衝撃緩和帽子の製造方法、その製造方法で衝撃緩和帽子を製造する装置及びその製造方法で製造された衝撃緩和帽子
【課題】通気性に優れた衝撃緩和帽子を、低コストで製造することができる製造方法を提供すること。
【解決手段】通気性を有し3次元方向に伸縮性を有するシートをクラウン状に成形する成形工程と、前記成形工程でクラウン状に成形された部分の周縁部を厚さ方向に押圧して薄く圧密化すると共に接着して固定する薄化固定工程と、薄化固定された前記周縁部の少なくとも一部を残して成形された部分を切り取る切断工程と、を備える。
【解決手段】通気性を有し3次元方向に伸縮性を有するシートをクラウン状に成形する成形工程と、前記成形工程でクラウン状に成形された部分の周縁部を厚さ方向に押圧して薄く圧密化すると共に接着して固定する薄化固定工程と、薄化固定された前記周縁部の少なくとも一部を残して成形された部分を切り取る切断工程と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部保護を目的とした衝撃緩和帽子の製造方法、その製造方法で衝撃緩和帽子を製造する装置及びその製造方法で製造された衝撃緩和帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
衝撃緩和帽子としては、略三角形状の合成樹脂等の衝撃緩和材を複数周方向にメッシュ素材で縫合してなるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、メッシュ素材を略三角形に裁断し、蓮花状に並べて隣接する辺縁同士を縫い合わせてなる通常の帽子も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−156092号公報
【特許文献2】特開2008−163524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の帽子は、上記のように素材を略三角形状に裁断し、蓮花状に並べて隣接する辺縁同士を縫い合わせてクラウンを形成していた。したがって、製造に長時間を要し、素材の切端を多数出し、製造コストが高いという問題を有していた。
【0006】
また、上記従来の衝撃緩和帽子の通気性はメッシュ素材部分でのみ行わる。クラウンの大部分を占める衝撃緩和材は通気性がないため通気性が不十分であった。
【0007】
また、メッシュ素材を縫い合わせてなる通常の帽子は、通気性に優れているが、衝撃緩和性を備えていなかった。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、通気性に優れた衝撃緩和帽子を、低コストで製造することができる製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
また、通気性に優れた衝撃緩和帽子を、低コストで製造することができる製造装置を提供することを課題とする。
【0010】
また、通気性に優れ、製造コストの低い衝撃緩和帽子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る衝撃緩和帽子の製造方法は、通気性を有し3次元方向に伸縮性を有するシートをクラウン状に成形する成形工程と、前記成形工程でクラウン状に成形された部分の周縁部を厚さ方向に押圧して薄く圧密化すると共に接着して固定する薄化固定工程と、薄化固定された前記周縁部の少なくとも一部を残して成形された部分を切り取る切断工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
成形工程で伸縮性を有するシートは、引っ張り力が作用するところは伸び、圧縮力が作用するところは縮んで成形型の外形に倣ったクラウン状に成形される。次に、薄化固定工程でクラウン状に成形された部分の周縁部が薄く圧密化されて接着固定されると、伸びたところは伸びたまま、縮んだところは縮んだままに保持される。次に、切断工程で薄化固定された前記周縁部の少なくとも一部を残して成形された部分が切り取られると、衝撃緩和帽子が完成する。したがって、縫製なしで通気性に優れた衝撃緩和帽子が作製されるので、低コスト化が達成される。また、衝撃緩和帽子を通常の帽子の内側に装着して使用する場合、クラウン状に成形された部分の周縁部が薄いので帽子の汗取りへの収まりが良くなる。通常の帽子の内側に装着すると、頭部が保護され、特に自転車等に乗っていて転倒しても重大な事態にならなくて済む。
【0013】
上記の製造方法において、前記成形工程は、略半球形状凸部を備えた凸型と前記略半球形状凸部が嵌挿する開口を備える凹型を用いるとよい。
