説明

蓄光標識装置

【課題】蓄光性を有するシンボルを運転者等に認識させることができると共に、低コスト化を図ることができる蓄光標識装置を提供する。
【解決手段】 蓄光標識装置100は、道路付近に設置され、自動車の運転者等に注意を促して、標識部60を認識させる装置であって、ソーラーパネル20と、表示板30と、広角LED50A〜50E等とを備えている。表示板30は、その表面に、蓄光顔料を含む蓄光層により形成された標識部60及び絵柄部70と、超高輝度LED80A,80B等とを備えている。広角LED50A〜50Eは、紫外線を110〜120°の範囲で照射することにより、少ない数で標識部60及び絵柄部70に確実に紫外線を照射する。超高輝度LED80A,80Bは、夕暮れどきに、点滅することにより、運転者等に表示板30への注意を喚起する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光性を有するシンボルが施された蓄光標識装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蓄光標識装置は、その表面に、文字、記号、絵柄等からなる標識等のシンボルが施されている。このシンボルは、例えば、自動車の運転者等に注意を促して、各種の事故を防止するためのものがある。このため、シンボルの視認性は、事故防止を図る上で非常に重要視されている。
【0003】
このシンボルは、蓄光性を有する蓄光顔料を用いたものがある。蓄光顔料は、太陽光や人工照明の光などを照射すると、暗所で比較的長い時間りん光(残光)を発する性質を有しており、光を吸収し、暗所で発光するものである。
【0004】
特許文献1は、基材フィルムに金属面を形成し、その上に蓄光顔料を含む蓄光層、さらに上に表面層を設けた蓄光シートを開示している。特許文献1の蓄光シートは、看板のシンボルを形成するために用いられている。この看板は、蓄光シートに対して、ブラックライトにより紫外線を断続的に照射して、シンボルを発光させている。
【0005】
しかし、この看板は、ある程度大きなものを製作して道路等に設置する場合には、シンボル全体に光を照射するために多くのブラックライトが必要になってしまい、コストが高くなる場合があった。
【0006】
また、自動車の事故は、夕暮れどきに発生することが多い。このため、運転者は、夕暮れどきにヘッドライトを早めに点灯して、自動車の存在を周囲に認識させることが重要である。このときのシンボルは、「早めの点灯」等の文字が考えられるが、夕暮れどきには、薄明かりが残っているので、シンボルの発光だけでは運転者にシンボルを認識させることが困難であった。
このシンボルを運転者等に認識させるには、例えば、反射板でシンボルを形成することが考えられる。しかし、反射板は、自動車のヘッドライトの光を反射することにより、初めて認識されるので、ヘッドライトを点灯させていない自動車では、認識できない。
さらに、港湾には、埠頭内の自動車が誤って岸壁から海に転落しないために、車止めが設置されている。しかし、運転者は、夕暮れどきに、この車止めを認識することは困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−19020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、蓄光性を有するシンボルを運転者等に認識させることができると共に、低コスト化を図ることができる蓄光標識装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、少なくとも一部に蓄光性を有する蓄光板(30,240)と、前記蓄光板(30,240)に、広角で光を照射する少なくとも一つの発光体(50A〜50
E,220)と、前記発光体(50A〜50E,220)に電気エネルギーを供給する電源部(110,210)と、を備えた蓄光標識装置である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の蓄光標識装置において、前記電源部(110)は、太陽電池(20)を備えたこと、を特徴とする蓄光標識装置である。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1に記載の蓄光標識装置において、前記電源部(210)は、放電持続時間の長い一次電池(210)であること、を特徴とする蓄光標識装置である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の蓄光標識装置において、前記蓄光板(30,240)の少なくとも一部に設けられ、前記蓄光板(30,240)への注意を喚起する注意喚起部(80A,80B,230)をさらに備えたこと、を特徴とする蓄光標識装置である。