説明

藷梗引き抜き除去作業機

【課題】畝押さえにかかる荷重を安定させ、その荷重の大きさを自在に調節できるように、畝押さえ及び藷梗引き抜きベルトの支持機構の提供。
【解決手段】藷梗引き抜き除去作業機のフレームが揺動フレーム71で、上記揺動フレーム71が高さ調節リンクを介してフレールモアによる甘藷蔓払い装置に連結されて、上記揺動フレーム71が上下方向に揺動自在で、その後部下端が上記高さ調節リンクの支持リンク80aの下端に連結軸72を介して連結されて、上記揺動フレーム71に藷梗引き抜きベルトの支持フレームが固定され、さらに畝押さえローラ100の支持部材が固定されて、上記揺動フレーム71の先端と高さ調節リンクとの間に支持バネ90が介在していて当該支持バネ90で揺動フレーム71の先端が上記高さ調節リンクに吊り上げられて、上記支持バネ90による吊り上げ力の調節手段を有する藷梗引き抜き除去作業機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、甘藷蔓をフレールモアーで切除した後に藷梗を把持して引き抜き、甘藷を土中に保持させたままで藷梗を分離させる藷梗引き抜き除去作業機に関するものであり、極めて簡便な機構によって畝の波打ちや凸凹に対する畝押さえの追従性を高くして畝押さえに対する走行抵抗を大幅に軽減するとともに、藷梗引き抜きベルトの畝頂面に対する高さ変動を小さくして、藷梗引き抜き除去作業の精度、能率を高めることができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フレールモアーによる甘藷蔓払い作業機で甘藷蔓を細断して除去し、次いで、畝を覆っているマルチフィルムを除去し、マルチフィルムが除去されて後に、掘り起こし機で掘り起こして甘藷を収穫するという手順で甘藷収穫作業が行われる。そして、上記各作業はそれぞれ別々に行われている。
なお、上記の甘藷蔓払い機の一例が特開2000−287517号公報に記載されている。
【0003】
また、藷梗とともに甘藷を土中から引き上げて、その途中で甘藷を押さえて藷梗を甘藷から分離させ、その後に甘藷を掘り起こす堀起こし作業機がある(特開平9−107758号公報)。これによれば、掘り起こした後に藷梗を甘藷から引きちぎる手作業の負担が低減されるが、甘藷の表面が傷つけられ、そのために品質が低下するのは避けられない。
ところで、甘藷蔓をフレールモアーで細断除去した後にマルチフィルムを巻き取って除去すると、残存する藷梗がマルチフィルムに引っかかり、破れて巻き取れなくなる。マルチフィルムが引っかからない程度に切り込んで藷梗を小さくして残存させると、藷梗引き抜き作業機で藷梗を掴むことができず、したがって、当該作業機を使用して藷梗を分離することができないので、掘り起こした後に手作業で藷梗を除去しなければならなくなる。したがって、この手作業の負担を低減することができず、また、この手作業によって甘藷表面を傷つけることも避けられない。
以上の問題を解消することを目的として、甘藷蔓払い作業に引き続いて、マルチフィルムを破ることなしに藷梗を引き抜いて除去し、これによって、マルチフィルムの除去作業を容易にする藷梗引き抜き除去作業機の発明があり、この発明についてすでに出願されている(特願2005−219232号明細書。以下これを「先願の発明」という)。
【0004】
上記先願の発明による藷梗引き抜き除去作業機の要点を図6、図7に基づいて説明する。
このものは、甘藷蔓払い装置50(特開2000−287517号公報の甘藷蔓払い作業機と同様のもの)に連結されたものであり、上記甘藷蔓払い装置50はそのトップリンクホルダーRがトラクターの3点リンクのトップリンクに連結される。
藷梗引き抜き除去作業機60A(図6参照)はその基本構成において、上記の特開平9−107758号公報における藷梗引き抜き除去作業機と共通しており、甘藷蔓払い装置50の後方においてそのフレームFに連結されている。
そして、甘藷蔓払い装置50のフレールモアー21の回転軸20の中央の左右約300mmの範囲(左右各150mmの範囲)にはフレール刃が設けられておらず、その外側にフレール刃が設けられている。
