説明

薬物動態を改善する方法

本発明の目的は、チトクロームP450阻害剤との共投与によって式Iで示される化合物の血中濃度を高めることである。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、HCVを治療するための、リトナビルと式Iで示される化合物との共投与による改善された投与方法に関する。本発明はさらに、式Iで示される化合物およびリトナビルを含む医薬組成物に関する。
【0002】
世界中で、慢性肝疾患の主な原因はC型肝炎ウイルス(HCV)である(Boyer, N. et al., J. Hepatol. 2000 32:98-112)。世界保健機関(WHO)は、世界中で1億7千万人を超える人々(または世界の人口の約3%)が一本鎖リボ核酸(RNA)HCVに感染していると見積もっている(G.M.Lauer and B.D. Walker, N. Engl. J. Med. 2001 345:41-52)。慢性的なHCV感染患者のおよそ5分の1が、最終的に肝不全や肝細胞癌などへの高い罹患率と死亡率を示す肝硬変を発症すると予想される(T.J. Liang et al. Ann. Intern. Med. 2000 132:296-305; M.W. Fried et al. N. Engl. J. Med. 2002 347:975-982)。米国において、HCV感染は、肝臓移植するかどうかの一次的な目安である(NIH Consensus Statement on Management of Hepatitis C. 2002 June 10-12 19(3):146; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14768714)。
【0003】
HCVは、フラビウイルス科の一種として分類されており、フラビウイルス科は、フラビウイルス属、ペスチウイルス属、および、C型肝炎ウイルスを含むハパセイウイルス属(hapaceiviruse)などを含むウイルスファミリーである(Rice, C. M., Flaviviridae: The viruses and their replication. In: Fields Virology, Editors: B. N. Fields, D. M. Knipe and P. M. Howley, Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, Pa., Chapter 30, 931-959, 1996)。HCVは、およそ9.4kbのポジティブセンス一本鎖RNAゲノムを含むエンベロープを有するウイルスである。このようなウイルスゲノムは、高度に保存された5’非翻訳領域(UTR)、ポリタンパク質前駆体(およそ3011個のアミノ酸)をコードする長いオープンリーディングフレーム、および、短い3T UTRからなる。
【0004】
HCVの遺伝学的な分析によって、6種の主要な遺伝子型が同定され、これらのDNA配列は30%より多くが異なっている。30種を超えるサブタイプが識別されている。米国において、感染個体のおよそ70%が、1a型および1b型の感染を示す。1b型は、アジアで一番蔓延しているサブタイプである(X. Forns and J. Bukh, Clinics in Liver Disease 1999 3:693-716; J. Bukh et al., Semin. Liv. Dis. 1995 15:41-63)。残念なことに、1型の感染は2型または型の遺伝子型のどちらよりも治療に対する耐性が高い(N. N. Zein, Clin. Microbiol. Rev., 2000 13:223-235)。
【0005】
HCVゲノムは、3010〜3033個のアミノ酸を有するポリタンパク質をコードする(Q. L. Choo, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991 88:2451-2455; N. Kato et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990 87:9524-9528; A. Takamizawa et al., J. Virol. 1991 65:1105-1113)。ウイルス構造タンパク質は、ヌクレオキャプシドコアタンパク質(C)と、2種のエンベロープ糖タンパク質、E1およびE2とを含む。またHCVはさらに2種のプロテアーゼもコードしており、すなわちNS2−NS3領域によってコードされた亜鉛依存性メタロプロテイナーゼと、NS3領域でコードされたセリンプロテアーゼとをコードする。HCV NS3プロテアーゼは、大半のウイルス酵素のプロセシングを促進するセリンプロテアーゼであるため、ウイルス複製および感染に必須のものとみなされている。これらのプロテアーゼは、前駆体ポリタンパク質の特異的領域の成熟ペプチドへの切断に必要である。非構造タンパク質5のカルボキシル側半分のNS5Bは、RNA依存性RNAポリメラーゼを含む。
【0006】
現在のところ、HCV感染の治療に利用できる承認された治療は、限られた数しかない。HCV感染を治療し、HCV NS5Bポリメラーゼ活性を阻害するための、新規の治療アプローチと既存の治療アプローチが総論されている:R. G. Gish, Sem. Liver. Dis., 1999 19:5; Di Besceglie, A. M. and Bacon, B. R., Scientific American, October: 1999 80-85; G. Lake-Bakaar, Curr. Drug Targ. Infect. Dis. 2003 3(3):247-253; P. Hoffmann et al, Exp. Opin. Ther. Patents 2003 13(11):1707-1723; M. P. Walker et al., Exp. Opin. Investing. Drugs 2003 12(8):1269-1280; S.-L. Tan et al., Nature Rev. Drug Discov. 2002 1:867-881; J. Z. Wu and Z. Hong, Curr. Drug Targ-Infect. Dis. 2003 3(3):207-219。
【0007】
リバビリン(1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1H−[1,2,4]トリアゾール−3−カルボン酸アミド;ビラゾール(登録商標))は、合成の非インターフェロン誘導性広域抗ウイルス性ヌクレオシド類似体である。リバビリンは、インビトロでフラビウイルス科などの数種のDNAおよびRNAウイルスに対して活性を有する(Gary L. Davis. Gastroenterology 2000 118:S104-S114)。単剤療法でリバビリンは、患者の40%において血清中のアミノトランスフェラーゼ濃度を正常値にまで減少させるが、HCV-RNAの血清中濃度は減少させない。またリバビリンはかなりの毒性も示し、貧血を誘発させることが知られている。ビラミジン(viramidine)は、肝細胞中でアデノシンデアミナーゼによってリバビリンに変換されるリバビリンのプロドラッグである(J. Z. Wu, Antivir. Chem. Chemother. 2006 17(1):33-9)。
【0008】
ほぼ10年間にわたり、慢性肝炎の治療にはインターフェロン(IFN)が利用されてきた。IFNは、ウイルス感染に応答して免疫細胞によって生産される糖タンパク質である。2種の別個のタイプのインターフェロンが認識されており、1型は、数種のインターフェロンアルファと1種のインターフェロンベータを含み、2型は、インターフェロンガンマを含む。1型インターフェロンは、主として感染細胞によって生産され、隣接する細胞を新規(de novo)感染から保護する。IFNは、HCVなどの多くのウイルスのウイルス複製を阻害し、C型肝炎感染の単一治療として用いられる場合、IFNは、血清中のHCV−RNAを検出不可能なレベルにまで抑制する。加えて、IFNは、血清中のアミノトランスフェラーゼ濃度を正常化する。しかし残念ながら、IFNの作用は一時的である。治療を中断すると、再発率は70%になり、正常な血清中のアラニントランスフェラーゼ濃度を保つ持続的なウイルス学的応答を示すのはわずか10〜15%である。(Davis, Luke-Bakaar, 上記)。
【0009】
現在のところ、HCVと、リバビリンおよびインターフェロン−αとの併用療法は、初めて治療を受けるHCV患者を治療するための標準的な処置である。リバビリンとPEG−IFN(以下参照)とを組み合わせることによって、1型HCV患者の54〜56%においてウイルス学的著効(SVR)が達成され、これは、治療が終了してから24週間後にC型肝炎ウイルスリボ核酸(HCV RNA)が検出されないことと定義される(M. W. Fried et al. 上記)。2型および3型HCVの場合、SVRは80%近く達成される。(Walker, 上記)。その上、PEG−IFNは注射で投与され、それに加えて、PEG−IFNおよびRBVの血液学的および構造的な毒性のために、多くの患者にとって、必要とされる長い(最長で48週間の)治療期間に耐えることは困難である。現在のところ、再発した患者またはPEG−IFN/RBV治療に応答しない患者(不応答者)のいずれにとっても、SOC治療はない。世界的なCHC疾患の高発生率、現在のSOCを用いた場合の高い治療の失敗率、および、現在のSOCを用いた場合の忍容性の問題を考慮すると、これらの患者群のための治療を改善し、治療の選択肢を広げる拡張する未だ満たされていない実質的な医療上の必要性がある。宿主防衛の有効性は、宿主の免疫反応を崩壊させる、それから逃れる、および、それに拮抗するHCVの能力によって妨げられ、それによりウイルスに感染した状態を確実に継続させて、IFN治療の抗ウイルス性作用にかなりの頻度で抵抗する(M.Gale, Jr. and E.M. Foy, Nature 2005. 436:939-945)。それゆえに、ウイルスそれ自身を標的とする方策が、現在選択可能な治療と比較して、治療の結果を改善する可能性がある。
