説明

薄膜抵抗体

【課題】 自己発熱時の発熱温度上昇の低減を実現すると共にトリミング精度の高い薄膜抵抗体を提供することを目的とする。
【解決手段】 絶縁基板の表面に薄膜状抵抗体層及び前記薄膜状抵抗体層に接続される電極層を形成してなる薄膜抵抗体であって、前記薄膜状抵抗体層は、細線状抵抗体層を所定領域内でほぼ等間隔となるよう繰り返し折り返した第1の抵抗体パターン100と、前記第1の抵抗パターンとほぼ同じ間隔で折り返され折り返し端部が前記第1の抵抗体パターン100の一方の折り返し端部に接続され前記第1の抵抗体パターンと並列接続される第2の抵抗体パターン200とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁基板の表面に薄膜状抵抗体層及び前記薄膜状抵抗体層に接続される電極層を形成してなる薄膜抵抗体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜抵抗体としては、絶縁基板上に抵抗体をジグザグに回折した微細パターン(所定間隔で折り返した細線状抵抗体パターン)を形成する薄膜パターンタイプと、巻き線リードタイプとがある。このうち、薄膜パターンタイプは、抵抗パターンの一部にトリミングを行うことにより所定の抵抗値に調整して使用していた。
【0003】
従来のこの種の薄膜抵抗体のパターンは、トリミング前後の抵抗値変化の大きさの軽減を重視し、粗調と微調のつながりなど抵抗値調整のし易い設計(デザイン)が最優先であった。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2001−44001公報)では、抵抗膜を網目状に交差させ、この網状回路部に主要なトリミングを行うことにより、抵抗値の調整を効率よく行える抵抗体パターンを採用していた。
通常の場合には、この抵抗値の発熱の影響はほとんど問題となることはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−44001公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的な抵抗体で抵抗値調整のトリミングを行った場合、負荷が大きくなった抵抗体部分が多く発熱する。このため、トリミング後は、製品固体のトリミングによる自己発熱が発生し、製品の動作特性がばらつく原因ともなる。
【0007】
引用文献1では、バイパスの細幅抵抗膜2a´へトリミング溝9を形成することにより屈曲部の2aが発熱領域となりるなど、網目状抵抗体膜2bとの間に温度差が生じる。製品全体として発熱領域が特定箇所に偏ってしまい、これにより高熱部と低熱部の温度の分布が分かれてしまうため、同じ抵抗体のなかでも温度変化が大きくなってしまう。
【0008】
特に、近時は、製品の小型化、精密化が進み、薄膜抵抗体に白金等を使用した薄膜抵抗体測温素子も同様に小型化が進んでいる。
【0009】
この温度測定時には、抵抗値の測定が必要であるため、測温抵抗体に電流を流す必要がある。この抵抗値測定の電流によってジュール熱が発生し、測温抵抗体の温度は周囲温度より上昇する。例えば、測温素子が大型の場合にはこの温度上昇の影響はさほど問題となることはないが、小型の測温抵抗素子、例えば薄膜抵抗素子を測温素子とする場合ではこの発熱の影響を無視できず、測温誤差の要因となることも判明した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、抵抗体に電流を流しても、自己発熱が特定箇所に偏ることを避け、動作特性の影響をうけにくい、高精度な薄膜抵抗体を提供することを目的とする。係る目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として、例えば、以下の構成を備える。
【0011】
すなわち、絶縁基板の表面に抵抗体層及び前記抵抗体層の両端に接続される電極層を形成してなる薄膜抵抗体であって、前記抵抗体層は、細線状の抵抗体層を蛇行させた第1の抵抗体パターンと、前記第1の抵抗体パターンと等幅で折り返し、前記第1の抵抗体パターンの一方の折り返し部に接続され前記第1の抵抗体パターンと並列接続される第2の抵抗体パターンとを含むことを特徴とする薄膜抵抗体とする。
【0012】
あるいは、例えば前記第1の抵抗体パターンの折り返し部と隣り合う折り返し部を並列に接続する前記第2の抵抗体パターンは、隣り合う前記第2の抵抗体パターン間に、前記第1の抵抗体パターンの折り返し部を1つ以上有していることを特徴とする。
【0013】
また例えば、薄膜抵抗体を構成する抵抗体パターンの両端部に接続される外部に導出される少なくとも2つの電極リードを備えることを特徴とする。更に例えば、前記第2の抵抗体パターンを切断することで抵抗値の調整が可能であることを特徴とする。
