説明

草刈作業機の非常停止装置

【課題】非常停止時の停止距離の延長を防止できる草刈作業機の非常停止装置を提供すること。
【解決手段】共にエンジンを駆動源として駆動されるカッタおよび走行装置を備えた草刈作業機の非常停止装置は、エンジンを停止させるための非常停止スイッチ83と、非常停止スイッチ83の開閉状態に応じて、エンジンを停止させるエンジン停止手段74,75と、走行装置の制動の有無を切り換えるブレーキスイッチ77の開閉状態に応じて、走行装置を制動させる制動装置と、ブレーキスイッチ77の開閉状態に関わらず、非常停止スイッチ83と連動して走行装置を強制的に制動させる強制制動手段76とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈作業機の非常停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンマーナイフ等の草刈用のカッタと走行装置とを備えた草刈作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の草刈作業機では、カッタおよび走行装置は、共にエンジンを駆動源として駆動される。オペレータは、車両本体に設けられた操縦台に搭乗して走行レバーを操作することにより、カッタおよび走行装置を作動させ、草刈作業を行う。
【0003】
一般的に、草刈作業機には、エンジンを非常停止させるための非常停止スイッチが設けられており、オペレータは、非常停止スイッチに取り付けられた紐を身体に繋いだ状態で草刈作業を行う。この状態で、例えば、オペレータが転倒した場合は、紐が引っ張られて非常停止スイッチが作動し、エンジンへの燃料供給を遮断する。これによりエンジンが停止し、草刈作業機の走行が停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−035840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非常停止機能が作用してから草刈作業機が走行停止するまでの停止距離は、できるだけ短くすることが望ましい。しかしながら、作業機のカッタは、慣性モーメントが大きいため、非常停止機能によりエンジンへの燃料供給が遮断されても、しばらくの間は惰性で回転し続ける。この場合、カッタの回転エネルギーによりエンジンが駆動されるため、走行装置が作動してしまい、草刈作業機の停止距離がのびてしまうおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、非常停止時の停止距離の延長を防止できる草刈作業機の非常停止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の草刈作業機の非常停止装置は、共にエンジンを駆動源として駆動されるカッタおよび走行装置を備えた草刈作業機の非常停止装置であって、前記エンジンを停止させるための非常停止スイッチと、前記非常停止スイッチの開閉状態に応じて、前記エンジンを停止させるエンジン停止手段と、前記走行装置の制動の有無を切り換えるブレーキスイッチの開閉状態に応じて、前記走行装置を制動させる制動装置と、前記ブレーキスイッチの開閉状態に関わらず、前記非常停止スイッチと連動して前記走行装置を強制的に制動させる強制制動手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記制動装置は、パーキングブレーキと、前記パーキングブレーキのシリンダ室への圧油供給の有無を切り換える電磁式のブレーキバルブとを備え、前記強制制動手段は、コイル部および前記コイル部に駆動されるスイッチ部を有するブレーキリレーであり、前記コイル部は前記非常停止スイッチに直接的または間接的に接続され、前記スイッチ部は前記ブレーキバルブのソレノイドに接続されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
以上において、本発明によれば、非常停止装置は、前記非常停止スイッチの開閉状態に応じて、前記エンジンを停止させるエンジン停止手段を備えているため、非常停止スイッチによる非常停止要求時に、エンジンを停止させることができる。また、前記ブレーキスイッチの開閉状態に関わらず、前記非常停止スイッチと連動して前記走行装置を強制的に制動させる強制制動手段とを備えているため、カッタの惰性回転によりエンジンが駆動されて走行装置が作動しようとしても、走行装置を強制的に制動させることができる。従って、エンジンを停止させるとともに、走行装置の動作を確実に停止させるので、非常停止時に草刈作業機の停止距離がのびるのを防止することができる。