【0014】
3次元方向に伸縮性を有するシートが載置された凸型の略半球形状凸部が凹型の開口に挿入されることで、シートが伸びたり縮んだりして(皺なしに)略半球形状凸部がシートで覆われる。したがって、凹型の凹部が皺抑えのない開口である安価な凹型でも皺なしに成形することができる。
【0015】
また、前記薄化固定工程は、前記凹型の前記開口に向けて移動可能に設けられたヒータ内蔵の押圧部材を用いるとよい。
【0016】
薄化と固定を同時に行うことができる。シートをクラウン状に成形してその部分を凸型と凹型で拘束した状態でクラウン状に成形された部分の周縁部を薄化固定するので、クラウン状に成形された部分の形状がフリーズされる。
【0017】
また、前記切断工程は、前記凹型の前記開口に向けて移動可能に設けられた切り刃を用いるとよい。
【0018】
切り刃を前記開口の全周に亘って配置することで、成形された部分と耳部を一気に切り離すことできる。
【0019】
また、前記シートは、マルチフィラメントまたは紡績糸で編まれた上下に離間配置される二枚のシート状網と、前記二枚のシート状網の間を連結する剛性を有するモノフィラメントと、を備えるとよい。
【0020】
外側のシート状網に加わる衝撃が剛性を有するフィラメントで緩和され頭部への衝撃が弱まる。また、衝撃緩和帽子が二枚のシート状網で形成されるので、通気性が非常に良い。
【0021】
また、前記モノフィラメントは前記二枚のシート状網に編みこまれて前記二枚のシート状網の間を連結するとよい。
【0022】
網目を構成する各辺も剛性を有するので、力が加えられると、網目が変形するが、力が取り去られると元の形状の網目に戻るので、クラウン状に成形された部分の周縁部が周方向と径方向に縮めて成形され接着固定されても皺の発生が抑制される。
【0023】
また、前記二枚のシート状網は、二つのV字辺と二つの平行辺からなる6角形状網目が規則的に連なるシート状網であるとよい。
【0024】
シートが成形される際のシートの周方向及び径方向への縮みが容易になり皺の発生がさらに抑制される。
【0025】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る衝撃緩和帽子の製造装置は、略半球形状凸部を備えた凸型と、前記凸型に対して型締め可能に前記凸型に配置され、前記略半球形状凸部が嵌挿される開口を備える凹型と、前記開口の中心付近に向けて移動可能に前記凹型の前記開口の周縁部に配置されたヒータ内蔵の押圧部材と、前記開口の中心付近に向けて移動可能に前記凹型の前記開口の周縁部に配置された切り刃と、を有することを特徴とする。
【0026】
凹型の開口の中心付近に向けて移動可能なヒータ内蔵の押圧部材が開口の周縁部に配置されているので、凸型と凹型でシートをクラウン状に成形した状態で、クラウン状に成形された部分の周縁部を凸部の外面に押圧部材で押し付けて薄く圧密化して加熱溶着することができる。したがって、成形によって伸縮したシートがそのままフリーズされるので、切り刃で耳部分を切り取って製造装置から取り出しても、クラウン状態が保持される。
【0027】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る衝撃緩和帽子は、上記の製造方法のいずれかで製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
成形工程で伸縮性を有するシートは、引っ張り力が作用するところは伸び、圧縮力が作用するところは縮んで成形型の外形に倣ったクラウン状に成形される。次に、薄化固定工程でクラウン状に成形された部分の周縁部が薄く圧密化されて接着固定されると、伸びたところは伸びたまま、縮んだところは縮んだままに保持される。次に、切断工程で薄化固定された前記周縁部の少なくとも一部を残して成形された部分が切り取られると、衝撃緩和帽子が完成する。したがって、縫製なしで通気性に優れた衝撃緩和帽子が作製されるので、低コスト化が達成される。また、衝撃緩和帽子を通常の帽子の内側に装着して使用する場合、クラウン状に成形された部分の周縁部が薄いので帽子の汗取りへの収まりが良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る衝撃緩和帽子の製造装置の概略断面図である。
【図2】成形工程を開始する前の状態を示す要部断面模式図である。
【図3】成形工程の初期状態を示す要部断面模式図である。
【図4】成形工程の最終状態を示す要部断面模式図である。
【図5】薄化固定工程を説明するための図1の要部拡大断面図である。