【0010】
現在、抗HCV治療剤としての医薬開発のための多数の可能性のある新しい分子標的が同定されてきており、このような分子標的としては、これらに限定されないが、NS2−NS3自己プロテアーゼ、NS3プロテアーゼ、NS3ヘリカーゼ、および、NS5Bポリメラーゼが挙げられる。RNA依存性RNAポリメラーゼは、ポジティブセンス一本鎖RNAゲノムの複製に絶対的に必要である。この酵素は、医薬品化学者の間でも大きな関心が持たれている。
【0011】
創薬のためのその他の標的はHCVポリメラーゼ阻害剤であり、開発中の化合物としては、R−1626、R−7128、IDX184/IDX102、PF−868554(ファイザー(Pfizer))、VCH−759(ヴィロケム(ViroChem))、GS−9190(ギリアード(Gilead))、A−837093およびA−848837(アボット(Abbot))、MK−3281(メルク(Merck))、GSK949614、および、GSK625433(グラクソ(Glaxo))、ANA598(アナディス(Anadys))、VBY708(ヴィロベイ(ViroBay))が挙げられる。
【0012】
またHCV NS3プロテアーゼ阻害剤は、HCV治療に有用な可能性があるということも確認されている。臨床試験中のプロテアーゼ阻害剤としては、VX−950(テラプレビル,バーテックス(Vertex))、SCH503034(ボセプレビル,シエーリング(Schering))、TMC435350(ティボテック(Tibotec)/メディビル(Medivir))、および、ITMN−191(インターミューン(Intermune))が挙げられる。開発の初期段階におけるその他のプロテアーゼ阻害剤としては、MK7009(メルク(Merck))、BMS−790052(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(Bristol Myers Squibb))、VBY−376(ビロベイ(Virobay))、IDXSCA/IDXSCB(アイデニックス(Idenix))、BI12202(ベーリンガー(Boehringer))、VX−500(バーテックス)、PHX1766フェノミックス(Phenomix))が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Boyer, N. et al., J. Hepatol. 2000 32:98-112
【非特許文献2】G.M.Lauer and B.D. Walker, N. Engl. J. Med. 2001 345:41-52
【非特許文献3】T.J. Liang et al. Ann. Intern. Med. 2000 132:296-305
【非特許文献4】M.W. Fried et al. N. Engl. J. Med. 2002 347:975-982
【非特許文献5】NIH Consensus Statement on Management of Hepatitis C. 2002 June 10-12 19(3):146
【非特許文献6】Rice, C. M., Flaviviridae: The viruses and their replication. In: Fields Virology, Editors: B. N. Fields, D. M. Knipe and P. M. Howley, Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, Pa., Chapter 30, 931-959, 1996
【非特許文献7】X. Forns and J. Bukh, Clinics in Liver Disease 1999 3:693-716
【非特許文献8】J. Bukh et al., Semin. Liv. Dis. 1995 15:41-63
【非特許文献9】N. N. Zein, Clin. Microbiol. Rev., 2000 13:223-235
【非特許文献10】Q. L. Choo, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991 88:2451-2455
【非特許文献11】N. Kato et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990 87:9524-9528
【非特許文献12】A. Takamizawa et al., J. Virol. 1991 65:1105-1113
【非特許文献13】R. G. Gish, Sem. Liver. Dis., 1999 19:5
【非特許文献14】Di Besceglie, A. M. and Bacon, B. R., Scientific American, October: 1999 80-85
【非特許文献15】G. Lake-Bakaar, Curr. Drug Targ. Infect. Dis. 2003 3(3):247-253
【非特許文献16】P. Hoffmann et al, Exp. Opin. Ther. Patents 2003 13(11):1707-1723
【非特許文献17】M. P. Walker et al., Exp. Opin. Investing. Drugs 2003 12(8):1269-1280
【非特許文献18】S.-L. Tan et al., Nature Rev. Drug Discov. 2002 1:867-881
【非特許文献19】J. Z. Wu and Z. Hong, Curr. Drug Targ-Infect. Dis. 2003 3(3):207-219。
【非特許文献20】Gary L. Davis. Gastroenterology 2000 118:S104-S114
【非特許文献21】J. Z. Wu, Antivir. Chem. Chemother. 2006 17(1):33-9
【非特許文献22】M.Gale, Jr. and E.M. Foy, Nature 2005. 436:939-945
【発明の概要】
【0014】
本発明の一形態において、患者に、式Iで示される化合物と、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤とを共投与することを含む、患者において式Iで示されるC型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼ阻害剤の生物学的利用率および/または血中濃度を増加させる方法が提供される。
【0015】
本発明のその他の形態において、式Iで示される化合物と、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤とを含む医薬組成物が提供される。
何かの存在に付けられる「a」または「an」は、成句として、本明細書で用いられるように、その存在が1またはそれより多くであることを意味し、例えば、化合物(a compound)は、1種またはそれより多くの化合物、または、少なくとも1種の化合物を意味する。そのようなものとして、用語「1つの(a)」(または「an」)、「1またはそれより多くの」および「少なくとも1つの」は、本明細書において同義的に用いることができる。
【0016】
本明細書で用いられるように、用語「〜を含む(comprise)」および「〜を含む(comprising)」は、請求項の移行句または本文かどうかにかかわらず、オープンエンドの意味を有すると解釈されることとする。すなわちこれらの用語は、成句「少なくとも〜を有する(having at least)」または「少なくとも〜を有する(including at least)」と同意語として解釈されることとする。プロセスに関して用いられる場合、用語「〜を含む(comprising)」は、そのプロセスが、少なくとも列挙された工程を含むが、追加の工程を含んでいてもよいことを意味する。化合物または組成物に関して用いられる場合、用語「〜を含む(comprising)」は、その化合物または組成物が、少なくとも列挙された特徴または構成要素を含むが、追加の特徴または構成要素を含んでいてもよいことを意味する。
【0017】
用語「任意の」または「任意に」は、本明細書で用いられる場合、その後に説明されている現象または環境が存在していてもよいが、必ずしもそうでなくてもよいこと、および、その記載が、その現象または環境が存在する場合と、その現象または環境が存在しない場合をと含むことを意味する。
