説明

蒸気洗浄用助剤エジェクターノズル

【課題】 蒸気洗浄機で、温水や洗浄剤をエジェクター式ノズルで噴射すると、洗浄効果が向上することが知られているが、蒸気の流速が大きいのに、液滴の流速が大きくならず、洗浄効果があるところからは大きくならないという欠点があった。
【解決手段】 エジェクター式蒸気ノズルにおいて、同心二重管式のエジェクターノズルにし、中心部に液を噴出させ、駆動蒸気を外側リング状ノズルより噴射させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蒸気洗浄用のノズルで、蒸気を駆動ガスとし、助剤を被駆動液体とするエジェクターノズルに関する。
【技術背景】
【0002】
従来一般には、流速が早く、ノズル口径が相対的に小さくなる駆動ガスノズルを、二重管ノズルの中心部にし、被駆動液は外側にする。その文献を下記に示す。
【特許文献1】 特開2001−280300
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
蒸気と水を体の管で流すとき、蒸気の速度が非常に早いときは、図3に示すように、管内の空間に存在する水あるいは水滴は、下流に流れている間に管壁に捕捉され、蒸気に駆動されるが、粘性が大きいことから、蒸気とは比べものにならないくらい遅い速度で流れ、管端では、それらが水滴となり、飛び出していくが、蒸気の速度分布から、速度の低い蒸気に駆動されるため、水滴の速度は大きくならない。
【0004】
図4は、従来一般に利用される蒸気駆動のエジェクターの概念図であるが、基本的には、外管201に接して液体が駆動され、流れるので、図3と同様、液体は、蒸気速度に比べて、小さな速度流れる。このため、蒸気洗浄においては、水滴が蒸気に駆動され、大きな速度で飛来し、対象物に衝突して、大きな洗浄パワーが出ることが期待されているが、このようなエジェクターでは、蒸気洗浄のパワーが十分発揮できないという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
図5は、本発明の原理説明図である。駆動ガスとしての蒸気を二重管ノズルの外側にし、助剤などの液体の被駆動流体を中心部より供給するようにする。
【発明の効果】
【0006】
中心部の液滴は、ノズル出口部で、駆動ガス中に浮遊することになり、ほとんど音速の蒸気に駆動され、非常に高い速度に加速され、洗浄力を著しく大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1、図2は、発明を実施するための形態を示したもので、これにて詳細説明をする。1は蒸気ノズルの本体、2は助剤ノズル、3は蒸気供給管コネクタ、4は蒸気供給管、5は分配溝、6は蒸気噴射口入口、7は噴射口、8は助剤口、9は助剤通路、10は助剤噴出口、11は蒸気通路、12は助剤噴出口の同心保持材、13は溶接接合部である。
【0008】
水、温水、あるいは、洗浄剤の水溶液などの助剤は、助剤口8に供給される。ここの圧力は、ほぼ大気圧で、図示されていないが、低圧の配管で、流量調整弁を経て、助剤タンクに連結される。通常は、加圧用のポンプなどは設けない。助剤口8の助剤は、通路9を経て、噴出口10に導かれる。噴出口10で、蒸気に開口されるまでは、これらの通路9は、蒸気の部屋とは、気密が保持されるようにする。
【0009】
一方、蒸気は、蒸気供給管4に設けられたコネクター3に、図示されていないが、蒸気ストップ弁や圧力調整弁を経て、蒸気発生機に連結される。そして、いったん、蒸気ノズル本体1の中の助剤ノズル2の外側に加工された分配溝5に入り、複数の蒸気通路11を経て、蒸気噴射口入口6に導かれる。蒸気供給管4や、蒸気通路11、蒸気噴射口入口6などの流路面積は、噴射口7の流路面積より十分大きくする。
【0010】
蒸気ノズル本体1に対し、助剤ノズル2は、同心保持材12により、同心に保持する。そして、助剤ノズル2の噴出口10の外径と蒸気ノズル本体1の噴射する側の内径で、リング状の蒸気の噴射口7を構成する。この噴射口7は、噴射口入口6で、最も流路面積が小さく、助剤噴出口10の外径部のテーパ、あるいは、蒸気ノズル本体1の噴射口7の部分の拡大テーパにより、流路面積が等しいか、大きくなるようにする。噴射口7の中心部に同心を保持し、助剤噴出口10が来るようにする。
【0011】
助剤を助剤口8に供給した状態で、同時に、蒸気供給管コネクタ3、そして、蒸気供給管4に高温高圧の蒸気を供給すると、蒸気は、蒸気噴射口入口6で絞られ、噴射口7に流れると、音速またはそれ以上に加速され、勢い良くノズル外に噴射される。このとき、噴射口7の出口近くでは、膨張したところなので、圧力は大気圧またはそれより低くなっている。助剤噴出口10で、蒸気流路が拡大することになり、ここに負圧が発生する。したがって、助剤噴出口10から、助剤が吸引され、蒸気とともに噴射される。噴出した助剤は、最初は低い速度であるが、浮遊しているので、何の抵抗もなく、高速度の蒸気に衝突し、微粒化されるとともに、加速される。そして、非常に高速度の微粒子となる。
【0012】
蒸気噴射口入口6では、100℃を越えているので、ノズルの噴射口7を出た蒸気は、いったんは、大気圧で過熱蒸気になることもあるが、蒸気に含まれている水分の再蒸発や、周囲の空気による冷却などにより、飽和温度になり、安定する。したがって、噴射された蒸気の中に存在する助剤は、蒸発することなく、ほとんどが液体のまま存在している。このため、蒸気によって加速された助剤に、洗浄の対象物に衝突すると、微細粒子がくずれるときにキャビテーションを起こしたりして、大きな洗浄力を発揮する。このような洗浄力は、微粒子の速度が大きいとき、一層大きくなるので、本発明のノズルでは、非常に大きな洗浄力を発生させることができる。
【実施例】
【0013】
