説明

蒸気洗浄機用貫流ボイラ

【課題】
給水ポンプや電気ヒータをON/OFFする簡単な制御で、安定した運転はもとより、蒸気量の変化に対しても蒸気圧力、蒸気温度の変化の小さい蒸気品質のよい蒸気を作ることのできる蒸気洗浄機用の多管式貫流ボイラを提供する。
【解決手段】 1個の気水分離器に複数個の貫流ボイラ1を有する蒸気洗浄機用の貫流ボイラ装置において、気水分離器2底部より、循環水管25、分岐管26と分配管3を経て、それぞれの貫流ボイラ給水口に連結される循環水系統の分岐管26より上流で気水分離器2の下流に絞りを設け、かつ、給水ポンプ5の吐出管を気水分離器2の中央で、自由液面より下方に接続したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
給水ポンプや電気ヒータをON/OFF制御のような簡単に制御ができ、安定した運転ができるとともに、蒸気圧力、温度の変化の小さい品質の良い蒸気を発生させる蒸気洗浄機用貫流ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0001】
貫流ボイラは、給水した水を貫流ボイラ管の中で蒸発させ、蒸気として貫流ボイラ管の外に吐出させるものであるため、容積が小さく、安全上は有利であり、広く利用されている。しかし、このような貫流ボイラは、給水量と蒸気量が等しくなるように制御する必要があり,給水量および入熱量を比例制御する必要があり、システムが複雑になるという欠点がある。
【0002】
これに対し、図1に示す貫流ボイラにおいては、貫流ボイラから出て来る蒸気と水分を一旦気水分離器に導き、ここで蒸気と水を分離し、蒸気を吐出する一方、水は、貫流ボイラ管入口に戻す自然循環方式の貫流ボイラが考え出された。
【0003】
図1により、従来用いられている蒸気洗浄機用の貫流ボイラの構造と作用について説明する。中央の気水分離器102に複数の貫流ボイラ101が取付けられ、この貫流ボイラ101の上部は、気水分離器102に対し、後述する液面計116との関連で、自由液面が来るような高さで接合されている。一方、下部は、気水分離器102底部より分岐管104を経て、循環水管103が接合されている。分岐管104には、給水ポンプ105の吐出管からの管が接合され、ここに給水される。貫流ボイラ101の中には、電気ヒータ106が装着されている。気水分離器102の上部より2個の液面計115、116が取付けられ、一方が液面の上限を計るもの、もう一方は下限を計るものである。この蒸気洗浄機用の貫流ボイラでは、液面計115は、電気ヒータ106が気相部に出ないように、液面計115が液面を検出していないときは、電気ヒータ106のスイッチが入らないようなインターロック回路の信号に用いられている。また、上限液面計116が液面を検出するまで、給水ポンプ105が運転される。そして、液面計116が一旦液面を検出すると、給水ポンプ105は停止するが、一定時間経ると、自動的に給水ポンプ105のスイッチが入るように制御される。
【0004】
気水分離器102下部の分岐管には、圧力スイッチ117への気圧管が接続されている。この圧力スイッチ117は、気水分離器102の圧力が所定の圧力より低いときは、電気ヒータ106をONにし、所定の圧力に達するとOFFとする機能を有している。気水分離器102の上部には2個の分岐があり、一方には安全弁108が接続され、他方は蒸気の吐出弁109が取付けられている。安全弁108の設定圧力は、圧力スイッチ117よりやや高い目かつ法定の圧力を越えないようにセットされる。吐出弁109より、エジェクター112のドライブガスとし、気水分離器102の一部液相部より導かれる熱水弁111を介してエジェクター112に導かれ、噴射する蒸気に熱水を混合させることができるようになっている。また、蒸気エジェクターノズル113は、洗剤などの助材が注入できるように、助材タンク122よりエジェクターノズル113に導かれ、前述の蒸気をドライブガスとしたエジェクターを構成している。
【0005】
蒸気洗浄機を使用するときは、メインスイッチ18をONにすると、下限液面計115が液面を検出していないときは、給水ポンプ115が入り、給水を開始する。そして、液面が上昇し、下限液面計115が液面を検出すると、電気ヒータが入り、加熱される。水温が上昇すると、貫流ボイラ101の水の比重が、気水分離器102の水に比べて小さくなり、自然対流がはじまると、貫流ボイラ101内の水が気水分離器102に流れ、下部より、気水分離器102の低い温度の水が流入してくる。貫流ボイラ101で沸騰が始まると、ボイドによる見かけ上の比重は一層小さくなり、対流による循環量は多くなる。沸騰中は、循環する水のため、貫流ボイラ101の中の水も、気水分離器102の中の水も、ほぼ飽和温度になる。蒸気の使用量が少ないときは、圧力上昇し、これに伴い、飽和温度も上昇していく。そして、所定の圧力になると、圧力スイッチ117が作動し、電気ヒータ106のスイッチ117でこれをOFFにするので、圧力や温度の上昇が止まる。
