説明

蒸気タービン発電システム

【課題】 150℃以下の低温排ガスから熱を回収して利用し、蒸気タービン発電を増加して熱利用の効率を向上させるための蒸気タービン発電システムを提供する。
【解決手段】 蒸気タービン発電システムにおいて、熱媒体と水で熱交換をさせる熱交換器61,62と蒸気タービン41の真空段に蒸気を供給する真空フラッシャー63を備えて、熱交換器61,62に熱媒体を供給して真空段の真空下における水沸点を超えた温度を有する水流体を生成させ、真空フラッシャー63に供給して真空段の真空下で蒸気を発生させ、蒸気タービン41の真空段に投入することにより発電量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来よりも低温の熱源を活用して発電量を増加させる蒸気タービン発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
セメントキルン、製鉄所、金属精錬所、化学工場、ゴミ焼却炉、地熱発電所など、廃熱等の比較的冷温の熱が発生する施設では、排ガス等の熱を廃熱ボイラ等で回収あるいは生成した蒸気で蒸気タービンを駆動して発電する蒸気タービン発電設備を備えて、エネルギー資源の有効活用を図っている。
【0003】
特許文献1には、セメント焼成プラントの廃熱を利用した発電システムが記載されている。
セメント焼成プラントでは、たとえば、サスペンションプレヒータ(以下単に「プレヒータ」または「PH」ともいう)から300〜400℃の排ガスが、また、エアクエンチングクーラー(以下単に「クエンチングクーラー」または「AQC」ともいう)からほぼ250〜300℃の排ガスが大量に放出されている。これらPHからの排ガスとAQCからの排ガスは、プラントの運転状況により温度や廃熱量が大幅に異なる。特に、AQCからの排ガス温度は周期的な大幅変動を繰り返す。
【0004】
従来のセメント焼成プラント廃熱回収発電システムでは、たとえば、PHの排ガスを熱媒とするPHボイラとAQCの排ガスを熱媒とするAQCボイラを設けて、両ボイラで高圧蒸気を発生させて蒸気タービンの高圧段に投入し、またAQCボイラのヒータ部で得られる余剰熱水をフラッシャーで気液分離して発生させた低圧蒸気を低圧段に投入し、蒸気タービンを駆動する。AQCヒータの排ガス出口温度は約100℃で、PHボイラの排ガス出口温度は200〜250℃になる。
【0005】
しかし、AQCボイラ設置後のセメント焼成プラントには、AQC低温部からの排ガスや廃熱回収後の排ガスなど、さらに低温の熱源が存在するが、低温熱源からの低温媒体では蒸気タービンの適宜な段に供給できる蒸気を生成することが困難であり、熱回収の対象となっていなかった。
製鉄所における焼結クーラーにおいても、250〜450℃の高温排ガスについて廃熱回収する発電システムが利用されているが、焼結クーラーの低温側排ガスの廃熱は対象とされていない。
【0006】
このように、従来は、たとえば工場における150℃以下の低温熱源については、蒸気タービンに供給できる蒸気を生成することが困難であり、利用対象となっていなかった。
しかし、近時、環境問題や費用節減や、特に東日本大震災を契機とした安全な発電手段選択の要請などの事情もあって、より高度な廃熱利用が求められ、工場等で発生するさらに低温の排ガス等からも効率よく熱利用をすることが望まれるようになってきた。
【0007】
低温熱源から熱回収して電力を得る方法として、たとえば特許文献2に開示されたような、バイナリーサイクル発電システムがある。バイナリーサイクル発電システムは、ペンタンやトリフルオロエタノールなど、水より沸点の低い媒体を作動媒体として、低温熱源からの熱で蒸発させた媒体蒸気を使って蒸気タービンを駆動し発電する、クローズなランキンサイクル式タービン発電システムで、従来は利用できなかった低温の蒸気や熱水から熱回収をすることができる。
【0008】
しかし、バイナリーサイクル発電システムは、低温熱源に適した発電システムであって、高温熱源が共存する状況においては、高温蒸気を使った高効率の蒸気タービンシステムを備えた上で、高価な熱媒体を使うバイナリーサイクル用の蒸気タービンシステムを追加することになり、費用対効果の観点からも満足できるものとなっていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−157183号公報
