説明

薄いマントル層を有するソリッドゴルフボール

【課題】 従来の2層性ゴルフボールの欠点:きわめて硬く、クラブで打つと硬い「感触」を与える;及び、距離は延びるが、グリーンへのアプローチショットではコントロールが難しい、を改善するボールを提供すること。
【解決手段】 ソリッド複数層ゴルフボールは、コア、マントル層、及びカバー層を含む。該カバー層及びマントル層は共に熱可塑性ポリウレタン材料から製造される。カバー層は、マントル層よりも軟らかく、スピン及び耐久性に関して最適厚を与えられる。マントル層は、カバー層及びボール全体の体積に比べて、比較的薄い。マントル層はさらに、カバー層よりも硬い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、複数層を有するゴルフボールに関し、特に、外周を取り囲むカバー層に比べて薄く、硬いマントル層を有するソリッドゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年に亘ってゴルフボールは著明な変化を遂げた。例えば、ゴムコアは、品質の一貫性、及び、比較的長距離におけるドライバースピンの低下などの性能利点のために、徐々に糸巻きコアに取って代わっている。さらに、ゴルフボールのカバー及びディンプルパターンにも他の目覚ましい変化が起こっている。
【0003】
ゴルフボールの設計及び技術は進歩し、そのため、全米ゴルフ協会("USGA")は、USGA認可イベントにおいて、130フィート/秒の速度を有するドライバーによって打たれた場合(以後、「USGA試験」と呼ぶ)、250フィート/秒の初速を達成することが可能な全てのゴルフボールの使用を禁ずるとする規則を設けるまでに至った(ロイヤルアンドエンシェントクラブ、セントアンドリュース("R&A")も、R&A認可イベントのために同様の規則を設けた)。メーカーは、USGA試験においてこの限界を超えることなく可能な最高速度を一貫して実現するゴルフボールの生産に大きな力点を置いている。そうは言っても、市販のゴルフボールは、ある範囲の、例えば、速度、スピン、及び圧縮度などの、種々の特性及び特徴を有する。したがって、広範囲のゴルファーの要求及び願望に応えるために、様々の異なるボールが市販されてもよい。
【0004】
構造とは無関係に、多くのプレイヤーは、多くの場合、最大距離に達するゴルフボールを求める。当然、この性質のボールは、インパクト時、高い初速を要求する。その結果、ゴルフボールメーカーは、常に、あらゆるスキルレベルのゴルファー達に最大性能を提供するゴルフボールを供給するための新規方法を探求し、より低い圧縮ボールでありながら、一般に高圧縮ボールと関連する性能の実現を可能とする組成を見出そうと追求している。
【0005】
ソリッド構造を持つボールは、一般に、平均的な休日ゴルファーにおいてもっともポピュラーである。なぜなら、それらのボールは、最大距離を実現する一方で、きわめて高耐久度のボールを提供するからである。ソリッドボールは、多くの場合、ポリブタジエンなどの架橋結合ゴム、すなわち、ジアクリル酸亜鉛及び/又は同様の架橋剤によって化学的に架橋結合されるゴムから製造される単一ソリッドコアを含み、これは、次に、丈夫でカットプルーフ(創傷耐性)な混合カバーを実現するために、SURLYN(登録商標)(DuPontによって生産されるアイオノマー樹脂に対する商標)などのカバー材料の内部に封入され、よく「ツーピース(二層)」ゴルフボールと呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単一ソリッドコアとカットプルーフカバーのこのような組み合わせは、このようなツーピースゴルフボールに高い初速を与えることを可能とし、これは、距離の向上をもたらす。しかしながら、このようなツーピースゴルフボールに使用される材料は、きわめて硬い可能性がある。そのため、ツーピースボールは、構造によっては、クラブで打った場合、硬い「感触」を与える。同様に、その硬さのために、これらのツーピースボールは、一方では比較的長い距離を与えるものの、スピン率が比較的低い可能性があり、例えば、グリーンに向かってアプローチショットを打つ場合、時としてコントロールが比較的難しい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1局面において、本発明は、コア、該コアを囲むカバー層、ここに該カバー層はカバー硬度を有する、及び、該コア及びカバー層の間に位置づけられるマントル層、ここに該マントル層はマントル硬度を有する、を含む複数層を有するゴルフボールを提供する。カバー硬度は、マントル硬度よりも少なくとも6ショアD単位低い。このゴルフボールは、該ゴルフボールの全層の総和体積である総体積を有するが、マントル層は、マントル層のみの体積であるマントル体積を有し、そのマントル体積は、総体積の10パーセント未満である。
【0008】
第2局面において、本発明は、内方コア、該内方コアを囲む外方コア、該外方コアを囲むマントル層、ここに該マントル層は、熱可塑性ポリウレタンを含み、かつ、マントル厚及びマントル硬度を有する、及び、該マントル層を囲むカバー層、を含むゴルフボールを提供する。カバー層は、熱可塑性ポリウレタンを含み、かつ、カバー層は、カバー厚及びカバー硬度を有する。マントル厚は、カバー厚よりも少なくとも0.4 mm小さく;マントル硬度は、カバー硬度よりも、少なくとも約4ショアD単位大きい。
【0009】
第3局面において、本発明は、高度に中和されるポリマーを含む内方コアであって、約24-28 mmの直径を有する内方コアを含むゴルフボールを提供する。このゴルフボールはさらに、内方コアを囲み、ポリブタジエンゴムを含む外方コア層であって、約7.55-7.75 mmの外方コア厚を有する外方コア層を有する。このゴルフボールはさらに、外方コアを囲むマントル層であって、熱可塑性ポリウレタンを含むマントル層を有する。このマントル層は、約0.6 mmのマントル厚、及び、ショアDスケールにおいて約62と約70の間のマントル硬度を有する。このゴルフボールはさらに、マントル層を囲むカバー層であって、熱可塑性ポリウレタンを含み、約1.0-1.2 mmのカバー厚、及び、ショアDスケールにおいて約45と約58の間のカバー硬度を有する。このゴルフボールは、10 kgの初期負荷及び約130 kgの最終負荷を課せられると、約2.4と約2.7の間の圧縮度を有する。
