説明

茎稈引起こし装置及び引起こし爪

【課題】稲等の茎稈を引き起こす際に、稲から引起こし爪に加わる摩擦力を低減して引起こし爪の破損を防止し、また稲の根本からの引き抜きを防止することで装置故障を低減できる引起こし装置及び引起こし爪を提供することを目的とする。
【解決手段】茎稈引起こし装置は、駆動輪と従動輪との間に無端回動帯を張設し、該無端回動帯に所定間隔おきに引起こし爪を有し、引起こし爪は、無端回動帯側に連結する爪ベース部と、軸部と、ローラ部材とを備え、爪ベース部に軸部の一端を連結し、軸部にローラ部材を回転自在に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の収穫機の茎稈の引起こし装置及びこれに用いる引起こし爪に係る。
【背景技術】
【0002】
コンバインやバインダ等の刈取前処理部には一般に茎稈引起こし装置を備えている。
例えば図5に示すような引起こし装置110において、駆動輪112と従動輪113との間に張設したチェーン114に引起こし爪120を所定間隔おきに取付け、チェーンを回動させることで引起こし爪120により稲等の茎稈を引起こすようになっている。
引起こし爪120は稲を引き起こす際に、稲との間に大きな摩擦が生じる。
即ち、引起こし爪120は稲をしごくように擦り上げて引起こすため、引起こし爪120の摩耗は激しい。
従来、引起こし爪がチェーンに一体的に連結してあるので、摩耗した引起こし爪をチェーンから取り外して交換する作業が大変であった。
また、摩耗により稲との間の摩擦が大きくなると、引起こし爪120がねじ曲がったり欠損する問題があった。
また、引起こし爪と稲との間の摩擦が大きいと稲を根本から引き抜いてしまい、稲の株部分が装置に詰まるトラブルを発生させる恐れがあった。
特に、直播き栽培では浅根であることから最近では大きな問題になりつつある。
特開2001−008528号公報には引起こし爪に切り欠き部を形成して、引起こし爪が起立回動する際の慣性衝撃と跳ね返り衝撃を低減させることで、引起こし爪の損耗を低減する技術を開示する。
しかしながら、やはり稲を引き起こす際に引起こし爪に強い摩擦力が加わる問題はある。
【0003】
【特許文献1】特開2001−008528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記技術的課題に鑑みて、稲等の茎稈を引き起こす際に、稲から引起こし爪に加わる摩擦力を低減して引起こし爪の破損を防止し、また稲の根本からの引き抜きを防止することで装置故障を低減できる引起こし装置及び引起こし爪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的要旨は、茎稈引起こし装置において、駆動輪と従動輪との間に無端回動帯を張設し、該無端回動帯に所定間隔おきに引起こし爪を有し、引起こし爪は、無端回動帯側に連結する爪ベース部と、軸部と、ローラ部材とを備え、爪ベース部に軸部の一端を連結し、軸部にローラ部材を回転自在に取り付けてある点である。
【0006】
爪ベース部に軸部の一端を連結し、軸部にローラ部材を回転自在に取り付けたとは、例えばコンバインやバインダ等に備える引起こし装置において、引起こし爪を回動させるチェーンやベルト等の無端回動帯側に引起こし爪の爪ベース部を連結し、この爪ベース部に軸部を連結して、この軸部に外周のローラ面が茎稈摺接部となるローラ部材を回転自在に取り付ける趣旨である。
これにより、ローラ部材の外周が茎稈摺接部となり茎稈のこぎ上げ時に回転自在なので、不要な摩擦力が回転により解消し、引起こし爪が茎稈をしごくように擦り上げることはなくなる。
よって、茎稈から引起こし爪に加わる摩擦力を低減出来、また、稲を引き抜こうとする力が解消されるため、稲の根本からの引き抜きを防止出来る。
また、例え引起こし爪が消耗した場合であっても消耗範囲はローラ部材に限定されることから引起こし爪全体を交換しなくてもローラ部材のみが交換可能となる。
ローラ部材により引起こし爪の茎稈摺接部を周方向に回転自在とする方法としては、例えば軸とローラ部材間にベアリング等の軸受け部材を備える方法や、ローラ部材を単体で回転自在とし、このローラ部材を軸に取付け固定する方法等が考えられる。
引起こし爪を取り付ける無端帯がチェーンである場合には、チェーンに取付け部を設けてこの取付部に取り付けピンにて引起こし爪(タイン)を起伏可能に取り付ける。
一方ベルトを無端帯とする場合にはベルトから突出させた突出部(ラグ)により爪ベース部を形成し、この爪ベース部に軸部を連結して、この軸部にローラ部材を取り付けて引起こし爪とする方法が考えられる。
引起こす対象の茎稈としては、稲の他に麦類、豆類等が考えられ、引起こし装置で引き起こすものであれば特に限定されない。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、引起こし爪の茎稈摺接部をローラ部材により回転自在としたので稲と引起こし爪との間のこすれ摩擦を非常に小さく出来る。
これにより、引起こし爪が稲をこぎ上げる際にねじ曲がったり、欠損してしまう故障を防止することが出来る。
また、こすれ摩擦を小さくしたことにより、引起こし爪の摩耗を少なく抑えることができて爪の寿命が飛躍的に延びるとともに、無理な稲の引き抜きを防ぎ、抜けた稲の株部分が詰まるトラブルを防止出来る。