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4に記載の蓄光標識装置において、前記発光体(50A〜50E)及び前記注意喚起部(80A,80B)を所定の時間帯に点滅させるように、前記電源部(110)から供給される電気エネルギーを制御する制御部(120)をさらに備えたこと、を特徴とする蓄光標識装置である。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の蓄光標識装置において、光を周囲に照射する照明部(340A,340B)をさらに備えたこと、を特徴とする蓄光標識装置である。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の蓄光標識装置において、前記蓄光板(30)は、蓄光性を有するシンボル部(60,70)を備え、前記発光体(50A〜50E)は、前記シンボル部(60,70)に所定間隔を隔てて複数配置されていること、を特徴とする蓄光標識装置である。
【0016】
請求項8の発明は、開口部(501a,601a)を有する基台(501,601)と、前記開口部(501a,601a)に配置され、少なくとも一部に蓄光性を有する蓄光板(510,610)と、前記基台(501,601)の内部の側面(501b,501c,601b)の少なくとも一面に配置され、前記蓄光板(510,610)に、広角及び/又は高輝度で光を照射する少なくとも一つの発光体(503A〜503F,603A,603B)と、前記基台(501,601)の底部に配置され、前記発光体(503A〜503F,603A,603B)から照射される光(L)が、前記蓄光板(510,610)の背面に照射されるように、前記光(L)を反射する反射板(504,604)と、前記発光体(503A〜503F,603A,603B)に電気エネルギーを供給する電源部(520,620)と、を備えた蓄光標識装置である。
【発明の効果】
【0017】
(1)本発明の蓄光標識装置は、蓄光性を有する蓄光板に、発光体が広角で光を照射するので、蓄光板の蓄光性を有する部分に、光を確実に照射して、この部分を発光させることができ、運転者等に蓄光性を有する部分を認識させることができ、また、たとえ、大きな蓄光板を製作する場合であっても、発光体の数が少なくて済み、低コスト化を図ることができる。
【0018】
(2)電源部は、太陽電池を備えたので、太陽光を電気エネルギーに変換することができ、この電気エネルギーを発光体に供給することができる。
【0019】
(3)電源部は、放電持続時間の長い一次電池であるので、一次電池を頻繁に交換する必要がなく、メンテナンス等にかかるコストを下げることができる。また、発光体は、一次電池から電気エネルギーが直接供給されるので、配線を簡略化でき、配線工事が困難な場所にも、蓄光標識装置を容易に設置できる。
【0020】
(4)蓄光板への注意を喚起する注意喚起部を備えたので、蓄光板の蓄光性を有する部分の発光があまり目立たないときでも、運転者等に蓄光板への注意を喚起することができる。
【0021】
(5)発光体及び注意喚起部を所定の時間帯に点滅させるように、電気エネルギーを制御する制御部を備えたので、発光体は、連続的に点灯している場合に比べて、消費電力を小さくすることができ、また、注意喚起部は、蓄光板の蓄光性を有する部分の発光があまり目立たない時間帯に点滅することができ、蓄光板への注意を喚起することができる。
【0022】
(6)光を周囲に照射する照明部を備えたので、例えば、災害等で煙が発生して周囲が見え難くなったとしても、避難場所に避難しようとしている歩行者等の足元を照らすことができる。
【0023】
(7)発光体は、蓄光性を有するシンボル部に所定間隔を隔てて複数配置されているので、シンボル部に確実に光を照射して、シンボル部を発光させることができる。
【0024】
(8)蓄光板に広角及び/又は高輝度で光を照射する発光体を、基台の側面の少なくとも一面に配置し、さらに、発光体から照射される光を反射板で反射して、蓄光板の背面に照射するようにしたので、基台を薄くすることができ、また、蓄光板の視認性を高めることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、蓄光性を有するシンボルを運転者等に認識させると共に、低コスト化を図るという目的を、少なくとも一部又は全部に蓄光性を有する蓄光板に、少なくとも一つの発光体が広角で光を照射することによって実現する。
【実施例1】
