説明

蒸気洗浄装置用の貫流ボイラ

【課題】 簡便で小型の蒸気発生が安定な蒸気洗浄機用の貫流ボイラを提供する。
【解決手段】
複数個の貫流ボイラ管1の上部出口エルボ管を気水分離器2の中央側面に連結し、下部を気水分離器2下部のヘッダに分岐して設けられる循環水管3で、直接連結する。そして、貫水ボイラ管1の出口エルボ管内に自由液面が形成されるように気水分離器2の液面検出器16の上限位置をセットする。そして、上限を検出した後、給水ポンプをOFFにし、一定時間後、再び給水ポンプをONにするためのタイマー装置を設ける。また、この給水ポンプ5のON/OFFをカウントする装置を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
簡便に蒸気を発生し、蒸気洗浄機として活用される電気式の貫流ボイラに関する。
【背景技術】
【0001】
下記の特許文献1、特許文献2は、貫流ボイラに関するものであるが、循環水管の設置あるいは自然循環を行うという記述はない。
【特許文献1】特開平7−260101
【特許文献2】特開2002−250503
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
蒸気洗浄機では、圧力の高い蒸気が必要であるが、小型で簡便に、比較的圧力の高い水蒸気を発生させる装置に、貫流ボイラが利用される。しかし、貫流ボイラは、ボイラ水の循環が困難で、蒸気を安定的に発生させるために、循環水ポンプを入れるなどの手段が必要である。そして、電気式の貫流ボイラでは、シースヒータが発熱源として利用されるが、ヒータの長さの制限から、多管式の貫流ボイラとする必要があり、それぞれの貫流ボイラ管に循環水ポンプを設けることは、困難であり、蒸気発生の安定化のためには、複雑な電気ヒータの制御や、給水制御などが必要である。
【0003】
図1は、最も簡単な多管式の電気ボイラを示したものである。上部と下部にヘッダ102、103があり、図は電気ヒータ113を内部に有する貫流ボイラ管101 2本の2管式の貫流ボイラである。ボイラの水量を安定させるために、給水ポンプ104が下部ヘッダに給水を供給し、その全量が2本の貫流ボイラ管101を通って上部ヘッダ103に流れ、その途中で蒸気となり、上部ヘッダ103に集められる。そして、吐出弁106を通って外部に取り出される。このような構成とすることにより、供給した給水が必ず貫流ボイラを通り、上昇流となる上、ヘッダの液面検出器で液面が保持される限りは、電気ヒータ113が蒸気ゾーンにさらされることはないような構造となっている。
【0004】
しかし、下部ヘッダ102から上部ヘッダ103への流れは、2本のボイラ管101の位置関係がわずかに異なっていること、電気ヒータ102も2本あるが、これもわずかな機差があることや、ボイラ管101に取付けたときに、わずかな偏心が生じたとき、2本の貫流ボイラ管101での蒸気量にわずかな相違が生ずることがある。このようなわずかな差により、一方の貫流ボイラ管101の蒸発量が多くなると、蒸気を含んだ熱水の上昇速度が増し、上部における圧力損失が大きくなり、当該の貫流ボイラ管101への給水流量が少なくなり、一層、貫流ボイラ上部の蒸発量が増加し、蒸発量が不安定になる。そして、一定時間経た後、ボイド率の大きくなったり、平均の比重が小さくなった当該貫流ボイラ管101へは給水量が多くなり、今度は冷却が進み、蒸発量が減少し、もう一方への給水量が低下し、そちらで蒸発発生量大が進む。このように、2本の貫流ボイラ管101で、交互に蒸発量大小が継続して発生し、蒸発量発生不安定現象が発生する。これにより、ボイラ全体が揺れたり、異音を発生したりすることがある。このように、複数の貫流ボイラ管101を有する装置において、それぞれの貫流ボイラ管101で安定した蒸発量とし、液面の不安定な現象を生じないようにすることが大きな課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1個の気水分離器に、それぞれの貫流ボイラ管の蒸気出口管が連結されて構成される貫流ボイラ装置において、気水分離器の底部から、循環水管にてそれぞれの貫流ボイラ管の下部とを直接連結し、貫流ボイラ管の温度が気水分離器の水温より高い起動時や貫流ボイラ管内で沸騰が発生しているとき、見かけ上、貫流ボイラ管内の比重が小さくなり、貫流ボイラ管内に、自然に上昇流が生じ、気水分離機をとおり循環水管を流れる自然循環を起こすが、これによって、貫流ボイラ管内あるいは気水分離器の温度差を小さくする。
【0006】
このとき、気水分離器の液面計の上限を貫流ボイラ管蒸気出口管のほぼ中央にし、気水分離機の液面の位置がここに保持されるように制御する。したがって、貫流ボイラ管内で発生する蒸気も、高温水のいずれともが、蒸気出口管を通って、円滑に気水分離器に流れるようにする。以上のようにして、小さな差圧で、貫流ボイラ管内の自然循環水量が多くなるようにする。
【発明の効果】
【0007】
