説明

茶園管理機の刈落とし装置

【課題】 金属板を用いた搬送案内部材であっても旋回性能を確保することができ、機体の運搬時に支障を来すことがない茶園管理機の刈落とし装置を提供する。
【解決手段】 刈落とし装置80の搬送案内部材を、走行機体11をなす荷台前部56Aに着脱可能に取り付け固定される中継枠81と、この中継枠81に連なると共に、中継枠81に機体前方側に向かって回動可能に支持される刈捨てドーム82とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、茶園管理機の刈落とし装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、茶園管理機の刈落とし装置は、摘採面を整える浅番、刈ならし作業により茶畝から刈り取った枝葉、幹を空気流によって搬送して、左右の畝間に振り分けて落下させる装置である。
従来、このような刈落とし装置にあっては、刈刃が刈り取った枝葉、幹を左右の畝間に落下させるため、刈刃から機体後方、且つ左右側方に向かって延設される中空状の搬送案内部材に、柔軟性、且つ伸縮性を有する布材、或いは、アルミ材等の金属板が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記した従来の茶園管理機の刈落とし装置にあっては、次のような問題があった。すなわち、布材による搬送案内部材は、内部の空気抵抗が大きいため空気流に乱れが生じ、枝葉、幹をスムーズに搬送できないという問題がある。また、布材が少しでも弛んでしまうと、そこに枝葉、幹が溜まり、内部に詰まりが発生するという問題もある。また、そのことにより、布材が弛み易い雨天時には刈捨て作業を行うことはできなかった。
また、金属板による搬送案内部材は、刈刃から機体後方、且つ左右側方に向かって張り出された状態で機体に取り付け固定されている。このため、内部の空気抵抗は少なく、雨天時にも刈捨て作業が行えるものの、旋回時には十分なスペースを必要とすると共に、運搬時には、トラックの荷台からはみ出してしまうために機体から取り外さなければならず、使い勝手が悪いという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−215601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、上記した従来技術が有している問題点を解決するためになされたものであって、金属板を用いた搬送案内部材であっても旋回性能を確保することができ、機体の運搬時に支障を来すことがない茶園管理機の刈落とし装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため第1の発明は、刈取装置が茶畝から刈り取った枝葉、幹を気流によって機体後方に搬送したのち畝間に向かって落下させる搬送案内部材を備えた茶園管理機の刈落とし装置において、
前記搬送案内部材は、機体に着脱可能に取り付け固定される固定枠と、前記固定枠に連なり、且つ前記固定枠に機体前方に向かって回動可能に支持された可動枠とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によれば、可動枠を機体前方側に向けて回動させると機体の全長が短縮化される。これにより、金属板を用いた搬送案内部材であっても旋回性能が向上して狭い枕地でも容易に旋回できるようになる。また、運搬時にトラックの荷台からはみ出すこともなくなり、機体から刈落とし装置を取り外す手間が省けるようになり、ユーザの利便性を大幅に向上させることができる。また、刈落とし装置内に枝葉、幹が詰まったとしても、可動枠を跳ね上げることによって、詰まりを簡単に取り除くことができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記可動枠は、機体前方側に向かって回動可能とされた機体の一部が回動する際に、前記機体の一部が前記可動枠に摺動することによって、機体前方側に向かって回動することを特徴とする。
【0009】
第2の発明によれば、機体前方側に向かって機体の一部が回動すると、その機体の一部が可動枠に摺動することによって、可動枠が機体前方側に向かって回動する。これにより、第1の発明の作用効果に加えて、可動枠を機体前方側に向かって回動させるのが容易となり、茶園管理作業の能率を向上させることができる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記機体の一部は、荷台であることを特徴とする。