【0026】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による蓄光標識装置の実施例1を示す図である。図1(a)は、正面図であり、図1(b)は、蓄光標識装置の一部を示す斜視図である。
図2は、実施例1の蓄光標識装置を示す側面図である。
蓄光標識装置100は、道路付近に設置され、自動車の運転者等に注意を促す装置であって、例えば、支柱10A,10Bと、ソーラーパネル20と、表示板30と、パイプ40と、広角で紫外線を照射する発光ダイオード(以下、広角LEDという)50A〜50E等を備えている。
【0027】
支柱10A,10Bは、道路付近に設置された土台11A,11Bに取り付けられている。ソーラーパネル20は、支柱10Aの上端に設けられており、太陽等の光源からの光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置であって、太陽電池等を備えている。
太陽電池は、いわゆる光電気変換素子であって、光エネルギーを電気エネルギーに変換し、この電気エネルギーを供給する。なお、太陽電池は、小型化された既存のものを適用できる。
【0028】
表示板30は、例えば、縦1.0m、横2.0mの板状部材であり、図2(a)に示すように、支柱10A,10Bに延設された支持部材12,13に取付けられている。
表示板30は、その表面に、標識部60と、絵柄部70と、発光体である超高輝度発光ダイオード(以下、超高輝度LEDという)80A,80B等とを備えている。標識部60(ここでは、「早めの点灯」)は、蓄光顔料を含む蓄光層により形成された文字からなるシンボルである。絵柄部(ここでは、自動車)70は、蓄光顔料を含む蓄光層により形成され、標識部60の文字と関連性のある絵柄からなるシンボルである。
【0029】
超高輝度LED80A,80Bは、絵柄部70に示された自動車のヘッドライトに対応する部分に埋め込まれている。超高輝度LED80A,80Bは、図1(b),図2(c)に示すように、半球状の反射部材82A,82Bの底部に設置されている。この反射部材82A,82Bの開口部には、乳白色のアクリル板81A,81Bが取付けられている。
超高輝度LED80A,80Bは、その内部に、350mAの電流が流れ、通常の高輝度LEDに比べても極めて高い輝度で発光する。なお、通常の高輝度LEDは、その内部に、20mA程度の電流しか流れない。
【0030】
パイプ40は、表示板30の上端部に設けられたワイヤ41等により、表示板30から適宜の距離を隔てて固定されている。また、パイプ40は、その内部に、広角LED50A〜50Eに接続される配線(不図示)が配置されている。
【0031】
広角LED50A〜50Eは、紫外線を照射するブラックライトであって、パイプ40の内部に所定間隔で配置されており、標識部60及び絵柄部70に所定間隔を隔てて複数配置されている。なお、パイプ40は、広角LED50A〜50Eの紫外線が照射される箇所に開口部42が形成されており、この開口部42を経て紫外線が照射される。また、広角LED50A〜50Eは、パイプ40の内部に配置されているので、風雨等から保護
される。
【0032】
広角LED50A〜50Eは、面発光するチップLED52等を備えており、図2(a)に示すように、その照射範囲51が110〜120°と広角になる。また、広角LED50A〜50Eは、図2(b)に示すように、チップLED52が面実装される基板53と、この基板53の周縁に設けられたカバー54とを備えている。
広角LED50A〜50Eは、標識部60及び絵柄部70に所定間隔を隔てて複数(ここでは、5つ)配置されているので、それぞれの照射範囲51が重なり、蓄光性を有する標識部60及び絵柄部70に確実に紫外線を照射して、発光させることができる。なお、この広角LED50A〜50Eは、照射範囲51が広角のものであれば適宜のものを使用できるが、例えば、サンケン電気株式会社製のブラックライト(型番:SECU1V0AC)が好ましい。
【0033】
図3は、実施例1の蓄光標識装置100を示すブロック図である。なお、上述した各部材については、説明を適宜省略する。
蓄光標識装置100は、電源部110と、制御部120等とを備えている。電源部110は、広角LED50A〜50E及び超高輝度LED80A,80Bに電気エネルギーを供給するための部分であって、上述したソーラーパネル20と、バッテリー部111等とを備えている。
バッテリー部111は、ソーラーパネル20が光源Aからの光エネルギーを変換して得られた電気エネルギーを充電又は放電するものである。このバッテリー部111としては、リチウムイオン二次電池が好ましい。リチウムイオン二次電池は、不完全な充電と放電とを繰り返すことにより、電池容量が低下してしまう、いわゆるメモリ効果が生じないので、継ぎ足し充電を行ったとしても、充放電のサイクルを300〜500回程度繰り返すことができる。なお、二次電池は、リチウムイオン二次電池に限らず、ニッカド電池、ニッケル水素電池等を用いてもよい。
