説明

葉落とし用の回転カッタ

【課題】カッタホルダに対するカッタ紐の着脱が簡単でありながら、カッタホルダの外面に段差や凹部を形成させない構成とする新たな回転カッタを提供する。
【解決手段】自転軸方向に延びる棒状のカッタホルダ2から自転軸直交方向に突出させたカッタ紐3を自転軸方向に複数並べた葉落とし用の回転カッタ1において、カッタホルダ2は、自転軸直交方向に貫通した装着孔21を自転軸方向に複数並べて設け、装着孔21は、段差部211を挟んで連通する段差前大孔212と段差後小孔213とからなり、カッタ紐3は、装着孔21の段差前大孔212に嵌まる大ブロック32からなる装着ヘッド31の端面から突出させてなり、装着ヘッド31は、装着孔21の段差前大孔212の開口から嵌め込んで段差部211に係合させたとき、前記装着孔21の段差後小孔213の開口からカッタ紐3を突出させる葉落とし用の回転カッタ1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花卉の茎を傷付けることなく、葉のみを落とす花卉の葉落し装置に用いる葉落とし用の回転カッタに関する。
【背景技術】
【0002】
花卉(例えば菊)は、茎の下側約1/3の範囲で葉が落とされる「葉落とし(又は下葉落とし)」がなされる。この葉落としは、茎の下側における風通しをよくし、病気の発生や拡大を防止し、花卉の生育を調整する。現在広く実施されている葉落としは、作業者が手で茎を扱いて葉を落す方法である。大規模な花卉栽培では、動力噴霧機により噴霧した水圧により葉のみを落す方法が利用される。しかし、作業者の手で茎を扱いて葉を落す方法は、作業者に過剰な負担を課すことから好ましくない、また、動力噴霧機により噴霧した水圧を利用して葉のみを落す方法は、設備の設置に費用がかかるほか、作業後に花卉の栽培地が水浸しになる問題がある。そこで、近年では、特許文献1〜特許文献4に見られるように、自転軸方向に延びる棒状のカッタホルダから自転軸直交方向に突出させたカッタ紐を自転軸方向に複数並べた葉落とし用の回転カッタにより、葉を叩き落とす方法が用いられる。
【0003】
特許文献1が開示する回転カッタは、カッタ紐(線体)が自由状態であるとカッタホルダ(回転体)の自転により前記カッタ紐の先端が振り回され、花卉の茎を傷つける虞があった(特許文献1[0003])ことから、カッタ紐をカッタホルダに対して環の状態にして取り付けている(同[0004])。これにより、特許文献1が開示する回転カッタは、環にしたカッタ紐が葉を引っ掛けて除去できるが、自由状態の先端がないために茎を傷つけにくい効果を得る(同[0004])。また、カッタ紐を環にしていれば、カッタホルダからカッタ紐が外れなくなる利点も得られる。
【0004】
特許文献2が開示する回転カッタは、ネジやその他締着具によりカッタ紐(カッター用線体)をカッタホルダ(回転体)に固定することの不具合(特許文献2[0004])を解消するため、延在方向に延びる窪みと、前記窪みの両端に半径方向に貫通する一対の孔とをカッタホルダに設け、窪みにわたってカッタ紐を嵌め込み、両端の孔にカッタ紐を挿通して突出させ、更に窪みに嵌め込んだカッタ紐を締め付ける軟質弾性材からなるバンド(輪体)をカッタホルダに掛け回した構成である(特許文献2[0006])。これにより、カッタ紐がカッタホルダからはみ出すことがなく、また軟質弾性材から構成されるバンドも柔らかいため、総じて茎を傷つけない効果が得られる。このほか、カッタ紐が切れにくくなり、カッタホルダに対する着脱に工具を要しない利点も得られる(特許文献2[0007])。
【0005】
【特許文献1】特開2002-000076号公報
