説明

薬剤収納封止体及び薬剤収納封止体の形成方法

【課題】本発明は多液混合型の薬剤バッグに関し、未開通のままで投与が行われてしまうという誤操作の可能性をより確実に排除することを目的とする。
【課題を解決するための手段】薬剤バッグ10は軟弱フィルム状素材にて形成され、その内部空洞は弱シール部18により複数の隔室20, 22に区画され、その一つの隔室20を臨むように排出口12が設けられる。排出口12は薬剤バッグ10の内部空洞を望む一端12-2に連通孔28を備え、連通孔28は剥離可能な剥離膜30によって通常は閉鎖され、薬剤バッグ10から排出口12への薬剤の排出が阻止される。剥離膜30は薬剤バッグを構成するプラスチックフィルムの対向面に強固に粘着される。弱シール部18の開通の瞬間における薬剤バッグ10の拡開変形に剥離膜30は一体に変位し、剥離膜30は排出口12より剥離され、連通孔28は薬剤バッグの内部空洞に開口され、薬剤の排出が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は複数薬剤を分離状態で薬剤バッグのそれぞれの隔室に収容しておき、点滴や透析時に隔室間の弱シール部を開通させ、薬剤を混合して使用するようにした薬剤収納封止体及び薬剤収納封止体の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
点滴や透析などのための医療用混合型薬液封止体として多液混合型のものがある。多液混合型薬液封止体においては、軟弱フィルムを素材とする薬剤バッグの内部空洞は弱シール部によってそれぞれ異なった薬液を収容する複数の隔室に分離されている。薬剤バッグの外周には、プラスチック成型品としての薬液排出口が設けられ、薬液排出口は筒状に形成され、その内部空洞は一端側で一方の隔室に開口しているが、他端にはゴム栓が設けられている。患者への薬液の投与に先立って薬剤バッグを外側から加圧することによって弱シール部が開通せしめられ、薬剤バッグの内部空洞は一室となるため2種類の薬液は混合され、点滴用チューブに接続された輸液セットの穿刺針によりゴム栓を穿刺し、薬剤バッグよりの薬液の投与が可能となる。
【0003】
この種の医療用混合型薬液封止体においては薬液の投与に先立って弱シール部の開通を行うことにより両液を混合せしめる作業は必須であり、他方、弱シール部の開通を行わないままで薬液排出口におけるゴム栓の穿刺を行うと、薬液排出口側の隔室における薬液のみが投与されてしまうという誤操作の可能性があった。この問題点に対処する従来技術として、薬剤バッグの内部空洞を二つの隔室に分離する第1の弱シール部に加えて、薬液排出口の直前に第2の弱シール部を設け、第1の弱シール部の開通に要する圧力に対して第2の第2の弱シール部を同等若しくはそれ以上とすることにより、第1の弱シール部次いで第2の弱シール部の順序で開通されるようにし、これにより薬液の混合後に排出が行われるようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は二つの隔室を分離する第1の弱シール部に加えて薬液排出口の直前に第2の弱シール部を設け、これらの弱シール部を順次開通させることで未混合のままの薬液の投与は防止しうるが、弱シール部を2個所設けているため、製造工程が複雑化し、コスト増となり、ユーザ側に2段階の加圧による開通作業を強いることになり、作業性としては必ずしも良くなかった。また、薬剤バッグの加圧の仕方によっては第1の弱シール部→第2の弱シール部の順序によって必ずしも開通されるとは限らず、薬液排出口側の第2の弱シール部が先に開通されてしまうと、投与作業にそのまま移行してしまう可能性があり、この場合は未混合で1液のみ投与されてしまう結果となる。
【0005】
この発明は以上の問題点に鑑みてなされてものであり、未開通の状態では投与を行い得ない多液混合型の薬剤バッグの新規な構造を提供し、製造コストが低廉でありかつユーザ側の作業性が良好であるにもかかわらず、未混合のままで投与が行われてしまうという誤操作の可能性をより確実に排除することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、軟弱可撓性素材にて形成された薬剤バッグの内部空洞を弱シール部により複数の隔室に区画し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、複数の隔室の一つを臨ませつつ外周が薬剤バッグに流密装着された排出口及び通常状態において前記排出口を薬剤バッグの内部空洞に対して閉鎖する閉鎖手段を具備し、前記閉鎖手段は、使用時の弱シール部開通の瞬間に薬剤バッグ内に惹起される衝撃的な流体力を受けたときの薬剤バッグの拡開変形と協働することにより排出口の閉鎖状態を解除可能であることを特徴とする薬剤収納封止体が提供される。