説明

荷物保持用アタッチメント

【課題】多数の長尺荷物が並置されている場合であっても、少ない個数の長尺荷物を、容易に保持し得るとともに確実に運搬し得る荷物保持用アタッチメントを提供する。
【解決手段】リーチスタッカに搭載されたクレーン装置のワイヤ14に連結された吊持体21に着脱自在に設けられて管状材、棒状材などの長尺荷物6を保持するための荷物保持用アタッチメント31であって、吊持体21に着脱自在にされた連結体34と、この連結体34の左右位置でそれぞれ下方に垂設された所定幅の一対の保持枠部材35と、これら各保持枠部材35に鉛直軸心回りで回転自在に設けられた上下方向の回転軸体32と、この回転軸体32の下部に水平方向で突設された長尺荷物6の支持片33と、各回転軸体32を回転させて支持片33を保持枠部材35内の退避位置58と保持枠部材35外の荷物支持位置59との間で出退させる回転装置36とから構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレッダ装置などに取り付けられて用いられる荷物保持用アタッチメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被運搬物を保管場所などから運搬するには、被運搬物に玉掛けがなされ、移動式のクレーンへの掛け外しにより行われていた。しかし、クレーンでの運搬では、ワイヤーロープでの吊り姿勢が不安定である上に、被運搬物のワイヤーロープへの掛け外しに作業時間を要するため、様々な荷役装置が開発されている。例えば、フレームと、フレームから下方に垂設されて前後動が自在な前後一対のクランプ腕と、このクランプ腕の下端で且つ他方のクランプ腕に向けて水平に取り付けられた係合部材とを具備するとともに、当該前後一対のクランプ腕で被運搬物が係合部材上に載置するように掴み持つクランプ装置を有するリーチスタッカが開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−14193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の構成によると、クランプ腕を前後から互いに近づけて被運搬物を掴むものであるから、両係合部材の合計長さよりも被運搬物の幅が短い場合、例えば被運搬物が管状材、棒状材などの幅が狭い長尺荷物である場合には、両クランプ腕を接近させて両係合部材上に長尺荷物を載せて保持したとしても、長尺荷物とクランプ腕との間に隙間が生じるため、被運搬物を確実に保持することができず、また多数の長尺荷物、すなわち多数の管状材などが接近して並置されている場合に、少ない本数、例えば1本の管状材だけを保持することが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、多数の長尺荷物が並置されている場合であっても、少ない個数の長尺荷物を、容易に保持し得るとともに確実に運搬し得る荷物保持用アタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る荷物保持用アタッチメントは、荷役車両に搭載されたクレーン装置のワイヤに連結された吊持体に着脱自在に設けられて管状材、棒状材などの長尺荷物を保持するためのアタッチメントであって、
上記吊持体に着脱自在にされた連結体と、この連結体の左右位置でそれぞれ下方に垂設された所定幅の一対の保持枠部材と、これら各保持枠部材に鉛直軸心回りで回転自在に設けられた上下方向の回転軸体と、この回転軸体の下部に水平方向で突設された長尺荷物の支持片と、上記各回転軸体を回転させて支持片を保持枠部材内の退避位置と保持枠部材外の荷物支持位置との間で出退させる回転装置とから構成したものである。
【0007】
また、請求項2に係る荷物保持用アタッチメントは、請求項1に記載の荷物保持用アタッチメントにおいて、支持片に支持された荷物が落下するのを防止する棒状の落下防止部材を回転軸体に対応する位置で保持枠部材に鉛直面内で揺動自在に吊持するとともに、この落下防止部材を支持片に対応する落下防止姿勢と支持片から離れた開放姿勢との間で揺動させる揺動装置を具備したものである。
【0008】
さらに、請求項3に係る荷物保持用アタッチメントは、請求項1または請求項2に記載の荷物保持用アタッチメントにおいて、支持片の上面に、長尺荷物を案内して移動を規制し得る凹状部を形成したものである。
【発明の効果】
【0009】
