説明

表示パネル輸送用の筐体装置

【課題】 輸送環境に大きな変化があっても、その環境変化に順応することができ、輸送中に破損等のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできる表示パネル搬送用の筐体装置を提供する。
【解決手段】 本発明の表示パネル搬送用の筐体装置(1)は、エアバック(40)および圧力制御機構部を備え、エアバック(40)は、緩衝部材(30)と表示パネル(7)とが実質的に交互に積層された積層体形成後の最上部に押圧用平板(8)を介して配置され、積層体を押圧するように作用するとともに圧力制御機構部によってエアバック(40)の内圧の制御が行われるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板、液晶パネル等の表示パネルを破損等のトラブルを発生させることなく安全かつ確実に搬送させることができる表示パネル搬送用の筐体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場内や工場外へガラス基板、液晶パネル等の表示パネルを搬送する場合には、一般に、搬送用物としてコンテナ(筐体)が使用されている。
【0003】
搬送対象物である表示パネルは、その大きさが年々、サイズアップされる傾向にあり、搬送中での破損の危険度は増してきている。このような実状のもと、従来より輸送中での破損等のトラブルを回避するために搬送ケースに関する種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特開平6−286812号公報には、所定の構造を備えるガラス基板収容用カセットの提案がなされており、この提案によれば、ガラス基板を支承する溝付き側板の幅を狭くし、かつカセット1側面あたりのその設置枚数を必要最小限にしても必要な強度があり、しかもガラス基板取り扱い時の帯電を有効に防止でき、さらにはガラス基板との摩擦によっても摩耗粉などの塵埃を生じがたいという効果が得られると報告されている。
【0005】
また、特開2000−7148号公報には、収納されるガラス基板を保持する際のたわみを少なくすること、および異物の付着を防止することを目的として、ガラス基板端部支持部とガラス基板の中央部を支持するように構成された複数のガラス基板支持棒とシャッタを有するガラス基板カセットの提案がなされている。
【0006】
また、特開平10−264970号公報には、輸送中の振動または衝撃から被梱包物を保護することができる梱包箱を提供することを目的として、被梱包物を収納するための収納部が形成され、気体の注入により被梱包物の周辺部を保持する第1の緩衝体と、気体の注入により被梱包物の上面を保持する第2の緩衝体を備える梱包箱の提案がなされている。
【0007】
また、特開2004−149188号公報には、比較的低コストで表示パネルを梱包して輸送することができる輸送方法を提供することを目的として、表示パネルをカセットに収納し、表示パネルを収納したカセットを梱包部材で梱包し、梱包したカセットを輸送する表示パネルの輸送方法であって、表示パネルの端部にはその端部を支持するクッション部材を含む旨の提案がなされている。
【0008】
しかしながら、近時、輸送の対象とされる液晶ディスプレイガラスの大きさはさらに拡大する傾向にあり、その大きさがいわゆる第六世代の大きさ(例えば、1500mm×1840mm程度の大きさ)以上となると、縦横が格段と大きくなるので、上記従来の提案をそのまま採択したのみでは輸送中に破損等のトラブルが発生してしまうおそれがある。
【0009】
また、国内外にある工場間の輸送には、船や航空機を使用することがある。この際、輸送環境の変化は極めて大きい。例えば、搭載待ち時には直射日光があたり、コンテナ内の温度は60〜70℃、あるいはそれ以上になることもある。これとは反対に、船又は航空機からコンテナが外に出され、外気温の極めて低い雰囲気中に長時間さらされることもある。このように輸送環境の変化が極めて大きい場合、単に気体の注入により被梱包物の所定個所を保持する緩衝体を用いた従来の提案では、内部に収納したガラス基板の破損のおそれや、ガラス基板の安定した積載状態を保てないおそれ等が生じ得る。
【0010】
【特許文献1】特開平6−286812号公報
【特許文献2】特開2000−7148号公報
【特許文献3】特開平10−264970号公報