【0018】
本明細書で用いられるように、可変値に関する数値範囲の列挙は、本発明が、その範囲内のいずれかの値と等しい可変値を用いて実施できることを表すことを目的とする。従って、本質的に離散している可変値の場合、そのような可変値は、数値範囲のあらゆる整数値(その範囲の端点を含む)に等しくてもよい。同様に、本質的に連続している可変値の場合、そのような可変値は、数値範囲のあらゆる実数値(その範囲の端点を含む)に等しくてもよい。一例として、本質的に離散している可変値の場合、0〜2の値を有すると説明される可変値は、0、1または2が可能であり、本質的に連続している可変値の場合、0.0、0.1、0.01、0.001またはその他のあらゆる実数値が可能である。
【0019】
HCVを治療するための組成物および治療的組み合わせへの必要性がある。併用化学療法は、HCV治療に有効であることが証明されているが、用量および投与回数が少なくなるので、患者のコンプライアンスは改善する。抗HCV治療には改善された化合物および用法が有用であると予想される。本発明は、式Iで示される化合物(R7227)とCYP3A4阻害剤とを投与する方法を提供し、該方法によりR7227の生物学的利用率を強化し、投与しなければならないR7227の量を少なくする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
化合物I(R7227)は、NS3/4Aプロテアーゼを阻害することによって示された効力によってHCV感染を治療するための経口剤として開発するために選択された、高い効力と選択性を有する大環状のNS3/4Aプロテアーゼ活性のペプチドミメティクス阻害剤である。R7227は、動物種の肝臓において、ヒトにおけるHCV複製の一次部位または単独部位である重要な露出部位を提示し、さらに、許容できる毒物学的プロファイルを有する。R7227は、極めて有力なNS3/4Aタンパク質分解の阻害剤であり、50%阻害濃度(IC50)が0.225nM以下であり、目的とする標的に対して高度な特異性を有する。遺伝子型1のHCVレプリコンであるR7227を用いる細胞ベースの効力分析では、1.77nMのIC50を示す。加えてR7227は、この同じ細胞ベースの分析で、ポリエチレングリコール結合(「PEG化」)インターフェロンアルファ−2a(PEG−IFN−α2a,ペガシス(Pegasys(登録商標)),ロシュ(Roche))との相乗的な抗ウイルス性作用を提示し、すなわちこれは、R7227はHCV治療において有用であることを示唆する。
【0021】
【化1】

【0022】
チトクローム、特にCYP3A4アイソフォームはR7227を代謝することがわかり、その結果として、治療上有効な血中濃度を維持するためにはより高頻繁でより多くの用量レベルが必要となる。
【0023】
初期の臨床前の研究において、化学阻害剤を用いたチトクロームP450表現型分析によれば、3A4、2C19、1A2、2D6および2C9などの複数のCYPアイソザイムが、(R7227の)代謝に参加することが示されている。組換えCYPを用いたさらなる実験によれば、薬物動態に影響を与え得るほどにR7227を代謝したのはCYP3A4だけであったことが示されている。従って、プロテアーゼ阻害剤の代謝を阻害するのに有効な量のチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤は、CYP阻害剤の非存在下での投与と比較して、R7227の生物学的利用率を高める可能性がある。
【0024】
いくつかの薬物がチトクロームP450酵素で代謝される。これらの酵素は、一般的に薬物を酸化するが、その結果として、都合の悪い薬物動態学的な特徴が生じる(例えば、血中濃度の減少、半減期の減少)。これらのケースにおいて、薬物代謝を阻害することにより、薬物の薬物動態プロファイルを改善することができる(例えば、米国特許第6,037、157号;D. E. Kempf et al. Antimicrob. Agents Chemother., 1997 41:654-660; W.J. Curatolo and G. Foulds, 米国特許公報第2004/0091527号、および、M.G. Cordingley, 米国特許公報2004/0152625を参照)。チトクロームP450アンタゴニストとの併用療法が薬物の薬物動態学を改善するかどうかを確認するために、関与する代謝経路を明らかにしなければならない。
【0025】
チトクロームP450(CYP P450)は、極めて大きい多様なヘムタンパク質のスーパーファミリーである。外因性および内因性化合物のどちらも、チトクロームP450アイソフォームの基質になり得る。チトクロームP450 3A4(CYP3A4;EC1.14.13.97)は、体内の生体異物代謝に関与する最も重要な酵素のうちの1種である。CYP3A4は、全てのCYPのなかでも最も広い範囲の基質の酸化に関与する。CYP3A4はで肝臓優勢に見出されるが、体内のその他の臓器や組織にも存在する。
【0026】
本発明の方法においては、関連するNS3プロテアーゼの薬物動態を改善するあらゆるCYP阻害剤を使用することができる。このようなCYP阻害剤としては、これらに限定されないが、リトナビル(WO94/14436)、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、サイクロスポリン、クロメチアゾール、シメチジン、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、フルボキサミン、フルオキセチン、ネファゾドン、セルトラリン、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ホスアンプレナビル、サキナビル、ロピナビル、デラビルジン、および、エリスロマイシンが挙げられる。好ましいCYP阻害剤は、リトナビルである。
【0027】
リトナビルは有力なCYP3A4活性の阻害剤であり、現在のところ、その他のHIVプロテアーゼ阻害剤(PI)のPKを強化したり、または、「ブースト」するために非治療的な低い用量(例えば100mgを1日2回)で利用されている。HIV/HCVの重感染の高発生率を考慮すると、R7227は、リトナビルでブーストされたHIV PIを投与されたHIV/HCV重感染患者におけるHCV治療に用いてもよく、その結果としてリトナビルでブーストされたHIV PIとR7227との相互作用が起こる可能性がある。
【0028】
しかしながら、3A4への阻害作用に加えて、リトナビルは、CYP1A2、2C9および2C19などのその他の酵素の活性化を誘導するようである。短期間での投与にもかかわらず、リトナビルの阻害作用が優勢になると予想され、その結果として高レベルのR7227が生じ、HCV治療で予想される長期投与によってその他のアイソフォームが誘導され、それがR7227を酸化して、望ましい阻害作用を相殺する可能性がある。
【0029】
本発明の一実施態様において、必要とする患者において、C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤R7227の生物学的利用率を増加させる方法が提供され、本方法は、R7227およびチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤を投与することを含み、ここでチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の量は、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の非存在下における血中濃度と比較して、R7227の血中濃度を高めるのに十分な量である。
【0030】
本発明のその他の実施態様において、患者においてR7227の生物学的利用率を増加させる方法が提供され、本方法は、R7227とリトナビルとを投与することを含む。リトナビルは、アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)によって、NORVIR(登録商標)という名称でHIVプロテアーゼ阻害剤として販売されている(Chemical Abstract Registry Number 1555213-67-5)。
【0031】
本発明のその他の実施態様において、患者においてR7227の生物学的利用率を増加させる方法が提供され、本方法は、R7227とリトナビルとを共投与することを含み、ここでR7227およびリトナビルは、別々の投薬形態である。それぞれの用量は、同時に摂取してもよいし、または、ほぼ同時に摂取してもよく、あるいは、それぞれの用量は異なるインターバルで摂取してもよい。
【0032】
本発明のその他の実施態様において、患者においてR7227の生物学的利用率を増加させる方法が提供され、本方法は、R7227とリトナビルとを共投与することを含み、ここでR7227とリトナビルとは同時に投与される。R7227およびリトナビルは、患者の利便性を高めるために一つの製剤中に存在していてもよい。
【0033】
本発明のその他の実施態様において、患者においてR7227の生物学的利用率を増加させる方法が提供され、本方法は、R7227とリトナビルとを共投与することを含み、ここでR7227およびリトナビルは、1回投与のための形態で投与される。
【0034】