【図6】切断工程を説明するための図1の要部拡大断面図である。
【図7】図1の製造装置で製造された衝撃緩和帽子の斜視図である。
【図8】変形態様の薄化固定工程を説明する要部断面図である。
【図9】変形態様の凸型の断面図である。
【図10】変形態様のシートの平面視図である。
【図11】図10の円C1内の拡大平面模式図である。
【図12】図10の円C2内の拡大断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の衝撃緩和帽子の製造装置は、図1に示すように、ベース1aに半球形状凸部1bを固定した凸型1と、半球形状凸部1bが嵌挿される開口2aを備える凹型2を備えている。凹型2の端部がシャフト4に係合し、図示しない駆動手段(油圧シリンダ等)で凹型2は矢印A1方向(図1の場合、上下方向)に移動して、所定の高さで停止することができるようになっている。
【0031】
5は、開口2aの中心付近に向けて移動可能に且つ開口2a全周に亘って凹型2に設けられた切り刃部である。切り刃部5は、切り刃5aと、切り刃5aを矢印A2方向(開口2aの中心付近方向)に移動制御する油圧シリンダ5bを備えている。
【0032】
切り刃部5の上部には、開口2aの中心付近に向けて移動可能に且つ開口2a全周に亘って設けられた押圧部材6が配置されている。押圧部材6は、ヒータ内蔵の押圧部6aと、押圧部6aを矢印A3方向(開口2aの中心付近方向)に移動制御する油圧シリンダ6bを備えている。
【0033】
3は、クラウン状に成形されるシートである。図1では凹型2が所定の位置まで駆動降下されて、シート3の開口2aより上の部分が半球形状凸部1bの外面に当接している。
【0034】
次に、本発明の製造方法を説明する。先ず図1の状態から初期の状態に戻す。すなわち、凹型2を図示しない駆動手段で持ち上げ、シート3を成形前のシートに戻すと、図2の状態になる。
(成形工程)次に、凹型2を徐々に下降させると、図3に示すように、シート3の上面が開口2aの内壁に拘束されて変形し、開口2aを通過したシート3の領域は半球形状凸部1bの上部外面を覆うようになる。さらに、凹型2を下降させると、成形が進んで図4の状態になる。すなわち、シート3がクラウン状に成形される。
【0035】
シートをクラウン状に成形すると、成形過程でシートには下向きに引っ張り力が、横向き(周方向)に圧縮力が加わるが、シート3は3次元方向に伸縮性を有するので、皺等の発生を抑えて凸部1bの外形に相似のクラウン状に成形することができる。
(薄化固定工程)次に、図5に示すように、シート3を加熱融着できる温度に加熱された押圧部6aを油圧シリンダ6bで駆動してクラウン状に成形された部分の周縁部3aを薄く圧密化して融着固定する。
(切断工程)次に、図6に示すように、切り刃5aを油圧シリンダ5bで駆動して融着固定された部位の下部を切断する。切断後、製造装置から取り出した衝撃緩和帽子は図7に示すように、クラウン状体が保持される。なお、切り刃5aに対向する凸部1bの部位にはウレタンゴム1cが埋め込まれており、切り刃5aの刃こぼれが防止される。
【0036】
本実施形態では、薄化固定工程が上記のようにヒータ内蔵の押圧部材6aを用いたが、ヒータを内蔵しない押圧部材で押圧して、その押圧部に接着材を供給するようにしても良い。或いは、接着材を供給する代わりに粘着テープを用いても良い。
【0037】
図7に示す衝撃緩和帽子を通常の帽子の内側に装着して使用する場合、薄く圧密化して融着された部位3aを帽子の汗取りに収める必要がある。3aの幅が狭くて汗取りへの収まりが良くない場合は、図8に示すように、薄化固定工程を凹型2を下に移動させて繰り返せばよい。図8の薄く圧密化して融着された部位3aの幅は、図7の2倍以上になり、汗取りへの収まりが良くなる。
【0038】
深さ(高さ)の異なる衝撃緩和帽子を製造するためには、図1の製造装置において、凹型2の下降位置を変えればよい。
【0039】
深さ(高さ)をさらに大きく変えるためには、図9に示すように凸部1bにスペーサ1cを着脱可能に装着すればよい。
【0040】
シート3としては、ウレタンシート、発泡樹脂シートなどでもよいが、マルチフィラメントまたは紡績糸で編まれた上下に離間配置される二枚のシート状網と、前記二枚のシート状網の間を連結する剛性を有するモノフィラメントと、を備え、前記モノフィラメントは前記二枚のシート状網に編みこまれて前記二枚のシート状網の間を連結する立体編物素材が良い。
【0041】
成形性が一層よく、皺の発生が一層抑制され、通気性が一層良く、衝撃緩和性に優れた衝撃緩和帽子を製造することができる。