【特許文献4】特開2004−149188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような実状のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、輸送の対象とされる液晶ディスプレイガラスの大きさが増大したとしても(例えば、第六世代の大きさ(例えば、1500mm×1840mm程度の大きさ)以上)、輸送中に破損等のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできる表示パネル搬送用の筐体装置を提供することにある。しかも、輸送環境に大きな変化があっても、その環境変化に順応することができ、輸送中のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできる表示パネル搬送用の筐体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明の表示パネル輸送用の筐体装置は、緩衝部材、表示パネル、押圧用平板、およびエアバックを収納するための開口部を備える筐体本体と、前記筐体本体の開口部を封止するための蓋体と、前記エアバックに連結される圧力制御機構部とを有し、前記緩衝部材は、輸送対象物である複数枚の隣接する表示パネルの間に介在されるとともに、表示パネルの振動を吸収するクッション材としての機能を有し、前記エアバックは、緩衝部材と表示パネルとが実質的に交互に積層された積層体形成後に前記押圧用平板を介して最上部に配置され、積層体を押圧するように作用するとともに圧力制御機構部によってエアバックの内圧の制御が行われるように構成される。
【0013】
また、本発明の好ましい態様として、前記圧力制御機構部は、前記エアバックへの気体供給を可能とする気体供給タンク、第1の切り換え弁、減圧弁、およびチェック弁(一方向弁)を順次有する気体供給回路と、前記エアバックからの気体を抜いて圧力を低下させるための排気弁を有する気体排気回路とを備えてなるように構成される。
【0014】
また、本発明の好ましい態様として、前記圧力制御機構部の気体供給回路は、前記エアバックへの気体供給を可能とする気体供給タンク、第1の切り換え弁、減圧弁、チェック弁(一方向弁)および第2の切り換え弁を順次備え、前記第2の切り換え弁はさらに第3の切り換え弁を介して外部圧力源を備える外部気体供給回路と一時的な連結が可能となっており、前記第2の切り換え弁および第3の切り換え弁を作動させて外部気体供給回路に連結させることにより、前記気体供給タンクの気体を用いることなく外部気体供給回路の外部圧力源から前記エアバックへ初期段階の気体供給を可能としてなるように構成される。
【0015】
また、本発明の好ましい態様として、前記外部気体供給回路は、前記第3の切り換え弁と継ぎ手を介して着脱可能に連結されるようなっており、前記エアバックへ初期段階の気体供給が完了した後、前記継ぎ手の個所から切り離されてなるように構成される。
【0016】
また、本発明の好ましい態様として、前記外部気体供給回路は外部圧力源、切り換え弁、減圧弁を順次備えてなるように構成される。
【0017】
また、本発明の好ましい態様として、前記圧力制御機構部は、前記エアバックの内圧の初期設定圧力をPとし、前記エアバック内の内圧が所定の設定上限値P(P>P)になると、前記気体排気回路の排気弁が作動し前記エアバックの気体を排出して内圧を一定に保つように作用するとともに、エアバック内の内圧が所定の設定下限値Pになると、前記気体供給回路の気体供給タンクから前記エアバックに気体が供給されて内圧を設定下限値P(P>P)に保つように作用してなるように構成される。
【0018】
また、本発明の好ましい態様として、前記圧力制御機構部は、前記エアバックの内圧の初期設定圧力をPとし、雰囲気温度の上昇に伴い前記エアバックの気体が膨張し内圧が所定の設定上限値P(P>P)になると、前記気体排気回路の排気弁が作動し前記エアバックの気体を排出して内圧を一定に保つように作用するとともに、雰囲気温度の下降に伴いエアバック内の気体が収縮し内圧が所定の設定下限値Pになると、前記気体供給回路の気体供給タンクから前記エアバックに気体が供給されて内圧を設定下限値P(P>P)に保つように作用してなるように構成される。
【0019】