上記荷物保持用アタッチメントの構成によると、多数の長尺荷物が並置されている場合であっても、少ない個数の長尺荷物を、容易に保持し得るとともに確実に運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る荷物保持用アタッチメントにより荷役を行うリーチスタッカの側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明に係る荷物保持用アタッチメントが着脱される吊持体の斜視図である。
【図4】同荷物保持用アタッチメントの斜視図である。
【図5】同荷物保持用アタッチメントの保持枠部材(右側)における正面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下に、本発明に係る荷物保持用アタッチメントを図1〜図6に基づき説明する。
まず、当該荷物保持用アタッチメントが着脱自在に設けられる吊持体を吊持する荷役車両の構成を簡単に説明する。なお、本実施例においては、荷役車両はリーチスタッカであり、保持する荷物は管状材、棒状材などの長尺荷物である場合について説明する。
【0012】
図1および図2に示すように、リーチスタッカ1は、概略的には、下部に前車輪3および後車輪4が設けられるとともに上部に運転席5が設けられた車両本体2と、この車両本体2の上方に配置されて荷役を行うクレーン装置11とを有する。また、当該クレーン装置11は、車両本体2の後部上端に車幅方向(以下、左右方向という)のピン12を介して一端部が取り付けられることにより上下方向へ揺動自在なブーム体13と、このブーム体13の他端部に設けられて吊持体21を連結するワイヤ14と、当該車両本体2の前部に一端部が取り付けられるとともに他端部がブーム体13の左右側面に取り付けられて当該ブーム体13を上下方向へ揺動させ得る左右一対のリフト用シリンダ15と、ブーム体13の内部に設けられ当該ブーム体13を伸縮させ得る伸縮用シリンダ(図示せず)とを具備する。
【0013】
次に、本発明の実施例1に係る荷物保持用アタッチメントが着脱自在に設けられる吊持体21について説明する。
図3に示すように、吊持体21は、それぞれ左右方向へ出退自在に設けられた2基の伸縮ビーム25を案内するとともに当該伸縮ビーム25を油圧シリンダ(図示せず)により出退させ得る固定ビーム24と、上記クレーン装置11のワイヤ14が掛けられたシーブ23を有するとともに当該固定ビーム24の上端に取り付けられた連結具22とを具備し、上記伸縮ビーム25は、固定ビーム24に案内され得るビーム部26と、このビーム部26の先端に取り付けられた前後方向の吊部材27と、これら吊部材27の前後位置の下面にそれぞれ設けられてコンテナを係合し得る4個のツイストロック28とから構成される。
【0014】
以下、本発明の要旨である荷物保持用アタッチメントについて図4〜図6に基づき説明する。
図4に示すように、荷物保持用アタッチメント31は、上記4個のツイストロック28が係合される連結穴42が前部および後部に形成されるとともに上記吊部材27に対応して配置される2本の連結部材41およびこれら各連結部材41をそれぞれの中央付近で接続する連結桁43からなる連結体34と、連結桁43の左右位置でそれぞれ下方に垂設されて長尺荷物6を保持する保持枠部材35と、これら各保持枠部材35に鉛直軸心回りで回転自在に設けられた上下方向の回転軸体32と、この回転軸体32の下部に水平方向で突設されて長尺荷物6を支持するとともに上面に凹状部が形成されて当該長尺荷物6を案内して規制し得る支持片33と、上記各回転軸体32を回転させて支持片33を保持枠部材35内の退避位置(後述する)58と保持枠部材35外の荷物支持位置(回転軸体32の下部から前方に向けて支持片33長さ分までの位置)59との間で出退させる回転装置36と、上記各支持片33に支持された長尺荷物6の落下を防止する落下防止手段37とから構成される。
【0015】
上記保持枠部材35は、図5に示すように、上面が連結桁43に取り付けられるとともに下面に回転軸体32の上端軸を受ける軸受52を有する保持天板51と、この保持天板51の左右側部に取り付けられるとともに上記連結桁43から下方に垂設され且つ前後方向幅が支持片33の長さと比べて十分に短い左右一対の保持側板53と、上記回転軸体32の下端軸を受ける軸受55を有するとともに各保持側板53の下端部を接続して当該回転軸体32を支持する保持底板54と、この保持底板54の上方に配置されて各保持側板53の内側面を接続するとともに回転軸体32を貫通させて軸支し且つ上記保持底板54との間に支持片33の退避用空間(以下、この退避用空間内の位置を退避位置58という)57を形成する軸支板56とを具備する。