【0010】
本発明のこれらの局面に関する、他の変更、改変、特色、利益、及び利点は、当業者には明白であろうし、或いは、下記の図面及び詳細な説明を精査することによって明白となろう。そのような変更、改変、特色、利益、及び利点は全て、本明細書及び本概要の範囲に含まれ、本発明の範囲に含まれ、かつ、添付の特許請求項による定義に従って保護されることが意図される。
【0011】
本発明は、下記の図面及び説明を参照することによってさらによく理解することが可能である。図面の成分は必ずしも実尺に合致するものではなく、強調はむしろ本発明の原理の具体的説明に置かれる。さらに、図面において、同じ参照数字は、種々の投影図を通じて対応する部品を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ゴルフボールの斜視図である。
【図2】図1の直線2-2に沿って得られた、ゴルフボールの実施態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
比較的最近、アイオノマー材料などの熱可塑性材料を持つ、多層ゴルフボールが製造されている。このような多層ボールでは、ティーショットではスピンがより低くなるが、グリーンに対するアプローチショットではスピンが増すように、などの追加特色を加えるため、種々の材料から成る比較的薄い層が共に融合される場合がある。例えば、これらの層の一つは、マントル層中の硬いアイオノマー樹脂であり、一方、より柔らかいエラストマー材料は、外方層に隣接する層を形成する。アイオノマーの比較的薄い層が使用されるのは、アイオノマー樹脂の反発弾性が比較的低いこと、特に、コア又はコアの種々の部分を形成するために使用されるエラストマー材料に比べて低いためである。
【0014】
熱可塑性材料から製造されるゴルフボール層はさらに、例えば、架橋結合ポリブタジエンなどの熱硬化性エラストマーゴムコアと比べると、その品質がより均一であると考えられる。同様に、ゴルフボールに対し比較的スピンを与え易く、したがって、飛行中及び着地時のコントロールをやり易くする、より柔らかい感触を実現するために、ゴルフボールの層において、より硬く、より弾性の低い、架橋結合アイオノマー樹脂(例えば、SURLYN)の代わりに、より弾性の高い熱可塑性材料、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を使用してもよい。さらに、本発明において開示されるように、打たれたときのゴルフボールの反応を微妙に調整可能とするために、TPUは、より柔らかく、及び/又は、より硬い材料と組み合わせて/隣接して使用することが可能である。
【0015】
定義
本発明について説明する前に、いくつかの用語を定義することは便利である。下記の定義は、本出願を通じて使用されることを了解しなければならない。
【0016】
この用語の定義が、該用語の一般的に使用される意味と乖離する場合、本出願人は、特にそうではないと明示しない限り、下記に提示される定義を用いるつもりである。
【0017】
本開示の目的のために、「ゴルフボール」という用語は、ゴルフゲームをプレイする際に使用される、任意の、全体として球形状のボールを指す。
【0018】
本開示の目的のために、「コア」という用語は、通常、ゴルフボールの中心により近いか、又は、中心に近接する、ゴルフボールの部分を指す。コアは、複数層であって、その際、ゴルフボールのもっとも中心に近い部分が「コア」又は「内方コア」であり、それを取り囲むコア層はいずれも、「外方コア」層である、複数層を有していてもよい。
【0019】
本開示の目的のために、「マントル」という用語は、一般に、単一又は複数のコア層と最外側カバーの間に位置づけられる、ゴルフボールの、必要に応じて設けられる単一又は複数層であって、カバーに対し近接又は隣接する層を指す。
【0020】
本開示の目的のために、「カバー」という用語は、一般に、ゴルフボールの最外側層であって、多くの場合、その外面にディンプルから成るパターン(ディンプルパターン)を有する層を指す。
【0021】
本開示の目的のために、「ディンプル」という用語は、ゴルフボールカバーの外面の中に沈む陥凹、又は、該外面から浮上する突起であって、該ゴルフボールの飛行をコントロールするために使用される陥凹又は突起を指す。ディンプルは、半球状(すなわち、球体の半分)、又は、半・半球状(すなわち、半球の一部又は部分)において、半球状及び半・半球状ディンプルの各種の組み合わせを含んでもよいばかりでなく、楕円形状、正方形状、多角形状、例えば、六角形状などであってもよい。その形がより半球状であるディンプルは、「より浅い」ディンプルと呼んでもよく、一方、その形状がより球状であるディンプルは、「より深い」ディンプルと呼んでもよい。
【0022】
本開示の目的のために、「ディンプルパターン」という用語は、ゴルフボールカバーの外面における複数のディンプルの配置を指す。ディンプルパターンは、同じ形、異なる形を有するディンプル、パターン内におけるディンプルの異なる配置(形及び/又はサイズの両方に関して)、反復サブパターン(すなわち、ディンプルパターン内部の、より小さいディンプルパターン)、例えば、球状三角などを含んでもよい。ある実施態様では、ディンプルパターン内のディンプルの合計数は、約250から約500の範囲、例えば、約300から400の範囲にあってもよい。ディンプルパターンにおけるディンプルの合計数は、多くの場合偶数(例えば、336又は384ディンプルであるが)、奇数(例えば、333ディンプル)であってもよい。
【0023】
本開示の目的のために、「総ディンプル体積」という用語は、ディンプルパターンを構成する全てのディンプルの、集合、合計、併合などの体積を指す。