【特許文献2】特開2004−353571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、従来の蒸気タービン発電プラントの構成を活用して、大きな変更を加えず安価に、低温熱源からより高度な熱利用をすることを可能にする蒸気タービン発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の蒸気タービン発電システムは、蒸気タービンに大気圧以上の圧力を有する高温の水蒸気を供給して発電する蒸気タービン発電システムにおいて、蒸気タービンの真空段と接続された真空フラッシャーをさらに備えて、真空フラッシャーに温水を供給しフラッシュさせて生成した大気圧以下の水蒸気を蒸気タービンの真空段に投入するようにしたことを特徴とする。
さらに加熱器を備えて、プラント等の低温熱源から供給された熱媒で加熱して温水を生成し、真空フラッシャーに供給するようにしてもよい。
【0012】
加熱器として熱交換器を用いて、加熱側流体として150℃以下常温以上の温度を有する水またはガスを供給して温水を生成させることができる。
大気圧以下の真空で水蒸気を発生させればよいので、熱交換器に供給する加熱側流体は150℃以下の温度であってもよい。
【0013】
本発明の蒸気タービン発電システムは、低温熱源からの低温媒体と作動媒体の水とを熱交換して100℃以下の温水を生成し、この温水を真空フラッシャーに供給して真空下でフラッシュさせて水蒸気を生成し、その蒸気を蒸気タービンの真空段に供給することにより、タービン出力を増大させるので、低温熱源を有効に利用することができる。
【0014】
本発明の蒸気タービン発電システムは、従来の蒸気タービン発電システムに対して真空フラッシャーあるいはさらに加熱器を増設することで構成することができる。作動媒体として、バイナリーサイクル発電システムで使う高価な熱媒体でなく、安価でありながら優れた熱媒特性を有する水が使えるので、製作コストと運転コストを抑制できる。特に蒸気タービン発電システムが既存の場合には、追加投資も僅かで済み経済的である。なお、熱交換器を低温熱源の近傍に設置し真空フラッシャーを蒸気タービンの近傍に設置すれば、排ガスなどの廃熱を熱搬送能力の高い水により伝達し蒸気タービンのそばで蒸気にして供給するので、両者間の熱エネルギーの搬送を比較的細い配管により行うことができ、設備費を抑制することができる。
【0015】
本発明の蒸気タービン発電システムをセメント焼成プラントに適用する場合は、熱交換器に導入する低温媒体として、セメント焼成プラントにおけるサスペンションプレヒータ(PH)で発生してPHボイラで熱回収した後の低温排ガス、エアクエンチングクーラー(AQC)で発生してAQCボイラで熱回収した後の低温排ガス、さらにAQCの低温部から排出される排ガスなどを利用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蒸気タービン発電システムにより、水を作動媒体とした蒸気タービン発電装置を利用して、高温熱源からの熱回収に加えて、低温熱源から放出される熱エネルギーを有効に回収して、高効率の熱利用を経済的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の1実施例に係る蒸気タービン発電システムのブロック図である。
【図2】本実施例を適用する廃熱回収発電プラントの例を示すブロック図である。
【図3】本実施例を適用するセメント焼成プラント排ガス処理設備を示すブロック図である。
【図4】本発明の別の実施例に係る蒸気タービン発電システムのブロック図である。
【図5】本発明のさらに別の実施例に係る蒸気タービン発電システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施例を用いて本発明の蒸気タービン発電システムについて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は第1実施例の蒸気タービン発電システムのブロック図、図2は本実施例を適用する廃熱回収発電プラントのブロック図、図3は本実施例を適用するセメント焼成プラント排ガス処理設備のブロック図である。なお、図面において、同じ機能を表す要素には同じ参照番号を当てて説明を省略する場合がある。
【0020】
本実施例の蒸気タービン発電システムは、図1に示すように、本発明の蒸気タービン発電システムを、図3に示したセメント焼成プラントの排ガス処理設備に適用した例を示すものである。