【0010】
本発明において、前記制動装置は、パーキングブレーキと、前記パーキングブレーキのシリンダ室への圧油供給の有無を切り換える電磁式のブレーキバルブとを備え、前記強制制動手段は、コイル部と前記コイル部に駆動されるスイッチ部とを有するブレーキリレーであり、前記コイル部は前記非常停止スイッチに直接的または間接的に接続され、前記スイッチ部は前記ブレーキバルブのソレノイドに接続されている場合、一般的に草刈作業機で用いられているタイプのパーキングブレーキと、信頼性が高く廉価なリレーとを用いて、非常停止装置を製造することができる。従って、非常停止装置の信頼性を高めることがでるので、非常停止時に停止距離のびるのを確実に防止することができる。また、このような非常停止装置を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る草刈作業機の全体を示す側面図。
【図2】草刈作業機の操縦装置の斜視図。
【図3】草刈作業機に搭載された油圧駆動装置の油圧回路図。
【図4】非常停止装置の電気回路を模式的に示す図。
【図5】非常停止装置の使用状態を示す図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る非常停止装置の電気回路を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態を、図面に基づいて説明する。
なお、後述する第2実施形態において、次説する第1実施形態と同一の構成部分には、第1実施形態の構成部分と同じ符合を付すとともに、それらの説明を省略または簡略化する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態に係る草刈作業機1の全体を示す側面図である。図1において、草刈作業機1は、走行装置2が設けられた車両本体3と、車両本体3の前方側に設けられた草刈機4とを備え、他のアタッチメントと交換可能に草刈機4が車両本体3に着脱自在とされた構成である。
【0014】
走行装置2は、クローラ式であり、車両本体3内に搭載されたエンジン5および油圧駆動装置6(図3参照)等によって駆動される。油圧駆動装置6には、パーキングブレーキ651,661(図3参照)が設けられ、エンジン5およびパーキングブレーキ651,661の作動状態は、車両本体3内に設けられた電気回路7(図4参照)により切り換えられる。また、車両本体3の後方側には、草刈作業機1を操縦するための操縦装置8や、オペレータが起立する操縦台9が設けられている。
【0015】
これらのうち、草刈機4はハンマーナイフ式であるとともに、車両本体3に取り付けられるリフトシリンダ69(図3参照)によって上下にリフト可能に構成されている。この草刈機4は、左右に一対のソリ41が設けられた無底箱状のカッタケース42を備え、カッタケース42の内部には、両側の側面板43に回転自在に支持されたカッタ44が収容されている。カッタケース42には、カッタ44を駆動するためのプーリ等で構成された図示しない動力伝達装置が設けられており、エンジン5の出力がこの動力伝達装置を介してカッタ44に伝達される。また、カッタケース42の前方側には、小石の飛散を防止するための飛散防止手段45が取り付けられている。
【0016】
カッタ44は、回転自在なシャフト441の外周から複数のハンマーナイフ442が径方向の外側に突設された構成である。本実施形態では、図1に矢印Aで示すように、カッタ44は前方への進行に対してアップカットとなるように回転する。ここで、アップカットとは、刈ろうとする草の取り込み側で、カッタ44が下方から上方に向けて回転する方向をいう。
【0017】
飛散防止手段45は、各側面板43に回動自在に設けられた回動アーム451と、回動アーム451間に設けられたフロントカバー452とを備え、フロントカバー452の前縁には、簾状に形成されたチェーン453が垂設されている。また、フロントカバー452の上端には、コイルばね454の一端が係止され、このコイルばね454の他端が側面板43の所定位置に係止されている。このようなコイルばね454は、飛散防止手段45の上方への回動をアシストする。
【0018】
草刈作業機1の単なる走行時には、飛散防止手段45が最も低い状態に位置しており、カッタ44により弾き飛ばされた小石は、フロントカバー452またはチェーン453に当たり、外部へ飛散するのを防止できる。また、草刈作業時において、フロントカバー452およびチェーン453は、カッタケース42内へ取り込まれる草により上方に持ち上げられ、飛散防止の役目を果たさなくなるが、取り込まれる草によって小石もまた、外部への飛散が防止される。