【0024】
本開示の目的のために、「熱可塑性」という用語は、熱可塑性という用語の通例の意味を指す、すなわち、熱にさらされると軟化し、室温(例えば、約20°から約25℃)に冷却されると、一般に、その元の形に復帰する材料の性質を提示する組成物、化合物、材料、媒体、物質など、例えば、高分子ポリマーを指す。
【0025】
本開示の目的のために、「熱硬化性」という用語は、熱硬化性という用語の通例の意味、すなわち、融解温度を持たないように架橋結合され、溶媒に溶解することはできないが、溶媒によって膨潤する場合がある、組成物、化合物、材料、媒体、物質などを指す。
【0026】
本開示の目的のために、「ポリマー」という用語は、30を超えるモノマー単位を有する分子で、一つ以上のモノマー又はオリゴマーの重合によって形成又は取得される分子を指す。
【0027】
本開示の目的のために、「オリゴマー」という用語は、2から30モノマー単位を有する分子を指す。
【0028】
本開示の目的のために、「モノマー」という用語は、一つ以上の官能基を有し、オリゴマー及び/又はポリマーを形成することが可能な分子を指す。
【0029】
本開示の目的のために、「アイオノマー」という用語は、少なくとも一つのカルボン酸基を有し、一つ以上の塩基(塩基の混合物を含む)によって、少なくとも部分的に、又は完全に中和されて、カルボン酸塩モノマー(又は、カルボン酸塩モノマーの混合物)を供給するモノマーを指す。例えば、このアイオノマーは、カルボン酸ナトリウム及び亜鉛塩の混合物、例えば、創傷耐性ゴルフボールカバーのために、DuPont社の商標SURLYNの下に販売されるアイオノマー樹脂の製造に使用される混合アイオノマーを含んでもよい。
【0030】
本開示の目的ために、「アイオノマー樹脂」という用語は、一つ以上のアイオノマー単位、又は複数のアイオノマーを含むか、又はそれらから形成されるオリゴマー又はポリマーであって、一つ以上のアイオノマー(例えば、少なくとも部分的に、又は完全に中和されるメタクリル酸)と、一つ以上の、エチレンなどの、アイオノマーではないモノマー又はオリゴマーとのコポリマーであってもよいオリゴマー又はポリマーを指す。
【0031】
本開示の目的のために、高度に中和されるポリマーという用語は、その電荷の大部分が、カウンターイオン材料の付加によって打ち消されるポリマーを指す。高度に中和されるポリマーでは、95%以上の電荷散逸が得られてもよい。
【0032】
本開示の目的のために、「エラストマー」という用語は、弾性性質を有するオリゴマー又はポリマーを指し、本明細書では「ゴム」という用語と相互交換的に用いられてもよい。
【0033】
本開示の目的のために、「ポリイソシアネート」という用語は、二つ以上のイソシアネート官能基(例えば、ジイソシアネート)を有する有機分子を指す。本発明において有用なポリイソシアネートは、脂肪族又は芳香族、或いは、芳香族と脂肪族の組み合わせであってもよく、下記、ただしこれらに限定されないが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、イソプレンジイソシアネート(IPDI)などを含んでもよい。
【0034】
本開示の目的のために、「ポリオール」という用語は、二つ以上のヒドロキシ官能基を有する有機分子を指す。「ポリオール」という用語は、ジオール、トリオールなど、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールなどを含んでもよい。例えば、これらの他のポリオールは、"biorenewable(生再生可能な)"ポリエーテルポリオール(すなわち、処理の際、環境に対するインパクトが緩和されるポリエーテルポリオール)、例えば、11.22から224.11 mg KOH/gのヒドロキシル値を有する、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)などの内の一つ以上を含んでもよい。これらの「生再生可能な」ポリエーテルポリオール、例えば、ポリトリメチレンエーテルグリコールは、生再生可能な資源から、例えば、天然のトウモロコシの発酵プロセス、或いはむしろ合成化学プロセスを通じて誘導、取得、又は抽出などによって得られてもよい。
【0035】
本開示の目的のために、「ポリウレタン」という用語は、ウレタン(カルバメート)によって接合されるポリマーであって、例えば、ポリオール(又は、開環機構などによってポリオールを形成する化合物、例えば、エポキシド)及びポリイソシアネートから調製されてもよいポリマーを指す。本発明において有用なポリウレタンは、熱可塑性又は熱硬化性であってもよいが、カバーに使用される場合は熱可塑性である。熱可塑性ポリウレタンのソフトセグメントはさらに、硬度の操作などの変動性特性又は特徴を実現するように、他のポリオール又は材料に対し部分的に架橋結合されてもよい。
【0036】
本開示の目的のために、「鎖伸長剤」という用語は、比較的低分子量のポリウレタンの分子量を、より高い分子量ポリウレタンに増大させる介在因子を指す。鎖伸長剤は、一つ以上のジオール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなど;トリオール類、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロールなど;及び、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどを含んでもよい。
【0037】
本開示の目的のために、「反発弾性率」という用語は、ゴム、又はゴム様特性を持つように処方される物質の材料特性を指し、その際、反発弾性率は、材料の保存弾性率と該材料の損失弾性率の間の関係によって定義されるヒステレシスエネルギー損失の表示である。反発弾性率は、一般に、パーセントで表され、このパーセントは、ヒステレシス損失に反比例する。材料単独については、反発弾性率は、ASTM D7121-05標準法など、公知のいずれの方法を用いて測定してもよい。ゴルフボールシステムの反発弾性率は、ゴルフボールの成分として使用される材料の反発係数(COR)、ゴルフボールの分離部分(単数又は複数)又は分離成分(単数又は複数)(例えば、コア、層、カバーなど)のCOR、或いは、ゴルフボールのCORによって測定されてもよい。