そして、引起こし爪の茎稈摺接部が摩耗した場合にはローラ部材のみを交換すればよく経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図4に本発明に係る引起こし装置を用いるコンバインの外観説明図を示す。
コンバイン2の機体3にはクローラ走行部7、茎稈搬送装置4、脱穀装置5、搭乗運転部等6を備え、機体3の前部に刈取前処理部8を備え、茎稈引起こし装置10を有している。
図2に刈取前処理部における引起こし装置10の要部説明図を示す。
引起こし装置10は、ケース11を備え、ケース11内に駆動輪12と従動輪13とを備えて、駆動輪12と従動輪13との間にチェーン(無端帯)14を張設している。
チェーン14には所定間隔毎に引起こし爪(タイン)20を取り付けている。
この引起こし爪20を図1に示す。
図1(イ)は引起こし爪の外観図を示し、図1(ロ)は断面図を示す。
引起こし爪20はチェーン14に取付部を設け、取付けピン27により所定間隔毎に起伏可能に取り付けている。
また、引起こし爪20は、爪ベース部25にカム部26を備え、稲等の引起こし時には、チェーン14が回転して引起こし爪20に設けたカム部26が従動輪13にあたることでチェーン14から起立し、カム部26がガイド部15に案内されて引起こし爪20を起立させた状態で稲などを上方へ引き起こし、引起こし爪20の下降時にはガイド15aにより引起こし爪先端部分がガイドされて伏臥状態となる。。
引起こし爪20は、爪ベース部25に起立方向の回転軸22を取付け、回転軸22に円錐状のローラ部材21を間にベアリング24等の軸受けを介して取り付ける。
そして、ナット23によりローラ部材21を係止することで、回転軸22に対してローラ部材の外周の茎稈摺接部21aを回転軸22の周方向に回転自在としている。
ローラ部材21は図では円錐状としているが、円筒状であってもよい。
このベアリングは回転軸22の爪ベース部25側に備えてもよいし、また、ベアリングを設けないでローラ部材21をナット23で係止するだけでも良い。
回転軸22はSUSや鉄など金属製とすると高強度となり耐久性が得られる。
ローラ部材21は引起こし爪へ別部品として取り付けている。
このため、稲等の引起こし動作で茎稈摺接部21aが摩耗した場合にはローラ部材のみを交換すればよい。
図1に示す引起こし爪の実施例では取り付けピン27にてチェーンに起伏自在に取り付けるが、チェーンではなく無端帯として弾性ベルトを用いる場合には、所定間隔毎に弾性ベルトから突出させた突出部(ラグ)を爪ベース部として形成し、この爪ベース部に回転軸を取り付けてこの回転軸にローラ部材を取り付けたラグタイプとする。
【0009】
図3に引起こし装置を用いた稲の引起こし状態例を示す。
引起こし爪20はころ状にローラ部材21を回転させながら稲を引き起こすため、引起こし爪20と稲との間の摩擦により稲を引き抜こうとする力が解消され、稲から引起こし爪20に加わる負荷も大幅に低減されて、引起こし爪20のねじ曲がりや欠損を防止する。
また、これにより稲を根本1aから引き抜いてしまうことを防止し、稲の株の詰まりによるトラブルを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る引起こし爪を示す。
【図2】本発明に係る引起こし爪を備えた引起こし装置の説明図を示す。
【図3】引起こし装置による稲の引起こし状態の説明図を示す。
【図4】コンバインの外観説明図を示す。
【図5】従来の引起こし爪を備えた引起こし装置の説明図を示す。
【符号の説明】
【0011】
1 稲(茎稈、穀稈)
1a 稲根本
2 コンバイン
3 機体
4 茎稈搬送装置
5 脱穀装置
6 搭乗運転部
7 クローラ走行部
8 刈取前処理部
10 茎稈引き起こし装置
11 ケース
12 駆動輪
13 従動輪
14 チェーン(無端回動帯)
15、15a ガイド部
20 引き起こし爪
21 ローラ部材
21a 茎稈摺接部
22 回転軸(軸部)
23 袋ナット
24 ベアリング(軸受け部材)
25 爪ベース部
26 カム部
27 取付けピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と従動輪との間に無端回動帯を張設し、該無端回動帯に所定間隔おきに引起こし爪を有し、引起こし爪は、無端回動帯側に連結する爪ベース部と、軸部と、ローラ部材とを備え、爪ベース部に軸部の一端を連結し、軸部にローラ部材を回転自在に取り付けてあることを特徴とする茎稈引起こし装置。
【請求項2】
茎稈引起こし装置の無端回動帯側に連結する爪ベース部に軸部を連結し、軸部に外周が茎稈摺接部となるローラ部材を回転自在に取り付けてあることを特徴とする茎稈引起こし装置の引起こし爪。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−191868(P2006−191868A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7468(P2005−7468)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(596085689)
【Fターム(参考)】