図3に示したセメント焼成プラントでは、キルン1のプレヒータ(PH)2から300〜400℃の排ガスが発生し、原料粉砕工程6の原料ミル7で原料を予熱するために利用した後、電気集塵機(EP)10を通して煙突12から大気に放出される。また、キルン1のクエンチングクーラー(AQC)3から平均温度で250〜300℃のテールガスが発生する。AQC3からの排ガスは電気集塵機(EP)16を通して煙突18から大気に放出される。なお、図中、参照番号5,9,11,17はファン、参照番号8はサイクロン、参照番号14は除塵槽を示す。
【0021】
このように、セメント焼成プラントからは、排ガスに搬送されて大量の熱が放棄されている。このため、従来、たとえば図2に示すような廃熱回収発電プラントを装備することにより高温の排ガスから廃熱の大きな部分を回収してきた。
【0022】
図2に示す従来技術の廃熱回収発電プラントは、ある条件におけるセメント焼成プラント排ガス処理設備に適用したもので、PHの排ガスを加熱媒体とするPHボイラ21と、AQCの高温部からの排ガスを加熱媒体とするAQCボイラ31を備え、さらに、AQCボイラ31から温水の供給を受けて気水分離するフラッシャー51を備えている。そして、PHボイラ21とAQCボイラ31で発生する高圧蒸気を蒸気タービン41の高圧段に、フラッシャー51で発生する低圧蒸気を蒸気タービン41の低圧段に投入させて蒸気タービン41を駆動し、発電機42により廃熱のエネルギーを電力として効率よく回収するものである。
【0023】
PHボイラ21には、内部に過熱器22と蒸発器23が設けられ、外に汽水ドラム24とポンプ25と調節弁26が設けられている。PHからの、温度325℃、流量389,000Nm/hの排ガスは、PHボイラ21に加熱側流体として供給される。汽水ドラム24の水がポンプ25で蒸発器23に供給され蒸気を含んだ混合水となって汽水ドラム24に戻って蒸気と熱水に分離する。汽水ドラム24の蒸気は、過熱器22で過熱蒸気になって、配管27に供給される。調節弁26は、汽水ドラム24の水頭を確保するように供給水量を調節する。PHボイラ21から排出された排ガスは、図3に示すように、原料粉砕工程6で原料を予熱する熱源として利用された後に、電気集塵機10に通して煙突12から大気に放出される。
【0024】
AQCボイラ31には、内部に過熱器32、蒸発器33、予熱器34が設けられ、外に汽水ドラム35と調節弁36が設けられている。AQCで発生するテールガスのうち高温領域から平均360℃の排ガス206,250Nm/hを取り出してAQCボイラ31に加熱側流体として供給する。ボイラ給水ポンプ38によりAQCボイラ31に供給される温水は、予熱器34で加熱され熱水となってPHボイラ21に供給される。予熱器34で生成された熱水の一部は、調節弁36を介して汽水ドラム35に供給され、蒸発器33と過熱器32を介して過熱蒸気となって、配管37に供給される。また、予熱器34で生成された熱水の残りは、フラッシャー51に供給される。
配管27の過熱蒸気と配管37の過熱蒸気は蒸気配管28で合流して、蒸気タービン41の高圧段に供給される。
【0025】
フラッシャー51は調節弁52を備え、AQCボイラ31から供給される熱水を槽内にフラッシュして気液分離し発生した大気圧以上の蒸気を、配管53を介して蒸気タービン41の低圧段に供給し、分離された温水は配管54を介して蒸気タービン41の復水に合流し、ボイラ給水ポンプ38によりAQCボイラ31に戻される。
【0026】
蒸気タービン発電機は、蒸気タービン41と発電機42を主機として構成される。
蒸気タービン41は、高圧段に投入された高圧蒸気と低圧段に投入された低圧蒸気で駆動され、回転軸同士が変速機構を介してつながる発電機42を駆動して電力を発生させる。この条件下では、発電機42から9100kWの電力を得ることができる。
【0027】
蒸気タービン41の末端は復水器43に接続されている。蒸気タービン41の蒸気が復水器43で冷却され凝縮して低温の復水になるため、蒸気タービン41の末端部は減圧して真空状態になり、蒸気タービン41の最終段から上流側の数段については、真空状態の真空段となっている。なお、蒸気タービン41の末端部における真空度が高いほどタービン出力が大きくなる。
復水器43の冷却には、冷却塔46で製造され冷水ポンプ47で供給される冷却水が使用される。なお、冷却水は、一部を取り出してタービンや発電機などの補機48に使用する。