【0019】
図2に示すように、操縦装置8には、キースイッチ81、ブレーキレバー82、および非常停止スイッチ83が設けられている。草刈作業を行う時には、キースイッチ81をオンしてエンジン5を始動させ、図示しない走行レバーで草刈作業機1の走行速度や進行方向を調整しながら草を刈っていく。ブレーキレバー82を操作すると、後述するパーキングブレーキ651,661(図3参照)が作動し、草刈作業機1の走行動作を停止させる。
【0020】
非常停止スイッチ83は、エンジン5を含む草刈作業機1の動作を停止させるための非常用スイッチである。この非常停止スイッチ83は、車両本体3側に固定された図示しないスイッチ本体と、スイッチ本体に対して係脱自在に設けられたキャップ831とを備えており、キャップ831には、紐84が取り付けられている。本実施形態の非常停止スイッチ83は、いわゆるノーマルクローズ型であり、キャップ831がスイッチ本体に係止されている場合に閉状態となっている。
【0021】
次に、図3を参照して、油圧駆動装置6について説明する。なお、油圧駆動装置6は、次説するように制動装置としても機能し、草刈作業機1の非常停止装置は、この油圧駆動装置6と、非常停止スイッチ83を含む電気回路7とを備えて構成される。
【0022】
図3に示すように、油圧駆動装置6は、左走行用油圧ポンプ61、右走行用油圧ポンプ62、制動用油圧ポンプ63、草刈機用油圧ポンプ64、左走行用油圧モータ65、右走行用油圧モータ66、ブレーキバルブ67、方向切換弁68、およびリフトシリンダ69を備えている。
【0023】
図3において、エンジン5は、各油圧ポンプ61,62,63,64を駆動する。左走行用油圧ポンプ61は左走行用油圧モータ65と、右走行用油圧ポンプ62は右走行用油圧モータ66と、それぞれ閉回路を構成しており、走行用油圧ポンプ61,62から供給される圧油により、走行用油圧モータ65,66が駆動される。走行用油圧モータ65,66は、走行装置2を駆動して、草刈作業機1を走行させる。
【0024】
各走行用油圧モータ65,66には、パーキングブレーキ651,661が設けられている。各パーキングブレーキ651,661は、シリンダ室652,662およびばね653,663を備えており、シリンダ室652,662内に圧油が供給されない場合にばね653,663のばね力で制動力を作用させる。
【0025】
パーキングブレーキ651,661および制動用油圧ポンプ63間の油路L1上には、電磁式のブレーキバルブ67が設けられている。ブレーキバルブ67は、ソレノイド671およびばね672を備え、ソレノイド671の通電状態に応じて、ブレーキバルブ67の弁位置が切り換わる。
【0026】
草刈機用油圧ポンプ64およびリフトシリンダ69間の油路L2上には、電磁式の方向切換弁68が設けられている。草刈機用油圧ポンプ64からの圧油は、この方向切換弁68の弁位置に応じて、リフトシリンダ69のトップ側またはボトム側に流れ込んでリフトシリンダ69を伸縮させ、草刈機4を上下にリフト駆動させる。
【0027】
次に、図4を参照して、電気回路7について説明する。
図4に示すように、電気回路7は、キースイッチ81、非常停止スイッチ83、ヒュージブルリンク71、バッテリ72、ヒューズ73、燃料ポンプ(エンジン停止手段)74、エンジンストップソレノイド(エンジン停止手段)75、ブレーキリレー(強制制動手段)76、ブレーキスイッチ77、およびブレーキバルブ67のソレノイド671を備えている。
【0028】
電気回路7において、キースイッチ81は、一方の接点Bがヒュージブルリンク71を介してバッテリ72と接続され、他方の接点BRがヒューズ73を介して非常停止スイッチ83と接続されている。また、非常停止スイッチ83におけるバッテリ72接続側と反対側の接点は、燃料ポンプ74、エンジンストップソレノイド75、およびブレーキリレー76のコイル部761と接続されている。
【0029】
燃料ポンプ74は、エンジン5に燃料を供給するための電磁ポンプであり、燃料ポンプ74からエンジン5への燃料供給の有無は、燃料ポンプ74およびエンジン5間に設けられた図示しない燃料供給バルブにより切り換えられる。この燃料供給バルブは、エンジンストップソレノイド75によって駆動される。
【0030】