【0006】
蒸気を使用し、気水分離器102の上限液面計116が液面を検出しなくなって一定の時間が経つと、給水ポンプ105のスイッチ121が入る。給水が始まって、液面が上昇し、液面を検出すると、給水ポンプ105はOFFとなる。このように、給水ポンプ105も電気ヒータ106も、ON/OFFの簡単な制御で安定した運転ができることが、この貫流ボイラの大きな特徴である。
【特許文献1】 特願2005−166111
【特許文献2】 特開2002−250504
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
循環量の多い貫流ボイラは、貫流ボイラ管の内部も気水分離器の内部も、ほぼ飽和温度になっている。気水分離器の液面が下がり、給水ポンプが運転され給水が始まると、貫流ボイラや気水分離器の温度が低下し、その結果、蒸気圧力が低下する。このように、給水ポンプのON/OFFに応じて、蒸気圧力が変動するため、蒸気洗浄機にとっては、洗浄性能にムラが出るという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
気水分離器の中央部で、自由液面より下の液相部に給水ポンプ吐出管の冷たい給水を注入し、気水分離器の中で給水加熱をし、気水分離器から貫流ボイラの給水口への循環量を絞り、ほぼ一定の給水が供給されるようにする。循環水量は、給水量の1.5倍程度とし、絞りを分岐管の前に入れる。
【0009】
その結果、気水分離器の自由液面近くでは飽和温度となっているが、気水分離器の下部では循環水量が少ないため、熱成層化し、100℃前後の温度の水が滞流している。この水を貫流ボイラに分岐し、注水される。
【発明の効果】
【0010】
循環量が少ないため、貫流ボイラ内で給水された水の多くが蒸気になり、吐出されるが、吐出される蒸気の約30%が、熱水のまま気水分離器に流入し、ここで分離され、循環水となり、貫流ボイラに流れていく。
【0011】
貫流ボイラの中は、飽和温度になっており、また、気水分離器の自由液面近傍は飽和温度の高温水が存在しているため、蒸気使用量が変化し、熱水が再蒸発して蒸気として供給されるため、蒸気量の負荷変動に対し、蒸気圧力の変化は小さい。
【0012】
一方、液面が低下し、給水されるときも、気水分離器の液相の中央部に給水されるため、気水分離器内の温度は熱成層化したまま給水の予熱が行われ、貫流ボイラへ分岐し、注入されるまでには、多少の時間があるので、貫流ボイラの給水温度も急に低下することはなく、蒸気圧力、温度には、ほとんど変化がない。
【0013】
以上のように、貫流ボイラにおいて給水ポンプや電気ヒータをON/OFFするだけの簡単な制御で安定した運転ができるとともに、蒸気負荷変化に対しても蒸気圧力や蒸気温度(飽和温度)は大きく変動することなく、質のよい蒸気が得られるようになる。
【0014】
また、蒸気洗浄機全体が転倒するといった不測の事態が生じたときは、気水分離器の中に飽和温度より低い温度の水が保有されているため、これの熱成層がくずれ、自由液面近くの熱水を混合するため、一瞬に圧力が低下し、安全上、非常に好都合である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明を実施するための形態について、図2に基づいて説明する。図2に示す実施例では、1個の気水分離器2に対し、2個の貫流ボイラ1が取付けられている。貫流ボイラ1の上部エルボで、気水分離器2に接合されている。貫流ボイラ1の中には、電気ヒータ6が取付けられ、電磁スイッチ17によってON/OFFされる。気水分離器2の底部には、循環水管27を経て絞り26が接続され、その下流側に分岐管27が接合され、これより、2個の貫流ボイラ1の給水口に接続されている。
【0016】
給水タンク14から給水ポンプ5に吸入配管され、吐出管は、気水分離器2の中央で自由液面より下になる位置に接続され、ここに給水される。給水ポンプは電動機で駆動され、電磁スイッチ21によって、気水分離器の液面計上限16の信号に基づき、ON/OFFされる。
【0017】
気水分離器2の上部には、安全弁8、吐出弁9が接続されている。蒸気は吐出弁9を経て、エジェクター12を経て、ノズル13に連結している。ノズル13から蒸気を吹き出し、洗浄に利用されるが、この実施例では、気水分離器の液相部から熱水弁11を経て、前述のエジェクター12に導かれており、ノズル13の蒸気に熱水を混合して噴出できるようになっている。また、ノズル13はエジェクターノズルとなっており、タンク22の助材を吸い上げ、ノズルから蒸気をいっしょに噴出できるような構造となっている。熱水弁11や吐出弁9は、ノズル13に付いているスイッチによって遠隔開閉できる。