【0011】
第3の発明によれば、荷台が機体前方側に向かって回動するのに伴って可動枠が機体前方側に向かって回動する。これにより、第2の発明の作用効果に加えて、可動枠を回動させるための駆動用のアクチュエータを新たに備える必要はなく、低コストに構成することができる。また、荷台が機体前方側に向かって回動する構造を備えた既存の茶園管理機にも、その機体構造を大幅に変更することなく容易に取り付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
刈落とし装置の搬送案内部材を、機体に着脱可能に取り付け固定される固定枠と、この固定枠に連なると共に、固定枠に機体前方側に向かって回動可能に支持される可動枠とを備えて構成した。これにより、可動枠を機体前方側に向かって回動させると機体全長が容易に短縮化されるので、金属板を用いた搬送案内部材であっても旋回性能を確保することができ、機体の運搬時に支障を来すことがない茶園管理機の刈落とし装置を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された茶園管理機の正面図、図2は、同例における茶園管理機の右側面図、図3は、同例における刈落とし装置の斜視図、図4は、同例における操縦部に設けられた制御盤の正面図、図5は、同例における入力操作表示部の表示画面、図6(a)は、第1の設定画面、(b)は、第2の設定画面、図7は、第3の設定画面、図8は、同例における刈落とし装置が回動した状態を示した斜視図、図9は、図8の側面図、図10は、同例における刈落とし装置を機体前方側に向かって回動させた状態の茶園管理機の側面図である。
【0014】
本発明の茶園管理機の刈落とし装置について説明する。
図1〜3に示されるように、茶園管理機10は、乗用型の態様が用いられており、茶畝を跨ぎながら走行する走行機体11後部には、刈取装置70によって刈り取られた枝葉、幹を空気流によって搬送して左右の畝間に振り分けて落下させる刈落とし装置80が備えられている。
【0015】
まず、走行機体11について説明する。走行機体11は、図1、2に示されるように、茶畝を跨ぎながら走行するため正面視門型に形成された前側フレーム12及び後側フレーム13と、これら前側及び後側フレーム12,13を連結する左右一対の上部及び下部連結フレーム14,14,15,15とを備えて構成されている(但し、図2中にあっては機体右側のみ図示)。
【0016】
前側及び後側フレーム12,13は、それぞれ機体前後方向に離間した状態で対向配置されていると共に、機体左右方向に向かって軌間伸縮が可能となるように左右分割構造が用いられている。そして、これら前側及び後側フレーム12,13を同期して軌間伸縮を行わせる油圧式の軌間伸縮シリンダ16が、前側及び後側フレーム12,13の前面側にそれぞれ横向きに備えられている。
【0017】
前側フレーム12の垂直な左右脚部の下端部と、後側フレーム13の垂直な左右脚部の下端部とには、それぞれ機体前後方向に延びた左右一対の下部連結フレーム15,15が一体化するように結合固定されている。これらの下部連結フレーム15,15には、駆動輪17と従動輪18との間にクローラ19を巻装した油圧式の走行装置20が備えられている。各走行装置20の上方には、油圧アクチュエータに油圧を供給するための油圧タンク21と、後述する駆動源に燃料を供給するための燃料タンク22とがそれぞれ取り付け固定されている。なお、走行装置20は、クローラを用いたものに限定されるものではなく、例えば、車輪、レール式等を用いたものであってもよい。
【0018】
また、前側フレーム12の左右の屈曲部と、後側フレーム13の左右の屈曲部とには、それぞれ機体前後方向に斜行した左右一対の上部連結フレーム14,14が一体化するように結合固定されている。さらに、これらの上部連結フレーム14,14の対向面間には、走行機体11の軌間伸縮動作に追従することがない横架フレーム(図示せず)が架設されていると共に、この横架フレームと前側フレーム12との間には板状のフロア部材23が張設されている。
【0019】
フロア部材23は、機体右前部に配設されているものであって、その上面には操縦部24が配設されている。この操縦部24に隣接して、機体左前部にエンジン部25、機体中央前部に送風機部26がそれぞれ配設されている。また、これら操縦部24、エンジン部25及び送風機部26の後方の後側フレーム13上部には、パイプ材によって形成された上下2段の荷受部材27,28が、アーム部材29,30を介して各個別に手動で機体後方に張り出すことができるように水平回動可能に取付け支持されている。