【0028】
復水器43で生成した復水は、復水ポンプ44によりグランド蒸気復水器45を介してAQCボイラ31の予熱器34に送水される。
蒸気タービン41の軸封部シール用蒸気はグランド蒸気復水器45で蒸気タービン41の復水と熱交換して凝縮しAQCボイラ31の給水に注入される。
また、補給水は、補給水タンク49から復水器43に補給することができる。
【0029】
ところで、図3に示したように、セメント焼成プラントでは、従来も効果的な回収が図られてきたPH2あるいはAQC3の高温部から放出される比較的高温な排ガスの他に、熱回収の難しい150℃以下の低温熱源が存在する。たとえば、従来法によりPH2の排ガスから熱回収した後のガスは、電気集塵機10を通過する前後において100℃の温度を保っており、また、AQC3の高温領域から抜き出した残りの排ガスも平均温度が110℃程度あり、またAQC3の高温部からの排ガスから熱回収した後のガスを合流させた後で電気集塵機16を通過する前後の排ガスも90℃になっている。
【0030】
図1に示す本実施例の蒸気タービン発電システムは、図2に示した従来技術に係る廃熱回収発電プラントに対して、さらに上記のような150℃以下の低温熱源の熱を回収するために、必要な要素を付加することにより構成したものである。
本発明の蒸気タービン発電システムは、蒸気タービンに真空段が存在することに注目して、その真空に対応する水蒸気を温水から生成させて真空段に投入して蒸気タービンの回転を助勢することにより、高価な熱媒体を使用することなく、発電機出力を増加させることを可能にしたものである。
【0031】
本実施例における上記付加要素は、図1において太線で示した通り、PH熱交換器61、AQC熱交換器62、真空フラッシャー63、熱交給水ポンプ64とこれらに付帯する配管である。
PH熱交換器61は、図3に示すように、サスペンションプレヒータ(PH)2の排気ガス処理設備における電気集塵機10と煙突12の間に設けられ、100℃の排ガスの供給を受けて熱を回収する。
また、AQC熱交換器62は、エアクエンチングクーラー(AQC)3の排気ガス処理設備における電気集塵機16と煙突18の間に設けられ、90℃の排ガスの供給を受けて熱を回収する。
【0032】
PH熱交換器61とAQC熱交換器62で得られた温水は、真空フラッシャー63に搬送され、ここで低真空でフラッシュされて水蒸気となり、蒸気配管65を介して蒸気タービン41の真空段に投入され、発電機42の出力を増大させて、復水器43で復水し、グランド蒸気復水器45を通ってPH熱交換器61とAQC熱交換器62の熱交回路に戻ってくる。
熱交給水ポンプ64は、真空フラッシャー63で分離された温水とグランド蒸気復水器45を介して戻る温水を熱交回路中に循環させる機能を有する。
【0033】
真空フラッシャー63で発生させる真空下の蒸気は、蒸気タービン41の投入段における真空雰囲気に対して大きな圧力差がとれないため、蒸気を搬送する蒸気配管65は大きな管径をもった、できるだけ短い配管であることが求められる。また、エネルギーを搬送する媒体として蒸気より液体の方が優れているので、PH熱交換器61とAQC熱交換器62から真空フラッシャー63までの温水配管を延ばしても、蒸気配管65を短くすることで効率が高くなる。このため、真空フラッシャー63は、蒸気タービン41の機側に配置することが好ましい。
【0034】
図2に示した運転条件と同じ条件で検討すると、PH熱交換器61では、電気集塵機10の下流から100℃の排ガス340,000Nm/hを取って、熱交換により82℃に冷却した後に煙突12から放出させる。一方、PH熱交換器61は、熱交給水ポンプ64により供給される73℃の温水を85℃に昇温させて真空フラッシャー63に供給する。
また、AQC熱交換器62では、電気集塵機16の下流から90℃の排ガス200,000Nm/hを取って、熱交換により82℃まで冷却して煙突18から放出する。AQC熱交換器62では、73℃の温水を80℃に昇温させて真空フラッシャー63に供給することができる。
【0035】
真空フラッシャー63では、温水から0.35barAの真空蒸気を4.37t/h生成して、蒸気配管65を通じて蒸気タービン41の真空段に投入することができる。
こうして、本実施例の蒸気タービン発電システムを用いることにより、従来技術では利用しなかった低温熱源から熱エネルギーを回収して、260kWの電力を増加させて、廃熱回収発電プラントの出力を9360kWとすることができる。