【0042】
立体編物素材は、図10〜12に示すように、マルチフィラメントまたは紡績糸14Aで編んだ二つのV字辺11Aaと二つの平行辺11Abからなる6角形状網目が規則的に連なるシート状網11Aとマルチフィラメントまたは紡績糸14Aで編んだ二つのV字辺12Aaと二つの平行辺12Abからなる6角形状網目が規則的に連なるシート状網12Aとを上下に配置し、前記2枚のシート状網11A、12Aの間を剛性を有する複数のモノフィラメント13Aで連結したものである。
【0043】
立体編物素材としては、例えば、ユニチカのキュービックアイ(登録商標)を使用することができる。キュービックアイ(登録商標)の場合、14Aは、複数のポリエステルフィラメントの撚糸であり、3Aはナイロンモノフィラメントである。
【0044】
モノフィラメント13Aは、シート状網11AのV字辺11Aa及び平行辺11Abと、シート状網12AのV字辺12Aa及び平行辺12Abと絡まって対向する各辺間を連結するので、各辺11Aa、11Abと12Aaと12Abも剛性を有する。したがって、力を加えれば、網目が変形するが、力を取り去ると元の矩形状網目(横方向から見て)に戻る特性を持っている。しかし、凸型と凹型でシートをクラウン状に成形した状態で、クラウン状に成形された部分の周縁部を凸部の外面に押圧部材で押し付けて薄く圧密化して加熱溶着することで、元の矩形状網目に戻ることができず、変形した形状が凍結される。
【符号の説明】
【0045】
1・・・・・・・・・・凸型
1b・・・・・・・・凸部
2・・・・・・・・・・凹型
2a・・・・・・・・開口
3・・・・・・・・・・シート
5・・・・・・・・・・切り刃
6・・・・・・・・・・押圧部材
11A、12A・・・・シート状網
13A・・・・・・・・モノフィラメント
14A・・・・・・・・マルチフィラメントまたは紡績糸
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部保護を目的とした衝撃緩和帽子の製造方法、その製造方法で衝撃緩和帽子を製造する装置及びその製造方法で製造された衝撃緩和帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
衝撃緩和帽子としては、略三角形状の合成樹脂等の衝撃緩和材を複数周方向にメッシュ素材で縫合してなるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、メッシュ素材を略三角形に裁断し、蓮花状に並べて隣接する辺縁同士を縫い合わせてなる通常の帽子も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−156092号公報
【特許文献2】特開2008−163524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の帽子は、上記のように素材を略三角形状に裁断し、蓮花状に並べて隣接する辺縁同士を縫い合わせてクラウンを形成していた。したがって、製造に長時間を要し、素材の切端を多数出し、製造コストが高いという問題を有していた。
【0006】
また、上記従来の衝撃緩和帽子の通気性はメッシュ素材部分でのみ行わる。クラウンの大部分を占める衝撃緩和材は通気性がないため通気性が不十分であった。
【0007】
また、メッシュ素材を縫い合わせてなる通常の帽子は、通気性に優れているが、衝撃緩和性を備えていなかった。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、通気性に優れた衝撃緩和帽子を、低コストで製造することができる製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
また、通気性に優れた衝撃緩和帽子を、低コストで製造することができる製造装置を提供することを課題とする。
【0010】
また、通気性に優れ、製造コストの低い衝撃緩和帽子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る衝撃緩和帽子の製造方法は、通気性を有し3次元方向に伸縮性を有するシートをクラウン状に成形する成形工程と、前記成形工程でクラウン状に成形された部分の周縁部を厚さ方向に押圧して薄く圧密化すると共に接着して固定する薄化固定工程と、薄化固定された前記周縁部の少なくとも一部を残して成形された部分を切り取る切断工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