【0038】
本開示の目的のために、「慣性モーメント(MOI)」という用語は、対象物が、その回転率の変化に対して示す抵抗に関する測定値を指し、gcm2の単位で与えられてもよい。MOIという用語はさらに、「質量慣性モーメント("mass moment of inertia")」及び"angular
mass"という用語を相互交換的に指す。
【0039】
本開示の目的のために、「反発係数(COR)」という用語は、インパクト前後の対象物の速度の比を指す。1のCORは、衝突によるエネルギー損失がない、完全な弾性衝突を表し、一方、0のCORは、エネルギーの全てが衝突によって散逸される、完全な非弾性衝突を表す。
【0040】
本開示の目的のために、「比重(SG)」という用語は、ある特定の温度及び圧における水の密度に対する、与えられた固体(又は液体)の密度の比、という通例の意味を指す。
【0041】
本開示の目的のために、「偏向」という用語は、ある構造要素が負荷の下にずらされる角度を指す。偏向の量(偏向量)は、ゴルフボール(又は、ゴルフボールの一成分又は複数成分)を圧縮する能力の測定値として使用してもよく、したがって、反発弾性率(すなわち、COR)の測定値となる。
【0042】
本開示の目的のために、「ショアD硬度」という用語は、硬度計による、材料の硬度、特に、陥凹形成に対する材料の抵抗の測定値を指す。ショアD硬度は、コア、層、カバーなどの曲面に直接置かれる硬度計によって、ASTM法D2240にしたがって測定されてもよい。別の実施態様では、硬度は、標準的プラークを用いて測定してもよい。
【0043】
本開示の目的のために、「曲面」という用語は、ゴルフボール、コアの単一層又は複数層、コア、カバーなどの表面の、該ゴルフボール、コアの単一層又は複数層、コア、カバーなどの各種特性、特徴などを測定するために使用される曲性部分を指す。
【0044】
飛距離は、ゴルフボールの性能を評価するためのインデックスとして使用してもよい。飛距離は、三つの主要因子によって影響される、すなわち、「初速」、「スピン率」、及び「打ち上げ角度」である。初速は、ゴルフボールの飛距離に影響を及ぼす、主要な物理特性の一つである。反発係数(COR)を、ゴルフボールの初速に代わる代替えパラメータとして用いてもよい。
【0045】
ゴルフボールの性能を測定するために使用してもよい、もう一つのインデックスはスピン率である。ボールのスピン率は、「バックスピン」又は「サイドスピン」に関して測定されてもよい。なぜなら、これらの異なるタイプのスピンは、ボールの飛行に対して異なる影響を及ぼすからである。飛行方向とは反対のボールのスピンは、「バックスピン」と呼ばれる。ボールに対するスピンで、飛行方向に対しある角度で方向づけられるスピンはいずれも「サイドスピン」である。バックスピンは、一般に、ボールの飛距離に影響を及ぼす。サイドスピンは、一般に、ボールの飛行軌道の方向に影響を及ぼす。バックスピンとサイドスピンのベクトル和は「トータルスピン」である。
【0046】
ゴルフボールのスピン率は、一般に、該ボールの中心を通る長軸の周囲にボールが回転する速度を指す。ボールのスピン率は、多くの場合、1分当たりの回転数で測定される。ボールのスピンはリフト(浮上)を引き起こすので、ボールのスピン率は、ボールの弾道に直接影響を及ぼす。高いスピン率を持つショットは、低いスピン率を持つボールと比べると、より高い高度に飛ぶ傾向がある。より高いスピン率を持つボールはより高く飛ぶ傾向があるので、過剰量のスピンを伴って打たれたボールが移動する総合距離は、理想的スピン量を伴って打たれたボールのそれよりも小さくなる傾向がある。逆に、不十分なスピン量を伴って打たれたボールは、キャリー距離を延ばすほど十分なリフトを産みださないので、著明な距離の損失を招く。したがって、理想量のスピンを伴ってボールを打つことが、該ボールの移動距離を最大にすると考えられる。
【0047】
説明
図1は、本発明の実施態様によるソリッドゴルフボール100の斜視図である。ゴルフボール100は、ゴルフボール100の外面108に、複数のディンプル102をパターン112として配置させる、全体として球形状であってもよい。
【0048】
内部的には、ゴルフボール100は、一般に、所望の任意の数のピースを有する、複数層ソリッドゴルフボールとして構築されてもよい。言い換えると、複数層の材料は、一緒に融合、混合、又は圧縮されてボールを形成してもよい。ゴルフボールの物理的特徴は、コア層(単数又は複数)、必要に応じて任意に選ばれるマントル層、及びカバーなどの組み合わせ特性によって定められてもよい。これらの成分それぞれの物理的特徴は、それぞれの化学的組成物によって定められてもよい。ゴルフボールの成分の大部分は、オリゴマー又はポリマーを含む。オリゴマー及びポリマーの物理的特徴は、その組成、例えば、含まれるモノマー単位、分子量、架橋結合の程度などに大きく依存する場合がある。このような特性の例としては、可溶性、粘度、比重(SG)、弾性、硬度(例えば、ショアD硬度として測定されるもの)、反発弾性率、スカッフ抵抗(擦傷耐性)などが挙げられる。使用されるオリゴマー及びポリマーの物理的特徴は、ゴルフボールの成分を製造するのに使用される工業プロセスにも影響を及ぼす場合がある。例えば、使用される加工法が射出成形である場合、極端に粘っこい材料はプロセスを遅くする可能性があり、したがって、粘度が、生産の制限工程となる可能性がある。
【0049】
図2に示すように、このようなゴルフボールの一実施態様(全体を200と呼ぶ)は、内方コア204、内方コア204に隣接、包囲、及び当接する外方コア206、外方コア206に隣接、包囲、及び当接するマントル層210、及び、マントル層210に隣接、包囲、及び当接するカバー208を含む。