【0014】
また例えば、前記薄膜抵抗体は白金、ニッケル、銅、パラジウムなどの金属を使用した測温素子として利用可能な測温抵抗体であることを特徴とする。更に例えば、前記第1の抵抗体パターン及び前記第2の抵抗体パターンに比し薄膜抵抗体層の密度の低い抵抗値微調整用の第3の抵抗体パターンを有し、前記第1の抵抗体パターン及び前記第2の抵抗体パターンを外部に延出する電極リードに近接して薄膜抵抗体の基部側に配置し、前記第3の抵抗体パターンを先端側に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、抵抗体の自己発熱の発生部を分散したパターン形成により、薄膜抵抗体の温度上昇が特定箇所に偏るのを避けることの結果として温度上昇を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の係る一発明の実施の形態例の薄膜抵抗体の抵抗体パターンの形成例を説明するための図である。
【図2】本実施の形態例の薄膜抵抗体の製造工程を説明するためのフローチャートである。
【0017】
【図3】図2に示す製造工程により薄膜抵抗体が形成されていく状態を説明するための断面図である。
【図4】本実施の形態例の薄膜抵抗体の正面及び側面の外観を示す図である。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態例の薄膜抵抗体のパターン形成例を説明するための図である。
【0018】
【図6】本発明に係る第3の実施の形態例の薄膜抵抗体パターンの例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態例)
以下、本発明に係る一発明の実施の形態例について添付図面を参照しながら詳細に説明する。まず図1を参照して本発明に係る一発明の実施の形態例の自己発熱を特定箇所に偏ることなく、低く抑える構成を説明する。以下の説明は本発明の薄膜抵抗体を測温素子として利用可能な抵抗体層に白金が含有された白金センサに適用し抵抗体の例えば下部からリード線が延出する構造とした場合を例として説明する。
【0020】
本実施の形態例では、基板、例えばセラミック基板等の表面に薄膜抵抗体パターンを形成しており、薄膜抵抗体の自己発熱の発生部を分散したパターン形成により、抵抗体基板の温度上昇を抑えている。
【0021】
図1において、100は細線状の抵抗体パターン110を蛇行させて、列幅がほぼ等幅となるように折り返した第1の抵抗体パターン領域、200は本実施の形態例薄膜抵抗体の抵抗値調整用の折り返し抵抗体パターン210が形成されている抵抗値調整パターン領域である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態例では、第1の抵抗体パターン領域100の抵抗体パターン110の一方の折り返し部120に抵抗値調整パターン領域200の並列抵抗体パターン210を接続して抵抗値調整用の並列抵抗体パターンとしている。並列抵抗体パターン210は、抵抗体パターン110が延設し、並列接続に分岐したパターンである。並列抵抗体パターンの細線状のパターン幅は抵抗体パターン110と等しく、また、並列抵抗体パターンの折り返し部220の折り返し幅は、対向する抵抗体パターンの折り返し幅の110とほぼ等しい。
【0023】
そして、隣り合う第2の抵抗体パターン210、220間には第1の抵抗体パターンの折り返し部130が形成されている。このように、第1の抵抗体パターンの一つおきの折り返し部に抵抗値調整パターン領域200の並列抵抗体パターンを接続している。
【0024】
このようなパターンを形成することにより、第1の抵抗体パターン領域100の、直列状で抵抗値が比較的高めで自己発熱量のやや多い(温度がやや高くなる)領域10、30と、抵抗パターンが並列状になるために抵抗値が低く自己発熱量がやや少ない(温度が低くなる)領域20がほぼ同じ面積となり、発熱抵抗体の発熱量分布変化を最小化して分散させて全体としての熱分散効率の最適化を図っている。即ち、発熱集中部を分散するパターン配置(直列と並列が交互に配置されているパターン配置)を採用して熱分散効率の最適化を図っている。
【0025】
また、抵抗値調整時(トリミング時)においては、250に示すように、抵抗値調整領域200の折り返しパターンを所定箇所で切断することにより抵抗値調整を行う。
【0026】
このように、抵抗体パターン領域100における自己発熱による温度分布のムラを低減することができ、例えば、薄膜抵抗体を測温素子として機能させる場合においても、測温する抵抗体の温度がどの部分であってもほぼ均一となるため、正確且つ安定した測温結果が期待できる。
【0027】