【0034】
制御部120は、広角LED50A〜50E及び超高輝度LED80A,80Bを所定の時間帯に点滅させるように、電源部110から供給される電気エネルギーを制御するものであって、点滅回路121と、タイマー回路122等とを備えている。
点滅回路121は、電源部110から供給される電気エネルギーを断続させて、広角LED50A〜50Eと超高輝度LED80A,80Bとを点滅させる回路である。タイマー回路122は、所定の時刻と時間を計る回路である。
【0035】
広角LED50A〜50Eは、制御部120により、所定の時間帯に点滅し、表示板30に設けられた標識部60及び絵柄部70に、紫外線を照射する。また、超高輝度LED80A,80Bは、制御部120により、所定の時間帯に点滅し、表示板30の前方に高輝度で光を照射する。なお、標識部60及び絵柄部70は、蓄光性を有しているので、紫外線が断続的に照射されたとしても、連続して発光することができる。
【0036】
つぎに、自動車事故が多発する夕暮れどき(PM4:00〜6:00頃)での蓄光標識装置100について説明する。
制御部120は、広角LED50A〜50Eを夕暮れどきから早朝(PM4:00〜AM6:00頃)まで点滅させ、一方、超高輝度LED80A,80Bを夕暮れどき(PM4:00〜PM6:00頃)に点滅させる。
標識部60は、広角LED50A〜50Eから照射される紫外線により発光する。しかし、この標識部60の発光は、薄明かりが残っている夕暮れどきでは、あまり目立たなくなってしまう。標識部60の発光は、広角LED50A〜50Eが早朝AM6:00まで点滅しているので、蓄光して夜間では視認できる。
【0037】
これに対して、超高輝度LED80A,80Bの光は、夕暮れどきであっても、150m程度離れた地点からでも確認することができ、運転者等に、蓄光標識装置100の表示板30への注意を喚起する。
このため、運転者は、150m程度離れた地点から標識部60を認識できなくても、超高輝度LED80A,80Bの光を確認した後、ある程度近付くことにより、表示板30に注意する。そして、運転者は、たとえ、標識部60の発光があまり目立たなくても「早めの点灯」というシンボルを認識できる。
【0038】
このように、実施例1の蓄光標識装置100によれば、以下のような効果がある。
(1)広角LED50A〜50Eは、蓄光性を有する標識部60及び絵柄部70に、所定間隔を隔てて複数配置されているので、標識部60及び絵柄部70に確実に紫外線を照射して、発光させることができる。
(2)広角LED50A〜50Eは、照射範囲51が広角であるので、たとえ、大きな表示板30を製作する場合であっても、発光体の数が少なくて済み、コストを下げることができる。
【0039】
(3)電源部110は、ソーラーパネル20とバッテリー部111とを組合わせたものであるので、太陽光を電気エネルギーに変換することができ、さらに、夜間であっても、この電気エネルギーを広角LED50A〜50E及び超高輝度LED80A,80Bに供給することができる。
(4)バッテリー部111は、リチウムイオン二次電池を用いているので、電池を頻繁に取り替える必要がなく、メンテナンス等に要するコストを下げることができる。
【0040】
(5)超高輝度LED80A,80Bは、夕暮れどきに点滅するので、標識部60の発光があまり目立たなくても、運転者等に表示板30への注意を喚起して、標識部60を認識させることができる。
(6)広角LED50A〜50Eは、夕暮れどきから夜間に点滅するので、連続的に点灯している場合に比べて、消費電力を小さくすることができる。
【実施例2】
【0041】
図4は、本発明による蓄光標識装置の実施例2を示す図である。図4(a)は、複数の蓄光標識装置の配置関係を示した上面図であり、図4(b)は、1つの蓄光標識装置を示した正面図である。
蓄光標識装置200は、図4(a)に示すように、海Bと埠頭Cとの境界となる岸壁Dの付近に所定間隔で複数設置され、自動車等が海Bに転落することや船舶が岸壁Dと接触することを防止するための装置であって、例えば、図4(b)に示すように、基台201と、反射板230と、蓄光性を有する表示板240と、一次電池210と、リード線211と、支持部材212と、広角LED220等とを備えている。
【0042】