【0036】
本実施例の蒸気タービン発電システムは、ペンタンやトリフルオロエタノールなど高価な低沸点熱媒体を使用することなく、従来から使用する水蒸気を使った蒸気タービン発電機の構成をそのまま活用し、真空フラッシャーを利用して低温熱源から低圧蒸気を発生させ適宜な真空段に投入して発電量を増加させて、熱エネルギーを回収するので、設備費も運転費も節減できて、費用対効果の優れた廃熱回収発電が可能になる。
なお、廃熱回収蒸気タービン発電装置が既設の場合には、僅かな改修を施すことで、より低温の熱源から熱回収できるようにすることができる。
【実施例2】
【0037】
図4は本発明の第2実施例に係る蒸気タービン発電システムのブロック図である。図中の太線部分は、図2に示した従来技術の廃熱回収発電プラントと異なる部分を示す。
本実施例では、第1実施例の構成機器と同じ機器を使うが、機器同士を接続する配管が相違する。すなわち、本実施例の蒸気タービン発電システムを第1実施例のものと対比すると、PHの低温熱源から熱回収するPH熱交換器61と真空フラッシャー63の関係は変更がないが、AQCの低温熱源から熱回収するAQC熱交換器62に係る配管および真空フラッシャー63に係る配管が異なるので、以下において相違点に関してのみ詳しく説明する。
【0038】
本実施例の蒸気タービン発電システムでは、図4に示すように、第1実施例で高温熱源の熱回収をするAQCボイラ31の予熱器34に供給されていた復水の全量を、AQC熱交換器62を通して供給するようにすると共に、予熱器34から供給される熱水から低圧蒸気を生成するフラッシャー51の分離水を真空フラッシャー63に供給するようにしている。真空フラッシャー63の分離水は復水器43で生成する低温の復水と合流させた後に、PH熱交換器61とAQC熱交換器62に分配するようになっている。
【0039】
本実施例の構成によれば、PH熱交換器61とAQC熱交換器62に供給する水媒体の温度が低温化し、熱交換器の熱媒入り口と熱媒出口の温度差が大きくなるため、低温熱源からの熱回収効率が向上する。すなわち、第1実施例における条件下では熱交換器61,62の水の入り口温度が73℃とされていたが、本実施例では同じ条件で55℃になっている。このため、発電機42の出力も増加することになる。
【実施例3】
【0040】
図5は本発明の第3実施例に係る蒸気タービン発電システムのブロック図である。
本実施例は、従来の蒸気タービン発電システムに真空フラッシャーを付設することにより、従来利用できなかったシステム内の低温熱源から熱回収して効率を向上させたものである。
【0041】
本実施例の蒸気タービン発電システムでは、ボイラ等の熱源71で熱水を生成して気水分離器72に供給し、気水分離器72で生成した高圧蒸気を蒸気タービン75の高圧段に送入する。また、気水分離器72で分離された水は、フラッシャー73に供給してフラッシュして低圧蒸気と温水を生成し、低圧蒸気は蒸気タービン75の低圧段に送入する。
蒸気タービン75が、発電機76を駆動して発電させる。蒸気タービン75の最終段は復水器77につながっていて、中の水蒸気が冷水で冷却され凝縮して真空に減圧される。
復水器77で凝縮した復水は、復水ポンプで熱源71に送られ熱水になり、蒸気タービン75の作動媒体として再び利用される。
【0042】
フラッシャー73で生成する温水は、従来は低温のため熱回収が困難として、そのまま循環水に加えて再度ボイラ等の熱源71で加熱されるものであったが、本実施例では、真空下でフラッシュするようにした真空フラッシャー74に供給される。真空フラッシャー74で分離された温水は、蒸気タービン75の復水器77から還流する復水と混ぜられて、作動流体として熱源71で再加熱されて利用される。
真空フラッシャー74の蒸気配管が蒸気タービン75の真空段につながれていて、真空フラッシャー74で発生した真空蒸気は真空段に供給されて、発電機76の出力を増大させる。
【0043】
本実施例の蒸気タービン発電システムでは、大気圧以下の真空状態で沸点が100℃より低下することに注目して、真空フラッシャー74を設けてシステム内に存在する低温熱源を利用し、発電能力を増大させることができる。
なお、本実施例の熱源71は、蒸気タービン発電システムの外部に存在する各種熱源そのものであっても、また外部熱源から供給される熱媒体から熱を与えられて熱水を発生する加熱器や熱交換器などであってもよい。また、たとえば、地下に存在する熱水源などであってもよい。