【特許文献2】特開2002-051641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示する回転カッタは、カッタ紐により環を形成するため、葉を落すのに実効的に働くカッタホルダから最大限拡がるカッタ紐の範囲が、前記カッタ紐の全長に比べて非常に狭く、単純にカッタ紐をカッタホルダに取り付けた場合に比べて、葉落としの作業効率を低下させざるを得ない問題がある。また、カッタ紐が環に状態にしたことから、花卉の茎を傷つけないとしているが、例えば環の中央が花卉の茎に押し当てられるようにカッタ紐が回転すると、かえって茎を削るように傷つける虞が発生する。これから、カッタ紐の先端が自由状態であり、過剰に花卉の茎に押し付けられない構成である特許文献2が開示する回転カッタも、好ましいと考えられる。
【0007】
ところが、特許文献2が開示する回転カッタは、カッタ紐の一部をカッタホルダの窪みに嵌め込み、窪みの両端の孔から同じ長さだけ両端を突出させ、前記窪みに嵌め込んだ一部が離脱しないように、別途バンドを掛け回す必要があり、カッタホルダに対するカッタ紐の取り付けに非常な手間及び労力を要していた。加えて、突出量は僅かであるが、カッタホルダの外面にバンドが段差を形成することになり、前記カッタホルダが花卉の茎に衝突して前記茎を傷つける虞があった。そこで、カッタホルダに対するカッタ紐の着脱が簡単でありながら、カッタホルダの外面に段差や凹部を形成させない構成とするため、新たな回転カッタについて検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、自転軸方向に延びる棒状のカッタホルダから自転軸直交方向に突出させたカッタ紐を自転軸方向に複数並べた葉落とし用の回転カッタにおいて、カッタホルダは、自転軸直交方向に貫通した装着孔を自転軸方向に複数並べて設け、装着孔は、段差部を挟んで連通する段差前大孔と段差後小孔とからなり、カッタ紐は、装着孔の段差前大孔に嵌まる大ブロックからなる装着ヘッドの端面から突出させてなり、装着ヘッドは、装着孔の段差前大孔の開口から嵌め込んで段差部に係合させたとき、前記装着孔の段差後小孔の開口からカッタ紐を突出させる葉落とし用の回転カッタである。装着ヘッドは、装着孔の段差前大孔に嵌まる大ブロックと装着孔の段差後小孔に嵌まる小ブロックとからなり、小ブロックの端面からカッタ紐を突出させる構成にすると、装着孔に対する装着ヘッドの安定性が増し、またカッタ紐を小ブロックの端面から突出させるので、段差後小孔の内面にカッタ紐を擦らせる虞がなくなるため、好ましい。
【0009】
装着孔を構成する段差前大孔と段差後小孔とは、相対的に断面積が異なり、両者の境界に段差部が形成されるのであれば、それぞれの断面形状や長さは自由である。例えば断面四角形の段差前大孔と前記段差前大孔の範囲に収まる断面三角形の段差後小孔とから装着孔を構成してもよいが、段差前大孔と段差後小孔はいずれも断面円形とし、同軸に揃えて長さも等しくする装着孔が標準的となる。装着ヘッドの大ブロックは、装着孔の段差前大孔に相当する外形及び大きさとし、小ブロックを追加した場合、前記小ブロックは、段差後小孔に相当する外形及び大きさとする。このほか、カッタ紐と装着ヘッドとは別体として接続してもよいが、同じ樹脂素材により一体成形すると好ましい。この場合、後述する突条及び突部も装着ヘッドと一体成形するとよい。
【0010】
本発明の回転カッタは、カッタ紐を段差前大孔の開口から差し込んで段差後小孔の開口より突出させるように、大ブロックを段差前大孔の開口から嵌め込んで段差部に係合させる手順、小ブロックを追加した装着ヘッドの場合、小ブロック及び大ブロックを順に段差前大孔の開口から嵌め込んで大ブロックを段差部に係合させる手順で、容易にカッタ紐をカッタホルダに装着できる。カッタ紐は、大ブロックはもちろん、小ブロックよりも細いため、前記小ブロックを嵌める装着孔の段差後小孔の開口から簡単に取り出せる。そして、段差後小孔の開口から突出させたカッタ紐を引っ張れば、装着ヘッドが挿通孔に引っ張り込まれ、小ブロックがあれば段差後小孔に、そして大ブロックが段差前大孔に嵌められて段差部に係合される。回転カッタを回転させると遠心力によりカッタ紐が引っ張られ、大ブロックが段差部に押し付けられるので、装着ヘッドが装着孔から抜け出す虞はなく、カッタ紐をカッタホルダに安定して取り付けておくことができる。