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、軟弱可撓性素材にて形成された薬剤バッグの内部空洞を弱シール部により複数の隔室に区画し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、複数の隔室の一つを臨ませつつ外周が薬剤バッグに流密装着された排出口及び通常状態において前記排出口を薬剤バッグの内部空洞に対して閉鎖する分離可能型の閉鎖部材を具備し、前記閉鎖部材は、薬剤バッグの対抗内面に一体に保持されたことを特徴とする薬剤収納封止体が提供される。
【0008】
請求項3に記載の発明によれば、軟弱可撓性素材にて形成された薬剤バッグの内部空洞を弱シール部により複数の隔室に区画し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、複数の隔室の一つを臨ませつつ外周が薬剤バッグに流密装着された排出口を備え、前記排出口は薬剤バッグの外側における薬剤取出部と薬剤バッグの内側における薬剤流入部と薬剤流入部を閉鎖する剥離可能な閉鎖部材とから成り、前記剥離可能な閉鎖部材は薬剤バッグを構成する軟弱可撓性素材の対抗面に一体に固着されていることを特徴とする薬剤収納封止体が提供される。
【0009】
請求項4に記載の発明によれば、軟弱可撓性素材にて形成された薬剤バッグの内部空洞を弱シール部により複数の隔室に区画し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、複数の隔室の一つを臨ませつつ外周が薬液バッグに流密装着された排出口及び通常状態において前記排出口を閉鎖するように貼着された剥離膜を具備し、前記剥離膜は、薬剤バッグの対向面に、排出口に対する剥離膜の貼着より強固に貼着されたことを特徴とする薬剤収納封止体が提供される。
【0010】
請求項5に記載の発明によれば、軟弱可撓性素材にて形成された薬剤バッグの内部空洞を弱シール部により複数の隔室に区画し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、外力により分離可能な作り付けの閉鎖部材を備えた排出口を複数の隔室の一つを臨ませつつ外周を薬剤バッグに流密装着し、排出口を閉鎖する閉鎖部材は薬剤バッグの対向内面に強固に固着されたことを特徴とする薬剤収納封止体が提供される。
【0011】
請求項6に記載の発明によれば、軟弱可撓性素材にて形成され、内部空洞が弱シール部により複数の隔室に区画された薬剤バッグ及び剥離可能型の閉鎖部材により閉鎖された排出口を準備し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、複数の隔室の一つを臨むように排出口をその外周において薬液バッグに流密装着すると共に、排出口に設けられた剥離可能型の閉鎖部材はこれに対向する薬剤バッグの内面に閉鎖部材の剥離に要するより大きな固着力にて固着するようにしたことを特徴とする薬剤収納封止体の形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明の作用・効果を説明すると、閉鎖手段は通常は排出口を薬剤バッグの内部空洞に対して閉鎖し、薬剤バッグからの輸液はこれを行うことができない。弱シール部の開通は手のひら全体によって薬剤バッグを押圧することにより行われるが、弱シール部の開通時に押圧力が急激に解放されることにより薬剤バッグ内に衝撃的な薬液の流れが生じ、排出口の部位で薬剤バッグの大きな拡開変形が生じ、この拡開変形との協働により閉鎖手段による閉鎖状態は瞬時に解除され、排出口が薬剤バッグの内部空洞に連通され、輸液を開始することができる。そのため、この発明によれば、弱シール開通前における未混合の状態での誤作業の発生の防止をより確実に行うことができる。
【0013】