成形工程で伸縮性を有するシートは、引っ張り力が作用するところは伸び、圧縮力が作用するところは縮んで成形型の外形に倣ったクラウン状に成形される。次に、薄化固定工程でクラウン状に成形された部分の周縁部が薄く圧密化されて接着固定されると、伸びたところは伸びたまま、縮んだところは縮んだままに保持される。次に、切断工程で薄化固定された前記周縁部の少なくとも一部を残して成形された部分が切り取られると、衝撃緩和帽子が完成する。したがって、縫製なしで通気性に優れた衝撃緩和帽子が作製されるので、低コスト化が達成される。また、衝撃緩和帽子を通常の帽子の内側に装着して使用する場合、クラウン状に成形された部分の周縁部が薄いので帽子の汗取りへの収まりが良くなる。通常の帽子の内側に装着すると、頭部が保護され、特に自転車等に乗っていて転倒しても重大な事態にならなくて済む。
【0013】
上記の製造方法において、前記成形工程は、略半球形状凸部を備えた凸型と前記略半球形状凸部が嵌挿する開口を備える凹型を用いるとよい。
【0014】
3次元方向に伸縮性を有するシートが載置された凸型の略半球形状凸部が凹型の開口に挿入されることで、シートが伸びたり縮んだりして(皺なしに)略半球形状凸部がシートで覆われる。したがって、凹型の凹部が皺抑えのない開口である安価な凹型でも皺なしに成形することができる。
【0015】
また、前記薄化固定工程は、前記凹型の前記開口に向けて移動可能に設けられたヒータ内蔵の押圧部材を用いるとよい。
【0016】
薄化と固定を同時に行うことができる。シートをクラウン状に成形してその部分を凸型と凹型で拘束した状態でクラウン状に成形された部分の周縁部を薄化固定するので、クラウン状に成形された部分の形状がフリーズされる。
【0017】
また、前記切断工程は、前記凹型の前記開口に向けて移動可能に設けられた切り刃を用いるとよい。
【0018】
切り刃を前記開口の全周に亘って配置することで、成形された部分と耳部を一気に切り離すことできる。
【0019】
また、前記シートは、マルチフィラメントまたは紡績糸で編まれた上下に離間配置される二枚のシート状網と、前記二枚のシート状網の間を連結する剛性を有するモノフィラメントと、を備えるとよい。
【0020】
外側のシート状網に加わる衝撃が剛性を有するフィラメントで緩和され頭部への衝撃が弱まる。また、衝撃緩和帽子が二枚のシート状網で形成されるので、通気性が非常に良い。
【0021】
また、前記モノフィラメントは前記二枚のシート状網に編みこまれて前記二枚のシート状網の間を連結するとよい。
【0022】
網目を構成する各辺も剛性を有するので、力が加えられると、網目が変形するが、力が取り去られると元の形状の網目に戻るので、クラウン状に成形された部分の周縁部が周方向と径方向に縮めて成形され接着固定されても皺の発生が抑制される。
【0023】
また、前記二枚のシート状網は、二つのV字辺と二つの平行辺からなる6角形状網目が規則的に連なるシート状網であるとよい。
【0024】
シートが成形される際のシートの周方向及び径方向への縮みが容易になり皺の発生がさらに抑制される。
【0025】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る衝撃緩和帽子の製造装置は、略半球形状凸部を備えた凸型と、前記凸型に対して型締め可能に前記凸型に配置され、前記略半球形状凸部が嵌挿される開口を備える凹型と、前記開口の中心付近に向けて移動可能に前記凹型の前記開口の周縁部に配置されたヒータ内蔵の押圧部材と、前記開口の中心付近に向けて移動可能に前記凹型の前記開口の周縁部に配置された切り刃と、を有することを特徴とする。
【0026】
凹型の開口の中心付近に向けて移動可能なヒータ内蔵の押圧部材が開口の周縁部に配置されているので、凸型と凹型でシートをクラウン状に成形した状態で、クラウン状に成形された部分の周縁部を凸部の外面に押圧部材で押し付けて薄く圧密化して加熱溶着することができる。したがって、成形によって伸縮したシートがそのままフリーズされるので、切り刃で耳部分を切り取って製造装置から取り出しても、クラウン状態が保持される。
【0027】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る衝撃緩和帽子は、上記の製造方法のいずれかで製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