【0005】
藷梗引き抜き除去作業機60Aは、上記従来の藷梗引き抜き除去作業機の引上げチェンと同様の藷梗引き抜き手段(具体的には藷梗引き抜きベルト65)を備えている。この藷梗引き抜き手段、すなわち藷梗引き抜きベルト65は支持フレーム(及びベルトガイド)68と左右一対のゴムベルト65a,65a、駆動プーリー65b、被駆動プーリー65c等によるものであり、一対のゴムベルト65a,65aによって甘藷蔓M及び藷梗Maを挟持して斜め上方に引き上げて、土中において甘藷Mbから分離させるものである。
なお、藷梗引き抜きベルト65の傾斜角度は、従来技術と同様に40〜50度の範囲で調整される。
【0006】
上記ゴムベルト65a,65aは、具体的には、幅40mm、厚さ14mmのゴムベルトであり、また、藷梗引き抜きベルト65の前方に近接して蔓掻き集めベルト61が配置されている。
【0007】
ところで、上記先願のものにおける甘藷蔓払い作業機は、時速1.8km程度で走行する。
そして、甘藷蔓は、蔓掬い上げアーム24で掬い上げられ、フレールモアー21に向けて押し上げられて、フレールモアー21で細断されて除去され、その結果、その藷梗Maに長さ150〜200mm程度の甘藷蔓Mが残される。
そしてまた、フレールモアーが通過した直後に藷梗引き抜き除去作業機60Aの蔓掻き集めベルト61が通過する。蔓掻き集めベルト61は速度(ベルトの走行速度)1m/秒で循環して、畝の頂部に残存する甘藷蔓及び藷梗を畝10の中央に向けて掻き集め、かつ、斜め上方に掻き揚げる。
一対のゴムベルト61a,61aによって甘藷蔓が畝の中央に掻き集められ、かつ、斜め上方に掻き揚げられたところで、甘藷蔓及び藷梗が後続の藷梗引き抜きベルト65で掬い取られて挟み込まれ、斜め上方に引き上げられる。
【0008】
藷梗引き抜き除去作業機60Aの藷梗引き抜きベルト65は、速度0.5m/秒程度で前方に移動しながら、甘藷蔓及び藷梗を把持したままで循環速度0.8m/秒で斜め後方へ移動するので、把持された甘藷蔓及び藷梗はほぼ上方に引き上げられる。このとき、藷梗引き抜き除去作業機60Aの藷梗引き抜きベルト65よりも下方にある畝押え70で畝が押えられているので、藷梗が甘藷から分断される。
上記畝押え70は鋼管の前部を円弧状に上方に曲げたそり状部材70aによるものであり、その中央部がジョイントによって支持部材73の下端に連結されている(そり状部材は上下方向に揺動自在)。そして、上記支持部材73は藷梗引き抜きベルト65の支持フレーム68に取り付けられており、ねじ調節機構(図示略)によってそり状部材70aの支持高さを調整できるようにしている。
【0009】
上記畝押え70は太めの金属パイプ材によるものであり、かつ、上下方向に揺動自在に支持部材73に支持されているから、畝10を覆っているマルチフィルム22に対して小さい抵抗で滑り、マルチフィルム22を破ることはない。
なお、藷梗引き抜き除去作業機60Aの畝押え70はそり状部材70aによるものであるが、上記特開平9−107758号公報の従来技術におけるローラ36(図9参照)のようなものにしてもよい。
以上が上記先行技術(特願2005−219232号明細書)の藷梗引き抜き除去作業機の具体的な構成である。
【特許文献1】特開平9−107758号公報
【特許文献2】特開2000−287517号公報
【特許文献2】特願2005−219232号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術や先行技術の藷梗引き抜き除去作業機の場合は、畝押さえ70の高さがねじ調節機で調節されて、畝の高さに合うように調整がなされる。他方、畝押さえ70でも当該作業機の重量の一部を支えており、車輪の走行面の凹凸による上下動や、畝の凹凸等による上下動で、当該畝押さえにかかる荷重が大きく変動する。
畝押さえ70にかかる荷重が過大になると畝押さえが畝表面に突っ込み、これに対する抵抗が大きくなって、スムーズに滑らなくなり、畝押さえが畝に突っ込むとマルチフィルムが破られるようになる。
【0011】
〔課題〕