請求項2の発明の作用・効果を説明すると、閉鎖部材は通常は排出口を薬剤バッグの内部空洞に対して閉鎖し、薬剤バッグからの輸液はこれを行うことができない。弱シール部の開通は手のひら全体によって薬剤バッグを押圧することにより行われるが、弱シール部の開通時に押圧力が急激に解放されることにより薬剤バッグ内に衝撃的な薬液の流れが生じ、排出口の部位で薬剤バッグの大きな拡開変形が生じ、この拡開変形を受けると、閉鎖部材は薬剤バッグと一体に変位するため排出口から離間変位することにより分離され、排出口が薬剤バッグの内部空洞に連通され、輸液を開始することができる。そのため、この発明によれば、弱シール開通前における未混合の状態での誤作業の発生の防止をより確実に行うことができる。また、排出口の閉鎖を分離型の閉鎖部材により行っており、弱シール部の開通時に排出口の閉鎖の解除に失敗しても、後発的に手操作により閉鎖部材を分離させ、輸液の続行に至らしめることができる。
【0014】
請求項3の発明の作用・効果を説明すると、排出口は薬剤バッグの外側に薬剤取出部を備え、薬剤バッグの内側における薬剤流入部を剥離可能な閉鎖部材により閉鎖しており、請求項2の発明と同様に弱シール部の開通と同時に排出口を確実に開放しうる上、薬剤バッグ外部のゴム栓のような取出部より薬液の排出作業を容易・確実に実施することができる。
【0015】
請求項4の発明の作用・効果を説明すると、剥離膜は通常は排出口を薬剤バッグの内部空洞に対して閉鎖し、薬剤バッグからの輸液はこれを行うことができない。弱シール部の開通は手のひら全体によって薬剤バッグを押圧することにより行われるが、弱シール部の開通時に押圧力が急激に解放されることにより薬剤バッグ内に衝撃的な薬液の流れが生じ、排出口の部位で薬剤バッグの大きな拡開変形が生じ、この拡開変形を受けると、剥離膜は薬剤バッグに強固に貼着されているため薬剤バッグと一体に変位し、他方、排出口に対する剥離膜の貼着は弱いため、薬剤バッグとの一体の変位により剥離膜は排出口から剥離され、排出口が薬剤バッグの内部空洞に連通され、輸液を開始することができる。そのため、この発明によれば、弱シール開通前における未混合の状態での誤作業の発生の防止をより確実に行うことができる。また、剥離膜により排出口を閉鎖しているため、排出口を薬剤バッグにシールする作業と同時に薬剤バッグと剥離膜との貼着を同時的に行うことができ、薬剤収納封止体の形成工程が効率的となる。
【0016】
請求項5の発明の作用・効果を説明すると、閉鎖部材は排出口に作り付けとなっており、通常は排出口を薬剤バッグの内部空洞に対して閉鎖し、薬剤バッグからの輸液はこれを行うことができない。弱シール部の開通は手のひら全体によって薬剤バッグを押圧することにより行われるが、弱シール部の開通時に押圧力が急激に解放されることにより薬剤バッグ内に衝撃的な薬液の流れが生じ、排出口の部位で薬剤バッグの大きな拡開変形が生じ、この拡開変形を受けると、閉鎖部材は排出口から分離され、排出口が薬剤バッグの内部空洞に連通され、輸液を開始することができる。そのため、この発明によれば、弱シール開通前における未混合の状態での誤作業の発生の防止をより確実に行うことができる。また、排出口は作り付け構造の閉鎖部材を備えており、通常,空間部については,高圧蒸気滅菌により滅菌保証が難しいとされるが,排出口につき予め電子線又はガンマ線滅菌を行うことで無菌状態を確立した上で薬剤バッグに装着することができ,内溶液充填後,医薬品全体を高圧蒸気滅菌することで排出口につき予め所期の滅菌状態を確立した上で薬剤バッグに装着することができ、医薬品として必須の滅菌保証を容易かつ確実に得ることができる。
【0017】
請求項6の発明の作用・効果を説明すると、排出口を予め閉鎖部材により閉鎖した状態で排出口に対する薬剤バッグの封止が行われ、この封止時に薬剤バッグと閉鎖部材との対向面同士の固着も同時に行うことができ、薬剤収納封止体の形成を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1及び図2において、医療用混合型薬液封止体は平坦状の薬剤バッグ10と排出口12とから構成される。薬剤バッグ10は厚さ200〜400ミクロンといったポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムなどの軟弱フィルム(本発明の軟弱可撓性素材)を素材とする。ポリエチレンフィルムの場合に外周はその軟化温度より十分高い150℃といった高温にて加圧されることにより形成された強シール部14により封止され、矩形の袋状をなしている。強シール部14には懸垂孔16が穿設され、この懸垂孔16によって薬剤バッグ10を点滴台などに吊り下げ保持し、点滴や透析作業を行うことになる。
【0019】