【0011】
装着ヘッドは、装着孔の段差前大孔の開口から嵌め込んで段差部に大ブロックを係合させたとき、前記装着孔の段差前大孔の開口から露出する大ブロックの端面をカッタホルダの外面に連続する倣い面とすることが好ましい。同様に、装着ヘッドに小ブロックを設けた場合、前記装着ヘッドは、装着孔の段差前大孔の開口から嵌め込んで段差部に大ブロックを係合させたとき、前記装着孔の段差後小孔の開口から露出する小ブロックの端面をカッタホルダの外面に連続する倣い面とすることが好ましい。ここで、「カッタホルダの外面に連続する倣い面」は、大ブロックの端面で説明すれば、カッタホルダの外面に完全一致する大ブロックの端面のみでなく、段差前大孔の開口から部分的に小さくはみ出たり、逆に窪みを形成する大ブロックの端面や、段差前大孔の開口に対して全体的に小さく凹んでいたり、逆に小さく凸になっている大ブロックの端面等、通常カッタホルダの外面に連続し、倣っていると評価できる面を意味する。
【0012】
このように、装着孔の段差前大孔の開口から露出する大ブロックの端面をカッタホルダの外面に連続する倣い面としたり、装着孔の段差後小孔の開口から露出する小ブロックの端面をカッタホルダの外面に連続する倣い面としたりすることにより、カッタ紐をカッタホルダに装着した状態で、段差前大孔や段差後小孔によりカッタホルダの外面に大きな段差や凹部が形成されなくなる。これは、カッタホルダが花卉の茎に衝突した際に前記茎をえぐる大きな段差や凹部がカッタホルダの外面に形成されないことを意味する。また、特に大ブロックの端面がカッタホルダの外面に連続する倣い面になっていれば、前記大ブロックの端面が花卉の茎等、何かに引っかかってカッタホルダ外に引っ張り出される虞がなくなる。これから、装着ヘッドが装着孔から抜け出す虞がなくなり、カッタ紐をカッタホルダに安定して取り付けておくことができる。
【0013】
回転カッタが回転して、カッタ紐に引っ張られる装着ヘッドの大ブロックが装着孔の段差部に係合する限り、装着ヘッドが装着孔から脱落する心配はないが、回転カッタが停止して大ブロックが鉛直方向に向くと、装着孔に緩く嵌めただけの装着ヘッドは脱落してしまう可能性がある。しかし、装着ヘッドを装着孔に緊密に嵌め込む構成は、カッタホルダに対するカッタ紐の着脱を難しくする。そこで、装着ヘッドは、大ブロックの外面に突条又は突部を設けて、前記突条又は突部を段差前大孔の内面に圧接させたり、また装着ヘッドに小ブロックを設けた場合、前記装着ヘッドは、小ブロックの外面に突条又は突部を設けて、前記突条又は突部を段差後小孔の内面に圧接させるとよい。突条又は突部は、段差後小孔又は段差前大孔の内面に部分的に押し当てられるだけなので、装着孔に対する装着ヘッドの抜き差しは大きな抵抗にならず、カッタホルダに対するカッタ紐の着脱は容易である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の回転カッタは、カッタ紐を段差前大孔から差し込んで段差後小孔より突出させ、後は装着孔に装着ヘッドを嵌め込むだけの手順で、容易にカッタ紐をカッタホルダに装着できるようにしながら、前記装着によってカッタホルダの外面に段差や凹部が形成されることがないため、花卉の茎を傷つける虞がない。また、本発明の回転カッタは、装着ヘッドを構成する大ブロック、そして追加的に設けられる小ブロックに突条又は突部を設けることにより、前記カッタ紐の着脱を阻害しない範囲で、装着ヘッドを装着孔に緊密に嵌め込み、前記装着ヘッドの装着孔からの脱落を防止できる。