基台201は、円筒形状であり、その内部に一次電池210が配置されている。一次電池210は、放電持続時間の長いものであって、例えば、0.5mAの電流を流したときに、1日中放電させたとしても、2本で約1年程度、放電を持続するものである。具体的には、一次電池210は、日立マクセル株式会社製の円筒形二酸化マンガンリチウム電池(型番:CR17450)を使用している。
【0043】
広角LED220は、基台201の内部に設けられた支持部材212上に設置され、リード線211により一次電池210と電気的に接続されている。
この広角LED220は、上述した広角LED50A〜50Eと同様に紫外線を110〜120°の範囲に照射する。広角LED220は、表示板240の略全範囲に、確実に紫外線を照射できるように、表示板240に対向して配置されている。
【0044】
反射板230は、基台201の上端付近に設けられ、自動車のヘッドライト等の光を反射して、運転者に表示板240への注意を喚起するものである。
表示板240は、半円球状であり、基台201の上端に形成された開口部に取り付けられている。表示板240は、その表面に、蓄光顔料を含む蓄光層が形成されている。なお、表示板240は、その表面に、文字、記号、絵柄等が施されていないが、表面自体が発光するので、シンボルとなる。
【0045】
このように、実施例2の蓄光標識装置200によれば、以下のような効果がある。
(1)広角LED220が一次電池210で発光しているので、部品点数を少なくでき、配線を簡略化できるので、配線工事が困難な場所であっても、蓄光標識装置200を容易に設置することができる。
(2)一次電池210は、放電持続時間が長いものを使用しているので、頻繁に交換する必要がなく、メンテナンス等にかかるコストを下げることができる。
【0046】
(3)反射板230は、夕暮れどきに、表示板240の発光があまり目立たなくても、自動車等のヘッドライトを反射して、表示板240への注意を喚起できる。
(4)蓄光標識装置200は、岸壁Dに沿って所定間隔で配置されているので、埠頭Cの自動車の運転者や岸壁Dに接近する船舶の操縦者等に、単に注意を促すだけでなく、点滅と異なり、岸壁Dとの距離感までも認識させることができ、自動車が岸壁Dから海Bに転落してしまうこと、船舶が岸壁Dに接触してしまうこと等の事故を防止できる。
【実施例3】
【0047】
図5は、本発明による蓄光標識装置の実施例3を示す図である。
蓄光標識装置300は、建物内や地下鉄のトンネル等に設置され、災害時等に備えて避難場所や避難経路等を視認させると共に、周囲を照射する装置であって、例えば、表示板310と、パイプ320と、広角LED330A,330Bと、アダプタ350等とを備えている。なお、パイプ320、広角LED330A,330Bは、上述した蓄光標識装置100に用いられたパイプ40、広角LED50A〜50Eと同一機能を有するので、説明を省略する。
【0048】
表示板310は、上述した表示板30と比べると、所定の時間帯に点滅する超高輝度LED80A,80Bの代わりに、連続的に点灯する広角LED340A,340Bが設けられていること、標識部60及び絵柄部70の代わりに、避難場所や避難経路等を視認させる誘導部311及び避難場所までの距離(例えば、100m、15m)を示す距離表示部312,313が形成されていること、等が異なる。この誘導部311及び距離表示部312,313は、蓄光顔料を含む蓄光層により形成されている。なお、表示板310は、地下鉄のトンネルの壁面に、例えば、接着剤や両面テープを用いて設置してもよい。
【0049】
アダプタ350は、例えば、地下鉄のトンネルに配置されている既存のケーブルから供給される交流電源(100V)を、直流電源(最大で24V)に変換する装置である。
蓄光標識装置300は、蓄光標識装置100で用いた点滅回路121を設けておらず、交流電源を使用して、広角LED340A,340Bを連続的に点灯させる。
【0050】
広角LED340A,340Bは、広角LED330A,330Bと異なり、表示板310の周囲を照明するものである。また、広角LED340A,340Bは、広角であるため、少ない個数であっても、表示板30の周囲を広範囲に照明できる。
蓄光標識装置300は、例えば、地下鉄のトンネル内で災害が発生して、煙により周囲が見え難くなったとしても、避難場所に避難しようとして、蓄光標識装置300に近付いた歩行者等の足元を、広角LED340A,340Bで照らすことができる。なお、広角LED340A,340Bは、表示板310に直接設置するだけでなく、適宜の支持部材を介して、表示板310の前方に設置するようにしてもよい。
【実施例4】
【0051】
図6は、本発明による蓄光標識装置の実施例4を示す図である。