また、本発明の好ましい態様として、前記エアバックの内圧は、設定上限値Pと設定下限値Pの圧力範囲内で制御されてなるように構成される。
【0020】
また、本発明の好ましい態様として、前記設定上限値Pの制御は、前記気体排気回路に設置された排気弁の作動圧力の設定により行われ、前記設定下限値Pの制御は、前記気体供給回路の減圧弁であってチェック弁に最も近接する上流側の減圧弁の作動圧力の設定により行われるように構成される。
【0021】
また、本発明の好ましい態様として、前記エアバックには、前記気体供給回路および前記気体排気回路を接続するための継ぎ手が形成されてなるように構成される。
【0022】
また、本発明の好ましい態様として、前記輸送対象物である表示パネルは、その平面の大きさが1500mm×1840mm以上のものであるように構成される。
【0023】
また、本発明の好ましい態様として、前記輸送対象物である表示パネルは、ガラス基板または液晶パネルから構成される。
【0024】
また、本発明の好ましい態様として、前記エアバックは、天然ゴム、合成ゴム、または熱可塑性エラストマーの弾性体を主材料とする袋体から構成される。
【0025】
また、本発明の好ましい態様として、前記エアバックの主材料となる弾性体は、その肉厚部に基布が埋設されてなるように構成される。
【0026】
また、本発明の好ましい態様として、前記押圧用平板は、前記エアバックの圧力が前記積層体に均一にかかるように作用すべく剛性を備えた樹脂プレート、セラミックプレート、又は金属プレートから構成される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の表示パネル輸送用の筐体装置は、緩衝部材、表示パネル、押圧用平板、およびエアバックを収納するための開口部を備える筐体本体と、前記筐体本体の開口部を封止するための蓋体と、前記エアバックに連結される圧力制御機構部とを有し、前記緩衝部材は、輸送対象物である複数枚の隣接する表示パネルの間に介在されるとともに、表示パネルの振動を吸収するクッション材としての機能を有し、前記エアバックは、緩衝部材と表示パネルとが実質的に交互に積層された積層体形成後に押圧用平板を介して最上部に配置され、積層体を押圧するように作用するとともに圧力制御機構部によってエアバックの内圧の制御が行われるようになっているので、輸送の対象とされる液晶ディスプレイガラスの大きさが例えば、第六世代の大きさ以上であっても、輸送中に破損等のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできるという極めて優れた効果が発現する。さらには、輸送環境に大きな変化があっても、その環境変化に順応することができ、輸送中に破損等のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできるという極めて優れた効果が発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置の実施形態について図1および図2を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1には、本発明の表示パネル輸送用筐体装置の内部の状態が理解し易いように内部を模式的に断面にした図面が示されており、図2には、本発明で用いられるエアバックに連結される圧力制御機構部の要部配管システム図が示されている。
【0030】
図1に示されるように、本発明の表示パネル輸送用の筐体装置1は、搬送対象物である表示パネル7等を収納するための略直方体形状の筐体本体10と、この筐体本体10の上部に形成されている開口部11を覆って封止するための蓋体20を備えている。
【0031】
本発明における筐体本体10の中には、その上部に開口されている開口部11から緩衝部材30と、表示パネル7が交互に入れられ重ねられた状態(いわゆる積層体の形成)で収納される。このような緩衝部材30と、表示パネル7との収納は、最上部に押圧用平板8を介してエアバック40を収納するためのスペースを残した状態で終えられ、図1に示されるごとく最上部の残存スペースに押圧用平板8を介してエアバック40が載置収納されるようになっている。
【0032】
本発明において輸送対象となる表示パネル7は、その大きさが第六世代の大きさ(例えば、1500mm×1840mm程度の大きさ)以上のものである。輸送対象となる表示パネル7が第六世代の大きさより小さい、いわゆる第5世代程度の大きさ(例えば、1100mm×1300mm程度の大きさ)となると、内圧制御されるエアバック40の装備がなくても表示パネル7の破損のおそれはあまり大きくならないからである。