ブレーキリレー76は、コイル部761に電圧が印加されていない状態でスイッチ部762が解放された、いわゆるノーマルオープンタイプのものである。スイッチ部762の一方の接点は、ブレーキスイッチ77を介してバッテリ72と接続され、スイッチ部762の他方の端子は、ブレーキバルブ67のソレノイド671と接続されている。従って、コイル部761の通電によりスイッチ部762が閉状態になると、バッテリ72とブレーキバルブ67のソレノイド671とが電気的に接続され、ソレノイド671の電磁力がばね672のバネ力に打ち勝って、ブレーキバルブ67が駆動される。
【0031】
以上のような構成の草刈作業機1において、オペレータは、図5に示すように、紐84を身体に繋いだ状態で草刈作業を行う。この際、キャップ831は、非常停止スイッチ83のスイッチ本体に係止されており、非常停止スイッチ83は閉状態となっている。
図3および図4において、草刈作業の開始にあたり、キースイッチ81をオンして閉状態にすると、燃料ポンプ74およびエンジンストップソレノイド75は、共に通電して駆動される。これにより、燃料ポンプ74からエンジン5に燃料が供給され、エンジン5が始動する。また、ブレーキリレー76では、コイル部761が通電してスイッチ部762が閉状態となり、ブレーキバルブ67のソレノイド671とブレーキスイッチ77のフリー側の接点Fとが接続される。
【0032】
この状態において、ブレーキレバー82(図5参照)が制動位置にあり、ブレーキスイッチ77がロック側の接点Lと接続している場合、ブレーキスイッチ77のフリー側の接点Fは解放されてバッテリ72とは接続していないため、ブレーキバルブ67のソレノイド671が通電しない。このため、ブレーキバルブ67は駆動されず、パーキングポジションに留まっている。従って、パーキングブレーキ651,661のシリンダ室652,662の圧油が作動油タンク10に戻されて制動解除圧がゼロとなっており、ばね653,663のばね力によって制動状態が保持されている。
【0033】
草刈作業機1の走行に際して、ブレーキレバー82を操作して制動解除位置にすると、ブレーキスイッチ77が接点F側に切り換わることで、バッテリ72とブレーキバルブ67のソレノイド671とが電気的に接続される。これにより、ブレーキバルブ67のソレノイド671が通電して、ブレーキバルブ67がパーキング解除ポジションに切り換えられる。これに伴い、制動用油圧ポンプ63からの圧油がパーキングブレーキ651,661のシリンダ室652,662に供給されて、制動解除圧を高くする。従って、パーキングブレーキ651,661によるブレーキが解放され、草刈作業機1は走行可能な状態となる。
【0034】
ここで、作業中に何らかの理由で、草刈作業機1がオペレータから離れたり、オペレータが転倒したりした場合は、オペレータに繋がれた紐84(図5参照)を介してキャップ831が引っ張られて、非常停止スイッチ83が開状態となる。すると、エンジンストップソレノイド75の通電状態が解除されて、燃料供給バルブが燃料供給遮断ポジションに切り換わる。また、燃料ポンプ74への電力供給が絶たれることで、燃料ポンプ74が停止する。これにより、エンジン5への燃料供給が遮断される。
【0035】
さらに、ブレーキリレー76のコイル部761への通電も解除されるため、スイッチ部762が開状態となる。これにより、ブレーキバルブ67のソレノイド671の通電が解除され、ブレーキバルブ67の弁位置はパーキングポジションに戻る。つまり、パーキングブレーキ651,661のシリンダ室652,662の圧油が作動油タンク10に戻され、パーキングブレーキ651,661が、ばね653,663のばね力によって制動力を発生させる。これにより、走行用油圧モータ65,66の回転が規制され、走行装置2による走行動作が停止される。
【0036】
このように、本実施形態に係る草刈作業機1の非常停止装置は、エンジン5への燃料供給を遮断してエンジン5を停止させることに加えて、パーキングブレーキ651,661を作動させて走行装置2を強制的に制動させる。従って、草刈作業機1の走行動作が速やかに停止されるので、草刈作業機1の停止距離がのびるのを防止できる。
【0037】
〔第2実施形態〕
次に、図6に基づき、本発明の第2実施形態について説明する。
前述した第1実施形態では、非常停止スイッチ83は、キャップ831がスイッチ本体に係止されている場合に閉状態となるノーマルクローズ型のものが用いられていた。
【0038】