蓄光標識装置400は、上述した蓄光標識装置300と同様に、災害時等に備えて避難場所や避難経路等を視認させると共に、周囲を照射する装置であって、例えば、基台401と、上述した表示板310と、広角LED410A,410B等とを備えている。
基台401は、開口部が形成されており、この開口部には表示板310がスライド可能に取付けられている。基台401は、その内部に、広角LED410A,410Bが配置されている。なお、広角LED410A,410Bは、上述した蓄光標識装置200に用いられた広角LED220と同一機能を有するので、説明を省略する。
【0052】
蓄光標識装置400は、上述した蓄光標識装置300と同様に、広角LED340A,340Bが、広角で光を周囲に連続的に照射するので、たとえ、煙等により周囲が見え難くなったとしても、歩行者等の足元を照らすことができる。
【実施例5】
【0053】
図7は、本発明による蓄光標識装置の実施例5を示す図である。図7(a)は、蓄光標識装置を示した正面図であり、図7(b)は、蓄光標識装置のb−b断面図である。
蓄光標識装置500は、建物内や地下鉄のトンネル等に設置され、災害時等に備えて避難場所や避難経路等を視認させる装置であって、例えば、基台501と、側板502A,502Bと、広角LED503A〜503Eと、反射板504と、表示板510と、アダプタ520等とを備えている。なお、広角LED503A〜503E、アダプタ520は、上述した広角LED50A〜50E、アダプタ350と同一機能を有するので、説明を適宜省略する。
基台501は、図7(b)に示すように、その上部に形成された開口部501aと、厚みの小さい(例えば、1.5cm程度)側壁501b,501c等とを備えている。側板502A,502Bは、図7(a)に示すように、基台501の内部に配置された各部材を保護するために、基台501の側面にネジ等により取付けられている。
【0054】
広角LED503A〜503Eは、図7(b)に示すように、側壁501b,501cに所定間隔(例えば、5.0cm程度)を隔てて配置されており、広角で光Lを照射する。
反射板504は、基台501の底部に配置されており、広角LED503A〜503Fから照射される光Lを反射するものである。反射板504は、R形状であり、その幅は基台501の開口部501aの幅と略同程度であり(例えば、8.0cm程度)、その高さは、側壁501b,501cの厚さより小さい(例えば、1.0cm程度)。
広角LED503A〜503Fから照射される光Lは、この反射板504で反射され、表示板510の背面に照射される。なお、反射板504は、図7(b)に示すように、R形状に加工でき、光Lを反射できるものであれば、鉄、アルミニウム、ステンレス等、適宜の材質を用いることができる。
【0055】
表示板510は、避難場所や避難経路等を視認させる誘導部511を備えており、基台501の開口部501aにスライド可能に取り付けられている。この誘導部511は、蓄光顔料を含む蓄光層により形成されている。
【0056】
このように、蓄光標識装置500では、広角LED503A〜503Eを基台501の側壁501b,501cに配置し、さらに、光Lを反射板504で反射して、表示板510の背面に照射するようにしたので、たとえ、基台501を薄く(すなわち、側壁501b,501cの厚みを小さく)しても、表示板510に光Lを照射することができる。
【実施例6】
【0057】
図8は、本発明による蓄光標識装置の実施例6を示す図である。図8(a)は、蓄光標識装置を示した正面図であり、図8(b)は、蓄光標識装置のb−b断面図である。
蓄光標識装置600は、蓄光標識装置500と同様に、建物内や地下鉄のトンネル等に設置され、災害時等に備えて避難場所や避難経路等を視認させる装置であって、例えば、基台601と、側板602A,602Bと、高輝度・広角LED603A,603Bと、反射板604と、表示板610と、アダプタ620等とを備えている。なお、アダプタ620は、上述した蓄光標識装置500のアダプタ520と同一機能を有するので、説明を適宜省略する。
基台601は、図8(b)に示すように、その上部に形成された開口部601aと、厚みの小さい側壁601b等とを備えている。側板602A,602Bは、図8(a)に示すように、基台601の内部に配置された各部材を保護するために、基台601の側面にネジ等により取付けられている。
【0058】
高輝度・広角LED603A,603Bは、図8(b)に示すように、側壁601bに所定間隔を隔てて配置されており、高輝度かつ広角で光Lを照射する。なお、高輝度・広角LED603A,603Bは、その消費電力がわずか1.0Wのものである。