薬剤バッグ10の長さ方向における中間部位において全幅にわたって弱シール部18が延びており、弱シール部18によって薬剤バッグ10の表裏面が接着され、薬剤バッグ10の内部空洞は第1隔室20と第2隔室22とに区画される。第1隔室20に第1薬液が充填され、第2隔室22に第2薬液が充填される。弱シール部18は薬剤バッグ10を形成するポリエチレンフィルムの表裏面をその軟化温度よりやや高い130℃といった低温にて加圧することにより形成される。そのため、第1隔室20と第2隔室22にそれぞれの薬液を収容した状態で隔室20, 22の部位において薬剤バッグ10における薬液を外側より加圧することにより、強シール部14はそのままに弱シール部18を破壊・開通せしめ、第1薬液と第2薬液との混合を行うことができる。
【0020】
排出口12は、その形態を維持しうる剛性を有した肉厚を有したポリエチレン若しくはポリプロピレン,ポリオレフィンなどのプラスチック(薬剤バッグ10との溶着による密着性を得るため薬剤バッグ10と同種プラスチック素材とすることが好ましい)の成形品である。図2に示すように、排出口12は一端(外側端)12-1において拡径(図8に示すように拡径部は別体部品の溶着構造により実現することができる)していると共に、開口端にゴム栓24(本発明における薬剤取出部)が嵌着され、点滴時において、ゴム栓24に輸液セットの穿刺針26を穿刺することができる。排出口12は他端(内側端)12-2において矩形断面部(本発明における薬剤流入部)をなしており、矩形断面部12-2は端面12Aにおいて閉鎖しているが、上下側面12Bに開口するように連通孔28が穿設されている。連通孔28は剥離膜30(この発明の閉鎖部材)によって外面側より剥離可能に密封閉鎖されている。剥離膜30は素材としては薬剤バッグ10と溶着される面については同種のプラスチック素材を用い,また,排出口12と溶着される面については剥離可能な強度をコントロールできる素材を用いて(例えば外層ポリエチレン内層オレフィンコポリマーを含む多層フィルム)形成されており、その厚さとしては0.1〜0.5mm、好ましくは0.2〜0.4mmである。剥離膜30は排出口12の矩形断面部12-2の上下側面12Bに加熱溶着され、その結果連通孔28は密閉されて、排出口12の内部空洞は薬剤バッグ10の内部空洞との連通を阻止されている。側面12Bに対する剥離膜30の溶着温度としては、通常の状態においては、貫通孔28の密閉を維持することができるが、外力による剥離が容易な強度に設定されている。ポリエチレンの場合は弱シール部18を形成する際の薬剤バッグ10を構成するプラスチックフィルムの軟化温度よりやや高い130℃といった低温で行われる。剥離膜30は外面では薬剤バッグ10を形成するプラスチックフィルム10´の対抗面に溶着されている。薬剤バッグ10と剥離膜30との溶着は外力によっては容易に剥離し得ないように強力にされており、ポリエチレンの場合は強シール部14を形成する際の150℃といった高温により溶着されている。薬剤バッグ10の通常状態では、外面が薬剤バッグ10が対向内面に強固に貼着された剥離膜30により排出口12の連通孔28を密封閉鎖しており、薬剤バッグ10の対向面に貼着された剥離膜30はこの発明の閉鎖手段を構成する。剥離膜30は薬剤バッグ10に固着されているため、後述のように、薬剤バッグ10の開通時の薬剤バッグ10の拡開変形時にこれに協働して一体に変位するため剥離膜30は排出口から剥離せしめられ、連通孔28を露出させ、薬液の流通が許容される。
【0021】
次に、図1の薬剤収納封止体の形成方法について説明すると、内部空洞が弱シール部18により隔室20, 22に分離された 両端が開口した薬剤バッグを準備する。両端の開口部より夫々の隔室20, 22に薬剤を充填し、夫々の隔室20, 22への開口部を強シール14によって閉鎖する。薬剤の充填時、薬剤バッグ10に対する排出口12の強シールも行うが、これについて説明すると、薬剤バッグへの装着に先立ち排出口12に剥離膜30の低温溶着が行われ、連通孔28は剥離膜30により剥離可能に密閉された状態にある(ゴム栓24も装着済みとなっている)。そのため、排出口12は外部に対して完全に密封されており、予め電子線やガンマ線などにより内部を滅菌された密封空間としておくこともできる。そして、このように剥離膜30を装着した排出口12は薬剤バッグにおける隔室22への開口部に装着され、高温での溶着が行われる。この溶着の際に、薬剤バッグ10と剥離膜30との溶着も同時に行われる。即ち、溶着金型は薬剤バッグ10を構成するプラスチックフィルム10´を排出口の円筒部12-2に圧着する半割の第1の溶着部と、この第1の溶着部から一体に延出する半割の第2の溶着部とを備えており、排出口12の円筒部12-2に対する薬剤バッグ10を構成するプラスチックフィルム10´の溶着による強シール14の形成と同時に剥離膜30に対する薬剤バッグ10の対向内面の高温貼着とを同時に行うことができる。
