説明

蔓誘引装置

【課題】コンクリート製構造物の壁面に沿って設けられたネットに沿って、うり科植物の蔓を育成させて壁面緑化を行なう際に、とくに垂下した蔓の先端部を確実にネットに保持させるようにする。
【解決手段】底部に蔓受け部36が設けられるとともに、上側の両側に係止部37が設けられた止め具35を伸縮自在の竿25の先端側の保持部材30に保持させるようにする。そして上記止め具35の蔓受け部36によって垂下した蔓を受け、この状態で伸縮自在の竿25によって止め具35をネット11の所定の部位に押付け、止め具35の係止部37をネット11の縦の部分あるいは横の部分に引掛けるようにし、この状態で竿25を引張って止め具35を保持部材30から離脱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蔓誘引装置に係り、とくにほぼ垂直に配された支持手段に沿って植物の蔓を誘引するようにした蔓誘引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の建造物の外壁面に沿って、蔓性植物を栽培するようにした壁面緑化技術が知られている。壁面緑化技術は、建造物の壁面に沿って、例えば魚網等のネットを配し、このネットに沿って、蔓性植物の蔓を誘引しながら栽培するものである。ここでネットの下端側の地面上に直接栽培されるかプラントボックスが設置され、このプラントボックスによって糸瓜、ゴーヤ、胡瓜等のうり科の植物が栽培され、このような植物の蔓が上記ネットに沿って上方に伸びるように成育し、これによって建造物の壁面を植物体が覆うようにし、壁面緑化が達成される。
【0003】
ところがこのような壁面緑化技術においては、蔓を誘引するネットが建造物の壁面に沿ってほぼ垂直の状態で配されるために、場合によっては植物の蔓の部分が上記ネットから脱落することがある。この場合に、梯子等を使って人手によって、脱落した蔓の先端部をネットに支持するように紐で保持していた。従ってとくに高所での蔓の誘引作業に困難を生ずることになっていた。一般に壁面緑化は、建造物の高さが3階〜5階程度の高さで利用されるために、10数mの高さまで人が登らなければならず、その作業は困難を極めるとともに、安全性においても問題があった。
【0004】
なおこのような壁面緑化技術においては、例えば特許第3468647号公報に開示されているような自動給水装置が好適に用いられる。この自動給水装置は、水供給源に直結の給水管が接続されるノズル及びフロートが内蔵され、フロートの浮力によりノズルの出水口が閉塞される定水位給水器と、定水位給水器の側壁下部より花壇内の底部に延び、且つ、花壇の側壁に設けられた過剰水排水口に連なる多孔通気排水管とよりなり、定水位給水器の水位が多孔通気配水管の中程以下に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3468647号公報
【特許文献2】特開平7−236357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の課題は、支持手段から脱落した蔓を確実に支持手段に保持させることができるようにした蔓誘引装置を提供することである。
【0007】
本願発明の別の課題は、支持手段から脱落した蔓を支持手段に保持させるために、その場所まで人が登って作業を行なう必要がないようにした蔓誘引装置を提供することである。
【0008】
本願発明のさらに別の課題は、地上にいる人が高所の脱落した蔓を容易に支持手段に保持できるようにした蔓誘引装置を提供することである。
【0009】
本願発明のさらに別の課題は、支持手段から脱落した蔓を簡単に支持手段に保持させるようにした蔓誘引装置を提供することである。
【0010】
本願発明のさらに別の課題は、極めて簡単な構造の止め具を用いて、脱落した蔓を支持手段に保持させるようにした蔓誘引装置を提供することである。
【0011】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の主要な発明は、ほぼ垂直に配された支持手段に沿って植物の蔓を誘導するようにした蔓誘引装置において、
前記植物の蔓を受入れる蔓受け部と、前記支持手段に係止される係止部とを有する止め具によって前記支持手段から脱落した蔓を前記支持手段に保持することを特徴とする蔓誘引装置に関するものである。
【0013】
ここで、前記止め具は、所定の形状に屈曲された線状体から構成され、その底部のほぼ中央部に前記蔓を受入れる蔓受け部が形成されるとともに、上部に屈曲した係止部が形成されてよい。また前記止め具は、伸縮自在な竿の先端部に取付けられかつ内側が前記止め具の外形形状とほぼ整合する保持部材の内側に形成された保持溝によって着脱自在に保持され、前記蔓受け部によって蔓を受入れるとともに、前記係止部が前記支持手段に係止された状態で前記竿を引張ると、前記止め具が前記保持部材から離脱するようにしてよい。また前記支持手段がネット状をなし、その横の部分または縦の部分に前記止め具の係止部が係止されてよい。また前記支持手段が魚網であって、建造物の外壁面に沿って張設され、前記魚網によって植物の蔓が誘引されて壁面緑化が行われてよい。