このように、本発明は、カッタ紐の着脱を容易にしながら、カッタホルダによる花卉の茎を傷つける可能性を低減し、また容易な着脱ながらカッタ紐の脱落を防止することにより、回転カッタを改善する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明の回転カッタ1を装着した花卉の葉落とし装置4の全体を表す構成図、図2はギヤボックス44に接続した回転カッタ1を表す正面図、図3はギヤボックス44に接続した回転カッタ1を表す自転軸方向断面図、図4は回転カッタ1におけるカッタ紐3,3の関係を表す側面図、図5は別例の回転カッタ1を表す図2相当正面図、図6は別例の回転カッタ1におけるカッタ紐3,3,3の関係を表す図4相当側面図、図7は更に別例の回転カッタ1を表す図2相当正面図、図8は更に別例の回転カッタ1におけるカッタ紐3,3,3,3の関係を表す図4相当側面図、図9は本例のカッタ紐3の装着ヘッド31をカッタホルダ2の装着孔21に装着する前を表す自転軸直交方向断面図、図10は本例のカッタ紐3の装着ヘッド31をカッタホルダ2の装着孔21に装着した後を表す自転軸直交方向断面図、図11は小ブロック33の端面331をカッタホルダ2の外面22に倣わせたカッタ紐3を表す自転軸直交方向断面図、図12は大ブロック32及び小ブロック33それぞれに突条322,332を設けた装着ヘッド31をカッタホルダ2の装着孔21に装着した後を表す自転軸直交方向断面図、図13は本例の葉落とし装置4の使用状態を表す正面図であり、図14は別例の葉落とし装置4の使用状態を表す正面図である。
【0016】
本発明の回転カッタ1は、例えば図1及び図2に見られるように、葉落とし装置4の操作杆43の先端に設けられたギヤボックス44に、前記操作杆43に直交する向きでカッタホルダ2を接続して、使用される。本例の葉落とし装置4は、背負いフレーム411にエンジン41を搭載した背負い式草刈機に似た構成を有する。エンジン41から出力される回転動力は、フレキシブルシャフト42を通じて操作杆43が内蔵する伝達シャフト434(図3参照)へ伝達される。操作杆43は、作業者が操作杆43を左右に振って操作するハンドル431を直交して突出させ、エンジン41を制御するスロットルレバー432を介在させて、前記ハンドル431により左右に操作杆43を振る際の支点となるグリップ433が設けられている。操作杆43におけるハンドル431、スロットルレバー432及びグリップ433それぞれの形状や大きさ、また相互の配置関係は自由である。
【0017】
回転カッタ1は、操作杆43の先端に設けられたギヤボックス44にカッタホルダ2を接続する。ギヤボックス44は、図3に見られるように、操作杆43の伝達シャフト434に直交する従動シャフト444をギヤケース441に内蔵して構成され、ギヤケース441に差し込まれた前記伝達シャフト434に取り付けた駆動ベベルギヤ442と、従動シャフト444に取り付けた従動ベベルギヤ443とを噛み合わせ、伝達シャフト434の回転動力を従動シャフト444に伝達する。本例は、伝達シャフト434と従動シャフト444とを直交させているが、後述するように、伝達シャフト434に対する従動シャフト444の交差角度を調整すると、操作杆43に対して角度θ(図14参照)に傾けて回転カッタ1をギヤボックス44に接続できる。本例は、角度θが90度の場合である。従動シャフト444は、ギヤケース441から突出した駆動軸445を連結している。回転カッタ1は、カッタホルダ2の端部に雌ネジを設けた接続端部23を有し、前記駆動軸445に形成された雄ネジと捩じ合わせることにより、ギヤボックス44に対してカッタホルダ2を接続する。本例は、駆動軸445が同じ長さのカバーに囲まれているため、ギヤボックス44に対するカッタホルダ2の接続は、外見上、前記カバーにカッタホルダ2の接続端部を差し込んで、駆動軸445に捩じ合わせるように見える。
【0018】
