説明

薄鋼板のサイドトリミング設備

【目的】 通常のサイドトリミングの際にも、かえりなしサイドトリミングの際にも、スクラップを共通の処理装置で処理できる。
【構成】 サイドトリマ3の出側に、剪断丸刃とかえりなしサイドトリミング時のスクラップ分離用挟圧ローラとの相互の外周端間隔Gが 500mm以下となるように、前記挟圧ローラ4を近接して設置し、さらに挟圧ローラ4の出側にスクラップ2の共通の処理装置を設ける。また、挟圧ローラ4を片持型式としてサイドトリマ3のハウジング30に一体的に組込むことにより、できるだけ相方を接近させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は薄鋼板のサイドトリミング設備に係わり、特に通常のサイドトリミングとかえりなしサイドトリミングとを行う処理ラインのサイドトリミング設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】薄鋼板両エッジの欠陥部を除去するために、あるいは板幅を揃えるためにサイドトリミングが行われる。このサイドトリミングは、上下一対の剪断丸刃を鋼板進行方向の左右に備えたサイドトリマにより行われるが、通常は上下の剪断丸刃をオーバラップさせてスクラップ(耳屑)を一気に切断分離する。
【0003】しかし、このようにスクラップを一気に切断した場合、トリミング後の板エッジにかえりが発生するため、その後の工程でこのかえりが問題となるような場合には特別な装置で除去するか、またはかえりが発生しないようにトリミングを行う必要がある。このようなトリミングの方法として、例えば特開昭62-282811 号公報に示される如きかえりなしトリミング方法がある。
【0004】この方法を図4により説明すると、図4(A)に示すようにサイドトリマ3の上側剪断丸刃(上刃)31と下側剪断丸刃 (下刃)32 との刃先相互間に若干の隙間があくようにし、薄鋼板1の厚み方向に未切断部を残して切込を入れる。この状態ではスクラップ2は分離されていない。このように、切断部の厚み方向に未切断部を残して切込を入れた後、図4(B)に示す如く挟圧ローラ4により切込部を挟圧してスクラップ2を分離すればかえりは発生しない。
【0005】図3にかえりなしサイドトリミングを行うサイドトリマ設備の例を示す。図において3はサイドトリマでその出側に挟圧ローラ4が設置され、薄鋼板1は矢印Y方向に搬送されながらサイドトリマ3により、図4R>4(A)に示す如く切込が入れられ、次いで図4(B)に示すように挟圧ローラ4で挟圧してスクラップ2が分離される。そしてスクラップ2は、スクラップガイド5によって矢印Z方向に変向されてスクラップピット6内に投入され、スクラップボーラ7で巻取られる。
【0006】なお、かえりなしサイドトリミングを行わない通常のサイドトリミングの場合は、前述の如くサイドトリマ3によってスクラップ2′を一気に切断分離する。この分離されたスクラップ2′は通常ボックス型式のスクラップガイド5′により前記スクラップピット6まで搬送されてスクラップボーラ7で巻取られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】図3に示すようなかえりなしサイドトリミングを行う設備で通常のサイドトリミングを行う場合、スクラップ2′を挟圧ローラ4出側のスクラップピット6まで搬送する必要がある。この場合、スクラップガイド5′の内でスクラップ2′が詰まり、ライン操業の停止を予儀なくされる事態がしばしば発生して問題になっていた。
【0008】この対策としてスクラップ2′を薄鋼板1と共に挟圧ローラ4を通過させて、かえりなしサイドトリミングのときと同様に処理することも考えられるが、サイドトリマ3と挟圧ローラ4との間隔Pが2m〜3mと広く、ライン速度が 150m/min を越えるような場合は、スクラップ2′の先端が揚力を受けて浮上がる、いわゆるフライング現象を生じ、挟圧ローラ4を通過することができない。
【0009】また、サイドトリマ3の出側に通常のサイドトリミング専用のスクラップ処理装置を設ければ操業上の問題はないが、工事費用と設備費用が大幅に増加する。本発明は、上述従来の技術の課題を解決し、薄鋼板の通常サイドトリミングの際にも、またかえりなしトリミングの際にもスクラップの処理が支障なく行え、しかも工事費用や設備費用も従来と変らない薄鋼板のサイドトリミング設備を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、サイドトリマによって切断部を完全に分離する通常のサイドトリミングと、切断部の厚み方向に未切断部を残して切込を入れた後挟圧ローラによって前記切込部を挟圧することによりスクラップを分離するかえりなしサイドトリミングとを行う薄鋼板のサイドトリミング設備であって、サイドトリマ出側に、サイドトリマの剪断丸刃と挟圧ローラとの相対する相互の外周端間隔が 500mm以下となるよう前記挟圧ローラを設置するとともに、この挟圧ローラの出側にスクラップ処理装置を設けることにより前述従来の技術の課題を克服し、さらに前記挟圧ローラを片持型式としてサイドトリマのハウジングに一体的に組込むことにより、サイドトリマと挟圧ローラをできるだけ近付けて一層の効果を得たものである。
【0011】
【作用】対向するサイドトリマの剪断丸刃外周端と挟圧ローラ外周端の間隔Gが 500mm以内になるよう、すなわち相互の軸心間の間隔P≦(剪断丸刃外径D+挟圧ローラ外径d)/2+500(mm) となるようサイドトリマ出側直近に挟圧ローラを設置する。このように剪断丸刃と挟圧ローラを接近して設置することにより、ライン速度が 400m/min を越えるような高速度であってスクラップ先端部に多少フライング現象が生じても、スムーズに挟圧ローラを通過させることができる。
