説明

蓄光係留ブイ

【解決手段】係留ブイ1の外皮材料もしくは外皮塗装材料中に蓄光材料を混入し、係留ブイ1を発光させ得るようにする。
【効果】従来のように、電気的・機械的設備を搭載したものではないため、極めて安価であり、故障もしくは破損も少ない。蓄光材料は太陽光の照射により長時間発光するので、たとえ太陽光が無くなっても継続して発光する。蓄光材料として、20000ルックス5分間照射にて12時間後に3mcd/mの輝度を確保し得るものを用いると、極めて長時間発光し続けるので、安全標識として利用する場合の基準を十分クリアでき、船舶の安全性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁港・港湾その他の施設において船舶を係留する際に用いるブイに関するもので、電源や機械装置を用いないでも発光するものに関する。
【背景技術】
【0002】
漁港・港湾その他の施設においては、図1および図2に示すように、船舶Sを係留するために係留ブイ1が設置されており、通常、チェンもしくはロープその他の係留索2で水中部に設置された係留アンカー3と接続されている。そして、船舶Sは別の係留索4、5、6によりこの係留ブイ1と護岸Aとに接続されるのが一般的である。
【0003】
通常の係留ブイ1は自光しないので、船舶が夜間に帰港して係留場所に接舷する場合には、周りが暗いため、危険が多い。特に、漁船は夜間に航行する機会も多く、夜間航行時のライトも前方のみで照射範囲が狭いため、係留場所に接舷する際の危険度は限りなく大きい。
【0004】
それを防止するために、従来、電源を有する点滅装置を係留ブイに取り付けることが行われてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種の装置は非常に高価であるため、この装置を搭載した係留ブイを利用する人は少なかった。また、前記装置は電気的・機械的設備であるがために、故障もしくは破損しやすく、そのために係留ブイが発光しなくなって用をなさないことが多かった。修理が完了するまでの間、船舶の安全性を確保することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような従来の欠点を解消することを目的とするもので、係留ブイの外皮材料もしくは外皮塗装材料中に蓄光材料を混入し、係留ブイを発光させ得るようにしたものである。従来のように、電気的・機械的設備を搭載したものではないため、極めて安価であり、故障もしくは破損も少ない。蓄光材料は太陽光の照射により長時間発光するので、たとえ太陽光が無くなっても継続して発光する。
【0007】
蓄光材料として、20000ルックス5分間照射にて12時間後に3mcd/mの輝度を確保し得るものを用いることが好ましい。このような蓄光材料を用いることにより、極めて長時間発光し続けるので、安全標識として利用する場合の基準を十分クリアでき、船舶の安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、電気的・機械的設備を搭載したものではないため、極めて安価であり、故障もしくは破損も少ない。蓄光材料は太陽光の照射により長時間発光するので、たとえ太陽光が無くなっても継続して発光する。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、極めて長時間発光し続けるので、安全標識として利用する場合の基準を十分クリアでき、船舶の安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好ましい実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明による蓄光係留ブイを護岸付近に設置した場合の一例を示す断面図である。また、図2は、図1の一部の平面図である。
【0011】
両図からも分かるように、船舶Sを係留するために水面に浮遊させ得る係留ブイ1が護岸A付近に設置されており、通常、チェンもしくはロープその他の係留索2で水中部に設置された係留アンカー3と接続されている。そして、船舶Sは別の係留索4、5、6によりこの係留ブイ1と護岸Aとに接続されている。
【0012】
前記係留ブイ1において、外皮材料もしくは外皮塗装材料中に蓄光材料を混入し、係留ブイ1を発光させ得るようにする。図3に示すように、係留ブイ1の外周面に蓄光部1aを形成し、この蓄光部1aを水面上に位置させることにより、係留ブイ1を発光させることができる。蓄光材料は太陽光の照射により長時間発光するので、たとえ太陽光が無くなっても継続して発光する。この蓄光係留ブイは電気的・機械的設備を搭載したものではないため、極めて安価であり、故障もしくは破損も少ない。
【0013】
蓄光部1aを形成するに当っては、例えば、内部の発泡スチロールの外側を覆うウレタン樹脂からなる外皮材料中に蓄光材料を混入してもよいし、前記外皮塗装材料中に蓄光材料を混入してもよい。いずれの場合でも、係留ブイ1を発光させることができる。
外皮塗装材料中に蓄光材料を混入する場合とは、蓄光材料を樹脂(塗料)に混入することをいい、この樹脂(塗料)を外皮に吹き付けることで係留ブイ1を発光させることができる。外皮材料中に蓄光材料を混入する場合よりも作業性に優れている。樹脂(塗料)に対する蓄光材料の混合率を高くするほど発光の輝度を上げることができるが、前記混合率を余り高くすると粘性が高くなり過ぎて塗装作業に支障を来たす可能性がある。吹付け回数を増やすことで、発光の輝度を上げることもできる。
【0014】
蓄光材料としては、できるだけ長時間発光し続けるものを用いることが好ましいが、特に、20000ルックス5分間照射にて12時間後に3mcd/mの輝度(平均輝度)を確保し得るものを用いるのがベストである。このような蓄光材料を用いることにより、極めて長時間発光し続けるので、安全標識として利用する場合の基準を十分クリアでき、船舶Sの安全性を高めることができる。
【0015】
このように、ここに例示する係留ブイ1は太陽光の照射により長時間発光するタイプのものであるから、たとえ太陽光が無くなっても継続して発光し、係留場所に船舶Sが接舷する際の危険性を回避することができる。すなわち、船舶Sの係留を安全に行うことができ、施設の施工費の縮減に寄与することができる。また、船舶Sの航行が激しい場所における係留施設においては、他の船舶Sの安全性の確保にも寄与する。さらに、電気的・機械的設備を搭載したものではないため、極めて安価であり、故障もしくは破損も少ない。
【0016】
係留ブイ1と船舶S、係留アンカー3とを係留索2、4、5で係留するには、例えば、図3に示すように、係留ブイ1の底部に備えた1つの接続環1bにシャックルを介して係留索2、4、5の端部をそれぞれ連結することにより行うことができる。
【0017】
図1において、HWLは高水位を、LWLは低水位を表しており、高水位の場合における船舶Sの護岸Aへの係留状況を実線で、低水位の場合における船舶S’の護岸Aへの係留状況を二点鎖線で示す。なお、図1における図面符号3aは係留アンカー3の係留用鉄筋で、前記係留索2の下端がこの係留用鉄筋3aに接続されている。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明による蓄光係留ブイは、漁港、港湾設備の護岸や船着場などで広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による蓄光係留ブイを護岸付近に設置した場合の一例を示す断面図である。
【図2】図1の一部の平面図である。
【図3】係留ブイと船舶、係留アンカーとを係留策で係留する場合の一例を示す拡大側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1…係留ブイ、1a…蓄光部、2、4、5、6…係留索、3…係留アンカー、S、S’…船舶、A…護岸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係留ブイの外皮材料もしくは外皮塗装材料中に蓄光材料を混入し、係留ブイを発光させ得るようにしたことを特徴とする蓄光係留ブイ。
【請求項2】
蓄光材料として、20000ルックス5分間照射にて12時間後に3mcd/mの輝度を確保し得るものを用いることを特徴とする請求項1記載の蓄光係留ブイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−201186(P2008−201186A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37358(P2007−37358)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000108270)ゼニヤ海洋サービス株式会社 (16)