これに対し、第2実施形態では、図6に示すように、非常停止スイッチ83Aは、キャップ831(図2参照)がスイッチ本体に係止されている場合に開状態となるノーマルオープン型のものが用いられる点が相違する。また、これに伴い、エンジンストップリレー78およびエマージェンシーリレー79が電気回路7に設けられている点も相違する。
【0039】
図6に示すように、本実施形態の電気回路7は、キースイッチ81、非常停止スイッチ83A、ヒュージブルリンク71、バッテリ72、ヒューズ73、燃料ポンプ74、エンジンストップソレノイド75、ブレーキリレー76A、ブレーキスイッチ77、エンジンストップリレー78、エマージェンシーリレー79、およびブレーキバルブ67のソレノイド671を備えている。
【0040】
なお、本実施形態のブレーキリレー76Aは、コイル部761Aに電圧が印加されていない状態でスイッチ部762Aが閉状態とされた、いわゆるノーマルクローズタイプのものが用いられている。
【0041】
キースイッチ81は、共に連動する2つのスイッチ811,812を備え、各スイッチ811,812は、バッテリ72接続側の接点B1,B2と、バッテリ72接続側と反対側の接点BR1,BR2とを有している。スイッチ811において、接点B1は、ヒュージブルリンク71を介してバッテリ72と接続され、接点BR1は、ヒューズ73を介して非常停止スイッチ83Aおよびエンジンストップリレー78と接続されている。
【0042】
非常停止スイッチ83Aは、キャップ831がスイッチ本体に係止されている場合に開状態となるノーマルオープンタイプであり、一方の接点がエンジンストップリレー78のコイル部781に、他方の接点がエンジンストップリレー78のスイッチ部782に、それぞれ接続されている。また、スイッチ部782における非常停止スイッチ83A接続側と反対側の接点は、エマージェンシーリレー79のコイル部791と接続されている。
【0043】
一方、キースイッチ81のスイッチ812における接点BR2は、エマージェンシーリレー79のスイッチ部792を介して、燃料ポンプ74、エンジンストップソレノイド75、およびブレーキリレー76Aのスイッチ部762Aと接続され、スイッチ部762Aは、さらにブレーキバルブ67のソレノイド671と接続されている。また、ブレーキリレー76Aのコイル部761Aは、ブレーキスイッチ77とキースイッチ81の接点BR1との間に設けられている。
【0044】
以上のような電気回路7を備えた草刈作業機1の非常停止装置でも、前述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
すなわち、キースイッチ81がオンの状態において、ブレーキレバー82が制動位置にあれば、パーキングブレーキ651,661が作動して制動状態が保持される。また、ブレーキレバー82が制動解除位置にあれば、パーキングブレーキ651,661が解除されて、草刈作業機1は走行可能な状態となる。
【0045】
ここで、オペレータに繋がれた紐84を介してキャップ831が引っ張られた場合は、非常停止スイッチ83が開状態となることで、エンジンストップリレー78のコイル部781が通電して、スイッチ部782が開状態となる。これに伴い、エマージェンシーリレー79のコイル部791の通電が解除されてスイッチ部792が開状態となり、エンジンストップソレノイド75および燃料ポンプ74への電力供給が遮断される。従って、燃料供給バルブが燃料供給遮断ポジションに切り換わるとともに、燃料ポンプ74が停止することで、エンジン5への燃料供給が遮断され、エンジン5が停止される。
【0046】
また、エマージェンシーリレー79のコイル部791の通電が解除されてスイッチ部792が開状態となることで、ブレーキレバー82の位置に関わらず、ブレーキバルブ67のソレノイド671に電力が供給されなくなる。このため、パーキングブレーキ651,661が作動して制動状態となる。従って、パーキングブレーキ651,661を作動させて走行装置2を強制的に制動させるので、草刈作業機1の走行動作を速やかに停止させることができる。
【0047】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態において、エンジン停止手段として、燃料ポンプ74やエンジンストップソレノイド75が用いられていたがこれに限られない。要するに、エンジン5を停止できるものであればよく、例えば、エンジン5におけるイグニッションソレノイドの通電状態を切り換えるリレーをエンジン停止手段として電気回路7に設け、エンジン5内の混合気を点火させないようにして、エンジン5を停止させてもよい。また、エンジン停止手段として、燃料ポンプ74およびエンジンストップソレノイド75のうちの何れか一方のみを用いてもよい。
