説明

血清脂質調節剤

〔構成〕 トレハロースを有効成分とする血清脂質調節剤。
〔効果〕カプセル剤、錠剤、又は注射剤等の形態により、トレハロースとして一日あたり2〜10mg程度を投与することにより、平静時や運動時における血清脂質を調節できる。特に、運動前または運動中に投与すると血液中の脂質、特に血中脂肪酸を増加させる作用があるので有用である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トレハロースを有効成分とする血清脂質調節剤に関する。
【0002】
【従来の技術】トレハロースは、バッカクから単離された物質であり、カビ類に共通の成分として知られている。化学構造的には、トレハロースは二糖類の一つであり、2分子のD-グルコースがその還元性基どうしで結合したものである。従来、トレハロースは生体成分安定剤として用いられており、例えば、食品の保存や、細胞、細菌の安定保存等に応用されていた。しかし、今まで明らかにされたトレハロースの生理活性は、昆虫における貯蔵糖成分として、そのエネルギー源に関するもののみであり、血清脂質、特に血中脂肪酸の調節についての知見は全くなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】本発明者は、トレハロースの生理作用を検討するうち、トレハロースが平静時及び運動時における血清脂質の調節に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、トレハロースを有効成分とする血清脂質調節剤を提供するものである。
【0004】本発明の血清脂質調節剤に含有されるトレハロースは2分子のD-グルコースがその還元性基どうしで結合したものであり、α,α−体、α,β−体,及びβ,β−体の三種の異性体が存在するが、いずれも本発明に使用することができる。これらのうち、天然型であるα,α−体を使用することが好ましい。これらのトレハロースは市販されており(例えば、和光純薬株式会社製)、容易に入手することができる。
【0005】上記のトレハロースを含む本発明の血清脂質調節剤は、通常、カプセル剤、錠剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等の経口剤、注射剤や座剤等の非経口剤として製造され、経口的または非経口的に投与される。これらの製剤は、薬理学的、製剤学的に許容される添加物を必要により添加し、当業者に周知の方法により製造される。経口投与剤の製造に際しては、例えば乳糖、D-マンニトール、デンプン、結晶セルロース等の賦形剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖糖のコーティング剤、ポリエチレングリコール、ハードファット糖の基剤等を使用すればよい。また、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤等の経口用液剤や、注射剤の製造に際しては、注射用蒸留水、イオン交換水、生理食塩水等にトレハロースを溶解ないしは懸濁し、例えば、無機または有機の酸あるいは塩基等のpH調節剤、等張化剤、安定化剤等を必要により添加すればよい。さらに、本発明の血清脂質調節剤には、各種のアミノ酸やアミノ酸組成物を添加してもよい。
【0006】本発明の好ましい態様の一例として、トレハロースを2ないし10重量%の割合で含む溶液剤は、トレハロース2〜10グラムに水を加えて溶解し、全量を100mlとすればよい。本発明の血清脂質調節剤の投与量は、患者の状態や年齢により変化するが、一般成人の場合、トレハロースの一日投与量が2〜10mg程度となる様に投与すればよい。
【0007】
【発明の効果】本発明の血清脂質調節剤は、平静時や運動時において、コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸等の血清脂質を至適な濃度付近に維持するので、臨床上、高脂血症等の治療に有用である。特に、運動前または運動中に投与すると血液中の脂質、特に脂肪酸を増加させる作用があるので有用である。
【0008】
【実施例】以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
実施例1トレハロースを水に溶解することにより、本発明の血清脂質調節剤を溶液剤(10重量%)として製造した。
比較例1比較例として、10重量%グルコース溶液を製造した。
比較例2比較例として、特願平2-232977号の明細書に記載されたアミノ酸組成物の水溶液(VAAM、1.6%)を製造した。
試験例上記の製剤例について、血清脂質調節作用を検討した。
【0009】試験前15時間にわたり絶食させた5周齢マウス(ddy系、体重18〜22グラム、一群10匹)に37.5μl/g-体重の上記製剤を経口投与し、投与30分後、マウスに0.3グラムの負荷をかけて、30分間にわたり35℃のリバープールで強制遊泳させた。遊泳後にマウスをエーテル麻酔し、開腹して腹部大動脈より血液を採取した。対象例として遊泳前のマウスから同様の方法により採血した。これらの血液試料を3,000rpmで5分間遠心分離し、得られた上清について、ACS-ACOD法により血中脂肪酸を測定した。結果を以下の表1に示す。
【0010】
【表1】
製剤No. 血中脂肪酸値(mEq/dl)蒸留水 1.56±0.16トレハロース(10%) 2.34±0.15グルコース(10%) 1.04±0.09VAAM(10%) 1.71±0.08本発明の血清脂質調節剤を投与したマウスは、同量のグルコースを投与したマウスに比して、有意に高い血中脂肪酸値を示した。これらの結果から、本発明の血清脂質調節剤が、運動時の血中脂肪酸を増加させることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 トレハロースを有効成分とする血清脂質調節剤。