【発明の効果】
【0014】
本願の主要な発明は、ほぼ垂直に配された支持手段に沿って植物の蔓を誘導するようにした蔓誘引装置において、植物の蔓を受入れる蔓受け部と、支持手段に係止される係止部とを有する止め具によって支持手段から脱落した蔓を支持手段に保持するようにしたものである。
【0015】
従ってこのような蔓誘引装置によると、支持手段から脱落した蔓を止め具の蔓受け部によって受けるとともに、この止め具をその係止部によって支持手段に係止させることにより、脱落した蔓を支持手段に保持させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】壁面緑化の概要を示す側面図である。
【図2】垂下した蔓を保持させるための工具の全体の構造を示す正面図である。
【図3】保持部材の正面図および平面図である。
【図4】止め具の正面図である。
【図5】止め具と保持部材との関係を示す分解斜視図である。
【図6】蔓性植物のネットに対する保持の動作を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。図1は蔓性植物による壁面緑化の技術の概要を示すものであって、3階建ての鉄筋コンクリート製の建造物の場合には、その屋上までの高さが地上から約12mになる。また4階建ての建物の場合には、その高さが約16mになる。壁面緑化技術は、一般に5階建て以下の鉄筋コンクリート構造物の壁面に沿って、蔓性植物を繁殖させ、これによって鉄筋コンクリート構造物の壁面の緑化を行なうものである。
【0018】
鉄筋コンクリート製の構造物10の外壁面に沿って、その外壁面から所定の距離を離れた状態でネット11が張られる。ネット11は蔓性植物の蔓を支持する支持手段を構成しており、このようなネット11として、魚網が好適に用いられる。そしてネット11の上端は、屋上の防護柵12の所定の位置にひも13を介して取付けられる。これに対して地上であって、建造物10の壁面から所定の距離を離れた位置にプラントボックス14が配設される。そしてプラントボックス14の上縁に設けられている係止パイプ15に、ひも16を介してネット11の下端部が係止される。従ってネット11は、図1に示すように、建造物10の壁面に沿ってほぼ垂直であって下の方が建造物10からやや離れた状態で張設される。
【0019】
プラントボックス14によって、糸瓜、ゴーヤ、胡瓜等のとくにうり科の蔓性植物が好適に栽培される。このような植物の蔓は、建造物10の前面側に張設されたネット11に沿って伸びてゆき、これによってやがてネット11の全面を覆うようになる。従ってこれにより、建造物10の外壁面は、ネット11によって栽培される蔓性植物の蔓から伸びる葉によって壁面緑化が行なわれる。
【0020】
一般に壁面緑化においては、蔓性植物は魚網から成るネット11に沿って上方へ伸びてゆくものの、場合によっては上記ネット11から先端部が脱落し、これによって蔓が下方に垂下することがある。このような蔓の先端部の垂下の現象は、壁面緑化の外観を悪化させ、さらには壁面緑化の機能を劣化させることになる。本実施の形態は、このようなネット11に沿って栽培される蔓性植物の蔓の垂下による壁面緑化の問題を解消するためのものであって、図2に示すような工具を用いて垂下した植物の蔓をネットに保持させるようにしている。
【0021】
図2に示すように、この保持具は伸縮自在の竿25を用いるようにする。このような竿25としては、長尺の釣竿、磯釣り用の玉網の長尺の柄等の伸縮自在の構造体を兼用して用いるようにしている。なおこれに代えて、順次直径が異なる複数の筒体を組合わせて伸縮自在の竿25とすることもできる。そしてこのような伸縮自在の竿25の上端部には接続筒26が取付けられる。接続筒26の内周面には雌ねじ孔27が設けられている。
【0022】
上記接続筒26の雌ねじ孔27の部分には、接続ボルト28が螺着される。この接続ボルト28はロッド29の下端に固着されている。そしてロッド29の上端側には、保持部材30が固着されている。
【0023】
上記保持部材30は、図3A、Bに示すように、その外形形状が止め具35の外形形状とほぼ整合する形状になっており、しかも保持部材30の内側に形成されている保持溝34によって、止め具35を着脱自在に保持するようになっている。すなわち止め具35がほぼハート型の場合には、保持部材30の内側の形状であって保持溝34の形状もまた、上記ハート型の形状と整合する形状であってよい。またこのような止め具35を保持する保持部材30としては、止め具35の形状に応じて、U字型、V字型、コの字型等の他の形状としてもよい。また保持部材30は、金属あるいは樹脂から製作してよい。あるいはまた外側を金属から構成するとともに、内側にゴムを取付けた保持部材30を用いるようにしてもよい。
【0024】
これに対して止め具35は、図4および図5に示すように、例えば針金や合成樹脂の成形体から構成されてよく、その下端側の凹状の部分が蔓受け部36になっている。これに対して上方であってその両端側の部分がそれぞれ内側へ屈曲した係止部37になっており、このような係止部37を用いて支持手段を構成するネット11の横の部分または縦の部分に引掛けて取付けるようになっている。