【0018】
この実施例では、メインスイッチ18を入れると、給水ポンプ5が運転され、気水分離器2の液面計下限15が水面を検出すると、ヒータ6のインターロックが外され、圧力スイッチ17の圧力が所定の圧力より低いときは、スイッチ17がONとなり、ヒータ6に電気が送られる。温度が上昇し、所定の圧力になるとヒータのスイッチ17がOFFとなる。蒸気を使うと、圧力が低下するので、再びヒータのスイッチ17がONとなり、貫流ボイラ1で蒸気が作られる。
【0019】
実施例では、液面計上限16が液面を検出したら、給水ポンプ5を止めるとともに、一定時間が経過すると、自動的に給水ポンプ5をONにする。一般には、液面計上限でOFFにし、液面計下限でONにする方法が取られるが、液面の変化を小さくし、できるだけ蒸気温度の変化を小さくするために、このような制御方式にした。
【0020】
このような装置を運転しているときの絞りの作用を説明する。貫流ボイラ1では、通常の運転中は沸騰が生じており、エルボ管部では、ボイド率30%程度になっていると推定される。この分、貫流ボイラ1内水の見かけの比重が小さくなっており、貫流ボイラ下部の給水口の圧力は低くなっている。このため、循環水管25、絞り26、分岐管27、分配管3を経て、循環水が流入する。給水は、気水分離器2の中央部に注水されるので、気水分離器2の下部の温度はやや低く、100℃前後である。給水が予熱されて、分岐管27を経て供給される。絞りで循環水量が絞られているため、貫流ボイラ1に入る水量の変化は小さく、貫流ボイラ1の出口におけるボイド率が通常の運転で30%程度となろため、負荷変化に対し、ボイド率が増減しても、蒸気圧力や温度の変化は小さく、また、給水ポンプ5のON/OFF、ヒータ6のON/OFF時にも、蒸気圧力や温度変化が小さく、蒸気の品質がほぼ一定で安定している。蒸気洗浄機では、蒸気の品質の安定は非常に重要であり、このようにすることにより、安定した洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来型の蒸気洗浄機用の貫流ボイラを示したもので、気水分離器の底部には、循環水管、分岐管、分配管があるが、絞りは入れられていない。
【図2】 本発明の蒸気洗浄機用の貫流ボイラを示したもので、気水分離器2の底部に循環水管、絞り、分岐管、分配管が取付けられている。また、給水ポンプの吐出管は気水分離器2の中央部で自由液面より下に接合されている。
【符号の説明】
図1において、
101 貫流ボイラ管
102 気水分離器
103 循環水管
104 貫流ボイラの蒸気出口管エルボ
105 給水ポンプ
106 電気ヒータ
107 液面検出器取付管
108 安全弁
109 吐出弁
110 温水吐出口
111 温水吐出弁
112 温水混合器
113 蒸気洗浄機用蒸気ノズル
114 給水タンク
115、216 液面検出器
117 圧力スイッチ
118 電源のメインスイッチ
119 ノズルガンに設けられた蒸気弁スイッチ
120 ノズルガンに設けられた温水弁スイッチ
121 給水ポンプの電磁スイッチ
122 補助タンク
123 注水弁
124 注水口
である。図2において、
1 貫流ボイラ管
2 気水分離器
3 分配管
4 貫流ボイラの蒸気出口管エルボ
5 給水ポンプ
6 電気ヒータ
7 液面検出器取付管
8 安全弁
9 吐出弁
10 温水吐出口
11 温水吐出弁
12 温水混合器
13 蒸気洗浄機用蒸気ノズル
14 給水タンク
15、16 液面検出器
17 圧力スイッチ
18 電源のメインスイッチ
19 ノズルガンに設けられた蒸気弁スイッチ
20 ノズルガンに設けられた温水弁スイッチ
21 給水ポンプの電磁スイッチ
22 補助タンク
23 注水弁
24 注水口
25 循環水管
26 絞り
27 分岐管
である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに電気ヒータを内蔵した複数個の貫流ボイラの上部を1個の気水分離器の上部に取付け、貫流ボイラの蒸気が気水分離器に流入するようにし、気水分離器の液面の上限を検出できる液面計と、これによって給水ポンプを制御するための電磁スイッチなどの装置と、気水分離器の圧力を検出し、これによって電気ヒータを制御するための電磁スイッチなどの装置と、気水分離器下部には、循環水管と分岐管と分配管と、それぞれ下部の給水口に、分配管で連結した蒸気洗浄機用の貫流ボイラにおいて、気水分離器の下部と分岐管の間に絞りを入れ、かつ、給水ポンプ吐出管からの給水の注水口を気水分離器の中央部で、自由液面より下の液相部に設けたことを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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