説明

蒸気洗浄機用排気処理装置

【課題】 蒸気洗浄機で発生する排気から、蒸気や空気と油脂や異物を分離し、液体や固体は廃棄し、気体は循環したいところであるが、サイクロンフィルターを用いると、ブロアの動力が大きく、エネルギー効率が悪い上に、蒸気を用いると、循環する気体の温度が高くなり、システムに冷却器を入れる必要がある。
【解決手段】 ブロアとサイクロンフィルターと冷却器を一体にしたコンパクトな排気処理装置にまとめた。この装置は、回転翼車によって遠心力によって昇圧され、循環のための圧力を発生させるとともに、回転翼車が作る高速の旋回流を減速したり、圧力回復させずに、高速流のままサイクロンフィルターに流し、遠心分離を行うので、エネルギー効率がよい。このとき、排気の冷却を行うので、油脂や異物が核となり凝縮が起こるので、効率よく油脂や異物の分離を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
蒸気洗浄機において、機械装置や電気部品の洗浄を行うとき、高温高圧の蒸気により、表面に付着した油脂や異物が吹き飛ばされるが、蒸気および蒸気が巻き込んだ空気と、油脂や異物を含んだ排気が発生するが、ブロアとサイクロンフィルターと冷却器を1台にコンパクトにまとめ、排気の中から油脂分や異物を効率よく分離除去し、クリーンな蒸気や空気をクリーンベンチに戻し、再使用するようにした蒸気洗浄機用の排気処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0001】
蒸気洗浄機を用いて、機械部品や電気部品を洗浄するとき、高温高圧の蒸気噴流を吹き付けると、簡単に表面に付着した油脂や鉄粉などの異物は除去されるが、蒸気や蒸気が巻き込んだ空気の排気が発生し、この中から油脂や異物を分離しなければならない。そのためには、いろいろな装置や設備が用いられているが、 従来から一般に利用される簡易クリーンベンチと、その排気装置の例を図1、図2に示す。
【0002】
図1、図2において、クリーンベンチ103の上部にカバー106を取付け、周囲は雰囲気空気が入らないような囲いをし、通常1箇所、作業者の入口104が設けられている。洗浄の対象であるワーク115もここから搬出入される。カバー106の上部に空気取入れ口107があり、ここの空気を、フィルター105を通してクリーンベンチ103の中に送り込む。クリーンベンチ103の中に、作業台116を入れ、この上にワーク115を載せ、蒸気洗浄をする。作業台116は、フードになっており、蒸気の排気と洗浄によって除去された油脂や異物がいっしょに排気管108、ブロア109により吸引される。排気は、この例では、サイクロンフィルター112に送られ、ここで軽い蒸気と重い油脂や異物に分離される。蒸気は上部の管113より、大気に、油脂や異物は一部蒸気や空気とともに、下部のドレン管114より排出される。排気は、蒸気が混じっているため、温度が高くなるので、クリーンベンチは戻されることはない。
【0003】
サイクロンフィルター112は、断面を図3、図4に示す。ブロアの吐出管110は、サイクロンフィルター112の入口管111に連結しており、入口管111は、図4に示すように、サイクロンフィルター112に対し、接線方向に高速のまま吹き込まれるような構造になっている。サイクロンフィルター112の中では、旋回流となり、自由渦の理論により、直径が小さくなるに従い、旋回速度が速くなり、気流に含まれている重質の油膜や異物は、外周側に集められ、自重により下方に落下していく。中心部の気流は、出口管120を通り、排気管113より排気される。
【0004】
以上のように、クリーンベンチ103の中で生じた油脂や異物を含んだ蒸気排気は、ファン107やブロア109により、空気とともにサイクロンフィルター112を経て、排気される。
【特許文献1】 特許公開2006−88050
【特許文献2】 特許公開平11−5009