【0048】
前記各実施形態では、制動装置における制動機構として、各走行用油圧モータ65,66に設けられたパーキングブレーキ651,661が、走行用油圧モータ65,66の回転を規制することで走行装置2を制動させていたがこれに限られない。要は、走行装置2を制動させることができるものであればよく、例えば、走行装置2のクローラを駆動するスプロケットの回転を規制して、走行装置2を制動させてもよい。
【0049】
前記各実施形態では、パーキングブレーキ651,661として、シリンダ室652,662内に圧油が供給されない場合に、ばね653,663のばね力で制動力を作用させるタイプのものを用いたがこれに限られず、これとは反対に、シリンダ室652,662内に圧油が供給された場合に、油圧で制動力を作用させるタイプのものを用いてもよい。
【0050】
前記各実施形態では、草刈作業機1の走行装置2はクローラ式であったがこれに限られず、車輪を駆動して走行する車輪駆動式の走行装置を用いてもよい。
前記各実施形態では、カッタ44にはハンマーナイフ442が取り付けられていたが、本発明の草刈作業機1では、カッタ刃の種類に関わらず、エンジン5を駆動源として駆動されるカッタが設けられていればよい。すなわち、カッタには、エンジン5を駆動源とする往復動式のものを用いてもよい。また、カッタの駆動により草を刈ることが可能であれば、カッタにハンマーナイフを用いるかどうかは任意である。
【0051】
前記各実施形態の草刈作業機1には、オペレータが起立姿勢で乗り込む操縦台9が設けられていたが、本発明の草刈作業機1は、オペレータが歩きながら操縦する構成であってもよく、また、操縦台9上に着座シートが設けられた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、共にエンジンを駆動源として駆動されるカッタおよび走行装置を備えた草刈作業機の非常停止装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…草刈作業機、2…走行装置、5…エンジン、6…油圧駆動装置(制動装置)、7…電気回路、44…カッタ、67…ブレーキバルブ、74…燃料ポンプ(エンジン停止手段)、75…エンジンストップソレノイド(エンジン停止手段)、76,76A…ブレーキリレー(強制制動手段)、77…ブレーキスイッチ、83,83A…非常停止スイッチ、651,661…パーキングブレーキ、652,662…シリンダ室、671…ソレノイド、761,761A…コイル部、762,762A…スイッチ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共にエンジンを駆動源として駆動されるカッタおよび走行装置を備えた草刈作業機の非常停止装置であって、
前記エンジンを停止させるための非常停止スイッチと、
前記非常停止スイッチの開閉状態に応じて、前記エンジンを停止させるエンジン停止手段と、
前記走行装置の制動の有無を切り換えるブレーキスイッチの開閉状態に応じて、前記走行装置を制動させる制動装置と、
前記ブレーキスイッチの開閉状態に関わらず、前記非常停止スイッチと連動して前記走行装置を強制的に制動させる強制制動手段とを備えた
ことを特徴とする草刈作業機の非常停止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の草刈作業機の非常停止装置において、
前記制動装置は、パーキングブレーキと、前記パーキングブレーキのシリンダ室への圧油供給の有無を切り換える電磁式のブレーキバルブとを備え、
前記強制制動手段は、コイル部および前記コイル部に駆動されるスイッチ部を有するブレーキリレーであり、前記コイル部は前記非常停止スイッチに直接的または間接的に接続され、前記スイッチ部は前記ブレーキバルブのソレノイドに接続されている
ことを特徴とする草刈作業機の非常停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−115079(P2011−115079A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274200(P2009−274200)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(307009883)ハスクバーナ・ゼノア株式会社 (66)
【Fターム(参考)】