【0050】
カバー208は、ボールのコア及び、いずれのものであれ、他の内部層を、包囲、封入、被覆などをする。カバー208は、複数のディンプルを含むディンプルパターンを含んでもよい外面を有する。カバー208は、いずれの通例のゴルフボールカバー材料から製造されてもよく、例えば、Surlynのようなアイオノマーから製造されてもよいが、カバー208は、ある実施態様では、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から製造される。カバー208は、コアのそれよりも相対的に高いSGを持ち、例えば、ある実施態様では、少なくとも約1.2のSGを持つ。カバー208は、任意の厚みを有していてもよいが、ある実施態様では、約0.5から約2 mmの範囲の厚みを有し、ある実施態様では、約1.0から約1.5 mmの厚みを有する。ある実施態様では、カバー208の厚みは約1.2 mmである。
【0051】
マントル層210はカバー208に当接する。本明細書では「マントル層」と呼ぶが、当業者のあるものは、マントル層210を、別の名称で、例えば、「内方カバー層」、「外方コア層」などと呼ぶかもしれない。使用される呼称慣習とは無関係に、カバー208などの外方カバーの次に位置づけられる層は、いずれのものであれ、マントル層210と見なしてよい。
【0052】
マントル層210は、一般に、カバー208よりも薄く、硬い。マントル層210の厚みは、カバー208のそれよりも小さいものであればいずれの厚みであってもよい。ある実施態様では、マントル層210の厚みは、一般に、1.0 mm未満である。ある実施態様では、マントル層210の厚みは約0.6 mmである。ある実施態様では、マントル層210の厚みは、カバー208の厚みの約半分である。ある実施態様では、マントル層210の厚みは、カバー208の厚みより少なくとも約0.6 mm小さい。
【0053】
ある実施態様では、マントル層210は、ゴルフボール200の中でもっとも薄い層である。マントル層210のサイズを特徴づける一つの方法は、ゴルフボール200の総体積のパーセントとして表される該層の体積である。ゴルフボール200の総体積は、ゴルフボール200の各層の体積の和と見なしてよい。例えば、ゴルフボール200は、コア204、外方コア206、マントル層210、及びカバー208を含むので、ゴルフボール200の総体積は、内方コア体積、外方コア体積、マントル層体積、及びカバー体積の和である。ゴルフボールの各層は、球形であるか、又は、球体の一部であるから、いずれの層であれ、その体積は、該層の厚みを直径として有する球の体積として、又は、該層の厚みを高さとして有する球体積の一部として計算することが可能である。
【0054】
ゴルフボール200の全ての実施態様において、マントル層210は、ゴルフボール200の総体積の10パーセント以下の体積を有する。マントル層210の厚みが約0.8 mmであるいくつかの実施態様では、マントル層210は、ゴルフボール200の総体積の約9.8パーセントの体積を有していてもよい。マントル層210の厚みが約0.6 mmであるいくつかの実施態様では、マントル層210は、ゴルフボール200の総体積の約7.44パーセントの体積を有していてもよい。
【0055】
ある実施態様では、マントル層210は、カバー208よりも高い硬度を有する。ある実施態様では、マントル層210は、約60よりも大きいショアD硬度を有してもよく、一方、外方カバー層208は、約60よりも小さいショアD硬度を有していてもよい。ある実施態様では、ボールの上で測定した場合、マントル層210は、約62-70の硬度を有し、一方、外方カバー層は、約45-58のショアD硬度を有していてもよい。ある実施態様では、マントル層210とカバー208の間の硬度差は、少なくとも約4ショアD単位であってもよく、この場合、マントル層210はカバー208よりも硬い。比較的柔らかいカバー208と、相対的に硬いマントル層210を提供することによって、硬いマントル層210によるドライバーショットのスピンオフが減少する一方で、アイアンショットが、柔らかいカバー208のために、高度の、又は所望のスピン率を実現することが可能となると予想される。
【0056】
これらの実施態様では、マントル層210及びカバー208は、同じ比重を有していてもよい。ある実施態様では、マントル層210及びカバー208の比重は約1.2であってもよい。
【0057】
ゴルフボール200の一実施態様では、ドライバーショットでは所望のスピンオフ減少を実現しながら、他方、アイアンショットでは所望のスピン率を維持するために、内方コアの直径は約28 mmで、11.49 mm3の体積を有し、外方コアの厚みは約7.5 mmから7.75 mmで、約19.8
mm3の体積を有し、マントルの厚みは約0.6 mmで、約2.97 mm3の体積を有し、カバー層の厚みは約1.2 mmであり、約5.68 mm3の体積を有する。この実施態様では、マントル層の体積は、ゴルフボール200の総体積の約7.44パーセントである。マントル層210の硬度が、カバー208の硬度よりも、少なくとも4ショアD硬度単位大きい場合、所望のスピン特性が実現されると考えられる。
【0058】
ゴルフボール100は、他の特色を含んでもよい。例えば、ゴルフボール100の面108には、任意の数のディンプル102が設けられてもよい。ある実施態様では、ディンプル102の数は、約250から約500の範囲にあってもよい。別の実施態様では、ディンプル102の数は、約300から約400の範囲にあってもよい。図1に示すように、ディンプル102は、ゴルフボール100の表面108において、三角状球形パターン112の外、当業者に公知の、他の、任意のディンプルパターンとして配置されてもよい。
【0059】