回転カッタ1は、カッタホルダ2及びカッタ紐3から構成される。本例のカッタホルダ2は、自転軸方向に延びる金属製の棒体で、自転軸方向に等間隔に並ぶ計6個の装着孔21を設け、既述したように、一端にギヤボックス44に接続する接続端部23を設けている。装着孔21は、周方向に互い違いに反転しながら並んでいるため、カッタ紐3は、図4に見られるように、周方向α(=180度)の間隔にずれた3本ずつのカッタ紐3がカッタホルダ2から突出することになる。これにより、本例の回転カッタ1は、周方向にモーメントの偏りが生じなくなり、安定に回転できる。これから、図5及び図6に見られるように、周方向β(=120度)の間隔にずれた計6個の装着孔21を形成し、カッタ紐3を各装着孔21から前記周方向βの間隔毎に2本ずつ突出させたカッタホルダ2や、図7及び図8に見られるように、周方向γ(=90度)の間隔にずれた計12個の装着孔21を形成し、カッタ紐3を各装着孔21から前記周方向βの間隔毎に3本ずつ突出させたカッタホルダ2とすれば、回転カッタ1は、周方向にモーメントの偏りが生じなくなり、安定して回転できる。
【0019】
本発明は、カッタホルダ2に設ける装着孔21と、カッタ紐3を突出させる装着ヘッド31とにある。装着孔21は、図9に見られるように、段差部211を挟んで連通する段差前大孔212と段差後小孔213とから構成される。段差部211は、段差前大孔212の断面形状から段差後小孔213の断面形状を差し引いた形状で、本例は段差前大孔212及び段差後小孔213をいずれも断面円形状とし、各中心を同一線上に揃えている。また、本例の段差部211は、段差前大孔212及び段差後小孔213の深さを等しくし、装着ヘッド31の大ブロック32及び小ブロック33が段差前大孔212及び段差後小孔213に等しく嵌合させている。このほか、本例の装着孔21は、装着ヘッド31の抜き差しを容易にするため、段差前大孔212及び段差後小孔213の各開口を少し開き気味とし、例えば段差後小孔213の開口は段差前大孔212の大きさに近くしている。
【0020】
装着ヘッド31は、装着孔21の段差前大孔212に同じ断面形状である大ブロック32と、装着孔21の段差後小孔213に同じ断面形状である小ブロック33とを一体にした樹脂ブロックである。本例は、カッタ紐3及び装着ヘッド31を樹脂一体成形品として構成し、大ブロック32の端面321をカッタホルダ2の外面22に連続する倣い面とし、小ブロック33の端面331をカッタ紐3に向けて絞り込む錐台面としている。ここで、本例の段差前大孔212の開口は少し開き気味で、前記大ブロック32の端面321との間に僅かに隙間を生じているが、大ブロック32の端面321の縁部及び段差前大孔212の開口の縁部はいずれもなだらかな曲面で形成されているため、例えばカッタホルダ2が花卉の茎に衝突した際に前記茎をえぐる虞はない。小ブロック33の端面331をカッタ紐3に向けて絞り込む錐台面とした理由は、遠心力をどこか局部的に集中させることなく、カッタ紐3から装着ヘッド31へ伝達されるようにするためである。
【0021】
カッタ紐3は、図10に見られるように、装着孔21の一方から他方へ抜け出す、すなわち段差前大孔212の開口から差し込み、前記段差前大孔212、段差部211、そして段差後小孔213を通じて、前記段差後小孔213の開口から突出させる。このとき、大ブロック32は段差前大孔212に嵌合され、端面321をカッタホルダ2の外面22に倣わせると共に段差部211に係合され、小ブロック33は段差後小孔213に嵌合される。回転カッタ1が回転すると、カッタホルダ2の外面22から突出するカッタ紐3に遠心力(図10中黒塗り矢印参照)が加えられ、装着ヘッド31は大ブロック32を段差部211に押し付ける方向に引っ張られる。当然、大ブロック32は段差部211を越えて抜け出すことがないので、回転ヘッド1が回転している限り、装着ヘッド31が装着孔21から抜け出す虞がない。
【0022】