以上の問題を解消するには、畝や溝の波打ちや凸凹に関わらず畝押さえにかかる荷重が一定で、かつ、当該荷重が作業実状に応じて適切で小さいことが必要である。
そこで、この発明は、畝押さえによって畝表面を押さえつつ藷梗引き抜きベルトによって藷梗を引き抜く藷梗引き抜き除去作業機について、畝や溝の波打ちやでこぼこに関わりなく畝押さえにかかる荷重を安定させることができ、かつその荷重の大きさを自在に調節することができるように、畝押さえ及び藷梗引き抜きベルトに対する支持機構を工夫することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段は、フレールモアーによる甘藷蔓払い装置の後方に連結されていて、畝押さえローラによって畝表面を押さえつつ藷梗引き抜きベルトで藷梗を引き抜く藷梗引き抜き除去作業機について、次の(イ)〜(へ)によるものである。
(イ)藷梗引き抜き除去作業機のフレームが揺動フレームであり、
(ロ)上記揺動フレームが高さ調節リンクを介してフレールモアーによる甘藷蔓払い装置50に連結されており、
(ハ)上記揺動フレームが上下方向に揺動自在であり、その後部下端が上記高さ調節リンクの支持リンクの下端に連結軸を介して連結されており、
(ニ)上記揺動フレームに藷梗引き抜きベルトの支持フレームが固定され、さらに畝押さえローラの支持部材が固定されており、
(ホ)上記揺動フレームの先端と高さ調節リンクとの間に支持バネが介在していて当該支持バネで揺動フレームの先端が上記高さ調節リンクに吊り上げられており、
(ヘ)上記支持バネによる吊り上げ力を調節する調節手段を有していること。
【0013】
〔作用〕
ガイドで藷梗引き抜きベルトを保持している上記揺動フレームはその後部下端の連結軸を中心として上下方向に揺動自在であり、この揺動フレームに藷梗引き抜きベルトが装着され、畝押さえの支持部材が固定されているので、藷梗引き抜きベルト及び畝押さえが揺動フレームとともに上下に揺動される。他方、揺動フレームの先端が支持バネで吊り上げられており、畝押さえローラが畝に当接しているから、揺動フレームにかかる荷重が畝押さえローラによっても支持されることになる。
この畝押さえローラによる支持力と上記支持バネによる吊り上げ力とが、揺動アームにかかる重量とバランスしている。
そして、上記調節手段で上記支持バネの吊り上げ力を加減することにより、畝押さえローラにかかる荷重(接地圧)が加減される。
【0014】
揺動アームの畝や溝の波打ちによる上下動にかかわらずほぼ一定である。したがって、畝表面の波打ちによる高さ変動に関わらず、畝押さえローラにかかる荷重(接地圧)は変わらない。
畝の高さの如何による畝押さえローラの高さの違いについては、高さ調節リンクを調節して車輪による支持高さを調節し、また、畝押さえ(具体的には畝押さえローラ)にかかる荷重の微調整は、上記調節手段で支持バネのバネ力を加減することによって対応する。
【0015】
なお、畝押さえを畝面の波打ちや凸凹に関わりなしに当該畝面に沿ってスムーズに走行させるには、畝表面を滑るのではなくて転動する畝押さえローラが好ましく、殊に畝にマルチフィルムが張設されている場合にこれが破られないようにするには最適である。そして、当該畝押さえローラは畝に対してハの字状に傾斜して配置され、左右から畝の上部を挟んでいるので走行ガイドローラとして機能し、これによって畝を追跡しながら作業機を走行させることができる。
藷梗引き抜き除去作業機のフレームが揺動フレームの先端を支持バネでつり上げ、同揺動フレームを上下方向にフローティング状態で支持してあるので、支持バネによる支持力を加減して畝押さえにかかる荷重を小さくするときは、畝押さえは必ずしもローラでなくてもよく、パイプ材製の反り状畝押さえにすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によるときは、上記先願の発明と同様に、マルチフィルムを畝に張ったままで藷梗を引き抜いて除去できるので、そのままでマルチフィルムを巻き取って除去することができ、また、その後に掘り起こされた甘藷をそのまま容器に収納することもできるので、一連の甘藷収穫作業の能率を大幅に向上させることができる。