事実上半球状として示されているけれども、ディンプル102は、当該技術分野で公知の任意の形状、例えば、半球形、楕円形、多角形、例えば、6角形などの形状を取ってもよい。ある実施態様では、ディンプル102は、ゴルフボール100の表面108から外方に向かって突出する突起であってもよいが、ディンプル102は、通常、ゴルフボール100の表面108の中に凹む陥凹を含む。各ディンプル102の各陥凹は、ディンプル体積を定める。例えば、ディンプル112が、表面108の中に凹む半球状陥凹である場合、ディンプル112によって削り取られ、ディンプル102が無かった場合にゴルフボール100の表面108が存在したであろう場所を表す仮想線によって区切られる空間は、半球のディンプル体積、すなわち、2/3πr3を取る、ここに、rは該半球の半径である。ある実施態様では、全てのディンプル102は、同じか、又は同様の直径又は半径を有してもよい。別の実施態様では、ディンプル102には、異なる直径又は半径が準備されていてもよい。ある実施態様では、各ディンプル102は、あらかじめ選ばれた一群の直径/半径の中から選ばれる直径又は半径を有していてもよい。別の実施態様では、あらかじめ選ばれた一群の直径/半径の中の、異なる直径/半径の数は、三(3)から六(6)の範囲であってもよい。ある実施態様では、最大直径/半径を有するディンプル102の数が、他のいずれの直径/半径を有するディンプルの数よりも多くあってもよい。言い換えると、このような実施態様では、他の任意のサイズのディンプルよりも、最大ディンプルの数の方が多い。ディンプル102はさらに、ディンプル102の反復サブパターン、すなわち、幾何学図形(例えば、五角形)を認識させたり、より小さい及びより大きい直径/半径を有するディンプル同士の組み合わせを含むサブパターンとして配置されてもよい。
【0060】
ゴルフボール100の表面108における全てのディンプル102の体積の集合は、「ディンプル総体積」と呼んでもよい。一実施態様では、ディンプル総体積は、約550から約800 mm3の範囲にあってもよい。ある実施態様では、ディンプル総体積は、約600から約800 mm3の範囲にあってもよい。
【0061】
内方コア204は、任意の数の材料を含んでもよい。ある実施態様では、内方コア204は、熱可塑性材料か、又は熱硬化性材料を含んでもよい。内方コア204の熱可塑性材料は、アイオノマー樹脂、二峰性アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂など、及びそれらの組み合わせであってもよい。一実施態様では、内方コア204は、アイオノマー樹脂から形成されてもよい。例えば、内方コア204は、高度に中和されるアイオノマー樹脂、例えば、HPF又はSURLYN、いずれもE. I.
Dupont de Nemours and Companyから市販される、及び、IOTEK(登録商標)、Exxon Corporationから市販される、から製造されてもよい。CORを増すために、内方コア204の一組成物は、主要アイオノマー樹脂組成物としてHPFを、必要に応じて選ばれる副組成物であるSURLYN及び/又はIOTEKと共に、含んでもよい。内方コア204の副組成物は、いずれのものであれ、内方コア204の主要アイオノマー樹脂組成物の100重量部に対し、0から約10重量部の量として存在してもよい。
【0062】
内方コア204は、当該技術分野における任意の公知の方法、例えば、ホットプレス成形、射出成形、圧縮成形などを用いて製造してよい。内方コア204は、単一又は複数層構造を含んでもよく、前述の材料の外に、必要に応じて他の材料も内方コア204の中に含めてよい。ある実施態様では、内方コア204の材料は、約0.750よりも大きいCORを有する内方コア204を供給するように選ばれてもよい。ある実施態様では、内方コア204は、40メートル/秒において、約0.79から約0.89の範囲のCORを持ってもよい。ある実施態様では、内方コア204は、ゴルフボール100全体のそれよりも高いCORを持ってもよい。
【0063】
ある実施態様では、内方コア204は、図2において破線の双頭矢印220によって示されるように、約19 mmから約37 mmの範囲の直径を有してもよい。ある実施態様では、内方コア204の直径220は、約19 mmから約32 mmの範囲にあってもよい。ある実施態様では、内方コア204の直径220は、約21 mmから約35 mmの範囲にあってもよい。ある実施態様では、内方コア204の直径220は、約23 mmから32 mmの範囲にあってもよい。
【0064】
図2に示す実施態様では、外方コア206は、内方コア204を、囲繞、被覆、包囲、事実上封入などする。外方コア206は、内方コア204の外面228に直面する内面224を有する。図2に示す実施態様では、外方コア206の外面232は、カバー208の内面236に直面する。外方コア206は任意の厚みを持ってよい。一実施態様では、外方コア206の厚みは、約3から約7.75 mmの範囲にあってもよい。一実施態様では、外方コア206の厚みは、約4から約10 mmの範囲にあってもよい。外方コア206は、当該技術分野における任意の公知の方法、例えば、圧縮成形、射出成形などを用いて形成してよい。
【0065】
外方コア206は、熱硬化性材料を含んでもよい。ある実施態様では、熱硬化材料は、ゴム組成物であってもよい。ある実施態様では、このゴム組成物の基質ゴムは、1,4-シス-ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンコポリマー、天然ゴム、及びそれらの組み合わせの外、少なくとも部分的に架橋結合される(例えば、加硫によって)ゴム組成物を含んでもよい。コアの単一又は複数層の反発弾性を増すために、本ゴム組成物の基質ゴムとして1,4-シス-ポリブタジエンを用いてもよい。それとは別に、1,4-シス-ポリブタジエンは、外方コア206の基質材料として用い、この基質材料に添加材料を加えてもよい。ある実施態様では、1,4-シス-ポリブタジエンの量は、ゴム組成物の100重量部に対し少なくとも50重量部であってもよい。本実施態様に使用される1,4-シス-ポリブタジエンは、シス含量が96%を超える、ウルトラハイ・シス型であることも可能である。この型のポリブタジエンのためには多くの場合ネオジミウム(Nd)触媒が使用されるが、これは、通常、40-60のムーニー粘度(ML1+4, 100℃)を有する。