【0044】
本発明の蒸気タービン発電システムでは、蒸気タービンの真空段を利用して、真空フラッシャーで生成した低温の水蒸気を投入して発電量を増大するので、従来利用しきれなかった各種プラントの低温廃熱や自然界の低温熱源から熱の回収が可能である。
上記実施例では、セメント焼成プラントのサスペンションプレヒータとエアクエンチングクーラーに適用して排ガス処理装置の電気集塵機を通った、比較的低温の排ガスから熱回収する場合を主として説明したが、これらに限られないことはいうまでもない。たとえば、エアクエンチングクーラーの低温部から排出される排ガスから直接に熱回収することもできる。また、事情によって、サスペンションプレヒータとエアクエンチングクーラーのいずれか一方に対して適用することも可能である。
【0045】
また、同じ技術的思想は、たとえば、ゴミ焼却場の焼却炉や製鉄所の焼結クーラーなど、他のプラントにおける、より低温な廃熱源を対象にする場合にも適用することができる。さらに、地熱発電プラントなどにおいても、従来利用し難かった低温熱源を活用するために適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の蒸気タービン発電システムは、各種プラントあるいは自然界において、利用が難しかった低温の熱源から熱回収して電力化することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 キルン
2 サスペンションプレヒータ(PH)
3 エアクエンチングクーラー(AQC)
5,9,11,17 ファン
6 原料粉砕工程
7 原料ミル
8 サイクロン
10 電気集塵機
12,18 煙突
14 除塵槽
16 電気集塵機
21 PHボイラ
22 過熱器
23 蒸発器
24 気水ドラム
25 ポンプ
26 調節弁
27 配管
28 蒸気配管
31 AQCボイラ
32 過熱器
33 蒸発器
34 予熱器
35 汽水ドラム
36 調節弁
37 配管
38 ボイラ給水ポンプ
41 蒸気タービン
42 発電機
43 復水器
44 復水ポンプ
45 グランド蒸気復水器
46 冷却塔
47 冷水ポンプ
48 補機
49 補給水タンク
51 フラッシャー
52 調節弁
53 配管
54 配管
61 PH熱交換器
62 AQC熱交換器
63 真空フラッシャー
64 熱交給水ポンプ
65 蒸気配管
71 熱源
72 気水分離器
73 フラッシャー
74 真空フラッシャー
75 蒸気タービン
76 発電機
77 復水器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンに大気圧以上の圧力を有する高温の水蒸気を供給して発電する蒸気タービン発電システムにおいて、該蒸気タービンの真空段と接続された真空フラッシャーをさらに備えて、該真空フラッシャーに温水を供給しフラッシュさせて生成した大気圧以下の水蒸気を前記蒸気タービンの真空段に投入するようにしたことを特徴とする蒸気タービン発電システム。
【請求項2】
さらに加熱器を備えて、該加熱器において、低温熱源から供給された熱媒で加熱して前記温水を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン発電システム。
【請求項3】
前記加熱器が熱交換器であって、加熱側流体として150℃以下常温以上の温度を有する水またはガスを供給して前記温水を生成することを特徴とする請求項2記載の蒸気タービン発電システム。
【請求項4】
前記加熱側流体は、セメント焼成プラントにおけるサスペンションプレヒータ(PH)で発生してボイラまたは熱交換器で熱回収した後の排ガス、エアクエンチングクーラー(AQC)で発生してボイラまたは熱交換器で熱回収した後の排ガス、およびAQCの低温部で発生した排ガスのいずれかを含むものであることを特徴とする請求項3記載の蒸気タービン発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96244(P2013−96244A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237185(P2011−237185)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)