既述したように、大ブロック32の端面321はカッタホルダ2の外面22に倣っており、回転カッタ1の回転に際してカッタホルダ2が花卉の茎に衝突しても前記茎をえぐる虞はない。これに対し、小ブロック33の端面331は、遠心力をカッタ紐3から装着ヘッド31に伝達するため、錐台面としており、必ずしもカッタホルダ2の外面22に倣っていない。そこで、例えば図11に見られるように、小ブロック33の端面331も、大ブロック32の端面321同様、カッタホルダ2の外面22に連続する倣い面とし、前記端面331の中央からカッタ紐3を突出させてもよい。すなわち、カッタ紐3を突出させる小ブロック33の端面331は、カッタ紐3の切断を防止する観点からは錐台面が好ましく、また回転カッタ1の回転時に花卉の茎を傷つけないようにするには倣い面が好ましいと言える。
【0023】
装着ヘッド31を装着孔21に緊密に嵌め込むには、図12に見られるように、大ブロック32の外面に設けた突条322を段差前大孔212の内面に圧接させたり、小ブロック33の外面に設けた突条332を段差後小孔213の内面に圧接させるとよい(図12中各突条322,332のハッチングは、圧接している部分を図示)。突条322,332は、段差前大孔212又は段差後小孔213の内面に部分的に押し当てられるだけなので、装着孔21に対する装着ヘッド31の抜き差しは大きな抵抗にならず、カッタホルダ2に対するカッタ紐3の着脱は容易である。しかし、装着孔21に装着ヘッド31を嵌め込んだ状態では、突条322,332が段差前大孔212又は段差後小孔213の内面に押し当てられているので、装着孔21からの装着ヘッド31の脱落を防止できる。
【0024】
本発明の回転カッタ1は、葉落とし装置4のギヤボックス44に取り付けて、図13に見られるように、葉落としの対象となる高さhの範囲にある花卉5の葉51に対して回転するカッタ紐3をぶつけ、前記葉51を絡めとるようにして落す。ここで、花卉5の茎52の丈が500mm〜800mmの場合、前記葉落としの対象となる高さhは200mm〜300mmが通常である。回転カッタ1は、操作杆43のハンドル431及びグリップ433を持つ作業者によって、水平動及び垂直移動させる。カッタ紐3は、可撓性を有する樹脂製で、葉51を絡めとることはできるが、茎52に当たってもほとんど傷つける虞はない。また、カッタホルダ2は、既述したように、段差前大孔212の開口は大ブロック32の端面321により、段差後小孔213の開口は小ブロック33の端面331によってそれぞれ塞がれ、大ブロック32の端面321はカッタホルダ2の外面に連続する倣い面とされ、小ブロック33の端面331はカッタ紐3に向かって絞られた錐台面とされて不要な凹凸がないため、やはり茎52を傷つけることがない。こうして、本発明の回転カッタ1は、花卉5の茎52を傷つけることなく、葉51のみを落とすことができる。
【0025】
本例の葉落とし装置4は、操作杆43に対する角度θを90度として回転カッタ1を取り付けた例である。しかし、作業者は畝間を歩き、左右に盛られた畝に織成された花卉を処理対象とすることから、通常操作杆43が斜めとなる。そこで、図14に見られるように、操作杆43に対する角度θが60度〜90度の範囲で斜めに回転カッタ1を取り付けた別例の葉落とし装置4としてもよい。本発明の回転カッタ1は、カッタホルダ2に設けられた装着孔を利用して、草刈り用のカッタ紐を装着することもできるが、この場合、別例の葉落とし装置4のように、操作杆43に対して斜めに回転カッタ1を取り付けられる構成が好ましい。しかし、花卉が菊の場合、畝間の間隔は400mm〜600mm、各畝の菊の間隔でも600mm〜800mmなので、あまり角度θが浅いと、操作杆43が隣の畝の菊に当たってしまう。これから、草刈り用のカッタ紐を装着することも考慮すれば、現実的に好ましい角度θは75度前後と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の回転カッタを装着した花卉の葉落とし装置の全体を表す構成図である。
【図2】ギヤボックスに接続した回転カッタを表す正面図である。