【0022】
図2は薬剤バッグ10の弱シール部18が未開通の状態を示し、各隔室20, 22にそれぞれの薬液が個別的に収容され、隔室20, 22に収容される薬液の分だけ薬剤バッグ10は多少膨れている。しかしながら、剥離膜30によって排出口12の連通孔28は密閉されているため、仮にゴム栓24に輸液セットの穿刺針26を穿刺したとしても薬剤バッグ内の薬剤は排出口12より排出することはできない。
【0023】
薬剤バッグ10の開通のため薬剤バッグ10は上面より手のひらで矢印bのように強く加圧される(図2では隔室20側において薬剤バッグ10を加圧しているが隔室22の側を加圧しても両側を加圧してもよい)。薬剤バッグ10の加圧により弱シール部18に液圧が加わり、所定の圧力により弱シール部18は瞬時に破壊開通するに至る。加圧により薬剤バッグ10の内圧は高められており、弱シール部18の開通の開通によりこの高められた圧力が一気に放出されるため、衝撃的な薬液の流れが薬剤バッグ10内に惹起される。薬剤バッグ10内に惹起された衝撃的な薬液の流れを図5では矢印fにより模式的に示す。弱シール部18の開通の際に薬剤バッグ10内に惹起された急激な薬液の流れfは薬剤バッグ10を構成するプラスチックフィルム10´を図示のように拡開させ、薬剤バッグ10に強固に貼着された剥離膜30は薬剤バッグ10と共に変位するも貼着が弱い排出口12の側面12Bから剥離せしめられる。剥離膜30の剥離によって、薬剤バッグ10の内部空洞は連通孔28を介して排出口12の内部空洞に対して恒久的に連通され、ゴム栓24に穿刺される輸液セットより排出することができる。
【0024】
以上の実施形態においては排出口12に対する剥離膜30の溶着温度は弱シール部18の形成時の溶着温度と同等であり、粘着力も同等であるため、弱シール18の開通時の薬液バッグの拡開(膨らみ)によって剥離膜30の剥離は同時的に行われることが殆どであるが、剥離膜30が排出口12から完全に剥離しない場合が万一あっても、薬液バッグ10の外側より指操作によって剥離膜30の剥離を行うことは容易であり、薬剤の開通に至らしめることができる。即ち、弱シール18の未開通時は夫々の隔室20, 22への薬液の充填率が相対的に高いため薬剤バッグ10を構成するプラスチックフィルムを外部から剥離操作しようとしても薬液に邪魔されるためその操作を行い難いが、弱シール18を開通させると、薬剤バッグ内での空間の占める割合が大きくなるため、液体に邪魔されることなくプラスチックフィルムを介して剥離膜30を剥離させるべく外部から操作することが容易となる。
【0025】
図6及び図7はこの発明の第2の実施形態を示しており、排出口112の連通孔128は排出口112の円筒部に円周方向に離間して複数形成され、剥離膜130はこれらの連通孔128を閉塞するように排出口112の円筒部に1周巻かれ(図7参照)、相対的に低温にて溶着され、弱い貼着力にて貼着されている。そして、薬液バッグ10を構成する上下のプラスチックフィルム10は最外側端の部位で排出口112の円筒部に高温にて溶着され(強シール14を形成し)、この部位14に近接した部位で薬液バッグ10を構成するプラスチックフィルム10´は剥離膜130の外面には高温にて溶着され、強い貼着力に貼着されている。
【0026】
この第2実施形態においても、剥離膜130は通常は排出口112を閉鎖し、薬剤バッグ10の内部空洞への薬剤バッグ10の連通を阻止し、薬剤バッグ10の弱シール部を開通する際の薬剤バッグ10の拡開変形と一体に剥離膜130は変位するため、剥離膜130は排出口112から剥離・分離され、連通孔128は開放されるため、排出口112は薬剤バッグ10の内部空洞に開口され、薬剤の排出が可能となる。この実施形態では剥離膜130は排出口112の円周方向に巻回されているため、排出口112に剥離膜130を溶着した後、薬剤バッグ10を構成する上下のプラスチックフィルム10´の対抗面に高温溶着する際に、薬液バッグに対する排出口112の円周方向の位置決めなしに薬剤バッグと剥離膜130との強シールのための溶着を実施することができ、薬剤収納封止体の形成工程をその分簡略化することができる。
【0027】