【0016】
また、上記回転装置36は、上記回転軸体32の上部から水平にそれぞれ突設されて回転軸体32に回転力を与える回転アーム61と、回転アーム61の先端に一端部が水平面内で揺動自在に取り付けられるとともに他端部が連結桁43の前面に水平面内で揺動自在に取り付けられた回転用シリンダ62とから構成される。
【0017】
一方、落下防止手段37は、図6に示すように、上記連結桁43の前面で且つ各回転軸体32と対応する位置にそれぞれ突設された前後方向の支持部材71と、これら各支持部材71の下面に鉛直面内で揺動自在に吊持するとともに荷物支持位置59へ突出させた各支持片33の先端部と下端部が接触し得る角管状の落下防止部材72と、一端部が支持部材71の下面に且つ他端部が落下防止部材72の前面にそれぞれ鉛直面内で揺動自在に取り付けられて各落下防止部材72を揺動させて各支持片33へ接触させ得る揺動シリンダ(揺動装置の一例である)73とから構成される。
【0018】
以下、支持片33に載置した長尺荷物6の落下を防止するために落下防止部材72を支持片33へ接触させた状態を落下防止姿勢といい、落下防止部材72が支持片33から離れた状態を開放姿勢という。
【0019】
次に、リーチスタッカ1よるこの荷物保持用アタッチメント31を用いた荷役操作を説明する。
まず、吊持体21への荷物保持用アタッチメント31の取り付け作業について説明する。
【0020】
荷物保持用アタッチメント31の保管位置までリーチスタッカ1を走行させ、ブーム体13を上下へ揺動または伸縮させるとともに吊持体21を下降させて、荷物保持用アタッチメント31の直上方、すなわち各ツイストロック28が各連結穴42に対応する位置まで吊持体21を移動させる。また、左右のツイストロック28の間隔と連結穴42の間隔が合わない場合は、吊持体21の伸縮ビーム25を出退させて、ツイストロック28が対応する連結穴42の直上方へ位置するように、位置合わせを行う。
【0021】
この位置合わせの後は、吊持体21をさらに下降させて連結穴42にツイストロック28を挿入し、ツイストロック28のロック機構により荷物保持用アタッチメント31を係合することで、吊持体21への荷物保持用アタッチメント31の取り付け作業が完了する。
【0022】
次に、荷物保持用アタッチメント31が吊持体21を介して取り付けられたリーチスタッカ1による長尺荷物6の積み込み作業について説明する。
まず、長尺荷物6の保持作業について説明する。
【0023】
予め、荷物保持用アタッチメント31を揺動シリンダ73により開放姿勢にし、上記リーチスタッカ1を走行させて、架台に載置された長尺荷物6の保管場所まで移動させる。そして、クレーン装置11を操作することにより、当該長尺荷物6の前後に落下防止部材72と保持枠部材35が位置するように、すなわち荷物支持位置59が長尺荷物6の直下方となるように、荷物保持用アタッチメント31を移動および下降させる。ここで、多数の長尺荷物6が接近して配置されている場合であっても、これらの間隔が保持枠部材35の前後方向幅よりも大きい場合、すなわち保持枠部材35を挿入できる程度の間隔があれば、長尺荷物6と接触しないように当該間隔に保持枠部材35を挿入することで、例えば一本ずつの長尺荷物6の保持が可能である。そして、回転用シリンダ62を伸縮させて、回転アーム61を介して回転軸体32を鉛直軸心回りに回転させ、2個の左右支持片33を退避位置58から保持枠部材35外の荷物支持位置59である当該長尺荷物6の直下方へ突出させる。その後は、荷物保持用アタッチメント31を少しずつ上昇させ、長尺荷物6に支持片33を接触させる。このように長尺荷物6を支持した後は、荷物保持用アタッチメント31を揺動シリンダ73により落下防止姿勢にし、リーチスタッカ1による運搬用の走行に適した高さまで荷物保持用アタッチメント31を上昇させることで、長尺荷物6の保持作業が完了する。
【0024】
次に、長尺荷物6の荷下ろし作業について説明する。基本的には、上記保持作業とは逆の手順となる。