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クリーンベンチ103の蒸気洗浄機の排気を、すべてブロア109により昇圧し、サイクロンフィルター112を通して、油脂や異物に分離するとき、いくつかの問題がある。第1は、サイクロンフィルター112の入口管111では、気流の速度を上げるため、絞る必要があり、このための圧力損失が大きく、フロア109の動力が大きくなる。次に、蒸気排気の多くは空気であるが、この中に水蒸気が含まれており、サイクロンフィルター112で処理すべき気体の量が多く、十分な処理が困難な上、サイクロンフィルター112の下部の油脂や異物排出管114は、固形物が付着して流動せず、度々清掃する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
蒸気洗浄機のクリーンベンチからの排気の中には、当然のことながら水蒸気が多量に含まれているので、これを冷却することにより、油脂や異物が核になり、凝縮するので、効率よく分離でき、また水分により流動性がよくなり、効果的な分離除去ができる。
【0007】
サイクロンフィルター112では、ブロア109で昇圧された気体を入口管111で絞って加速しているため、エネルギー的に圧力変換、速度変換を繰返していることになる。これに対し、本発明では、排気処理装置の中で、回転翼で気体を旋回せしめ、高速化した気体をそのままサイクロン式の筒に入れ、分離を行わせることにより、非常に高速の気流を分離に活用することができる。
【0008】
廃棄処理装置の中で冷却し、排気の中から、水分、油脂分、異物を除去するので、このガスを再度クリーンベンチに戻し、循環させることにより、廃棄処理装置を繰返し通過させることになるので、排気に含まれる油脂や異物の量を非常に少なくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
排気を冷却することにより、油脂や異物を核とした凝縮を行わせることにより、効率よく分離するとともに、水分により流動性をよくして、油脂や異物を流し、除去できる。また、水滴に捕集され、再飛散が少なくなり、効率よく廃棄処理ができる。
【0010】
廃棄処理装置の中で、排気の旋回流加速と昇圧を行い、高速気流はそのままサイクロンフィルターの旋回流とするため、効率よく高速流が利用できる。昇圧した圧力で、配路の流動を行わせるため、全体としてのエネルギー効率をよくすることができる。
【0011】
排気処理装置の分離効率を良くすることができると、排気の多くをクリーンベンチに戻し、再循環させることが可能となり、排気を何度も排気処理装置の中を通すことにより、油脂分や異物をほぼ完全に除去できるようになり、外気に対しても、油脂や異物の飛散を防ぐことができる。クリーンベンチの外側の雰囲気の汚染度は、フィルターなどを用いていても、クリーンベンチ内側の汚染度と深い関係にあり、雰囲気の汚染度も低くすることは、クリーン度を上げるためには重要である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明を実施するための形態について、図5、図6、図7、図8に示す図で説明する。図5、図6は、クリーンベンチ3と、排気処理装置9およびその配管関係を示したものである。クリーンベンチ3の周囲を囲み、上部カバー6を設け、この上にファン7を取付ける。ファン7で外気雰囲気の空気を吸引し、フィルター5を通してクリーンベンチ3内に送る。クリーンベンチ3内の圧力は、雰囲気よりわずかに高くし、雰囲気が周囲のすきまよりクリーンベンチ3内に入らないようにする。クリーンベンチ3の入口には、カーテン4があり、ここより、作業者17やワーク18が出入する。クリーンベンチ3の中には、作業台16があり、この上にワーク15を置いて、蒸気ガン18により、蒸気を噴射し、洗浄を行う。作業台16は、図には表現されていないが、金網が張ってあり、その下はフードになっており、ここより蒸気排気や除去された油脂、異物が排気処理装置9により、吸入管8を介して吸引される。
【0013】