反射板604は、一端が基台601の底部に取り付けられ、他端が基台601の開口部601a付近に取り付けられており、高輝度・広角LED603A,603Bから照射される光Lを反射するものである。反射板604は、緩やかな凹形状であり、その幅は基台601の開口部601aの幅と略同程度である。なお、反射板604は、光Lを拡散反射させるために、その表面には、白色度の高い顔料、例えば、二酸化チタン、アルミニウム等の粉末を分散させた白色層が塗装などによって形成されている。
高輝度・広角LED603A,603Bから照射される光Lは、この反射板604で拡散反射され、表示板610の背面に照射される。
【0059】
表示板610は、避難場所や避難経路等を視認させる誘導部611を備えており、基台601の開口部601aにスライド可能に取り付けられている。この誘導部611は、蓄光顔料を含む蓄光層により形成されている。
【0060】
このように、蓄光標識装置600では、高輝度・広角LED603A,603Bを基台601の側壁601bに配置し、さらに、光Lを反射板604で反射して、表示板610の背面に照射するようにしたので、たとえ、基台601を薄くしても、表示板610に光Lを照射することができ、表示板610の周囲を高輝度で照らし(例えば、300cd以上)、誘導部611の視認性も高めることができる。
また、蓄光標識装置600は、上述した蓄光標識装置500に比べて、高輝度・広角LED603A,603Bを片側の側壁601bにだけ配置するので、低コストで製作でき、さらに、高輝度・広角LED603A,603Bの数を少なくでき(この実施例では、2個)、消費電力をより低下させることができる。
さらに、蓄光標識装置600は、消費電力の小さい高輝度・広角LED603A,603Bを用いているので、補助バッテリーを内蔵することにより、例えば、災害等により外部から電力が供給されなくなったとしても、所定時間(少なくとも、蓄光性を有する誘導部611が連続して発光する程度の間)は、高輝度・広角LED603A,603Bが表示板610の周囲を高輝度で照らすことができるので、蓄光性を有さない表示板を用いてもよい。
【0061】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)蓄光標識装置100は、絵柄部70の自動車の絵柄が十分に大きくて、蓄光量が十分なときには、超高輝度LED80A,80Bを設けなくてもよい。
このようにすれば、蓄光標識装置100は、消費される電力量が小さくなり、電源部110の代わりに、実施例2の蓄光標識装置200で用いられた一次電池210を用いることができる。この場合には、蓄光標識装置100は、ソーラーパネル20等を外部に設置する必要がなく、配線を簡略化できる。
(2)標識部60は、上述した「早めの点灯」に限らず、「スピード注意」、「急カーブに注意」、「ひったくり注意」、「チカンに注意」等、各種の注意を促すものであってもよい。ここで、「早めの点灯」以外の注意は、夕暮れどきに限らず、主に夜間に必要であるので、広角LED50A〜50Eが標識部60に紫外線を確実に照射して、標識部60を発光させるのであれば、超高輝度LED80A,80Bを設ける必要がない。
(3)蓄光標識装置100は、タイマー回路122により、所定の時刻と時間を計り、広角LED50A〜50E及び超高輝度LED80A,80Bを所定の時間帯に点滅させるようにしていたが、これに限られず、周囲の照度を検出する照度センサを用いてもよい。(4)蓄光標識装置200は、港湾に限らず、道路のセンターラインに沿って複数配置してもよい。このようにすれば、蓄光標識装置200は、夜間ずっと発光しているので、運転者に単に注意を促すだけではなく、ラインとして認識させることができる。
(5)蓄光標識装置200の表示板240は、半球状としたが、これに限られず、平板状であってもよい。この場合には、表示板240の発光が海B側に認識されるように、表示板240を海Bに対向させるように配置することにより、蓄光標識装置200を船舶の事故を防止するために用いることができる。
(6)蓄光標識装置200は、自動車等が海に転落することを防止するための車止めに埋め込むようにしてもよく、また、高速道路のトンネル内にある避難通路、映画館内の床等に配置するようにしてもよい。さらに、蓄光標識装置200は、養殖の囲い、釣りの仕掛け等に取付けてもよく、この場合には、船舶との接触を防止することができる。
(7)広角LED50A〜50E、220は、紫外線を照射するブラックライトとしたが、標識部60、絵柄部70、表示板240を発光させることができるのであれば、紫外線以外の可視光線や赤外線を照射するものを用いてもよい。