【0033】
本発明における表示パネル7を収納する筐体本体10の内寸法(幅×長さ寸法)は、表示パネル7よりもわずかに大きな寸法とすることが好ましい。搬送時のガタツキを防止するためにも必要以上なマージンはないほうがよい。また、表示パネル7の筐体本体10内部への収納には、通常、表示パネル7の平面を真空吸引で把持する機構を備えるロボットが用いられる。表示パネル7は、筐体本体10の内部に、例えば10〜20枚程度収納される。
【0034】
本発明における表示パネル7は、例えば、ガラス基板、液晶パネル、等のいわゆる表示パネルとして公知の種々のものを含む概念である。
【0035】
緩衝部材30は、上述したように輸送対象物である複数枚の隣接する表示パネル7の間に介在されて配置され、輸送中、表示パネル7の振動を吸収するクッション材としての機能を有する材料が用いられる。振動を吸収するクッション材料であれば、ゴム材質や樹脂材質等いずれであってもよく、特に材質に制限はない。緩衝部材30の大きさは、表示パネル7のそれと同程度あるいはそれ以上の大きさとされる。表示パネル7とできるだけ多くの面積で平面接触できる表面平板形状のものが好ましい。また、表示パネル7との交互積層配置に際し、緩衝部材30は、図1に示されるように筐体本体10の内側底部と、押圧用平板8と接触する部位に必ず配置されるようにすることが好ましい。
【0036】
緩衝部材30と表示パネル7とが実質的に交互に積層された積層体形成後の最上部には、押圧用平板8を介してエアバック40が配置される。
【0037】
押圧用平板8は、エアーバック40の圧力が積層体に均一にかかるように作用すべく、押圧によって変形しない程度の剛性を備え、しかも軽くて薄い平らなプレートが用いられる。具体的には、樹脂プレート、セラミックプレート、金属プレート等が挙げられる。
【0038】
エアバック40が配置された後に、筐体本体10の開口部11を覆うように蓋体20が被着される。蓋体20は筐体本体10に被着された後、筐体本体10にしっかりと固着されるようになっている。
【0039】
エアバック40は、袋状形態をなし、図示していないが気体の導入可能な導入口と、気体を排出する排出口を備えている。そして、エアバック40を膨らまして内圧を付加させると蓋体20内面との反力により、緩衝部材30と表示パネル7とが交互に積層された積層体を押圧用平板8を介して下方に押圧するように作用する。
【0040】
エアバック40は、押圧用平板8を介して緩衝部材30と表示パネル7との積層状態を常に適度の良好な加圧状態に維持するために後述する圧力制御機構部に連結されており、この圧力制御機構部によってエアバックの内圧の制御が行われるようになっている。すなわち、エアバック40の導入口および排出口には、それぞれ後述する気体供給回路と気体排気回路が継ぎ手を介して着脱可能に連結されるようになっている。
【0041】
エアバック40はパネル基板7の形態に合わせて四角状袋形態とすることが望ましいが、本発明の作用効果を発現できる限りにおいて、円盤状袋形態であってもよい。
【0042】
このようなエアバック40は、天然ゴム、合成ゴム、または熱可塑性エラストマーの弾性体を主材料として構成することが好ましい。また、袋体強度を維持するために、エアバック40を構成する袋体の肉厚内に基布等を埋設するようにする構成することが好ましい。
このようなエアバック40を設けることにより、初期の収納段階で緩衝部材30と表示パネル7とが交互に積層されていき、ピッタリと蓋体20の内側上面まで来なくても、その隙間は押圧用平板8を介してエアバック40によりある程度自由に調整することができる。また、輸送途中に、緩衝部材30と表示パネル7との積層体物が自重により下がり、上部の隙間が大きくなったとしても、生じた隙間は押圧用平板8を介してエアバック40の拡張によってある程度自由に調整される。また、輸送環境に大きな変化(例えば、温度の著しい変化)があっても、その環境変化に順応することができる。
【0043】