以上の実施形態において、溶着された剥離膜30, 130を弱シール部18の開通時の薬剤バッグの拡開変形との協働により排出口12, 112から剥離させることで、排出口12, 112を薬剤バッグ10の内部空洞に連通させているが、剥離膜30, 130の溶着の代わりに、イージーピール性の接着剤を使用することも可能であり、また、排出口を部分的に薄肉などに一体形成することで、機械的に分離(破壊)可能に構成し、この分離可能部分を薬液バッグの対抗内面に高温溶着により固着するようにしてもよい。また、剥離膜を使用せずとも、脆弱シールにより、剥離可能に製造することもでき、このような態様も本件発明に含まれるものである。この場合も、弱シール部18の開通時における薬剤バッグの拡開変形により一体形成の薄肉部分が分離若しくは破壊せしめられ、薬剤バッグの内部空洞を排出口に連通せしめることができ、同様の作用・効果を達成しうる。連通孔128は、複数条設けることにより製造が容易となるとともに、良好な排出性を示す。連通孔の個数としては図では45度間隔で8個であるが、90度間隔で4個といったように必要に応じて個数を変更ことは任意である。また剥離膜を使わず、脆弱シールのみで製造することもこの発明の範囲に包含されることもいうまでもない。
【0028】
図8は第3の実施形態を示す。この実施形態においては、排出口212は剛性のあるプラスチック素材にて筒状に形成された剛直基部260と、基部260から筒状に一体に延出し、可撓性のあるプラスチック素材にて形成された可撓性本体262(この発明の閉鎖部材)とから構成される。本体部262の一端フランジ部にキャップ部264が溶着され、キャップ部264にゴム栓213が嵌着される。可撓性本体262の先端262Aは扁平に圧潰することができ、その圧潰された部位における対向内面間は剥離膜230を介して低温にて溶着される。他方、薬剤バッグ10を構成する上下プラスチックフィルム10´は、可撓性本体262の対向外面に高温にて溶着される。
【0029】
図8(イ)に示すように、通常時は、可撓性本体262の扁平化された先端262Aは対向内面で低温溶着されているため、排出口212は薬剤バッグ10の内部空洞に対して閉鎖され、たとえ輸液セットの穿刺針によりゴム栓213を穿刺したとしても薬剤の排出は阻止される。弱シール部の開通時に図8(ロ)に示すように、薬剤バッグ10は拡開変位するため、低温溶着された剥離膜230は破られ、可撓性本体262の先端262Aの対抗面は剥離され、排出口212は薬剤バッグ10の内部空洞に連通せしめられ、薬剤の排出が可能となる。
【0030】
図9は別の実施形態を示しており、剛性のあるプラスチック素材にて形成された排出口312の先端に軟弱プラスチックチューブ362の一端を高温溶着し、軟弱プラスチックチューブ362の他端362Aは扁平に潰し、対向内面を剥離膜330に低温溶着し、プラスチックチューブ362の扁平端部362Aの外面に薬剤バッグ10を構成するプラスチックフィルム10´の対抗面を高温溶着にて一体化したものである。この図9の実施形態の動作は図8の実施形態と同様であり、通常はプラスチックチューブ362の扁平端部362Aが低温溶着されていることにより薬剤バッグ10の内部からの輸液が排出口312への流入が阻止され、弱シールの開通時における薬剤バッグの開通時に薬剤排出口362との接続部(プラスチックチューブ362の扁平端部362A)において薬剤バッグ10が拡径変形することで、剥離膜330は破られ、プラスチックチューブ362の端部362Aは拡開され、薬剤バッグ10の内部からの薬液が排出口312へ流入することができるようになる。
【0031】
以上の実施形態では薬剤バッグ10は薬液と薬液とを混合させるタイプであるが、薬液と粉状などの液状ではない薬剤とを混合させて使用するタイプの薬剤バッグにおいてもこの発明は実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1はこの発明の薬剤収納封止体の平面図(図2のI方向矢視図)である。
【図2】図2は図1の薬剤収納封止体の縦断面図(図1のII−II線に沿って現される矢視断面図)である。
【図3】図3は図2のIII−III線に沿って表される矢視断面図である。
【図4】図4は図2のIV−IV線に沿って表される矢視断面図である。
【図5】図5は図1の薬剤収納封止体の部分図であるが、薬剤バッグの開通の瞬間における排出口に対する薬剤バッグの接続部の状態を示す。
【図6】図6は第2実施形態において薬剤バッグに対する排出口の接続部の縦断面図である。