廃気処理装置9は、図7、図8に示すような構造になっている。まず構成であるが、図7の回転体の中心部に高周波モータ22があり、これを取り巻くように三重の円筒構造になっている。高周波モータ22は、円筒に取付けられたフランジに締結され、主軸には回転翼車21が締結されている。高周波モータ22には、端子39から動力線40が接続され、排気管33の内側を通り、端子41に接続されている。回転翼車21は、吸入口24より、クリーンベンチの排気を吸入し、サイクロン室25に流す。このとき、高速回転する回転翼車21の中を通って来た流体は、回転翼車21の外周速にほぼ等しい速度の旋回速度を有しているが、この流速を減速させないように、サイクロン室25に導く。具体的には、流路の断面積の変化を少なくし、速度が変化しないようにする。ブロアや圧縮機と根本的に異なる点は、圧力を回復するためのボリュートやデフォーザを設けないことである。流路は、サイクロン室25から、図で右方向につながっており、直径が小さくなっている。ここに穴あきコーン27があり、遠心力で重たい流体がこの穴を通って、排出室34に捕集される。サイクロン室25からの軽質の流体は、直径の小さくなる方向に流れる。軽質流体でも旋回流であるため、遠心力の分だけ圧力が小さくなり、排気穴30を通って、排気室31、排気管穴32を経て、排気管33に導かれる。
【0014】
サイクロン室25の外側は、冷却水室26となっており、ここに注水口36から注水され、排水口37より排水される。この冷却水により、サイクロン室25の外側を冷却することにより、排気に含まれている水蒸気を凝縮し、水にする。排気に分散している油脂や異物が核となり、凝縮するので、油脂や異物を分離除去するのに有効である。サイクロン室25の外周部に、凝縮水とともに油脂や異物が集められ、軸方向の流体の流れにのって、図で右方向に流される。水分や油脂や異物は、穴あきコーン27を通って、排出室34、排出口35に流れる。穴あきコーン27の穴を通過するときに、旋回速度はほとんどなくなり、回転翼車21が発生させた遠心力による静圧によって流される。一方、軽質の流体は、穴あきコーン27の穴を通らずに、図の右方に流れる。旋回流れの直径が小さくなるとき、重質成分が一層分離され、油脂や異物の少ないクリーンな流体だけが、排気穴30を通り、排気室31、排気管穴32を経て、排気管33の方に流れる。排気孔30のある位置の直径や排気管32の外径は、回転翼車21の外径より小さいため、サイクロン室25やそれより後流に当る流路では、旋回する流体の遠心力のために圧力が低くなるが、排気穴30を通過するときには、旋回力はほとんどなくなるので、回転翼車21が発生させる静圧が大きいため、半径の小さい流路を流体が流れていくように設計される。
【0015】
図5、図6に戻って、排気処理装置9を出た流体は、クリーンベンチ3の循環流上部カバー14に送られ、フィルター5を通ってクリーンベンチ3の中に送られる。排気処理装置9の油脂や異物の排出口35の流体は、サイクロンフィルター11を介して、液体分と気体分に分けられ、気体は外気に放出される。
【0016】
クリーンベンチ3の中で蒸気洗浄を行うと、蒸気は高温であり、蒸気には潜熱があるため、排気には熱量を持っている。しかし、これを排気処理装置9で冷却することにより、水蒸気は凝縮し、水滴になるが、このとき油脂や異物が核となるため、気体中のこれらの異物を重たくし、排気処理装置9のサイクロン室25では、確実に外筒側に集められ、排出口35に導かれる。蒸気を冷却することにより、クリーンワーム3へ再循環しても温度上昇は抑えられる。再循環により、排気を外気に巻き散らさないだけでなく、排気を何度も排気処理装置9を通すことにより、循環流体の汚染度を下げることができる。
【0017】
排気処理装置9には、作業台16からの排気を吸引し、回転翼21で旋回力を与えられた排気を圧力回復せずに、そのままサイクロン室25で遠心分離するので、排気の持っているエネルギーを効率よく活用することができる。冷却をサイクロン室25で行うが、その効果は前述のとおりである。
【0018】
蒸気洗浄機を用いるクリーンベンチ内の排気処理装置において、回転翼車21が作る高速旋回流を、圧力回復のための減速をさせず、そのままサイクロン室25に導き、高速の旋回流を簡単に効率よく作り、サイクロンフィルター効果を利用して、油脂や異物を分離することにより、第1にエネルギー効率のよいサイクロンフィルターを構成することができる。
【0019】
排気処理装置のサイクロン室25の外側に水冷室26を設けることにより、サイクロン室25の中の流体を冷却し、この中に含まれている水蒸気を凝縮すると、油脂や異物が核となり、水滴が成長するので、油脂や異物を分離するのに効果的である。
【0020】
