説明

蓄電装置を備えた電気車の回路方式

【課題】蓄電装置付き電気車において、蓄電装置へブレーキ電力の蓄積することよってブレーキ力を確保すること、蓄積された電力の再利用を電力の調整手段を設けることなく、かつ蓄積と再利用の過程で室内灯、冷暖房装置動作に影響を与えることなく可能とすること。
【解決手段】力行時は、開閉器5と7を閉じ、補助電源装置3と電気車駆動装置4を集電装置1へ接続し、電車線から補助電源装置3と電気車駆動装置4へ電力を供給して電気車を動作させる。ブレーキ時は、開閉器7を開き、開閉器5と6を閉じ、集電装置1と補助電源装置3、及び蓄電装置2と電気車駆動装置4を接続し、補助電源装置と電車線に影響を与えることなく電気車駆動装置4の発生電力を蓄電装置2へ蓄積して電気ブレーキ力を確保する。蓄電装置2に蓄積された電力を再利用する場合は、開閉器7を開き、開閉器5と6を閉じ、補助電源装置の動作に影響を与えず電力を電気車駆動装置4へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車線からの電力の供給を受けて走行する電気車において、蓄電装置を備えることで、駆動用電動機がブレーキ時に発生する電力を蓄電するとともに、蓄電した電力を自車で利用することを可能とする回路方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気車では、ブレーキ時に駆動用電動機によって発電される電力を電車線へ回生することが可能な駆動制御装置を使用して、電車線を通じて同一電源系統内に存在する他の電気車へ発電した電力を供給して消費することでブレーキ力を得る、電力回生ブレーキが行われている。しかし、電力回生ブレーキには、ブレーキ時に電力を消費する他の電気車が存在しない場合や、他の電気車が電力を消費できない状態にある場合はブレーキ力を得ることができないという欠点があった。
【0003】
この欠点を補うために、抵抗器とその抵抗器に流れる電流を制御する手段を設けて他の電気車両で消費できない電力を抵抗器で消費する方式が考案されている。しかし、この方式では、抵抗器で消費された電力は熱として放散されて、再利用することができないという欠点がある。
【0004】
上記方式の他に、蓄電装置を接続して他の電気車で消費できない電力を蓄積し、蓄積された電力を自車で再利用する方式が考案されている。ここで、蓄積された電力を自車へ供給する方法として、電車線からの電力の供給を停止して蓄電装置からのみ電力を供給する方法と、電車線と蓄電装置の双方から同時に電力を供給する方法があるが、前者では電力供給源切替えの際に電力供給が一旦中断して室内灯や冷暖房装置が停止するため、電力供給源切替え後にこれらの再起動させることが必要になるという問題点がある。また、後者では電車線と蓄電装置との供給電力を調整する手段が必要になるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−186775公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、蓄電装置を備えた電気車において、蓄電装置へブレーキ電力の蓄積することよってブレーキ力を確保することと蓄積された電力の再利用を、電力の調整手段を設けることなく、かつ蓄積と再利用の過程で室内灯や冷暖房装置の動作に影響を与えることなく可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明によれば、集電装置、蓄電装置、補助電源装置、電気車駆動装置を備える電気車において、 該集電装置に直列に接続された第1の開閉器と、該第1の開閉器を介して前記集電装置に接続された該補助電源装置と、該蓄電装置に直列に接続された第2の開閉器と、該第2の開閉器を介して前記蓄電装置に接続された該電気車駆動装置と、前記第1の開閉器と前記補助電源装置との接続点と前記第2の開閉器と前記電気車駆動装置との接続点の間を接続する第3の開閉器によって構成されることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明によれば、請求項1記載において、前記第1の開閉器と前記第2の開閉器と前記第3の開閉器の全てをまたは何れかを、遮断器としたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明によれば、請求項1記載において、前記第1の開閉器と前記第2の開閉器の両方をまたは何れかを、直列に接続した遮断器と開閉器としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明には以下の利点がある。
(1)電車線に接続する集電装置と補助電源装置の間を第1の開閉器を介して接続し、蓄電装置と電気車駆動装置の間を第2の開閉器を介して接続し、かつ第1の開閉器と補助電源装置との接続点と第2の開閉器と電気車駆動装置の接続点との間を第3の開閉器を介して接続することにより、第1の開閉器と第2の開閉器を閉じて第3の開閉器を開くことで、蓄電装置と電気車駆動装置は電車線と補助電源装置へ影響を与えることなく電力の授受が可能となる。
(2)上記構成で、第1の開閉器と第3の開閉器を閉じて第2の開閉器を開くことで、電車線の電力で補助電源装置と電気車駆動装置が動作する電気車として使用することができる。
(3)上記構成で、第2の開閉器と第3の開閉器を閉じて第1の開閉器を開くことで、蓄電装置の電力で補助電源装置と電気車駆動装置が動作する電気車として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を実施した電気車の構成例を示す図である。
【図2】電気車駆動装置の発生電力を蓄電装置へ蓄積する場合と、蓄積された電力を 再利用する場合の回路構成図である。(実施例1)
【図3】電車線の電力によって動作する電気車として使用する場合の回路構成図であ る。(実施例2)