このようなエアバック40に連結される圧力制御機構部は、図1には図示していないが、通常、ほとんどの主要装置が筐体本体10の外側底部に隠れるように収納・固着されている。図1において、符号3は紙面の手前ないし奥行き方向に延びる梁であり筐体本体10の強度を保つように作用している。また、符号4は、圧力制御機構部が収納されている制御ボックスを簡易的に示してものである。制御ボックス4からエアバック40までの配管経路の記載は省略してあるが、筐体本体10の側面の上方に向けて配管を這わせるとともに、本体内部のエアバック40の継ぎ手に連結するようにすればよい。配管方法および連結方法は公知の種々の方法を用いればよい。
【0044】
図2には、エアバック40に連結される圧力制御機構部の要部配管システム図が示されている。図2において、点線で囲まれたブロックAのエリア以外の各部材が基本的に本発明の表示パネル輸送用の筐体装置1に一緒に組み込まれて筐体に一体化・固定されている。
【0045】
点線で囲まれたブロックAのエリアは、エアバック40へ初期段階の気体供給を行なうための外部気体供給回路であって、使用したとしても一時的なものであり、本発明の筐体装置1に必須のものではなく、また、筐体装置1と一体化されているものでもない。
【0046】
本発明における圧力制御機構部の要部配管システムは、図2に示されるように、エアバック40への気体供給を可能とする気体供給タンク51、圧力計52、第1の切り換え弁53(手動の2方切り換え弁)、減圧弁54、圧力計55、減圧弁56、圧力計57、チェック弁58(一方向弁)、第2の切り換え弁59(手動の2方切り換え弁)、および圧力計61を順次有する気体供給回路50が第1の継ぎ手5によってエアバック40に連結されている。この一方で、エアバック40からの気体を抜いて圧力を低下させるための排気弁62を有する気体排気回路60が第2の継ぎ手6によってエアバック40に連結されている。
【0047】
気体供給回路50における気体供給タンク51は、図1における筐体本体10の外側底部に装着できる程度の小型のタンクであり、市販品のものを使用することができる。タンク内容量は5〜20リットル程度、タンク内圧は1.3〜7.5kPa・G程度のものが好適に用いられる。このような気体供給タンク51は交換可能に取り付けられており、複数回の使用により気体容量が不足してきた場合には、新しい気体供給タンクに交換できるようになっている。
【0048】
図2に示される気体供給回路50において、第1の切り換え弁53(手動の2方切り換え弁)は、タンク51からの気体供給のオンオフ操作をさせるものである。また、2つの減圧弁54、減圧弁56は、減圧を確実ならしめるために2つ設けてあるが、1つで十分な減圧を行うことができるのであれば1つでもよい。また、第2の切り換え弁59(手動の2方切り換え弁)は、エアバック40に最初に気体導入をする際、他ラインからの気体供給を可能とするために他ライン方向側とエアバック40方向側との切り換えを行うためのものである。他ラインからの気体供給を考慮しなければこの第2の切り換え弁59(手動の2方切り換え弁)の設置は省略することができる。この第2の切り換え弁59の他ライン側に連結して設置される第3の切り換え弁66(オンオフ操作弁)も同様である。
【0049】
ブロックAのエリアは、前述したようにエアバック40へ初期段階の気体供給を行なうための外部気体供給回路70であって、使用したとしても一時的なものである。外部気体供給回路70は、例えば、図2に示されるように工場等に備え付けの外部圧力源71、切り換え弁72、減圧弁73、圧力計74、減圧弁75、圧力計76を順次備えており、継ぎ手77を介して、前述した第3の切り換え弁66と着脱可能に連結されるようなっている。
【0050】
そして、第2の切り換え弁59を他ライン側(ブロックA側)に連通するように切り換え、第3の切り換え弁66を「開」にして、工場等に備え付けの外部圧力源71からエアバック40へ初期段階の気体供給が完了した後に継ぎ手77の個所から切り離される。切り離された時点で、第3の切り換え弁66は「閉」の状態になっており、第2の切り換え弁59は、気体供給回路50と連通される。
【0051】
このようにして第2の切り換え弁59および第3の切り換え弁66を作動させてブロックAの外部気体供給回路70に連結させることにより、外部圧力源71からエアバック40へ初期段階の気体供給が可能となる。このような構造を採択することによって、筐体装置1に固着されている小型で容量が小さい気体供給タンク51の気体を初期のエアバック気体導入のために用いる必要がなくなるために、その後の気体供給タンク51の気体を制御の目的のみに余裕をもって使用することができる。また、これにより気体供給タンク51の小型化を図ることもできる。