【0012】なお、前記外周端相互間隔Gが 500mmより大きいと、薄物のスクラップでは300 m/min を越えた場合にフライング現象のために挟圧ローラを通過しないことがある。従ってGは 500mm以下、好ましくは 300mm以下で小さい程よく、機械の構成条件から決まる最小間隔にするのが望ましい。そのためには挟圧ローラをサイドトリマのハウジングに一体的に組込むことが有効である。
【0013】さらに、サイドトリマに近接した挟圧ローラの出側にスクラップの処理装置を設ける。このスクラップ処理装置は従来のものと変わるものではない。このようにサイドトリマに近接して挟圧ローラを設置し、その出側にスクラップの処理装置を設けてあるため、薄鋼板の通常のサイドトリミングの際にも、またかえりなしサイドトリミングの際にもスクラップを共通の処理装置で処理可能となる。
【0014】
【実施例】図1,図2は本発明による薄鋼板のサイドトリミング設備の一実施例の説明図であり、図1は側面図,図2は平面図である。図において、薄鋼板1は矢印Y方向に搬送され、サイドトリマ3の上刃31, 下刃32により通常のサイドトリミングの際には切断部が完全に切断されてこの位置でスクラップ2′が分離される。一方かえりなしサイドトリミングの際には、サイドトリマ3の上刃31と下刃32によって図4(A)に示すように切込を入れた後、この切込部を挟圧ローラ4により図4(B)の如く挟圧してスクラップ2を分離する。
【0015】この例の場合、挟圧ローラ4はサイドトリマ3のハウジング30に一体的に組込まれた片持型式のもので、少くとも上ロールは圧下装置35により薄鋼板1ならびにスクラップ2を挟圧可能であり、薄鋼板1のトリミング幅Bに応じて前記ハウジング30と一体的に矢印X−X方向に油圧シリンダ33等の駆動源の作動により位置調整される。
【0016】このようにサイドトリマ3と挟圧ローラ4を構成して、通常のサイドトリミングの際にはサイドトリマ3で分離されたスクラップ2′を挟圧ローラ4と通過させて、またかえりなしトリミングの際には挟圧ローラ4によって分離されたスクラップ2を、スクラップガイド5により矢印Zで示すように下向に変向させてスクラップピット6に投入し、スクラップボーラ7で巻取る。なお34は通常のサイドトリミングの際のスクラップ用ガイドエプロンである。
【0017】ここで、サイドトリマの剪断丸刃と挟圧ローラの相互の外周端間隔Gは 500mm以下にしてあり、、通常のサイドトリミングの際でもスクラップ2′が挟圧ローラをスムーズに通過することができる。なお、この例では挟圧ローラ4を片持型式としてサイドトリマ3のハウジング30に一体的に組込んであるが、前記外周端間隔G≦500mm にできるのであれば、挟圧ローラ4を両支持型式としてサイドトリマ3と別に設置してもよいものである。
【0018】図1,図2に示す如き薄鋼板のサイドトリミング設備を、ライン速度が 350m/min 〜 450m/min で、板厚0.23mm〜1.8mm,板幅 700mm〜1850mmの低炭素薄鋼板をサイドトリミングするラインにおいて実施した。この場合、剪断丸刃の外径D=380mm,挟圧ローラの外径d=200mm であり、両者の外周端間隔G=90mm, すなわちサイドトリマと挟圧ローラとの間隔Pを 380mmとした。
【0019】その結果、通常のサイドトリミングの際にも、またかえりなしサイドトリミングの際にも、スクラップの搬送が原因でライン停止に至る如き事故は極くまれとなり、その効果を確認することができた。
【0020】
【発明の効果】本発明による薄鋼板のサイドトリミング設備を実施した場合、サイドトリマによって切断部を完全に分離するサイドトリミングの際にも、切断部の厚み方向に未切断部を残して切込み、その後切込部を挟圧ローラで挟圧してスクラップを分離するかえりなしサイドトリミングの際にも、スクラップをスムーズにその処理装置に搬送することができるため、スクラップが原因となるトラブルを激減させることができ、処理ラインの稼動率の向上と、トラブル解消のための労力の削減に寄与するところ甚だ大である。
【0021】また工事費用も、設備費用も従来のかえりなしサイドトリミングを行う設備と変わらない利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による通常サイドトリミングとかえりなしサイドトリミングを行うサイドトリミング設備の側面図である。
【図2】本発明によるサイドトリミング設備の平面図である。
【図3】従来のかえりなしトリミングを行うサイドトリミング設備の側面図である。
【図4】かえりなしトリミングの説明図で切断部を示す図面である。
【符号の説明】
1 薄鋼板
2 スクラップ
3 サイドトリマ
4 挟圧ローラ
5 スクラップガイド
6 スクラップピット
7 スクラップボーラ
30 ハウジング
31 上刃
32 下刃
33 油圧シリンダ
34 ガイドエプロン
35 圧下装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 サイドトリマによって切断部を完全に分離する通常のサイドトリミングと、切断部の厚み方向に未切断部を残して切込を入れた後挟圧ローラによって前記切込部を挟圧することによりスクラップを分離するかえりなしサイドトリミングとを行う薄鋼板のサイドトリミング設備であって、サイドトリマ出側に、サイドトリマの剪断丸刃と挟圧ローラとの相対する相互の外周端間隔が500mm 以下となるよう前記挟圧ローラを設置するとともに、この挟圧ローラの出側にスクラップ処理装置を設けたことを特徴とする薄鋼板のサイドトリミング装置。
【請求項2】 前記挟圧ローラを片持型式としてサイドトリマのハウジングに一体的に組込んだことを特徴とする請求項1記載の薄鋼板のサイドトリミング設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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