図6、図7は実施例の説明図である。これについて、実施例を詳細説明する。図6、図7で、1101は蒸気ノズル本体、1102は助剤ノズル、1103は蒸気ノズル部材、1104は蒸気供給口、105は分配室、1106は蒸気噴射口入口、1107は噴射口、108は助剤口、1109は助剤通路、1110は助剤噴出口、1111は蒸気通路、1112は助剤ノズルの同心保持材、1113は助剤ノズル1102と蒸気ノズル部材1103の接合部である。
【0014】
細いパイプをへの字に曲げた助剤ノズル1102に、助剤ノズル同心保持材1112を接合し、これを蒸気ノズル部材1103に設けられた穴に挿入し、組立て、これに蒸気ノズル本体1101の内側に、助剤ノズル102と助剤ノズル同心保持材1112を挿入することにより、組立てられる。そして、蒸気ノズル本体1101と蒸気ノズル部材1103、助剤ノズル1102と蒸気ノズル部材1103を、溶接などの手段で接合した上で、助剤口1108を接合して作られる。この結果として、蒸気ノズル本体1101に対し、同心状に助剤ノズル1102が取付けられ、蒸気噴射口入口1106、噴射口1107が、リング状の流路が構成される。
【0015】
助剤は、助剤口1108より、通路1109を経て、助剤噴出口1110に導かれる。蒸気は、蒸気供給口1104より、分配室1105、通路1111を経て、蒸気噴射口入口1106から、噴射口1107に導かれる。このとき、蒸気噴射口入口1106の流路面積より、蒸気供給口1104や、通路1111の流路面積を十分大きくしておく。噴射口1107は、蒸気ノズル本体1101の、噴射口1107部の内径をテーパ状にするか、または、助剤ノズル1102の外周をテーパ状にするか、あるいは、その両方をして、流れに従って、流路面積が広くなるようにする。
【0016】
助剤口8は、図示されていないが、流量調整弁を介して、助剤タンクに連結される。また、蒸気供給口1104には、流量調整弁、ストップ弁を経て、蒸気発生機に連結され、必要に応じて、高温高圧の蒸気が供給される。
【0017】
助剤口1108に助剤を供給し、同時に、蒸気供給口1104に高温、高圧の蒸気を供給すると、蒸気は、分配室1105、通路1111を通って、蒸気噴射口入口1106に、そして、噴射口1107より噴射される。このとき、蒸気噴射口1106の流路面積が最も小さいので、ここで絞られ、音速になり、噴射口1107で膨張して、より一層高い速度になり、噴射される。噴射口1107の中心部にある助剤噴出口1107出口付近は、蒸気の噴流が拡大する部分にあり、負圧となるため、助剤噴出口1107より吸引され、流出する。このとき、高速の蒸気との摩擦により、微粒化され、浮遊し、そして、周囲の蒸気に加速される。浮遊している粒子は、蒸気にのって、非常に高い速度となり、洗浄対象物に衝突する。
【0018】
蒸気の洗浄は、蒸気の凝縮や水滴の再蒸発、高速粒子の衝突によりキャビテーションやエロージョンによると言われており、粒子の速度が早いほど、その洗浄力は大きいので、本発明のように得られる高速粒子を噴射するノズルは、蒸気洗浄効果が非常に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明の実施するための形態を説明する図
【図2】 図1のA−A断面図
【図3】 本発明で、蒸気管に存在する液体の挙動を説明する図
【図4】 従来の蒸気駆動、液体被駆動のエジェクターの流体の挙動を説明する図
【図5】 本発明の基本となる外周側蒸気駆動、中心部液体被駆動としたノズルの流体の挙動を説明する図
【図6】 本発明の実施例を示す横断面図
【図7】 図6のB−B断面図
【0020】
図1、図2において、
1…蒸気ノズル本体
2…助剤ノズル
3…蒸気供給管コネクタ
4…蒸気供給管
5…分配溝
6…蒸気噴射口入口
7…噴射口
8…助剤口
9…助剤通路
10…助剤噴出口
11…通路
12…助剤ノズル同心保持剤
図3において、
101…蒸気管
102…蒸気
103…水
104…噴射蒸気
105…噴射蒸気中の水滴
【符号の説明】
図4において、
201…外管
202…蒸気管
203…液体
204…噴射蒸気
205…供給蒸気
206…供給液体
207…噴射蒸気中の液滴
図5において
301…蒸気管
302…液供給管
303…供給液
304…供給蒸気
305…噴射蒸気
306…噴射蒸気中の液滴
図6、図7において
1101…蒸気ノズル本体
1102…助剤ノズル
1103…蒸気ノズル部材
1104…蒸気供給口
1105…分配室
1106…蒸気噴射口入口
1107…蒸気噴射口
1108…助剤口
1109…助剤供給管
1110…助剤噴出口
1111…通路
1112…助剤ノズル同心保持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を駆動ガスとし、水あるいは洗浄剤の水溶液などの液体の助剤を被駆動液体とするエジェクターノズルにおいて、ノズルの中心部に助剤用の小径のノズルを設け、ノズルには、助剤流路を経て、助剤供給口に連絡するとともに、助剤ノズルを包むように、リング状の蒸気噴射口を構成し、この蒸気噴出口に蒸気通路、連通溝を経て、蒸気供給管に連結し、高圧高温の蒸気を供給するとき、外側の蒸気が駆動ガスとなり、中心部の液体の助剤を静止部材に接触することなく、噴出させるようにしたことを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−334585(P2006−334585A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194344(P2005−194344)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(592150608)小椋鉄工株式会社 (11)
【Fターム(参考)】