【0017】
そしてまた、上記従来の藷梗引き抜き除去作業機(特開平9−107758号公報参照)は土中から引き上げられた甘藷を、ガイドローラの後方に配置した左右一対の金属棒に引っ掛けて当該金属棒で押さえて藷梗から分離させるものであるから、甘藷が上記金属棒に衝突してその表面が傷つけられて、その品質が劣化される。これに対してこの発明のものは、畝押さえで押さえた状態で土中で甘藷から藷梗を分離させるものであるから、藷梗分離時に甘藷の表面が傷つけられることはなく、また、掘り起こされたときは藷梗が分離されているので、甘藷をそのまま容器に収納することができる。
【0018】
さらに、この発明によれば、藷梗引き抜きベルトが支持バネで吊り上げられて上下方向にフローティング状態で支持されていて、畝の波打や凹凸、車輪が走行する地面の凹凸にかかわらず、藷梗引き抜きベルトの下端が畝頂上の高さの変化(波打ちや凸凹)に追従するので、畝押さえローラが畝表面に軽く押さえられてこの押さえ力がほぼ一定に維持され、畝押さえローラが畝表面をスムーズに転動して畝を追跡する。
【0019】
さらに、上記支持バネによる畝押さえローラに対する吊り上げ力を上記調節手段で調節することで、畝押さえローラにかかる荷重(畝面に対する畝押さえローラの接地圧)を圃場の状況(土質、土壌の堅さ等)に応じて簡単容易に最適に調整できるので、圃場の状況の如何に関わりなく、藷梗引き抜き分離作業を効率的、能率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次いで、図面を参照しながら実施例を説明する。この実施例の藷梗引き抜き除去作業機の全体構成は、図6における藷梗引き抜き除去作業機60Aと違いはない。
甘藷蔓払い装置50の後方に高さ調節リンク80を介して甘藷引き抜き除去作業機60が連結されており、操作ハンドル80hで高さ調節リンク80を操作して、藷梗引き抜き除去作業機60に対する車輪wによる支持高さが調節される。
この実施例の甘藷蔓払い装置50はその駆動軸201にトラクタのPTO軸を連結して、当該PTO軸によって駆動される。また、藷梗引き抜き除去作業機60は中間軸202,自在継ぎ手203、歯車伝動装置204を介して甘藷蔓払い装置50の出力軸によって駆動される。
【0021】
藷梗引き抜き除去作業機60のフレームは上下方向に揺動する揺動フレーム71であり、高さ調節リンク80の支持リンク80aに連結されている。なお、この支持リンク80aは、前方縦部材(固定部材)80bと後方縦リンク(可動リンク)80cに連結されていて後方縦リンク80cからさらに後方に延びている支持アームである。
【0022】
揺動フレーム71は後方枠材71a,上方枠材71bを備えており、その後方枠材71aの下端に連結軸72によって上記支持リンク80aの後端が連結されている。これによって揺動フレーム71は連結軸72を支持軸にして上下方向に揺動することができる。
揺動フレーム71の上方枠材71bの先端部と高さ調節リンク80のブラケット81との間に引っ張りバネ90が介在していて、揺動フレーム71の先端部を吊り上げている。引っ張りバネ90の上端と調節リンク80のブラケット81に引っ張りバネ90の連結ボルト91bがナット91nで固定されていて、連結ボルト91bとナット91nとによってバネ力調節手段91が構成されている。
藷梗引き抜き除去作業機にかかる上下方向の力のバランスの概要は図2−1に示すとおりである。下方への力は荷重Wであり、上方への力は連結軸72による支持力f1、畝押さえローラによる支持力f2、支持バネ(引っ張りバネ)90による支持力(吊り上げ力)f3であり、これらの支持力f1,f2,f3が下向きの荷重とバランスしている。
以上のバランスにおいて、上記バネ力調節手段91のナット91nを廻して連結ボルト91bを上げ下げすることで、引っ張りバネ90による吊り上げ力f3が加減される。例えば、ナット91nを締め上げるとその張力が増大し、畝押さえローラ100にかかる荷重f2が軽減され、これは最小ではゼロまで低減される。
【0023】
揺動フレーム71の上方枠材71bに支持アーム101が固定されており、当該支持アーム101の下端に畝押さえローラ100が取付けられている。