蒸気洗浄機の排気であるが、冷却し、油脂や異物を除去することができるので、ここで発生する排気は大気へ放出せず、クリーンベンチに戻す、いわゆる再循環させることにより、除去しきれていない異物なども、排気処理装置を何度か循環している間に、ほぼ完全に除去することができる。再循環方式は、一見、残留している異物をクリーンベンチに戻すので、悪い影響を及ぼすように見えるが、微細な異物やチリを大気放出してしまうと、除去することは困難であり、これが回り回ってクリーンベンチに戻って来ることになるので、早い段階で捕集し、雰囲気のクリーン度を上げることが重要であり、このために、本発明の凝縮機構を応用した効果的分離を行う排気処理装置が有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来から利用されている蒸気洗浄機を用いたクリーンベンチとその排気装置の説明用上面図
【図2】 図1のA−A断面と、矢視B−Bの図で、クリーンベンチと排気装置の説明図
【図3】 図1、図に示されているサイクロンフィルターの断面図
【図4】 図3のX−X断面図
【図5】 本発明の排気処理装置を用いた蒸気洗浄機用のクリーンベンチ説明用上面図
【図6】 図5のC−C断面と矢視D−Dを示した説明図
【図7】 本発明の蒸気洗浄機用排気処理装置の断面図
【図8】 図7の矢視Eの立面図
【符号の説明】
図1、図2、図3、図4において、
101 クリーンベンチ
102 ファン
103 囲い
104 クリーンベンチ入口
105 フィルター
106 クリーンベンチカバー
107 吸入ダクト
108 吸入管
109 ブロア
110 吐出管
111 入口管
112 サイクロンフィルター
113 排気管
114 排出管
115 ワーク
116 作業台
117 作業者
118 蒸気ガン
119 蒸気ホース
120 排気筒
121 サイクロン室
122 排出室
図5、図6において、
1 クリーンベンチ
2 ファン
3 囲い
4 クリーンベンチ入口
5 フィルター
6 カバー
7 吸入ダクト
8 吸入管
9 排気処理装置
10 排出管
11 排出用サイクロンフィルター
12 排出用排気管
13 サイクロンフィルター排出管
14 循環ガスカバー
15 ワーク
16 作業台
17 作業者
18 蒸気ガン
19 蒸気ホース
図7、図8において、
20 固定脚
21 回転翼車
22 高周波モータ
23 吸入管
24 吸入管
25 サイクロン室
26 冷却水室
27 穴あきコーン
28 内筒
29 コーン
30 穴あき板
31 排気室
32 排気管穴
33 排気管
34 排出室
35 排出口
36 冷却水入口
37 冷却水出口
38 ウェアリングシール
39 端子
40 動力線
41 動力端子
である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三重の円筒形より構成され、一番内側の円筒の中に高速回転するモータを取付け、この主軸に放射状に複数の羽板を取付けた回転翼車を取付け、一番目の円筒と二番目の円筒の空間をサイクロン室とし、この部屋と回転翼車外周部を回転翼車からの旋回流が減速しないように、ほぼ流路面積が等しくしたリング状の流路にし、二番目の円筒の外側と三番目の円筒の空間は、冷却水室とし、サイクロン室の流体の冷却ができるようにするとともに、サイクロン室の下流側外周部円筒部材には、排出室を設け、その入り口部には、穴のあいたコーン状の部材を取付け、外周側の流体がコーン状の部材の穴を通って排出室に流れることにより、旋回成分がやわらげられ、自重によって、下方に流れるような広さの空間にし、サイクロン室下流には、直径が小さい部分に排気室を設け、遠心力で分離された軽質の気体成分が穴あき板の穴を通ることにより、旋回成分は弱められ、排気室および排気管の穴を通り、排気管に流れるように流路が構成されたことを特徴とする蒸気洗浄機用の排気処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−23511(P2008−23511A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222756(P2006−222756)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(592150608)小椋鉄工株式会社 (11)
【Fターム(参考)】