【0052】
第3の切り換え弁66の設置目的は以下の通りである。すなわち、第3の切り換え弁66の出口をチェック弁58と圧力計61の間に直接接続し、第2の切り換え弁59をなくしても、回路としては初期の目的を達成できる。しかしながら、切り換え弁66,53,59の切り換える順番を間違えると、エアバック内の空気が大気に放出されたり、タンク51内の空気無駄に使われてしまう。これらの誤動作を少しでもなくするように、安全側への設計がなされている。
【0053】
このような配管システムを有する圧力制御機構部は、以下に示すような圧力制御が行われる。すなわち、エアバック40の内圧の初期設定圧力をPとし、エアバック40内の内圧が所定の設定上限値P(P>P)になると、気体排気回路60の排気弁62が作動しエアバック40の気体を排出して内圧を一定に保つように作用するとともに、エアバック40内の内圧が所定の設定下限値Pになると、気体供給回路50の気体供給タンク51からエアバック40に気体が供給されて内圧を設定下限値P(P>P)に保つように制御される。
【0054】
このような一連の制御を、圧力の変動要因の一例である温度変化を例にとってさらに具体的に説明する。図3(a)は、経過時間に対する周囲の雰囲気温度の変化の一例を示したグラフであり、図3(b)は、図3(a)に示される雰囲気温度の変化に対応したエアバック内の圧力制御の一例を示すグラフである。
【0055】
これらのグラフに示されるように、まず最初に、室温20℃で気体(空気)がエアバック内に供給され、内圧が10kPaとされる(エアバックの初期設定圧力をPと同義)。
その後、雰囲気温度が徐々に上昇していきエアバック内の空気が膨張し内圧が増加していく。温度の上昇はゆっくりと起こっている。
【0056】
さらに温度上昇が続き、エアバック40の内圧が15kPa(エアバック設定上限値P)になると、気体排気回路60の排気弁62が作動し、エアバック内の空気を排出し、内圧が一定(15kPa)に保たれる。この間温度上昇は続いている。
【0057】
図3(a)に示されるように最高想定雰囲気温度(60℃)に達した後、雰囲気温度は下降するように変化していく。この雰囲気温度の下降に伴い、エアバック40内の空気は収縮し、内圧が低下していく。
【0058】
内圧が5kPa(エアバック40の設定下限値P)になると、気体供給回路50のタンク51から空気が供給され内圧は5kPaに保たれる。
【0059】
再度、温度上昇がはじまると、上述してきた作用の繰り返しとなる。すなわち、エアバック40の内圧は、設定上限値Pと設定下限値Pの圧力範囲内で制御されるようになっている。
【0060】
圧力制御機構部における制御を温度と圧力との関係で書き直すと以下のようになる。つまり、エアバック40の内圧の初期設定圧力をPとし、雰囲気温度の上昇に伴い前記エアバックの気体が膨張し内圧が所定の設定上限値P(P>P)になると、前記気体排気回路の排気弁が作動し前記エアバックの気体を排出して内圧を一定に保つように作用するとともに、雰囲気温度の下降に伴いエアバック内の気体が収縮し内圧が所定の設定下限値Pになると、前記気体供給回路の気体供給タンクから前記エアバックに気体が供給されて内圧を設定下限値P(P>P)に保つように作用してなるのである。
【0061】
また、上記の設定上限値Pの制御は、図2に示される気体排気回路60に設置された排気弁62の作動圧力の設定により行われ、上記の設定下限値Pの制御は、気体供給回路50の減圧弁であってチェック弁に最も近接する上流側の減圧弁56の作動圧力の設定により行われるようになっている。
【0062】
このような一連の作用の中でチェック弁58の役割(設置目的)は以下のとおりである。すなわち、減圧弁56の設定圧5kPa、排気弁62の設定圧を10kPaにした場合、チェック弁58がないと、回路作動時、切り換え弁59が図2に示される状態にあるときには、エアバック40の内圧が減圧弁56にかかるために、減圧弁が即作動し、エアバック40の内圧は5kPa以上にならなくなってしまう。また、初期段階では、ブロックA回路にて、エアバック40の内圧を10kPaに設定し、切り換え弁59にて図2に示されるような状態にすると、減圧弁56が即作動し、エアバック40の内圧は5kPaに低下してしまう。エアバック40の初期の内圧エネルギーが少ないとクッション等の自重によるクリープ変化を吸収できない事も考えられる。
