔内崩壊錠について、崩壊性について評価するために、吸水時間測定を行った。
(吸水時間測定法)
直径55 mmの円形ろ紙上に10 mg/mLの黄色5号水溶液を2 mL滴下した。この湿潤されたろ紙上に実施例8で得られたオロパタジン塩酸塩含有口腔内崩壊錠 1錠を静置し、錠剤表面全てに色素液が浸潤するまでに要した時間を計測した。2回測定した吸水時間の平均値は17秒であり、速やかな崩壊性を示した。
試験例8
実施例8で得られたオロパタジン塩酸塩含有口腔内崩壊錠について、胃内においての溶出性を評価するために、溶出試験を行った。
(溶出試験)
試験例2と同様に溶出試験を実施した。試験開始5、10、15および30分後にサンプリングされた溶出液について、試験例1と同様にオロパタジンの溶出量を定量し、溶出プロファイルとして評価した。
試験例7の結果を図6に示す。実施例8で得られたオロパタジン塩酸塩含有口腔内崩壊錠は、15分までに溶出量が75%を超え、速やかな溶出性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明により、苦味を呈する薬物を含有する散剤や顆粒剤および口腔内崩壊錠において、口腔内で苦味を抑制する(口腔内での溶出量を抑える)ことと、胃内において溶出性を優れたものとすることを両立した散剤や顆粒剤および口腔内崩壊錠等を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)苦味を呈する薬物を含有するコア粒子および(b)該コア粒子を被覆するマスキング皮膜を含んでなる薬物含有顆粒であって、
該マスキング皮膜が、該皮膜の20〜70重量%のメタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマー、ならびに
該ポリマーに対して40〜250重量%のD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を含有するマスキング皮膜であることを特徴とする、薬物含有顆粒。
【請求項2】
(a)シナカルセト、トピラマートもしくはオロパタジンまたはその薬学的に許容される塩を含有するコア粒子および(b)該コア粒子を被覆するマスキング皮膜を含んでなる薬物含有顆粒であって、
該マスキング皮膜が、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、ならびに
D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を含有するマスキング皮膜であることを特徴とする、薬物含有顆粒。
【請求項3】
該コア粒子が、D-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤ならびにメタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーを含有するコア粒子である、請求項1または2記載の薬物含有顆粒。
【請求項4】
重量平均粒子径が100〜300μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の薬物含有顆粒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の薬物含有顆粒と、該苦味を呈する薬物を含有しない口腔内崩壊錠用粉末とを含有してなる口腔内崩壊錠。
【請求項6】
(a)苦味を呈する薬物を含有するコア粒子および(b)該コア粒子を被覆するマスキング皮膜を含んでなる薬物含有顆粒の製造方法であって、
該コア粒子を製造する工程、および
得られたコア粒子に、得られるマスキング皮膜の20〜70重量%のメタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマー、ならびに
該ポリマーに対して40〜250重量%のD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を含有するコーティング液を、コーティングしてマスキング皮膜を施す工程を含むことを特徴とする、薬物含有顆粒の製造方法。
【請求項7】
苦味を呈する薬物を含有するコア粒子を製造する工程が、苦味を呈する薬物ならびにD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を、
メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーを含有する結合液で造粒する工程である、請求項6記載の薬物含有顆粒の製造方法。
【請求項8】
(a)シナカルセト、トピラマートもしくはオロパタジンまたはその薬学的に許容される塩を含有するコア粒子および(b)該コア粒子を被覆するマスキング皮膜を含んでなる薬物含有顆粒の製造方法であって、
該コア粒子を製造する工程、および
得られたコア粒子に、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、ならびにD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を含有するコーティング液を、コーティングしてマスキング皮膜を施す工程を含むことを特徴とする、薬物含有顆粒の製造方法。
【請求項9】
コア粒子を製造する工程が、シナカルセト、トピラマートもしくはオロパタジンまたはその薬学的に許容される塩、ならびにD-マンニトール、乳糖、トレハロース、キシリトール、マルチトールおよびエリスリトールから選ばれた1つ以上の賦形剤を、
メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸アクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸エチルメタクリル酸メチルメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーから選ばれた1つ以上のポリマーを含有する結合液で造粒する工程である、請求項8記載の薬物含有顆粒の製造方法。
【請求項10】
コア粒子の重量平均粒子径が75〜150μmである、請求項6〜9のいずれかに記載の薬物含有顆粒の製造方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の製造方法によって得られた薬物含有顆粒と、該苦味を呈する薬物を含有しない口腔内崩壊錠用粉末とを混合する工程、および
得られた混合粉体を圧縮形成する工程を含むことを特徴とする口腔内崩壊錠の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−63627(P2011−63627A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−293163(P2010−293163)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】