更に、図1に示すように、抵抗値調整用の並列抵抗体パターンにおいて、隣り合う並列抵抗体パターン(例えば抵抗体パターン210、220)の間隔が結果として広くなっているため、抵抗値調整のためにトリミングを行う際にも、隣接する隣の抵抗体パターンを誤ってトリミングしてしまったり、一部抵抗体パターンの一部を破損したりするおそれを軽減することができる。
【0028】
以上の抵抗体パターンからなる本実施の形態例の薄膜抵抗体の製造工程を図2及び図3を参照して以下に説明する。図2は本発明に係る一発明の実施の形態例の薄膜抵抗体の製造工程を説明するための図、図3は図2に示す製造工程により薄膜抵抗体が形成されていく状態を説明するための断面図または上面図である。
【0029】
まず図2のステップS1で図3の(a)に示す薄膜抵抗体の基板(絶縁基板)1上のほぼ全面に薄膜抵抗体層2を着膜形成する。基板1上に薄膜抵抗体層2を形成した状態を図3の(b)に示す。
【0030】
続くステップS3において、薄膜抵抗体層2の表面にフォトレジスト層3を塗布などにより形成する。続くステップS5において、フォトレジスト層3を乾燥させる。この薄膜抵抗体層2の表面にフォトレジスト層3を形成した状態を図3の(c)に示す。
【0031】
そしてステップS7において、フォトレジスト層3が形成された絶縁基板1を例えば図1に示す薄膜抵抗体のパターン状にフォトレジスト層3を残す様にマスキング部材30でマスキングして残りの部分を露光し、例えば図1に示すパターン状にフォトレジスト層3を残し、残りの部分を露光する。このマスキングして露光する状態を図3の(d)に示す。
【0032】
次にステップS9において露光したフォトレジスト層3を現像して露光部分のフォトレジスト層3を除去する。このフォトレジスト層3を除去した状態を図3の(e)に示す。
【0033】
その後ステップS11でエッチング処理を行い、フォトレジスト層3が形成されている部分を除く薄膜抵抗体層2、例えば図1に示す抵抗体パターン部分を除く部分を除去する。このエッチング処理を行った状態を図3の(f)に示す。
【0034】
続くステップS13で薄膜抵抗体層2の表面に残っているフォトレジスト層3を剥離するなどして除去し、薄膜抵抗体層2を露出させる。この薄膜抵抗体層パターンが形成された状態を図3の(g)に示す。また、図3の(f)にこの後の抵抗体製造工程を理解しやすくするために薄膜抵抗体層2の形成パターン例を模式的に示している。
【0035】
続くステップS15で薄膜抵抗体パターン端部の所定部分に電極パターン5、6を形成し、薄膜抵抗体2と電極5、6とを電気的接続状態にする。電極パターン5、6は、例えば白金、金、銀などで形成することが好ましい。
【0036】
そしてステップS17で電極パターン5、6間の抵抗値を計測し、予め予定した所定の抵抗値となるように抵抗値調整領域200の抵抗調整用抵抗パターンをトリミングし、抵抗値調整を行う。抵抗値調整を行った後の薄膜抵抗体パターン例を図3の(i)に示す。抵抗値調整用のトリミングは、抵抗値調整用パターン形成領域の一方端側より必要なパターンを連続してトリミングする。図3の(i)では、抵抗値調整用パターンの2つをトリミングした状態7を示している。
【0037】
所望の抵抗値に調整後ステップS19において薄膜抵抗体表面に保護膜10を形成する。保護膜10は、例えば、ガラス又はプラスチック樹脂等を採用することができる。薄膜抵抗体表面に保護膜10を形成した状態を図3の(j)に示す。この時には電極パターン5、6近傍部分は露出した状態に保たれている。
【0038】
次にステップS21において、電極パターン5、6に外部接続用のリード線415、425を接続固定する。電極パターン5、6にリード線415、425を接続した状態を図3の(k)に示す。そして最後のステップS23において、リード線415、425を接続した電極パターン配設領域に保護膜20を形成する。保護膜20は、例えば、ガラス又はプラスチック樹脂等を採用することができる。
【0039】
このようにして製造される薄膜抵抗体の外観を図4に示す。図4は本実施の形態例の薄膜抵抗体の正面及び側面の外観を示す図である。図4に示すように、電極パターン配設領域に形成する保護膜20は、リード線415、425を電極パターンに確実に接続した状態を維持する必要があるため、薄膜抵抗体を保護する保護膜10より保護膜の厚さを厚くして強度を確保している。
【0040】
以上の工程において、例えば大型絶縁基板に複数の薄膜抵抗体を一度に製造する場合には、例えばステップS1乃至ステップS19の電極パターン形成と抵抗値調整、保護膜形成までの工程を行った後に各抵抗体に分割し、分割後に電極にリード線を接続、あるいはリード線接続後に分割工程を行う(リード線を接続した抵抗体を順次分離していく場合を含む)ようにしてもよい。