【0020】
操縦部24には、図4に示されるように、機体操作及び茶園管理作業(ここでは刈捨て作業)を行うための制御手段としての制御ユニットが組み込まれたタッチパネル式(例えば、入力数値としては刈取高さ、軌間伸縮量等)の入力操作表示部31、イグニションスイッチ32、作業形態に応じて入力操作表示部31の表示高さと実際の刈り取り高さとに誤差を生じさせないための作動切換スイッチ33等の各種スイッチ類等が備えられている。さらに、この操縦部24の制御ユニットは、各種検出手段からの検出値、走行履歴情報や入力情報等に基づいて刈取装置70の各種制御、例えばきめ細かな高さ制御、刈刃駆動制御等を行うように予め設定されていると共に、GPS(Global Positioning System、ナビゲーションシステムのこと)による走行履歴情報、例えば走行距離情報、走行スピード情報等を記憶、表示、且つ通信回線を介して送出可能とする機能が備えられている。
【0021】
なお、GPSの構成に代えて、制御ユニットから送出された走行距離情報、走行スピード情報及び作業内容(例えば、日付・時間・作業時間・天候・作業場所・作業の種類・作業条件等の情報データ)を、茶園管理機10に搭載した図示しない制御機器(例えば、PCL:プログラマブルロジックコントローラ)に自動的に記憶格納するように構成することが可能である。そして、この制御機器とパソコンとを繋ぐことによって、制御機器内部に記憶格納した情報データがパソコンに送出される。これにより、GPSを用いることなく作業の内容を容易に管理することが可能となり、しかも、茶園管理機の価格上昇を抑えることができる。
【0022】
この操縦部24の後方には、オペレータが着座して機体操作及び茶園管理作業を行うための操縦席34、正面視T字状の操作ハンドル35や図示しない各種機体操作レバーが配設されている。操縦席34の足元には、刈刃駆動・走行駆動・昇降駆動・軌間伸縮用の油圧ポンプ36が配置されている(図1に図示)。
【0023】
エンジン部25には、走行機体11の動力源としてのエンジン(図示せず)が通気孔があけられた箱型のエンジンカバー37内に格納配置されていると共に、このエンジンには、各油圧アクチュエータに油圧を供給する油圧ポンプ36がエンジン動力によって駆動されるように一体的に組付けられている。
【0024】
送風機部26には、エンジンによってベルト駆動されるターボファン式の送風機38が、通気孔があけられた防護カバー39と共に配置されている。この送風機38は、操縦部24側に配置された切り替えレバー(図示せず)によってオンオフが切り替え操作されると共に、この送風機38が発生した風(気流)は、機体下方側に延びた伸縮可能な送風ダクト40を介して、刈取装置70の前面側に送られたのち機体後方に向かった複数のノズル41から噴出されて、刈取装置70が茶畝から刈り取った枝葉、幹を機体後方に向けて吹き飛ばすと共に、左右の畝間に枝葉、幹を落とし込んだのち枝葉、幹と分離して大気中に放出される。
【0025】
刈取装置70は、摘採を目的として作られた樹形に合わせて正面視弧状(或いは水平)に形成されているものであって、この刈取装置70の下方側には、茶畝から枝葉、幹を刈り取るための油圧式の刈刃(バリカン刃)71が機体幅方向に往復駆動可能に取り付けられている。さらに、この刈刃71を駆動する油圧モータ(図示せず)と油圧ポンプとを結ぶ油路には、流量優先取出弁としてのプライオリティバルブ(図示せず)が介設されている。このプライオリティバルブは、油圧ポンプが吐出する油圧(ポンプ流量)に関係なく、常に一定の油圧(流量)を優先して取り出すことができるバルブであって、エンジン回転数の増減にかかわらず刈り取り作業に応じた刈刃71の駆動スピードが常に得られる油圧を油圧モータに供給するように構成されている。このため、エンジン回転数を増大すると送風機38が発生する気流は増大するが、刈刃71の駆動スピードが速まるようなことはなく、刈り取り作業に応じた刈刃71の駆動スピードが常に保たれるようになっている。
【0026】
後側フレーム13の左右脚部には、4つの転動体(図示せず)を介して脚部に沿って昇降移動する昇降部材42,42がそれぞれ配設されている。これら昇降部材42,42間には、刈取装置70の中心を走行装置20,20の軌間中心に正確に位置合せを行う図示しない自動中心機構部(本出願人による特願2003−362170号「茶園乗用型作業機」参照)が組付けられている。