すなわち、予め荷下ろし場所に長尺荷物6の載置用の架台を2基配置しておき、この荷下ろし場所までリーチスタッカ1を走行させる。そして、荷物保持用アタッチメント31を、クレーン装置11により移動させて、これら各架台の上方に位置させる。この位置決めが終われば、荷物保持用アタッチメント31を下降させていく。長尺荷物6を架台の近くまで下降させた後は、下降速度を落として、長尺荷物6を架台へ預け、載置する。その後は、荷物保持用アタッチメント31を揺動シリンダ73により開放姿勢にするとともに、支持片33を退避位置58へ退避させ、荷物保持用アタッチメント31を上昇させることで荷下ろし作業が完了し、一連の積み込み作業が完了する。なお、上記では長尺荷物6を一本ずつ積み込む場合について説明したが、勿論、複数の並置された長尺荷物6を積み込むことも可能である。
【0025】
このように、多数の長尺荷物6が並置されている場合であっても、一個または少ない個数の長尺荷物6を、容易に保持し得るとともに確実に運搬できる。また、支持片33の上面に形成された凹状部により長尺荷物6の移動が規制されるとともに、落下防止手段37により長尺荷物6の支持片33からの落下が防止されるため、長尺荷物6を安定して保持することができる。
【0026】
ところで、上記実施例においては、回転装置36の構成の一部や揺動装置をシリンダとして説明したが、これに限定されるものではなく、モータであってもよい。
また、上記実施例においては、支持片33の荷物支持位置59を保持枠部材35から前方としたが、同一の荷物保持用アタッチメント31を前後逆にして吊持体21へ取り付けて、保持枠部材35から後方で荷物を保持するように用いてもよい。これにより、運転席5で荷役操作をする作業者から荷役作業を目視し易くなり、作業性が向上する。
【0027】
さらに、保持枠部材35は、保持天板51、左右一対の保持側板53、保持底板54および軸支板56から構成されるものとして説明したが、この構成に限定されるものではなく、回転軸体32が内部に回転自在に配置されるとともに支持片33の退避位置58を有する構成であればよい。
【0028】
なお、上記実施例においては、支持片33は、上面に凹状部を形成したものについて説明したが、この形状に限定されるものではなく、平板状であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 リーチスタッカ
2 車両本体
6 長尺荷物
11 クレーン装置
14 ワイヤ
21 吊持体
22 連結具
24 固定ビーム
25 伸縮ビーム
27 吊部材
28 ツイストロック
31 荷物保持用アタッチメント
32 回転軸体
33 支持片
34 連結体
35 保持枠部材
36 回転装置
37 落下防止手段
42 連結穴
58 退避位置
59 荷物支持位置
62 回転用シリンダ
72 落下防止部材
73 揺動シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役車両に搭載されたクレーン装置のワイヤに連結された吊持体に着脱自在に設けられて管状材、棒状材などの長尺荷物を保持するためのアタッチメントであって、
上記吊持体に着脱自在にされた連結体と、この連結体の左右位置でそれぞれ下方に垂設された所定幅の一対の保持枠部材と、これら各保持枠部材に鉛直軸心回りで回転自在に設けられた上下方向の回転軸体と、この回転軸体の下部に水平方向で突設された長尺荷物の支持片と、上記各回転軸体を回転させて支持片を保持枠部材内の退避位置と保持枠部材外の荷物支持位置との間で出退させる回転装置とから構成したことを特徴とする荷物保持用アタッチメント。
【請求項2】
支持片に支持された荷物が落下するのを防止する棒状の落下防止部材を回転軸体に対応する位置で保持枠部材に鉛直面内で揺動自在に吊持するとともに、この落下防止部材を支持片に対応する落下防止姿勢と支持片から離れた開放姿勢との間で揺動させる揺動装置を具備したことを特徴とする請求項1に記載の荷物保持用アタッチメント。
【請求項3】
支持片の上面に、長尺荷物を案内して移動を規制し得る凹状部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の荷物保持用アタッチメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−275031(P2010−275031A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127098(P2009−127098)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】