【図3】ギヤボックスに接続した回転カッタを表す自転軸方向断面図である。
【図4】回転カッタにおけるカッタ紐の関係を表す側面図である。
【図5】別例の回転カッタを表す図2相当正面図である。
【図6】別例の回転カッタにおけるカッタ紐の関係を表す図4相当側面図である。
【図7】更に別例の回転カッタを表す図2相当正面図である。
【図8】更に別例の回転カッタにおけるカッタ紐の関係を表す図4相当側面図である。
【図9】本例のカッタ紐の装着ヘッドをカッタホルダの装着孔に装着する前を表す自転軸直交方向断面図である。
【図10】本例のカッタ紐の装着ヘッドをカッタホルダの装着孔に装着した後を表す自転軸直交方向断面図である。
【図11】小ブロックの端面をカッタホルダ2の外面に倣わせたカッタ紐を表す自転軸直交方向断面図である。
【図12】大ブロック及び小ブロックそれぞれに突条を設けた装着ヘッドをカッタホルダの装着孔に装着した後を表す自転軸直交方向断面図である。
【図13】本例の葉落とし装置の使用状態を表す正面図である。
【図14】別例の葉落とし装置の使用状態を表す正面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 回転カッタ
2 カッタホルダ
21 装着孔
211 段差部
212 段差前大孔
213 段差後小孔
22 外面
3 カッタ紐
31 装着ヘッド
32 大ブロック
33 小ブロック
4 葉落とし装置
41 エンジン
42 フレキシブルシャフト
43 操作杆
44 ギヤボックス
5 花卉
51 葉
52 茎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転軸方向に延びる棒状のカッタホルダから自転軸直交方向に突出させたカッタ紐を自転軸方向に複数並べた葉落とし用の回転カッタにおいて、カッタホルダは、自転軸直交方向に貫通した装着孔を自転軸方向に複数並べて設け、装着孔は、段差部を挟んで連通する段差前大孔と段差後小孔とからなり、カッタ紐は、装着孔の段差前大孔に嵌まる大ブロックからなる装着ヘッドの端面から突出させてなり、装着ヘッドは、装着孔の段差前大孔の開口から嵌め込んで段差部に係合させたとき、前記装着孔の段差後小孔の開口からカッタ紐を突出させることを特徴とする葉落とし用の回転カッタ。
【請求項2】
装着ヘッドは、装着孔の段差前大孔に嵌まる大ブロックと装着孔の段差後小孔に嵌まる小ブロックとからなり、小ブロックの端面からカッタ紐を突出させる請求項1記載の葉落とし用の回転カッタ。
【請求項3】
装着ヘッドは、装着孔の段差前大孔の開口から嵌め込んで段差部に大ブロックを係合させたとき、前記装着孔の段差前大孔の開口から露出する大ブロックの端面をカッタホルダの外面に連続する倣い面とする請求項1又は2いずれか記載の葉落とし用の回転カッタ。
【請求項4】
装着ヘッドは、装着孔の段差前大孔の開口から嵌め込んで段差部に大ブロックを係合させたとき、前記装着孔の段差後小孔の開口から露出する小ブロックの端面をカッタホルダの外面に連続する倣い面とする請求項2記載の葉落とし用の回転カッタ。
【請求項5】
装着ヘッドは、大ブロックの外面に突条又は突部を設けて、前記突条又は突部を段差前大孔の内面に圧接させる請求項1〜4いずれか記載の葉落とし用の回転カッタ。
【請求項6】
装着ヘッドは、小ブロックの外面に突条又は突部を設けて、前記突条又は突部を段差後小孔の内面に圧接させる請求項2又は4いずれか記載の葉落とし用の回転カッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−50220(P2009−50220A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221593(P2007−221593)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000104065)カーツ株式会社 (14)