本発明のその他の実施態様において、患者においてR7227の生物学的利用率を増加させる方法が提供され、本方法は、25〜600mg/日の用量を共投与すること、具体的には、25〜500mg/日のR7227、および、50〜400mg/日のリトナビルの用量を共投与することを含む。
【0035】
本発明のその他の実施態様において、患者においてR7227の生物学的利用率を増加させる方法が提供され、本方法は、50〜300mg/日のR7227、および、100〜200mg/日のリトナビルの用量を共投与することを含む。
【0036】
本発明のその他の実施態様において、HCVの治療方法が提供され、本方法は、式Iで示される化合物またはそれらの遊離塩基もしくはその他の医薬的に許容される塩と、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤とを、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0037】
本発明のその他の実施態様において、HCVの治療方法が提供され、本方法は、式Iで示される化合物またはそれらの遊離塩基もしくはその他の医薬的に許容される塩と、リトナビルとを、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0038】
併用療法は、抗ウイルス治療の有用な要素であることが証明されており、従って、R7227とリトナビルとを用いたHCV治療は、その他の要素の投与を含んでもよく、ここでその他の要素は、免疫調節剤;抗ウイルス剤;その他のHCVプロテアーゼ阻害剤;HCVの生活環におけるその他の標的の阻害剤;例えばHCVポリメラーゼ阻害剤、または、それらの組み合わせから選択される追加の物質を含む。
【0039】
本発明のその他の実施態様において、HCVの治療方法が提供され、本方法は、免疫調節剤、および/または、抗ウイルス剤、および/または、HCVのNS3/4Aプロテアーゼのその他の阻害剤、および/または、NS5Bポリメラーゼの阻害剤、および/または、広域ウイルス阻害剤、および/または、その他のチトクロームP−450阻害剤から選択される少なくとも1種の追加の物質を、式Iで示される化合物およびリトナビルと共に共投与することを含む。
【0040】
本発明のその他の実施態様において、HCVの治療方法が提供され、本方法は、式IIで示される化合物(R7128)を、R7227およびリトナビルと共に共投与することを含む。
【0041】
【化2】

【0042】
本発明のさらにその他の実施態様において、HCVの治療方法が提供され、本方法は、α−、β−またはγ−インターフェロン、および/または、サイモシン、および/または、リバビリン、および/または、R7128を、R7227およびリトナビルと共に共投与することを含む。
【0043】
本発明のその他の実施態様において、C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤R7227の生物学的利用率を増加させるための、または、C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤R7227の生物学的利用率を増加させる医薬品を製造するための、R7227とチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤との使用が提供され、ここでチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の量は、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の非存在下における血中濃度と比較して、R7227の血中濃度を高めるのに十分な量である。
【0044】
本発明のその他の実施態様において、R7227の生物学的利用率を増加させるための、または、R7227の生物学的利用率を増加させる医薬品を製造するための、R7227とリトナビルとの使用が提供される。リトナビルは、アボット・ラボラトリーズによって、ノービア(NORVIR(登録商標))という名称でHIVプロテアーゼ阻害剤として販売されている(Chemical Abstract Registry Number 1555213-67-5)。
【0045】
本発明のその他の実施態様において、R7227の生物学的利用率を増加させる医薬品を製造するためのR7227とリトナビルとの使用が提供され、ここでR7227およびリトナビルは、別々の投薬形態である。それぞれの用量は、同時に摂取してもよいし、または、ほぼ同時に摂取してもよく、あるいは、それぞれの用量は異なるインターバルで摂取してもよい。
【0046】
本発明のその他の実施態様において、R7227の生物学的利用率を増加させる医薬品を製造するためのR7227とリトナビルとの使用が提供され、ここでR7227とリトナビルとは同時に投与される。R7227およびリトナビルは、患者の利便性を高めるために一つの製剤中に存在していてもよい。
【0047】
本発明のその他の実施態様において、リトナビルと組み合わせたR7227の使用が提供され、ここでこのような使用は、R7227の生物学的利用率を増加させるためであり、ここでR7227およびリトナビルは1回投与のための形態で投与され、または、このような使用は、R7227の生物学的利用率を増加させる医薬品を製造するためであり、ここでR7227およびリトナビルは、1回投与のための形態で投与される。
【0048】
本発明のその他の実施態様において、医薬品を製造するためのR7227とリトナビルとの使用が提供され、ここでこのような使用は、25〜600mg/日の用量を共投与すること、具体的には25〜500mg/日のR7227、および、50〜400mg/日のリトナビルの用量を共投与することを含む。
【0049】
本発明のその他の実施態様において、生物学的利用率を増加させる医薬品を製造するためのR7227とリトナビルとの使用が提供され、ここでこのような使用において、50〜300mg/日のR7227、および、100〜200mg/日のリトナビルの用量が共投与される。
【0050】
本発明のその他の実施態様において、HCVを治療するための、または、HCVを治療する医薬品を製造するための、式Iで示される化合物、それらの遊離塩基またはその他の医薬的に許容される塩と、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤との使用が提供される。
【0051】
本発明のその他の実施態様において、HCVを治療するための、または、HCVを治療する医薬品を製造するための、式Iで示される化合物、それらの遊離塩基またはその他の医薬的に許容される塩、および、リトナビルの使用が提供される。
【0052】
併用療法は、抗ウイルス治療の有用な要素であることが証明されており、それゆえにR7227とリトナビルとを用いたHCV治療は、その他の要素の投与を含んでもよく、ここでその他の要素は、免疫調節剤;抗ウイルス剤;その他のHCVプロテアーゼ阻害剤;HCVの生活環におけるその他の標的の阻害剤;例えばHCVポリメラーゼ阻害剤、または、それらの組み合わせから選択される追加の物質を含む。
【0053】
本発明のその他の実施態様において、HCVを治療するための、または、HCVを治療する医薬品を製造するための、免疫調節剤、および/または、抗ウイルス剤、および/または、HCVのNS3/4Aプロテアーゼのその他の阻害剤、および/または、NS5Bポリメラーゼの阻害剤、および/または、広域ウイルス阻害剤、および/または、その他のチトクロームP−450阻害剤から選択される少なくとも1種の追加の物質と組み合わせた、式Iで示される化合物とリトナビルとの使用が提供される。
【0054】
本発明のその他の実施態様において、HCVを治療するための、または、HCVを治療する医薬品を製造するための、式II(R7128):
【0055】
【化3】

【0056】
で示される化合物を、R7227およびリトナビルと共に使用することが提供される。
本発明のさらにその他の実施態様において、HCVを治療するために、または、HCVを治療する医薬品を製造するために、α−、β−またはγ−インターフェロン、および/または、サイモシン、および/または、リバビリン、および/または、R7128を、R7227およびリトナビルと共に使用することが提供される。
【0057】
本発明のその他の実施態様において、R7227またはそれらの医薬的に許容される塩、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤またはそれらの医薬的に許容される塩、および、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤、希釈剤またはキャリアーを含む医薬組成物が提供される。
【0058】
本発明のその他の実施態様において、R7227またはそれらの遊離塩基またはその他の医薬的に許容される塩、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤、および、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤、希釈剤またはキャリアーを含む医薬組成物が提供される。
【0059】