成形工程で伸縮性を有するシートは、引っ張り力が作用するところは伸び、圧縮力が作用するところは縮んで成形型の外形に倣ったクラウン状に成形される。次に、薄化固定工程でクラウン状に成形された部分の周縁部が薄く圧密化されて接着固定されると、伸びたところは伸びたまま、縮んだところは縮んだままに保持される。次に、切断工程で薄化固定された前記周縁部の少なくとも一部を残して成形された部分が切り取られると、衝撃緩和帽子が完成する。したがって、縫製なしで通気性に優れた衝撃緩和帽子が作製されるので、低コスト化が達成される。また、衝撃緩和帽子を通常の帽子の内側に装着して使用する場合、クラウン状に成形された部分の周縁部が薄いので帽子の汗取りへの収まりが良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る衝撃緩和帽子の製造装置の概略断面図である。
【図2】成形工程を開始する前の状態を示す要部断面模式図である。
【図3】成形工程の初期状態を示す要部断面模式図である。
【図4】成形工程の最終状態を示す要部断面模式図である。
【図5】薄化固定工程を説明するための図1の要部拡大断面図である。
【図6】切断工程を説明するための図1の要部拡大断面図である。
【図7】図1の製造装置で製造された衝撃緩和帽子の斜視図である。
【図8】変形態様の薄化固定工程を説明する要部断面図である。
【図9】変形態様の凸型の断面図である。
【図10】変形態様のシートの平面視図である。
【図11】図10の円C1内の拡大平面模式図である。
【図12】図10の円C2内の拡大断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の衝撃緩和帽子の製造装置は、図1に示すように、ベース1aに半球形状凸部1bを固定した凸型1と、半球形状凸部1bが嵌挿される開口2aを備える凹型2を備えている。凹型2の端部がシャフト4に係合し、図示しない駆動手段(油圧シリンダ等)で凹型2は矢印A1方向(図1の場合、上下方向)に移動して、所定の高さで停止することができるようになっている。
【0031】
5は、開口2aの中心付近に向けて移動可能に且つ開口2a全周に亘って凹型2に設けられた切り刃部である。切り刃部5は、切り刃5aと、切り刃5aを矢印A2方向(開口2aの中心付近方向)に移動制御する油圧シリンダ5bを備えている。
【0032】
切り刃部5の上部には、開口2aの中心付近に向けて移動可能に且つ開口2a全周に亘って設けられた押圧部材6が配置されている。押圧部材6は、ヒータ内蔵の押圧部6aと、押圧部6aを矢印A3方向(開口2aの中心付近方向)に移動制御する油圧シリンダ6bを備えている。
【0033】
3は、クラウン状に成形されるシートである。図1では凹型2が所定の位置まで駆動降下されて、シート3の開口2aより上の部分が半球形状凸部1bの外面に当接している。
【0034】
次に、本発明の製造方法を説明する。先ず図1の状態から初期の状態に戻す。すなわち、凹型2を図示しない駆動手段で持ち上げ、シート3を成形前のシートに戻すと、図2の状態になる。
(成形工程)次に、凹型2を徐々に下降させると、図3に示すように、シート3の上面が開口2aの内壁に拘束されて変形し、開口2aを通過したシート3の領域は半球形状凸部1bの上部外面を覆うようになる。さらに、凹型2を下降させると、成形が進んで図4の状態になる。すなわち、シート3がクラウン状に成形される。
【0035】
シートをクラウン状に成形すると、成形過程でシートには下向きに引っ張り力が、横向き(周方向)に圧縮力が加わるが、シート3は3次元方向に伸縮性を有するので、皺等の発生を抑えて凸部1bの外形に相似のクラウン状に成形することができる。
(薄化固定工程)次に、図5に示すように、シート3を加熱融着できる温度に加熱された押圧部6aを油圧シリンダ6bで駆動してクラウン状に成形された部分の周縁部3aを薄く圧密化して融着固定する。
(切断工程)次に、図6に示すように、切り刃5aを油圧シリンダ5bで駆動して融着固定された部位の下部を切断する。切断後、製造装置から取り出した衝撃緩和帽子は図7に示すように、クラウン状体が保持される。なお、切り刃5aに対向する凸部1bの部位にはウレタンゴム1cが埋め込まれており、切り刃5aの刃こぼれが防止される。
【0036】
本実施形態では、薄化固定工程が上記のようにヒータ内蔵の押圧部材6aを用いたが、ヒータを内蔵しない押圧部材で押圧して、その押圧部に接着材を供給するようにしても良い。或いは、接着材を供給する代わりに粘着テープを用いても良い。
【0037】
図7に示す衝撃緩和帽子を通常の帽子の内側に装着して使用する場合、薄く圧密化して融着された部位3aを帽子の汗取りに収める必要がある。3aの幅が狭くて汗取りへの収まりが良くない場合は、図8に示すように、薄化固定工程を凹型2を下に移動させて繰り返せばよい。図8の薄く圧密化して融着された部位3aの幅は、図7の2倍以上になり、汗取りへの収まりが良くなる。