左右の畝押さえローラ100の軸は傾斜していて、左右のローラ100がハ字状に配置されており、畝10の上部側面に斜めに当設している(図4参照)。
この実施例の畝押さえローラ100は、その外径が140mm、長さが150mmであり、そのローラ軸は水平線に対して30度で傾斜している。
引っ張りバネ90はその自由長が160mm、バネ定数が2.5kg/mmである。連結ボルト91bに螺合されているナット91nを締めればバネ力が増し、その分だけ、畝押さえローラ100の接地圧(地面に対する重さ)が下がる。この例では、畝押さえローラ100にかかる荷重が概略10〜30kgになるように引っ張りバネ90の引っ張り力を調節する。これによって畝押さえローラ100が畝10の上面をスムーズに転動して走行できるようになる。
【0024】
実際には、作業現場において引っ張りバネ90による引き上げ力を加減して、畝10の波打ちや凸凹、車輪wが走行する畝の間の溝の凸凹に関わりなく畝押さえローラ100が畝10に沿ってスムーズに転動する程度まで当該ローラ100にかかる荷重(接地圧)が下げられる。
【0025】
藷梗引き抜き除去作業機を畝に沿って走行させると、藷梗Maに残された甘藷蔓M(図7(a)参照)が蔓掻き集めベルト61でかき集められ、藷梗引き抜きベルト65の下端の入り口へ誘導されてその一対のゴムベルト65a、65aに掴まれる。そして、藷梗は藷梗引き抜きベルト65に掴まれると斜め上方に急速に引き上げられる。他方、土中に埋没している甘藷Mb(図7(a))はその慣性抵抗、甘藷に対する土圧等の抵抗が大きいために、藷梗Maの斜め上方への急速な上昇に追従することができない。また、藷梗で引き上げられて甘藷Mbが土中から浮き上がろうとすると、甘藷は藷梗引き抜きベルトの重量、畝押さえローラ100の押圧力等による大きな慣性抵抗を受けるようになる。
なお、甘藷に突き上げられてローラ100が浮き上がると、浮き上がった分だけ引っ張りバネ90が縮んでその吊り上げ力が低下し、この吊り上げ力の低下分だけ畝押さえローラにかる荷重(接地圧)が大きくなり、上記抵抗が大きくなるが、引っ張りバネ90のバネ定数を小さくして上記抵抗の増分を小さくしている。なぜなら、畝の波打ちやでこぼこ等による畝押さえローラの上下動による荷重変動をできるだけ小さくすることが重要であるからである。
藷梗引き抜きベルト65で急激に引き上げられる藷梗Maは、以上のような抵抗を受けて土中にある甘藷から確実に分離される。
【0026】
とこで、藷梗Maに付着している小さい甘藷Mbは、これに対する抵抗が小さいので藷梗Maから分離されずに藷梗とともに畝10から引き上げられてしまう。この実施例は、引き抜かれた小さな甘藷Mbが藷梗から分離させられるために、畝押さえローラ100よりも後方の位置に左右一対の金属棒(直径12mm)110を配置している。この一対の金属棒は左右方向のほぼ中央にあり、その間に30mmの隙間が設けられている。藷梗Maは畝10から引き上げられると左右の金属棒110の間を斜め上方に通過するので、藷梗Maに付いている甘藷Mbが上記金属棒110に押さえられて藷梗Maから分離され、藷梗だけが引き抜きベルト65でその後端まで運ばれる。
【0027】
藷梗を土中で甘藷から分離することの最大の利点は、その後に行われるマルチフィルムの巻き取り作業を簡単容易にすることができることであり、また、掘り起こした後に藷梗を分離するという手作業が省略され、甘藷収穫作業のコストが大幅に低減されることである。さらに、藷梗分離時には甘藷が畝の土で保護されているので傷が付くことがなく、また、掘り出された後もそのままで容器に収納されるので、掘り起こされてから傷付けられることはない。したがって、アルコール原料用、食用の高品質甘藷として出荷できることである。
なお、左右一対の金属棒で分離された甘藷はこの金属棒に衝突するので傷つけられるが、そもそもこれは小さな屑薯として排除されるから、この小さな甘藷が混在することで出荷される甘藷の品質が下がることはない。
【0028】