本発明のさらにその他の実施態様において、R7227またはそれらの遊離塩基またはその他の医薬的に許容される塩、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤、HCVポリメラーゼ阻害剤R7128、および、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤、希釈剤またはキャリアーを含むものが提供される。
【0060】
本発明のその他の実施態様において、R7227またはそれらの遊離塩基またはその他の医薬的に許容される塩、リトナビルまたはそれらの医薬的に許容される塩、および、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤、希釈剤またはキャリアーを含む医薬組成物が提供される。
【0061】
本発明のその他の実施態様において、式Iで示されるC型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼ阻害剤とリトナビルとを含むキットが提供される。
本発明の実施態様において、式Iで示される化合物、リトナビル、および、任意に阻害剤使用に関する指示を含む説明書き(informational insert)を含む薬剤パックが提供される。
【0062】
低い用量のリトナビルは、最も高い感受性を有するCYP3Aプローブの基質であるミダゾラムの曝露をおよそ7倍に増加させることが報告されている。(A.A.Mathias et al., Clin. Pharmacol. Ther. 2009 85(1)64-70)。SimCYP(登録商標)のシミュレーション(SymCYP Limited, Blades Enterprise Centre, John Street, Sheffield S2 4SU, UK)によれば、全体のR7227除去に対するCYP3Aの寄与率がそれぞれ50%および100%であると仮定すると、リトナビルは、R7227の曝露を約2〜4倍に増加させることができると予想された。この研究においてリトナビルと共投与された場合、それでもなお、予想されたR7227曝露の4倍の増加は、健康な志願者でのSAD試験における最も安全で許容できる1600mgの用量で観察された値よりも有意に低い。
【0063】
リトナビル100mgを12時間毎に複数回投与することによって、R7227のAUC0→∞、CmaxおよびC12hはそれぞれ、およそ5.5倍、3.25倍および27〜42倍増加する。リトナビルの複数回投与によるR7227のC12hに対する作用は、リトナビルの単回投与による一時的な作用よりも少なく、これは、複数回投与後にリトナビルによりCYP酵素が誘導され、リトナビルによるCYP 3A4に対する急性阻害作用の一部を相殺していることによる可能性がある。従ってR7227の薬物動態はリトナビルの共投与によって実質的に改善された。
【0064】
本発明の化合物は、多種多様の経口投与のための投薬形態およびキャリアー中に配合してもよい。経口投与は、錠剤、コーティング錠剤、糖衣錠、ハードおよびソフトゼラチンカプセル、溶液、エマルジョン、シロップ、または、懸濁液の形態であってもよい。本発明の化合物は、その他の投与経路によって投与しても有効であり、このような投与経路としては、その他の投与経路のなかでも、連続(点滴静注)、局所的、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、および、坐剤による投与が挙げられる。好ましい投与方式は、一般的に、苦痛の程度と活性成分に対する患者の応答に従って調節することができる便利な毎日の投与計画を用いた経口投与である。
【0065】
本発明の化合物または化合物群、加えてそれらの医薬的に使用できる塩は、1種またはそれより多くの従来の賦形剤、キャリアーまたは希釈剤と共に、医薬組成物および投与単位の形態にしてもよい。このような医薬組成物および1回投与量は、従来の比率の従来の成分で構成されていてもよく、これらは追加の活性化合物または成分を共に含んでもよいし、または含まなくてもよく、さらに1回投与量は、使用する予定の目的とする1日の用量範囲にみあった、あらゆる適切な活性成分の有効量を含んでいてもよい。このような医薬組成物は、経口で使用するための、固体、例えば錠剤もしくは充填カプセル、半固体、粉末、持続放出製剤、または、液体、例えば溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル、または、充填カプセルとして用いてもよいし;または、直腸または膣内投与のための坐剤の形態で用いてもよい;または、非経口で使用するための滅菌注射用溶液の形態で用いてもよい。典型的な製剤は、約5%〜約95%(質量/質量)の活性化合物または化合物を含むと予想される。用語「製剤」または「投薬形態」は、活性化合物の固体および液体製剤の両方を含むこととし、当業者であればわかるものと思われるが、標的の臓器または組織に応じて、さらに望ましい用量および薬物動態学的パラメーターに応じて、活性成分が異なる製剤中に存在していてもよい。
【0066】
用語「賦形剤」は、本明細書で用いられるように、医薬組成物の製造において有用であり、一般的に安全で非毒性であり、さらに生物学的にもその他の観点でも有害ではない化合物を意味し、例えば、動物の治療用途に加えて人間用の製薬用途にも許容できる賦形剤を含む。本発明の化合物は単独で投与することができるが、一般的には、目的とする投与経路、および、標準的な製薬上の実施を考慮して選択された、1種またはそれより多くの適切な医薬品賦形剤、希釈剤またはキャリアーと混合して投与されると予想される。
【0067】
「医薬的に許容される」とは、一般的に安全で非毒性であり、さらに生物学的にもその他の観点でも有害ではない医薬組成物の製造において有用であることを意味し、これは例えば、人間用の製薬用途にも許容できることも含む。
【0068】
また活性成分の「医薬的に許容される塩」の形態も、初期において、塩以外の形態にはない望ましい薬物動態学的な特性を活性成分に付与する可能性があり、さらに体内でさえも、その治療活性に関して活性成分の薬力学によい影響を与える可能性がある。化合物の「医薬的に許容される塩」という成句は、医薬的に許容され、親化合物の望ましい薬理活性を有する塩を意味する。このような塩としては、(1)例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸と形成された酸付加塩;または、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸と形成された酸付加塩;または、(2)親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオンまたはアルミニウムイオンで置き換えられた場合に形成された塩;または、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基と配位結合している場合に形成された塩が挙げられる。
【0069】
固形製剤としては、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、カシェ剤、坐剤、および、分散性の顆粒が挙げられる。固形キャリアーは、希釈剤、矯味矯臭剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、または、カプセル封入のための材料としても作用することができる1種またはそれより多くの物質であり得る。粉末の場合、キャリアーは、一般的には微粉化した固体であり、この固体は、微粉化した活性成分との混合物である。錠剤の場合、活性成分は、一般的に、必要な結合能力を有するキャリアーと適切な比率で混合され、望ましい形状およびサイズに圧縮される。適切なキャリアーとしては、これらに限定されないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、スターチ、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点のワックス、カカオバターなどが挙げられる。固形製剤は、活性成分に加えて、着色剤、風味相乗剤、安定剤、緩衝液、人工、および、天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含んでいてもよい。
【0070】
また液体製剤は、経口投与にも適しており、このような液体製剤としては、エマルジョン、シロップ、エリキシル、水溶液、水性懸濁液などの液体製剤が挙げられる。このような製剤の例としては、使用前に短時間で液状の製剤にすることを目的とした固形製剤も挙げられる。エマルジョンは、溶液中で、例えばプロピレングリコール水溶液中で製造してもよいし、または、例えばレシチン、モノオレイン酸ソルビタンまたはアカシアのような乳化剤を含んでいてもよい。水溶液は、活性成分を水に溶解させ、適切な着色剤、風味相乗剤、安定化剤および増粘剤を添加することによって製造することができる。水性懸濁液は、例えば天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびその他のよく知られている懸濁化剤のような粘性物質と共に、微粉化した活性成分を水中に分散することによって製造することができる。