【0063】
なお、図1では明確に示されていないが、エアバックには、気体供給回路50および気体排気回路60をそれぞれ接続するための継ぎ手が形成されている。
【0064】
以上説明してきたように、本発明の表示パネル搬送用の筐体装置は、エアバックおよび圧力制御機構部を備え、エアバックは、緩衝部材と表示パネルとが実質的に交互に積層された積層体形成後の最上部に押圧用平板を介して配置され、積層体を押圧するように作用するとともに圧力制御機構部によってエアバックの内圧の制御が行われるようになっているので、輸送の対象とされる液晶ディスプレイガラスの大きさが例えば、第六世代の大きさ以上であっても、輸送中に破損等のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできるという極めて優れた効果が発現する。さらには、輸送環境に大きな変化があっても、その環境変化に順応することができ、輸送中に破損等のトラブル発生がなく安全かつ確実に搬送することできるという極めて優れた効果が発現する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の表示パネル搬送用の筐体装置は、液晶パネル等の表示パネルの製造産業および表示パネルを用いた電気製品の製造産業に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の表示パネル輸送用筐体装置の内部の状態が理解し易いように内部を模式的に断面にした概略図である。
【図2】図2は、本発明で用いられるエアバックに連結される圧力制御機構部の要部配管システム図である。
【図3】図3(a)は、経過時間に対する周囲の雰囲気温度の変化の一例を示したグラフであり、図3(b)は、図3(a)に示される雰囲気温度の変化に対応したエアバック内の圧力制御の一例を示したグラフである。
【符号の説明】
【0067】
1…表示パネル輸送用の筐体装置
4…制御ボックス
10…筐体本体
20…蓋体
30…緩衝部材
40…エアバック
50…気体供給回路
51…気体供給タンク
53…第1の切り換え弁53
54、56…減圧弁
58…チェック弁58(一方向弁)
59…第2の切り換え弁
60…気体排気回路
62…排気弁
70…外部気体供給回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝部材、表示パネル、押圧用平板、およびエアバックを収納するための開口部を備える筐体本体と、
前記筐体本体の開口部を封止するための蓋体と、
前記エアバックに連結される圧力制御機構部とを有する表示パネル輸送用の筐体装置であって、
前記緩衝部材は、輸送対象物である複数枚の隣接する表示パネルの間に介在されるとともに、表示パネルの振動を吸収するクッション材としての機能を有し、
前記エアバックは、緩衝部材と表示パネルとが実質的に交互に積層された積層体形成後に前記押圧用平板を介して最上部に配置され、積層体を押圧するように作用するとともに圧力制御機構部によってエアバックの内圧の制御が行われるようになっていることを特徴とする表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項2】
前記圧力制御機構部は、前記エアバックへの気体供給を可能とする気体供給タンク、第1の切り換え弁、減圧弁、およびチェック弁(一方向弁)を順次有する気体供給回路と、前記エアバックからの気体を抜いて圧力を低下させるための排気弁を有する気体排気回路とを備えてなる請求項1に記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項3】
前記圧力制御機構部の気体供給回路は、前記エアバックへの気体供給を可能とする気体供給タンク、第1の切り換え弁、減圧弁、チェック弁(一方向弁)および第2の切り換え弁を順次備え、前記第2の切り換え弁はさらに第3の切り換え弁を介して外部圧力源を備える外部気体供給回路と一時的な連結が可能となっており、
前記第2の切り換え弁および第3の切り換え弁を作動させて外部気体供給回路に連結させることにより、前記気体供給タンクの気体を用いることなく外部気体供給回路の外部圧力源から前記エアバックへ初期段階の気体供給を可能としてなる請求項2に記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項4】