循環水ポンプなどの装置を用いることなく、貫流ボイラ管、気水分離機、循環水管と大量のボイラ水を自然循環させることができ、貫流ボイラ全体の温度差が小さくなり,それぞれの貫流ボイラ管の温度、循環量、蒸発量が、ほぼ等しくなり、ボイラの運転が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図2について、本発明を実施するための最良の形態を説明する。図2は、本願の貫流ボイラの構造図である。1は貫流ボイラ管、2は気水分離器、3は循環水管、4は貫流ボイラの蒸気出口管、5は給水ポンプ、6は電気ヒータ、7は液面計、8は安全弁、9は吐出弁、10は温水吐出口、11は温水吐出弁、12は温水混合器、13は洗浄機用蒸気ノズル、14は給水タンク、15、16は液面検出器、17は圧力スイッチ、18は電気のメインスイッチ、19はノズルに設けられた蒸気スイッチ、20はノズルに設けられた温水スイッチ、21は給水ポンプの電磁スイッチである。
【0009】
貫流ボイラ管1の内部には、電気ヒータ6が取付けられ、複数個の貫流ボイラ管1の上部出口が気水分離器2の中央部側面に連結され、貫流ボイラ管1の下部は、気水分離器2下部ヘッダ部に循環ポンプなど入れずに直接連結されている。給水ポンプ4は、電動機で駆動されるが、この電動機には、電磁スイッチ21を介して電源のメインスイッチ18に接続されている。電磁スイッチ21は、前述の液面検出器16に接触され、スイッチがONとなる。そして液面が、これに達していないときは、給水ポンプ5の上限検出器16の上限信号により、給水ポンプ5の電磁スイッチ21をOFFとする。また、一定時間給水ポンプ5がOFFの状態を続けると、電磁スイッチ21を自動的にONにするように調整される。
【0010】
気水分離器2の上部に、安全弁8と吐出弁9が接続されている。気水分離器2の圧力が規定値を越えると、安全弁8が開いて、蒸気を放出し、過大な圧力発生を防止する。吐出弁9は、蒸気を取り出すための電磁弁で、蒸気洗浄機使用者の手元より、遠隔操作によりON、OFFすることができる。また、気水分離器2の下部液層部には温水ポート10があり、これにも電磁弁11があり、手元スイッチ19により、ON、OFFし、混合器12を通って、温水をノズル13に流すことができる。
【0011】
気水分離器2下部ヘッダ部には圧力スイッチの接続口があり、ここより圧力スイッチ17が取付けられている。一定の気水分離器2の圧力になると、電気ヒータ6のスイッチ17が遮断され、一定の圧力以下になると、スイッチ17が入れられる。
【0012】
液面検出器15は、気水分離器2下限の液面を検出するもので、給水ラインの故障などのため、満足な給水がされないときなど、気水分離器2や貫流ボイラ管1の液面レベルが低下し、電気ヒータ6が気相に露出するような運転を回避するため、下限検出時は、電気ヒータ6の電磁スイッチが遮断される。また、インターロックとしても利用され、液面が下限以下では、電気ヒータ6のスイッチが入らないようにセットされている。
【0013】
蒸気洗浄機の使用者は、ノズル13を持って、対象物に蒸気を噴き付けるが、このとき、蒸気スイッチ20をONとする。必要に応じて、温水スイッチ19をあわせてONにすることにより、温水の混入した蒸気を利用することができる。また、蒸気弁20をOFFにし、温水だけを利用することもできる。また、ノズル13には、エジェクター式の吸入ポート21があり、ここより補助タンク23内に入れられた水あるいは洗浄液を吸入し、ノズル13より噴出し、蒸気洗浄に利用できる構造となっている。このラインには、流量調整の弁22が設けられている。
【0014】
図2に示すように、気水分離器2に液面検出器16の上限に液面保持した状態で、電気ヒータ6に電磁スイッチ17をONすることにより、貫流ボイラ1が起動される。貫流ボイラ1の中の水の温度が上昇すると、この水の温度上昇により、密度が低下すると、上昇流が生じ、下部より気水分離器2の水が流入し、自然循環流が生ずる。そして、なおも温度が上昇し、水の温度が沸騰点になると、貫流ボイラ内で沸騰が起こり、気水分離器2、給水管、貫流ボイラ1、気水分離器2への上昇流は増大し、循環流は非常に大きくなる。これは、2本の貫流ボイラ1でほぼ同時に進行する。そして、貫流ボイラの温度がますます増大し、規定の圧力になると圧力スイッチ17が作用し、電気ヒータ6をOFFにする。このまま吐出弁9を開いて蒸気を消費すると、気水分離器2の圧力が低下し、圧力スイッチ17の働きで、電気ヒータ6が再びONとなる。このまま蒸気を消費し続けると、蒸気圧力もほぼ一定の圧力を保持し、液面レベルが低下し、上限液面レベル検出器16の信号が出ると、給水ポンプ5が運転され、給水される。先述のように、給水ポンプ5は、上限液面レベルを越え、一定時間給水されるので、上限より高い位置で、電磁スイッチ21と給水ポンプ5はOFFとなる。
【0015】