【0071】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば注射、例えばボーラス注射、または、連続的な点滴)のために配合することができ、これは、アンプル中の単位用量の形態、プレフィルドシリンジ、少量の点滴で提供してもよいし、または、保存剤を添加して複数回投与のための容器で提供してもよい。このような組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとってもよいし、例えばポリエチレングリコール水溶液に溶解させた形態をとってもよい。油性または非水系キャリアー、希釈剤、溶媒または媒体の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブ油)、および、注射で使用可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が挙げられ、これらは、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤または懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤のような成形剤を含んでいてもよいあるいは活性成分は、滅菌固体を無菌状態で単離することによって得られた粉末形態であってもよいし、または、例えば滅菌したパイロ使用前にジェンフリー水のような適切な媒体で溶解させるために、溶液から凍結乾燥することによって得られた粉末形態であってもよい。
【0072】
本発明の化合物は、坐剤として投与するために配合することができる。まず、例えば脂肪酸グリセリドまたはカカオバターの混合物のような低融点のワックスを融解させ、活性成分を例えば撹拌することによって均一に分散させる。続いて溶融した均一な混合物を便利なサイズの鋳型に注入し、そのまま冷却させて固化させる。
【0073】
本発明の化合物は、膣内投与のために配合することができる。活性成分に加えて、当業界において適切であることがわかっているキャリアーを含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体またはスプレーが挙げられる。
【0074】
望ましい場合、活性成分の持続放出または遅延放出投与に適した腸溶コーティングを用いて製剤を製造してもよい。例えば、本発明の化合物は、経皮または皮下での薬物送達装置中に配合されてもよい。これらの送達系は、化合物の持続放出が必要である場合、および、患者の治療計画のコンプライアンスが重要である場合において有利である。経皮送達系中の化合物は、皮膚に接着することができる固体支持体に付着させることが多い。対象の化合物はまた、浸透促進剤、例えばアゾン(1−ドデシルアザ−シクロヘプタン−2−オン)と組み合わせてもよい。持続放出送達系は、外科手術または注射によって、皮下の真皮層に挿入される。皮下インプラントは、脂溶性の膜、例えばシリコーンゴム、または、生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸中に化合物をカプセル封入している。
【0075】
適切な製剤は、製剤用キャリアー、希釈剤および賦形剤と共に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995,E.W.Martin編集,マック・パブリッシング社(Mack Publishing Company),第19版,ペンシルベニア州イーストンで説明される。熟練した製剤科学の専門家は、本発明の組成物を不安定にしたり、または、それらの治療活性を弱めたりすることなく、具体的な投与経路に応じた多数の製剤が提供されるように、本明細書に記載された教示の範囲内で配合を変更してもよい。
【0076】
本発明の化合物の水またはその他の媒体への溶解性をより高くするための本発明の化合物の改変は、例えばわずかな改変(塩の形成、エステル化など)によって容易に達成することができ、これらは、十分に当業界における通常の技術の範囲内である。また、患者における最大限有益な作用のために本発明の化合物の薬物動態学を操作するために、特定の化合物の投与経路および用法を改変することも十分に当業界における通常の技術の範囲内である。
【0077】
本明細書において説明される方法は、C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤と、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤との組み合わせの投与を含む。このような投与は、本明細書では共投与と称される。共投与は、それぞれの阻害剤を同じ投薬形態で投与すること、または、異なる投薬形態で投与することを含む。異なる投薬形態で投与される場合、阻害剤は、同じ時間または異なる時間に投与してもよいし、さらにどのような順番で投与してもよい。従って、本発明は、同じ投薬形態で、または、別々の投薬形態で、CYP阻害剤をC型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤と共に投与する方法を提供する。
【0078】
CYP阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤が別々の投薬形態で投与される場合、それぞれの阻害剤はほぼ同時に投与してもよい。あるいは、CYP阻害剤は、プロテアーゼ阻害剤が投与された時期周辺のあらゆる時期に投与してもよい。すなわち、CYP阻害剤は、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤の前に、それと共に、または、その後に投与してもよい。投与期間は、CYP阻害剤がプロテアーゼ阻害剤の代謝に影響を与えるような期間と予想される。例えば、最初にプロテアーゼ阻害剤が投与される場合、CYP阻害剤は、プロテアーゼ阻害剤が代謝されるか、および/または、排出される前に投与されると予想される。
【0079】
用語「治療有効量」は、本明細書で用いられる場合、個体における病気の症状を低減させるのに必要な量を意味する。HCV治療における治療有効性のレベルは、一般的に、ウイルス性RNAのレベルを測定することによって決定される。このような用量は、それぞれ具体的なケースごとに個人の要求に応じて調節されると予想される。このような投与量は、例えば治療しようとする病気の重症度、患者の年齢および全体的な健康状態、患者を治療するためのその他の医薬品、投与経路およびその形態、ならびに、関与する医療専門家の選択および経験のような多数の要因に応じて広範囲に変化させることができる。
【0080】
約100〜約800mg/日、好ましくは約200〜約600mg/日のNS3プロテアーゼ阻害剤の投与量レベルが、HCVが介在する病気の予防および治療に有用である。CYP阻害剤の場合、約50〜約400mg/日の投与量レベルが一般的であると予想される。より一般的には、約100〜約200mg/日の投与量レベルと予想される。一般的には、本発明の、および本発明に係る医薬組成物は、約1〜約2回/日で投与されると予想される。1回投与のための形態が得られるようにキャリアー材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主および具体的な投与様式に応じて様々であると予想される。一般的に、上記化合物の最適な用量より低い、比較的少ない投与量から治療を開始する。その後、患者それぞれに最適な作用が達成されるまで投与量を少しずつ増やす。本明細書において説明される病気を治療する当業者は、余計な実験を行うことなく、個人的な知見、経験および本願の開示に頼って、所定の病気および患者のための本発明の化合物の治療有効量を確認することができると予想される。
【0081】
リトナビルの好ましい投薬形態については、1996年1月16日に公開されたL. A. Al-Razzak等の米国特許第5,484,801号1999年9月7日に公開された米国特許第5,948,436号、1995年3月23日に公開されたWO95/07696、および、1995年4月13日に公開されたWO95/09614で開示されている。
【0082】
本明細書において説明される方法は、C型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼ阻害剤と、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤との組み合わせの投与を含む。このような投与は、本明細書では共投与と称される。共投与は、それぞれの阻害剤を同じ投薬形態で投与すること、または、異なる投薬形態で投与することを含む。異なる投薬形態で投与される場合、阻害剤は、同じ時間または異なる時間に投与してもよいし、さらにどのような順番で投与してもよい。従って、本発明は、同じ投薬形態で、または、別々の投薬形態で、CYP阻害剤をC型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤と共に投与する方法を提供する。
【0083】
CYP阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤が別々の投薬形態で投与される場合、それぞれの阻害剤はほぼ同時に投与してもよい。あるいは、CYP阻害剤は、プロテアーゼ阻害剤が投与された時期周辺のあらゆる時期に投与してもよい。すなわち、CYP阻害剤は、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤の前に、それと共に、または、その後に投与してもよい。投与期間は、CYP阻害剤がプロテアーゼ阻害剤の代謝に影響を与えるような期間と予想される。例えば、最初にプロテアーゼ阻害剤が投与される場合、CYP阻害剤は、プロテアーゼ阻害剤が代謝されるか、および/または、排出される前に投与されると予想される。