前記外部気体供給回路は、前記第3の切り換え弁と継ぎ手を介して着脱可能に連結されるようなっており、前記エアバックへ初期段階の気体供給が完了した後、前記継ぎ手の個所から切り離されてなる請求項3に記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項5】
前記外部気体供給回路は外部圧力源、切り換え弁、減圧弁を順次備えてなる請求項3または請求項4に記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項6】
前記圧力制御機構部は、前記エアバックの内圧の初期設定圧力をPとし、前記エアバック内の内圧が所定の設定上限値P(P>P)になると、前記気体排気回路の排気弁が作動し前記エアバックの気体を排出して内圧を一定に保つように作用するとともに、エアバック内の内圧が所定の設定下限値Pになると、前記気体供給回路の気体供給タンクから前記エアバックに気体が供給されて内圧を設定下限値P(P>P)に保つように作用してなる請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項7】
前記圧力制御機構部は、前記エアバックの内圧の初期設定圧力をPとし、雰囲気温度の上昇に伴い前記エアバックの気体が膨張し内圧が所定の設定上限値P(P>P)になると、前記気体排気回路の排気弁が作動し前記エアバックの気体を排出して内圧を一定に保つように作用するとともに、雰囲気温度の下降に伴いエアバック内の気体が収縮し内圧が所定の設定下限値Pになると、前記気体供給回路の気体供給タンクから前記エアバックに気体が供給されて内圧を設定下限値P(P>P)に保つように作用してなる請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項8】
前記エアバックの内圧は、設定上限値Pと設定下限値Pの圧力範囲内で制御されてなる請求項6または請求項7に記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項9】
前記設定上限値Pの制御は、前記気体排気回路に設置された排気弁の作動圧力の設定により行われ、前記設定下限値Pの制御は、前記気体供給回路の減圧弁であってチェック弁に最も近接する上流側の減圧弁の作動圧力の設定により行われる請求項8に記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項10】
前記エアバックには、前記気体供給回路および前記気体排気回路を接続するための継ぎ手が形成されてなる請求項2に記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項11】
前記輸送対象物である表示パネルは、その平面の大きさが1500mm×1840mm以上である請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項12】
前記輸送対象物である表示パネルは、ガラス基板または液晶パネルである請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項13】
前記エアバックは、天然ゴム、合成ゴム、または熱可塑性エラストマーの弾性体を主材料とする袋体から構成されてなる請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項14】
前記エアバックの主材料となる弾性体は、その肉厚部に基布が埋設されてなる請求項13に記載の表示パネル輸送用の筐体装置。
【請求項15】
前記押圧用平板は、前記エアバックの圧力が前記積層体に均一にかかるように作用すべく剛性を備えた樹脂プレート、セラミックプレート、又は金属プレートである請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の表示パネル輸送用の筐体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−206134(P2006−206134A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22638(P2005−22638)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】