さらに、この自動中心機構部には、後側フレーム13上部に取り付けられ、且つ制御ユニットにより駆動制御される図示しない油圧式の巻取装置から同期して繰り出される左右一対のチェーンの下端部がそれぞれ係止されており、チェーンの繰り出し或いは巻取りによって左右の昇降部材42,42を同期して昇降させることが可能とされている。
【0027】
刈取装置70の位置決めは、例えば、チェーンを巻き取るスプロケットの回動角度を検出する検出手段としてのポテンショメータからの検出値に基づいて、制御ユニットが、入力操作表示部31を介して予め設定された刈取高さに刈取装置70が位置するように巻取装置を駆動制御することによって行われる。なお、刈取装置70の高さ位置を検出するのはポテンショメータに限られたものでなく、例えば、他の機械式、光学式の検出手段を用いることが可能である。
【0028】
刈取装置70の刈取高さ位置は、従来はストッパー方式により1つの刈取高さ設定しかできなかったのに対して、この入力操作表示部31及び制御ユニットにあっては、2つ以上の異なった刈取高さ設定が可能とされている。
【0029】
ここで、高・中・低の設定を行う場合について説明する。
高設定は、刈取り面から刈刃71を離す場合に使用する高さであって、一般的には機械最高刈高さとされている。例えば、中設定で作業した後の後退時に用いられる茶畝通過用の高さ設定である。中設定は、1畝に対し、2回或いはそれ以上に分けて刈取り作業を行う2段刈りの1段目の刈取高さである。現実的には、低設定の刈取高さよりも約100mm程度高く設定するのが好ましいがそれに限定されるものではない。低設定は、最終的な仕上げ用、つまり各作業における所望の刈面となる刈取高さである。なお、各設定値は制御ユニットの不揮発メモリに自動的に記憶格納される。
【0030】
次に、刈取高さの設定手順について、図4〜7を用いて説明する。
図4に示されるように、イグニションスイッチ32をONに切り換え、且つ作動切換スイッチ33を摘採側に切り換える。すると、入力操作表示部31は、図5に示されるように、刈取装置70の高さ位置表示及び軌間幅表示画面に切り換わる。この表示画面において刈取高さ表示の数値部分43を押圧すると、図6(a)に示されたように第1の設定画面に変わる。さらに、この図6(a)の画面の右下の表示切り換え部分44を押圧すると、図6(b)のように第2の設定画面に変わる。図6(a)の画面に戻るには、画面の右下の表示切り換え部分45を押圧する。
【0031】
次に、図6(a)或いは(b)の画面から刈取高さを入力する。この場合、高・中・低の変更したい数値の部分、例えば、図6(a)の高の数値部分46を押圧すると、図7に示されるような、数値キー47及びリターンキー48を有する第3の設定画面に切り換わる。この第3の設定画面において、数値キー47により刈取装置70の刈り取り高さ設定値を入力する(例えば、上限930〜下限490の間)。設定値は数値部分49に示されると共に、数値を入力し終わったらリターンキー48を押圧する。この操作を、中・低の設定画面においても繰り返す。但し、中は低よりも30mm、高は中よりも30mm以上高い値に設定するのが望ましい。そして、全ての設定が終了し、図6(a)或いは(b)の画面が表示されたなら、画面右上のESCキー50を押圧して図5の画面に戻る。
【0032】
刈取装置70の高さは、図4に示されるように、高・中・低の位置を示す刈取位置表ランプ51〜53の点滅、点灯で判断されるように予め設定されている。これらのランプ51〜53は、刈取スイッチ54を1回だけ上昇或いは下降側に倒すことによって、何れかのランプが点灯するように設定されている。すなわち、刈取装置70が、高の設定値よりも高い位置にある場合には高のランプ51が点滅し、高の設定位置にある場合には高のランプ50が点灯する。さらに、刈取装置70が、高と中との設定値との間にある場合には高及び中のランプ51,52が点滅し、中の設定位置にある場合には中のランプ52が点灯する。さらにまた、刈取装置70が、中と低の設定値との間にある場合には、中及び低のランプ52,53が点滅し、低の設定値にある場合には低のランプ53が点灯し、低の設定値よりも低い位置にある場合には低のランプ53が点滅するように設定されている。そして、入力操作表示部31には、図5に示されるように、数値部分43に実際の刈取高さが数値表示される。