【0084】
併用療法は、抗ウイルス治療の有用な要素であることが証明されており、それゆえにR7227とリトナビルとを用いたHCV治療は、その他の要素の投与を含んでもよく、ここでその他の要素は、免疫調節剤;抗ウイルス剤;その他のHCVプロテアーゼ阻害剤;HCVポリメラーゼ阻害剤、または、HCVの生活環におけるその他の標的の阻害剤、もしくはそれらの組み合わせから選択される追加の物質を含む。
【0085】
また医薬組成物は、単一のパッケージに、一般的にはブリスターパックに治療の1クール全体を含む「患者専用パック(patient pack)」で患者に処方してもよい。従来の処方箋のなかで見失いがちな説明書きを、患者は常に患者専用パックで見ることができるという点で、患者専用パックは、薬剤師がバルクで供給された製薬を患者への供給分に分配する従来の処方箋よりも利点がある。添付文書を含むことは、医師の説明を含む患者のコンプライアンスを改善することがわかっている。
【0086】
患者のコンプライアンスを改善することができる本発明の望ましい追加の特徴は、添付文書内に患者への本発明の正しい使用の教示を含む、各製剤の単一の患者専用パックまたは複数の患者専用パックを用いた本発明の組み合わせの投与である。
【0087】
本発明のさらなる形態によれば、少なくとも本発明のNS3プロテアーゼ阻害剤およびCYP 3A4阻害剤、および、本発明の組み合わせの使用に関する指示を含む説明書きを含むパックである。本発明のその代わりの実施態様において、このような薬剤パックは、本明細書において説明されているような1種またはそれより多くの追加の物質をさらに含む。追加の物質または物質群は、同じパック中に提供されてもよいし、または、別々のパック中に提供されてもよい。
【0088】
この形態のその他の形態は、HCV感染の治療またはHCV感染の予防に使用するための、患者のためのパッケージ化されたキットに関し、本キットは、構成要素であるそれぞれの製薬のための単一または複数の医薬製剤;貯蔵中および投与前に医薬製剤を格納するコンテナー;および、HCV感染を治療または予防するのに有効な方式で薬物投与を行うための説明書を含む。
【0089】
従って、本発明は、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤とCYP阻害剤(および任意に追加の物質)またはそれらの誘導体との同時の投与または連続投与のためのキットを提供し、これらは従来の方式で製造される。典型的には、このようなキットは、医薬的に許容されるキャリアー中に(および、1つの、または、複数の医薬製剤中に)、例えば各阻害剤の組成物と任意に追加の物質とを含むと予想され、さらに同時または連続投与のための書面の説明書も含むと予想される。
【0090】
その他の実施態様において、パッケージ化されたキットが提供され、本キットは、自分で投与するための1種またはそれより多くの投薬形態;貯蔵中および使用前に投薬形態を格納するための容器手段(好ましくは密封される);および、患者が薬物投与を実施するための説明書を含む。説明書は、典型的には、添付文書、ラベルおよび/またはキットのその他の要素に記載された書面の説明書であると予想され、投薬形態または形態は本明細書において説明されている通りである。それぞれの投薬形態は、例えば金属箔とプラスチックとのラミネートのシート中に別々に格納されていてもよく、そこでそれぞれの投薬形態は個々のセルまたはドーム中で互いに隔離されているか、または、それぞれの投薬形態は、一つの容器中に格納されていてもよく、例えばプラスチックボトル中に格納されていてもよい。また本発明のキットは、典型的には、個々のキットの構成要素、すなわち投薬形態、容器手段および使用説明書を包装するための手段も含むと予想される。このような包装手段は、厚紙または紙の箱、プラスチックまたは金属箔製の袋状容器などの形態をとっていてもよい。
【0091】
本発明をより十分に理解するために、以下に予備的な実施例および試験の実施例を記載する。これらの実施例は単に説明のためのものであって、本発明の範囲をいかようにも制限するものとは解釈されないこととする。
【実施例】
【0092】
健康な成人におけるR7227の薬物動態学的な強化
投与前の21日以内に、被検者をこの研究に参加できるかどうかに関してスクリーニングした。この研究に、14人の健康な志願者を登録した(n=14/グループ)。以下に投与スケジュールを説明する:
【0093】
【表1】

【0094】
R7227製剤−R7227を、経口投与のための透明なサイズ10の卵型ソフトゼラチンカプセルに(無水遊離酸の当量で)100mg/カプセルの量で配合した。このカプセルに、R7227−001、ポリエチレングリコールPEG400(マクロゴール(Macrogol)400)、および、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)からなる溶液を充填した。全ての賦形剤は薬局方グレード(NFまたはEP)である。カプセルシェルのためのバルクのゲル部分として、ゼラチン・タイプ195(NF,EP)を用い、可塑剤として少量のソルビトール液85/70/00(NF,EP)および水(USP)を用いた。
【0095】
全ての試験的な薬物療法は、食事をとりながら行われた。R7227投与日に(単独で、または、リトナビルと共に)標準的な高脂肪の朝食をとった後、試験的な薬物療法を投与し、その間の日々の朝食は同一とした。1、3および12日目に、R7227を100mgのソフトジェルカプセルの単回投与として経口投与した。3および12日目に、R7227を午前分の用量のリトナビルと共に投与した。リトナビル100mgを、3日目から12日目まで1日2回(12時間毎に)経口投与した。
【0096】
血液サンプル(5mL)を回収して、以下のスケジュールに従ってR7227(分析が可能な場合、それに加えて代謝産物)の血漿濃度を決定した。
1日目、R7227投与の前にPKサンプル(5mL)を回収し(投与前)、さらに、R7227投与から0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、6、8、12および24時間後に回収した。
【0097】
3日目および12日目、R7227投与の前にPKサンプル(5mL)を回収し(投与前)、さらに、R7227投与から0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、6、8、12、24、36および48時間後に回収した。
【0098】
決定されたR7227の一次PKパラメーターは、CmaxとAUC0→∞であった。測定されたR7227の二次PKパラメーターとしては、TmaxおよびAUC0→last、CL/F、t1/2、C12hrおよびC24hが挙げられる。
【0099】
分散分析(ANOVA)を対数変換した一次薬物動態パラメーターに適用した。一次パラメーター(R7227のAUC0→∞およびCmax)の相乗平均の比率に関する両側90%信頼区間を以下の比較のために導いた:3日目の(R7227+リトナビル)、対、1日目のR7227、および、12日目の(R7227+リトナビル)、対、1日目のR7227。
【0100】
分散分析(ANOVA)を利用して、全ての一次試験パラメーターを以下のモデルを用いて分析した:
Yij=μ+τi+sj+εij
式中、Yijは、分析されるPKパラメーターを意味し、μは、変換した可変値の全体の平均を意味し、τiは、治療の母数効果を意味し;sjは、被検者の変量効果を意味し;εijは(エラー)を意味する。ランダム偏差εijは、独立しており、ゼロ平均で正規分布しおり、共通の分散σを有すると考えられる。比較のためのτR7227+リトナビルのグループとτR7227のグループについて、ANOVAモデルから、比較グループに関して残差分散σおよび90%の信頼限界が推測された。対数変換した可変値(AUC0→∞およびCmax)に関して、真のグループ平均の比率、および、それに対応する未変換の可変値の平均の比率に関する最小二乗平均の差を累乗することと変換した値に関する信頼限界それぞれによって信頼限界を計算した。
【0101】
【表2】

【0102】
前述した発明を、わかりやすくするために、そして理解するために図面と実施例とを用いて多少詳細に説明した。当業者には明かであると思われるが、添付の請求項の範囲内で変更および改変を施すことが可能である。従って当然のことながら、上記の説明は説明することが目的であり、制限のためではない。従って本発明の範囲は、上記の説明を参照して決定されるのではなく、以下に添付された請求項を参照して、このような請求項において特許請求されたものに等しいものの全範囲と共に決定されるべきである。
【0103】
本願において引用された全ての特許、特許出願および公報は、参照によりその全体を本発明に包含させたが、それによりそれぞれ個々の特許、特許出願または公報が個々に記載されたのと同等とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において式I:
【化1】