なお、藷梗引き抜きベルト65で引き抜かれた藷梗が圃場にまき散らされると、その後の作業に不都合を生じるので、これを細断して圃場に分散させることが望ましい。この要請に応えるためには、藷梗引き抜きベルト65の後方にカッターを設けてこのカッターで藷梗を細断すればよい。
上記カッターの配置例を図5に示している。藷梗カッター120が藷梗引き抜きベルト65の直ぐ後に配置している。左右一対の回転刃120a,120aが藷梗引き抜きベルト65の駆動軸(駆動プーリー65bの駆動軸)65d、65dにそれぞれ固定されており、ゴムベルト65aと同じ方向に駆動される。
【0029】
この藷梗カッター120の回転刃120aは、駆動軸65dに設けた多段刃であり、直径180mmの円盤状刃が上下方向に55mmの間隔をおいて上下に10枚重ねられている。
藷梗引き抜きベルト65のゴムベルト65aの走行速度が0.5m/秒であり、引き抜かれた藷梗はほぼ縦の姿勢で同速度で後方に放出される。この藷梗が藷梗カッター120の左右の回転刃120a,120aに捕捉され、その瞬間に約200mmの長さに裁断されて後方に放出される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】は、実施例の側面図である。
【図2】は、実施例の主要部を示す側面図である。
【図2−1】は、図2における重量Wと支持力f1,f2,f3とのバランスを示す模式図である。
【図3】は、実施例の藷梗引き抜きベルトの平面図である。
【図4】は、実施例の畝押さえローラを示す正面図である。
【図5】は、実施例の藷梗細切カッターの平面図である。
【図6】は、先願の甘藷蔓処理作業機の側面図である。
【図7】(a)は、図6の甘藷蔓処理作業機の要部の側面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0031】
50:甘藷蔓払い装置
60:藷梗引き抜き除去作業機
61:蔓掻き集めベルト
65:藷梗引き抜きベルト
68:支持フレーム
70:畝押さえ
70a:そり状部材
71:揺動フレーム
71a:後方枠材
71b:上方枠材
72:連結軸
80:高さ調節リンク
80a:支持リンク
80b:前方縦部材
80c:後方縦リンク
81:ブラケット
90:引っ張りバネ(支持バネ)
91:バネ力調節手段
91b:連結ボルト
91n:ナット
100:畝押さえローラ
110:左右一対の金属棒
120:藷梗カッター
120a:回転刃
w:車輪
W:藷梗引き抜き除去作業機にかかる下向きの荷重
f1:支持軸による支持力の荷重
f2:畝押さえローラによる支持力
f3:支持バネ(引っ張りバネ90)による支持力(吊り上げ力)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレールモアーによる甘藷蔓払い装置の後方に連結されていて、畝押さえローラによって畝表面を押さえつつ藷梗引き抜きベルトで藷梗を引き抜く藷梗引き抜き除去作業機であって、
藷梗引き抜き除去作業機のフレームが揺動フレームであり、
上記揺動フレームが高さ調節リンクを介して上記甘藷蔓払い装置に連結されており、
上記揺動フレームが上下方向に揺動自在であり、その後部下端が上記高さ調節リンクの支持リンクの下端に連結軸を介して連結されており、
上記揺動フレームに藷梗引き抜きベルトの支持フレームが固定され、さらに畝押さえローラの支持部材が固定されており、
上記揺動フレームの先端と高さ調節リンクとの間に支持バネが介在していて当該支持バネで揺動フレームの先端が上記高さ調節リンクに吊り上げられており、
上記支持バネによる吊り上げ力を調節する調節手段を有している 藷梗引き抜き除去作業機。

【図1】
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【図2】
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【図2−1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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