貫流ボイラでは、貫流ボイラ管1や電気ヒータ6の微妙な機差のため、アンバランスが生じて、2本の貫流ボイラ管1の間で、自励的な蒸気発生量の不安定現象を起こすことが知られているが、まず、貫流ボイラ管1の下部と気水分離器2の下部を連結することにより、自然循環流の流れを作ること、そして、貫流ボイラ管1上部出口エルボ管と気水分離器2の側面の結合部で、液面レベルが貫流ボイラ管1の出口エルボ管のほぼ中央に来るように調整することにより、温度が沸騰点以下においても、自然循環流が生じ、かつ、貫流ボイラ管1の中で蒸発が生じて、循環流が多くなったときは、貫流ボイラ管1の出口部では、二相流となり、気水分離器2に流れ、電気ヒータ6や貫流ボイラ管1のアンバランスがあって、蒸発量が急に多くなっても、自由液面が上昇するにとどまり、他方の貫流ボイラ管1で逆流が生じようとしても、自由液面であるため、液面が低下するにとどまり、逆流は多くならず、流量の主体は下部の循環水管3より流入することとなり、貫流ボイラ管1内の暴走的な蒸発不安定現象が回避される。以上のように、貫流ボイラ管1の出口エルボ部の液面がほぼ中央にあることにより、ここの流れが逆流防止機能とし、貫流ボイラ管1内の流れは、一定した上昇流主体となり、電気ヒータ6における蒸発量が安定する。
【0016】
以上のように、気水分離器2の下部から、それぞれの貫流ボイラ管1下部の間に循環水管3を設けて、自然循環をするようにしたことにより、水の循環がよくなり、異なる貫流ボイラ管1の温度差が小さくなり、蒸発量が安定した。また、気水分離器2の液面レベルを貫流ボイラ管1の出口エルボの中に自由液面があるため、貫流ボイラ管1のアンバランスがあっても、ほとんどこの自由液面の変化で吸収され、貫流ボイラ管1の間で、自励的な蒸発の不安定現象などが生ずることはない。
【0017】
気水分離器2の液面では、蒸気の気泡が発生しているため、液面検出器16の作動が不安定になることがあるが、上限と下限の間で、給水ポンプ5の運転をするのでなく、液面検出器16の上限検出後、一定時間運転するだけなので、液面における波打ちなどの外乱の影響を上限のみで済ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 従来の貫流ボイラ式蒸気洗浄機の説明図
【図2】 本発明の貫流ボイラを用いた蒸気洗浄機の説明図
【符号の説明】
図1において、
101 貫流ボイラ管
102 下部ヘッダ
103 上部ヘッダ
109 圧力スイッチ
110、111 液面検出器
105 給水タンク
104 給水ポンプ
114 給水ポンプ用モータ
115 給水ポンプのモータをON/OFFにする電磁スイッチ
113 電気ヒータ
112 電気ヒータをON/OFFにする電磁スイッチ
116 蒸気洗浄機用の蒸気ノズル
である。
図2において
1 貫流ボイラ管
2 気水分離器
3 循環水管
4 貫流ボイラの蒸気出口管エルボ
5 給水ポンプ
6 電気ヒータ
7 液面検出器取付管
8 安全弁
9 吐出弁
10 温水吐出口
11 温水吐出弁
12 温水混合器
13 蒸気洗浄機用蒸気ノズル
14 給水タンク
15、16 液面検出器
17 圧力スイッチ
18 電源のメインスイッチ
19 ノズルガンに設けられた蒸気弁スイッチ
20 ノズルガンに設けられた温水弁スイッチ
21 給水ポンプの電磁スイッチ
22 補助タンク
23 注水弁
24 注水口
である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形たて型に配した気水分離器のほぼ中央側面に接続された複数個の貫流ボイラ管を有し、それぞれの貫流ボイラの内部に電気ヒータを取付け、気水分離器の上部と下部にて連通した保護管に液面検出器を取付け、気水分離器または気水分離器に設けられた下部ヘッダに吸水ポンプより給水を流入させるための吸水口、気水分離器の上部に安全弁と吐出弁を設け、一定の気水分離器内圧力になると、電気ヒータの電流を制御するとともに、該液面計で、液面の上限が規定の位置になるように給水ポンプの供給を制御するようにした蒸気洗浄機用貫流ボイラにおいて、該気水分離器の下部ヘッダより、該貫流ボイラ管下部に循環水管、循環ポンプなどを入れずに、直接連結したことを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に示す蒸気洗浄機用貫流ボイラにおいて、該液面検出器の液面上限の位置が、貫流ボイラ管の出口のエルボ管上端面または下端面に達することなく、中間位置になるように制御すること。
【請求項3】
請求項1に示す蒸気洗浄機用貫流ボイラにおいて、液面検出器の液面上限検出信号を得て、一定時間、給水ポンプを運転し、その後、遮断するように制御すること。
【請求項4】
請求項1に示す蒸気洗浄機用貫流ボイラにおいて、液面検出器の液面上限検出信号の発信回数をカウントして、給水量、蒸気使用量をモニタすること。

【図1】
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【図2】
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