【図4】蓄電装置の電力によって動作する電気車として使用する場合の回路構成図で ある。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1(a)は本発明を適用した主回路構成、同図(b)は直流電池で構成される蓄電装置の構成例、同図(c)はインバータ装置等から構成される補助電源装置の構成例、及び同図(d)はインバータ装置と駆動用電動機等から構成される電気車駆動装置の構成例である。図1(a)において、集電装置1に直列に開閉器5と補助電源装置3が接続される。また蓄電装置2には開閉器6と電気車駆動装置4が直列に接続される。該開閉器5と該補助電源装置3との接続線から分岐した線と、該開閉器6と該電気車駆動装置4との接続線から分岐した線が、それぞれ開閉器7へ接続されている。
【0013】
図1(b)に示す蓄電装置2は蓄電媒体となる直流2次電池21で構成される。
図1(c)に示す補助電源装置3はスイッチSW1、リアクトルL1、コンデンサC1、インバータ31a、フィルタ31b、及び変圧器31cから構成される静止形変換装置31と室内灯や冷暖房装置からなる負荷機器32で構成され、静止形変換装置31は直流の入力を交流に変換して負荷機器32に供給する。
図1(d)に示す電気車駆動装置4はスイッチSW2、リアクトルL2、コンデンサC2、及びインバータ41aから構成される可変電圧可変周波数インバータ41と3相誘導電動機の駆動用電動機42で構成され、可変電圧可変周波数インバータ41は直流を入力として駆動用電動機42の可変速駆動用の交流を出力する。
【0014】
本発明を適用した主回路構成での電気車の動作を説明する。電気車を加速させる際には電気車駆動装置4に直流電力を供給して駆動用電動機42を力行運転し、電気車を減速する際には駆動用電動機42によって走行エネルギーから変換された電力を電気車駆動装置から直流電力として取り出して消費することにより、駆動電動機42にブレーキ力を発生させる。一方、補助電源装置3には常時直流電力を供給して、室内灯や冷暖房装置を電気車の走行状態に関係なく動作させる。
【0015】
電気車を加速させる場合は図3に示す回路構成とし、開閉器5及び7を閉じて集電装置1によって集電した電力を補助電源装置3と電気車駆動装置4へ供給する。電気車が加速を終えた時は、開閉器7を開くと共に開閉器6を閉じて図2に示す回路構成とする。この後電気車を減速させると、電気車駆動装置4から発生する直流電力は開閉器6を通して蓄電装置2へ供給され、蓄電装置2の直流2次電池に化学エネルギーとして蓄積されることで消費される。電気車駆動装置4の発生電力が蓄電装置2に蓄積されることで、電気車駆動装置4の駆動電動機42にはブレーキ力が発生して電気車が減速する。この動作の間、補助電源装置3と集電装置1は開閉器5で常時接続されているので、補助電源装置への電力供給が停止することはない。
【0016】
電気車を加速させる場合は図2に示す回路構成とすることもできる。蓄電装置2に蓄積された電力を電気車駆動装置4へ供給して再利用する時はこの回路構成とする。この場合は、電気車駆動装置4は開閉器6を通して蓄電装置2から供給される電力を使用して電気車を加速させる。この時、補助電源装置3は開閉器5を通して集電装置1から電力を供給される。従って、電気車駆動装置4からの電力を蓄電装置2に蓄積してから、蓄電装置2の電力を電気車駆動装置4で再利用する間、補助電源装置3は常に集電装置1からの電力が供給されるため、室内灯や冷暖房装置は停止しない。
【0017】
本発明の適用した電気車では図4に示す回路構成とすることもできる。この場合は、開閉器5を開いて開閉器6及び7を閉じて、蓄電装置2の電力を補助電源装置3と電気車駆動装置4へ供給する。この回路構成では、蓄電装置2の蓄積電力の容量以内で電車線を使用することなく、電気車を動作させることができる。
【0018】
図1の構成において、第1の開閉器と第2の開閉器と第3の開閉器を必要に応じて遮断器に置き換えた構成においても本発明の目的を達成することができる。
【0019】
また図1の構成において、第1の開閉器と第2の開閉器を必要に応じて遮断器と開閉器を直列に接続した構成に置き換えても本発明の目的を達成することはできる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、蓄電装置を備えてブレーキ時の発電電力を蓄積することが可能な電気車に利用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 集電装置
2 蓄電装置
3 補助電源装置
4 電気車駆動装置
5 開閉器
6 開閉器
7 開閉器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電装置、蓄電装置、補助電源装置、電気車駆動装置を備える電気車において、
該集電装置に直列に接続された第1の開閉器と、該第1の開閉器を介して前記集電装置に接続された該補助電源装置と、該蓄電装置に直列に接続された第2の開閉器と、該第2の開閉器を介して前記蓄電装置に接続された該電気車駆動装置と、前記第1の開閉器と前記補助電源装置との接続点と前記第2の開閉器と前記電気車駆動装置との接続点の間を接続する第3の開閉器によって構成されることを特徴とする電気車の回路方式。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の開閉器と前記第2の開閉器と前記第3の開閉器の全てをまたは何れかを、遮断器としたことを特徴とする電気車の回路方式。
【請求項3】
請求項2において、前記第1の開閉器と前記第2の開閉器の両方をまたは何れかを、直列に接続した遮断器と開閉器としたことを特徴とする電気車の回路方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−13264(P2013−13264A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145077(P2011−145077)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】