【0033】
低のランプ53が点灯している場合、刈取スイッチ54を1回上昇側に倒すと刈取装置70が上昇を開始して、中の設定位置に到達すると上昇が停止すると共に中のランプ52が点灯する。さらに、その状態において、刈取スイッチ54を1回上昇側に倒すと刈取装置70が上昇を開始して、高の設定位値に到達すると上昇が停止すると共に高のランプ51が点灯する。なお、刈取装置70が低から中の設定位置に上昇している間は、中及び低のランプ52,53が点滅し、中から高の設定位置に上昇している間は、高及び中のランプ51,52が点滅する。下降時にも同様に操作する(但し、刈取スイッチ54は下降側に倒す)。
【0034】
高の設定値よりも刈取装置70を高く位置させたい場合には、高のランプ51が点灯している状態で刈取スイッチ54を上昇側へ倒す。刈取スイッチ54を倒している時間だけ刈取装置70が上昇するように設定されている。この場合、高のランプ51は点滅する。また、刈取装置70を上昇中、或いは下降中に停止させたい場合には、刈取装置70の移動方向とは異なる方向に刈取スイッチ54を1回だけ倒すと刈取装置70が停止するように設定されている。
【0035】
そして、刈取作業を行う場合、茶畝を跨いだ状態で刈取開始地点から終点に向けては、中設定の刈高さで刈取作業を行う。終点では刈取装置70を高設定の刈高さに変更して刈面と刈刃71とを離した状態にして刈取開始地点に後退する。刈取開始地点では刈取装置70を低設定の刈高さに変更して終点に向けて刈取作業を行う。終点では刈取装置70を中、或いは高設定の刈高さに変更して刈取開始地点に後退する。刈取作業が終了したら隣の茶畝に移って同様の作業を繰り返すようにする。これにより、従来の2段刈りと比較すると、畝間移動の手間及び刈高さ設定の手間を大幅に省くことができ、効率的に刈取作業を行うことができるようになる。
【0036】
なお、入力操作表示部31には、図5に示されるように、軌間幅が数値表示されると共に、軌間幅伸縮スイッチ55を軌間幅を広げる側に倒すと軌間幅が広がり、また狭い側に倒すと軌間幅が狭まるように設定されている。
以上、刈取高さの設定手順について説明した。
【0037】
また、これら昇降部材42,42の下部には、図2に示されるように、刈刃71から機体後方に向かって張り出された荷台56の前部56Aを左右側方から支持すると共に、荷台後部56Bを機体前方側に向かって跳上げ式に回動させるためのフランジ部57,57が取り付けられている。
【0038】
左右のフランジ部57,57と自動中心機構部の固定横架フレームとの間には、左右一対のパイプ部材58,58が、走行機体11に組み付けられる際の他の機体部品との干渉を回避し、且つ刈落とし装置80を装着した際の支持剛性の増強及び後述する伸縮シリンダ59,59を支持する目的で、適宜蛇行した形態で立設されていると共に、これらのパイプ部材58,58の中間部には、それぞれ機体上方に延びた継ぎ手部材60,60の下端部が接合された状態で溶接により強固に結合固定されている。これら継ぎ手部材60,60の上部の茶畝側面(外側面)には、荷台後部56Bを機体前方側に向かって回動させるための油圧式の伸縮シリンダ59,59の上部が、機体前後方向に向かって回動可能に取り付けられている。
【0039】
各伸縮シリンダ59,59の下部とフランジ部57,57との間には、ヒンジ部材61,61が介設されている。ヒンジ部材61は、垂直状の垂直面部61Aと、この垂直面部61Aよりも機体内側に向かって水平状に延設された図示しない張出面部とを備えて構成され、伸縮シリンダ59の二股状とされた下部が、垂直面部61Aの中央部を上方から挟み込んだ状態でノブボルト(図示せず。以下、同様)により機体前後方向に向かって回動可能に取り付けられている。さらに、ヒンジ部材61の垂直面部61Aの前部は、フランジ部57の垂直面部57Aに対して機体側方から接合した状態で機体前後方向に向かって回動可能となるようにノブボルトを介して取り付けられており、荷台後部56Bの回動支点とされている。なお、回動支点は、走行装置20の後端部よりも前側に位置するのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0040】
また、ヒンジ部材61の張出面部は、機体左右方向に延びる機体の一部としての荷台後部56Bの図示しない支持フレームの上面側に接合した状態で結合固定されている。これにより、伸縮シリンダ59,59を短縮動作させると、機体後方に張り出された荷台後部56Bが機体前方側に向かって跳上げ式に回動される。また、伸縮シリンダ59,59を伸張動作させると、機体後部において倒立している荷台後部56Bが機体後方に向かって張り出されるように回動する。