【0025】
次にこのような止め具35による植物20の蔓の保持動作を図6によって説明する。伸縮自在の竿25の先端側の保持部材30の保持溝34によって止め具35を装着し(図5参照)、このような状態で竿25を所定の長さまで延長する。そして竿25を植物20の蔓の垂下部のところまで延ばすようにする。そしてまず垂下した蔓を上記止め具35の蔓受け部36によって受けるとともに、この状態で伸縮自在の竿25によって垂下がった蔓を持上げるようにする。そしてさらに竿25を上方に押上げるようにし、止め具35の係止部37を支持手段11の横の部分あるいは縦の部分に引掛けるようにする。ここでとくにネット11に対して止め具35を押付けると、その近傍のネット11の横の部分または縦の部分に止め具35の係止部37が自動的に引掛ることになる。そこで次に、上記伸縮自在の竿25を下方に引くと、止め具35が保持部材30の保持溝34から脱落する。これによって垂下した植物20の蔓が、ネット11の所定の部位に、止め具35を介して保持されることになる。
【0026】
このような蔓の保持動作によると、地上から梯子を掛けて人が登ってネット11に対して垂下した蔓をひもで固定する等の作業が必要でなくなり、総ての作業が地上から、伸縮自在の竿25のみを用いて行なうことが可能になる。従って蔓の保持の作業の安全性が改善される。そしてそれぞれの部位において、垂下した植物20の蔓は、止め具35によって確実に保持されるために、壁面緑化の美観が悪化することがなく、整然とした状態で蔓性植物がネット11に沿って成育することになる。
【0027】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内で各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態における支持手段を構成するネット11として、魚網に代えて、金網等の他の支持手段を用いるようにしてもよい。またネット11に沿って蔓が伸びる植物20としては、必ずしもうり科の植物である必要はなく、例えば蔦に代表されるブドウ科植物のような蔓性植物であってよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本願発明は、コンクリート構造物の壁面に沿って緑化を行なう壁面緑化に応用することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 建造物
11 ネット(支持部材)
12 防護柵
13 ひも
14 プラントボックス
15 係止パイプ
16 ひも
20 植物
25 伸縮自在の竿
26 接続筒
27 雌ねじ孔
28 接続ボルト
29 ロッド
30 保持部材
34 保持溝
35 止め具
36 蔓受け部
37 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ垂直に配された支持手段に沿って植物の蔓を誘引するようにした蔓誘引装置において、
前記植物の蔓を受入れる蔓受け部と、前記支持手段に係止される係止部とを有する止め具によって前記支持手段から脱落した蔓を前記支持手段に保持することを特徴とする蔓誘引装置。
【請求項2】
前記止め具は、所定の形状に屈曲された線状体から構成され、その底部のほぼ中央部に前記蔓を受入れる蔓受け部が形成されるとともに、上部に屈曲した係止部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の蔓誘引装置。
【請求項3】
前記止め具は、伸縮自在な竿の先端部に取付けられかつ内側が前記止め具の外形形状とほぼ整合する保持部材の内側に形成された保持溝によって着脱自在に保持され、前記蔓受け部によって蔓を受入れるとともに、前記係止部が前記支持手段に係止された状態で前記竿を引張ると、前記止め具が前記保持部材から離脱することを特徴とする請求項1に記載の蔓誘引装置。
【請求項4】
前記支持手段がネット状をなし、その横の部分または縦の部分に前記止め具の係止部が係止されることを特徴とする請求項1に記載の蔓誘引装置。
【請求項5】
前記支持手段が魚網であって、建造物の外壁面に沿って張設され、前記魚網によって植物の蔓が誘引されて壁面緑化が行われることを特徴とする請求項1に記載の蔓誘引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−195246(P2009−195246A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125583(P2009−125583)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3136898号
【原出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(507281395)
【Fターム(参考)】