【0038】
深さ(高さ)の異なる衝撃緩和帽子を製造するためには、図1の製造装置において、凹型2の下降位置を変えればよい。
【0039】
深さ(高さ)をさらに大きく変えるためには、図9に示すように凸部1bにスペーサ1cを着脱可能に装着すればよい。
【0040】
シート3としては、ウレタンシート、発泡樹脂シートなどでもよいが、マルチフィラメントまたは紡績糸で編まれた上下に離間配置される二枚のシート状網と、前記二枚のシート状網の間を連結する剛性を有するモノフィラメントと、を備え、前記モノフィラメントは前記二枚のシート状網に編みこまれて前記二枚のシート状網の間を連結する立体編物素材が良い。
【0041】
成形性が一層よく、皺の発生が一層抑制され、通気性が一層良く、衝撃緩和性に優れた衝撃緩和帽子を製造することができる。
【0042】
立体編物素材は、図10〜12に示すように、マルチフィラメントまたは紡績糸14Aで編んだ二つのV字辺11Aaと二つの平行辺11Abからなる6角形状網目が規則的に連なるシート状網11Aとマルチフィラメントまたは紡績糸14Aで編んだ二つのV字辺12Aaと二つの平行辺12Abからなる6角形状網目が規則的に連なるシート状網12Aとを上下に配置し、前記2枚のシート状網11A、12Aの間を剛性を有する複数のモノフィラメント13Aで連結したものである。
【0043】
立体編物素材としては、例えば、ユニチカのキュービックアイ(登録商標)を使用することができる。キュービックアイ(登録商標)の場合、14Aは、複数のポリエステルフィラメントの撚糸であり、3Aはナイロンモノフィラメントである。
【0044】
モノフィラメント13Aは、シート状網11AのV字辺11Aa及び平行辺11Abと、シート状網12AのV字辺12Aa及び平行辺12Abと絡まって対向する各辺間を連結するので、各辺11Aa、11Abと12Aaと12Abも剛性を有する。したがって、力を加えれば、網目が変形するが、力を取り去ると元の矩形状網目(横方向から見て)に戻る特性を持っている。しかし、凸型と凹型でシートをクラウン状に成形した状態で、クラウン状に成形された部分の周縁部を凸部の外面に押圧部材で押し付けて薄く圧密化して加熱溶着することで、元の矩形状網目に戻ることができず、変形した形状が凍結される。
【符号の説明】
【0045】
1・・・・・・・・・・凸型
1b・・・・・・・・凸部
2・・・・・・・・・・凹型
2a・・・・・・・・開口
3・・・・・・・・・・シート
5・・・・・・・・・・切り刃
6・・・・・・・・・・押圧部材
11A、12A・・・・シート状網
13A・・・・・・・・モノフィラメント
14A・・・・・・・・マルチフィラメントまたは紡績糸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有し3次元方向に伸縮性を有するシートをクラウン状に成形する成形工程と、
前記成形工程でクラウン状に成形された部分の周縁部を厚さ方向に押圧して薄く圧密化すると共に接着して固定する薄化固定工程と、
薄化固定された前記周縁部の少なくとも一部を残して成形された部分を切り取る切断工程と、を備えることを特徴とする衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程は、略半球形状凸部を備えた凸型と前記略半球形状凸部が嵌挿する開口を備える凹型を用いる請求項1に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項3】
前記薄化固定工程は、前記凹型の前記開口に向けて移動可能に設けられたヒータ内蔵の押圧部材を用いる請求項2に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項4】
前記切断工程は、前記凹型の前記開口に向けて移動可能に設けられた切り刃を用いる請求項2または3に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項5】
前記シートは、マルチフィラメントまたは紡績糸で編まれた上下に離間配置される二枚のシート状網と、前記二枚のシート状網の間を連結する剛性を有するモノフィラメントと、を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項6】