【0041】
以上に説明した工程で製造された本実施の形態例の薄膜抵抗体は、抵抗体の自己発熱量の大きい領域と少ない領域とが細かく分散された抵抗体パターンとすることにより、放熱効果の悪い領域が偏って形成されてしまうことがなく、全体として放熱が均一に行われやすくし、基板の温度上昇を抑えることができる。
【0042】
また、薄膜抵抗体パターンは微細であるほど、トリミングに高精度さが要求されるが、微細であるがゆえに、従来は回折する微細パターンに不必要なトリミングが行われやすいという欠点を有していたが、第1の抵抗体パターンの一つおきの折り返し部に抵抗値調整パターン領域200の並列抵抗体パターンを接続していることから、隣接する抵抗値調整用の並列抵抗体パターンの間隔が十分確保されており、このような欠点は完全に解消された薄膜抵抗が提供できる。
【0043】
更に、薄膜測温抵抗体も近年の小型化によって熱抵抗が増加する傾向にあるが、抵抗体の各部分の温度差を最小限に抑えることができ、例えば薄膜抵抗素子を測温素子として用いた場合においても、正確且つ安定した測温結果が得られる。
【0044】
例えば、測温素子の国際規格であるIEC60751の最新版においては、自己発熱による温度上昇を測温許容差の1/4未満とする項目が追加され、規格を満たす製品の開発に各社が対応を迫られていたが、本実施の形態例によれば、該規格を満たし、トリミングによる自己発熱を基準範囲以内に抑え、さらに自己発熱による動作特性の影響をうけにくい、高精度な測温素子(温度センサ)を提供することができる。
【0045】
具体的には、図1に示す抵抗体パターンの白金測温素子(白金温度センサ)を製作し、ホットフィルム(発熱体)として使用し、パターンの温度分布への影響をシュミレーションした。
【0046】
その結果、IEC60751規格 クラスA では、0.0375℃(0.15℃の25%at0℃)が要求され、クラスBでは0.0750℃(0.30℃の25%at0℃)が要求されているが、図1に示す抵抗体パターンを採用した場合の薄膜抵抗体の自己発熱時の温度上昇は、(最大0.0375℃ 最小 0.0327℃ ΔT=0.0030℃)であり、上記規格を満たすことが確認された。
【0047】
(第2の実施の形態例)
以上に説明した第1の実施の形態例では、両側面端部を除き、隣り合う第2の抵抗体パターン220間に、第1の抵抗体パターンの折り返し部を一つ有している例を説明した。
【0048】
しかし、本発明は以上の例に限定されるものではなく、両側面端部を除き、隣り合う第2の抵抗体パターンの間に、第1の抵抗体パターンの折り返し部を2つ以上配設する抵抗体パターンであっても良い。第1の抵抗体パターンの折り返し部を2つ形成した、本発明に係る第2の発明の実施の形態例の薄膜抵抗体パターンのパターン形成例を図5に示す。図5は本発明に係る第2の実施の形態例の薄膜抵抗体のパターン形成例を説明するための図である。
【0049】
図5において、図1と同様構成には同一番号を附し詳細説明を省略する。基本的な製造工程も、上述した第1の実施の形態例の図2、図3に示す製造工程と実質的な差違はない。
【0050】
図5において、細線状の抵抗体層を蛇行させて、列幅がほぼ等幅で折り返した第1の抵抗体パターン領域100の抵抗体パターンは、基本的には上述した図1とほぼ同じ抵抗体パターンとすることができる。
【0051】
第2の実施の形態例では、抵抗値調整領域200の隣り合う抵抗値調整用の第2の抵抗体パターン220間に、第1の抵抗体パターンの折り返し部を2つ形成している。
【0052】
これにより、抵抗値の比較的高めの、自己発熱量のやや多い温度がやや高くなる領域60、80が2つの抵抗体折り返しパターンが形成されているのに比し、抵抗パターンが並列状になるために抵抗値が低く、自己発熱量がやや少なく温度が低くなる領域70では一つの抵抗体折り返しパターンが形成されているため、発熱抵抗体の発熱量分布変化がより少ない抵抗体パターンの形成を実現している。
【0053】
第2の実施の形態例においても、発熱量の少ない領域70を、該領域70より広い発熱量の多い領域で挟み込むようにしているため、発熱抵抗体の発熱量分布変化を最小化しており、全体としての熱分散効率のより一層の最適化を図っている。
【0054】
更に、第2の実施の形態例によれば、抵抗値調整用抵抗体パターンの配設間隔を第1の実施の形態例より広げることができ、例えば更に微細な抵抗体パターンを形成したような場合であっても、回折する微細パターンに不必要なトリミングが行われる様なことを防ぐことが可能となり、トリミングに高精度さが要求される場合であっても、確実且つ高精度のトリミングを行うことができる。
【0055】
(第3の実施の形態例)