で示されるC型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤の生物学的利用率を増加させる方法であって、該方法は、患者に、式Iで示される化合物とチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤とを共投与することを含み、ここで該モノオキシゲナーゼ阻害剤は、Iの血中濃度を高めるのに十分な量で存在する、上記方法。
【請求項2】
前記チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤が、リトナビルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式Iで示される化合物およびリトナビルが、別々の投薬形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記別々の投薬形態が、ほぼ同時に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式Iで示される化合物およびリトナビルが、単一の投与形態で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
C型肝炎ウイルス感染の治療を必要とする患者におけるC型肝炎ウイルス感染の治療方法であって、該方法は、式Iで示される化合物、その遊離塩基または医薬的に許容される塩と、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤またはその医薬的に許容される塩とを、前記治療を必要とする患者に投与することを含む、上記方法。
【請求項7】
前記チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤が、リトナビルまたはその医薬的に許容される塩である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、免疫調節剤、および/または、抗ウイルス剤、および/または、HCVのNS3/4Aプロテアーゼのその他の阻害剤、および/または、NS5Bポリメラーゼの阻害剤、および/または、広域ウイルス阻害剤、および/または、その他のチトクロームP−450阻害剤から選択される少なくとも1種の追加の物質を、式Iで示される化合物およびリトナビルと共に共投与することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤R7227の生物学的利用率を増加させるための、R7227とチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤との使用であって、ここで該チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の量は、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の非存在下のR7227の血中濃度と比較して、R7227の血中濃度を高めるのに十分な量である、上記使用。
【請求項10】
C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤R7227の生物学的利用率を増加させる医薬品を製造するための、R7227とチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤との使用であって、ここで該チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の量は、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の非存在下のR7227の血中濃度と比較して、R7227の血中濃度を高めるのに十分な量である、上記使用。
【請求項11】
前記チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤が、リトナビルまたはその医薬的に許容される塩である、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
前記R7227およびリトナビルが、別々の投薬形態である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記R7227およびリトナビルが、同時に投与される、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
R7227およびリトナビル、ならびに少なくとも1種の追加の物質の使用であって、ここで該少なくとも1種の追加の物質は、免疫調節剤;抗ウイルス剤;HCVのNS3/4Aプロテアーゼのその他の阻害剤;NS5Bポリメラーゼの阻害剤;広域ウイルス阻害剤、および、その他のチトクロームP−450阻害剤から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
式Iで示される化合物またはその遊離塩基またはその他の医薬的に許容される塩と、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤またはその医薬的に許容される塩と、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤、希釈剤またはキャリアーとを含む医薬組成物。C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤R7227の生物学的利用率を増加させる医薬品を製造するための、R7227とチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤との使用であって、ここで該チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の量は、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の非存在下のR7227の血中濃度と比較して、R7227の血中濃度を高めるのに十分な量である、上記使用。
【請求項16】
前記チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤が、リトナビルまたはその医薬的に許容される塩である、請求項13に記載の医薬組成物。C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤R7227の生物学的利用率を増加させる医薬品を製造するための、R7227とチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤との使用であって、ここで該チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の量は、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の非存在下のR7227の血中濃度と比較して、R7227の血中濃度を高めるのに十分な量である、上記使用。
【請求項17】
式Iで示されるC型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼ阻害剤とリトナビルとを含むキット。C型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼ阻害剤R7227の生物学的利用率を増加させる医薬品を製造するための、R7227とチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤との使用であって、ここで該チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の量は、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の非存在下のR7227の血中濃度と比較して、R7227の血中濃度を高めるのに十分な量である、上記使用。
【請求項18】
式Iで示される化合物、リトナビル、および、阻害剤の使用に関する指示を含む説明書きを含む薬剤パック。C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤R7227の生物学的利用率を増加させる医薬品を製造するための、R7227とチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤との使用であって、ここで該チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の量は、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の非存在下のR7227の血中濃度と比較して、R7227の血中濃度を高めるのに十分な量である、上記使用。

【公表番号】特表2012−524753(P2012−524753A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506491(P2012−506491)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055317
【国際公開番号】WO2010/122087
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】