【0041】
刈落とし装置80は、図2、3に示されるように、荷台56に対してノブボルト及び脱着用ピンを用いて容易に着脱可能、且つ調整可能に取り付けられるアタッチメントである。なお、刈落とし装置80は、走行機体11を構成する荷台56の左右両側に等しく設けられるものであるから、以下では、荷台右側に取り付けられる刈落とし装置80を代表として説明する。
【0042】
詳述すると、刈落とし装置80は、例えば、アルミ材等の金属板を用いて形成されたダクト状の搬送案内部材を構成する固定枠としての中継枠81及び可動枠としての刈捨て(刈落とし)ドーム82と、落下案内部材の一部をなすように金属板を用いて形成された上側及び下側案内板83,84と、落下案内部材の他部をなすように合成樹脂材を用いて形成された透明な案内シート86を備えて構成されている。
【0043】
中継枠81の前側開口部は、ノズル41後方に配置されたダクト状の送風枠62(図3に図示)の後部に接合した状態で、中継枠81の左右側面部に形成された図示しない取付部を挿通する2つの脱着用ピンにより荷台前部56Aに脱着可能に結合固定されていると共に、中継枠81の上面部から送風枠62の上面部に挿通して下面側に結合固定された図示しないウェルディングナットに螺合する2つのノブボルトにより送風枠62に脱着可能に結合固定されている。
【0044】
この中継枠81の後側開口部には、刈落としドーム82の前側開口部が臨むように配置されていると共に、中継枠81の後部上面部に設けられたヒンジ部材85に刈落としドーム82の前部上面部が結合固定されている。また、この刈落としドーム82と荷台後部56Bとは互いに結合固定されてはいない。このため、刈落としドーム52を手動で機体前方に向かって跳上げ式に回動することが可能とされている。この場合、刈落としドーム上面部に取っ手87を設けるのが好ましい。また、図8、9に示されるように、伸縮シリンダ59を短縮動作させると、機体前方側に向かって跳上げ式に回動する荷台後部56Bの上面部が刈落としドーム82の下面部に摺動することによって、荷台後部56Bと共に刈落としドーム82を機体前方側に向かって跳上げ式に回動させることも可能である。
なお、刈落としドーム82の下面側に摺動する荷台後部56Bの上面部に、刈落としドーム82を円滑に摺動させるための金属製の板状の摺動部を設けるのが好ましい。また、刈落としドーム82がほぼ直立状態になったことを図示しない検出手段が検出すると、制御ユニットは伸縮シリンダ59の動作を直ちに停止させる。このとき、刈落としドーム82がほぼ直立状態であるのに対し、荷台後部56Bは、後傾した形態となっている。
【0045】
これにより、単独で、或いは荷台後部56Bと共に刈落としドーム82を機体前方側に向けて跳上げ式に回動させると走行機体11の全長が短縮化されるので、旋回性能が向上して狭い枕地でも容易に旋回できるようになる。また、運搬時にトラックの荷台からはみ出すこともなくなり、走行機体11から刈落とし装置80を取り外す手間が省けて、ユーザの使い勝手を大幅に向上させることができる。また、刈落とし装置80内に枝葉、幹が詰まったとしても、刈落としドーム82を容易に跳ね上げることによって、詰まりを簡単に取り除くことができるようになる。さらに、取っ手87を刈落としドーム82に設けることによって、刈落とし装置50の脱着を容易化することができる。
【0046】
この刈落としドーム82の側方開口部には、側方開口部を上下から挟むように、上側案内板83と下側案内板84とがノブボルトにより結合固定されている。これら上側案内板83と下側案内板84とには、機体側方(茶畝方向)に向かって延びた複数の長孔88が穿設されており、この長孔88にノブボルトを挿通させることによって、上側案内板83と下側案内板84とが各個別に張り出し量や向きを調節することができるようになっている。これにより、例えば、圃場の条件(傾斜、品種等)、刈落とし量、天候等を考慮して、効率且つ精度良く作業を行うことが可能とされている。特に、下側案内板84をスライド調整可能に設けたことにより、異なった畝幅であっても、茶樹のすそ部に枝葉、幹が載らないようにすることができる。
【0047】