【0066】
このゴム組成物には、添加物、例えば、架橋結合剤、より比重の大きい充填剤、可塑剤、抗酸化剤などを加えてもよい。適切な架橋結合剤としては、過酸化物、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウムなどの外、それらの組み合わせが挙げられる。ゴム組成物の反発弾性を増すために、アクリル酸亜鉛を使用してもよい。しかしながら、比較的高い周囲温度における長期の暴露に対する耐性を高めるために、過酸化物を架橋結合剤として使用してもよい。特に、内方コア204が、反発弾性の高い熱可塑性材料から形成される場合、外方コア206が、過酸化物によって架橋結合されたポリブタイジエン材料から形成されていると、比較的高い周囲温度に長期間さらされてもゴルフボール100の性能は維持される。
【0067】
外方コア206の比重を増すために、ゴム組成物に、適切な充填剤を、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを加えてもよい。さらに、比較的大きい比重を持つ金属粉、例えば、タングステンを充填剤として用いてもよい。外方コア206の比重は、充填剤の添加量を調節することによって所望に応じて調節してよい。
【0068】
表1は、本発明の実施態様によるゴルフボールの、二つの特定実施例、ボール1及びボール2を示す。これらの実施例において、マントルは、約2000グラム/モルの分子量を持つTPU材料から製造される。コアは、外方ゴム層を含み、樹脂中心は、HPF2000(登録商標) 85重量パーセント及びAD1035 15重量パーセントから製造され、樹脂(単数又は複数)にはBaSO4が添加される。HPF2000及びAD1035は、熱可塑性樹脂であるが、これは、下記:エチレン/メタクリル酸塩/ブチルアクリル酸塩のランダムターポリマー(例えば、Surlyn)、マグネシウムステアレート、ブチレン/ポリアルキレンエーテル/フタル酸ジエステルのターポリマー(例えば、Hytrel(登録商標))とZnOの組み合わせ、の内のいずれか及び/又は全てを、種々の組成において含んでもよい。HPF2000及びAD1035は共に、E.I.
DuPont de Nemours & Co.から入手することが可能である。カバーは、二つのTPU材料、TPU1及びTPU2の一方から製造される。
【0069】
【表1】

【0070】
本説明全体に亘って論じられているように、ソリッドゴルフボールは、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて製造してよい。ある実施態様では、通常、コアの単一又は複数層(内方コア又は第1コア層、外方コア又は第2コア層)が、先ず、該コア層(単数又は複数)を圧縮成形又は射出成形することによって形成される。材料は、要すれば、当該技術分野において公知の任意の方法、例えば、オーブンにおいて、又はUV光によって硬化させてもよい。完成コア層(単数又は複数)を後続層と、たとえ層間に接着剤を使用しなくとも、結合させる準備をするために、該コア層(単数又は複数)に対し研磨、切り込み線の印刻、又はその他の加工を行ってもよい。ただし、層間に接着剤を使用しなくとも、と述べたが、ある実施態様では、隣接層同士を一緒に固定するために、任意の公知の接着材料を用いてもよい。
【0071】
次に、コア層(単数又は複数)を包囲するか、又は事実上包囲するために、必要に応じて選ばれるマントル層を、例えば、そのマントル層(単数又は複数)の材料を射出成形、オーバーモールディング、又は圧縮成形することによって形成する。材料は、要すれば、当該技術分野において公知の任意の方法、例えば、オーブンにおいて、又はUV光によって硬化させてもよい。完成マントル層(単数又は複数)を後続層と、たとえ層間に接着剤を使用しなくとも、結合させる準備をするために、該マントル層(単数又は複数)に対し研磨、切り込み線の印刻、又はその他の加工を行ってもよい。ただし、接着剤を使用しなくとも、と述べたが、ある実施態様では、隣接層同士を一緒に固定するために、任意の公知の接着材料を用いてもよい。
【0072】
次に、コア層(単数又は複数)及び必要に応じて選ばれるマントル層(単数又は複数)を事実上包囲するために、任意のカバー層(内方カバー又は外方カバー層)が、例えば、該カバー層(単数又は複数)を射出成形、オーバーモールディング、又は圧縮成形することによって形成される。材料は、要すれば、当該技術分野において公知の任意の方法、例えば、オーブンにおいて、又はUV光によって硬化させてもよい。完成カバー層(単数又は複数)を後続層と、たとえ層間に接着剤を使用しなくとも、結合させる準備をするために、該カバー層(単数又は複数)に対し研磨、切り込み線の印刻、又はその他の加工を行ってもよい。ただし、接着剤を使用しなくとも、と述べたが、ある実施態様では、隣接層同士を一緒に固定するために、任意の公知の接着材料を使用してもよい。その上に、美的に好ましい外観を与えるよう、完成カバー層(単数又は複数)に対しさらにこれらの加工を施してもよい。
【0073】
最後に、完成カバー層に対し何らかのコーティング層が印加される。コーティング層は、ペイント層、保護コーティング、証印などを含んでもよい。コーティング層は、公知の任意の技術、例えば、スプレイ塗布、浸染塗布、パッドプリンティング及びインクジェットプリンティングなどのプリンティング、刷毛塗りなどによって印加されてもよい。次に、コーティング層は、オーブンにおいて、又はUV光などによって硬化される。
【0074】
これまで本発明の各種実施態様が説明されてきたわけであるが、この説明は、限定的であるよりはむしろ例示的であることを意図するものであり、本発明の範囲内において、さらに多くの実施態様及び実行例が可能であることは当業者には明白であろう。したがって、本発明は、添付の特許請求項及びその等価物に徴することを除き、限定されてはならない。さらに、種々の改変及び変更が、添付の特許請求項の範囲内において実行することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