以上の説明は絶縁基板上に形成する薄膜抵抗体の具体的な抵抗体パターンについて説明した。しかし、薄膜抵抗体の自己発熱に伴う温度上昇を抑制するには、具体的な抵抗体パターンを最適化する他に、薄膜抵抗体全体のどの部分に発熱量の多い抵抗体領域を配置するかによっても抵抗体全体の温度上昇を抑えることが可能である。
【0056】
薄膜抵抗体全体のどの部分に発熱量の多い抵抗体領域を配置すると全体の温度上昇を抑えられるか調べ、最適化した抵抗体領域配置をした本発明に係る第3の発明の実施の形態例を図6を参照して説明する。図6は本発明に係る第3の実施の形態例の薄膜抵抗体パターンの配置例を説明するための図である。第3の実施の形態例では、電極にリード線を接続する薄膜抵抗体を例として説明する。
【0057】
第3の実施の形態例では、薄膜抵抗体の抵抗体パターン領域の中で、最も自己発熱時の発熱量の大きい、発熱集中領域300を電極及びリード線近傍に配置し、発熱量の少ない抵抗体領域350をリード線より離れた領域に配置している。
【0058】
図6において、300は自己発熱時に発熱量の大きい抵抗体パターン領域、350は発熱量の少ない抵抗体パターン領域であり、図6の例では抵抗値調整を行う際の抵抗値微調整を実現する抵抗体パターン領域となっている。この領域では発熱する量が少ないため、従来と同様の抵抗体パターンを採用している。
又、5、6は電極パターン、7、8はリード線接続部であり、ボンディングあるいははんだ付け等でリード線415,425を電極5、6に接続固定している。415、425はリード線である。
【0059】
図6に示すように、自己発熱時の発熱量の大きい、発熱集中領域300を電極及びリード線近傍に配置している。このため、発熱した熱を電極パターン及びリード線415、425を介して外部に放出・冷却でき、薄膜抵抗体全体の発熱による温度上昇が特定箇所に偏ることを防ぐことができる。
【0060】
特に本発明では、発熱集中部300の抵抗値調整のためのトリミング時に、隣接する抵抗体パターンまで影響を与えにくい抵抗体パターンを採用しているため、隣接する抵抗値調整用の並列抵抗体パターンの間隔が十分確保されており、自己発熱量の大きい抵抗体パターン領域を例えリード線近傍に配置しても、確実に所望の抵抗体パターンのみをトリミングできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の表面に抵抗体層及び前記抵抗体層の両端に接続される電極層を形成してなる薄膜抵抗体であって、
前記抵抗体層は、細線状の抵抗体層を蛇行させた第1の抵抗体パターンと、
前記第1の抵抗体パターンと等幅で折り返し、前記第1の抵抗体パターンの一方の折り返し部に接続され前記第1の抵抗体パターンと並列接続される第2の抵抗体パターンと
を含むことを特徴とする薄膜抵抗体。
【請求項2】
前記第1の抵抗体パターンの折り返し部と隣り合う折り返し部を並列に接続する前記第2の抵抗体パターンは、隣り合う前記第2の抵抗体パターン間に、前記第1の抵抗体パターンの折り返し部を1つ以上有していることを特徴とする請求項1に記載の薄膜抵抗体。
【請求項3】
薄膜抵抗体を構成する抵抗体パターンの両端部に接続される外部に導出される少なくとも2つの電極リードを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄膜抵抗体。
【請求項4】
前記第2の抵抗体パターンを切断することで抵抗値の調整が可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜抵抗体。
【請求項5】
前記薄膜抵抗体は白金、ニッケル、銅、パラジウムなどの金属を使用した測温素子として利用可能な測温抵抗体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜抵抗体。
【請求項6】
前記第1の抵抗体パターン及び前記第2の抵抗体パターンに比し薄膜抵抗体層の密度の低い抵抗値微調整用の第3の抵抗体パターンを有し、
前記第1の抵抗体パターン及び前記第2の抵抗体パターンを外部に延出する電極リードに近接して薄膜抵抗体の基部側に配置し、前記第3の抵抗体パターンを先端側に配置することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の薄膜抵抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−65784(P2013−65784A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204615(P2011−204615)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000105350)コーア株式会社 (201)
【Fターム(参考)】