また、上側案内部83には、刈落としドーム82の側方開口部から排出された枝葉、幹の飛散を防止して畝間に落下させるための下方に向かって延びる案内シート86が取り付けられている。さらに、この案内シート86の下端部には、刈落としドーム82の側方開口部から排出される空気流によって案内シート86が舞い上がらないように姿勢を安定させるためのウェイト89が取り付けられている。
【0048】
このように刈落とし装置80が機体後方に取り付けられた茶園管理機10を用いて2段刈り作業を行う場合について説明する。
なお、2段刈りとは、例えば、摘採作業、刈落とし作業、剪枝作業などにおいて、芽が長く、1度では良好な作業が出来ない場合、或いは、摘採作業において、芽の上側(柔らかい芽)と芽の下側(硬い芽)とを別々に摘採した場合に1畝に対し、2回或いは複数回に分けて刈り取り作業を行うことである。
【0049】
まず、オペレータは、茶畝を跨ぐように走行機体11を操作すると共に、刈刃71の高さが中設定の刈取高さとなるように入力操作表示部31を操作して、刈取装置70及び刈落とし装置80を昇降移動させる。それらの昇降移動が終了したならば、刈刃71及び送風機38を駆動させる。その状態で茶畝を跨いで走行しながら刈り取り作業を開始する。刈刃71によって刈り取られた枝葉、幹は、ノズル41から吹き出される風によって機体後方に吹き飛ばされたのち、刈落とし装置80によって左右の畝間方向に振り分けられたのち、飛散防止用の案内シート86によって畝間の下方側に送り込まれる。やがて、茶畝端部まで到達して一段目の刈り取り作業が終了すると、オペレータは送風機38及び刈取装置70を停止させると共に、刈刃71の高さが高設定の刈取高さとなるように入力操作表示部31を操作して刈取装置70を上昇させる。刈刃71の位置が高設定位置となったら、元の位置にバックで戻る。元の位置、つまり刈取開始位置に戻ったならば、刈刃71の高さを低設定の刈取高さとなるように入力走行表示部31を操作する。送風機38及び刈取装置70が下降して刈刃71の高さが低設定位置となったら、刈刃71及び送風機38を駆動させる。その状態で茶畝を跨いで走行しながら2段目の刈り取り作業を開始する。そして、2段目の刈り取り作業が終了すると、刈刃71の高さが、中設定或いは高設定の刈取高さとなるように入力操作表示部31を操作して刈取装置70を上昇させる。刈刃71の位置が高設定位置となったら、元の位置にバックで戻る。元の位置に戻ったならば、オペレータは刈取装置70及び送風機38を停止させてから、次の茶畝に移動するために枕地において方向変換を行う。この場合、従来とは異なり、伸縮シリンダ59,59を短縮動作させることによって、荷台後部56Bと共に刈落とし装置80を、図10に示されたように、機体前方側に向かって跳上げ式に回動させて倒立させる。これにより、機体後方への張出量が低減して機体全長が短くなるので、オペレータは、狭い枕地であっても刈落とし装置80を茶畝に干渉させることなく、しかも非常に安定して走行機体11を旋回させることができる。
【0050】
そして、走行機体11を旋回し終えたオペレータは、伸縮シリンダ59,59を伸張動作させて荷台後部56Bと共に刈落とし装置80を機体後方に張り出した後、上述した手順と同様にして、隣の茶畝の1段目の刈り取り作業を開始する。また、この刈落とし装置80を機体後方に張り出させる際、荷台後部56Bの回動角度を入力操作表示部31を介して所望角度(約3度前後)を入力設定すると、その入力設定値に応じて伸縮シリンダ59,59が適宜伸張動作し、前回とは異なった刈捨てドーム82の角度が得られ、例えば、圃場の傾斜、品種、刈落とし量、天候等の刈り取り条件に応じて最適な排出角度の調整を行うことが可能となる。
【0051】
なお、刈捨てドーム82の回動は、オペレータによって行われるように構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、刈取装置70の刈刃71の負荷が無くなった状態、つまり刈り取り作業が終了したことを油圧式、機械式或いは光学式を用いた検出手段が検出すると刈捨てドーム82を機体前方側に向かって自動的に回動させたり、或いは、入力操作表示部31に入力した茶畝の長さ距離を走行機体11が走行し終えたら、刈捨てドーム82を機体前方側に向かって自動的に回動させることが可能である。また、旋回し終えたら刈捨てドーム82を自動的に機体後方に向かって張り出させることも可能である。
【0052】