前記モノフィラメントは前記二枚のシート状網に編みこまれて前記二枚のシート状網の間を連結する請求項5に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項7】
前記二枚のシート状網は、二つのV字辺と二つの平行辺からなる6角形状網目が規則的に連なるシート状網である請求項5又は6に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4に記載の製造方法で衝撃緩和帽子を製造する装置であって、
略半球形状凸部を備えた凸型と、
前記凸型に対して型締め可能に前記凸型に配置され、前記略半球形状凸部が嵌挿される開口を備える凹型と、
前記開口の中心付近に向けて移動可能に前記凹型の前記開口の周縁部に配置されたヒータ内蔵の押圧部材と、
前記開口の中心付近に向けて移動可能に前記凹型の前記開口の周縁部に配置された切り刃と、を有することを特徴とする衝撃緩和帽子の製造装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の衝撃緩和帽子の製造方法で製造されることを特徴とする衝撃緩和帽子。
【請求項1】
通気性を有し3次元方向に伸縮性を有するシートをクラウン状に成形する成形工程と、
前記成形工程でクラウン状に成形された部分の周縁部を厚さ方向に押圧して薄く圧密化すると共に接着して固定する薄化固定工程と、
薄化固定された前記周縁部の少なくとも一部を残して成形された部分を切り取る切断工程と、を備えることを特徴とする衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程は、略半球形状凸部を備えた凸型と前記略半球形状凸部が嵌挿する開口を備える凹型を用いる請求項1に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項3】
前記薄化固定工程は、前記凹型の前記開口に向けて移動可能に設けられたヒータ内蔵の押圧部材を用いる請求項2に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項4】
前記切断工程は、前記凹型の前記開口に向けて移動可能に設けられた切り刃を用いる請求項2または3に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項5】
前記シートは、マルチフィラメントまたは紡績糸で編まれた上下に離間配置される二枚のシート状網と、前記二枚のシート状網の間を連結する剛性を有するモノフィラメントと、を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項6】
前記モノフィラメントは前記二枚のシート状網に編みこまれて前記二枚のシート状網の間を連結する請求項5に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項7】
前記二枚のシート状網は、二つのV字辺と二つの平行辺からなる6角形状網目が規則的に連なるシート状網である請求項5又は6に記載の衝撃緩和帽子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4に記載の製造方法で衝撃緩和帽子を製造する装置であって、
略半球形状凸部を備えた凸型と、
前記凸型に対して型締め可能に前記凸型に配置され、前記略半球形状凸部が嵌挿される開口を備える凹型と、
前記開口の中心付近に向けて移動可能に前記凹型の前記開口の周縁部に配置されたヒータ内蔵の押圧部材と、
前記開口の中心付近に向けて移動可能に前記凹型の前記開口の周縁部に配置された切り刃と、を有することを特徴とする衝撃緩和帽子の製造装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の衝撃緩和帽子の製造方法で製造されることを特徴とする衝撃緩和帽子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−53384(P2013−53384A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191482(P2011−191482)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(592174154)和光技研工業株式会社 (9)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(592174154)和光技研工業株式会社 (9)
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