【図7】図7は図6のVIII−VIII線に沿って表される矢視断面図である。
【図8】図8は第2実施形態において薬剤バッグに対する排出口の接続部の縦断面図であり、(イ)は通常状態、(ロ)は弱シール部の開通時を示す。
【図9】図9は第3実施形態における薬剤バッグに対する排出口の接続部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10…薬剤バッグ
12…排出口
14…強シール部
16…懸垂孔
18…弱シール部
20…第1隔室
22…第2隔室
24…ゴム栓
28…連通孔
30…剥離膜







【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱可撓性素材にて形成された薬剤バッグの内部空洞を弱シール部により複数の隔室に区画し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、複数の隔室の一つを臨ませつつ外周が薬剤バッグに流密装着された排出口及び通常状態において前記排出口を薬剤バッグの内部空洞に対して閉鎖する閉鎖手段を具備し、前記閉鎖手段は、使用時の弱シール部開通の瞬間に薬剤バッグ内に惹起される衝撃的な流体力を受けたときの薬剤バッグの拡開変形と協働することにより排出口の閉鎖状態を解除可能であることを特徴とする薬剤収納封止体。
【請求項2】
軟弱可撓性素材にて形成された薬剤バッグの内部空洞を弱シール部により複数の隔室に区画し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、複数の隔室の一つを臨ませつつ外周が薬剤バッグに流密装着された排出口及び通常状態において前記排出口を薬剤バッグの内部空洞に対して閉鎖する分離可能型の閉鎖部材を具備し、前記閉鎖部材は、薬剤バッグの対抗内面に一体に保持されたことを特徴とする薬剤収納封止体。
【請求項3】
軟弱可撓性素材にて形成された薬剤バッグの内部空洞を弱シール部により複数の隔室に区画し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、複数の隔室の一つを臨ませつつ外周が薬剤バッグに流密装着された排出口を備え、前記排出口は薬剤バッグの外側における薬剤取出部と薬剤バッグの内側における薬剤流入部と薬剤流入部を閉鎖する剥離可能な閉鎖部材とから成り、前記剥離可能な閉鎖部材は薬剤バッグを構成する軟弱可撓性素材の対抗面に一体に固着されていることを特徴とする薬剤収納封止体。
【請求項4】
軟弱可撓性素材にて形成された薬剤バッグの内部空洞を弱シール部により複数の隔室に区画し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、複数の隔室の一つを臨ませつつ外周が薬液バッグに流密装着された排出口及び通常状態において前記排出口を閉鎖するように貼着された剥離膜を具備し、前記剥離膜は、薬剤バッグの対向面に、排出口に対する剥離膜の貼着より強固に貼着されたことを特徴とする薬剤収納封止体。
【請求項5】
軟弱可撓性素材にて形成された薬剤バッグの内部空洞を弱シール部により複数の隔室に区画し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、外力により分離可能な作り付けの閉鎖部材を備えた排出口を複数の隔室の一つを臨ませつつ外周を薬剤バッグに流密装着し、排出口を閉鎖する閉鎖部材は薬剤バッグの対向内面に強固に固着されたことを特徴とする薬剤収納封止体。
【請求項6】
軟弱可撓性素材にて形成され、内部空洞が弱シール部により複数の隔室に区画された薬剤バッグ及び剥離可能型の閉鎖部材により閉鎖された排出口を準備し、それぞれの隔室に薬剤を封入し、複数の隔室の一つを臨むように排出口をその外周において薬液バッグに流密装着すると共に、排出口に設けられた剥離可能型の閉鎖部材はこれに対向する薬剤バッグの内面に閉鎖部材の剥離に要するより大きな固着力にて固着するようにしたことを特徴とする薬剤収納封止体の形成方法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−20964(P2006−20964A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203656(P2004−203656)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】