また、刈捨てドーム82を機体前方側に向かって跳上げ式に回動させることによって機体全長を短縮化する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、刈捨てドーム82を機体前方側に向かって短縮移動させることによって機体全長を短縮化するように構成することも可能である。
【0053】
以上述べたように本発明によれば、刈捨てドーム82を機体前方側に向けて回動させると走行機体11の全長が短縮化される。これにより、金属板を用いた搬送案内部材であっても旋回性能が向上して狭い枕地でも容易に旋回できるようになる。また、運搬時にトラックの荷台からはみ出すこともなくなり、走行機体11から刈落とし装置80を取り外す手間が省けるようになり、ユーザの利便性を大幅に向上させることができる。また、刈落とし装置80内に枝葉、幹が詰まったとしても、刈捨てドーム82を跳ね上げることによって、詰まりを簡単に取り除くことができる。
【0054】
また、本発明によれば、機体前方側に向かって回動可能に設けられた走行機体11の一部が回動すると、その走行機体11の一部が刈捨てドーム52に摺動することによって、刈捨てドーム52が機体前方側に向かって回動する。これにより、刈捨てドーム52を機体前方側に向かって回動させるのが容易となり、茶園管理作業の能率を向上させることができる。
【0055】
さらにまた、本発明によれば、機体の一部としての荷台後部56Bが機体前方側に向かって回動するのに伴って刈捨てドーム82が機体前方側に向かって回動する。これにより、刈捨てドーム82を回動させるための駆動用のアクチュエータを新たに備える必要はなく、低コストに構成することができる。また、荷台が機体前方側に向かって回動する構造を備えた既存の茶園管理機にも、その機体構造を大幅に変更することなく容易に取り付けることが可能となる。
【0056】
なお、本発明は、茶園管理機にのみ適用されるのではなく、例えば、乗用型摘採機、乗用型中刈機や農業作業機等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明が適用された茶園管理機の正面図である。
【図2】同例における茶園管理機の右側面図である。
【図3】同例における刈落とし装置の斜視図である。
【図4】同例における操縦部に設けられた制御盤の正面図である。
【図5】同例における入力操作表示部の表示画面である。
【図6】(a)は、第1の設定画面、(b)は、第2の設定画面である。
【図7】第3の設定画面である。
【図8】同例における刈落とし装置が回動した状態を示した斜視図である。
【図9】図8の側面図である。
【図10】同例における刈落とし装置を機体前方側に向かって回動させた状態の茶園管理機の側面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 茶園管理機
11 走行機体
56 荷台
56A 荷台前部
56B 荷台後部
70 刈取装置
71 刈刃
80 刈落とし装置
81 中継枠(搬送案内部材)
82 刈捨てドーム(搬送案内部材)
85 ヒンジ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置が茶畝から刈り取った枝葉、幹を気流によって機体後方に搬送したのち畝間に向かって落下させる搬送案内部材を備えた茶園管理機の刈落とし装置において、
前記搬送案内部材は、機体に着脱可能に取り付け固定される固定枠と、前記固定枠に連なり、且つ前記固定枠に機体前方側に向かって回動可能に支持された可動枠とを備えて構成されていることを特徴とする茶園管理機の刈落とし装置。
【請求項2】
前記可動枠は、機体前方側に向かって回動可能とされた機体の一部が回動する際に、前記機体の一部が前記可動枠に摺動することによって、機体前方側に向かって回動することを特徴とする請求項1に記載の茶園管理機の刈落とし装置。
【請求項3】
前記機体の一部は、荷台であることを特徴とする請求項2に記載の茶園管理機の刈落とし装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−44003(P2007−44003A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234043(P2005−234043)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000250270)落合刃物工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】