200 ゴルフボール
204 内方コア
206 外方コア
208 カバー層
210 マントル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層を有するゴルフボールであって:
コア;
該コアを囲むカバー層であって、カバー硬度を有するカバー層;
該コア及びカバー層の間に位置づけられるマントル層であって、マントル硬度を有するマントル層、を含み、
該カバー硬度は、該マントル硬度よりも少なくとも6ショアD単位低く;
該ゴルフボールは、該ゴルフボールの全層の総和体積である総体積を有し、かつ、該マントル層は、該マントル層のみの体積であるマントル体積を有し、及び、
該マントル体積は、該総体積の10パーセント未満である、
ことを特徴とする、前記ゴルフボール。
【請求項2】
前記マントル体積が、総体積の約9.8%であることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
マントル厚が約0.8 mmであることを特徴とする、請求項2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記マントル体積が、前記総体積の約7.44%であることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項5】
マントル厚が約0.6 mmであることを特徴とする、請求項4に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記マントル硬度が、ショアDスケールにおいて約62と約70の間にあることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記カバー硬度が、ショアDスケールにおいて約45と約58の間にあることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項8】
前記マントル層及びカバー層の内の少なくとも一つが熱可塑性ポリウレタンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項9】
前記マントル層及びカバー層の両方が熱可塑性ポリウレタンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項10】
前記コアが内方コア及び外方コアを含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項11】
前記内方コア及び外方コアの内の少なくとも一つが、高度に中和されるポリマーを含むことを特徴とする、請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項12】
前記内方コアが高度に中和されるポリマーを含み、前記外方コアがゴムを含むことを特徴とする、請求項11に記載のゴルフボール。
【請求項13】
前記マントル層及びカバー層の内の少なくとも一つが熱可塑性ポリウレタンを含むことを特徴とする、請求項12に記載のゴルフボール。
【請求項14】
前記マントル層及びカバー層の両方が熱可塑性ポリウレタンを含むことを特徴とする、請求項12に記載のゴルフボール。
【請求項15】
前記マントル硬度が、ショアDスケールにおいて約62と約70の間にあり、前記カバー硬度が、ショアDスケールにおいて約45と約58の間にあることを特徴とする、請求項14に記載のゴルフボール。
【請求項16】
マントル厚が約0.6 mmでありカバー厚が約1.0 mmであることを特徴とする、請求項15に記載のゴルフボール。
【請求項17】
前記マントル体積が、総体積の約7.44パーセントであることを特徴とする、請求項16に記載のゴルフボール。
【請求項18】
ゴルフボールであって:
内方コア;
該内方コアを囲む外方コア;
該外方コアを囲むマントル層であって、熱可塑性ポリウレタンを含み、マントル厚及びマントル硬度を有するマントル層;
該マントル層を囲むカバー層であって、熱可塑性ポリウレタンを含み、カバー厚及びカバー硬度を有するカバー層、を含み、
該マントル厚は、該カバー厚よりも少なくとも0.4 mm小さく、かつ、
該マントル硬度は、該カバー硬度よりも少なくとも約4ショアD単位大きい、
ことを特徴とする、前記ゴルフボール。
【請求項19】
前記マントル厚が約0.6 mmであり、前記カバー厚が約1.0 mmであることを特徴とする、請求項18に記載のゴルフボール。
【請求項20】
ゴルフボールであって:
高度に中和されるポリマーを含む内方コアであって、約24 mmと約28 mmの間の直径を有する内方コア;
該内方コアを囲む外方コアであって、ポリブタジエンゴムを含み、約7.55から約7.75 mmの外方コア厚を有する外方コア;
該外方コアを囲むマントル層であって、熱可塑性ポリウレタンを含み、約0.6 mmのマントル厚、及び、ショアDスケールにおいて約62と約70の間のマントル硬度を有するマントル層;
該マントル層を囲むカバー層であって、熱可塑性ポリウレタンを含み、約1.0 mmと約1.2 mmの間のカバー厚、及び、ショアDスケールにおいて約45と約58の間のカバー硬度を有するカバー層、を含み、
10 kgの初期負荷及び130 kgの最終負荷を課せられると、約2.4と約2.7の間の圧縮度を呈する、
ことを特徴とする、前記ゴルフボール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−115584(P2011−115584A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−265922(P2010−265922)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)