(8)広角LED340A,340B、410A,410B、503A〜503Fは、地下鉄のトンネルに配置されている既存の交流電源を使用することにより、連続的に点灯したが、これに限られず、蓄光標識装置200で用いられた一次電池210を使用してもよい。
(9)蓄光標識装置500,600は、建物内や地下鉄のトンネル等に設置するようにしたが、これに限られず、高速道路の非常電話の場所を視認させるための装置として、高速道路に設置してもよい。この場合には、広角LED503A〜503Fを点灯させるために、蓄光標識装置100で用いられた電源部110を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による蓄光標識装置の実施例1を示す図である。
【図2】実施例1の蓄光標識装置を示す側面図である。
【図3】蓄光標識装置100を示すブロック図である。
【図4】本発明による蓄光標識装置の実施例2を示す図である。
【図5】本発明による蓄光標識装置の実施例3を示す図である。
【図6】本発明による蓄光標識装置の実施例4を示す図である。
【図7】本発明による蓄光標識装置の実施例5を示す図である。
【図8】本発明による蓄光標識装置の実施例6を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10A,10B 支柱
20 ソーラーパネル
30,240,310,510,610 表示板
40 パイプ
50A〜50E,220,340A,340B,410A,410B,503A〜503F 広角LED
60 標識部
70 絵柄部
80A,80B 超高輝度LED
100,200,300,400,500,600 蓄光標識装置
110 電源部
111 バッテリー部
120 制御部
121 点滅回路
122 タイマー回路
210 一次電池
350,520,620 アダプタ
504,604 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に蓄光性を有する蓄光板と、
前記蓄光板に、広角で光を照射する少なくとも一つの発光体と、
前記発光体に電気エネルギーを供給する電源部と、
を備えた蓄光標識装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄光標識装置において、
前記電源部は、太陽電池を備えたこと、
を特徴とする蓄光標識装置。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄光標識装置において、
前記電源部は、放電持続時間の長い一次電池であること、
を特徴とする蓄光標識装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の蓄光標識装置において、
前記蓄光板の少なくとも一部に設けられ、前記蓄光板への注意を喚起する注意喚起部をさらに備えたこと、
を特徴とする蓄光標識装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄光標識装置において、
前記発光体及び前記注意喚起部を所定の時間帯に点滅させるように、前記電源部から供給される電気エネルギーを制御する制御部をさらに備えたこと、
を特徴とする蓄光標識装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の蓄光標識装置において、
光を周囲に照射する照明部をさらに備えたこと、
を特徴とする蓄光標識装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の蓄光標識装置において、
前記蓄光板は、蓄光性を有するシンボル部を備え、
前記発光体は、前記シンボル部に所定間隔を隔てて複数配置されていること、
を特徴とする蓄光標識装置。
【請求項8】
開口部を有する基台と、
前記開口部に配置され、少なくとも一部に蓄光性を有する蓄光板と、
前記基台の内部の側面の少なくとも一面に配置され、前記蓄光板に、広角及び/又は高輝度で光を照射する少なくとも一つの発光体と、
前記基台の底部に配置され、前記発光体から照射される光が、前記蓄光板の背面に照射されるように、前記光を反射する反射板と、
前記発光体に電気エネルギーを供給する電源部と、
を備えた蓄光標識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−283534(P2006−283534A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129243(P2005−129243)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(504426104)有限会社丸亀紙工 (3)
【Fターム(参考)】